(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電動消臭器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20230425BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230425BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20230425BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20230425BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L9/01 F
A61L9/16 F
B01D46/00 F
(21)【出願番号】P 2019177380
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】須田 徹
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】神田 聡
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019642(JP,A)
【文献】特開2010-119983(JP,A)
【文献】特開2018-172280(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118447(WO,A1)
【文献】特開平03-228771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B01D 46/00 - 46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素を発生する消臭剤を配置する薬剤配置部と
、
吸引型のファンモータ
、及び前記薬剤配置部と前記ファンモータを収容するケーシングと、を有し、
前記ファンモータは、モータを遮蔽空間に内包し、マグネットカップリングを介してファンを回転させる構成とし
、
前記ケーシングは、前記ファンモータを構成するファンを介して吸気領域と排気領域とに分断され、
前記吸気領域には吸気口と共に前記薬剤配置部が備えられ、前記排気領域には排気口が備えられていることを特徴とする電動消臭器。
【請求項2】
前記薬剤配置部と前記ファンモータとの間にフィルタを備えることを特徴とする請求項1に記載の電動消臭器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭器に係り、特に車両等の閉塞空間内において効果的に消臭成分を拡散可能な電動消臭器に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭成分を効果的に拡散させるための消臭器に関しては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているようなものが知られている。特許文献1、2に開示されている消臭器はいずれも、消臭剤を配置する薬剤配置部と、消臭剤からの揮発成分を拡散するためのファンモータを備え、これらを特定の容器に収容するという構造を持つ。そして、いずれの文献においても、液体の消臭剤の流動性を懸念し、これをポリマー等に吸着させたり、紫外線透過型の容器に封入するという手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3046496号公報
【文献】特許第5688407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に開示されているように、消臭成分を発散する薬剤と、消臭成分を拡散するファンモータを備えれば、消臭成分を効果的に拡散することのできる電動消臭器とすることができる。
【0005】
しかし、消臭成分として利用される二酸化塩素は、金属に対する腐食性が強いため、特許文献1、2に開示されているような構造の消臭器では、継続使用時にモータが腐食し、機能しなくなる虞がある。
【0006】
そこで本発明では、消臭剤の消臭成分として二酸化塩素を用いる場合であっても、モータに対して、当該成分に起因した不具合を生じさせることの無い電動消臭器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る電動消臭器は、二酸化塩素を発生する消臭剤を配置する薬剤配置部と吸引型のファンモータと、を有し前記ファンモータは、モータを遮蔽空間に内包し、マグネットカップリングを介してファンを回転させる構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する電動消臭器では、前記薬剤配置部と前記ファンモータとの間にフィルタを備える構成とすると良い。このような特徴を有することによれば、ファンモータを介して放出・発散される気体は、フィルタリングされたクリーンなものとなる。また、消臭剤から発生する二酸化塩素がフィルタを通過するため、フィルタに対して消臭、除菌、抗ウィルス、漂白といった効果を奏することとなる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する電動消臭器では、前記薬剤配置部の上部に前記フィルタを配置し、前記フィルタの上部に前記ファンモータを配置する構成としても良い。このような配置形態とすることで、消臭剤から上方に上がる揮発成分を効率よく発散することができる。また、車両のカップホルダ等、設置スペースが限られた場所にも配置することが可能となる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有する電動消臭器では、前記薬剤配置部と前記ファンモータは、ケーシング内に収められ、前記ケーシングは、前記ファンモータを構成するファンを介して吸気領域と排気領域とに分断され、前記吸気領域には吸気口が備えられ、前記排気領域には排気口が備えられているようにすることが望ましい。このような特徴を有する事により、電動消臭器を容易に運ぶ事が可能となる。また、確実に消臭成分を発散させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する電動消臭器によれば、消臭剤の消臭成分として二酸化塩素を用いる場合であっても、モータに対して、当該成分に起因した不具合を生じさせる虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態に係る電動消臭器の右側面図である。
【
図6】ファンモータの構成を示す分解斜視図である。
【
図8】本発明に係る電動消臭器を実施するにあたっての変形例の1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電動消臭器に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、その機能を発揮することができる限りにおいて、構成の一部を変更したとしても、本発明の実施とみなすことができる。また、図面において
図1は、実施形態に係る電動消臭器の正面図であり、
図2は右側面図。
図3は平面図を示す。さらに、
図4は、
図1におけるA-A断面を示し、
図5は、
図2におけるB-B断面を示す。また、
図6はファンモータの構成を示す分解斜視図であり、
図7は、フィルタの構成を示す分解斜視図である。
【0014】
[構成:全体・薬剤配置部]
本実施形態に係る電動消臭器10は、薬剤配置部14と、ファンモータ16、及びフィルタ24を有し、これらをケーシング12内に収容している。実施形態に係る電動消臭器10では、ケーシング12は、上部カバー12aと下部カバー12bとに分断可能な構成とされている。薬剤配置部14は、下部カバー12bの内部に備えられ、消臭剤30を配置する部位である。消臭剤30は、市販されているもので良く、本実施形態では、カートリッジ容器にゲル状の消臭剤30を充填したものを採用している。消臭剤30をゲル状とすることで、運搬時や移動時における揺れや振動により消臭剤30がこぼれてしまう事を防ぐことができる。また、カートリッジ容器を採用することにより、消臭剤30を交換する際、消臭剤30が直接手に触れる事を避けることができ、交換自体も簡易迅速に行う事が可能となる。
【0015】
本実施形態では、ケーシング12として係合状態にある上部カバー12aと下部カバー12bを分離し、下部カバー12bに設けられた薬剤配置部14に、カートリッジ容器を配置することで、消臭剤30の設置が完了する。消臭剤30を下部カバー12bに配置することによれば、電動消臭器10の重心を下げることができる。このため、電動消臭器10自体の設置安定性を得ることができる。また、消臭剤30は通常、カートリッジ容器等の上面側が開放された状態で揮発可能な構成とされる。このため、消臭剤30をケーシング12の下層側に位置する下部カバー12b内に配置することで、消臭成分としての二酸化塩素の拡散を効率良く行うことができる。
【0016】
本実施形態では消臭剤30の消臭成分として、二酸化塩素が発生することで、高い消臭性、除菌性、抗ウィルス性、漂白性などを発揮することとなる。
【0017】
[ファンモータ]
ファンモータ16は、ケーシング12を構成する上部カバー12aの内部に収められ、消臭剤30からの揮発成分である二酸化塩素を吸い上げ、放出する拡散手段としての役割を担う。ファンモータ16は、モータユニット18と、ファン20とから構成されている。実施形態に係るモータユニット18は、モータ18aや制御基板18b、及び電源18c等を遮蔽空間に内包する部位であり、モータ18aの回転軸18a1は、詳細を後述するファン20の回転軸20aと分断された状態となる。ここで、遮蔽空間を構成するユニットケース18dは、揮発成分である二酸化塩素に侵される事の無い樹脂などにより構成すると良い。このように、駆動や制御を担う主要機器をユニットケース18d内に配置する構成を採用することで、モータ18aや制御基板18b、及び電源18c等が、二酸化塩素の影響により腐食することを防ぐことができる。
【0018】
モータユニット18に包含されるモータ18aの回転軸18a1には、マグネットカップリング18a2が備えられている。このような構成とする事で、ユニットケース18dの外部に配置することとなるファン20に対して、磁力による動力の伝達を行うことが可能となるからである。
【0019】
ファン20は、回転軸20aを中心として外周に複数の羽を持つものであれば良い。本実施形態では、ユニットケース18dに対して固定可能なファンケース22を設け、このファンケース22に対してファン20を配置する構成としている。ファンケース22とユニットケース18dにより回転軸20aを支持することで、ファン20の回転を安定させることが可能となるからである。また、ファン20を構成する回転軸20aには、モータ18aの回転軸18a1に備えられたマグネットカップリング18a2に対応するマグネットカップリング20bが備えられている。このような構成とすることで、回転軸同士が物理的に分断されている場合でも、モータ18aの回転に合わせてファン20を回転させることが可能となる。
【0020】
[フィルタ]
フィルタ24は、花粉やPM2.5等の微粒子を含む塵埃を除去するための要素である。具体的なフィルタ24の種類や目の粗さ、目開き等は、捕集を目的とする塵埃の粒子により定めれば良い。例えば、花粉(スギ花粉等)程度までの粒子を捕集対象とする場合、目の粗さは、その粒子の大きさ(約30μm~40μm)以下とすれば良い。なお、捕集目的とする粒子に対して極端に目の細かいフィルタ24を採用した場合、通風抵抗が大きくなり、粒子の補修能力、消臭成分の拡散能力共に低下する可能性があるため、目的に合致した特性を持つフィルタ24を採用することが望ましい。
【0021】
本実施形態におけるフィルタ24は、不織布により構成し、フィルタケース26に配置する構成としている。実施形態におけるフィルタケース26は、開口部を備えた枠状に形成されたベース26aとカバー26bにより構成し、ベース26aとカバー26bとの間にフィルタ24を挟み込むように構成している。
【0022】
上記のようなフィルタ24を配置することで、ファンモータ16を介して拡散される気体は、捕集対象とする粒子が取り除かれたクリーンなものとなる。また、本実施形態では、フィルタ24を消臭剤30とファンモータ16との間に配置し、ファンモータ16を介して拡散される二酸化塩素が必ずフィルタ24を透過する構成としている。二酸化塩素は、殺菌性や、漂白性を有するため、電動消臭器10を稼働させることにより、フィルタ24の除菌、漂白を行うことができ、フィルタ24を長期使用することが可能となる。
【0023】
[ケーシング]
ケーシング12は上述したように、下部カバー12bと上部カバー12aにより構成されており、下部カバー12bは薬剤配置部14としての役割を担う。一方、上部カバー12aの内部空間は、気体の流通経路を構成し、フィルタ24、及びファン20を介して吸気領域と排気領域に分断されるように構成されている。実施形態に係る上部カバー12aにおいて、吸気領域を担う部位では、カバーの側面に、吸気口となる開口部12a1が備えられている。一方、排気領域を担う部位には、カバーの上面に排気口となる開口部12a2が備えられている。吸気口と排気口をこのような配置形態とすることで、吸気は、上部カバーの全周からの取入れを可能とし、排気は、ファン20により生じた気流の流れを生かすことが可能となる。
【0024】
[作用]
上記のような構成の電動消臭器10では、まず、ケーシング12を分解し、下部カバー12bの薬剤配置部14に消臭剤30を設置する。次に、上部カバー12aと下部カバー12bを係合させてケーシング12を戻した後、ファンモータ16の電源スイッチを入れる。モータユニット16の起動により、ファンモータ16のファン20が回転し、消臭剤30から発生した二酸化塩素がフィルタ24側へ吸引される。排気領域に導入された二酸化塩素は、消臭・除菌・抗ウィルス成分として排気口から排出、拡散される。
【0025】
[効果]
上記のような構成の電動消臭器10によれば、消臭成分として、金属に対する腐食性の強い二酸化塩素を使用した場合であっても、ファン20の駆動源であるモータ18aや制御基板18b等が腐食し、動作不良を生じさせる虞が無い。また、吸気領域に吸い込まれた空気は、消臭剤とファンモータ16との間に配置されたフィルタ24を通過することとなり、花粉等の捕集対象とされる微粒子が取り除かれることとなる。さらに、二酸化塩素は、消臭性の他、殺菌性、抗ウィルス性、漂白性を備えるため、電動消臭器10の稼働に伴ってフィルタ24の除菌、漂白が成されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記実施形態では、薬剤配置部とフィルタ24、及びファンモータ16の配置を縦型とし、下層に位置する下部カバー12bに薬剤配置部14、上層に位置する上部カバー12aにファンモータ16を配置する旨記載した。しかしながらこの配置形態は、設置安定性と共に、車両におけるカップホルダ等に対する配置容易性を考慮したものである。このため、本発明を実施するにあたっては、必ずしも上記配置形態とする必要は無い。例えば
図8に示すように、薬剤配置部14とフィルタ24、及びファンモータ16を水平方向に配置する構成としても良い。
【符号の説明】
【0027】
10………電動消臭器、12………ケーシング、12a………上部カバー、12a1………開口部、12a2………開口部、12b………下部カバー、14………薬剤配置部、16………ファンモータ、18………モータユニット、18a………モータ、18a1………回転軸、18a2………マグネットカップリング、18b………制御基板、18c………電源、18d………ユニットケース、20………ファン、20a………回転軸、22………ファンケース、24………フィルタ、26………フィルタケース、26a………ベース、26b………カバー、30………消臭剤。