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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】防火改装窓構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230425BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/56 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019210518
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021080775
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 慎平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133194(JP,A)
【文献】特開2001-040943(JP,A)
【文献】特開2018-165472(JP,A)
【文献】特開2005-016227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、
前記連結部材を躯体に固定し、
前記既設枠と前記新設枠との間には、塞ぎ材が設置され、
前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備えて構成され
前記上塞ぎ材および前記下塞ぎ材の左右の端面と、前記既設枠の左右の既設縦枠の内周面との間には隙間が形成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項2】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、
前記連結部材を躯体に固定し、
前記既設枠と前記新設枠との間には、塞ぎ材が設置され、
前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備えて構成され、
前記左右の縦塞ぎ材の上下の端面と、前記既設枠の既設上枠および既設下枠の内周面との間には隙間が形成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項3】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、
前記連結部材を躯体に固定し、
前記既設枠と前記新設枠との間には、塞ぎ材が設置され、
前記塞ぎ材は、
上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材と、
各塞ぎ材の長手方向の端面と前記既設枠との間に充填された不燃材と、で構成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の防火改装窓構造において、
前記上塞ぎ材、前記下塞ぎ材、左右の前記縦塞ぎ材は四周連続していることを特徴とする防火改装窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火改装窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に開示されたように、火災時に発泡する加熱発泡材を設けることで、防火認定を受けた引き違い窓、片引き窓、上げ下げ窓、開き窓等のサッシが開発されている。このため、新築のビルや住宅の開口に設置されるサッシとして、防火認定を受けた様々なサッシが用いられるようになった。特に、学校等の教育施設や、病院等の医療福祉施設、店舗などの商業施設等の非居住施設では、マンションなどの居住施設に比べて用いられる窓の種類が多い。このため、新築用の防火サッシとして、防火認定を受けた様々なサッシが用意され、ビルの新築時には、デザイン性や機能性に応じて、様々な種類の防火サッシを選択できるようになり、施主や設計者の要望に対応できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、新築ビルだけでなく、老朽化したビルや住宅のサッシ部分を改装する場合も、新築時と同様に、様々な窓種の防火サッシに改装したいと要望されるようになった。
本発明の目的は、サッシ部分を改装する場合も、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる防火改装窓構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、前記新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、前記連結部材を躯体に固定し、前記既設枠と前記新設枠との間には、塞ぎ材が設置され、前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防火改装窓構造によれば、様々な種類の防火サッシに改装できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態の防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図2】第1実施形態の防火改装窓構造を示す横断面図である。
図3】第1実施形態の既設下枠および新設下枠を示す斜視図である。
図4】第1実施形態の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
図5】第1実施形態の新設障子を示す横断面図である。
図6】本発明の第2実施形態の防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図7】第2実施形態の防火改装窓構造を示す横断面図である。
図8】本発明の第3実施形態の防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図9】第3実施形態の防火改装窓構造を示す横断面図である。
図10】本発明の第4実施形態の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図11】本発明の第5実施形態の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図12】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図13】本発明の変形例の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
図14】本発明の変形例の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
図15】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図16】本発明の変形例の防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図17】本発明の変形例の防火改装窓構造を示す横断面図である。
図18】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図19】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図20】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図21】本発明の変形例の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態の防火改装窓構造を図1~3に基づいて説明する。
図1、2に示すように、第1実施形態の防火改装窓構造は、コンクリート製の躯体2の開口部に改装サッシ1を設置するものである。躯体2を有する建物は、居住用のマンションや戸建て住宅、非居住用の学校などの教育施設、庁舎などの公共施設、病院などの医療福祉施設、店舗などの商業施設も含むものである。
改装サッシ1は、躯体2に取り付けられた既設枠10と、既設枠10の内周側に設置された新設サッシ4とを備えて構成されている。
既設枠10は、躯体2に取り付けられていた既設サッシから既設障子を取り外し、躯体2に残存したものである。
新設サッシ4は、新設枠20内に新設障子5、6が引き違い可能に配置されることで引き違い窓として構成されている。
ここで、図1、2に示すX、Y、Z軸方向は互いに直交しており、X軸方向は改装サッシ1の上下方向、Y軸方向は改装サッシ1の左右方向、Z軸方向は改装サッシ1の見込み方向である。また、各断面図において、図面を見やすくするために、新設サッシ4の新設枠20や新設障子5、6の断面におけるハッチングは省略する場合がある。
【0009】
既設枠10は、既設上枠11、既設下枠12および左右の既設縦枠13、14を枠組みして構成されている。既設上枠11、既設下枠12、左右の既設縦枠13、14は、それぞれスチール製であり、躯体2の開口にモルタル3を介してそれぞれ固定されている。
なお、本実施形態の既設枠10は、FIX窓用の枠であるが、既設枠10の種類はFIX窓用に限定されず、引き違い窓や上げ下げ窓、開き窓等でもよく、特に限定されない。
また、モルタル3は、一般的には、既設枠10の外周面の全周に渡って躯体2との間に充填されるが、古い物件の一部では、モルタル3が詰まっていない箇所が部分的に存在する場合もある。本実施形態の改装サッシ1では、図3にも示すように、既設枠10の外周面の全周に渡ってモルタル3が充填されている。
【0010】
新設サッシ4は、新設枠20と、新設障子5、6とを備えた防火性能を有する引き違い窓である。この新設サッシ4は、防火性能の認定を受けて新築ビル等に組み込むことができる防火サッシと同一のサッシである。このため、本実施形態の新設サッシ4は、引き違い窓であるが、FIX窓、縦すべり出し窓、開き窓、内倒し窓、外倒し窓、すべり出し窓、段窓、連窓など、防火性能の認定を受けた様々な窓種の新設サッシを利用できる。
【0011】
新設枠20は、新設上枠21、新設下枠22および左右の新設縦枠23、24を枠組みして構成されている。
新設上枠21、新設下枠22および新設縦枠23、24には、図1、2に示すように、アンカー部材25が接合されている。
アンカー部材25は、サッシ枠アンカー26と、躯体側アンカー27とを備えている。サッシ枠アンカー26、躯体側アンカー27は、耐火性を有するスチール材などで構成されている。
【0012】
サッシ枠アンカー26は、新設上枠21、新設下枠22、新設縦枠23、24に係止される係止片261と、躯体側アンカー27に連結される連結片262とを備えたピース部材である。サッシ枠アンカー26は、各枠21~24の長手方向の1箇所または複数箇所に取り付けられている。また、サッシ枠アンカー26は、各枠21~24の形状に合わせて形成されている。例えば、新設上枠21、新設縦枠23、24は、係止片261が係止される一対の突片が見込み方向に対向しており、サッシ枠アンカー26の係止片261もこれらの突片に係止可能な形状とされている。一方、新設下枠22は、係止片261が係止される一対の突片の高さ位置が異なるため、サッシ枠アンカー26の係止片261もこれらの突片に係止可能な形状とされている。
【0013】
躯体側アンカー27は、互いに略直交する連結片271および固定片272を有する断面L字状のアングル材である。連結片271は、サッシ枠アンカー26の連結片262と溶接されている。
躯体側アンカー27の固定片272は、既設上枠11、既設下枠12、既設縦枠13、14の内周面に沿って配置され、固定片272から既設の各枠11~14、モルタル3を介してコンクリート製の躯体2まで到達する躯体連結部材であるホールインアンカー30によって躯体2に固定されている。
このため、新設上枠21、新設下枠22、新設縦枠23、24は、アンカー部材25およびホールインアンカー30によって躯体2に固定されている。そして、本実施形態では、新設枠20にサッシ枠アンカー26が取り付けられ、躯体側アンカー27はサッシ枠アンカー26に溶接で固定されてアンカー部材25として一体化されている。このため、新設枠20に取り付けられる連結部材はアンカー部材25で構成され、連結部材であるアンカー部材25は、躯体連結部材であるホールインアンカー30によって躯体2に固定されている。
【0014】
既設枠10と新設枠20との隙間には、既設枠10および新設枠20に当接して、前記隙間における遮炎性を確保する塞ぎ材40が設けられている。塞ぎ材40は、既設上枠11および新設上枠21間の隙間を塞ぐ上塞ぎ材41と、既設下枠12および新設下枠22間の隙間を塞ぐ下塞ぎ材42と、左右の既設縦枠13、14および新設縦枠23、24間の隙間を塞ぐ縦塞ぎ材43、44とを備える。
上塞ぎ材41は、図1に示すように、既設上枠11の室内面と、新設上枠21の室内面とに当接してねじ止めされている。具体的には、上塞ぎ材41は、既設上枠11の室内面にねじ止めされた室内面部411と、室内面部411の下端から室外側に延長された連結面部412と、連結面部412の室外側端縁から下方に延長されて新設上枠21の室内面にねじ止めされた固定面部413と、固定面部413の下端から室内側に延長された下面部414とを備える。上塞ぎ材41は、既設上枠11および新設上枠21の長手方向つまりY軸方向に沿って延長された長尺部材である。
【0015】
下塞ぎ材42は、図1、3に示すように、既設下枠12の上面に当接してねじ止めされ、新設下枠22の室内面に当接して設けられている。具体的には、下塞ぎ材42は、既設下枠12の上面にねじ止めされた見込み面部421と、見込み面部421の室外側端縁から上方に延長された見付け面部422とを備えて、断面略L字状に形成されている。下塞ぎ材42は、既設下枠12および新設下枠22の長手方向つまりY軸方向に沿って延長された長尺部材である。
なお、下塞ぎ材42の見付け面部422は、新設下枠22の室内面に当接のみされ、ねじ止めされていないが、上塞ぎ材41の固定面部413と同様に、新設下枠22にねじ止めしてもよい。
【0016】
縦塞ぎ材43、44は、図2に示すように、既設縦枠13、14の見込み面と、新設縦枠23、24の室内面とに当接してねじ止めされている。具体的には、縦塞ぎ材43、44は、既設縦枠13、14の見込み面にねじ止めされた見込み面部431、441と、新設縦枠23、24の室内面にねじ止めされた見付け面部432、442とを備えて、断面略L字状に形成されている。縦塞ぎ材43、44は、既設縦枠13、14および新設縦枠23、24の長手方向つまりX軸方向に沿って延長された長尺部材である。
【0017】
これらの上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44は、不燃性のスチール材等の鋼材で構成され、図4の模式図に示すように、既設枠10の内周面に沿って配置されている。なお、上塞ぎ材41および下塞ぎ材42と、縦塞ぎ材43、44との間や、縦塞ぎ材43、44と既設縦枠13、14との間には、施工性の向上や火災時の熱伸び等を考慮した隙間S1、S2が設定されている。
例えば、隙間S1、S2として1mm程度の隙間を設ければ、各塞ぎ材41~44を容易に配置でき、施工性を向上できる。また、各塞ぎ材41~44が火災時の熱で熱伸びする場合、その熱伸びを考慮した寸法で隙間S1、S2を設定すれば、施工性の向上に加えて熱伸び時に各塞ぎ材41~44に大きな応力が加わることを防止できる。なお、熱伸びを考慮した寸法は、各塞ぎ材41~44の材質に基づく線膨張係数と、長さ寸法とに基づいて設定すればよく、例えば、10mm以下、好ましくは7mm~10mm程度に設定すれば良い。
本実施形態の塞ぎ材40は、上下の上塞ぎ材41、下塞ぎ材42間に、左右の縦塞ぎ材43、44が配置されている。このため、左右の縦塞ぎ材43、44の上面と、上塞ぎ材41の下面との間や、縦塞ぎ材43、44の下面と、下塞ぎ材42の上面との間には、熱伸びを吸収するための隙間S1が設けられている。すなわち、隙間S1は、左右の縦塞ぎ材43、44が火災時の熱で熱伸びする寸法に応じて設定される。なお、隙間S1は、縦塞ぎ材43、44の上面および下面の両方に形成されるものに限定されず、片方のみ、例えば、縦塞ぎ材43、44の上面と上塞ぎ材41との間のみに隙間S1を形成してもよい。
本発明において、塞ぎ材40は、火災時に既設枠10および新設枠20間を火炎が通過しないように遮ることができればよい。したがって、塞ぎ材40が四周連続するように配置されているとは、少なくとも火災時には、熱伸びした上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44が互いに当接して四周連続するように配置されていればよく、火災が発生していない通常時に前記熱伸び用や施工用の隙間S1が形成されるように配置されているものを含む。また、火災時に既設枠10および新設枠20間の隙間を塞ぐように塞ぎ材40が四周連続して配置されるとは、各塞ぎ材41~44が当接する場合だけでなく、遮炎性能に影響しない僅かな隙間は残っている場合も含む。
さらに、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42も熱伸びするため、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右両端面と、既設縦枠13、14との間にも隙間S2を形成している。隙間S2は、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42が火災時の熱で熱伸びする寸法に応じて設定されている。この隙間S2も、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右いずれか一方の端面側のみに形成してもよい。
また、前記隙間S1、S2の一方の隙間だけを設けてもよいし、隙間S1、S2の両方の隙間を無くしてもよい。例えば、塞ぎ材40の長手方向の寸法が短いために熱伸びの影響が小さい場合や、塞ぎ材40が熱伸びしにくい材料で構成されている場合には、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44を予め当接させてもよいし、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右両端面と、既設縦枠13、14とを予め当接させてもよい。
【0018】
新設枠20の室内側には、塞ぎ材40を隠すために、カバー材50が取り付けられる。カバー材50は、上カバー材51、下カバー材52、縦カバー材53、54を備える。
また、既設枠10の室内側には、既設枠10が取り付けられていた開口表面を覆う化粧材60が設けられている。化粧材60は、上化粧材61、下化粧材62、縦化粧材63、64を備えている。
【0019】
上カバー材51は、上塞ぎ材41の下面部414にねじ止めされる見込み面部511と、見込み面部511から上方に延出された見付け面部512と、見付け面部512の上端から室外側に折り返された受け面部513とを備える。受け面部513は、上化粧材61との隙間に充填されるバックアップ材55およびシール材56を支持するために設けられる。
【0020】
下カバー材52、縦カバー材53、54は、上カバー材51と同一形状の部品であるため、説明を省略する。
新設下枠22には、断面L字状のブラケット57が固定され、ブラケット57に下カバー材52がねじ止めされている。新設縦枠23、24には、縦塞ぎ材43、44を挟んで断面L字状のブラケット58が固定され、ブラケット58に縦カバー材53、54がねじ止めされている。
これらの下カバー材52、縦カバー材53、54と、下化粧材62、縦化粧材63、64との間にも、バックアップ材55およびシール材56が充填されている。
なお、ブラケット57、58は、新設下枠22や新設縦枠23、24の長手方向に沿って延長された長尺部材でもよいし、ピース材を複数設けてもよい。
【0021】
新設上枠21、新設縦枠23、24の室外面には、外部見切り材70が取り付けられている。また、新設下枠22の室外面には、水切り材71がねじ止めされている。水切り材71の左右両端部には、シール受け板72が取り付けられている。
外部見切り材70、水切り材71と、躯体2の室外側に設けられた外壁材7との間には、シール材76が充填されている。
すなわち、図1に示すように、新設上枠21に取り付けられた外部見切り材70と、外壁材7との間には、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。
また、図2に示すように、新設縦枠23、24に取り付けられた外部見切り材70と、外壁材7の側面との間にも、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。この新設縦枠23、24の外部見切り材70と外壁材7の側面との間に充填されたバックアップ材75、シール材76は、水切り材71のシール受け板72と外壁材7の側面との間にも連続して充填されている。
図1に示すように、水切り材71の下端部と、躯体2との間にも、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。
【0022】
図1、2に示すように、新設枠20と外部見切り材70との接合部分にも、バックアップ材77およびシール材78が充填されている。具体的には、図1に示すように、外部見切り材70と新設上枠21との接合部分は、外部見切り材70および新設上枠21で囲まれる凹溝とされ、この凹溝にバックアップ材77およびシール材78が充填されている。
また、水切り材71と新設下枠22との接合部分も、水切り材71および新設下枠22で囲まれる凹溝とされ、この凹溝にバックアップ材77およびシール材78が充填されている。
さらに、図2に示すように、外部見切り材70と新設縦枠23、24との接合部分も、外部見切り材70および新設縦枠23、24で囲まれる凹溝とされ、この凹溝にバックアップ材77およびシール材78が充填されている。
【0023】
新設障子5、6は、引き違い窓用の障子である。また、新設枠20および新設障子5、6を備える新設サッシ4は、防火性能を有する引き違い窓であり、防火認定を受けるために必要な構成、例えば火災時に膨張して火炎を遮蔽する加熱発泡材などが適宜設けられている。
図5は、改装用に用いられる新設障子5、6の一例を示す横断面図である。図5に示す新設障子5、6は、図示略の上框および下框と、戸先框81と、召合せ框82とを方形枠状に組み、その枠内に網入りガラス83と、Low-Eガラス84とを組み込んで構成されている。
各召合せ框82には、スチール製の補強材85が全長に渡って配置され、補強材85には加熱発泡材86が全長に渡って接着されている。さらに、室内側の新設障子6の召合せ框82には、Low-Eガラス84の外周面に対向する加熱発泡材86が接着されている。加熱発泡材86は、戸先框81にもそれぞれ接着されている。また、図示は省略するが、上框や下框にも加熱発泡材が接着されている。
さらに、召合せ框82の互いの対向面には、加熱発泡材86に比べてより低い温度で発泡する低温発泡タイプの加熱発泡材87が接着されている。また、図示は省略するが、下枠の表面や、下框において下枠のレールに対向する面にも低温発泡タイプの加熱発泡材が接着されている。
これらの加熱発泡材86、87は、火災時に発泡し、新設障子5、6と新設枠20との隙間や、召合せ框82間の隙間等を塞ぎ、火炎を遮断することができる。
【0024】
[改装作業]
次に、本実施形態の新設サッシ4の改装作業の一例について説明する。
新設サッシ4は、サッシの製造工場にて製造される。この際、サイズが小さいサッシのように、サッシ組した状態で改装現場まで納入できる場合は、製造工場でサッシ組を行って改装現場に納入する。一方、サイズが大きいサッシのように、サッシ組した状態では改装現場に納入できない場合は、部品付けまで製造工場で行い、施工現場でサッシ組を行う。なお、新設障子5、6へのガラスの取付作業は、改装現場で別途行われる。
【0025】
既設サッシが設置された改装現場では、既設の障子を取り外し、既設枠10から躯体2に向かって、ホールインアンカー30用の下穴を施工する。
次に、躯体側アンカー27を介して前記下穴にホールインアンカー30を挿入し、ホールインアンカー30を躯体2に打ち込んで固定し、躯体側アンカー27をホールインアンカー30を介して躯体2に固定する。
次に、塞ぎ材40を既設枠10にねじ止めして固定する。また、新設枠20にサッシ枠アンカー26を取り付ける。
そして、新設枠20を既設枠10内に建て付ける。この際、新設枠20を位置決めして仮固定してもよい。
次に、サッシ枠アンカー26と躯体側アンカー27とを溶接して固定する。この際、既設枠10に塞ぎ材40が固定されているので、室外側から溶接作業を行えばよい。学校の教室などでは既設枠10の室外側にベランダや外廊下などが有る場合も多いため、室外側からでも容易に溶接作業を行うことができる。
一方で、室外側から溶接作業を行うことができない場合は、サッシ枠アンカー26および躯体側アンカー27を溶接してから、塞ぎ材40を取り付ければよい。
サッシ枠アンカー26および躯体側アンカー27の溶接作業により、新設枠20は、連結部材であるアンカー部材25(サッシ枠アンカー26および躯体側アンカー27)と、躯体連結部材であるホールインアンカー30とを介して、躯体2に固定される。
【0026】
次に、新設枠20の室外側の仕上げ作業と、室内側の仕上げ作業とを行う。室外側の仕上げ作業は、まず、新設枠20に、室外側から外部見切り材70、水切り材71をねじで取り付ける。そして、外部見切り材70、水切り材71と、外壁材7や躯体2との間にバックアップ材75、シール材76を充填する。また、外部見切り材70、水切り材71と、新設枠20との間に、バックアップ材77およびシール材78を充填する。これにより、改装サッシ1の室外側のシール施工を行い、室外側の仕上げ作業が完了する。
室内側の仕上げ作業は、まず、新設枠20に、上塞ぎ材41やブラケット57、58をねじ止めする。次に、塞ぎ材40を被覆する室内側のカバー材50を、上塞ぎ材41やブラケット57、58にねじ止めする。そして、カバー材50と化粧材60との間にバックアップ材55、シール材56を充填してシール施工を行い、室内側の仕上げ作業が完了する。
その後、新設枠20内に新設障子5、6を組み込んで改装作業が完了する。
【0027】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態の防火改装窓構造によれば、新設サッシ4の新設枠20を、アンカー部材25およびホールインアンカー30を介して躯体2に固定している。アンカー部材25およびホールインアンカー30は耐火性を有し、防火性能を備える新設サッシ4を、耐火材を介して躯体2に直接固定して防火性能を有する改装サッシ1を構成できる。このため、新築のビルや住宅用に個別に防火認定を受けている様々な窓種の新設サッシ4を、アンカー部材25およびホールインアンカー30を用いて躯体2に連結すれば、様々な窓種の改装サッシ1を防火仕様とすることができる。したがって、第1実施形態によれば、既設サッシを改装する際に、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる。
また、アンカー部材25およびホールインアンカー30を用いて新設枠20を躯体2に固定するため、既設枠10の種類や形状などに合わせて新設枠20を構成する必要が無く、新築用の新設サッシ4をそのまま利用することができる。
さらに、新設枠20を既設枠10に合わせて構成していないので、既設枠10および新設枠20間に隙間が生じる場合があるが、既設枠10および新設枠20間の隙間を塞ぐ塞ぎ材40を設けたので、既設枠10および新設枠20間の隙間部分の防火性能も確保できる。
したがって、防火性能を有する改装サッシ1を容易に構成でき、かつ、改装サッシ1の新設サッシ4は、新築用に防火認定を受けたサッシを利用できるため、改装専用のサッシを用いる場合に比べて、低コストで様々な窓種の改装サッシ1を構成できる。
【0028】
塞ぎ材40を構成する上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44は、施工作業性や火災時の熱伸び等を考慮した隙間S1を介して配置されるため、施工作業性を向上できる。また、火災時の熱によって上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44が熱伸びした際には、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44間の隙間を無くして四周連続する塞ぎ材40を構成できる。このため、確実に遮炎できて改装サッシ1の防火性能も向上できる。
【0029】
躯体連結部材であるホールインアンカー30を躯体2に固定し、ホールインアンカー30で躯体側アンカー27を躯体2に固定しているので、躯体側アンカー27とホールインアンカー30とを溶接せずに連結でき、改装現場での溶接作業を少なくできる。
【0030】
[第2実施形態]
図6、7は、第2実施形態の改装サッシ1Bを示す縦断面図、横断面図である。改装サッシ1Bは、躯体連結部材として、ホールインアンカー30の代わりにコンクリートねじ30Bを用いた点と、下塞ぎ材として、第1実施形態の断面L字状の下塞ぎ材42の代わりに断面Z字状の下塞ぎ材42Bを用いた点が、第1実施形態の改装サッシ1と相違する。このため、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付し、説明を省略する。
【0031】
躯体連結部材であるコンクリートねじ30Bは、ホールインアンカー30と同じく、躯体側アンカー27から既設枠10を介して躯体2までねじ込まれており、躯体側アンカー27を躯体2に固定している。
なお、図6に示す改装サッシ1Bでは、既設上枠11、既設下枠12の左右両端や中央部分にモルタル3が充填され、その途中にはモルタル3が充填されていない箇所が存在する。図7に示す既設縦枠13、14においても、上下両端や中央部分にモルタル3が充填され、その途中にはモルタル3が充填されていない箇所が存在する。図6、7は、モルタル3が充填されていない箇所の断面図である。このため、コンクリートねじ30Bは、モルタル3が充填されていない箇所でも躯体2に固定できるように、躯体2にねじ込み可能な長さを有するものが用いられている。
下塞ぎ材42Bは、見込み面部421Bと、第1見付け面部422Bと、第2見付け面部423Bとを備えて、断面Z字状(稲妻状)に形成され、スチール等の耐火材で構成された長尺部材である。
見込み面部421Bは、既設下枠12の上面に沿って配置されている。第1見付け面部422Bは、見込み面部421Bの室内側端縁から上方に延長され、新設下枠22の室内面に当接して配置されている。第2見付け面部423Bは、見込み面部421Bの室外側端縁から下方に延長され、既設下枠12の室内面に沿って配置されて既設下枠12に当接してねじ止めされている。
なお、第1見付け面部422Bは、新設下枠22にねじ止めされていないが、新設下枠22にねじ止めしてもよい。
【0032】
改装サッシ1Bの改装作業は、第1実施形態の改装サッシ1と同様であるため、説明を省略する。
【0033】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態の改装サッシ1Bによれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、コンクリートねじ30Bは、ホールインアンカー30と同様に躯体2までねじ込まれているので、新設枠20を躯体2に直接固定することができ、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、コンクリートねじ30Bは、躯体2にねじ込むことができる長さ寸法のものを利用しているので、モルタル3が充填していない箇所が存在しても、確実に躯体2にねじ込んで新設枠20を固定できる。
また、下塞ぎ材42Bは、断面Z字状に形成されており、見込み面部421Bおよび第2見付け面部423Bが既設下枠12の2つの面に当接するため、既設下枠12と下塞ぎ材42Bとの密着性を向上でき、さらに遮炎性を向上できる。
【0034】
[第3実施形態]
図8、9は、第3実施形態の改装サッシ1Cを示す縦断面図、横断面図である。改装サッシ1Cは、第2実施形態の改装サッシ1Bに対し、躯体連結部材としてフィッシャープラグ30Cを用いた点が相違し、第1実施形態の改装サッシ1に対しては、第2実施形態と同じ下塞ぎ材42Bを用いた点がさらに相違する。このため、第1、2実施形態と同一の構成については同一符号を付し、説明を省略する。
【0035】
躯体連結部材であるフィッシャープラグ30Cは、コンクリートねじ30Bと同じく、躯体側アンカー27から既設枠10を介して躯体2まで達しており、躯体側アンカー27を躯体2に固定している。
【0036】
改装サッシ1Cの改装作業は、第1、2実施形態の改装サッシ1、1Bと同様であるため、説明を省略する。
【0037】
[第3実施形態の作用効果]
第3実施形態の改装サッシ1Cによれば、第1、2実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、フィッシャープラグ30Cは、ホールインアンカー30やコンクリートねじ30Bと同様に躯体2に固定されているので、新設枠20を躯体2に直接固定することができ、第1、2実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、第2実施形態と同じ断面Z字状に形成された下塞ぎ材42Bを用いているので、さらに遮炎性を向上できる。
【0038】
[第4実施形態]
第4実施形態の改装サッシ1Dについて、図10に基づいて説明する。
改装サッシ1Dは、スチール製の既設枠10を躯体2の一部とみなし、新設枠20をアンカー部材25で既設枠10つまりは躯体2に連結したものである。すなわち、前記各実施形態の改装サッシ1、1B、1Cとは、躯体連結部材であるホールインアンカー30、コンクリートねじ30B、フィッシャープラグ30Cを用いていない点が相違する。このため、前記各実施形態と同一の構成については同一符号を付し、説明を省略する。なお、図10では、新設下枠22の固定構造について図示している。新設上枠21や新設縦枠23、24も図示は省略するが、同様の固定構造を採用している。また、モルタル3は、既設枠10の全周に渡って充填されていてもよいし、一部にモルタル3が充填されていない箇所が存在してもよく、既設枠10を躯体2の一部と見なせる構造であればよい。
【0039】
改装サッシ1Dでは、躯体側アンカー27を既設下枠12に溶接で固定している点が第1実施形態の改装サッシ1と相違し、その他の構成は同一である。このため、第1実施形態と同一の構成については同一符号を付し、説明を省略する。なお、図示は省略するが、躯体側アンカー27は、既設上枠11や既設縦枠13、14に対しても溶接で固定されている。
【0040】
改装サッシ1Dの改装作業は、躯体側アンカー27を、躯体連結部材を用いずに溶接で既設枠10に固定している点を除き、第1実施形態の改装サッシ1と同様であるため、説明を省略する。なお、躯体側アンカー27を既設枠10に溶接する作業と、サッシ枠アンカー26に溶接する作業は、どちらを先に実行してもよい。
【0041】
[第4実施形態の作用効果]
第4実施形態の改装サッシ1Dによれば、前記各実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、躯体2にモルタル3を介して固定された既設枠10は、耐火性を有するスチール製であるため、躯体2の一部として機能する。改装サッシ1Dでは、躯体側アンカー27を既設枠10に溶接しているので、新設枠20を躯体2に直接固定していることになり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
さらに、躯体連結部材であるホールインアンカー30、コンクリートねじ30B、フィッシャープラグ30Cを用いる必要が無いため、部品数が少なくなり、改装現場において、躯体連結部材を挿入するための下穴を加工する必要も無いため、改装作業性も向上できる。
【0042】
[第5実施形態]
第5実施形態の改装サッシ1Eについて、図11に基づいて説明する。
改装サッシ1Eは、既設枠10Eがアルミサッシである点と、下塞ぎ材42Eの形状が前記各実施形態と異なる点で前記各実施形態と相違する。なお、図11では、既設下枠12E、新設下枠22を図示しているが、図示しない他の既設上枠、既設縦枠も同様にアルミ製である。モルタル3は、既設枠10Eの全周に渡って充填されていてもよいし、一部にモルタル3が充填されていない箇所が存在してもよい。
【0043】
アルミ製の既設枠10Eは、図11に示すように、引き違い窓用の既設枠である。このため、既設下枠12Eは、室外側レール101と、室内側レール102とを備える。この既設枠10Eは、躯体2に埋め込まれたアンカープレート28に取り付けられている。すなわち、改装前の既製サッシにおいて、既設枠10Eは、アンカープレート28を介して躯体2に固定されている。
そして、新設枠20(図11では新設下枠22)を固定する躯体側アンカー27は、既設枠10E(図11では既設下枠12E)から躯体2まで形成された下穴に挿入、固定される躯体連結部材であるフィッシャープラグ30Cによって、躯体2に固定されている。
なお、躯体側アンカー27は、既設枠10の長手方向(既設上枠や既設下枠12EではY軸方向、既設縦枠ではX軸方向)において、アンカープレート28とほぼ同じ位置に設けてもよいし、長手方向においてアンカープレート28と異なる位置に設けてもよい。
また、躯体側アンカー27は、既設上枠や既設下枠12Eの室外側レール101と室内側レール102との間に配置されている。
【0044】
改装サッシ1Eの改装作業は、既設枠10Eからモルタル3を介して躯体2まで下穴を形成する点や、躯体側アンカー27を躯体連結部材(フィッシャープラグ30C)で躯体2に固定している点で、第1、2、3実施形態の改装サッシ1、1B、1Cと同様であるため、説明を省略する。
下塞ぎ材42Eは、既設下枠12Eや新設下枠22の長手方向(Y軸方向)に沿って延長された長尺なスチール製の板材である。下塞ぎ材42Eは、既設下枠12Eにねじ止めされ、新設下枠22の室内面に当接している。これにより、既設下枠12Eおよび新設下枠22間の隙間が下塞ぎ材42Eで塞がれている。なお、既設上枠および新設上枠間や、既設縦枠および新設縦枠間の隙間も同様に塞ぎ材で塞がれている。これらの塞ぎ材の断面形状は、各枠において塞ぎ材の取付け位置などに応じて設定すればよい。
なお、改装サッシ1Eでは、フィッシャープラグ30Cの代わりに、ホールインアンカー30やコンクリートねじ30Bを用いてもよい。
【0045】
[第5実施形態の作用効果]
第5実施形態の改装サッシ1Eによれば、前記各実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、躯体側アンカー27を躯体側に固定するフィッシャープラグ30Cは躯体2に固定されているので、新設枠20を躯体2に直接固定することができる。このため、既設枠10Eがアルミ製であっても、防火性能を有する改装サッシ1を構成でき、第1、2、3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、躯体側アンカー27を室外側レール101、室内側レール102間に配置しているので、躯体側アンカー27をフィッシャープラグ30Cで躯体2に固定する際に、躯体側アンカー27の回転を室外側レール101、室内側レール102で規制して防止できる。このため、躯体側アンカー27をフィッシャープラグ30Cで固定する作業を容易にでき、改装作業性を向上できる。
【0046】
[変形例]
本発明は、以上の各実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記第1~3実施形態では、躯体側アンカー27を、躯体連結部材であるホールインアンカー30、コンクリートねじ30B、フィッシャープラグ30Cで躯体2に固定していたが、図12に示す改装サッシ1Fのように、ホールインアンカー30等で既設下枠12上にプレート31を固定し、このプレート31に躯体側アンカー27を溶接してもよい。すなわち、プレート31付きの躯体連結部材を既設枠10を貫通して躯体2に固定し、連結部材である躯体側アンカー27を、躯体連結部材のプレート31に溶接などで固定してもよい。
【0047】
塞ぎ材40は、図4に示す構成に限定されない。例えば、縦塞ぎ材43、44の上下両端を、既設上枠11、既設下枠12に当接あるいは隙間を設けて近接させ、縦塞ぎ材43、44間に上塞ぎ材41、下塞ぎ材42を配置してもよい。
また、塞ぎ材40は、少なくとも火災時に四周連続するように構成されていればよい。したがって、前記各実施形態のように、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44の4本の鋼材で構成されるものに限定されない。
例えば、図13に示すように、上塞ぎ材41B、下塞ぎ材42B、縦塞ぎ材43B、44Bの4本の鋼材と、上塞ぎ材41B、下塞ぎ材42B、縦塞ぎ材43B、44Bの長手方向の端面および既設枠10間の隙間に充填されたモルタルやロックウール、アルミテープなどの不燃材45とを備えて塞ぎ材40Bを構成してもよい。なお、縦塞ぎ材43B、44Bの上端面が上塞ぎ材41Bの下面よりも低く、縦塞ぎ材43B、44Bの下端面が下塞ぎ材42Bの上面よりも高い位置に設定しているので、火災時に上塞ぎ材41B、下塞ぎ材42B、縦塞ぎ材43B、44Bが熱伸びしても、各鋼材は互いに干渉しない。
また、図14に示すように、上塞ぎ材41Cおよび下塞ぎ材42Cを複数個(図14では3個)の鋼材で構成し、各鋼材間の隙間に不燃材46を充填した塞ぎ材40Cを用いてもよい。なお、図14では、縦塞ぎ材43C、44Cは、塞ぎ材40Bと同じく1本の鋼材で構成したが、上塞ぎ材41C、下塞ぎ材42Cと同様に、複数の鋼材と、鋼材間に充填される不燃材とで構成してもよい。
不燃材45、46は、鋼材が熱伸びした場合に圧縮され、鋼材の熱伸びを吸収できる。このため、火災前の状態でも、塞ぎ材40B、40Cは、各鋼材および不燃材45、46を隙間無く配置して四周連続させることができる。また、不燃材45、46は、モルタルやロックウール、アルミテープであるため、火災時に焼失することがなく、火災時も、鋼材および不燃材45、46を四周連続させることができ、既設枠10および新設枠20間の隙間を確実に遮炎することができる。
【0048】
さらに、塞ぎ材40は、鋼材を用いたものに限定されず、例えば、既設枠10および新設枠20間にモルタルやロックウール等の不燃材のみを充填して塞ぎ材としてもよい。
また、既設上枠11および新設上枠21間と、既設下枠12および新設下枠22間には、上塞ぎ材41および下塞ぎ材42を配置し、既設縦枠13、14および新設縦枠23、24間はモルタルやロックウールなどの不燃材を充填するように、鋼材からなる塞ぎ材と、不燃材からなる塞ぎ材とを組み合わせてもよい。
また、既設枠10と新設枠20との組み合わせによっては、塞ぎ材を四周連続するように設けなくてもよい。例えば、既設下枠12と新設下枠22とが直接当接して隙間が発生しない場合、既設下枠12および新設下枠22間には下塞ぎ材を設けなくてもよい。したがって、塞ぎ材は、既設枠10および新設枠20間の隙間が発生している枠間に設ければよい。
さらに、塞ぎ材は、既設枠10および新設枠20間の隙間を完全に塞ぐものに限らず、遮炎性を確保できるものであれば、隙間の一部を塞がないものでもよい。要するに、塞ぎ材は、既設枠10および新設枠20間における遮炎性を確保して、防火認定に必要な防火性能を確保できるものであればよい。
【0049】
前記各実施形態では、サッシ枠アンカー26および躯体側アンカー27で連結部材(アンカー部材25)を構成していたが、連結部材を1部品で構成してもよい。例えば、図15に示すように、連結部材であるサッシ枠アンカー26の連結片262を既設下枠12まで延長し、既設下枠12つまり躯体2に直接固定してもよい。また、図示は省略するが、サッシ枠アンカー26の連結片262を躯体連結部材で躯体に固定したり、躯体連結部材に溶接などで固定することで、連結部材(アンカー部材25)を1部品で構成してもよい。
また、図10図12に示すように、躯体側アンカー27を、サッシ枠アンカー26および躯体側の2箇所で溶接する場合は、溶接の順序はどちらが先でもよい。すなわち、躯体側アンカー27をサッシ枠アンカー26に溶接してから、躯体側アンカー27を躯体に溶接してもよいし、躯体側アンカー27を躯体に溶接してからサッシ枠アンカー26に溶接してもよい。
【0050】
さらに、新設枠20に取り付けられた連結部材と、既設枠10を貫通して躯体2に固定された躯体連結部材とを、中間連結部材で連結してもよい。例えば、図12において、サッシ枠アンカー26を連結部材とし、プレート31およびホールインアンカー30を躯体連結部材とし、躯体側アンカー27を中間連結部材としてもよい。この場合、躯体側アンカー27は、構造的にサッシ枠アンカー26とは別部材と見なせるので、サッシ枠アンカー26および躯体側アンカー27をボルト等で連結してもよい。また、プレート31および躯体側アンカー27もボルト等で連結してもよい。
【0051】
躯体連結部材であるコンクリートねじ30Bやフィッシャープラグ30Cは、モルタル3が充填されている箇所にねじ込まれる場合は、モルタル3にねじ込むことができる長さ寸法であればよい。このため、図16および図17に示すように、既設枠10の全周に渡ってモルタル3が充填されている場合、コンクリートねじ30Bは、モルタル3までねじ込まれ、コンクリート製の躯体2には到達しない長さ寸法、つまり図6、7に示すコンクリートねじ30Bに比べて短い寸法のものを利用してもよい。
同様に、図18に示すように、フィッシャープラグ30Cを用いる場合も、既設枠10Eの全周に渡ってモルタル3が充填されている場合は、フィッシャープラグ30Cは、モルタル3に固定され、コンクリート製の躯体2までは到達しない長さ寸法に設定してもよい。
【0052】
本発明において、新設枠20に取り付けられる連結部材は、アンカー部材25に限定されず、新設枠20をスチール製の既設枠や躯体連結部材、中間連結部材に固定できるものであれば利用できる。
本発明において、躯体2に固定される躯体連結部材は、ホールインアンカー30、コンクリートねじ30B、フィッシャープラグ30Cに限定されず、各種躯体に固定でき、かつ、連結部材や中間連結部材を固定できるものであればよい。
【0053】
本発明において、新設枠20が固定される躯体としては、コンクリートやモルタルに限定されず、例えば、図19に示すように、ALCパネルからなる躯体2Bでもよい。さらに、図20、21に示すように、アルミ製の既設枠10Eやスチール製の既設枠10が取り付けられる躯体2Cは、コンクリート、モルタル、ALCパネルに限らず、鉄骨などでもよく、躯体として利用可能な不燃材料であればよい。このため、図20、21では、躯体2Cの種類が限定されないことを示すため、躯体2Cはハッチングを省略して記載している。
【0054】
前記各実施形態では、1つの新設サッシ4を既設枠10、10E内に配置した改装サッシ1について説明したが、複数の新設サッシ4を方立や無目などの連結材で連結して連窓や段窓を構成してもよい。
【0055】
[発明のまとめ]
本発明の防火改装窓構造は、既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、前記新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、前記連結部材を躯体に固定し、前記既設枠と前記新設枠との間には、塞ぎ材が設置され、前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備えて構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、新設サッシの新設枠に連結部材を取り付け、連結部材を躯体に固定しているので、新設サッシは連結部材を介して躯体に固定することができる。さらに、既設枠と新設枠との間に塞ぎ材を設けたので、既設枠および新設枠間の遮炎性を確保できる。このため、防火認定を受けている様々な窓種の新設サッシを、連結部材を用いて躯体に固定し、既設枠および新設枠間に塞ぎ材を設ければ、様々な窓種の改装サッシを防火仕様とすることができ、既設サッシを改装する際に、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる。
【0056】
本発明の防火改装窓構造において、前記上塞ぎ材、前記下塞ぎ材、左右の前記縦塞ぎ材は四周連続していることが好ましい。
本発明によれば、塞ぎ材を、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材で構成し、これらを四周連続して配置したので、新設枠および既設枠間の隙間を四周連続して塞ぐことができ、防火性能を向上できる。
【0057】
本発明の防火改装窓構造において、前記左右の縦塞ぎ材は、前記上塞ぎ材および前記下塞ぎ材間に配置され、前記上塞ぎ材の下面および前記縦塞ぎ材の上面間と、前記下塞ぎ材の上面および前記縦塞ぎ材の下面間とには隙間が形成されていてもよい。
本発明によれば、塞ぎ材を構成する上塞ぎ材、下塞ぎ材と、縦塞ぎ材との間に隙間を設けているので、縦塞ぎ材を設置する際の施工作業性を向上できる。また、火災時の熱によって縦塞ぎ材が熱伸びした際に、隙間を無くすことができて確実に遮炎できて改装サッシの防火性能も向上できる。
【0058】
本発明の防火改装窓構造において、前記上塞ぎ材および前記下塞ぎ材の左右の端面と、前記既設枠の左右の既設縦枠の内周面との間には隙間が形成されていてもよい。
本発明によれば、塞ぎ材を構成する上塞ぎ材、下塞ぎ材と、既設縦枠との間に隙間を設けているので、上塞ぎ材および下塞ぎ材を設置する際の施工作業性を向上できる。また、火災時の熱によって各塞ぎ材が熱伸びした際に、既設縦枠との隙間を無くすことができて確実に遮炎できて改装サッシの防火性能も向上できる。
【0059】
本発明の防火改装窓構造において、前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材と、各塞ぎ材の長手方向の端面と前記既設枠との間に充填された不燃材と、で構成されていてもよい。
本発明によれば、各塞ぎ材および不燃材を四周連続させることができ、火災時も既設枠および新設枠間の隙間を確実に遮炎することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…改装サッシ、1B…改装サッシ、1C…改装サッシ、1D…改装サッシ、1E…改装サッシ、1F…改装サッシ、2…躯体、2B…躯体、2C…躯体、3…モルタル、4…新設サッシ、5…新設障子、6…新設障子、7…外壁材、10…既設枠、10E…既設枠、11…既設上枠、12…既設下枠、12E…既設下枠、13…既設縦枠、14…既設縦枠、20…新設枠、21…新設上枠、22…新設下枠、23…新設縦枠、24…新設縦枠、25…アンカー部材、26…サッシ枠アンカー、27…躯体側アンカー、28…アンカープレート、30…ホールインアンカー、30B…コンクリートねじ、30C…フィッシャープラグ、31…プレート、40…塞ぎ材、40B…塞ぎ材、40C…塞ぎ材、41…上塞ぎ材、41B…上塞ぎ材、41C…上塞ぎ材、42…下塞ぎ材、42B…下塞ぎ材、42C…下塞ぎ材、42E…下塞ぎ材、43…縦塞ぎ材、43B…縦塞ぎ材、43C…縦塞ぎ材、44…縦塞ぎ材、44B…縦塞ぎ材、44C…縦塞ぎ材、45…不燃材、46…不燃材、50…カバー材、51…上カバー材、52…下カバー材、53…縦カバー材、54…縦カバー材、55…バックアップ材、56…シール材、57…ブラケット、58…ブラケット、60…化粧材、61…上化粧材、62…下化粧材、63…縦化粧材、64…縦化粧材、70…外部見切り材、71…水切り材、72…シール受け板、75…バックアップ材、76…シール材、77…バックアップ材、78…シール材、261…係止片、262…連結片、271…連結片、272…固定片、411…室内面部、412…連結面部、413…固定面部、414…下面部、421…見込み面部、421B…見込み面部、422…見付け面部、422B…第1見付け面部、423B…第2見付け面部、431…見込み面部、432…見付け面部、441…見込み面部、442…見付け面部、511…見込み面部、512…見付け面部、513…受け面部、S1…隙間、S2…隙間。
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