IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-防火改装窓構造 図1
  • 特許-防火改装窓構造 図2
  • 特許-防火改装窓構造 図3
  • 特許-防火改装窓構造 図4
  • 特許-防火改装窓構造 図5
  • 特許-防火改装窓構造 図6
  • 特許-防火改装窓構造 図7
  • 特許-防火改装窓構造 図8
  • 特許-防火改装窓構造 図9
  • 特許-防火改装窓構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】防火改装窓構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230425BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/56 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019217912
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088812
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 慎平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-040943(JP,A)
【文献】実開昭58-086884(JP,U)
【文献】特開2018-013004(JP,A)
【文献】特開2017-133194(JP,A)
【文献】特開2018-165472(JP,A)
【文献】特開2020-045641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠は、前記既設枠と前記新設枠との間に設置される塞ぎ材を介して躯体に固定され
前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備え、
前記上塞ぎ材および前記下塞ぎ材の左右の端面と、前記既設枠の左右の既設縦枠の内周面との間には隙間が形成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項2】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠は、前記既設枠と前記新設枠との間に設置される塞ぎ材を介して躯体に固定され、
前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材を備え、
前記左右の縦塞ぎ材の上下の端面と、前記既設枠の既設上枠および既設下枠の内周面との間には隙間が形成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項3】
既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、
前記新設サッシの新設枠は、前記既設枠と前記新設枠との間に設置される塞ぎ材を介して躯体に固定され、
前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材と、各塞ぎ材の長手方向の端面と前記既設枠との間に充填された不燃材と、で構成されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠は、スチール製であり、
前記塞ぎ材は、前記既設枠に固定されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠を貫通する躯体連結部材を前記躯体に固定し、
前記塞ぎ材は、前記躯体連結部材によって前記躯体に固定されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防火改装窓構造において、
前記既設枠を貫通する躯体連結部材を前記躯体に固定し、
前記塞ぎ材は、前記躯体連結部材に固定されていることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の防火改装窓構造において、
前記塞ぎ材は、
前記新設枠に固定された第1塞ぎ材と、
前記第1塞ぎ材に連結されて躯体側に固定される第2塞ぎ材と、
を備えることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の防火改装窓構造において、
記上塞ぎ材、前記下塞ぎ材、左右の前記縦塞ぎ材は四周連続していることを特徴とする防火改装窓構造。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の防火改装窓構造において、
前記新設サッシは、前記新設枠と、前記新設枠の内周側に配置される新設障子と、火災時に発泡して前記新設枠および前記新設障子の間を塞ぐ加熱発泡材とを備えることを特徴とする防火改装窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火改装窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に開示されたように、火災時に発泡する加熱発泡材を設けることで、防火認定を受けた引き違い窓、片引き窓、上げ下げ窓、開き窓等のサッシが開発されている。このため、新築のビルや住宅の開口に設置されるサッシとして、防火認定を受けた様々なサッシが用いられるようになった。特に、学校等の教育施設や、病院等の医療福祉施設、店舗などの商業施設等の非居住施設では、マンションなどの居住施設に比べて用いられる窓の種類が多い。このため、新築用の防火サッシとして、防火認定を受けた様々なサッシが用意され、ビルの新築時には、デザイン性や機能性に応じて、様々な種類の防火サッシを選択できるようになり、施主や設計者の要望に対応できるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、新築ビルだけでなく、老朽化したビルや住宅のサッシ部分を改装する場合も、新築時と同様に、様々な窓種の防火サッシに改装したいと要望されるようになった。
本発明の目的は、サッシ部分を改装する場合も、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる防火改装窓構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、前記新設サッシの新設枠は、前記既設枠と前記新設枠との間に設置される塞ぎ材を介して躯体に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防火改装窓構造によれば、様々な種類の防火サッシに改装できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態の防火改装窓構造を示す縦断面図である。
図2】第1実施形態の防火改装窓構造を示す横断面図である。
図3】第1実施形態の既設下枠および新設下枠を示す斜視図である。
図4】第1実施形態の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
図5】第1実施形態の新設障子を示す横断面図である。
図6】本発明の第2実施形態の既設下枠および新設下枠を示す縦断面図である。
図7】本発明の変形例を示す模式図である。
図8】本発明の変形例を示す模式図である。
図9】本発明の変形例の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
図10】本発明の変形例の既設枠および塞ぎ材の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態の防火改装窓構造を図1~3に基づいて説明する。
図1、2に示すように、第1実施形態の防火改装窓構造は、コンクリート製の躯体2の開口部に改装サッシ1を設置するものである。躯体2を有する建物は、居住用のマンションや戸建て住宅、非居住用の学校などの教育施設、庁舎などの公共施設、病院などの医療福祉施設、店舗などの商業施設も含むものである。
改装サッシ1は、躯体2に取り付けられた既設枠10と、既設枠10の内周側に設置された新設サッシ4とを備えて構成されている。
既設枠10は、躯体2に取り付けられていた既設サッシから既設障子を取り外し、躯体2に残存したものである。
新設サッシ4は、新設枠20内に新設障子5、6が引き違い可能に配置されることで引き違い窓として構成されている。
ここで、図1、2に示すX、Y、Z軸方向は互いに直交しており、X軸方向は改装サッシ1の上下方向、Y軸方向は改装サッシ1の左右方向、Z軸方向は改装サッシ1の見込み方向である。また、各断面図において、図面を見やすくするために、新設サッシ4の新設枠20や新設障子5、6の断面におけるハッチングは省略する場合がある。
【0009】
既設枠10は、既設上枠11、既設下枠12および左右の既設縦枠13、14を枠組みして構成されている。既設上枠11、既設下枠12、左右の既設縦枠13、14は、それぞれスチール製であり、躯体2の開口にモルタル3を介してそれぞれ固定されている。
なお、本実施形態の既設枠10は、FIX窓用の枠であるが、既設枠10の種類はFIX窓用に限定されず、引き違い窓や上げ下げ窓、開き窓等でもよく、特に限定されない。
また、モルタル3は、一般的には、既設枠10の外周面の全周に渡って躯体2との間に充填されるが、古い物件の一部では、モルタル3が詰まっていない箇所が部分的に存在する場合もある。本実施形態の改装サッシ1では、図3にも示すように、既設枠10の外周面の全周に渡ってモルタル3が充填されている。
既設枠10は、スチール製であり、躯体2にモルタル3で固定されているため、躯体2の一部と見なすことができる。
【0010】
新設サッシ4は、新設枠20と、新設障子5、6とを備えた防火性能を有する引き違い窓である。この新設サッシ4は、防火性能の認定を受けて新築ビルに組み込むことができる防火サッシと同一のサッシである。このため、本実施形態の新設サッシ4は、引き違い窓であるが、FIX窓、縦すべり出し窓、開き窓、内倒し窓、外倒し窓、すべり出し窓、段窓、連窓など、防火性能の認定を受けた様々な窓種の新設サッシを利用できる。
【0011】
新設枠20は、新設上枠21、新設下枠22および左右の新設縦枠23、24を枠組みして構成されている。
既設枠10と新設枠20との間には、耐火性を有するスチール材などで構成された不燃性の塞ぎ材40が設けられている。塞ぎ材40は、火炎の通過を遮ることで、前記隙間における遮炎性を確保する遮炎材としての機能と、新設枠20を躯体2である既設枠10に固定する連結部材としての機能とを兼ねている。
塞ぎ材40は、既設上枠11および新設上枠21間の隙間を塞ぐ上塞ぎ材41と、既設下枠12および新設下枠22間の隙間を塞ぐ下塞ぎ材42と、左右の既設縦枠13、14および新設縦枠23、24間の隙間を塞ぐ縦塞ぎ材43、44とを備える。
【0012】
上塞ぎ材41は、図1に示すように、既設上枠11の室内面と、新設上枠21の室内面とにねじ止めされている。具体的には、上塞ぎ材41は、既設上枠11の室内面にねじ止めされた室内面部411と、室内面部411の下端から室外側に延長された連結面部412と、連結面部412の室外側端縁から下方に延長されて新設上枠21の室内面にねじ止めされた固定面部413と、固定面部413の下端から室内側に延長された下面部414とを備える。上塞ぎ材41は、既設上枠11および新設上枠21の長手方向つまりY軸方向に沿って延長された長尺部材である。
さらに、新設上枠21の室外上端部と、既設上枠11とを連結するブラケット419が設けられている。このブラケット419は、新設上枠21の室外上端部と既設上枠11の下面とにそれぞれネジによって固定されている。なお、ブラケット419は、スチール製のアングル材であり、長尺材またはピース材で構成される。ブラケット419を長尺材で構成すれば、上塞ぎ材41と同様に、既設上枠11および新設上枠21を連結する連結部材と、これらの隙間を塞ぐ遮炎材として機能する。一方、ブラケット419をピース材で構成して、新設上枠21の長手方向に沿って複数設けた場合は、遮炎材としては機能しないが、連結部材として機能する。
新設上枠21は、前述した上塞ぎ材41およびブラケット419を介して既設上枠11およびモルタル3、つまり躯体2に固定されている。このため、上塞ぎ材41およびブラケット419を既設上枠11に固定するネジは、既設上枠11からモルタル3にねじ込まれている。このように構成すれば、新設上枠21の室外側および室内側を、それぞれブラケット419および上塞ぎ材41で既設上枠11に連結できるため、新設上枠21の連結強度を向上でき、新設上枠21を安定して固定できる。
【0013】
下塞ぎ材42は、図1、3に示すように、新設下枠22にねじ止めされる第1塞ぎ材である第1下塞ぎ材420と、既設下枠12にねじ止めされる第2塞ぎ材である第2下塞ぎ材425との2つの部材で構成されている。第1下塞ぎ材420および第2下塞ぎ材425は、既設下枠12および新設下枠22の長手方向つまりY軸方向に沿って延長された長尺部材である。
第1下塞ぎ材420は、図3に示すように、新設下枠22の室内面にねじ止めされる室内面部421と、室内面部421の上端から室内側に延出された上面部422と、室内面部421の下端から室外側に延長された連結面部423と、連結面部423の室外側端縁から下方に延長された固定面部424とを備える。
第2下塞ぎ材425は、見付け面部426と、見込み面部427とを備えて断面略L字状に形成されている。見込み面部427は、既設下枠12の上面にねじ止めされている。見付け面部426は、見込み面部427の室外側端縁から上方に延長されている。第1下塞ぎ材420の固定面部424と、第2下塞ぎ材425の見付け面部426とは、Y軸方向に沿って設けられた複数のネジによって連結固定されている。
【0014】
さらに、室内面部421と既設下枠12とを連結するブラケット429が設けられている。ブラケット429は、スチール製のアングルを切断して構成されたピース材であり、室内面部421および既設下枠12の長手方向に沿って複数設けられている。このブラケット429は、第1下塞ぎ材420の室内面部421と、既設下枠12の上面とにそれぞれネジによって固定されている。このように、ブラケット429を設ければ、新設下枠22の室外側および室内側を、それぞれ下塞ぎ材42およびブラケット429で既設下枠12に連結できるため、新設下枠22の連結強度を向上でき、新設下枠22を安定して固定できる。なお、ブラケット429は、長尺材で構成してもよい。この場合、下塞ぎ材42に加えてブラケット429も遮炎材として機能するため、遮炎性能を向上できる。
新設下枠22は、前述した下塞ぎ材42およびブラケット429を介して既設下枠12およびモルタル3、つまり躯体2に固定されている。このため、下塞ぎ材42およびブラケット429を既設下枠12に固定するネジは、既設下枠12からモルタル3にねじ込まれている。このように構成すれば、新設下枠22の室外側および室内側を、それぞれ下塞ぎ材42およびブラケット429で既設下枠12に連結できるため、新設下枠22の連結強度を向上でき、新設下枠22を安定して固定できる。
【0015】
縦塞ぎ材43、44は、図2に示すように、既設縦枠13、14の室内面と、新設縦枠23、24の室内面とにねじ止めされている。具体的には、縦塞ぎ材43、44は、既設縦枠13、14の室内面にねじ止めされた室内面部431、441と、室内面部431、441の内周側端縁から室外側に延長された見込み面部432、442と、見込み面部432、442の室外側端縁から新設縦枠23、24の室内面に沿って延長されて新設縦枠23、24の室内面にねじ止めされた見付け面部433、443と、見付け面部433、443の内周側端縁から室内側に延長された内周面部434、444とを備えて形成されている。縦塞ぎ材43、44は、既設縦枠13、14および新設縦枠23、24の長手方向つまりX軸方向に沿って延長された長尺部材である。
さらに、新設縦枠23、24の室外外周部と、既設縦枠13、14とは直接ネジで固定されている。このため、新設縦枠23、24の室外側および室内側は、直接、および、前述した縦塞ぎ材43、44を介して、既設縦枠13、14およびモルタル3、つまり躯体2に固定されている。このように構成すれば、新設縦枠23、24の室外側および室内側を、それぞれ直接および縦塞ぎ材43、44で既設縦枠13、14に連結できるため、既設縦枠13、14の連結強度を向上でき、既設縦枠13、14を安定して固定できる。
【0016】
これらの上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44は、不燃性のスチール材等の鋼材で構成され、図4の模式図に示すように、既設枠10の内周面に沿って配置されている。なお、上塞ぎ材41および下塞ぎ材42と、縦塞ぎ材43、44との間や、縦塞ぎ材43、44と既設縦枠13、14との間には、施工性の向上や火災時の熱伸び等を考慮した隙間S1、S2が設定されている。
例えば、隙間S1、S2として1mm程度の隙間を設ければ、各塞ぎ材41~44を容易に配置でき、施工性を向上できる。また、各塞ぎ材41~44が火災時の熱で熱伸びする場合、その熱伸びを考慮した寸法で隙間S1、S2を設定すれば、施工性の向上に加えて熱伸び時に各塞ぎ材41~44に大きな応力が加わることを防止できる。なお、熱伸びを考慮した寸法は、各塞ぎ材41~44の材質に基づく線膨張係数と、長さ寸法とに基づいて設定すればよく、例えば、10mm以下、好ましくは7mm~10mm程度に設定すれば良い。
本実施形態の塞ぎ材40は、上下の上塞ぎ材41、下塞ぎ材42間に、左右の縦塞ぎ材43、44が配置されている。このため、左右の縦塞ぎ材43、44の上面と、上塞ぎ材41の下面との間や、縦塞ぎ材43、44の下面と、下塞ぎ材42の上面との間には、熱伸びを吸収するための隙間S1が設けられている。すなわち、隙間S1は、左右の縦塞ぎ材43、44が火災時の熱で熱伸びする寸法に応じて設定される。なお、隙間S1は、縦塞ぎ材43、44の上面および下面の両方に形成されるものに限定されず、片方のみ、例えば、縦塞ぎ材43、44の上面と上塞ぎ材41との間のみに隙間S1を形成してもよい。
本発明において、塞ぎ材40は、火災時に既設枠10および新設枠20間を火炎が通過しないように遮ることができればよい。したがって、塞ぎ材40が四周連続するように配置されているとは、少なくとも火災時には、熱伸びした上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44が互いに当接して四周連続するように配置されていればよく、火災が発生していない通常時に前記熱伸び用の隙間S1が形成されるように配置されているものを含む。また、火災時に既設枠10および新設枠20間の隙間を塞ぐように塞ぎ材40が四周連続して配置されるとは、各塞ぎ材41~44が当接する場合だけでなく、遮炎性能に影響しない僅かな隙間は残っている場合も含む。
さらに、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42も熱伸びするため、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右両端面と、既設縦枠13、14との間にも隙間S2を形成している。隙間S2は、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42が火災時の熱で熱伸びする寸法に応じて設定されている。この隙間S2も、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右いずれか一方の端面側のみに形成してもよい。
また、前記隙間S1、S2の一方の隙間だけを設けてもよいし、隙間S1、S2の両方の隙間を無くしてもよい。例えば、塞ぎ材40の長手方向の寸法が短いために熱伸びの影響が小さい場合や、塞ぎ材40が熱伸びしにくい材料で構成されている場合には、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44を予め当接させてもよいし、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42の左右両端面と、既設縦枠13、14とを予め当接させてもよい。
【0017】
新設枠20の室内側には、塞ぎ材40を隠すために、カバー材50が取り付けられる。カバー材50は、上カバー材51、下カバー材52、縦カバー材53、54を備える。
また、既設枠10の室内側には、既設枠10が取り付けられていた開口表面を覆う化粧材60が設けられている。化粧材60は、上化粧材61、下化粧材62、縦化粧材63、64を備えている。
【0018】
上カバー材51は、上塞ぎ材41の下面部414にねじ止めされる見込み面部511と、見込み面部511から上方に延出された見付け面部512と、見付け面部512の上端から室外側に折り返された受け面部513とを備える。受け面部513は、上化粧材61との隙間に充填されるバックアップ材55およびシール材56を支持するために設けられる。
【0019】
下カバー材52、縦カバー材53、54は、上カバー材51と同一または同様の形状の部品であるため、説明を省略する。
下カバー材52は、下塞ぎ材42の上面部422にねじ止めされている。縦カバー材53、54は、縦塞ぎ材43、44の内周面部434、444にねじ止めされている。
これらの下カバー材52、縦カバー材53、54と、下化粧材62、縦化粧材63、64との間にも、バックアップ材55およびシール材56が充填されている。
【0020】
新設上枠21の室外面には、外部見切り材70が取り付けられている。また、新設下枠22の室外面には、水切り材71がねじ止めされている。水切り材71の左右両端部には、シール受け板72が取り付けられている。
外部見切り材70、水切り材71と、躯体2の室外側に設けられた外壁材7との間には、シール材76が充填されている。
すなわち、図1に示すように、新設上枠21に取り付けられた外部見切り材70と、外壁材7との間には、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。また、水切り材71の下端部と、躯体2との間にも、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。
図2に示すように、新設縦枠23、24と、外壁材7の側面との間にも、バックアップ材75およびシール材76が充填されている。この新設縦枠23、24と外壁材7の側面との間に充填されたバックアップ材75、シール材76は、水切り材71のシール受け板72と外壁材7の側面との間にも連続して充填されている。
【0021】
図1に示すように、新設枠20と外部見切り材70との接合部分にも、バックアップ材77およびシール材78が充填されている。具体的には、図1に示すように、外部見切り材70と新設上枠21との接合部分は、外部見切り材70および新設上枠21で囲まれる凹溝とされ、この凹溝にバックアップ材77およびシール材78が充填されている。
また、水切り材71と新設下枠22との接合部分も、水切り材71および新設下枠22で囲まれる凹溝とされ、この凹溝にバックアップ材77およびシール材78が充填されている。
【0022】
新設障子5、6は、引き違い窓用の障子である。また、新設枠20および新設障子5、6を備える新設サッシ4は、防火性能を有する引き違い窓であり、防火認定を受けるために必要な構成、例えば火災時に膨張して火炎を遮蔽する加熱発泡材などが適宜設けられている。
図5は、改装用に用いられる新設障子5、6の一例を示す横断面図である。図5に示す新設障子5、6は、図示略の上框および下框と、戸先框81と、召合せ框82とを方形枠状に組み、その枠内に網入りガラス83と、Low-Eガラス84とを組み込んで構成されている。
各召合せ框82には、スチール製の補強材85が全長に渡って配置され、補強材85には加熱発泡材86が全長に渡って接着されている。室内側の新設障子6の召合せ框82には、Low-Eガラス84の外周面に対向する加熱発泡材86が接着されている。加熱発泡材86は、戸先框81にもそれぞれ接着されている。また、図示は省略するが、上框や下框にも加熱発泡材が接着されている。
さらに、召合せ框82の互いの対向面には、加熱発泡材86に比べてより低い温度で発泡する低温発泡タイプの加熱発泡材87が接着されている。また、図示は省略するが、下枠の表面や、下框において下枠のレールに対向する面にも低温発泡タイプの加熱発泡材が接着されている。
これらの加熱発泡材86、87は、火災時に発泡し、新設障子5、6と新設枠20との隙間や、召合せ框82間の隙間等を塞ぎ、火炎を遮断することができる。
【0023】
[改装作業]
次に、本実施形態の新設サッシ4の改装作業の一例について説明する。
新設サッシ4は、サッシの製造工場にて製造される。この際、サイズが小さいサッシのように、サッシ組した状態で改装現場まで納入できる場合は、製造工場でサッシ組を行って改装現場に納入する。一方、サイズが大きいサッシのように、サッシ組した状態では改装現場に納入できない場合は、部品付けまで製造工場で行い、施工現場でサッシ組を行う。なお、新設障子5、6へのガラスの取付作業は、改装現場で別途行われる。
【0024】
既設サッシが設置された改装現場では、既設の障子を取り外す。
次に、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44、ブラケット419を既設枠10およびモルタル3にねじ止めして固定する。
なお、下塞ぎ材42は、第2下塞ぎ材425を既設下枠12およびモルタル3にねじ止めした後、第1下塞ぎ材420を第2下塞ぎ材425にねじ止めすればよい。また、第2下塞ぎ材425は、既設下枠12、モルタル3にねじ止めし、第2下塞ぎ材425は新設下枠22にねじ止めしておき、新設枠20を既設枠10内に建て付けた際に、第1下塞ぎ材420および第2下塞ぎ材425をねじ止めして連結してもよい。
そして、新設枠20を既設枠10内に建て付ける。この際、新設枠20を位置決めして仮固定してもよい。また、ブラケット429は、新設枠20を既設枠10内に建て付ける前あるいは後に、既設下枠12にねじ止めする。
次に、塞ぎ材40と新設枠20とをねじ止めして固定する。具体的には、新設上枠21の室内側は、上塞ぎ材41の固定面部413から新設上枠21にネジを螺合する。また、新設上枠21の室外側は、新設上枠21からブラケット419にネジを螺合する。
新設下枠22の室内側は、ブラケット429、下塞ぎ材42の室内面部421を介して新設下枠22にネジを螺合する。新設下枠22の室外側は、第1下塞ぎ材420が予め第2下塞ぎ材425にねじ止めされている場合は、新設下枠22から第1下塞ぎ材420の固定面部424にネジを螺合する。また、新設下枠22に予め第1下塞ぎ材420がねじ止めされている場合は、下塞ぎ材42の固定面部424を第2下塞ぎ材425の見付け面部426に当接し、固定面部424から見付け面部426にネジを螺合する。
塞ぎ材40と新設枠20とをねじ止めすることにより、新設枠20は、連結部材および遮炎材を兼用する塞ぎ材40を介して、既設枠10つまり躯体2に固定される。
【0025】
次に、新設枠20の室外側の仕上げ作業と、室内側の仕上げ作業とを行う。室外側の仕上げ作業は、まず、新設枠20に、室外側から外部見切り材70、水切り材71をねじで取り付ける。そして、外部見切り材70、水切り材71と、外壁材7や躯体2との間にバックアップ材75、シール材76を充填する。また、外部見切り材70、水切り材71と、新設枠20との間に、バックアップ材77およびシール材78を充填する。これにより、改装サッシ1の室外側のシール施工を行い、室外側の仕上げ作業が完了する。
室内側の仕上げ作業は、塞ぎ材40を被覆する室内側のカバー材50を、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44にねじ止めする。そして、カバー材50と化粧材60との間にバックアップ材55、シール材56を充填してシール施工を行い、室内側の仕上げ作業が完了する。
その後、新設枠20内に新設障子5、6を組み込んで改装作業が完了する。
【0026】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態の防火改装窓構造によれば、新設サッシ4の新設枠20を、塞ぎ材40を介して躯体2に固定している。塞ぎ材40はスチール等で構成されて耐火性を有するため、防火性能を備える新設サッシ4を、耐火材を介して躯体2に直接固定して防火性能を有する改装サッシ1を構成できる。このため、新築のビルや住宅用に個別に防火認定を受けている様々な窓種の新設サッシ4を、塞ぎ材40を用いて躯体2に連結すれば、様々な窓種の改装サッシ1を防火仕様とすることができる。したがって、第1実施形態によれば、既設サッシを改装する際に、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる。
また、塞ぎ材40は、既設枠10および新設枠20間の隙間を塞ぐ遮炎材と、新設枠20を躯体2に連結する連結部材とを兼用するため、遮炎材と連結部材とを別々に設ける場合に比べて、部品数も少なくできて防火改装窓構造を簡易化でき、コストも低減できる。
さらに、塞ぎ材40を用いて新設枠20を躯体2に固定するため、既設枠10の種類や形状などに合わせて新設枠20を構成する必要が無く、新築用の新設サッシ4をそのまま利用することができる。
さらに、新設枠20を既設枠10に合わせて構成していないので、既設枠10および新設枠20間に隙間が生じる場合があるが、既設枠10および新設枠20間の隙間を塞ぐ塞ぎ材40を設けたので、既設枠10および新設枠20間の隙間部分の防火性能も確保できる。
したがって、防火性能を有する改装サッシ1を容易に構成でき、かつ、改装サッシ1の新設サッシ4は、新築用に防火認定を受けたサッシを利用できるため、改装専用のサッシを用いる場合に比べて、低コストで様々な窓種の改装サッシ1を構成できる。
【0027】
塞ぎ材40を構成する上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44は、施工作業性や火災時の熱伸び等を考慮した隙間S1を介して配置されるため、施工作業性を向上でき、火災時の熱によって上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44が熱伸びした際には、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44間の隙間を無くして四周連続する塞ぎ材40を構成できる。このため、確実に遮炎できて改装サッシ1の防火性能も向上できる。
【0028】
塞ぎ材40を新設枠20および躯体2にネジで固定しているので、改装現場での溶接作業を不要にでき、改装作業性を向上できる。
また、下塞ぎ材42を、第1下塞ぎ材420および第2下塞ぎ材425の2部材で構成したので、新設下枠22や既設下枠12の構造や形状などに応じて、第1下塞ぎ材420や第2下塞ぎ材425を適宜選択して組み合わせることもでき、下塞ぎ材42を介して新設下枠22および既設下枠12を容易にかつ確実に連結できる。
【0029】
[第2実施形態]
第2実施形態の改装サッシ1Bについて、図6に基づいて説明する。
改装サッシ1Bは、既設枠10Bがアルミサッシである点と、アルミ製の既設枠10Bに応じて塞ぎ材40Bの形状、例えば、下塞ぎ材42Bの形状が前記実施形態と異なる点で前記実施形態と相違する。なお、図6では、既設下枠12B、新設下枠22を図示しているが、図示しない他の既設上枠、既設縦枠も同様にアルミ製である。モルタル3は、既設枠10Bの全周に渡って充填されていてもよいし、一部にモルタル3が充填されていない箇所が存在してもよい。
【0030】
アルミ製の既設枠10Bは、図6に示すように、引き違い窓用の既設枠である。このため、既設下枠12Bは、室外側レール101と、室内側レール102とを備える。この既設枠10Bは、躯体2に埋め込まれたアンカープレート28に取り付けられている。すなわち、改装前の既製サッシにおいて、既設枠10Bは、アンカープレート28を介して躯体2に固定されている。
そして、新設枠20(図6では新設下枠22)を固定する下塞ぎ材42Bは、既設枠10B(図6では既設下枠12B)から躯体2まで形成された下穴に挿入、固定される躯体連結部材であるフィッシャープラグ30Cによって、躯体2に固定されている。
【0031】
下塞ぎ材42Bは、新設下枠22にねじ止めされる第1下塞ぎ材420Bと、既設下枠12Bにねじ止めされる第2下塞ぎ材425Bとの2つの部材で構成されている。第1下塞ぎ材420Bおよび第2下塞ぎ材425Bは、既設下枠12および新設下枠22の長手方向つまりY軸方向に沿って延長された長尺部材である。
第1下塞ぎ材420Bは、第1実施形態の第1下塞ぎ材420と同様に、新設下枠22の室内面にねじ止めされる室内面部421と、室内面部421の上端から室内側に延出された上面部422と、室内面部421の下端から室外側に延長された連結面部423と、連結面部423の室外側端縁から延長されて新設下枠22や第2下塞ぎ材425に固定される固定面部424とを備える。
ただし、固定面部424は、新設下枠22と第2下塞ぎ材425とに連結される位置が見込み方向に異なっているため、新設下枠22にねじ止めされる第1固定面部424Aと、第2下塞ぎ材425の見付け面部426にねじ止めされる第2固定面部424Bと、第1固定面部424Aおよび第2固定面部424Bを連結する連結片部424Cとを備え、略Z字状に形成されている。
【0032】
第2下塞ぎ材425Bは、第1実施形態の第2下塞ぎ材425と同様に、見付け面部426と、見込み面部427とを備え、断面略L字状に形成されている。また、第2下塞ぎ材425Bは、既設上枠や既設下枠12Bの室外側レール101と室内側レール102との間に配置されている。
見込み面部427は、躯体連結部材であるフィッシャープラグ30Cによって躯体2に固定されている。見付け面部426は、第2固定面部424Bにねじ止めされている。上塞ぎ材や縦塞ぎ材も、図示は省略するが、アルミ製の既設枠10Bに応じた形状とされている。
【0033】
改装サッシ1Bの改装作業は、塞ぎ材40Bをフィッシャープラグ30C等の躯体連結部材で躯体2に固定する点を除き、前記第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、改装サッシ1Bでは、フィッシャープラグ30Cの代わりに、ホールインアンカーやコンクリートねじを用いてもよい。
【0034】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態の改装サッシ1Bによれば、前記実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、塞ぎ材40B(下塞ぎ材42B)を新設枠20に取り付け、塞ぎ材40B(下塞ぎ材42B)はフィッシャープラグ30Cを介して躯体2に固定している。塞ぎ材40Bは、既設枠10Bおよび新設枠20間の隙間を塞ぐ遮炎材と、新設枠20を躯体連結部材であるフィッシャープラグ30Cを介して躯体2に連結する連結部材とを兼用するため、遮炎材と連結部材とを別々に設ける場合に比べて、部品数も少なくできて防火改装窓構造を簡易化でき、コストも低減できる。
また、第2下塞ぎ材425Bを室外側レール101、室内側レール102間に配置しているので、第2下塞ぎ材425Bをフィッシャープラグ30Cで躯体2に固定する際に、第2下塞ぎ材425Bの回転を室外側レール101、室内側レール102で規制して防止できる。このため、第2下塞ぎ材425Bをフィッシャープラグ30Cで固定する作業を容易にでき、改装作業性を向上できる。
【0035】
[変形例]
本発明は、以上の各実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記第1実施形態では、塞ぎ材40を既設枠10およびモルタル3にねじ止めしていたが、スチール製の既設枠10は躯体と見なせるので、塞ぎ材40を既設枠10に溶接などで固定してもよい。
また、第2実施形態では、塞ぎ材40Bをフィッシャープラグ30C等の躯体連結部材で躯体2に固定していたが、図7、8に示すように、ホールインアンカー30D等で既設下枠上にプレート31を固定し、このプレート31に塞ぎ材40Cをネジで固定したり、溶接で固定してもよい。すなわち、プレート31付きの躯体連結部材を、既設枠10を貫通して躯体2に固定し、躯体連結部材のプレート31に、塞ぎ材40をネジや溶接で固定してもよい。
【0036】
本発明において、新設枠20が塞ぎ材40、40Bを介して固定される躯体としては、コンクリートやモルタルに限定されず、ALCパネルや鉄骨などでもよく、躯体として利用可能な不燃材料であればよい。このため、図7、8では、既設枠を含めた躯体2Cの種類が限定されないことを示すため、躯体2Cを模式的に記載している。
【0037】
塞ぎ材40は、図4に示す構成に限定されない。例えば、縦塞ぎ材43、44の上下両端を、既設上枠11、既設下枠12に当接あるいは隙間を設けて近接させ、縦塞ぎ材43、44間に上塞ぎ材41、下塞ぎ材42を配置してもよい。
また、塞ぎ材40は、少なくとも火災時に四周連続するように構成されていればよい。したがって、前記各実施形態のように、上塞ぎ材41、下塞ぎ材42、縦塞ぎ材43、44の4本の鋼材で構成されるものに限定されない。
例えば、図9に示すように、上塞ぎ材41D、下塞ぎ材42D、縦塞ぎ材43D、44Dの4本の鋼材と、上塞ぎ材41D、下塞ぎ材42D、縦塞ぎ材43D、44Dの長手方向の端面および既設枠10間の隙間に充填されたモルタルやロックウール、アルミテープなどの不燃材45とを備えて塞ぎ材40Dを構成してもよい。なお、縦塞ぎ材43D、44Dの上端面が上塞ぎ材41Dの下面よりも低く、縦塞ぎ材43D、44Dの下端面が下塞ぎ材42Dの上面よりも高い位置に設定しているので、火災時に上塞ぎ材41D、下塞ぎ材42D、縦塞ぎ材43D、44Dが熱伸びしても、各鋼材は互いに干渉しない。
また、図10に示すように、上塞ぎ材41Eおよび下塞ぎ材42Eを複数個(図10では3個)の鋼材で構成し、各鋼材間の隙間に不燃材46を充填した塞ぎ材40Eを用いてもよい。なお、図10では、縦塞ぎ材43E、44Eは、塞ぎ材40Dと同じく1本の鋼材で構成したが、上塞ぎ材41E、下塞ぎ材42Eと同様に、複数の鋼材と、鋼材間に充填される不燃材とで構成してもよい。
不燃材45、46は、鋼材が熱伸びした場合に圧縮され、鋼材の熱伸びを吸収できる。このため、火災前の状態でも、塞ぎ材40D、40Eは、各鋼材および不燃材45、46を隙間無く配置して四周連続させることができる。また、不燃材45、46は、モルタルやロックウール、アルミテープであるため、火災時に焼失することがなく、火災時も、鋼材および不燃材45、46を四周連続させることができ、既設枠10および新設枠20間の隙間を確実に遮炎することができる。
なお、塞ぎ材40D、40Eは、連結部材を兼用するため、新設サッシ4を支持可能な強度を確保できる寸法を備えていればよい。
【0038】
塞ぎ材は、既設枠10および新設枠20間の隙間を完全に塞ぐものに限らず、遮炎性を確保できるものであれば、隙間の一部を塞がないものでもよい。要するに、塞ぎ材は、既設枠10および新設枠20間における遮炎性を確保して、防火認定に必要な防火性能を確保でき、かつ、連結部材として機能するものであればよい。
【0039】
前記各実施形態では、下塞ぎ材42、42Bを、第1下塞ぎ材420、420Bおよび第2下塞ぎ材425、425Bの2部材で構成していたが、1部材で構成してもよいし、3部材以上で構成してもよい。例えば、ブラケット429を第1下塞ぎ材420と同じ長尺寸法で構成し、第1下塞ぎ材420、第2下塞ぎ材425、ブラケット429の3部品で下塞ぎ材42を構成してもよい。この場合、既設枠10および新設枠20間を、2重に塞ぐことができ、遮炎性を向上できる。
【0040】
前記各実施形態では、1つの新設サッシ4を既設枠10内に配置した改装サッシ1について説明したが、複数の新設サッシ4を方立や無目などの連結材で連結して連窓や段窓を構成してもよい。
【0041】
[発明のまとめ]
本発明の防火改装窓構造は、既設枠の内周に新設サッシを配置する防火改装窓構造であって、前記新設サッシの新設枠は、前記既設枠と前記新設枠との間に設置される塞ぎ材を介して躯体に固定されていることを特徴とする。
本発明によれば、新設サッシの新設枠を塞ぎ材を介して躯体に固定しているので、防火認定を受けている様々な窓種の新設サッシを、塞ぎ材を用いて躯体に固定すれば、様々な窓種の改装サッシを防火仕様とすることができ、既設サッシを改装する際に、新築時と同様に、様々な種類の防火サッシに改装できる。
また、塞ぎ材は、既設枠および新設枠間を塞ぐ遮炎材と、新設枠を躯体に連結する連結部材とを兼用するため、遮炎材と連結部材とを別々に設ける場合に比べて、部品数も少なくできて防火改装窓構造を簡易化でき、コストも低減できる。
【0042】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠は、スチール製であり、前記塞ぎ材は、前記既設枠に固定されていてもよい。
本発明によれば、スチール製の既設枠は、耐火性を有する躯体とみなせるので、塞ぎ材を既設枠に固定することで、新設枠を躯体に容易に固定することができる。
【0043】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠を貫通する躯体連結部材を前記躯体に固定し、前記塞ぎ材は、前記躯体連結部材によって前記躯体に固定されていてもよい。
本発明によれば、新設サッシの新設枠に塞ぎ材を取り付け、既設枠を貫通する躯体連結部材を躯体に固定し、躯体連結部材によって塞ぎ材を躯体に固定することで、新設サッシを塞ぎ材、躯体連結部材を介して躯体に固定することができる。このため、アルミ製の既設枠のように、既設枠自体を躯体と見なせない場合でも、新設枠を塞ぎ材、躯体連結部材を介して躯体に容易に固定できる。
【0044】
本発明の防火改装窓構造において、前記既設枠を貫通する躯体連結部材を前記躯体に固定し、前記塞ぎ材は、前記躯体連結部材に固定されていてもよい。
本発明によれば、新設サッシの新設枠に塞ぎ材を取り付け、既設枠を貫通する躯体連結部材を躯体に固定し、塞ぎ材を躯体連結部材に固定することで、新設サッシを塞ぎ材、躯体連結部材を介して躯体に固定することができる。このため、アルミ製の既設枠のように、既設枠自体を躯体と見なせない場合でも、新設枠を塞ぎ材、躯体連結部材を介して躯体に容易に固定できる。
【0045】
本発明の防火改装窓構造において、前記塞ぎ材は、前記新設枠に固定された第1塞ぎ材と、前記第1塞ぎ材に連結されて躯体側に固定される第2塞ぎ材と、を備えていてもよい。
本発明によれば、塞ぎ材を、第1塞ぎ材および第2塞ぎ材の2部材で構成したので、新設枠や既設枠の構造、形状などに応じて、第1塞ぎ材や第2塞ぎ材を適宜選択して組み合わせることができ、塞ぎ材を介して新設枠および既設枠を容易にかつ確実に連結できる。
【0046】
本発明の防火改装窓構造において、前記塞ぎ材は、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材で構成され、前記上塞ぎ材、前記下塞ぎ材、左右の前記縦塞ぎ材は四周連続していることが好ましい。
本発明によれば、塞ぎ材を、上塞ぎ材、下塞ぎ材、左右の縦塞ぎ材で構成し、これらを四周連続して配置したので、新設枠および既設枠間の隙間を四周連続して塞ぐことができ、防火性能を向上できる。
【0047】
本発明の防火改装窓構造において、前記新設サッシは、前記新設枠と、前記新設枠の内周側に配置される新設障子と、火災時に発泡して前記新設枠および前記新設障子の間を塞ぐ加熱発泡材とを備えることが好ましい。
本発明によれば、加熱発泡材を設けることで防火性能を確保するため、防火性能を有する新設サッシを安価に提供できる。
【符号の説明】
【0048】
1…改装サッシ、1B…改装サッシ、2…躯体、2C…躯体、3…モルタル、4…新設サッシ、5…新設障子、6…新設障子、7…外壁材、10…既設枠、10B…既設枠、11…既設上枠、12…既設下枠、12B…既設下枠、13…既設縦枠、14…既設縦枠、20…新設枠、21…新設上枠、22…新設下枠、23…新設縦枠、24…新設縦枠、28…アンカープレート、30C…フィッシャープラグ、30D…ホールインアンカー、31…プレート、40…塞ぎ材、40B…塞ぎ材、40C…塞ぎ材、40D…塞ぎ材、40E…塞ぎ材、41…上塞ぎ材、41D…上塞ぎ材、41E…上塞ぎ材、42…下塞ぎ材、42B…下塞ぎ材、42D…下塞ぎ材、42E…下塞ぎ材、43…縦塞ぎ材、43D…縦塞ぎ材、43E…縦塞ぎ材、44…縦塞ぎ材、44D…縦塞ぎ材、44E…縦塞ぎ材、45…不燃材、46…不燃材、50…カバー材、51…上カバー材、52…下カバー材、53…縦カバー材、54…縦カバー材、55…バックアップ材、56…シール材、60…化粧材、61…上化粧材、62…下化粧材、63…縦化粧材、64…縦化粧材、70…外部見切り材、71…水切り材、72…シール受け板、75…バックアップ材、76…シール材、77…バックアップ材、78…シール材、81…戸先框、82…召合せ框、83…網入りガラス、84…Low-Eガラス、85…補強材、86…加熱発泡材、87…加熱発泡材、101…室外側レール、102…室内側レール、411…室内面部、412…連結面部、413…固定面部、414…下面部、419…ブラケット、420…第1下塞ぎ材、420B…第1下塞ぎ材、421…室内面部、422…上面部、423…連結面部、424…固定面部、424A…第1固定面部、424B…第2固定面部、424C…連結片部、425…第2下塞ぎ材、425B…第2下塞ぎ材、426…見付け面部、427…見込み面部、429…ブラケット、431…室内面部、432…見込み面部、433…見付け面部、434…内周面部、441…室内面部、442…見込み面部、443…見付け面部、444…内周面部、511…見込み面部、512…見付け面部、513…受け面部、S1…隙間、S2…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10