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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】反重力式金型充填方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 27/04 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
B22D27/04 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019556259
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018036402
(87)【国際公開番号】W WO2018226922
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2019-10-11
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】15/618,852
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505077183
【氏名又は名称】メタル キャスティング テクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】シェンダイ サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミカリク ジュニア ジョセフ シー
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】田々井 正吾
【審判官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-534136(JP,A)
【文献】特開2003-311390(JP,A)
【文献】特開2004-025308(JP,A)
【文献】特開平08-224655(JP,A)
【文献】特開2008-254039(JP,A)
【文献】米国特許第3900064(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 27/00 - 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造および方向性凝固中に金型を静止状態に維持する反重力式鋳造方法であって、
金属を坩堝内で溶融するステップを含み、
前記坩堝を溶融位置から鋳造位置に動かすステップを含み、前記坩堝を動かす前記ステップは、
前記坩堝を溶融チャンバから充填チャンバに側方に動かすステップ、および
前記坩堝を上昇させて溶融金属を充填管に接触させるステップを含み、
前記充填管を通って前記溶融金属を前記金型中に上方に導入するステップを含み、
溶融金属を前記充填管から排出して前記坩堝に戻すステップを含み、
前記坩堝を前記溶融位置に動かすステップを含み、
サセプタを前記金型に対して動かして前記金型内における前記溶融金属の方向性凝固を生じさせるステップを含む、反重力式鋳造方法。
【請求項2】
プランジャを下降させて前記プランジャを前記金型の中央スプルーに係合させて前記金型を定位置に固定するステップをさらに含む、請求項1記載の反重力式鋳造方法。
【請求項3】
前記金属を坩堝内で溶融するステップの実施中、インターロックを閉じて前記溶融チャンバを前記充填チャンバから分離するステップをさらに含む、請求項1記載の反重力式鋳造方法。
【請求項4】
前記充填管を通って前記溶融金属を前記金型中に引き込むステップの実施に先立って、インターロックを閉じてサセプタチャンバを鋳造チャンバから分離するステップをさらに含む、請求項1記載の反重力式鋳造方法。
【請求項5】
前記充填管を通って前記溶融金属を前記金型中に引き込む前に前記金型を固定するステップと、前記金属を坩堝内で溶融するステップの実施中、インターロックを閉じて前記溶融チャンバを前記充填チャンバから分離するステップとをさらに含む、請求項2記載の反重力式鋳造方法。
【請求項6】
前記サセプタを前記金型に対して動かして前記金型内における前記溶融金属の方向性凝固を生じさせる前記ステップは、前記サセプタを制御されたペースで上昇させるステップを含む、請求項記載の反重力式鋳造方法。
【請求項7】
前記充填管を通って前記金型中に前記溶融金属を上方に導入する前記ステップは、充填チャンバと鋳造チャンバとの間に差圧を生じさせるステップをさらに含む、請求項1記載の反重力式鋳造方法。
【請求項8】
差圧を生じさせる前記ステップは、前記鋳造チャンバ内に真空状態を生じさせるステップを含む、請求項記載の反重力式鋳造方法。
【請求項9】
結晶粒ブロックおよび結晶粒セレクタが凝固した後、前記充填チャンバおよび前記鋳造チャンバ内の圧力を等しくするステップをさらに含む、請求項記載の反重力式鋳造方法。
【請求項10】
前記金型内の液体溶融物が凝固した後、前記充填チャンバおよび前記鋳造チャンバ内の圧力を等しくするステップをさらに含む、請求項記載の反重力式鋳造方法。
【請求項11】
反重力式鋳造装置であって、
側方および垂直に動くよう構成された坩堝と、
溶融チャンバと、
前記溶融チャンバに隣接して位置しかつ重力に関して全体として前記溶融チャンバの側方に配置された充填チャンバと、
全体として重力に関して前記充填チャンバの上方に位置決めされた鋳造チャンバと、
前記充填チャンバ内に位置決めされた充填管と、
前記鋳造チャンバ内に配置されたサセプタと、を有する、反重力式鋳造装置。
【請求項12】
前記鋳造チャンバ内に配置された金型を定位置に固定するよう位置決めされたプランジャをさらに有する、請求項11記載の反重力式鋳造装置。
【請求項13】
サセプタチャンバをさらに有し、前記サセプタは、前記鋳造チャンバと前記サセプタチャンバとの間で動くことができる、請求項11記載の反重力式鋳造装置。
【請求項14】
前記溶融チャンバと前記充填チャンバとの間に位置するインターロックをさらに有する、請求項13記載の反重力式鋳造装置。
【請求項15】
前記鋳造チャンバと前記サセプタチャンバとの間に位置するインターロックをさらに有する、請求項14記載の反重力式鋳造装置。
【請求項16】
前記充填チャンバと前記鋳造チャンバとの差圧を制御するための加圧入口をさらに有する、請求項15記載の反重力式鋳造装置。
【請求項17】
前記坩堝を前記溶融チャンバから前記充填チャンバまで並進させるためのキャリジをさらに有する、請求項16記載の反重力式鋳造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、金属鋳造のための方法および装置に関する。特に、本発明は、反重力式鋳造装置および方法に関する。さらに、本発明は、単結晶(SX)、方向性凝固(DS)および等軸多結晶法を用いて鋳造物を製造する反重力式鋳造装置および方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶の方向性凝固部品を鋳造するために用いられる合金、例えば高レニウム含有合金は、極めて高価となる場合がある。従来型の鋳造システムでは、溶融合金を頂部からスプルー(湯口)通路中に注ぎ込みまたは注入することによって溶融合金を金型に導入する。凝固中における縮みにより生じる鋳造部品の欠陥を最小限に抑えるため、方向性凝固を用いるのが良く、この場合、部品の凝固部分に生じる縮みにまだ凝固していない部品の一部分から合金を埋めるとともにスプルー中の溶融合金を埋め、それにより縮みを満たすために用いられる材料が補充される。これら従来型鋳造システムでは、合金は、スプルー内で凝固するのでかかる合金を完成部品から除去して破棄しまたは再利用しなければならない。
【0003】
高コスト合金の場合、鋳造プロセスに続き、スプルー中に残存している材料を最小限に抑えまたは減少させることが有利である。この要望に取り組む反重力式プロセスがヒッチナ・マニュファクチャリング・カンパニー(Hitchiner Manufacturing Company)によって最初に開発され、この反重力式プロセスは、米国特許第3,863,706号明細書に開示されており、この米国特許を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。この米国特許に開示された反重力式プロセスでは、スプルーを底部から充填し、鋳造部品の凝固に続き、スプルー中の溶融金属が下方に流れ出て次の鋳造プロセスのために再び捕捉されるようになり、それにより鋳造部品1個当たりの総原価が減少する。部品1個当たりのコストのそれ以上の減少は、鋳造のためのサイクル時間を短縮することによって達成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3,863,706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反重力式金型充填プロセスおよび方法は、従来型鋳造方法および装置と比較して改良技術であるが、これまで、これらプロセスを実施するための設備は、垂直に差し向けられており、かかる設備は、40フィート(12.2m)以上にわたり上方に延びる場合がある。このために、これらプロセスは、延長された垂直空間を有する適当な場所でまたは設備の一部分を収容するためのピットが形成されている場所でしか実施できない。
【0006】
したがって、効率を向上させ、コストを減少し、設置場所の広い選択においてプロセスの使用を可能にし、しかもこれら方法および装置の使用を単結晶鋳造で実施できるようにするための技術改良が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の要望は、改良型反重力式金型充填方法および装置の諸観点が提供される本発明によって大いに満たされる。
【0008】
一観点では、本発明の方法および装置は、鋳造のスプルー内で凝固する合金を減少させるために反重力式成形を利用する。本発明の方法および装置はまた、凝固中における金型の振動を減少させた状態で反重力式鋳造物の方向性凝固を可能にし、それにより単結晶鋳造中における擬似結晶粒成長を減少させる。本発明の一観点によれば、鋳造および方向性凝固中、金型を静止状態に維持する反重力式鋳造方法が提供される。この方法は、金属を溶融チャンバ内の坩堝内で溶融するステップと、坩堝を溶融チャンバから鋳造チャンバに動かすステップとを含む。坩堝を溶融位置から鋳造位置に動かすステップは、坩堝を溶融チャンバから充填チャンバに側方に動かすステップおよび溶融金属を充填管に接触させるステップを含む。次に、坩堝を動かして溶融金属を充填管に接触させる。充填管を通って金型中に溶融金属を上方に導入する。次に、溶融金属を充填管から排出して坩堝に戻し、そして坩堝を充填管から遠ざける。次に、サセプタを金型に対して動かして金型内における溶融金属の方向性凝固が生じるようにする。このプロセスは、反応性の高いSX/DS合金を鋳造するのに好適である。
【0009】
本発明の別の観点では、鋳造および凝固中、金型を静止状態に維持する反重力式鋳造方法が提供される。この方法は、金属を溶融チャンバ内の坩堝の中で溶融するステップおよび坩堝を溶融チャンバから鋳造チャンバに動かすステップを含む。次に、坩堝を動かして溶融金属を充填管に接触させる。充填管から金型中に溶融金属を上方に導入する。次に、溶融金属を充填管から排出して坩堝に戻し、そして坩堝を充填管から遠ざける。次に、サセプタを金型に対して動かして金型内での溶融金属の等軸多結晶凝固を生じさせる。このプロセスは、他の合金に加えて超合金を鋳造するのに好適である。
【0010】
本発明の別の観点では、反重力式鋳造装置が提供され、この反重力式鋳造装置は、溶融チャンバと、溶融チャンバに隣接して位置しかつ重力に関して溶融チャンバの全体として側方にずらされて位置する充填チャンバと、全体として重力に関して充填チャンバの上方に位置決めされた鋳造チャンバとを有する。充填管が充填チャンバ内に位置決めされ、プランジャが鋳造チャンバ内に配置された金型を定位置に固定するために位置決めされている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の観点に従って鋳造作業の実行に先立って、坩堝、サセプタ、およびプランジャを示す反重力装置の部分切除斜視図である。
図2】鋳造作業を実施する前に坩堝を中間位置で示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図3】鋳造作業を実施するためにプランジャを定位置で示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図4】鋳造作業を実施するために坩堝を定位置で示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図5】鋳造作業の実施中、サセプタを部分上昇位置で示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図6】鋳造作業の実施に続き、サセプタおよびプランジャを完全上昇位置で示すとともに坩堝を中間位置で示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図7】鋳造のために坩堝に金属を再装填するために坩堝がその初期位置にもたらされた状態を示す図1の反重力式鋳造装置の部分切除斜視図である。
図8】本発明の第1の観点に従って図1の反重力式鋳造装置で使用される金型の斜視図である。
図9】本発明の別の観点に従って図1の反重力式鋳造装置で用いられる金型の斜視図である。
図10】本発明のさらに別の観点に従って図1の反重力式鋳造装置で用いられる金型の斜視図である。
図11】本発明のさらに別の観点に従って図1の反重力式鋳造装置で用いられる金型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図を参照すると、同一の参照符号が図全体を通じて同一の要素を指しており、図1には、本発明の第1の観点による反重力式鋳造装置10が示されている。反重力式鋳造装置は、4つの主要なチャンバ、すなわち、溶融チャンバ12、重力に対して全体として溶融チャンバの側方に配置された充填チャンバ14、充填チャンバに隣接してかつ全体として重力に関して充填チャンバの上方に配置された鋳造チャンバ16、および重力に関して全体として鋳造チャンバの上方に配置されたサセプタチャンバ18で構成されている。以下に説明するように、動くことができる可動インターロック20が鋳造プロセスの互いに異なる段階の間、溶融チャンバ12を充填チャンバ14から分離するために設けられている。インターロック20の一機能は、溶融プロセス中における溶融チャンバ12の断熱である。充填チャンバ14は、ベースプレート22によって鋳造チャンバ16から隔てられており、このベースプレートにより、以下に説明するように、充填チャンバ14と鋳造チャンバ20との間に圧力差を生じさせることができる。
【0013】
図示のように、反重力式鋳造装置10は、溶融チャンバ12と充填チャンバ14との間で並進するキャリジ24を有する。坩堝28をキャリジ24上に設けられた坩堝28を昇降させるリフト26がキャリジ24に結合されている。坩堝28は、好ましくは、金属、例えばアルミナで作られたセラミック坩堝である。溶融コイル30が坩堝を加熱して坩堝内に配置されている鋳造合金を溶融し、それにより鋳造のために溶融金属32を生じさせるよう坩堝28を包囲している。エンクロージャ34が坩堝28を包囲しており、以下に説明するように、入口36を通ってエンクロージャ34内の圧力を増減することができる。キャリジ24に取り付けられた案内ロッド38がエンクロージャ34および坩堝28を上昇させているときにこれらを案内する。
【0014】
図1に示されているように、充填チャンバは、充填管40を有する。また、図1に示されているように、鋳造チャンバ16は、方向性凝固を促進するようベースプレート22の頂部上に配置されたチルプレート42を有する。本発明の好ましい観点では、チルプレート42は、銅またはこのような他の熱伝導性材料で作られた水冷式チルプレートである。中央スプルーまたは湯口44が充填管40の頂部上に載っており、中央スプルー44と充填管40は、チルプレート42およびベースプレート22を貫通して連結されている。セラミックマウントおよびシール46が中央スプルー44を充填チャンバ14と鋳造チャンバ16との間に封止可能に取り付けることができるよう設けられており、その結果、充填チャンバ14内の圧力を鋳造チャンバ16内の圧力に対して変化させることができるようになっている。
【0015】
1つまたは2つ以上の金型48が以下に説明する1つまたは2つ以上のコンポーネントおよび方法を用いて反重量式鋳造を可能にするよう中央スプルーに流体結合されている。本発明の一観点では、金型48は、円筒形中央スティック44を有し、鋳造されるべき部品は、スティック上で適当な結晶セレクタと組み立てられる。ある特定の単結晶多結晶幾何学的形状の場合、結晶粒セレクタは、既知の配列を備えた結晶である。
【0016】
サセプタコイル52が巻き付けられたサセプタ50が中央スプルー44および金型キャビティ44を包囲している。サセプタ50は、任意適当な材料、例えば黒鉛で構成できる。サセプタ50は、頂部に穴が設けられた状態で示されており、この穴の上には、プランジャ54が設けられ、このプランジャの機能については以下において説明する。ハウジング56が反重力式充填装置10を包囲するとともに溶融チャンバ12、充填チャンバ14、鋳造チャンバ16およびサセプタチャンバ18を形成している。本発明のある特定の観点では、このハウジング内には金型48を挿入したり取り出したりするとともに鋳造チャンバを封止する出入り口58が設けられている。また、ガスを導入したりまたはガスをチャンバから取り出したりするための入口60,62,64がハウジングに設けられている。
【0017】
次に、図1図11を参照して反重力式鋳造装置10の作動方法について説明する。図1に示されているように、坩堝28は、溶融チャンバ12内で始動し、この溶融チャンバ内で溶融コイル30が坩堝を加熱して鋳造のために溶融金属32を生じさせる。金属を溶融すると、インターロック20を開いてキャリジ24が図2に示されているように充填チャンバ14中に並進することができるようにする。図示されていないが、容易に認識されることとして、ヒンジを中心にして回転によってさせることによってインターロック20を開くことができまたはこのインターロックをハウジング56に設けられた開口部中に通すことができる。坩堝28が充填チャンバ内にあるとき、坩堝28を充填管40の下に整列させる。
【0018】
図3に示されているように、プランジャ54を下方に伸長させてサセプタ50に設けられている穴に通し、このプランジャは、中央スプルー44の頂部上に載り、それにより、中央スプルー44および金型48を固定する。このように、金型は、プランジャ54によって鋳造および冷却プロセス中、静止状態に保持される。プランジャ54は、中央スプルー44およびサセプタ50内の溶融金属の熱に耐えるようセラミック製の端部分64を有する。図示されていないが、容易に理解されることとして、プランジャ54は、油圧アクチュエータがハウジング56の頂部上に固定された状態でハウジング56の頂部に設けられた開口部を通って下方に延びる伸縮式ピストンラムであるのが良い。
【0019】
図4に示されているように、坩堝28を坩堝が充填管40の下を通る状態で溶融チャンバ12から充填チャンバ14の側方に動かす。坩堝28をリフト26によって上昇させて溶融金属32を充填管40に接触させるとともに坩堝28の頂部リップをベースプレート22の底部に設けられているOリング(図示せず)に封止接触させる。容易に理解されるように、坩堝28を充填管の下で下方に動かしているときに充填管40の底部と坩堝エンクロージャ34との間に最小限の隙間を提供することによって、装置10の全体的高さを減少させることができる。本発明の好ましい観点では、充填管40と坩堝エンクロージャ34との間の隙間は、エンクロージャの高さの1/3未満である。この好ましい開示内容では、単結晶/方向性凝固金型を鋳造する標準の手法の場合におけるようなピットの必要はない。これにより、設備の全体的高さが減少する。次に、入口62を通って充填チャンバ14を加圧し、入口60を通って鋳造チャンバ16内に真空を作ることにより、またはこれらの両方を行うことによって充填チャンバ14と鋳造チャンバ16との間に差圧を生じさせる。容易に理解されるように、充填チャンバ14内の圧力は、充填管40を通って金型中に溶融金属を上方に導入させるよう鋳造チャンバ16内の圧力よりも高くなければならない。
【0020】
図5に示されているように、金型を充填した後であってかつ結晶粒セレクタのある特定の部分の凝固させた後、充填チャンバ14と鋳造チャンバ16との差圧を減少させて中央スプルー44内に残っている溶融金属が出て坩堝28中に戻るようにすることができる。図6に示されているように、次に、プランジャ54を引っ込める。坩堝28を下降させてこれを図7に示されているように鋳造チャンバ16に戻すのが良く、その結果、坩堝28に合金を補充することができる。次に、サセプタ50およびサセプタコイル52をサセプタチャンバ18中に上昇させて鋳造物の冷却を可能にする。インターロック66を閉めて鋳造チャンバ16をサセプタチャンバ18から遮断し、それにより鋳造物が冷えてこれが鋳造チャンバ16から取り出されている間、サセプタ50の冷却を最小限に抑える。
【0021】
容易に理解されるように、インターロック66は、2つまたは3つ以上の区分の状態で設けられるのが良く、各区分に設けられた部分凹部によりインターロックをプランジャ54周りで閉じることができ、それにより鋳造チャンバ16をサセプタチャンバ18から封止することができる。この構成により、充填チャンバ14と鋳造チャンバ16とサセプタチャンバ18との間の圧力をそれぞれ独立の入口62,64,60経由で別々に制御することができる。
【0022】
坩堝28を下降させ、そしてこれに合金を補充するために図7に示されているように鋳造チャンバ12に戻す。容易に理解されるように、サセプタ50およびサセプタコイル52を上昇させる速度は、鋳造中の合金によって定められ、この速度は、方向性凝固を達成するよう選択される。容易に理解されるように、サセプタ50およびサセプタコイル52を上昇させることは、任意の従来手段によって達成でき、かかる手段としては、サセプタ50をプランジャ54にインターロックしまたはサセプタに固定された別個のピストンを提供することが挙げられる。好ましい観点では、プランジャ54は、中央スプルー44の頂部上に載るようサセプタ50の穴を通過する内側伸縮式ラムを含む。プランジャ54の外側スリーブの形態をした第2のラムがサセプタ50に係合し、この第2のラムを用いてサセプタ50を上昇させる。
【0023】
図7に示されているように、サセプタ50を完全に上昇させるとともに所望の方向性凝固を達成すると、反重力式鋳造装置10からの取り出しのために出入り口58を通って金型48への接近を可能にする。出入り口58は、鋳造プロセス中、鋳造チャンバ16の加圧を可能にするよう封止可能なドア68を備えている。
【0024】
また、溶融金属を金型48中に導入するための4つの好ましい機構体が図8図11に示されている。図8に示された第1の機構体では、溶融金属を管70に通して導入し、この管は、中央スプルー44の着座部分46を通って充填管40に流体結合されている。充填管70を通って溶融金属を金型48中に直接引き込む。結晶粒セレクタ72が金型48の底部のところに設けられており、この結晶粒セレクタは、チルプレート42上に載っている結晶粒セレクタブロック74に連結されており、それにより単結晶の方向性凝固が可能であるように金型48と結晶粒セレクタブロック74との流体結合が可能である。金型を上述の仕方により非乱流方式で底部充填することによって混入の減少を達成することができる。
【0025】
図9に示された別の機構体では、充填管70を通って溶融金属を結晶粒セレクタブロック74中に引き込む。結晶粒セレクタ72が金型48の底部のところに設けられており、この結晶粒セレクタは、チルプレート42上に載っている結晶粒ブロック74に連結されており、それにより単結晶の方向性凝固が可能であるよう金型48と結晶粒セレクタブロック74の流体結合が可能である。この実施形態では、金型48に結晶粒セレクタブロック74および結晶粒セレクタ72を通過した溶融金属を充填する。
【0026】
図10に示されている別の実施形態では、充填管70を通って溶融金属を金型48の頂部中に引き込む。金型は、方向性凝固または単結晶粒を生じさせるよう構成されている。さらに別の機構体では、溶融金属は、中央スプルー44を通って上昇して図11に示されているように下側供給枝部76を通って金型の底部で金型48に入る。金型は、等軸多結晶粒を生じさせるよう構成されている。上側供給枝部78を通って追加の溶融金属を金型48の頂部中に導入して縮みを埋める。金型を上述の仕方により非乱流方式で底部充填することによって混入の減少を達成することができる。加うるに、金型を加熱するようサセプタ50の使用に起因して得られる一貫した金型温度制御は、欠陥、例えば縮みによる巣(収縮孔)、気体発生、非充填部発生および冷え止まりを減少させるとともに鋳造物の品質を向上させることができる。
【0027】
溶融チャンバ12、充填チャンバ14、鋳造チャンバ16およびサセプタチャンバ18は、入口60,62,64によって不活性ガスタンク(図示せず)に連結されている。代表的には、超高純度アルゴンが用いられる。本発明の一観点では、ガス不浸透性および浸透性セラミック金型の真空溶融およびアルゴン支援充填が採用される。
【0028】
本発明の一観点では、チルプレート42およびベースプレート22は、中心に直径が1インチ(2.54cm)~5インチ(12.7cm)の凹み穴を有する。厚さが約0.040インチ(1.016mm)~0.120インチ(3.048mm)でありかつ凹みチルプレート穴の直径よりも僅かに大きい内径を有するガスケットが凹み穴上に配置されている。好ましくはセラミックで作られて最高2100°F(1148.9℃)までの温度まで予熱され、凹み穴の外径よりも僅かに小さい外径を備えた充填管40をチルプレート42の穴中に挿入する。次に、ガスケットを充填管のカラーの頂部上に配置する。一般に用いられる材料、例えばアルミナで作られてセラミックカラー作られている予熱状態のセラミック金型をガスケット上に配置する。代表的には、セラミック金型を最高2100°F(1148.9℃)までの温度まで予熱し、その後これをチルプレート42上に移送する。
【0029】
本発明の一観点では、ケーシングまたは金型チャンバ16内のサセプタ50は、チルプレート42の直径よりも僅かに大きい内径を有する。サセプタ50を予熱金型48上に下降させる。金型チャンバドア68を閉じ、真空を金型チャンバ16に引く。10ミリトル未満の真空レベルが金型チャンバ内でいったん達成されると、サセプタ50をオンに切り換える。単結晶方向性凝固鋳造物を作る際に用いられる任意の標準技術を用いてサセプタ50を加熱する。合金を溶融するとともにサセプタ50を用いて金型を鋳造温度まで加熱している間、溶融チャンバ12、充填チャンバ14および鋳造チャンバ16を10ミルトル未満の真空下に保持する。
【0030】
本発明の一観点では、鋳造または金型チャンバ16内のサセプタ50は、チルプレート42の直径よりも僅かに大きな内径を有する。サセプタ50を最高2100°F(1148.9℃)の温度まで予熱する。予熱された金型48をサセプタ50の下に配置する。金型チャンバドア68を閉め、真空を金型チャンバ16上に引く。10ミリトル未満の真空レベルが金型チャンバ内でいったん達成されると、金型チャンバ16とサセプタチャンバ18との間のインターロックを取り外し、サセプタ50をオンに切り換え、サセプタ50を予熱金型48上に下降させる。単結晶方向性凝固鋳造物を作る際に用いられる任意の標準技術を用いてサセプタ50を加熱する。合金を溶融するとともにサセプタ50を用いて金型を鋳造温度まで加熱している間、溶融チャンバ12、充填チャンバ14、鋳造チャンバ16およびサセプタチャンバ18を10ミルトル未満の真空下に保持する。
【0031】
本発明の一観点では、金型48がいつでも鋳造できる状態にあるとき、坩堝28を中間位置まで上方に動かし、その結果、これがベースプレート22の底部に設けられているOリングに圧接されるようにする。このようにする際、充填管40を溶融状態の合金32中に挿入する。次に、アルゴンを鋳造チャンバ16内ではなくて充填チャンバ14中に圧送することによって溶融金属に加わる圧力を2~6秒で最高1気圧までの上昇速度(ROR)と呼ばれる所定の速度で増大させる。充填チャンバ14と鋳造チャンバ16との圧力差により、溶融金属がセラミック充填管40を経て金型内に導入される。圧力を増大させ、ついには金型キャビティ48全体が充填されるようにする。
【0032】
金型キャビティ48をいったん充填すると、圧力を最高600秒間一定に保つ。金型充填中、液体金属に圧力を加えた結果として、鋳造物表面上に複雑な細部が良好に入れられる。本発明の上記観点において説明した方法は、単結晶および方向性凝固部品例えば動翼と静翼を鋳造するために用いられるニッケルを主成分とする超合金を鋳造する際に有用である。乱流から生じる酸化物を濾過除去するために伝統的な方向性凝固を単結晶鋳造プロセスで用いられるフィルタを用いることなく、このプロセスを実行することができる。RORを制御することによって、このプロセスは、乱流およびそれ故に酸化物を減少させることができる。
【0033】
本発明の一観点では、サセプタ50を垂直方向に上方に動かすことによってサセプタ50からの金型取り出しのプロセスが達成される。チルプレート42に接触した溶融金属32は、凝固して金型キャビティ48中に成長する所要の種結晶粒を生じさせる。本発明の一観点では、結晶粒ブロックおよび結晶粒セレクタが凝固して単結晶方向性凝固部品を作った後、充填チャンバおよび鋳造チャンバ内の圧力を等しくする。本発明の別の観点では、金型内の液体金属が凝固して等軸多結晶部品を作った後、充填チャンバおよび鋳造チャンバ内の圧力を等しくする。
【0034】
サセプタ50が充填管70の頂部を通り過ぎると、坩堝28内の圧力を抜き、坩堝28を下降させ、そして並進させてその初期位置に戻す。図10に示されているような場合、金型48内に液体金属を充填するやいなや、坩堝28内の圧力を抜き、坩堝28を下降させ、そして並進させてその初期位置に戻す。充填チャンバ14と溶融チャンバ12との間のインターロック20を閉じ、坩堝28に合金を再装填し、坩堝28に真空を引き、その後、次の金型を鋳造するために装填物を溶融する。取り出しサイクルをいったん完了させると、鋳造チャンバ16を開き、凝固金型を次の処理のためにチルプレートから取り出す。
【0035】
高反応性単結晶方向性凝固合金を鋳造するのに好適な本発明の別の観点では、溶融チャンバ12、充填チャンバ14、鋳造チャンバ16およびサセプタチャンバ18を入口60,62,64経由で真空ポンプに連結するとともに不活性ガスタンクに連結する。代表的には、超高純度アルゴンを用いる。本発明のこの観点では、黒鉛サセプタ50を予熱金型48上に下降させ、金型チャンバドア68を閉める。真空を金型チャンバ16上に引き、10ミリトル未満の真空レベルが金型チャンバ16内でいったん達成されると、サセプタ50をオンに切り換える。単結晶方向性凝固鋳造物を作る際に用いられる任意の標準技術を用いてサセプタ50を加熱する。合金32を溶融するとともにサセプタ50を用いて金型48を鋳造温度まで加熱している間、溶融チャンバ12、充填チャンバ14、鋳造チャンバ16および坩堝チャンバ18を10ミルトル未満の真空下に保持する。
【0036】
本発明の一観点では、金型がいつでも鋳造できる状態にあるとき、坩堝28を中間位置まで上方に動かし、その結果、これがベースプレート22の底部に設けられているOリングに圧接されるようにする。そのようにする際、充填管40を溶融合金32中に挿入する。金型チャンバ16と坩堝チャンバ12,14の両方を最高1気圧の圧力までアルゴンで加圧する。全てのチャンバ内でこの圧力にいったん到達すると、アルゴンを金型チャンバ16から2秒~60秒で最高1気圧までの速度で取り出し、かくして、金型チャンバ16内に真空を生じさせ、この真空は、液体金属を坩堝28から引いて充填管40経由で金型キャビティ48を充填する。金型キャビティをいったん充填すると、真空を最高800秒間一定に保つ。
【0037】
次に、サセプタ50を垂直方向に上方に動かすことによって金型48をサセプタ50から取り出す。チルプレート42に接触した溶融合金32が凝固することになる。坩堝28を下降させて中間位置に戻し、そして並進させて溶融チャンバ12内のその初期位置に戻す。サセプタ50が鋳造中の部品の頂部を通り過ぎると、金型チャンバ内の圧力を1気圧まで増大させる。サセプタ50の上昇を続行し、坩堝チャンバ12,14の2つの部品相互間のインターロック20を閉じ、坩堝28に合金を再装填し、真空を坩堝28上に引き、そして次の金型48を鋳造するために装填物を溶融させる。取り出しサイクルがいったん完了すると、金型チャンバ16を開き、凝固した金型を次の処理のためにチルプレート42から取り出す。
【0038】
容易に理解されるように、上述の方法およびシステムの結果として、流し込みカップが不要なので、シェル金型の全高が減少する。その結果、シェル金型を構築するのに必要なシェル材料の量が少なくなり、それにより金型を製作するコストが減少するとともに鋳造プロセスによって生じる屑材が減少する。本発明の諸観点では、フィーダ長さは、伝統的な重力式注型方法よりも短く、かくして使用する金属が少ない。上述のことに加えて、本発明の種々の観点において達成される別の利点は、金型が静止状態に保たれるので、単結晶部品に関する取り出しサイクル中における擬似結晶粒が減少することにある。金型充填中、プランジャを用いて金型を定位置に保持することにより、金型の持ち上がりを回避するために金型底部に設けられるクランプを用いる必要性がなくなる。
【0039】
理解されるように、上記説明は、開示したシステムおよび技術の実施例を提供している。しかしながら、本発明の他の具体化例が細部において上記実施例とは異なる場合のあることが想定される。本発明またはその実施例の参照は全て、その時点において説明されている特定の実施例を参照することを意図しており、本発明の範囲一般に関する任意の制限を示唆するものではない。ある特定の特徴に関する差別的記載および軽視的な記載は全て、かかる特徴について優先性がないことを示すものであるが、別段の指定がなければ、本開示内容の範囲からかかる特徴を完全に除外するものではない。
【0040】
本明細書において値の範囲を記載していることは、別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別々の値の各々を個別的に参照する簡単な方法として役立つことが意図されているに過ぎず、別々の値は各々、これが本明細書において個別的に記載されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書において説明した全ての方法を本明細書において別段の指定がなければまたは文脈上明らかに矛盾していなければ、任意適当な順序で実施できる。
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