(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】導光板、及びバックライトを有する光学ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C03C 3/091 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
C03C3/091
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020187740
(22)【出願日】2020-11-11
(62)【分割の表示】P 2016159944の分割
【原出願日】2016-08-17
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】10 2015 113 558.2
(32)【優先日】2015-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ラウテンシュレーガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クロス
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン アルケンパー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フォイチュ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292339(JP,A)
【文献】特開2005-037651(JP,A)
【文献】特開2004-315279(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087812(WO,A1)
【文献】特開2004-091308(JP,A)
【文献】特開2011-225418(JP,A)
【文献】特開昭54-090318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 成分としてB
2O
3及びSiO
2を含有するガラスであって、ここで、B
2O
3及びSiO
2の全含有率は、少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、特に有利には少なくとも90質量%であり、並びに、
- 前記ガラスの組成物中の二価の金属の金属酸化物の全含有率は3質量%未満であり、並びに
- 前記組成物中のAl
2O
3の含有率は1質量%から5質量%までの間にあり、前記ガラスが、As
2O
5、Sb
2O
5及びSnO
2を含まず、鉄イオンFe
2+/Fe
3+の量比が0.05未満であり、かつガラスの純透過率は、100mmの光路長で白色光に対して、少なくとも90%である、ガラス。
【請求項2】
次の特徴:
- SiO
2含有率が65~85質量%の範囲にあること、
- B
2O
3含有率が10~20質量%の範囲にあること、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
- 酸化物の形態の鉄の含有率が60ppm未満であることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス。
【請求項4】
次の特徴:
- 前記ガラスの屈折率が1.52未満、好ましくは1.45超であること、
- 室温での線熱膨張係数が2.5・10
-6K
-1~4.5・10
-6K
-1の範囲にあること、
- 透過率が、2mmの厚さに白色光の光が通されたときに少なくとも93%であること、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項3記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラスが、ハロゲン化物イオン、殊に塩化物イオンを、0.05質量%~0.2質量%の割合で含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項6】
酸化セリウムを含有しない、請求項1~5のいずれかに記載のガラス。
【請求項7】
前記ガラスが、アルカリホウケイ酸ガラスである、請求項1~6のいずれかに記載のガラス。
【請求項8】
次の特徴:
- 前記ガラスが、Na
2O 0~8質量%の含有量を有すること、
- 前記ガラスが、K
2O 0~1質量%の含有量を有すること、
- 前記ガラスが、Li
2O 0~2質量%の含有量を有すること、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のガラス。
【請求項9】
酸化物の形態の鉄の含有率が50ppm未満である、請求項1~8のいずれかに記載のガラス。
【請求項10】
Al
2O
3が合成である、請求項1~9のいずれかに記載のガラス。
【請求項11】
前記ガラスが、Na
2
O 0~4質量%の含有量を有する、請求項1~10のいずれかに記載のガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ディスプレイスクリーン(Bildschirme)用、殊に液晶モニター用の光学コンポーネントに関する。殊に本発明は、バックライトを有するディスプレイ(Anzeigen)用の光学コンポーネントに関する。
【0002】
液晶ディスプレイは、自照式ではなく、かつ他のディスプレイタイプ、例えば陰極線管、プラズマディスプレイスクリーン又はOLEDディスプレイに応じて照明画像を得るために、裏面から照明されなければならない。それゆえ、殊に高い画質を有する高解像度LCDテレビ受像機のディスプレイには、いわゆるバックライトシステムが必要であり、この場合、典型的には白色LEDの光が、側面から1つ以上のエッジに間接的に又は後ろから直接的に導光板若しくは拡散板に入射される。かかるシステムが、エッジライト方式(エッジリットバックライトユニット)又は直下型バックライト方式(直下型バックライトユニット)と呼ばれる。それゆえ昔から、この場合、例えば、特に透光性のPMMA(ポリメチルメタクリレート)又は、特に安価でかつ高い純度で可視波長領域での選択吸収なしに作製されることができる他の透明なポリマーより成るプラスチック板が用いられている。とはいっても、これらの材料は、不所望の吸湿性(周囲の湿気からの水分子の取り込み)による劣化現象を頻繁に示し、かつ持続的に光照射された場合に脆くなる可能性がある。これによりまた、画質及び寿命が損なわれる。
【0003】
ディスプレイスクリーン対角線の寸法が増大するにつれて(傾向としては、55インチ型を超え、現在では、一般に最大70インチ型にまで達する)、或いは個々のディスプレイが非常に大きなビデオウォールへと組み立てられる場合にも、この材料は欠点である。なぜなら、それは、ディスプレイガラスの何倍にもなる(15倍より高い)非常に高い熱膨張係数を有し、それに多数の発光ダイオード(例えば、直下型入射の場合には約1500個のLED)の入熱によって局所的な高い熱負荷に特に曝されやすいからである。
【0004】
プラスチックより成る導光板の高い熱膨張係数及び湿度依存膨張に基づき、液晶モニターには、補償スペース、殊にいわゆるスペーサーギャップが準備されなければならない。これにより、一方では、デバイスのフレームがかなり幅広くなり、他方では、デバイスの深さ(厚さ)の増大にもつながる。それというのも、異なる熱膨張係数のフラットコンポーネントの取付けには互いに十分な間隔が置かれていなければならないからである。そのうえ、プラスチックの安定性は低いことから、典型的には、更なる構造コンポーネントが必要不可欠である。それゆえ、液晶ディスプレイスクリーンは、現代の技術では、約30mmの最小厚さを有する。
【0005】
それゆえ、可能な限り薄型でかつ可能な限り軽量の液晶TV受像機を製造するために、プラスチックより成る導光板をこれまでのように用いることは欠点である。
【0006】
US2014/0043852A1及びUS2014/0146267A1は、これらの欠点を克服する構造上の解決手段を記載している。しかしながら、その中で示される解決手段は煩雑であり、部分的にしか成功せず、そして、とりわけ、PMMA-導光体の根本的な欠点、すなわち、その大きな厚さを必要とすることは克服していない。
【0007】
そうこうしているうちに、最終消費者からは、ほんの僅か数ミリメートルの深さ(厚さ)を有するテレビスクリーンが要望されてきている。とはいっても、このことは、既にPMMA-導光板そのものが実際に少なくとも3.5mmの厚さを有し、かつスペーサーギャップを必要とする場合には、技術的に可能ではない。
【0008】
たしかに、OLED-技術によって動作するテレビ又はディスプレイは、非常に小さい厚さを達成しているが、他方でそれらは、製造プロセスの中で、画素誤差が性能を低下させるという欠点と、これらのデバイスが殊に55インチ超の非常に大きなディスプレイスクリーン対角線の場合にはそれによって非常に高価になるという欠点とを有する。そのうえまた、更にそれらは、日々の使用において必須の剛性が得られるように補強部材を要する。
【0009】
それゆえ、光導体用の材料として、一般に使用されるPMMA-プラスチックの代わりにガラスを用いることが好ましいとされる。
【0010】
WO2015/033866には、エッジライトユニット及び光出射表面を有する装置が記載されており、その際、該装置にはガラス板が含まれる。しかしながら、記載された特徴は、PMMAと比べて同等の良好な透過率を達成するのに十分ではない。記載された最良値は、僅か100mmの光路長で、ちょうど83%か又はそれ以上である。
【0011】
US2014/0152914A1は、指先の位置を減衰全反射によって検出するタッチディスプレイスクリーン用の高い透明度を有するガラスを記載している。そのために、750~2500nmの波長領域、つまり、赤外スペクトル領域における光が使用される。しかしながら、サンプルは、殊に400~800nmの可視波長領域における吸収係数の強い変動を示す。この波長領域における最大吸収係数は、最小吸収係数の少なくとも2倍の高さである。
図9に示される実施例においては、吸収係数は、それどころか約470nmにて0.00021mm
-1であり、かつ約430nmにて0.00089mm
-1である。しかしながら、吸収係数の強い変動は、導光板には適していない。それよりもむしろ、一様に推移する低い吸収係数が所望されており、これが、可視波長領域での一様な透過曲線をもたらす。
【0012】
WO2015/011040A1、WO2015/011041A1、WO2015/011042A1、WO2015/011043A1、WO2015/011044A1及びWO2015/071456も、赤外領域での高い透過率を有する、タッチディスプレイスクリーンにおいて用いられることができるガラス板に関し、ここで、いわゆる平面散乱検出(PSD)の技術又は減衰全反射によって、対象物の位置が表面上で決められる。Fe2+及びFe3+が、吸収帯を380nmでの帯極大(比較的低い吸収)及び1050nmでの帯極大(比較的高い吸収)を伴ってもたらし、これらは酸化性物質によって影響を及ぼされ得る。上述の出願は、許容された比較的高い鉄含有量(Fe2O3)の場合に、クロム(Cr)の適切な添加によって、どのように赤外領域での高い透過率が達成されることができるのかを記載している。しかしながら、これらは可視波長領域用の導光板の最適化には寄与し得ない。
【0013】
それに従って、本発明の課題は、可視光を導光するための導光板用に、殊に液晶ディスプレイ及び液晶ディスプレイスクリーンにおいての使用に適しているガラス組成物を見出すことである。
【0014】
ここで、前記課題の1つの側面は、理論的に達成可能な透過率が可能な限り高くなるようにガラス組成物を選択することである。それに従って、前記課題の1つの側面は、ガラス組成物の選択によって導光板の吸収係数を最小にすることである。
【0015】
前記課題の更なる1つの側面は、ガラス組成物の選択によって、導光板の吸収スペクトルを、殊に長い光路に対して、可視波長領域で、より一様にすることである。
【0016】
前記課題は、本発明により、独立請求項の対象によって解決される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項の対象である。
【0017】
このために、本発明により、可視光を導くための、2つの平行した側面と、好ましくは光入射面として用いられる少なくとも1つのエッジ面とを有する導光板が提供され、ここで、導光板は、
- ガラスから作製されており、該ガラスは、
- 成分としてB2O3及びSiO2を含有し、ここで、B2O3及びSiO2の全含有率は、少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、特に有利には少なくとも90質量%であり、並びに、
- ガラスの組成物中の、二価の金属、殊に二価のアルカリ土類金属の金属酸化物の全含有率は、3質量%未満であり、並びに
- 組成物中のAl2O3の含有率は、1質量%から5質量%までの間にある。
【0018】
導光板を作り出しているガラスは、B2O3及びSiO2を含むその組成に従って、ホウケイ酸ガラスである。ホウケイ酸ガラスの製造に必要な原料は、非常に高い純度で、殊に、不所望の着色3d金属酸化物の含有量が非常に少ない形で入手可能であり、少なくともコストの理由から使用できないということはない。それに従って、特に有利には、これらの原料は高い純度で用いられる。そのうえ、好ましくは、炭酸塩と硝酸塩との混合物を溶融原料として使用することが規定される。しかしながら、硝酸塩は、好ましくは溶融物の酸化還元条件に影響を及ぼすように2%超の割合で用いられる。
【0019】
ホウケイ酸ガラスは、それらの構造特性に基づき、石英ガラスの透過挙動に最も近い。170~2000ナノメートルの波長領域で、それらは、本来備わった、すなわち、ガラス組成物に基づく固有吸収を示さない。紫外領域にある3d不純物元素の電荷移動吸収帯(電荷移動帯)は、ガラスマトリックス成分の低い固有吸収に基づき(UVエッジは、約170nmの位置にある)、該ガラスの厚さが大きい場合ですら、可視領域にまで達しない。さらに、ホウケイ酸ガラスにおけるフレネル損失は、低い屈折率に基づき、他のガラスの場合より低く、かつPMMAの場合よりも低い。
【0020】
ホウケイ酸ガラスのガラスファミリーの中で意想外にも見出されたガラス組成物は、400nm~800nmの波長領域での透過率に及ぼすマイナスの影響要因を減らす。本発明は、長い光路の場合ですら、可視スペクトル領域で高透光性のホウケイ酸ガラスを提供する。
【0021】
そのうえ、この見出されたガラス組成物は、殊に可視波長領域で、透過率のスペクトル曲線に対する調整効果、すなわち、均一化効果を有する。したがって、可視領域での透過曲線は、典型的には一定であり、殊にカラーシフトを起こす吸収帯(farbverschiebende Absorptionsbanden)による不所望の選択的な吸光はない。
【0022】
原則的には、透過率の最小値又は最大値は、吸収法則における指数関数関係ゆえに、ガラス中での比較的長い光路距離に従って増大し、ひいては透過曲線の非常に強い不規則性をもたらし、そのとき色再現性にも明らかに影響を及ぼすといえる。しかしながら、この見出されたガラス組成物は、かかる最小値及び最大値に正反対に作用する。したがって、本発明は、長い光路の場合ですら、可視スペクトル領域において中性的な色(すなわち、実質的に無色)のホウケイ酸ガラスを提供する。可視波長領域にわたった透過率の一様な曲線が、導光板に入射された光の分光分布を、該光が導光板を通過する間、変化させないようにするために特に関心をひく。それによって、光が再び出射される導光板の側面のどの箇所においても、この出射された光は、入射された光と比べて可能な限り変化していないスペクトルを示すことが保証される。
【0023】
そのうえ、スペクトル透過曲線を一様なものにするために、セリウム(Ce)の添加は省くものと規定してよい。それに従って、好ましくは、ガラス組成物中に酸化セリウムは含まれない。
【0024】
さらに、好ましいのは、ガラス組成物を、該ガラスの線熱膨張係数が、一般的なディスプレイガラス、つまり、他の一般的に用いられる液晶ディスプレイのガラスパネルに最適な形で適合されるように選択することである。本発明により規定された組成物のガラスは、一般には、とりわけ低い熱膨張係数も有する。そのため、有利な実施形態に従った室温での線熱膨張係数は、2.5・10-6K-1~4.5・10-6K-1の範囲にある。
【0025】
それゆえに、ホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板の熱膨張挙動は、殊にTFT/LCD-ディスプレイユニットにおいて標準的に使用されるガラスに最適な形で適合されることができる。この利点は、異なる膨張係数のディスプレイコンポーネント間(例えばPMMA板とガラスパネルとの間)で今日よく用いられているスペーサーギャップを、使用されるディスプレイコンポーネントの異なる熱膨張に基づく機械的応力の発生なくして省くことができることである。したがって、導光板の体積及び長さの膨張分を補償するために必要な、今日よく用いられている追加的なスペースを明らかに減らすことができる。本発明は、したがって、数ミリメートルの厚さを有する非常に薄い大型のTV受像機を作ることを可能にする。
【0026】
それに、本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板は、好ましくは湿気の影響を受けない。それに比べて、従来のPMMA-導光板は、時間の経過とともに湿気を取り込み、それによって、透過率に影響が及ぶだけでなく、PMMA-板の不所望な体積膨張も生じる。それに従って、本発明は、導光板の膨張を、周囲の湿度とは無関係に、ディスプレイにおける他のガラス板の膨張に適合させることを可能にする。
【0027】
したがって、適合された熱膨張係数ゆえに、及び湿気による本発明による導光板の膨張が無視できるほど僅かであるがゆえに、光透過性のフラットディスプレイコンポーネント間のスペーサーギャップを縮めることができるか又はそれどころか回避することができる。そのうえまた、コンポーネントをフラットに積み重ねることによって、安定性が高められる。互いに適合された膨張係数を有するフラットコンポーネントを互いに貼り合わせることで、安定性を更に高めることも可能である。したがって、ディスプレイをより薄くかつ同時により安定して組み立てることができるという利点が生じる。殊に、それにより本発明は、厚さが、約30ミリメートルの今日の最小厚さより明らかに小さいLCD-TV受像機を製造することを可能にする。それに本発明は、該受像機の質量を減らすことを可能にする。それにより、LCD-TV受像機、殊にLEDエッジライトを有する該受像機の深さ(厚さ)は、最新薄型のOLED-TV受像機の厚さに近付けることができる。テレビディスプレイの薄型構造(及び低い質量も)が、UHD-TV受像機の市場での差別化のために重要な特性であるので、それにより種々の観点で魅力的なLCD-TV受像機を製造することができる。一方では、LCD-TV受像機は、非常に薄型(及び場合により軽量)で組み立てることができ、他方では、それらはOLED-TVと比べて、許容されるコストで非常に大きな対角線を有することができ、かつ同様に高いトゥルーカラー品質でドット表示することができる。
【0028】
更なる利点はまた、導光板の熱膨張がより低いゆえに、ディスプレイのフレームをより幅を狭くして組み立てることができる点にある。それに比べて、PMMA-導光板を用いた場合、板の周りに膨張に対する補償スペースが存在するように、より幅の広いフレームが必要となる。フレームの幅がより狭いと、有利な美的外観、例えばデバイスのエレガントな印象が得られる。
【0029】
それに従って、本発明による導光板は、殊に、大型の液晶ディスプレイ又はビデオウォール用の、殊に直接的若しくは間接的な集中光照射によるLED照明技術を基礎とするもの用の光学照明系の中で使用するのに適している。
【0030】
これらの例のほかに、長い光路で、高い透過率(透明度)及び僅かな色偏差、すなわち、美的外観の利点が得られる他の適用分野も含まれる。それに、これらの好ましい特性に加えて、ガラスの低い熱膨張係数の利点が得られる用途も含まれる。
【0031】
B2O3及びSiO2のほかに、上述のガラス組成物は、更なるネットワーク形成剤(Netzwerkbildner)としてAl2O3割合を含み、これは殊に材料の脆性を下げる。とはいっても、ガラス成分としての酸化アルミニウムの通常の原料担体は、頻繁に着色不純物による負荷を受け、それらはガラスの透過率にマイナスの影響を及ぼす。ここで、Al2O3割合は1~5質量%である。この低い含有率は、ガラスの加工性及びその強度のために依然として十分であることを証明している。しかし他方では、当然存在するものの、不所望である不純物は、ほとんど重要でない。
【0032】
本発明の実施形態によれば、ガラスの吸収を更に下げるために、酸化アルミニウムの合成原料も用いることができる。たしかに合成原料は製造コストを高めるが、とはいっても1~5%の低い割合に鑑みて、実際にはこれを実行することはまだ可能である。好ましくは、Al2O3の含有率は1~3%、特に有利には1.5~2.5%である。
【0033】
Al2O3のほかに、MgOの担体材料も重要な原料であり、これは天然原料として類似のイオンサイズ(例えばNi、Cu、Mnなど)を有する不所望に吸収する3d不純物元素をしばしば導入する。それゆえ、MgOが任意に用いられる場合、ごく少量の、特に純粋な材料を用いることが規定される。
【0034】
ガラスの場合、ソラリゼーションが、つまり、光、殊に高エネルギーUV光の作用によって透過率が時間の経過とともに減少する場合に生じる可能性もある。本発明による導光板は、そのガラス組成物に基づき、それがはっきりと耐ソラリゼーション性であることを特徴とする。この点、ソラリゼーションが起こりやすい他のガラスタイプと比べて殊に好ましい。
【0035】
そのうえまた、可視領域での最大吸収の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍の高さの、UV領域での導光板の高い吸収が規定されていてよい。かかるUVカットオフは、他のコンポーネント、殊にその中に存在するポリマー(導光板に入射された光は、該ポリマーを通って、それが側面を介して出て行った後に放射する)を、入射された光に寄生している可能性のあるUVフラクションから保護するために好ましくあり得る。
【0036】
本発明の更なる態様は、ガラス組成物を、それにより製造されたパネルの破断リスクを化学硬化によって低下させることができるように選択することである。
【0037】
そのうえ、該ガラス組成物は、このために、アルカリ金属酸化物、殊にNa2O、K2O及び/又はLi2Oを含んでもよく、そのため導光板はアルカリホウケイ酸ガラスから作製されている。アルカリ含有量により、ガラスの熱膨張係数を適合させることができる。さらに、アルカリ金属/アルカリ金属酸化物を添加する場合、殊にガラスに化学的にプレストレスをかけて、該ガラスの強度を更に高めることが可能である。化学強化(化学的プレストレス)に際しては、イオン交換が引き起こされ、その際、例えば、小さい方のアルカリイオンが、大きい方の同族体によって交換され、そうして、ガラス表面の交換ゾーンにおいて、応力プロファイルがガラス中に導入される。
【0038】
しかし、化学的プレストレスが所望されていないか又は必要でない限りにおいては、アルカリ不含の組成物が有利であり得る。
【0039】
一般に、例えばアルカリ酸化物の添加によって、導光板を、他のガラス、殊にディスプレイにおける他のガラスコンポーネント、例えば、そこに存在する基板ガラス、場合により、カバーガラスの熱膨張係数にも適合させることができる。とはいっても、特に有利なのは、導光板の熱膨張係数を、LCD-ディスプレイスクリーンにおけるTFT基板の熱膨張係数に適合させることである。
【0040】
したがって、導光板の適用分野に応じて、必要な場合には強度を高めることができ、ひいては板の破断リスクを低下させることができる。このことは、殊に、大きいディスプレイスクリーン対角線の場合に、例えばTV受像機の場合に、又は、例えばスマートフォン、タブレット、コンピューター、ナビゲーション装置などにおけるタッチスクリーンの場合に好ましくあり得る。
【0041】
そのうえ、殊に、化学的プレストレスによるガラスの機械的強化の実現性が、高い透過率(透明性)の利点及び/又は導光板の僅かな色偏差の利点と一緒に考慮される適用が含まれる。
【0042】
必要なアルカリ原料、殊にNa2Oは、高い純度で入手可能であり、少なくともコストの理由から使用できないということはない。それに従って、特に有利には、アルカリ原料は、高い純度で用いられる。
【0043】
殊に、ガラス組成物中でNa2O 0~8質量%、好ましくは0~4質量%の含有率が規定される。そのうえ、殊にK2O 0~1質量%の含有率が規定される。最後に、殊にLi2O 0~2質量%、好ましくは0~1質量%の含有率が規定される。
【0044】
本発明の有利な実施形態においては、導光板は、SiO2含有率が65~85質量%の範囲にあること及び/又はB2O3含有率が10~20質量%の範囲にあることを特徴とする。ここで、高い二酸化ケイ素含有率が、高い光透過率の調節のために特に好都合である。
【0045】
そのうえ有利なのは、導光板のガラス中の酸化物の形態の鉄の含有率が60ppm未満であること、及び/又はFe2+鉄イオン対Fe3+鉄イオンの量比が0.05未満である本発明の実施形態である。
ある一定の割合の鉄は、ガラス原料の不純物に基づき、一般には回避することができない。ディスプレイガラス用にPMMAに匹敵する透過率が、殊に長い光路でも、10ppm未満の酸化物の形態の鉄の含有量から期待される一方で、好ましくは、本発明により用いられるホウケイ酸ガラスの場合、より高い鉄含有率が許容され得る。
【0046】
好ましくは規定された60ppm未満、特に有利には50ppm未満の鉄含有率により、PMMAの透過率に近いか又は等しい透過率を達成することができる。
【0047】
酸化物の形の鉄の所期の含有量又はFe2+イオン対Fe3+イオンの量の所期の比を達成するために、殊に、ガラスの適した清澄を行うことが規定される。清澄剤の添加によって、完全に溶融されたガラスから気泡が除去され、例えば、これは清澄剤がその分解によりガスを放出させることによって行われる。
【0048】
有利なのは、食塩による中性清澄(NaCl-清澄)であり、これはFe2+イオンの含有量を低く保つ。したがって、他の清澄剤と比べて、殊にFe2+/Fe3+の比を最小にすることができる。
【0049】
それゆえ、本発明の発展形態においては、導光板のガラスは、ハロゲン化物イオン、殊に塩化物イオンを、0.05質量%~0.2質量%の割合で有する。
【0050】
好ましくは、直接酸素放出をともなう酸化還元活性な清澄剤、例えばAs2O5、Sb2O5及び殊にSnO2が省かれる。かかる清澄剤、殊に、よく用いられる酸化スズ清澄が省かれる。それというのも、それによってFe3+の含有量がFe2+と比べて減少されることになるからである。そのうえまた、上述の他の清澄剤は、環境にとって有害であるか又はフロート法に適していない。それに従って、酸化スズによる清澄を、特に高い透過率を達成するために、微量の鉄と併用することは欠点である。同じことが、酸化スズ(SnO2)による清澄及び酸化セリウム(CeO2)の添加に当てはめられる。セリウム化合物は、有利には、スペクトル透過曲線を一様に作り出すために省かれる。それというのも、酸化セリウムは、僅かなFe2O3不純物そのものと一緒に可視スペクトル領域において強い吸収作用を示すからである。
【0051】
そのうえ有利なのは、Fe2+をFe3+に変換するための、殊に酸素燃焼ユニットによる、酸化溶融操作である。この場合、殊にバーナー調節を火炎中で超化学量論量の酸素割合により選択することができる。さらに、溶融プロセスの間、酸素をガラス溶融物中に吹き込んでよい(いわゆるO2バブリング)。酸素ガスを溶融ガラス中に吹き込む際、吹込ノズル1個当たり1l超/分、好ましくは2.5l超/分の酸素量が有利である。吹込ノズルの数は、槽のサイズによって決定される。
【0052】
原則的には、ホウケイ酸ガラスは低塩基度を示し、これは同様にガラス中の酸化還元比にプラスの影響を及ぼす。
【0053】
そのうえ、本発明の実施形態によれば、0.05~0.7ppm、特に有利には0.5ppm未満のCr含有量が規定されていてよい。
【0054】
好ましくは、汚染物質のFe、Cu、Cr、Ni、Mn、Ce、Coの全含有率は、0.005質量%未満である。
【0055】
本発明のホウケイ酸ガラスの好ましい特徴は、2mmの厚さに白色光の光が通されたときの透過率が少なくとも93%であることである。好ましくは、エッジライトのために使用される通常の白色LEDの白色光のかかる透過率が達成される。そのうえ好ましくは、連続スペクトル、殊に地球上の太陽スペクトル又は黒体放射体のスペクトルを有する白色光のかかる透過率が、殊に5800ケルビンの温度で達成される。可視波長領域(スペクトル領域)は、通常の定義に従って、400nm(バイオレット)~750nm(レッド)、時には780nmまでにも及ぶ。
【0056】
本発明の更なる有利な実施形態においては、導光板のガラスの屈折率ndは、1.52未満、好ましくは1.45超、特に有利には1.48未満である。本発明によるホウケイ酸ガラスは、典型的には低い屈折率を有する。したがって、1.45~1.52の範囲の有利な屈折率により、反射による透過率損失を減少させることができる。このことは、より高い屈折率を有する市販の平面ガラスに対する利点を提供する。それに、好ましくは規定される低い屈折率は、液晶ディスプレイのガラス中への入射に際しての結合損失を、殊にTFT-基板ガラスのときに減少させるために好都合である。しばしば、これらのガラスは、同様に比較的低い屈折率を有し、そのため、ガラスパネル間の屈折率の急な変化はごく僅かなものに過ぎない。
【0057】
そのうえまた、低い屈折率は、光の入射に際しての一層の柔軟性を可能にする。したがって、光源は、不所望の反射損失が起こることなくして、より柔軟に位置決めすることができる。このことは、殊に、光源の位置決めに関わる構造上の要件と、可能な限り薄くてコンパクトな構造とがしばしば一致していないフラットディスプレイスクリーンにおいて導光板が用いられる場合に好ましい。
【0058】
殊に、400nm~780nmの波長領域にわたった純透過率は、100ミリメートルの光路長で、90%を上回り、有利には91%を上回り、特に有利には92%を上回ることが規定される。
【0059】
導光板は、好ましくは、0.5ミリメートル~3ミリメートルの範囲の、特に有利には1ミリメートル~2ミリメートルの範囲の厚さを有する。これらの厚さは、背面照明される大型のディスプレイスクリーンの場合にも十分たくさんの光を入射することができ、ここで同時に、本発明による導光板が備わったディスプレイの僅かな全厚を依然として達成するために適している。
【0060】
導光板は、好ましくは、被照明ディスプレイスクリーンの通常の形状に従って、長方形の形状を有する。導光板の対角線は、1つの実施形態によれば、少なくとも250ミリメートル、好ましくは少なくとも500ミリメートルの長さを有する。
【0061】
導光板の安定性が保証されるように、板の厚さは対角線に依存してよい。板の対角線が小さければ小さいほど、それだけ薄く板を作製することができる。殊に、対角線に対する厚さの比が、0.001から0.012の間、好ましくは0.001から0.008の間、特に有利には0.001から0.006の間にある場合に好ましい。
【0062】
典型的には、導光板は、長方形のフラット形状を有することが規定される。しかしながら、形状は長方形であるものの、導光板が湾曲していることも規定されていてよい。湾曲した導光板は、いわゆる湾曲TV受像機用に利用されることができる。
【0063】
本発明の発展形態においては、導光板はフロートガラスパネルから成ることが規定される。フロートガラスの製造に際しては、清澄されたガラス溶融物がスズ浴に通される。それによって、特に高い表面品質が得られる。それに従って、表面粗さは特に低い。これにより、一方では高い導光が可能となり、かつ他方では光導体からの非常に適切で正確な光の出射が可能になる。こうして、均一な光の放出がもたらされ、すなわち、いわゆるホットスポットは回避される。フロートガラスは、典型的には、表面の1つ、すなわち、スズ浴に浮かばせたときに浸かっている表面上に微量の酸化スズも有する。
【0064】
フロート法において製造された導光板の場合、殊に大型のパネルでは、非常に平滑な表面に基づき、好ましくは、反りが生じた場合に正確に特定することができる。かかる反りは、例えばプレストレスの結果生じる可能性がある。
【0065】
そのうえ、本発明により、光学ディスプレイ、殊に結晶ディスプレイ用の照明装置が提供される。この照明装置は、本発明による導光板と、そのうえ、光を入射するための少なくとも1つの光源とを含み、該光は、導光板の側面間に全反射によって導かれる。そのほかに、導光板の側面の少なくとも1つの光散乱構造が、導光板に導かれた光を散乱するために含まれ、そうして該光が導光板から出て行く。
【0066】
有利な実施形態においては、照明装置の発光スペクトルは、光源から入射されて再び導光板からディスプレイユニットの方向に該板全体で出て行く光の色度座標のずれ(Farbortverschiebung)が0.04未満のΔWy値を有する(CIE-標準色度図に基づく)ように導光板の透過スペクトルに適合させられている。
【0067】
特に有利には、照明装置のスペクトルは、光源から入射されて再び導光板から外に散乱する光の色度座標のずれが、無彩色点の方向における成分を有するように形成されており、かつガラスの透過スペクトルに適合させられている。かかる成分が存在し得るように、照明装置の光の色値は、無彩色点の隣にある。残る有彩色による照明のこの見かけ上の欠点は、それにも関わらず、スペクトル変化するガラスの透過率と共に可能な限り中性色の照明を生む。
【0068】
最後に、本発明により、ディスプレイスクリーン、殊に液晶ディスプレイが提供されるディスプレイスクリーンは、本発明による照明装置及び該照明装置の導光板に対向している操作可能な(ansteuerbar)平面形ディスプレイ装置を含み、そのため、光源から導光板に入射されて導光板の側面で(側面から)再び放射された光は、ディスプレイ装置に当たって、これを横切ることができる。
【0069】
以下では本発明を、より詳しく添付の図面に基づいて説明する。ここで、図面における同じ符号は、同じ要素か又は相応の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図3】ディスプレイスクリーンを側面図で概略的に示す図
【
図4】液晶ディスプレイスクリーンを側面図で概略的に示す図
【
図5】ケーシングを有する液晶ディスプレイスクリーンを側面図で概略的に示す図
【
図6】先行技術からのケーシングを有する液晶ディスプレイスクリーンを側面図で概略的に示す図
【
図8】先行技術からの様々な市販の導光板のスペクトル純透過率を示す図
【
図9】2つの短い光路長での本発明による導光板のスペクトル純透過率を示す図
【
図10】アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板及び本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板の分散曲線を示す図
【
図11】アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板及び本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板のスペクトル最大透過率を示す図
【
図12】アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板及び本発明によるホウケイ酸ガラスより成る、それぞれ異なるFe
2O
3含有量を有する導光板のスペクトル純透過率を示す図
【0071】
図1は、導光板1を概略的に示す。導光板1は、2つの平行平面の側面10,11を含む。導光板は、長方形のガラスパネルとして形成されており、かつ4つのエッジ面を含み、そのうち1つのエッジ面13が光入射面として規定される。エッジ面13に入射された光は、側面10,11での全反射によって、側面全体にわたってここを抜ける。光が導光板1を進む経路は、板の厚さと比較して非常に長い。導光板1の厚さは、0.5ミリメートル~3ミリメートルの範囲、好ましくは1ミリメートル~2ミリメートルの範囲にある。
【0072】
たしかに、ガラスはそれ自体非常に透明な材料であるが、この場合の小さい吸収係数ですら、長い光学距離に基づき目立った吸収につながる。ところで、本発明によるガラスは、一方では大規模工業的にフロート法によって製造されることに適しており、他方では、それにも関わらず、非常に高い透過率を有することから、該ガラスは、少なくとも250ミリメートル、好ましくは少なくとも500ミリメートルの対角線寸法を有する導光板として適しており、その際、深刻な色度座標のずれ及び光度の低下は生じない。これは、SiO2及びB2O3の高い全含有率(少なくとも70質量%)並びに、存在するもののAl2O3 1~5質量%の少ない割合によって達成される。低いAl2O3含有量によって、Al2O3中で不純物として存在する酸化物の形の鉄の含有量も、容易に60ppm未満に減少させることができる。65~85質量%の範囲のSiO2含有率及び10~20質量%の範囲のB2O3含有率を有する組成物は、鉄の実質的な酸化も促すことから、鉄イオンFe2+/Fe3+の量比は0.05未満である。
【0073】
図2は、ホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板を使用した照明装置19を概略的に示す。照明装置19は、2つの平行平面な側面10,11を有する導光板1を含む。右側のエッジ面には、光源21、例えばLED、又は多数のLEDが存在する。光源21の光は、右側のエッジ面を通って導光板1に入射され、続けて導光板1の側面10,11間に全反射によって導かれる。一般に、実施例に制限されずに、この場合、光源21として、白色発光ダイオードだけでなく、異なる色の発光ダイオードの配置されたものを使用することができる。後者の場合、白色光は、異なる色の発光ダイオードの色を混ぜることによって作り出される。例えば、白色光は、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード及び青色発光ダイオードの配置によって混ぜて得られることができる。それに、所望の又は調節可能な色度座標を作り出すために、有彩色発光ダイオードを白色発光ダイオードと組み合わせてもよい。
【0074】
導光板1の下方の側面11には、光を散乱する反射体層15が設けられており、そのため、光は導光板1から側面10を介して出て行く。図示した以外に、光は、複数のエッジを介して入射されることもできる。例えば、入射は、取り囲んでいるエッジ面13に沿って周囲で行ってよい。これは、まさに非常に大面積の照明装置20の場合に、均一な照明を達成するために考えられる。
【0075】
図3は、ディスプレイスクリーン20を概略的に示す。ディスプレイスクリーン20は、
図2に記載のコンポーネントより成る照明装置を含む。そのうえまた、ディスプレイスクリーン20は、導光板1に対向しているディスプレイ装置23を含む。導光板1から上方の側面を介して出射された光は、ディスプレイ装置23に当たって、これを横切る。それによって、光源21を介して入射された白色光は、ピクセル毎に有彩色に変換される。
【0076】
図4は、液晶ディスプレイスクリーンとして形成されているディスプレイスクリーン20を概略的に示す。ディスプレイスクリーン20はまた、
図2に記載のコンポーネントより成る照明装置を含む。ディスプレイスクリーン20のディスプレイ装置は、2つの基板25及び31を含み、その間にはTFT層27及びLCD層29(液晶層)が存在する液晶ディスプレイ装置である。基板25及び31は、ガラスから作製されている。
【0077】
図5は、液晶ディスプレイスクリーンとして形成された、ケーシング35を有するディスプレイスクリーン20を概略的に示す。導光板1が、基板25の熱膨張係数に適合されているガラスから成ることによって、導光板1は、基板25にフラットに取り付けることができ、その際、導光板1と基板25との間に補償スペースとしてのスペーサーギャップは残されない。このようにして、フラット構造、すなわち、ケーシングの薄い厚さ37を達成することができる。そのうえ、ガラスから作製された導光板1が非常に低い熱膨張係数を有することによって、板のエッジ側で、目立ったスペーサーギャップが必要ではなくなり、そうして、非常に幅の狭いケーシングフレーム39を達成することができる。
【0078】
それに対して、
図6は、導光板1がPMMAより作製されている先行技術からの液晶ディスプレイスクリーンを示す。導光板1の熱膨張ゆえに、ディスプレイ装置の導光板1と基板25との間にはスペース33が必要であり、これによりケーシング35の厚さ37はずっと大きくなる。そのうえ、導光板のエッジ側、すなわち、板の周りでは、板の熱膨張41を可能にするためのスペーサーギャップが準備されている。それによって、より幅の広いケーシングフレーム(ケーシングの縁)39が必要となる。総じて、先行技術からのディスプレイスクリーン20は、したがって同じ画面の場合でも、より大きい寸法を有している。
【0079】
図7は、CIE-標準色度図を示す。ヒトが認識できる色の全体を白色ゾーンとして示す。x=y=0.33のとき、白色点とも呼ばれる無彩色点17が存在する。
【0080】
2つの有彩色点18及び16を示している。有彩色点18は、導光板に入射された光に相当し、他方で、有彩色点16は、導光板から散乱放出された光に相当する。2つの点は一致していないので、色度座標のずれが生じる。示した例においては、本発明によるガラスの透過特性に基づき、色度座標は、y軸の正の方向にΔWy=0.35だけずれる。x軸に沿った色度座標のずれは、この例においては生じない。y方向における無彩色点17は、有彩色点18より有彩色点16に近いことから、y方向において、光源から入射されて再び導光板から外に散乱された光の色度座標のずれが無彩色点17の方向で生じる。少なくとも1つのずれの成分が無彩色点の方向に存在する。かかる固有のずれは、本発明によるガラス及び白色光供給源により簡単に達成することができる。
【0081】
図8は、先行技術からの様々の市販の導光板を用いて測定した純透過率50、52、54を示す。導光板の厚さは、それぞれ2mmであり、かつ進んだ光路長は、それぞれ500mmに達する。純透過率とは、内部透過率を意味する。
【0082】
PMMA-光導体の純透過率54は、約420nm~約780nmの波長領域では、90%を上回り、部分的に95%を上回ることが読み取られ、しかしながら、約715nm~約765nmの領域では、70%を下回るまでの急激な落ち込み56が記録されている。純透過率のこの落ち込み65は、PMMA-光導体中に含まれる水分子に帰せられる。PMMA-光導体は、それらの材料に基づき、時間の経過とともに湿分が環境からポリマーマトリックス中に拡散して入り込むという欠点を有する。それに対して、ガラスより成る導光板は、好ましくは周囲の湿気の影響を受けない。
【0083】
アルミノケイ酸ガラスより成る第一のタイプの導光板は、純透過率50を示す。たしかに、この曲線は、水不純物に基づく透過率の落ち込みを示さないが、しかしながら、純透過率50は、約410nmの波長から、PMMA-光導体の純透過率より明らかに低い。それは、本質的に60%を明らかに下回っている。加えて、420nmから780nmまでの間で、純透過率50は、非常にむらがあり、かつ約30%から60%までの間を変動する。
【0084】
減少した鉄含有量を有するアルミノケイ酸ガラスより成る第二のタイプの導光板は、純透過率52を示す(おおよそCorning Iris(商標)Glassに相当する)。純透過率50と比べて、明らかに高まった透過率値が記録されている。しかしながら、透過率52は、500nmから600nmまでの波長領域でのみ90%超の値に達するのみで、それ以外の領域では90%を下回っている。約440nmの青色光の領域では、透過率は約82%に達するだけである。加えて、純透過率は、赤色光に向かって連続的に約80%にまで低下する。
【0085】
図9は、比較的短い光路長での2つの本発明による導光板の紫外波長領域及び可視波長領域におけるスペクトル透過率を示す。透過率60は、1mmの光路長で測定し、透過率62は、8mmの光路長で測定した。
【0086】
2つの導光板を、後述の表1に従ったガラス組成物7を用いて製造した。不純物含有量は、Fe2O3 10ppm、Ti 9ppm、Mn 0.4ppm、Cu 0.3ppm、Cr 0.2ppm、Ni 0.1ppm未満及びCo 0.1ppm未満である。ここで、以下の原料を用いた:
・ SiO2 石英砂A1-JP、Brementhaler Quarzwerk (DE)
・ B2O3 ホウ酸、高純度、CHP Chemicals B.V. (NL)
・ Al2O3 AL(OH)3 ATH BHP、Cell Mark Chemicals (JP)
・ Na2O 炭酸水素ナトリウム BICARTEL、Solvay (B)
・ K2O 硝酸カリウム、Solvadis Chemag Haldor (DK)
・ Li2O 炭酸リチウム、SQM Europe (NL)
・ CaO 炭酸カルシウム Ulmer Weiss、E.Merkle GmbH (DE)
【0087】
透過率60及び62は、それぞれ約380~800nmの波長領域にわたって、ひいては全体の可視波長領域にわたって、約92.6~93.1%であることが読み取られ、これは反射に基づき達成可能な最大透過率に相当する。そのうえ可視波長領域での透過率は、それぞれ非常に一様である。したがって、透過率は、可視波長領域では、比較的僅かにしか光路長に依存しない。本例では、可視波長領域での1mm及び8mm(曲線60及び62)の2つの光路長において、透過率の差違は認められない。それに対して、紫外波長領域での透過率は、光路長に大いに依存する。透過率は、1mmの光路長(曲線60)にて200nmの波長の光で45%に低下し、他方で、8mmの光路長(曲線62)でほぼ消失する。
【0088】
図10は、それぞれ本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板(屈折率72)と、アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板(屈折率70)とについての、分散曲線、すなわち、屈折率を光路長の関数として表したものを示す。
【0089】
アルカリアルミノケイ酸ガラスは、SiO2 約60質量%、Al2O3 16質量%から17質量%まで及びMgO 約4質量%の組成を有する。
【0090】
本発明による導光板のガラスの屈折率72は、可視波長領域では1.49から1.46の間にある。したがって、屈折率は、1.5~1.45の特に有利な間隔にある。屈折率72は、可視波長領域にわたって波長が増大するにつれて0.02未満だけ減少する。殊に、屈折率72は、全体の可視波長領域にわたって、アルカリアルミノケイ酸ガラスの屈折率70より、0.03より大きく下回る。
【0091】
フレネルの式から公知の通り、屈折率1を有する媒質から屈折率nを有する媒質へと垂直に光が入射したとき、分数(n-1)2/(n+1)2が反射されることを導き出すことができる。加えて、2つの平行平面な面で多重反射が考慮される場合、反射に基づく2n/(n2+1)の最大透過率が生じる。
【0092】
図11は、そのようにして算出された、屈折率72を有するホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板の最大透過率82及び屈折率70を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板の最大透過率80を示す。
【0093】
本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板は、アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板より約1.5パーセントポイント高い最大透過率を有することが読み取れる。アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板は、本計算によれば、反射に基づき可視波長領域で約92.7%より高い透過率に達し得ない。それに比べて、ホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板は、可視波長領域で93.1%にまで達し得る。波長380nmの光に対しては、最大透過率は92.6%であり、波長600nmの光では93%であり、かつ波長780nmの光では93.1%である。これらの値間で、最大透過率は、増大する波長に対してそのつどあくまで単調に上昇する。それに従って、ホウケイ酸ガラスより成る導光板は、アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板と比べて最大達成可能な透過率の観点から好ましいといえる。
【0094】
図12は、120ppm及び22ppmのFe
2O
3含有量をそれぞれ有するアルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板の純透過率90及び94を示す。アルカリアルミノケイ酸ガラスの組成物は、SiO
2 約60質量%、Al
2O
3 16質量%から17質量%まで及びMgO 約4質量%を有する。そのうえ、80ppm及び12ppmのFe
2O
3含有量をそれぞれ有する表1中の例7に従った組成のホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板の純透過率92及び96が示されている。純透過率96を有する導光板は、Pt-実験室用るつぼ内で溶融し、そうして、約600nmを下回る短波長領域での透過率は、生産規模において溶融された板と比べていくらか低い結果となる。示される全ての透過率曲線は、100mmの光路長で測定した。
【0095】
鉄22ppmを有するアルカリアルミノケイ酸ガラスの純透過率94は、可視波長領域にわたって79%から89%までの間で変動する。それに対して、鉄120ppmを有するアルカリアルミノケイ酸ガラスの純透過率90は、545nmで90.8%の最高値を有し、その両側で該透過率は強く低下する。380nmでは、透過率は36.2%に過ぎず、780nmでは、それは57.6%に過ぎない。このことから、アルカリアルミノケイ酸ガラスの透過率は鉄含有量に著しく依存することが読み取れる。
【0096】
それに対して、本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板の透過率の鉄含有量への依存性はずっと低い。鉄12ppmを有するホウケイ酸ガラスの純透過率96は、400nm以上から一貫して明らかに90%を上回り、かつ780nmでは97.8%まで上昇する。鉄80ppmを有するホウケイ酸ガラスの純透過率92も同様に、約400nm以上から一貫して90%を上回る。それは565nmで98.7%の最高値に達し、565nmより上では、それは780nmで94.4%に僅かに低下する。それに従って、殊に赤色光の領域では、鉄含有量の上昇とともに透過率のほんの僅かな減少が確かめられる。しかしながら、これはアルカリアルミノケイ酸ガラスの場合よりずっと低い。それに従って、本発明による導光板のホウケイ酸ガラスは、殊に、異なるFe2O3含有量で、殊に12ppmから80ppmまでの間で、最大で5パーセントポイント、好ましくは3.5パーセントポイントの変動のみが生じる透過率を有する。
【0097】
加えて、曲線92及び96に関して、本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板の透過率は、可視波長領域で400nmから、10パーセントポイント未満、好ましくは5パーセントポイント未満で変動する。したがって、本発明による導光板のホウケイ酸ガラスは、透過曲線をより一様なものにする。
【0098】
そのうえ、鉄80ppmを有するホウケイ酸ガラスの純透過率92は、全体の可視波長領域にわたって、鉄22ppmのみを有するアルカリアルミノケイ酸ガラスの純透過率94より高いことに注目される。つまり、ホウケイ酸ガラスは、ほぼ4倍の多さの鉄含有量のときに、平均してほぼ10パーセントポイント高い純透過率を有する。それに従って、本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板は、特に導光に適している。
【0099】
次の表1には、9つの本発明による導光板のガラス組成物を、それらに備わった特性と共に示している:
【表1】
【0100】
ガラス組成物7については、表の下部に示す不純物濃度を測定した。他のガラス組成物の不純物含有量は、原料の投入量の変化及びこれらの原料のそのつど使用される純度に応じてのみ互いに異なる。
【0101】
ガラス及びそれにより作製された導光板の製造のために、殊に
図9の説明において列記した、特に清浄な原料を用いることができる。それによって、各々のガラスの可能な限り高い純度を達成することができる。
図9の説明において列記した全ての高純度の原料を同時に使用してもよいし、又は個々の高純度の原料を用いてもよい。個々の清浄な原料のみを使用することが、殊に可能である。それというのも、本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板は、上記した通り、問題となる不純物に対して、特に耐性を持つからである。
【0102】
次の表2には、市販の平面ガラスのガラス組成物を示しており、これらは本発明による導光板の製造には殊に適していない:
【表2】
【0103】
ガラス組成とは無関係に、本発明の枠内では、2つの平行な側面と、好ましくは光入射面として用いられるエッジ面とを有する導光板が提供され、ここで、導光板の純透過率は、100mmの光路長で白色光に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、特に有利には少なくとも92%である。白色光に対するその純透過率によって特徴付けられる導光板は、殊に既に上で挙げた更なる特徴を有することができ、かつ照明装置及び/又はディスプレイスクリーンの一部として用いられることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 導光板、 10,11 側面、 13 エッジ面、 15 反射体層、 19 照明装置、 20 照明装置、 21 光源、 23 ディスプレイ装置、 25 基板、 27 TFT層、 29 LCD層、 31 基板、 33 スペース、 35 ケーシング、 37 薄い厚さ、 39 ケーシングフレーム、 41 板の膨張、 16 有彩色点(導光板から散乱放出された光に相当)、 17 無彩色点、 18 有彩色点(導光板に入射された光に相当)、 ΔWy 光源から入射されて再び導光板からディスプレイユニットの方向に該板全体で出て行く光の色度座標のずれ、 50 アルミノケイ酸ガラスより成る第一のタイプの導光板の純透過率、 52 アルミノケイ酸ガラスより成る第二のタイプの導光板の純透過率、 54 PMMA-光導体の純透過率、 56 急激な落ち込み、 60 1mmの光路長で測定した透過率、 62 8mmの光路長で測定した透過率、 70 アルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板、 72 本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板、 80 屈折率70を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板の最大透過率、 82 屈折率72を有する本発明によるホウケイ酸ガラスより成る導光板の最大透過率、 90 120ppmのFe2O3含有量を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板の純透過率、 94 22ppmのFe2O3含有量を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスより成る導光板の純透過率、 92 80ppmのFe2O3含有量を有する表1中の例7に従った組成のホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板の純透過率、 96 12ppmのFe2O3含有量を有する表1中の例7に従った組成のホウケイ酸ガラスより成る本発明による導光板の純透過率