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特許7267991レーザ材料加工のための方法、およびレーザ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】レーザ材料加工のための方法、およびレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230425BHJP
   B23K 26/042 20140101ALI20230425BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/042
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020505269
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018070495
(87)【国際公開番号】W WO2019025328
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】102017213511.5
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボリス レゴー
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086173(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02894004(EP,A1)
【文献】特開2007-98416(JP,A)
【文献】特開2017-077577(JP,A)
【文献】特表2016-524539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0042133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ材料加工のための方法であって、
本来のレーザ加工プロセスの前に、第1の方法ステップにおいて
レーザ加工機(1)の作業領域内におけるレーザ加工ヘッド(2)、および/または
・前記レーザ加工ヘッド(2)の可動の部分
の位置変化が、
・焦点平面内のレーザビーム(3)の焦点(F)の横方向の場所、または
・前記レーザ加工ヘッド上の基準点に対して相対的な前記レーザビーム(3)の焦点(F)の横方向の場所
に対して及ぼす影響を検出し、
次いで、さらなる方法ステップにおいて、前記レーザ加工プロセスの前および/または最中に、事前に検出した前記位置変化に基づいて、ビームガイダンス内にある少なくとも1つの光学要素(4~9)および/または少なくとも1つの他の光学要素(4~9)の位置設定によって、前記焦点(F)を、前記焦点平面内の規定の横方向の場所(Lsoll)、または前記基準点に対して相対的な規定の横方向の場所(Lsoll)へと設定する、
方法。
【請求項2】
前記焦点(F)の横方向の場所変化をもたらす少なくとも1つのパラメータを検出し、 前記少なくとも1つのパラメータと、前記焦点平面内の前記焦点の場所、または前記レーザ加工ヘッド上の前記基準点に対して相対的な前記焦点の場所との間の対応関係を保存する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ビームガイダンス内にある前記光学要素のうちの少なくとも1つの光学要素(6,7)を、アクチュエータで調整する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記規定の場所(Lsoll)は、前記レーザ加工ヘッド(2)のレーザノズル(20)の中心点に対応するか、または前記レーザノズル(20)の中心点に対して所期のオフセットを有し、
前記レーザ加工プロセスの最中に、前記焦点(F)を、前記レーザノズル(20)の中心に位置決めするか、または所期のように中心から外れた位置に位置決めする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ加工プロセスの最中に、前記焦点(F)の横方向の位置を検出し、
記焦点(F)を、前記規定の場所(Lsoll)へと閉ループ制御する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記レーザ加工プロセスの前および/または最中に、レーザノズル(20)の場所および/または形状を検出し、
前記レーザノズル(20)の中心点または前記レーザノズル(20)の中心点に対する所期のオフセットを、規定の場所(Lsoll)として指定する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
レーザ加工機(1)であって、
当該レーザ加工機(1)は、
レーザ加工ヘッド(2)を有し、
レーザノズル(20)を有し、
焦点平面内の焦点(F)の場所、または前記レーザ加工ヘッド(2)の基準点に対して相対的な焦点(F)の場所を検出するための第1の測定装置(105)を有し
前記レーザ加工機(1)の作業領域内における前記レーザ加工ヘッド(2)の位置、および/または
・前記レーザ加工ヘッド(2)の調整可能な部分の位置
と、前記焦点平面内の前記焦点(F)の場所との間、または前記レーザ加工ヘッド(2)上の基準点に対して相対的な焦点(F)の場所との間の対応関係を保存するためのメモリを有し
ーザビームのビーム経路上にある少なくとも1つの光学要素(4~9)の位置を設定するための、開ループ制御部(37)によって駆動可能な設定手段を有する、
レーザ加工機(1)。
【請求項8】
前記開ループ制御部は、第1の閉ループ制御部(107)を有し、前記第1の閉ループ制御部(107)によって前記焦点平面内の前記焦点(F)の場所が閉ループ制御される、
請求項7記載のレーザ加工機。
【請求項9】
前記レーザノズル(20)の横方向の場所および/または形状を検出するための第2の測定装置(110)が設けられており、
前記開ループ制御部(37)は、前記レーザノズル(20)に対する前記焦点(F)の場所を閉ループ制御するための第2の閉ループ制御部(113)を有する、
請求項7または8記載のレーザ加工機。
【請求項10】
1の閉ループ制御部(107)と第2の閉ループ制御部(113)とは、カスケード接続されている、
請求項9記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ材料加工のための方法と、レーザ加工機とに関する。
【0002】
レーザ材料加工のための加工機における今日のレーザ加工ヘッド、とりわけレーザ切断ヘッドは、加工されるべき被加工物上におけるレーザ焦点の横方向の場所誤差を十分に小さく保つために、構造的に高精密に構成されている。レーザノズルにおけるレーザ焦点の典型的な場所公差は、50μmである。これにより、レーザ加工ヘッド内のビーム成形レンズの許容される場所誤差は、5μm未満となる。とりわけ、ズーム機能を有するレーザ加工ヘッドの場合、すなわち、ヘッドに配置された(1つまたは複数の)レンズをビーム伝播方向において調整する手段を有するレーザ加工ヘッドの場合には、高精密性のために、レーザ加工ヘッドの製造において相応に高いコストが必要である。このようなズーム光学系の場合には、例えば、回転対称の低伸縮性の構造が必要である。さらに、発生した機械的な誤差を補償することができるように構造を構成しなければならない。すなわち、レーザ加工ヘッド内にある光学要素の位置、および/または加工ヘッドにつながる導光ファイバのファイバ端部の位置は、レーザ加工ヘッドの運転開始時に、指定された基準点(例えば、切断ノズル)に対して相対的に、焦点平面内のレーザ焦点の正確な(手動での)横方向の調整を実施することができるように、ビーム方向に対して垂直な方向における光学要素またはファイバ端部の変位および/または傾斜を許容する自由度を有していなければならない。
【0003】
動作中、加工ヘッド内にある光学要素(レンズ、ミラー、機械的な収容部)は、大きなレーザ出力が導入されることによって加熱され、加熱と冷却とが交互に行われることによって熱変形する可能性がある。この変形は、緩慢に(1秒よりも長い期間)発生し、被加工物上のレーザ焦点の横方向の場所誤差ももたらす。COレーザ切断機の場合によくあるように、加工機におけるレーザビームのビームガイダンスが長い場合には、加工機ホール内の温度の変化、または加工機に対する日射も、ビーム場所変化をもたらす可能性がある。さらに、移動システムのコンポーネントの(再現可能な)傾斜または変位により、加工機における種々異なる加工位置において、レーザ焦点の横方向の場所誤差が発生する可能性がある。同等にして、焦点場所および/またはビーム直径を適合させるためにレンズのZ位置が調整可能である光学系の場合には、製造起因の公差によって、それぞれ異なるZ位置においてレンズの横方向の場所がそれぞれ異なってしまう可能性がある。これもまた、加工物上のレーザ焦点の再現可能な横方向の場所誤差をもたらす。
【0004】
ビーム伝播方向に対して垂直な方向における集束レンズに対して相対的なレーザノズルの横方向の場所も、ノズルの製造公差に起因して公差を有する。レーザビームの場所が不変であるにもかかわらず、ノズルの幾何形状のずれにより、レーザ焦点のノズル中心性がずれてしまう。
【0005】
先行する段落で説明した各シナリオは、レンズ位置またはミラー位置がそれぞれ同じである場合に、加工ヘッド内における光学要素の構造的または製造起因の機械的な位置誤差によって再現可能なビーム場所誤差がもたらされるが、その一方で、熱的作用または切断ノズルの交換によって引き起こされるビーム場所誤差は、再現不可能であるという点で、それぞれ異なっている。
【0006】
ビーム場所誤差を補償するために、例えば、独国特許出願公開第102007013623号明細書または欧州特許出願公開第2894004号明細書から、加工ヘッド内に配置されたミラーの傾斜を変化させるか、ビーム伝播方向に対して垂直な方向において集束レンズを変位させることにより、レーザビームを切断ノズルの中央に合わせることが公知である。
【0007】
独国特許出願公開第102011003717号明細書からは、画像検出ユニットを用いて、ノズルの円形の内側輪郭を検出し、円の中心点としてノズル中心を検出することが公知である。ノズルに対して相対的なレーザビームの位置は、閉ループ制御装置を用いて、工具の中心点がノズル中心と一致するように補正される。
【0008】
本発明の課題は、レーザ加工ヘッド内におけるビーム場所補正をさらに改善することである。
【0009】
本発明によれば、上記の課題は、レーザ材料加工のための方法であって、本来のレーザ加工プロセスの前に、レーザ加工機および/またはレーザ加工ヘッドの可動の部分の作業領域内での、例えばレーザ加工ヘッド内のビームガイダンス内の少なくとも1つの光学要素の位置変化、および/またはレーザ加工ヘッドの位置変化が、焦点平面内のレーザビームの焦点の場所、またはレーザ加工ヘッド上の基準点、とりわけノズル中心点に対して相対的なレーザビームの焦点の場所に対して及ぼす影響を検出し、次いで、レーザ材料加工の前および/または最中に、事前に検出した位置変化に基づいて、レーザのビームガイダンス内、とりわけレーザ加工ヘッド内にある少なくとも1つの光学要素の位置設定によって、焦点を、焦点平面内の規定の場所、または基準点に対して相対的な規定の場所へと設定する方法によって解決される。レーザ材料加工の前および/または最中に開ループ制御されて設定される少なくとも1つの光学要素は、自身の位置変化によって焦点の横方向の場所変化を引き起こす要素のうちの1つとすることができる。その場合、レーザ材料加工の前および/または最中に、焦点の場所変化をもたらした焦点の位置変化の検出中における空間方向とは異なる空間方向に、光学要素が移動または傾斜される。ただし、好ましくは、焦点の位置変化を補償するために、レーザビームのビームガイダンス内にある別の光学要素が設定される。この光学要素の調整によって焦点のどのような位置変化が引き起こされるかを、把握することができる。代替的または追加的に、この光学要素の調整による影響を、レーザ加工機の運転開始時に、またはレーザ加工プロセスの開始前に測定することができる。
【0010】
複数の光学要素の位置変化が焦点平面内の焦点の場所に対して及ぼす影響が検出されるが、焦点平面内の焦点の規定の横方向の場所を設定するために、これらの光学要素のうちの一部のみを設定することが考えられる。レーザ加工ヘッドと、その中に配置された光学要素とが、ビームガイダンスの一部であるということに留意すべきである。
【0011】
本発明による方法によれば、レーザ加工機のビームガイダンス、および/またはレーザ加工ヘッドを、高度な絶対精密性が要求されることなく、さらには、光学要素またはレーザ加工ヘッドを位置決めする際における十分な繰り返し精度を以て、構造的に構成することが可能となる。例えば、ズーム光学系のレンズを、正確に平行でない軸上で移動させると、それぞれの設定されたレンズ位置ごとに、焦点平面内のレーザ焦点の再現可能な横方向の場所が得られる。この測定された場所は、設定されたレンズ位置と一緒に、例えばレーザ加工機の開ループ制御部に保存される。このようにして、焦点を所期のように位置決めするため、例えばレーザノズルの中央に合わせて位置決めするために、レーザ加工機の開ループ制御部において補正値を特定して、保存することができる。測定されていない中間値は、適切な方法で補間されることができる。レーザ加工機におけるレーザビームのフリービームガイダンスの場合には、レーザ加工ヘッドのそれぞれ異なる作業空間位置ごとにも焦点の場所変化が得られ、この位置変化を同様に特定して、保存することができる。加工機またはレーザ加工ヘッドの製造時における不正確性を、本発明による方法を用いて補償することが可能であり、この補償は、加工プロセスの最中に、焦点平面内の横方向の焦点位置に対して特定された補正値を利用し、加工ヘッドおよび/またはビームガイダンス内の光学要素のそれぞれの設定された位置において、所期の横方向の焦点位置を開ループ制御された状態で設定することによって実施される。場所誤差の補償は、加工機のビームガイダンス内、とりわけレーザ加工ヘッド内にある少なくとも1つの光学要素を変位および/または傾斜させることによって実施される。このようにして、ビーム伝播方向に対して垂直な方向においてレンズ位置およびファイバ位置を手動で調整するための自由度を省略することが可能となる(ただし、省略しなくてもよい)。本発明による方法によれば、レーザ加工ヘッド内および/またはビームガイダンス内における機械的な公差を、加工プロセスの前または開始時にもう既に迅速に補償することが可能となり、すなわち、オンライン測定システムの前にもう既に、閉ループ制御しながらレーザ加工プロセスに介入することが可能となる。このことは、レーザ焦点の横方向の場所が最初から誤っていると、工具または被加工物の損傷がもたらされる可能性があるので、重要である。
【0012】
焦点の横方向の場所変化をもたらす少なくとも1つのパラメータ、例えばビーム伝播方向における加工ヘッドのレンズの位置を検出し、少なくとも1つのパラメータと、焦点平面内の焦点の場所、または基準点に対して相対的な焦点の場所との間の対応関係を保存することができる。とりわけ、複数のパラメータ、例えば、複数のビーム成形レンズのZ位置、または加工空間内の加工ヘッドのX、Y、Z位置を検出し、複数のパラメータに関する対応関係を保存することができる。対応関係は、例えばテーブルまたは補正関数の形態で保存されることができる。
【0013】
レーザ焦点の横方向の場所補正のために使用される、ビームガイダンス内にある少なくとも1つの光学要素を、アクチュエータで調整することができる。すなわち、本発明によれば、駆動可能なモータによる補正軸を設けることができる。例えば、モータで横方向に(ビーム伝播方向に対して垂直な方向に)調整可能なレンズ、またはレーザ加工ヘッド内にあるモータで傾斜可能なミラーによって、保存された補正値または補正関数に基づいて、レーザビームの場所誤差を補償することができるか、または焦点の規定の場所を設定することができる。
【0014】
レーザ加工ヘッドまたはレーザ加工ヘッド内の光学要素の位置と、焦点平面内のレーザ焦点の横方向の場所、または基準点に対するレーザ焦点の横方向の場所との間の相関関係の特定と、補正値の特定とは、レーザ加工機の運転開始時の基本調整の際に、またはレーザ加工ヘッドの指定された動作期間の後に、適切な測定装置を用いて、例えば、低出力のビームと、加工平面(焦点平面)上に配置されたカメラとを用いて、または独国特許出願公開第102011007176号明細書に記載されているような焦点センサを用いて、実施することができる。
【0015】
さらに、焦点を、レーザ加工ヘッドのレーザノズルの中心に位置決めするか、または所期のように中心から外れた位置に位置決めすることができる。とりわけ、規定の場所は、レーザ加工ヘッドのレーザノズルの中心点に対応するか、またはレーザノズルの中心点に対して所期のオフセットを有することができる。
【0016】
レーザ加工プロセスの最中に、とりわけレーザノズルに対するレーザ焦点の横方向の位置を検出し、レーザ焦点を、規定の場所へと、とりわけレーザノズルの中心の位置へと閉ループ制御することができる。この方法ステップを実施する際には、開ループ制御された位置補正のためにも使用される、ビームガイダンス内、とりわけレーザ加工ヘッド内にある(1つまたは複数の)同一の光学要素を、アクチュエータで調整すると有利である。これによって、閉ループ制御が簡単になる。したがって、本発明によれば、事前に保存された補正値に基づく、開ループ制御されたビーム場所設定またはビーム場所補正を、閉ループ制御方法と組み合わせることができる。開ループ制御された補償に加えて、レーザ加工プロセスの最中に、例えば熱的作用に起因して生じるレーザ焦点の横方向の場所誤差が、(場合によってはそれぞれの)適切な測定システムによって、例えば、レーザ加工ヘッドに配置された焦点場所センサ、または加工ヘッドに配置されたカメラによって測定される。適切な測定システムは、例えば、独国特許出願公開第102011007176号明細書または独国特許出願公開第102011003717号明細書に記載されている。このようにして得られた測定値を、補正軸を用いて焦点の場所を補正するために、制御ループにおいて利用することができる。すなわち、開ループ制御された調整に、とりわけ同一の光学要素の、閉ループ制御された調整を重ね合わせることができる。
【0017】
レーザノズルの交換後、上述した測定システムを用いて、とりわけ、レーザ加工ヘッドに配置されたカメラを用いて、レーザノズルの中心点を特定することができ、新しい目標値として、すなわち、開ループ制御された横方向の位置決めのための、ならびに場合によっては、レーザ焦点の横方向の場所の閉ループ制御のための規定の場所として指定される。これに続いて、加工プロセスの最中に、レーザ焦点の場所をノズル中心点へと開ループ制御することができ、場合によっては閉ループ制御することができる。とりわけ、レーザ加工プロセスの前および/または最中に、レーザノズルの場所および/または形状を検出し、レーザノズルの中心点を、規定の場所として指定することができる。
【0018】
本発明によれば、カスケード制御を実現することが可能であり、このカスケード制御では、熱的作用に起因するレーザ焦点の横方向の場所変化が、内側の制御ループの測定システムを介して、焦点センサを用いて検出および補正され、この制御ループのための入力量が、外側の閉ループ制御部によって規定され、この外側の閉ループ制御部は、ノズル交換後にレーザノズルの場所を特定して、内側の制御ループのための目標値として規定する。
【0019】
本発明の枠内にはさらに、レーザ加工機が含まれ、当該レーザ加工機は、レーザ加工ヘッドを有し、レーザノズルを有し、焦点平面内の焦点の場所、またはレーザ加工ヘッドの基準点に対して相対的な焦点の場所を検出するための第1の測定装置を有し、レーザビームのビームガイダンス内、とりわけレーザ加工ヘッド内にある少なくとも1つの調整可能な光学要素の位置、および/またはレーザ加工機の作業領域内におけるレーザ加工ヘッドの位置、および/またはレーザ加工ヘッドの調整可能な部分の位置と、焦点平面内の焦点の場所との間、またはレーザ加工ヘッドの基準点に対して相対的な焦点の場所との間の対応関係を保存するためのメモリを有し、レーザビームのビーム経路上にある少なくとも1つの調整可能な光学要素の位置を設定するための、開ループ制御部によって駆動可能な設定手段を有する。そのようなレーザ加工機では、光学要素または加工ヘッドまたは加工ヘッドの一部の位置をどのように調整すれば、焦点平面内の焦点の横方向の場所、または基準点に対する焦点の横方向の位置がどのように調整されることとなるか、を検出することができる。この対応関係を検出および保存することができ、保存された対応関係に基づいて、焦点の横方向の場所を、焦点平面内の規定の所期の場所へと、または基準点に対する規定の所期の場所へと設定することができる。これによって、レーザ加工機をより低コストに製造することが可能となる。なぜなら、例えば光学要素を取り付ける際、およびガイドする際に、公差がさほど厳密でない状態でレーザ加工機を製造することが可能となるからである。公差は、設定手段によって再現可能に補整されることができる。この場合、規定の場所への焦点の設定は、自身の位置変化と、焦点の場所変化との間の対応関係が保存されていない別の光学要素を、アクチュエータで調整することによって実施することができる。
【0020】
設定手段が、開ループ制御部によって駆動可能であることによって、設定を機械式に実施することが可能となり、したがって、操作者による手動での設定がもはや必要なくなる。
【0021】
さらに、光学要素の位置の駆動可能な設定により、加工プロセスの最中に焦点の場所を補正することが可能であり、このことは、手動での調整のみが設けられている場合には不可能である。
【0022】
開ループ制御部は、第1の閉ループ制御部をさらに有することができ、第1の閉ループ制御部によって焦点平面内の焦点の場所、または基準点に対する焦点の場所が設定される。このために、閉ループ制御部には、焦点平面内の焦点の所定の横方向の場所、または基準点に対する焦点の所定の横方向の場所を設定するために選択された、光学要素の位置と、焦点平面内の焦点の場所、または基準点に対する焦点の場所との間の対応関係からの制御偏差が供給されると共に、測定装置によって検出された、焦点平面内の実際の焦点場所、または基準点に対する実際の焦点場所が供給される。したがって、まず始めに焦点の場所が設定された後、とりわけ熱的影響に起因してこの場所の変化が生じた場合に、この場所を追跡することができる。
【0023】
レーザノズルの横方向の場所および/または形状を検出して、ノズル中心を特定するための第2の測定装置を設けることができ、開ループ制御部は、レーザノズルに対する焦点の場所を閉ループ制御するための第2の閉ループ制御部を有することができる。このようにして、レーザノズルの(例えば、場所および/または形状の)変化に起因した位置変化を考慮することができる。
【0024】
第1の閉ループ制御部と第2の閉ループ制御部とを、カスケード接続することができる。このことはつまり、第2の閉ループ制御部の出力量が、第1の閉ループ制御部の入力量に対して影響を及ぼすことができるということを意味する。
【0025】
有利な発展形態は、図面および特許請求の範囲に記載されている。本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、以下の説明から明らかとなり、この説明では、図面を参照しながら本発明の実施例が説明されている。特許請求の範囲および明細書に記載されている特徴は、それぞれ個々に、または任意の組み合わせで、本発明の本質を成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】レーザ加工機の概略図である。
図2】レーザ加工機の代替的な実施形態を示す図である。
図3】本発明による方法を説明するための線図である。
【0027】
図1は、レーザ加工ヘッド2を有するレーザ加工機1を示す。導光ファイバ201を介してレーザ加工ヘッド2へとガイドされるレーザビーム3のビーム経路上に、複数の光学要素5,6,7,8,9が配置されている。光学要素5~8は、ビーム成形して、レーザビーム3を被加工物10上に位置合わせするために使用され、光学要素9は、他の光学要素を汚染から保護するための保護ガラスである。レーザビーム3は、被加工物10の表面10a上に集束され、したがって、本実施例における被加工物表面10aは、焦点Fが存在している焦点平面である。
【0028】
焦点平面内、すなわち被加工物表面10a上における焦点Fの場所は、とりわけ、両矢印11,12,および15の方向における1つまたは複数の光学要素5,6,および8の位置決めによって決まる。本発明によれば、光学要素5~8のうちの少なくとも1つは、設定手段によって、とりわけ駆動装置によってアクチュエータで調整可能であり、これにより、焦点平面に対して垂直な方向における焦点Fの場所が変化することなく、被加工物表面10a上の、すなわち焦点平面内の焦点Fの場所変化が引き起こされるようになっている。例えば、光学要素6は、ビーム伝播方向に対して垂直な方向において両矢印方向13にモータによって調整可能であってもよいし、または光学要素7は、軸14を中心としてモータによって旋回可能であってもよい。
【0029】
図示の例では、レーザ加工プロセスの開始前に、レーザビーム3の伝播方向における1つまたは複数の光学要素5,6,または8の位置が変化させられ(両矢印11,12,および15)、そして、焦点平面内の焦点Fの(横方向の)場所に対して及ぼされる影響が検出される。1つまたは複数の光学要素5,6,または8の位置変化と、焦点Fの横方向の場所との間の対応関係が保存される。次いで、この対応関係の把握に基づいて、レーザ加工プロセスの開始時および最中にもう既に、焦点平面内の焦点Fの場所を、光学要素6または7を用いて開ループ制御しながら、規定の位置Lsollへと設定することができる。例えば焦点Fを、レーザノズル20の中心に位置決めすることができる。さらに、レーザ加工プロセスの最中に、レーザノズル20における焦点Fの位置を追加的に監視して、規定の位置Lsollへと閉ループ制御することができる。この際、1つまたは複数の光学要素の位置変化が焦点の横方向の場所に対して及ぼす影響が検出および保存されている場合には、光学要素7を考慮しないままでもよい。光学要素7の位置変化が焦点場所に対して及ぼす影響を、検出および保存することも考えられる。さらに、焦点場所を規定の焦点場所へと設定するために、光学要素6および7に加えてさらに別のまたは代替的な光学要素5,8を調整することが考えられる。例えば、焦点場所を規定の焦点場所へと設定するために、光学要素5~8のうちの1つだけを調整することもあり得る。
【0030】
焦点Fの場所を検出するために複数の選択肢が考えられる。光学要素9を、焦点平面に対して傾斜角αで配置された保護ガラス(薄い平面板)の形態で構成することができる。光学要素9は、レーザ加工ヘッド2の内部に配置された光学要素を汚染から保護するため、例えばレーザビーム3による被加工物10の加工時に発生し得る煙または飛沫から保護するために使用されている。光学要素9の上流のビーム経路上に、集束レンズとして構成された光学要素8が配置されており、この光学要素8は、レーザビーム3を被加工物10上に、より正確に言えば被加工物10の表面10a上に集束させるために使用されている。この場合、被加工物10の表面10aから光学要素8までの距離が、光学要素8の焦点距離fに対応する。光学要素9の、光学要素8を向いた表側面9aと、光学要素とは反対側を向いた裏側面9bとの両方において、それぞれの側面9a,9bに反射防止コーティング(図示せず)が被着されているにもかかわらず、レーザビームのうちのわずかな部分が反射される。光学要素9において反射されて戻ってきたこのレーザビーム21a,21bは、折り畳みミラー22を介して偏向され、焦点平面に対して同じく傾斜角αで(ただし光学要素9とは反対方向に)傾斜された空間分解式検出器23に衝突する。
【0031】
傾斜角αは、焦点距離fと、光学要素8から光学要素9までの距離とに依存して、反射されて戻ってきたレーザビーム21a,21bが、レーザビーム3のビーム経路から出射されるような大きさに選択され、すなわち、光学要素8には衝突しないが、レーザビーム3に隣接して配置された検出器23によって検出され得るような大きさに選択される。傾斜角αの典型的な値は、5°~25°の間である。
【0032】
焦点平面に対して垂直な方向におけるレーザビーム3の焦点位置は、検出器23上のレーザビーム21a,21bの大きさまたは直径に基づいて特定することができる。なぜなら、衝突領域の大きさは、焦点位置に依存しているからである。さらに、焦点平面内のレーザ焦点Fの場所を、検出器23上のレーザビーム21a,21bの衝突位置から特定してもよい。光学要素9の相異なる両側面9a,9bから反射して戻ってきたそれぞれのレーザビーム21a,21bは、検出器23上のそれぞれ異なる地点またはそれぞれ異なる衝突領域に衝突し、したがって、焦点センサ25の構成部分であって、かつ検出器23に結合されている画像評価装置24を用いて、検出された各レーザビーム21a,21bを、光学要素9のそれぞれの側面9a,9bに対応付けることが可能である。
【0033】
焦点センサ25の機能方式のさらなる詳細については、独国特許出願公開第102011007176号明細書を参照されたい。
【0034】
代替的または追加的に、カメラ30を設けることができ、カメラ30は、本例では落射方式で動作され、すなわち、被加工物10の上方に追加的な照明源31が設けられており、この照明源31は、照明ビーム33を、部分透過性のミラー32を介してレーザビーム軸と同軸でビーム経路に入射させる。追加的な照明源31を、例えばレーザ加工ヘッド2の外部に配置して被加工物10へと向けることもできる。これに代えて照明源31を、レーザ加工ヘッド2の内部に配置してもよいが、ただし、レーザビームと同軸で被加工物10へと向けることはできない。
【0035】
照明ビーム33は、偏向ミラー34を介して被加工物10へと向けられる。被加工物10から反射されたビームも、同じく偏向ミラー34を介して偏向され、集束装置35によって集束された後、カメラ30へと向けられる。
【0036】
このようにしてカメラ30は、被加工物表面10aの一部の高解像度画像を撮影することができる。画像は、レーザノズル20の円形の内部輪郭によって画定される。評価装置36は、撮影された画像を評価するために使用されると共に、とりわけ、被加工物10上の焦点Fの位置または場所を検出するために使用される。評価装置36を、焦点センサ25と同じように開ループ制御装置37に接続することができ、開ループ制御装置37は、焦点平面内の焦点Fの位置、および/またはレーザノズル20の中心に対する焦点Fの位置を開ループ制御および/または閉ループ制御するために使用され、光学要素6または7の調整を引き起こす。
【0037】
図2は、レーザ200によって生成されるレーザビーム3のフリービームガイダンスを伴う、レーザ加工機1の代替的な変形例を示し、なお、対応する構成要素には、図1と同一の参照符号が付されている。レーザビーム3は、複数の異なる光学要素4~9を介してレーザノズル20へとガイドされ、その一方で、レーザ加工ヘッド20は、作業領域内においてx,y,およびz方向に移動させられ、光学要素4~9のうちの少なくとも1つは、アクチュエータで調整可能であり、好ましくは、少なくとも光学要素7および8が、アクチュエータで調整可能である。例えばレーザ加工ヘッド20をガイドする際、または光学要素4~9を取り付ける際における製造誤差によって、レーザ加工ヘッド20の位置決めが種々異なっている場合に、光学要素4~9の位置変化または傾斜が発生する可能性があり、この位置変化または傾斜によってレーザ焦点の横方向の場所変化がもたらされる。この横方向の場所変化は、再現可能であり、先行する段落において説明したように、例えば光学要素(ミラー)8の傾斜の開ループ制御によって補償することが可能である。
【0038】
別の実施形態(図示せず)では、レーザ加工機の加工ヘッドを複数の部分から構成することができ、したがって、例えばビーム直径を変化させるために、光学要素が変位されるのではなく、加工ヘッドの下側部分が上側部分に対して相対的に変位されることによって、ビーム伝播方向におけるノズルの場所が変化される。このノズルダクトの軸が、ビームの伝播方向に対して平行でない場合には、ビーム中心点とノズル中心点との間に再現可能なオフセットが生じるが、このオフセットは、上述したように開ループ制御して補償することが可能である。
【0039】
図3の概略図は、本発明による方法を説明するために使用されている。まず始めに、レーザ加工プロセスの前の位置100において、例えばレーザ加工機の運転開始時に、図1のレーザ加工ヘッド内において、ビーム伝播方向における光学要素5,6,または8の1つまたは複数の姿勢または位置が変化させられるか、または図2の加工機における加工ヘッド2の位置(ひいては間接的に、光学要素4~9の位置)が変化させられ、そして、そのような位置変化が焦点平面内の焦点Fの場所に対して及ぼす影響が検出される。この検出は、第1の測定装置105または第2の測定装置110によって実施することができる。1つまたは複数の光学要素4~9の位置変化および/またはレーザ加工ヘッド2の位置変化と、焦点Fの場所との間のこの対応関係が保存される。位置101を参照のこと。例えば、対応関係をテーブルに格納することができる。焦点の目標場所、すなわち規定の場所Lsollと、このために必要とされる1つまたは複数の光学要素4~9の設定とが規定される。矢印102を参照のこと。これらの値に基づき、例えば、図1の少なくとも1つの光学要素6または7(または例えば図2の光学要素6,7,または8)の設定手段を駆動することによって、焦点Fの横方向の場所が設定される。さらに設定手段は、制御経路103の操作器103aであってもよい。外乱104、例えば温度変化が、この設定に対して影響を及ぼす可能性があるので、レーザ加工プロセスの最中に、焦点Fの横方向の場所が第1の測定装置105によって検出され、加算器106に供給され、加算器106の出力が第1の閉ループ制御部107に送られる。
【0040】
焦点Fの横方向の場所を、とりわけ、この焦点Fがレーザノズル20に対して中心に位置するように設定することができ、このことは、ブロック108によって示されている。ノズル中心の位置は、外乱109、例えばレーザノズル20の位置および/または形状の変化に起因して変化する可能性がある。このような変化は、レーザノズル20の交換によって、またはレーザ加工プロセス中のノズルの損傷または汚染によって引き起こされる可能性がある。したがって、図示の例では、レーザノズル20の中心点の場所と、ノズル中心に対する焦点Fの場所とが、第2の測定装置110によって検出される。測定結果は、加算器111に供給され、加算器111にはさらに、レーザノズル20またはレーザノズル中心に対する焦点Fの横方向の場所の目標値112も供給される。制御偏差が、第2の閉ループ制御部113に供給され、第2の閉ループ制御部113の出力も、加算器106に送られる。したがって、閉ループ制御部107と閉ループ制御部113とは、カスケード接続されている。
【0041】
加算器114において、閉ループ制御部107の(1つまたは複数の)操作量が、矢印102に従って規定された光学要素4~9の位置に加算される。
【0042】
少なくとも閉ループ制御部107,113を、開ループ制御部37の構成要素とすることができる。焦点センサ25と、コンポーネント30~36を有するアセンブリとを、第1の測定装置105および/または第2の測定装置110とすることができる。要素106,107,114,103a,103,105は、内側の制御ループを形成することができる。
図1
図2
図3