(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】グリップ・セキュリティを測定する摩擦ベースの触覚センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20230425BHJP
G01L 5/166 20200101ALI20230425BHJP
【FI】
G01L5/00 G
G01L5/166
(21)【出願番号】P 2020508499
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 AU2018050859
(87)【国際公開番号】W WO2019033159
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-19
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】522446524
【氏名又は名称】コンタクタイル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】レッドモンド,ステファン ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ハミス,ヘバ
(72)【発明者】
【氏名】シア,ベンジャミン
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257343(JP,A)
【文献】国際公開第2010/101174(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045685(WO,A1)
【文献】実開昭60-061632(JP,U)
【文献】特開2009-255191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0240691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00
G01L 5/166
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ・セキュリティを査定するためのシステムであって、前記システムは、
少なくとも、第1の接触面領域および第2の接触面領域を有する接触面であって、前記 第1の接触面領域は、前記第2の接触面領域より少なく滑りに抵抗するように構成される、接触面と、
前記第1の接触面領域内での滑りを検出するためのセンサと、
を含み、
前記接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、前記第1の接触面領域内の突出部は、前記第2の接触面領域内の突出より小さい距離だけ前記基底面から離れて延びる、システム。
【請求項2】
前記突出部は、変形可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記突出部は、前記基底面から延びる細長いシャフトである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記突出部は、アレイを形成するように位置決めされる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記突出部は、お互いと独立に移動するように構成される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の接触面領域内の突出部の基底面からの非圧縮の距離は、前記第2の接触面領域内の突出部の基底面からの非圧縮の距離より小さい、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記突出部は、使用中に、一貫したグリップ圧力の下で、前記第1の接触面領域内の突出部への法線力が、前記第2の接触面領域内の突出部への法線力より小さくなるように構成される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
ある突出部の近位端は、前記基底面に接続され、前記突出部の遠位端は、丸められた先端を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記接触面は、主にシリコーンから製造される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
各突出部は、前記基底面から前記突出部の遠位端に向かって延びる内部空洞を含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記内部空洞は、形状において円錐形である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサは、前記基底面の背後で各前記内部空洞に隣接する位置に位置決めされる、請求項10または請求項11のどちらかに記載のシステム。
【請求項13】
前記内部空洞より小さい直径を有する開口部は、前記センサと前記内部空洞との間に配置される、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記センサは、所与の突出部内で前記基底面の前記内部空洞側に位置決めされたLEDから発し、前記内部空洞の遠位端またはその付近に配置された反射器から反射し、前記開口部を介して前記センサに移動する光を検出するように構成された4分割フォトダイオードを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記センサは、初期滑りを検出するように適合される、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサは、摩擦を推定するように適合される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、前記突出部は、それぞれ内部空洞を有し、前記センサは、CCDアレイを含み、前記システムは、前記CCDアレイが、前記基底面から前記内部空洞内に発し、前記内部空洞の遠位端に配置された反射器から反射し、前記基底面内の開口部を介して前記センサに移動する光を検出するように構成される、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、前記突出部は、内部空洞を有し、前記センサは、CMOS光感知アレイを含み、前記システムは、前記CMOS光感知アレイが、前記基底面から前記内部空洞内に発し、前記内部空洞の遠位端に配置された反射器から反射し、前記基底面内の開口部を介して前記センサに移動する光を検出するように構成される、請求項1乃至17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
滑り事象が検出される速度は、補正アクションが要求される緊急性のレベルもしくは補正アクションに要求される力の大きさを示す、請求項1乃至18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
グリップ・セキュリティを査定するための方法であって、前記方法は、
少なくとも、第1の接触面領域および第2の接触面領域を有する接触面を提供し、前記第1の接触面領域は、前記第2の接触面領域より少なく滑りに抵抗するように構成され、
前記接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、前記第1の接触面領域内の前記突出部は、前記第2の接触面領域内の前記突出部より短い距離だけ前記基底面から離れて伸び、
前記第1の接触面領域内での滑りを検出する、
方法。
【請求項21】
前記突出部は、前記基底面から延びるように位置決めされ、突出部のアレイを形成する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
個々の突出部の移動は、お互いと独立または部分的に独立である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の接触面領域内の突出部の基底面からの非圧縮の高さは、前記第2の接触面領域内の突出部の非圧縮の高さより短い、請求項20乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記突出部は、前記第1の接触面領域内の突出部によって経験される法線力が、前記第2の接触面領域内の突出部によって経験される法線力より少なくなるように構成される、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記突出部は、柱として形成される、請求項20乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
突出部の第1の端は、前記基底面に接続され、前記突出部の第2の対向する端は、丸められた先端を形成する、請求項20乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記接触面は、主にシリコーンから製造される、請求項20乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
各突出部は、前記基底面から内部空洞内に発し、前記内部空洞の遠位端に配置された反射器から反射し、前記基底面内の開口部を介してセンサに移動する光を検出するように構成されたセンサに関連する、請求項20乃至27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記センサは、初期滑りを検出する手段を含む、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記センサは、摩擦を推定する手段を含む、請求項
28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記センサは、4分割フォトダイオードを含む、請求項
28乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記センサは、CCD光感知アレイを含む、請求項
28乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記センサは、CMOS光感知アレイを含む、請求項
28乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
滑り事象が前記センサによって検出される速度は、補正アクションが要求される緊急性のレベルもしくは補正アクションに要求される力の大きさを示す、請求項
28乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グリップ・セキュリティを測定するデバイスおよび方法と、グリップ・セキュリティを改善するデバイスおよび方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット・グリッパを使用して物体を把握し、持ち上げることは、難しい作業である。ロボット・グリッパは、物体および接触界面に関する貴重な情報を検出する人間の手の能力を有しない。ほとんどの場合に、グリッパは、触覚フィードバックを全く有しない。触覚フィードバックを有するグリッパは、1つの特徴、たとえばグリップ力を測定し、または物体が把握から滑るのを検出する。ロボットおよび補綴学的グリッパ設計は、人間の手の器用さをエミュレートすることを試みて進歩し続けているが、それでも、匹敵する性能を達成するには程遠い。
【0003】
触覚感知の分野は、活動的な分野であり、このギャップを埋めることを目指すが、既存の触覚センサの大多数は、界面での法線力および接線力の判定に焦点を合わせている。これらの量は重要であるが、器用な操作にとってやはり重要である他の触覚パラメータが確かにある。2つのそのようなパラメータが、静止摩擦係数(μs)と、初期滑りの発生および範囲とである。
【0004】
接触界面の静止摩擦係数は、特定の重量(接線力)の物体を保持するのに必要な最小のグリップ(法線)力を判定するのを助ける。あるグリップ姿勢で、静止摩擦係数が正確に推定され、接線力を測定できる場合には、グリップ(法線)力を調整して、物体を安全に保持することができる。
【0005】
複数の触覚センサが、静止摩擦係数と初期滑りの発生および範囲の測定に関する文献で報告されたが、これらのセンサの多くは、
(i)物体をグリップすることを試みる前にその物体を探査する必要と、
(ii)静止摩擦係数の測定値を入手する前の操作中のグロス・スリップ(gross slip)の発生と、
(iii)変化する摩擦係数の場合の、静止摩擦係数の連続的測定値を提供することの不可能性と、
(iv)法線力および接線力を継続的に監視する必要と
という制限のうちの1つまたは複数の問題を有する。
【0006】
本開示において、これらの問題の一部を解決しまたは軽減することができ、あるいは、少なくとも代替案を提供することができる。
【0007】
静止摩擦係数の測定の代替案は、初期滑りを検出し、そのような事象の発生の後にグリップ力を調整することである。初期滑りは、接触界面の局所化された領域で発生する相対変位と定義され、トータル・スリップ(total slip)は、接触界面全体にまたがる相対変位を含む。しかし、現時点では、文献で報告された多数の滑りセンサにもかかわらず、滑りを人工的に感知する、支配的な明瞭に確立された技術はまだない。
【0008】
したがって、デバイスが、初期滑りを正確に検出できると同時に、グリップが、それでも確保され、これによってグリップの完全な消失を経験する前の力変調を可能にするならば、当技術にとって有益であるはずである。
【0009】
MITの研究者が、GelSightと呼ばれる、初期滑りを検出するデバイスを開発した。GelSightは、透明のシリコーンおよびカメラを使用して、シリコーンに刺青されたドット・パターンの移動を追跡することによって、接触エリアでの滑りを測定する。しかし、GelSightは、平坦で連続的な表面を使用するので、初期滑りを検出する能力において制限されている。平坦な表面は、接触界面にまたがる圧力差の、したがって、差動牽引力の確立を制限する。エラストマ感知材料の連続的な性質は、感知界面の異なる局所化された領域の間の移動の独立性を阻止し、これが、初期滑りの発生をさらに阻止する。また、GelSightセンサは、接触界面でのシリコーンの動きを検出するためにビデオ・ストリームの画像処理に頼るので、相対的に低周波数の触覚事象の感知に制限される。
【0010】
触覚センサ・デバイスが、それが接触している材料にかかわりなく、摩擦を同時に推定しながら、差し迫った滑りを信頼できる形で検出でき、シグナリングできるならば、既存技術にとってさらに有益であるはずである。
【0011】
本明細書で、どのような従来技術に言及する場合であっても、そのような言及が、その従来技術がオーストラリアまたは任意の他国の技術の共通の全般的な知識の一部を形成することの容認を構成しないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0012】
開示されるのは、グリップ・セキュリティを査定するシステムであって、少なくとも、第1の接触面領域および第2の接触面領域を有する接触面であって、第1の接触面領域は、第2の接触面領域より少なく滑りに抵抗するように構成される、接触面を含むシステムである。開示されるシステムは、第1の接触面領域での滑りを検出するセンサをさらに含む。いくつかの形態では、接触面は変形可能である。
【0013】
滑りの検出を利用して、グリップ・セキュリティを高めるためにグリップ強度が高められるように、グリップ・セキュリティを査定し、システム内でフィードバックを供給することができる。
【0014】
いくつかの形態で、接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含む。いくつかの形態で、突出部は圧縮可能である。いくつかの形態で、突出部は、細長い柱の形である。いくつかの実施形態で、第1の接触面領域内の突出部は、第2の接触面領域内の突出より小さい距離だけ基底面から離れて延びることができる。いくつかの実施形態で、突出部は、アレイを形成するように位置決めされ得る。グリップ・セキュリティを査定する方法であって、方法は、接触面での滑りを検出することを含み、接触面は、少なくとも、第1の接触面領域および第2の接触面領域を有し、第1の接触面領域は、第2の接触面領域より少なく滑りに抵抗するように構成される、方法も開示される。いくつかの形態で、この方法は、センサを利用することを含む。
【0015】
突出部の高さまたは基底面からの距離の変動は、使用のいくつかの形態において、デバイスが初期滑りを検出することを可能にするので、有利である可能性がある。突出高さの差は、突出部に、突出部が同一の最終的な高さに圧縮される時に突出部が基底面から延びる距離に依存する法線力を経験させる。接線力も印加される時に、突出部が目に見えるほどには曲がらないという仮定の下で、同一の断面積を有する突出部のすべてが、同一の接線力を経験する。その結果、各突出部によって経験される法線力に対する接線力の比率は、突出部高さの差に伴って変化する。センサの表面が、一定の静止摩擦係数を保持するとさらに仮定するならば、接線力が増える時に、最低の法線力の下の突出部(すなわち、デバイスの負荷が除去された時に最短の突出部)は、接線力対法線力比が静止摩擦係数より大きい時に、初めて滑る。接線力がさらに増える時に、次に短い突出部が滑り、以下同様にして、最後に最も高い突出部が滑る。この形で、各初期滑り事象は、物体の安定したグリップを維持するためにグリップ/法線力を増やさなければならないことの警告として働く。
【0016】
本開示のさらなる実施形態では、個々の突出部の移動は、お互いと独立とすることができる。少なくとも2つの柱の独立の動きは、接触面にまたがる異なる水準でのみ発生する可能性がある接触面上の相対的な動きの測定を可能にするという点で有利である。
【0017】
本開示のさらなる実施形態では、第1の接触面領域内の突出部の基底面からの非圧縮の高さは、第2の接触面領域内の突出部の非圧縮の高さより短い。
【0018】
本開示のさらなる実施形態では、第1の接触面領域内の突出部によって経験される法線力が、第2の接触面領域内の突出部によって経験される法線力より少なくなるように構成される。
【0019】
本開示のさらなる実施形態では、突出部は、柱である。
【0020】
本開示のさらなる実施形態では、突出部の第1の端は、基底面に接続され、突出部の第2の対向する端は、丸められた先端または半球形もしくは他の非平坦な先端を形成する
【0021】
本開示のさらなる実施形態では、接触面は、主にシリコーンから製造される。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態では、基底面を平面とすることができ、他の実施形態では、基底面を非平面とすることができる。把握される物体の表面が平面である場合には、基底面が平面ではない場合であっても、各突出部の相対圧縮を、共通の基底面に対して簡単に判定することができる。表面形状にかかわりなく、また、基底面が非平面であるかどうかにかかわりなく、3次元の力を判定することができる。
【0023】
このシステムは、初期滑りを検出するために第1の接触面領域での滑りを測定するように適合されたセンサまたはセンサ・システムをさらに含む。センサは、様々な形態であるものとすることができる。
【0024】
いくつかの形態で、センサは、基底面の背後で各内部空洞に隣接する位置に位置決めされる。
【0025】
いくつかの形態で、センサは、初期滑りを検出するように適合される。
【0026】
いくつかの形態で、センサは、摩擦を推定するように適合される。
【0027】
いくつかの形態で、内部空洞より小さい直径を有する開口部は、センサと内部空洞との間に配置される。
【0028】
いくつかの形態で、センサは、所与の突出部内で基底面の内部空洞側に位置決めされたLEDから発し、内部空洞の遠位端またはその付近に配置された反射器から反射し、開口部を介してセンサに移動する光を検出するように構成された4分割フォトダイオードを含む。
【0029】
いくつかの形態で、接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、突出部は、内部空洞を有し、センサは、CCDアレイを含み、システムは、CCDアレイが、基底面から内部空洞内に発し、内部空洞の遠位端に配置された反射器から反射し、基底面内の開口部を介して センサに移動する光を検出するように構成される。
【0030】
いくつかの形態で、基底面に垂直なz軸での突出部の圧縮は、検出される光スポットの直径の拡大をもたらす。
【0031】
いくつかの形態で、接触面は、基底面から延びる複数の突出部を含み、突出部は、内部空洞を有し、センサは、CMOS光感知アレイを含み、システムは、CMOS光感知アレイが、基底面から内部空洞内に発し、内部空洞の遠位端に配置された反射器から反射し、基底面内の開口部を介してセンサに移動する光を検出するように構成される。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態で、初期滑り警告がセンサによってシグナリングされる速度、滑り事象が検出される速度、または警告の個数は、補正アクションが要求される緊急性のレベルもしくは補正アクションに要求される力の大きさを示すのに使用され得る。
【0033】
いくつかの形態で、このシステムは、1つまたは複数の突出部がもはやアレイ内の他の突出部と同一の速度で移動しない時に、滑りを検出する。いくつかの形態で、このシステムは、振動を介して滑りを検出する。いくつかの形態で、滑りの検出の後に、このシステムは、摩擦係数の推定を可能にするために、滑りの瞬間の接線力対法線力の比率を再検討する。
【0034】
いくつかの形態の参考例としては、接触面での摩擦を推定する方法であって、基底面から先端まで延びる複数の突出部を提供することと、3空間次元の先端の変位を測定することと、3空間次元の先端に印加される力を推定することとを含む方法が開示される。
【0035】
いくつかの形態の参考例としては、接触面に垂直なトルクを検出する方法であって、基底面から先端まで延びる複数の突出部を提供することと、3次元の先端の変位を測定することと、3次元の先端に印加される力を推定することと、突出部がそこで延びる点で基底面に垂直な軸の回りでのたわみを測定することとを含む方法が開示される。
【0036】
いくつかの形態の参考例としては、接触面での滑り移動またはテクスチャを分析する方法であって、軸に沿って基底面から先端まで延びる複数の突出部を提供することと、先端の振動が測定されるように、3次元の先端の変位を高い分解能で測定することと、テクスチャを推定しまたは滑りを検出するために振動の測定値を利用することとを含む方法が開示される。
【0037】
添付図面を参照して、これから諸実施形態を例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】本開示の接触面の実施形態を示す断面図である。
【
図1B】圧縮条件での
図1の実施形態の断面図である。
【
図1C】圧縮条件での
図1の実施形態の断面図である。
【
図4】本開示によるセンサ・システムと一体化された接触面の実施形態を示す断面図である。
【
図5】型と結果のシリコン・プロファイルとの両方を示す、本開示の一実施形態のプロトタイプの製造を示す図である。
【
図6】本開示の少なくとも1つの実施形態を試験する試験リグを示す図である。
【
図7】試験手順中に取り込まれるビデオの単一のフレームを示す図である。
【
図8A-C】各法線力レベルで各柱が滑る接線力対法線力比を示すグラフ図である。
図8Aは、高摩擦面を示し、
図8Bはベース摩擦面を示し、
図8Cは低摩擦面を示す。
【
図9A-C】本開示の一実施形態を使用する変位および力の検出を示すグラフ表現である。
図9Aは基準柱先端変位を提供し、
図9Cは基準力データを提供し、
図9Bは、光学センサ・データ出力を示す。
【
図10】本開示の一実施形態を使用する振動応答の検出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の詳細な説明では、この詳細な説明の一部を形成する添付図面を参照する。この詳細な説明で説明され、図面に示され、特許請求の範囲で定義される例示的な実施形態は、限定的であることを意図されたものではない。提示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書で説明され、図面に示された本開示の諸態様を、様々な異なる構成で配置し、置換し、組み合わせ、分離し、設計できることが、たやすく理解されよう。
【0040】
図1では、グリップ・セキュリティを査定するシステムであって、少なくとも、第1の接触面領域12および第2の接触面領域14を有する接触面10を含むシステムが開示されている。図示の形態では、接触面は、基底面から延びる複数の突出部16の形である。
図1では、2つの突出部16だけが図示されているが、接触面が、基底面18から延びる複数の突出部16を含むことができることは、当業者に明白になろう。突出部16は、基底面18に係合されまたはこれと一体の取付け端部19を有し、いくつかの実施形態で半球形の端部プロファイルを有する、先端20まで延びる、細長い柱の形態である。図示の形態では、細長い柱は、同様の断面寸法と、基底面からの伸長の異なる長さとを有する。この図示の形態では、突出部が基底面から延びる距離の変動は、第1の接触面領域12と第2の接触面領域14とを画定する。具体的には、第1の接触面領域は、第2の接触面領域より少なく滑りに抵抗するように構成される。図示の形態では、お互いに対して相対的に異なる高さを有する2つの細長い突出部だけが示されている。
【0041】
図1は、これによって、高さl
Cを有するより長い中央突出部または柱が、それぞれ高さl
Oを有する8本のより短い外側柱によって囲まれる可能な実施形態の単純化されたモデルである。代替実施形態は、変化する高さの複数の柱を含む。
【0042】
図1Aは、圧縮されていない時に、各突出が柱を形成し、等しい直径Dを有するが、異なる高さl
Cおよびl
Oを有する、2つの突出部16を示す。
【0043】
図1Bでは、デバイス10は、把握されている物体の表面などの平坦な表面24と接触して図示されている。この図では、両方の柱が、正味の法線力F
Nによって同一の最終的な高さまで圧縮され、各柱に異なる法線(圧縮)力をもたらす。
【0044】
図1Cは、センサが接触している平坦な表面24を共有することによって働く接線力の追加を示し、突出部16のそれぞれは、これによって接線力をも経験する。突出部が表面に反して滑っていない時には、柱が目に見えるほど曲がることができないと仮定すると、突出部のすべては、同一の接線力を経験し、接線力の合計は、正味の接線力F
Tと等しい。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態では、個々の突出部16の移動は、お互いから独立とすることができる。柱16の形の少なくとも2つの突出部の独立のまたは少なくとも部分的に独立の移動は、接触面10にまたがって異なるレベルでのみ発生し得る接触面上の相対移動の測定を可能にするという点で有利である。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態では、接触面10は、主にシリコーンから製造される。
【0047】
図1Cに示されているように、第1の接触面エリア12の突出部16は、第2の接触面エリア14のより長い突出部16’より小さい法線力の下にある。いくつかの形態では、静止摩擦係数が、突出部のそれぞれについて同一であると仮定され、
図2に示された実施形態の第1の接触面領域12の外側突出部は、第2の接触面領域の中央突出部16’より小さい正味の接線力で滑る。
【0048】
単一の突出部のばね定数(k)および直径(D)が既知であり、接線力および法線力が、より短い突出部の滑りの瞬間に測定される場合には、より長い突出部が滑るときの正味の接線力対法線力の比率を予測することが可能である。したがって、静止摩擦係数は、より長い突出の滑りの瞬間の接線力対法線力の比率の推定値である。いくつかの形態で、デバイスにまたがる正味の力は、測定され、材料が線形弾性であると仮定して突出部に割り当てられる。図示されていないいくつかの形態では、力を、突出部または突出部のグループについて個別に検出することができる。
【0049】
理想的には、突出部は、滑ってはいないので、それに対して圧縮される表面と同一の速度でたわんでいなければならない。対照的に、突出部が滑る時には、たわみ速度は0mm/sに向かう傾向を有しなければならない。実際には、突出部または柱の曲がりに起因して、滑りの瞬間は、最長の突出部のたわみ速度が十分に大きいことを条件として、より短い突出部のたわみ速度が最長の突出部のたわみ速度の20%まで減少する時の瞬間として判定された。
【0050】
より多数の突出部およびより大きい高さの差を用いると、より広い範囲の摩擦および法線力に対処することができ、接線力が増加する時の物体の消失を防ぐためのより多くの警告が可能になる。警告がシグナリングされる速度ならびに警告の個数は、補正アクションが要求される緊急性を示すことができる。さらに、各警告を用いて、接触界面に関するより多くの情報を知ることができる。
【0051】
継続的な法線力および接線力の監視の有無の両方に関して、開示されるデバイスを有利に使用して、ロボット・グリッパおよび補綴学グリッパで器用な操作を改善することができる。継続的な監視がない場合に、警告がシグナリングされる速度ならびに警告の個数は、それでも、補正アクションが要求される緊急性ならびに補正アクションの大きさを示すことができる。継続的な力監視がある場合には、静止摩擦係数を判定することも可能である可能性があり、グリップ補正は、より情報を与えられたものになるはずである。監視のタイプにかかわりなく、初期滑りが検出される時に警告を発行することが可能である。
【0052】
このデバイスのいくつかの実施形態では、第1の接触面領域12は、平面であり、各突出部の相対圧縮を判定できるようになっている。
【0053】
いくつかの形態のシステムは、初期滑りを検出するために第1の接触面領域12での滑りを測定するように適合されたセンサまたはセンサ・システムをさらに含む。センサは、様々な形態とすることができる。
【0054】
図2に示されているように、接触面は、複数の突起がそこから延びる基底面18を含むことができる。いくつかの形態で、接触面は、下支持面41および上支持面40をさらに含む。いくつかの形態で、上支持面は、それを介して突出部が延びることのできる複数の開口部を含む。いくつかの形態で、下支持面41は、センサまたは他のシステム部分を支持する支持物または
内部空洞を含むことができる。
【0055】
図3および
図4に示されたものなど、このデバイスのいくつかの実施形態では、照明された反射器31、開口部32、および光センサ33が、針穴カメラ構成30を形成し、照明された反射器31の3次元たわみを測定することを可能にする。このたわみは、突出部16の先端の3次元たわみに相関する。針穴カメラ構成30は、開口部32を通過する、光源34からの光が、源の反転された画像を下のスクリーンまたはセンサ33に投影するカメラである。光源34は、
内部空洞35の遠位端にある反射器31から基底面18の背後の針穴開口部32からある適当な距離に取り付けられたセンサ33に戻って開口部32を介して反射されるように、各突出部16内部の
内部空洞35を照らす。
【0056】
このデバイスのいくつかの実施形態では、光源34は、小さい円形の円盤から発し、円形の光スポットが投影される。光スポットの位置を監視することによって、センサ33は、開口部32に対する相対的な光源34の3次元位置を検出することができる。いくつかの実施形態では、光スポットは、突出部が圧縮される時に大きくなり、これは、基部に垂直な軸に沿った変形を測定できることを意味する。
【0057】
このデバイスは、3次元すなわち、基底面の接線平面内のx軸およびy軸と、所与の突出部が表面から延びる点で基底面に垂直に延びるz軸とでの変化または変形の測定をさらに可能にする。
【0058】
3軸すべての変化または変形の視覚的表現は、突出部または突出部の先端に印加された3次元変位を測定することを可能にする。変位のこの3次元視覚的表現は、基底面に接するx-y平面内の突出部の角度移動を示す光スポットの移動の視覚的表現と、光スポットのサイズの変化を介する基底面に垂直なz軸での移動の視覚的表現とを含む。この視覚的表現は、突出部に印加される力を3つすべての次元で判定することを可能にする。3次元力のこの測定は、滑りが発生する時の摩擦の推定をも可能にする。
【0059】
いくつかの形態では、このシステムは、1つまたは複数の突出部がもはやアレイ内の他の突出部と同一の速度では移動しない時に滑りを検出する。いくつかの形態では、このシステムは、振動を介して滑りを検出する。いくつかの形態では、滑りの検出の後に、このシステムは、摩擦係数の推定を可能にするために、滑りの瞬間の接線力対法線力の比率を再検討する。
【0060】
さらに、3次元での力の測定は、突出部のアレイが、トルクを推定することを可能にする。というのは、x-yたわみまたはz軸の回りの力のカールを感知できるからである。トルクのこの推定は、適当な場合に増加するトルクを考慮に入れるためにグリップ力を増やすことができるので、高められたグリップ・セキュリティを可能にする。
【0061】
高帯域幅および超高空間分解能を伴う3次元変位の測定は、突出部での振動の感知を可能にする。振動の感知は、滑り事象に関するアラートを提供する。代替案では、振動の感知は、テクスチャを感知する手段と、テクスチャの間で区別する能力とをもたらす。さらに、振動の感知は、振動する表面からの音声、音楽、または他のサウンドの変換につながる可能性がある。
【0062】
このデバイスのいくつかの実施形態では、突出部の内部の内部空洞35は、LED34によって照らされた反射ディスク31と開口部32とを含むことができる。
【0063】
このデバイスのいくつかの実施形態では、内部空洞35は、円錐形の形状を有する。
【0064】
このデバイスのいくつかの実施形態では、開口部32の下にある4分割フォトダイオードの形のセンサ33は、反射器31から中継された投影された光スポットの位置および/またはサイズを検出することができる。そのような実施形態では、光スポット位置の計算は、基底面に接するx-y平面内の突出部の先端の位置に相関する。この計算は、相対的に単純な式を使用し、これによって、各軸は、センサの半分の間の差を減算することと、受信された光全体に対して正規化することとによって計算される。同様に、光スポット・サイズは、基底面に垂直なz軸に沿った圧縮または解放に相関する、基底面に垂直なz軸に沿った突出部の先端の位置に相関する。z軸に沿った先端の位置の計算は、フォトダイオードに当たる光の強度を測定することによって単純に計算される。これらの計算の単純さは、センサの大きいアレイを用いる場合であっても、設計をマイクロプロセッサに適するものにする。
【0065】
このデバイスのいくつかの実施形態では、針穴カメラ構成30は、フォトダイオード・センサ33の4つの象限のそれぞれを照らす光の相対特性を調べることによって、突出部16たわみの方向および大きさを2次元で測定することができ、突出部16がたわむ時に、針穴開口部32を通って照らす光ビームの方向が変化する。このデバイスの小スケール実施形態に関して、フォトダイオード・センサ33を、CCDまたはCMOSの光感知アレイに置換することができる。本開示の趣旨または範囲から逸脱せずに、前に説明した部分に対する変形形態および修正形態を作ることができる。
【0066】
例
いくつかの図示の実施形態では、突出部または柱に対する力の推定を、次のように実行することができる。材料が、フックの法則に従って線形弾性として振る舞うと仮定する。正味の法線力FNが、各柱に働く法線力の和であることに留意されたい。
【0067】
8つの外側柱によって囲まれた単一の中央の柱の場合に、これは、以下を意味する。
F
NC=kΔl
C、 (1a)
F
NO=kΔl
O=k(Δl
C-d)=F
NC-kd、かつ (1b)
F
N=F
NC+8F
NO=9kΔl
C-8kd (1c)
ただし、kは、柱の弾性材料のばね定数である。したがって、
【数1】
、かつ
【数2】
である。
【0068】
接線力も、接触している表面をせん断することによってセンサに印加される時に、柱のそれぞれは、接線力も経験する(
図1C参照)。すべての柱が表面に固着する(滑っていない)時に、(i)柱の圧縮ひずみが、その高さに対して相対的に小さく、(ii)より長い柱とより短い柱との間の高さの差も、高さに対して相対的に小さく、(iii)柱が、その高さに対して相対的に目に見えるほど曲がらないと仮定すると、すべての柱は、ほぼ同一の接線力を経験し、これらの接線力の和は、正味の接線力F
Tと等しい。8つの外側柱によって囲まれた単一の中央の柱の場合に、これは、以下を意味する。
F
TC=F
TO、かつ (3a)
F
T=F
TC+8F
TO=9F
TO (3b)
ここで、F
TCは、中央の柱の接線力であり、F
TOは、外側柱のうちの1つの接線力である。
【0069】
外側柱は、より小さい法線力の下にあり、μ
sは、各柱について同一なので、外側柱は、中央柱より小さい正味の接線力で滑る。外側柱は、
F
TO>μ
sF
NO (4)
の時に滑り始める。これが発生するのは、正味の接線力が
【数3】
の時である。
【0070】
外側柱が滑っており、中央柱が固着している間に、外側柱は、動摩擦係数(μ
k)に起因して、正味の接線力に対して制限された量の接線力だけ貢献しており、
F
TO=μ
kF
NO (6a)
中央柱は、
F
TC>μ
sF
NC (6b)
の時に滑り始める。これは、正味の接線力が、
【数4】
の時に発生する。
【0071】
ここで、μ
sは、常にμ
k以上であるが、μ
s=μ
kであると仮定すると、式(7)を
【数5】
に単純化することができる。
【0072】
式(5)および式(8)を組み合わせると、
【数6】
が与えられ、これは、kおよびdが既知であり、正味の接線力および法線力が、外側柱の滑りの瞬間に測定される(それぞれ、
【数7】
および
【数8】
)場合に、中央柱が滑るときの正味の接線力対法線力の比率を予測することが可能である、すなわち、外側柱が滑る時を感知し、その時の力を調べることによって、静止摩擦係数を推定することが可能性があることを意味する。
【0073】
いくつかの形態で、センサの基部(柱がそこから出る)の直径Dtotal=80mmであり、厚さは3mmであり、円筒形の柱のそれぞれは、D=10mmの直径と半球形の末尾とを有し、中心間間隔は約15mmである。半球形の末尾が選択されたのは、鋭い縁を有する平坦な末尾が、柱接触エリアが滑る前に柱接触エリアの縁で大きい圧縮力を生じさせるからである。センサのこの実施形態では(上の単純なモデルと同様に)、8つの外側柱が、3×3グリッド配置で単一の中央柱を囲む。中央柱の高さは、lC=15mmであり、外側柱の高さは、lO=14mmであった、すなわち、中央柱と外側柱との間の高さの差は、d=1mmである。このプロトタイプを製造するために、シリコーンが、3D印刷されたABSプラスチック型に鋳造された。
【0074】
型は、3Dプリンタを使用して熱可塑性物質に印刷された。型の表面上の3D印刷線を平滑化するために、型は、室温で3時間にわたってアセトン蒸気浴に吊るされた。
図5Aおよび
図5Bは、それぞれアセトン蒸気浴の前後の型を示す。
【0075】
簡単な流れのための低い粘性と短い硬化期間とを有する2成分の非負に安全なシリコーンが、プロトタイプの材料として使用された。2つの成分は、製造業者の指示に従って等しい部分で混合され、鋳造は、単一注入で実行された。脱泡手順は要求されないが、シリコーンは、注入流れのよりよい制御を可能にする高さから注がれ、型は、シリコーン内に存在する泡を除去するために穏やかに揺すられた。シリコーンは、硬化の後に離型された(
図5C~
図5E参照)。
図5Cは、シリコーン・プロトタイプの上面図を示し、
図5Dは、取付け支持物を有するプロトタイプを示し、
図5Eは、シリコーン・プロトタイプの側面図を示す。
【0076】
プロトタイプの動作を検証するために、複数の実験を実行して、プロトタイプの法線力および接線力を印加した。これらの試験手順を実行するために、XYZステージ、3D力/トルク・センサ、プロトタイプ、透明アクリル表面、およびカメラを含む試験リグを使用した。試験リグおよび試験手順を下で説明する。
【0077】
図6は、本開示の少なくとも1つの実施形態のプロトタイプを試験する例示的な試験リグを示す。この図は、Aというラベルを付けられたXYZステージ、Bというラベルを付けられたアクリル表面、Cというラベルを付けられたプロトタイプ、Dというラベルを付けられた3D力/トルク・センサ、Eというラベルを付けられたビデオ取込用のプラットフォーム、およびFというラベルを付けられた支持フレームを示す。
【0078】
3つの平行移動ステージ(M-605.1DD、Physik Instrumente(PI)GmbH & Co.KG、Karlsruhe、ドイツ)からなる
図6に示されたXYZステージは、透明アクリル表面をプロトタイプに接触させ、その後、プロトタイプの表面を横切ってアクリル表面をせん断させるのに使用された。ステージのそれぞれは、25mmの移動範囲、50mm.s
-1の最高速度、0.1μmの正確さ、および0.3μmまでのステップ・サイズを有する。圧縮は、柱に作用する法線力を作り、グリップされる物体と接触している間の表面のせん断は、柱のそれぞれへの接線力を作る。
【0079】
3D力/トルク・センサ(Mini40、SI-80-4、ATI Industrial Automation、Apex、NC、米国)は、プロトタイプと支持フレームとの間に取り付けられた(
図6D参照)。プロトタイプに作用する力およびトルクは、PowerLab 16/35 data acquisition unit(AD Instruments、Bella Vista、NSW、オーストラリア)を用いて1kHzでサンプリングされた。
【0080】
透明アクリル表面と接触しているプロトタイプのビデオが、16GB iPhone 6(モデルA1586)のネイティブ・ビデオ録画アプリケーションを用いて取り込まれた。iPhone(登録商標)は、柱が、中央柱を画像の中央に位置決めして真下から透明アクリル表面を介して(約100mm)見られるように、プラットフォーム上に配置された(
図3E参照)。iPhone(登録商標)は、QuickTime Player 10.4を走行させるMacBook Proに接続されて、iPhoneスクリーンを1334×750画素解像度で59.97fps(フレーム.s
-1)の.MOVフォーマットで録画した。カメラ較正は、MATLAB(R2014b、Mathworks、Natick、MA、米国)Camera Calibration Appを使用して実行された。レンズ歪み係数(半径方向および接線方向)が、計算され、センサのエッジ(柱のいずれもの最大たわみを超える)で、歪みは、1.1画素を超えず、これは、約0.12mmに対応した。これに比べて、柱の追跡ドットの半径は約5ピクセルである。この歪みは、柱たわみの測定値に偏りを与えるという効果を有するので、結果に対する影響は、柱がステージに対して相対的に滑ったと判定される時点を変更するのみであるが、この事象時刻の判定は、使用される滑り判定ルールにはるかに大きく依存する。
【0081】
小さい穴が、ピンを用いて、選択された柱の中央点に作成され、この穴は、ビデオ分析中の追跡用の信頼できるマーカーを形成するために黒インクを充填された。さらに、3つの10mm正方形の行からなる白黒チェッカーボード・パターンが、アクリル表面に取り付けられて、表面の位置を追跡するための基準点を提供すると同時に、無視できるレンズ歪みに起因して穏当なものである空間単位変換(画素からmmへ)の基準を提供した。
【0082】
XYZステージは、2.5mm.s-1の速度で所望の法線力(μsを測定するために0.5N、柱滑り挙動を分析するために5N、7.5N、10N、12.5N、および15N。下を参照されたい)をもたらす所定の位置までプロトタイプに向かって垂直に移動するようにプログラムされる。XYZステージは、1.5sにわたってその位置を保持し、その後、合計15mmにわたって2.5mm.s-1の速度で横に移動する。その後、ステージは、プロトタイプから離れて開始高さに戻って垂直に移動し、したがって、力を解除し、その後、横に移動して開始位置に戻る。
【0083】
所望の法線力(5N、7.5N、10N、12.5N、および15N)をもたらすXYZステージ位置を記録することによって、フックの法則に従ってばね定数を計算することができる。これらの法線力レベルでは、9つのセンサ柱のすべてが、アクリル表面に対して圧縮されるので、ばね定数kは、ステージ位置対法線力によって定義される線の勾配の1/9と等しい。
【0084】
試験に使用される3つの表面が、μsの異なる値を有することと、各表面のμsが、試験全体を通じて一貫したままになることとを保証するためには、μsを測定することが必要であった。μsは、0.5Nの法線力で上のプロトコルを実行することによって測定されたが、この法線力では、中央柱だけが表面に接触する。摩擦は、摩擦条件と試験法線力との組合せごとに、柱挙動の試験の前後に測定された(下を参照されたい)。
【0085】
センサの挙動は、5つの異なる法線力レベルすなわち、5N、7.5N、10N、12.5N、および15Nで試験された。XYZステージは、上で説明したように法線力および接線力を印加するようにプログラムされた。それと同時に、ATIセンサからの力/トルク信号が記録され、アクリル表面と接触する柱のビデオが取り込まれた。
【0086】
異なる摩擦特性を有する3つの表面すなわち(i)エタノールを用いて洗浄されたアクリル(ベース摩擦条件)、(ii)オリーブ・オイルで覆われたアクリル(低摩擦条件)、および(iii)石鹸の薄膜でコーティングされ、石鹸が乾燥されたアクリル(高摩擦条件)が使用された。
【0087】
法線力(5N、7.5N、10N、12.5N、および15N)と表面(オリーブ・オイルでコーティングされたアクリル、アルコールで洗浄されたアクリル、および石鹸をコーティングされたアクリル)との組合せごとに、0.5Nでの摩擦の試験(1回)、所望の法線力での柱挙動の試験(5回)、0.5Nでの摩擦の試験(1回)という試験が実行された。
【0088】
力信号に含まれる高周波数雑音を除去するために、10Hzの遮断周波数を有する2次低域バターワース・フィルタが適用された。
【0089】
記録されたビデオを使用して、中央柱と、アクリル表面の横移動中のプロトタイプの8つの他の柱のうちの1つとのたわみを監視した。Kanade-Lucas-Tomasiアルゴリズムを使用して、MATLAB(Mathworks、Natick、MA、米国)での点追跡を実行した。3つの点すなわち(i)中央柱の中央、(ii)1つの外側柱の中央(この柱は、せん断の方向で中央柱に直接つながる柱として選択された)、および(iii)基準グリッド上の点(アクリル表面の位置を監視するため)が、ビデオ録画全体を通じて追跡された。
【0090】
点追跡の結果は、アクリル表面の点に対する相対的な、およびその後に各柱のたわんでいない点に対する相対的な中央柱および外側柱のたわみを与える。ビデオ追跡の単一のフレームおよび柱のたわみが、
図4に示されている。その後、5Hz2次低域バターワース・フィルタを適用して、たわみデータから追跡ジッタを除去した。
【0091】
フィルタリングされた力/トルク信号およびたわみ信号の同期化が要求された。というのは、元のデータが2つの異なるデバイス上で記録されたからである。各刺激の終りに、XYZステージは、法線力を解除するために、アクリル表面をセンサから離れて引っ込めるために負のZ方向(柱に垂直)に加速された。これは、接線曲げ力が突然に除去されるので、測定される法線力ならびに計算される中央柱たわみの大きい加速度をもたらす。フィルタリングされた法線力と中央柱たわみとの時間に関する2次導関数の大きい負のピークが、力データとたわみデータとの同期化に使用された。
【0092】
理想的には、ステージが、2.5mm.s-1の速度で移動しているので、柱が固着する(滑っていない)場合には、柱も、その先端で2.5mm.s-1の速度でたわんでいなければならず、柱が滑る時には、たわみ速度は0mm.s-1にならなければならない。しかし、実際には、柱のたわみに起因してそうはならず、柱は、まず、ステージと同一の速度で移動するように見えるが、しかし、この速度は、柱が接触点で回転するように見える時にゆっくりと減少する。したがって、滑りの瞬間は、柱のたわみ速度(すなわち、時間に関するたわみ位置の1次導関数)がステージ速度の5%まで減少する時(すなわち、柱のたわみ速度が初めて0.125mm.s-1まで下落する時)(これは0に近いが、柱たわみ速度のフレーム間雑音のレベルを超える)の瞬間としてヒューリスティックに判定された。プロトタイプの動作の原理を照明するこの作業では、このしきい値は、滑りの瞬間を識別するのに十分であったが、他の実際の状況では、検出アルゴリズムは、確かにより複雑/頑健になる必要がある。いくつかの形態では、各突出部には、突出のたわみおよび振動を測定するために、上で説明した光および針穴方法を使用して内部で機器を備えることができる。いくつかの形態では、これは、滑り事象がより曖昧でなくなることを意味する可能性がある。
【0093】
中央柱(0.5Nの法線力に接触している唯一の柱)の滑りの瞬間の接線力対法線力の比率(ビデオ分析によって判定される)が、μsの推定値と解釈された。
【0094】
センサの動作の原理は、外側(より短い)柱が、中央(より高い)柱と比較して、より小さい接線力の下で滑らなければならないことである。これが満足されるかどうかを判定するために、それぞれ外側柱および中央柱の滑りの瞬間の接線力および法線力が、比較のために判定された。
【数9】
(式(9))の予測も、外側柱が滑る時の測定された接線力および法線力(それぞれ
【数10】
および
【数11】
)から計算され、中央柱が最終的に滑る、多少後の時刻に測定される、測定された
【数12】
との比較を行った。
【0095】
結果
法線力(N)のそれぞれのステージ位置(mm)を使用して、センサ柱のばね定数kを計算した。ばね定数kは、最良あてはめの線の勾配を柱の本数で除算したものすなわち、k=1.174N/mmである。
【0096】
アクリル板がせん断し始める時(約2.4s)に、法線力の減少があることが観察された。XYZステージが、アクリル表面を専断する間に同一の高さに留まるようにプログラムされ、センサの柱が曲がり、これが、センサの有効高さがわずかに減少することを意味するので、この法線力の減少は期待されたものである。そのμsは、中央柱が滑る瞬間の接線力対法線力の比率と解釈された。
【0097】
図7を参照すると、試験手順中に取り込まれたビデオの単一のフレームが示されている。赤い×は、マーカーの元の位置であり、青い×は、アクリル板と共に移動するマーカーの現在位置である。黄色で強調表示された値は、マーカー(上)、中央柱(中)および中央柱の左の外側柱(下)のたわみ(mm)である。
【0098】
図8を参照すると、A)高摩擦面、B)ベース摩擦面、およびC)低摩擦面の、各柱が各法線力レベルで滑るときの接線力対法線力比のグラフ・ビューが示されている。マーカーは、平均値であり、エラー・バーは、±SDまで延びる。破線の水平線は、0.5N法線力で測定されたμsを示す。
【0099】
図9Aから
図9Cに示されているように、光センサは、突出部の変位および突出部への力を測定することができる。グラフ表現では、
図9Aは、基準変位を提供する。XY座標は、上からビデオ・カメラを用いて、1つの柱に着色されたドットを追跡することによって入手される。我々は、ロボット・ステージを使用して柱の先端に熱いパースペックスの透明シートを接触させ、これを移動してXYZ変位を引き起こす。ロボット・ステージは、Z座標を知らせる。
【0100】
図9Cは基準力を示す。これは、市販3軸力センサを使用して入手される。
【0101】
図9Bは、ある単純な前処理の後の、4つのフォトダイオードを使用する変位および力の測定値を示す。
P Q
R S
と示される象限パターンに配置された4つのフォトダイオードがある場合に、それらが感知する光の強度は、中央のプロットを入手するために次のように前処理され得る。
Z=P+Q+R+S (すなわち、すべての和)
X=[(P+R)-(Q+S)]/Z (すなわち、左引く右を正規化したもの)
Y=[(P+Q)-(R+S)]/Z (すなわち、上引く下を正規化したもの)
【0102】
最後に、2つの写像関数が、
図9Bに示された変位および力を測定した値を、3次元での基準変位を示す
図9Aの値または3次元での基準力を示す
図9Cの値のいずれかに写像するために学習される。
【0103】
図10に示されているように、センサは、振動を検出することができる。この例では、突出部先端は、単一の軸に沿って振動するシェーカーと接触している。添付の画像は、330Hzでの10ミクロン(0.01mm)振動が、Z軸内で柱に印加された(すなわち、柱を圧縮した)試験の結果を示す。破線の赤いトレースは、シェーカーの変位を示し、青のトレースは、フォトダイオード・センサの応答を示し、青いトレースに示されたこのセンサ応答値は、計算Z=P+Q+R+Sを使用して入手され、ボルト単位で表されている。
【0104】
以下の特許請求の範囲および本発明の先行する説明では、明示された言語または必要な暗示に禁して文脈がそうではないことを要求する場合を除いて、単語「comprise(含む)」または「comprises」もしくは「comprising」などの変形は、包含的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態での追加の特徴またはさらなる特徴の存在を除外しないことを指定するのに使用される。