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特許7268003イオン注入のための装置、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】イオン注入のための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/15 20060101AFI20230425BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20230425BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01J37/15
H01J37/317 Z
H01L21/265 603A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020512669
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018046868
(87)【国際公開番号】W WO2019050663
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-05-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】15/699,255
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】シュヨンウー チャン
(72)【発明者】
【氏名】フランク シンクレア
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リクハンスキ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ レイン
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】金高 敏康
【審判官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506385(JP,A)
【文献】特表2006-518916(JP,A)
【文献】特表2016-524277(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0236547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入のための装置であって、
ビームラインに沿って質量分析器の下流にある電極システムであって、入口アパ-チャから出口アパ-チャにイオンビームを導くための複数の電極を備える電極システムと、
複数の電圧を前記電極システムに印加するための電圧源と、を備え、
前記電極システムは、出口電極アセンブリを備え、該出口電極アセンブリは、第1の出口電極と、電極ギャップによって前記第1の出口電極から分離された第2の出口電極とを備え、
前記第1の出口電極と前記第2の出口電極は、ギャップ範囲にわたって前記電極ギャップのサイズを変えるように互いに対して移動可能であ
前記イオン注入のための装置は、前記イオンビームのビーム高さに基づいて、前記電極ギャップのサイズを調整し、
前記ビーム高さは、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極との間に延在する線に沿った前記イオンビームのサイズを表し、
前記電極ギャップのサイズを、前記ビーム高さに等しくなるように調整する、イオン注入のための装置。
【請求項2】
前記出口電極アセンブリに機械的に結合され、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極との間に延在する線に沿って直線運動を付与することによって前記電極ギャップの前記サイズを変化させる、モータをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極ギャップを調整するための制御信号を、ユーザ入力に応答して供給するコントローラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の出口電極および前記第2の出口電極は、シャフトを備え、前記シャフトは、シャフト中心を備え、前記シャフトは、回転軸を中心に回転可能であり、前記回転軸は、前記シャフト中心から変位される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ギャップ範囲は、少なくとも25mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電極ギャップは、98mmの最大値および63mmの最小値を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電極システムは、複数の減速電極をさらに備え、前記複数の減速電極は、前記出口電極アセンブリの上流で、前記入口アパ-チャに近接して配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
イオン注入のためのシステムであって、
イオンビームを生成するように構成されたイオン源と、
ビームラインに沿って質量分析器の下流にある電極システムであって、入口アパ-チャから出口アパ-チャにイオンビームを導くための複数の電極を備える電極システムと、
複数の電圧を前記電極システムに印加するための電圧源と、を備え、
前記電極システムは、さらに出口電極アセンブリを備え、該出口電極アセンブリは、第1の出口電極と、電極ギャップによって前記第1の出口電極から分離された第2の出口電極とを備え、
前記第1の出口電極と前記第2の出口電極は、ギャップ範囲にわたって前記電極ギャップのサイズを変えるように互いに対して移動可能であ
前記イオン注入のためのシステムは、前記イオンビームのビーム高さに基づいて、前記電極ギャップのサイズを調整し、
前記ビーム高さは、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極との間に延在する線に沿った前記イオンビームのサイズを表し、
前記電極ギャップのサイズを、前記ビーム高さに等しくなるように調整する、イオン注入のためのシステム。
【請求項9】
前記出口電極アセンブリに機械的に結合され、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極との間に延在する線に沿って直線運動を付与することによって前記電極ギャップの前記サイズを変化させる、モータをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記電極ギャップを調整するための制御信号を、ユーザ入力に応答して供給するコントローラをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の出口電極および前記第2の出口電極は、シャフトを備え、前記シャフトは、シャフト中心を備え、前記シャフトは、回転軸を中心に回転可能であり、前記回転軸は、前記シャフト中心から変位される、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記ギャップ範囲は、少なくとも25mmである、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
イオンビームを発生するステップと、
ビームラインに沿って質量分析器の下流にある電極システムにおいて前記イオンビームを減速し、前記イオンビームを基板に向けるステップと、
前記イオンビームのビーム高さに基づいて、前記電極システムの出口電極間の電極ギャップを調整するステップと、を有し、
前記電極システムは、第1の出口電極と第2の出口電極とを有する出口電極アセンブリを備え、前記ビーム高さは、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極との間に延在する線に沿った前記イオンビームのサイズを表
さらに、前記電極ギャップを、前記ビーム高さに等しくなるように調整するステップを有する、イオン注入のための方法。
【請求項14】
前記第1の出口電極および前記第2の出口電極は、シャフトを備え、前記シャフトは、シャフト中心を備え、前記電極ギャップを調整する前記ステップは、前記第1の出口電極および前記第2の出口電極のうちの少なくとも一方のシャフトを回転軸を中心に回転させるステップを有し、前記回転軸は、前記シャフト中心から変位される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、イオン注入のための装置および技術に関し、より詳細には、イオンビームの減速後に基板に供給される電流を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、ドーパント、添加物、または不純物を、衝撃によって基板に導入するためのプロセスである。既知のイオン注入システムまたは装置は、イオン源と一連のビームラインコンポーネントとを備えることができる。イオン源は、所望のイオンが生成されるチャンバを含むことができる。イオン源はまた、電源と、チャンバの近くに配置された引き出し電極アセンブリとを含んでもよい。ビームラインコンポーネントは、例えば、質量分析器、第1の加速または減速段、コリメータ、および第2の加速または減速段を含むことができる。
【0003】
既知のイオン注入機では、最終減速段は、イオンビームを減速させ、イオンビームを成形し、基板に衝突する前にイオンビームの伝播方向を変えることができる。減速段は、減速段を出る前に、イオンビームを誘導し、イオンビームを成形し、イオンビームを減速するために異なる電圧が印加される複数の電極を有する電極システムとして設計されてもよい。既知の減速段では、ビームは、イオンビームが電極に当たらない間に伝搬し得るギャップ領域を画定する対向する電極対の間に導かれ得る。低エネルギーイオンビームの場合、伝播方向に垂直な方向におけるイオンビームのビーム高さは、より大きくなる傾向がある。したがって、既知のイオン注入機では、イオン注入機で使用される最低のイオンエネルギーのためのビーム高さを収容するのに十分な、対向する電極間のギャップを有する減速段を設計することができる。
【0004】
電極間のギャップは、最低エネルギーのイオンビーム用に設計されてもよいので、より高いエネルギーを有するイオンビームの場合、イオンビームは、減速段を通って、特に、一対の出口電極を通って進むことができ、ここで、イオンビームは、対向する電極から離間される。この構成は、所与のビーム高さに対して基板に供給するためのより低いビーム電流を含む、非理想的な結果につながる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらおよび他の考察に関して、本発明が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施態様では、装置は、入口アパ-チャから出口アパ-チャにイオンビームを導くための複数の電極を備える電極システムと、複数の電圧を前記電極システムに印加するための電圧源と、を含んでもよい。前記電極システムは、出口電極アセンブリを備えてもよく、該電極アセンブリは、第1の出口電極と、電極ギャップによって前記第1の出口電極から分離された第2の出口電極とを含む。前記第1の出口電極と前記第2の出口電極は、ギャップ範囲にわたって前記電極ギャップのサイズを変えるように互いに対して移動可能であってもよい。
【0007】
別の実施態様では、イオン注入のためのシステムは、イオンビームを生成するように構成されたイオン源を含んでもよい。前記システムは、さらに入口アパ-チャから出口アパ-チャにイオンビームを導くための複数の電極を備える電極システムを含んでもよい。前記システムは、また複数の電圧を前記電極システムに印加するための電圧源を含んでもよく、前記電極システムは、さらに出口電極アセンブリを含んでもよい。前記出口電極アセンブリは、第1の出口電極と、電極ギャップによって前記第1の出口電極から分離された第2の出口電極とを含んでもよく、前記第1の出口電極と前記第2の出口電極は、ギャップ範囲にわたって前記電極ギャップのサイズを変えるように互いに対して移動可能である。
【0008】
さらなる実施態様では、方法は、イオンビームを発生するステップと、電極システムにおいて前記イオンビームを減速し、前記イオンビームを基板に向けるステップと、前記イオンビームのビーム高さに基づいて、前記電極システムの出口電極間の電極ギャップを調整するステップと、を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aおよび図1Bは、本発明の実施形態による装置のブロック図を示す。
図2】本発明によるシステムの例示的な実施形態を示す。
図3図3A及び図3Bは、動作中の図2の電極システムの1つの変形例の側面図を示す。図3Cは、動作中の図2の電極システムの1つの変形例の側面図を示す。図3D及び図3Eは、本発明の実施形態による、出口電極アセンブリの動作の詳細を示す。
図4図4A図4B、及び図4Cは、本発明の実施形態による電極システムの動作のためのシミュレートされたビーム電流プロファイルを示す。
図5】本発明の実施形態による例示的なプロセスフローを示す。
【0010】
図面は、必ずしも一定の縮尺ではない。図面は、単なる表現であり、本発明の特定のパラメータを描写することを意図するものではない。図面は、本発明の典型的な実施形態を示すことを意図しており、したがって、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号は同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明のシステム、装置および方法の実施形態を示す添付図面につき、本発明によるシステム、装置および方法をより十分に説明する。本発明のシステム、装置および方法は、多くの異なる形式で実現することができ、また、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解すべきではない。その代わり、これら実施形態は、本明細書が徹底的かつ完全なものとなるよう、また本発明のシステム及び方法を当業者に伝えるよう提示されるものである。
【0012】
本明細書に使用されるように、単数形で「a」又は「an」の不定冠詞が前置される記述される要素又は操作は、このような排他を明示しない限り、複数の要素又は操作を含むものと理解すべきである。さらに、本発明の「一実施形態(one embodiment)」は、限定的であるものとしては意図しない。他の実施形態も、記載された特徴を組み入れることができる。
【0013】
様々な実施形態では、イオンビーム装置内のイオンビームの移送を容易にするために、新規な方法でイオンビームの軌道を制御するためのシステム、装置、および方法が提供される。
【0014】
図1Aおよび図1Bは、本発明の実施形態によるイオン注入システム100のブロック図を示す。イオン注入システム100は、「イオン注入機」と称することができ、一般に、ビームラインイオン注入機またはイオンビームを生成するコンパクトな装置を表すことができる。したがって、イオン注入機の様々な既知のコンポーネントは、明確にするために省略されてもよい。図示されるように、イオン注入システム100は、イオン源102として示されるイオンビーム源を含む。イオン源102はまた、電源と、イオン源102のチャンバの近くに配置された引き出し電極アセンブリ(図示せず)とを備えてもよい。
【0015】
イオン源102は、発電機、プラズマ励起機、プラズマチャンバ、及びプラズマを含むことができる。プラズマ源は、誘導結合プラズマ(ICP)源、トロイダル結合プラズマ源(TCP)、容量結合プラズマ(CCP)源、ヘリコン源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)源、傍熱型陰極(IHC)源、グロー放電源、電子ビーム生成イオン源、または当業者に公知の他のプラズマ源であってもよい。
【0016】
イオン源102は、基板120を処理するためのイオンビーム104を生成することができる。様々な実施形態では、イオンビーム(断面)は、当技術分野で知られているように、スポットビームまたはリボンビームなどの目標形状を有することができる。図示の座標系では、イオンビームの伝播方向は、Z軸に平行なものとして表すことができ、一方、イオンビーム104を有するイオンの実際の軌道は、変化することができる。基板120を処理するために、イオン源102と基板120との間に電圧(電位)差を確立することによって、イオンビーム104を加速してターゲットエネルギーを得ることができる。図1Bに示されるように、イオン源102は、基板120の処理中にイオンのための標的イオンエネルギーを生成するように設計された電圧源132に結合されてもよい。基板を処理するためのイオンエネルギーの例は、数百eV~数十万eVの範囲であり得る。実施形態は、この文脈において限定されない。
【0017】
処理動作モードでは、イオン注入システム100を用いて、イオン源102内にプラズマを確立し、イオン源102に正電圧V S を印加し、基板120を接地電位に維持しながらイオンビーム104を抽出することによって、基板120を処理することができる。この差は、処理エネルギー、すなわち、イオンが基板に到達するときのイオンのエネルギーを定義する。質量選択およびビーム成形段階を通るイオンビーム104の移送をより効率的にするために、この処理は、有利には、より高いエネルギーに維持されてもよい。一実施形態では、このより高いエネルギーは、質量分析およびビーム成形を実行する要素を収容する部分140に負の電圧VTを印加することによって達成することができ、その結果、ビームは、ビーム経路長の大部分にわたってVS+ VTによって確立されたエネルギーを有する。この配置は、図1Bに示されるように、イオンビーム104を基板120まで減速させる。様々な実施形態において、イオンビーム104は、リボンビーム、スポットビーム、または走査スポットビームとして提供されてもよい。図1Aに示されるように、イオンビーム104は、基板120に衝突する前に、イオンビーム104のイオンエネルギーを低減するための減速段として作用する電極システム114を横断してもよい。電極システム114は、出口電極アセンブリ116を含んでもよく、出口電極アセンブリ116の動作は、以下で詳細に説明される。
【0018】
図1Bは、以下に詳述する様々なビームラインコンポーネントを含むイオン注入システム100の変形例を示す。ビームラインコンポーネントは、例えば、質量分析器106と、質量スリット110を含むチャンバ108と、コリメータ112と、以下に詳述するようにイオンビーム104を処理するための電極システム114と、基板ステージ118とを含むことができる。電極システム114は、以下に詳述するように、電極システム114内の異なる電極で様々な電圧を受け取るために、電圧源128に接続されてもよい。電圧供給128は、上述のように、部分140にバイアスをかけることができ、さらに、抑制、減速などのような異なる機能を実行するために、電極システム114の異なる電極に異なる電圧を供給することができる。イオン注入システム100は、以下に詳述するように、電極間のギャップを調整するために、出口電極アセンブリ116に結合された駆動システム124をさらに含むことができる。イオン注入システム100は、少なくとも駆動システム124に結合され、出口電極アセンブリ116内の電極の位置を調整するための制御信号を提供するコントローラ130をさらに含むことができる。コントローラ130は、操作者が、コントローラによって受信されるユーザ入力を入力することを可能にし、それに従って、イオン注入システムの動作を無効にすることを回避して、電極アセンブリ内の電極の位置の遠隔制御および調整を容易にし得る。
【0019】
例示的な実施形態では、上記ビームラインコンポーネントは、所望の種、形状、軌道、エネルギー、および他の品質を有するように、イオンビーム104をフィルタリング、フォーカス、および操作することができる。基板ステージ118を介した基板120は、1つまたは複数の寸法で移動させる(例えば、平行移動させる、回転させる、および傾斜させる)ことができる。
【0020】
図2は、イオン注入システム100の追加の描写を提供し、電極システム114の実施形態の詳細を提供する。電極システム114は、イオンビームが入口アパーチャ150から出口アパーチャ152へと横切るときに、イオンビーム104のエネルギーを低減するための減速段として作用してもよい。イオンビーム104の軌道はまた、公知の静電フィルタにおけるように、エネルギー中性粒子などの種を除去するために、図示のように変更されてもよい。イオンビーム104は、また、イオンビーム104を出口アパーチャ152を通して導き、イオンビーム104を基板120に向けるように、電極システム114の電極によって成形されてもよい。具体的には、電極システム114は、イオンビーム104を通すための間隔を画定するように、一対で配置された複数の電極を含むことができる。様々な電極が、電極114-A、114-B、114-C、114-D、114-E、114-F、114-G、114-H、114-I、114-J、114-K、及び114-Lとして示されており、ここで、少なくともいくつかの電極は、既知の減速段におけるように、抑制電極及び減速電極として配置することができる。例えば、電極114-E~114-Lは、減速電極として作用することができる。出口電極アセンブリ116は、出口アパーチャ152に隣接して出口アパーチャ152の上流に配置された第1の出口電極116-A及び第2の出口電極116-Bを含むことができる。様々な非限定的な実施形態では、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、接地電極であってもよく、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bに印加される電位は、接地電位である。
【0021】
いくつかの実施形態では、電極114-A~114-Lは、互いに電気的に結合されたロッドまたは他の細長い(横軸に沿った)構造などの導電性片の一対を含む。あるいは、電極114-A~114-Lは、それぞれがイオンビームが通過するためのアパーチャを含む一連の単一構造であってもよい。図示の実施形態では、各電極対の上側部分および下側部分は、そこを通過するイオンビームを偏向させるために、(例えば、別個の導電片において)異なる電位を有してもよい。電極114-A~114-Lは、7対(例えば、5組の抑制/集束電極を有する)として示されているが、様々な実施形態では、任意の数の要素(または電極)を利用することができる。例えば、電極114-Aから114-Lの構成は、三個から十個の電極の組の範囲を用いることができる。
【0022】
様々な実施形態では、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、互いに対して独立して移動可能な別個の電極であってもよい。
【0023】
図2に示されるように、第2の出口電極116-Bは、電極ギャップGによって第1の出口電極116-Aから分離され、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、ギャップ範囲にわたって電極ギャップGのサイズを変化させるように、互いに対して移動可能である。次に、図3A図3B、及び図3Cを参照すると、本発明のいくつかの実施形態による、電極システム114の動作が示される。第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bの構成は、図3A図3B、及び図3Cに示される異なる図の間で変更される。特に、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、連続する図の間で回転軸を中心に、連続する90度の増分(θ)で回転される。この回転は、図3Dおよび図3Eに関して以下に詳細に説明されるように、電極ギャップGが調整されることを可能にする。一例として、図3Aは、電極ギャップGが最大であるθ=0°の回転角度位置に対応することができ、この値は、一実施形態では98mmに対応することができる。図3Bは、電極ギャップGが80.3mmであり得る回転角度位置θ=90°を示す。図3Cは、回転角度位置θ=180°を示し、ここで、電極ギャップGは、63mmの最小であってもよい。この例では、ギャップ範囲は35mmであるが、他の例では、ギャップ範囲は少なくとも25mmであってもよい。実施形態は、この文脈において限定されない。
【0024】
図3D及び図3Eは、本発明の実施形態による、出口電極アセンブリ116の動作の詳細を示す。様々な実施形態では、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、図示の座標系のX軸に沿って延在するロッドなどのシャフトを備えることができる。図3Dの例では、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、図示のようにシャフト中心162を呈する。第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bはまた、回転軸160を含み、回転軸160は、シャフト中心162から変位する。例えば、より小さい直径のロッドは、図示されるように回転軸を画定するために、所与の出口電極を通って延在してもよく、その結果、所与の出口電極は、シャフト中心162の周りを回転しない。第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bに回転運動を供給するモータ(駆動システム124を参照)に機械的に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、モータは、第1の出口電極116-Aを反時計回りに回転させ、第2の出口電極116-Bを時計回りに回転させる駆動運動を供給することができる。いくつかの実施形態では、反時計回りの回転および時計回りの回転は、互いに同時に起こるように駆動されてもよい。このようにして、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bの回転は、第1の出口電極116-Aと第2の出口電極116-Bとの間の電極ギャップを、G1の最大寸法からG2の最小寸法に低下させることができる。特に、図3D及び図3Eに示す例では、第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bは、回転軸160を中心に180度回転する。図3Bに示されるように、より小さな角度を通る回転は、G1とG2との間の中間サイズの電極ギャップをもたらす。第1の出口電極116-Aおよび第2の出口電極116-Bの同時対称回転を提供することによって、電極ギャップは、第1の出口電極116-Aと第2の出口電極116-Bとの間の中心線164を中心に対称に変化されてもよい。
【0025】
上記の例における電極ギャップGを調整するためのギャップ範囲は、単に例示的なものであり、例えば、出口電極のサイズおよび回転軸の配置に応じて、より大きくても、より小さくてもよい。他の実施形態では、出口電極間の電極ギャップは、Y軸に沿って出口電極に直線運動を付与することによって出口電極間の電極ギャップを変化させる駆動装置を使用して調整することができる。
【0026】
図4A図4B、及び図4Cは、本発明の実施形態による電極システムの動作のためのシミュレートされたビーム電流プロファイルを示す。図は、電極システム114を横切るイオンビーム170の断面を示し、所定の長方形は、長方形内に均一な電位を有する電極を表す。図は、電極システム114の上半分を示しており、下半分は、上半分に対して対称であり、明確にするために省略されている。このシミュレーションでは、3keVのPビームが、接地電位に保持された一対の可動出口電極を含む電極システム114を通って輸送される。図4A~4Cのシミュレーションでは、最終的なビームエネルギーが3keVであり、一方、端子電極(入口アパ-チャに隣接する左側の最も遠い電極)に印加される電圧は-30kVであり、抑制電極(抑制電極の位置については、図3A~3Cを参照)に印加される電圧は-50kVである。
【0027】
図4Aでは、1つの電極、出口電極116-Bのみが示されている。ビーム電流(ROI)は、300mmウェーハなどの基板120上で測定される。図4Aにおいて、出口電極116-Bによって例示されるような出口電極は、出口電極間の電極ギャップが76mmである位置に移動され、ここで、イオンビーム170は、出口電極116-Bにちょうど接触している。この構成では、電極システム114は、27.6mA、3keVのPビームを集束させ、基板に輸送することができる。図4Aはまた、イオンビーム170(3 keV)を集束し、電極システム114を通って基板120に輸送するための有用な凹形状を有するプラズマ境界172を示す。このように、イオンビーム170は、基板120に衝突するとき、Y軸に沿って小さい高さを有する狭いビームを形成する。次に図4Bを参照すると、出口電極間の電極ギャップが98mmになるように調整される構成が示されている。特に、この構成は、いくつかの既知のイオン注入システムにおいて示される固定電極ギャップに対応する。そのような比較的大きい電極ギャップは、500 eV程度の低いエネルギーを有する低エネルギーイオンビームが、妥当なビーム電流で基板に通され得るように有用であり得る。このような広い固定電極ギャップを設けることの欠点は、3 keVのPビームに対して図4Bに示されている。図4Bでは、イオンビーム170は、図4Aと同じ27.6mAの電流および同じ3 keV P+のビームエネルギーに対してシミュレートされている。この構成では、イオンビーム170は、集束されずに基板120に通され、したがって、より高いビームが基板120に衝突する。図4Bはまた、プラズマ境界174を示し、この境界は、平坦化され、図4Aのプラズマ境界172に対して下流にシフトされる。プラズマ境界の歪みは、電極システム114の出口におけるイオンビーム170の集束を低減させる。プラズマ境界の下流へのシフトもビーム空間電荷拡大を増大させる。ビーム集束低減とビーム空間電荷拡大の両方は、電極システム114を通る基板120への低エネルギービームの透過を低減させる傾向がある。
【0028】
図4Cは、出口電極間の電極ギャップが98mmである別のシナリオを示す。この場合、電極システム114に輸送される電流は、21.4mA 3keV Pビーム電流のビームが基板120に通されるように低減される。この例では、プラズマ境界176が図4Aのプラズマ境界172に対して下流に移動する間、低減されたビーム電流で、イオンビーム170は、図4Aのシナリオにビーム高さが匹敵する、より短いビームに基板120で集束することができる。
【0029】
図4A~4Cの上記結果は、出口電極アセンブリ116の出口電極間の電極ギャップを調整することによって、低エネルギーイオンビームを集束および輸送するためにプラズマ境界を最適化できることを示す。特に、ビーム高さが出口電極116-Aと出口電極116-Bとの間の電極ギャップGに等しくなるように電極間の電極ギャップを調整することにより、電極システム114を通る低エネルギービーム透過を最大にするための適切な凹形状および適切な位置を有するプラズマ境界が生成される。特に、結果は、3keVのPビーム電流が、98mmのような広い電極ギャップを有する既知の固定電極構成に対して30%増大し得ることを示している。
【0030】
図5は、本発明の実施形態による例示的なプロセスフロー500を示す。ブロック502では、イオンビームが、電極システムの入口アパ-チャで受けられる。様々な実施形態において、イオンビームは、リボンビームまたは走査スポットビームであってもよい。いくつかの実施形態では、電極システムは、減速段として作用してもよい。いくつかの実施形態では、イオンビームは、30 keV以下のイオンエネルギーを含んでもよく、特定の実施形態では、10 keV以下のイオンエネルギーを含んでもよい。
【0031】
ブロック504において、イオンビームは、イオンビームが電極システムを通って導かれるにつれて、減速され得る。このように、電極システムは、イオンビームを誘導し、かつイオンビームを減速するように構成された、複数対の対向する電極を含んでもよい。電極システムは、一対の出口電極を含むことができ、出口電極は、電極システム内の電極の最も下流にある。電極システムと基板との間に他の加速段または減速段が存在しない実施形態では、一対の出口電極は接地電極であってもよい。
【0032】
ブロック506では、出口電極間の電極ギャップが、イオンビームのビーム高さに従って、電極システム内で調整される。ビーム高さは、一対の出口電極の第1の出口電極と第2の出口電極との間に延在する線に沿ったビームのサイズを表すことができる。いくつかの実施形態では、電極ギャップは、ビーム高さに等しくなるように調整することができる。特定の実施形態では、出口電極は、ロッドとして構成することができ、電極ギャップは、ロッドの中心から離間した各ロッドの回転軸の周りでロッドを回転させることによって調整することができる。
【0033】
上記に鑑みて、少なくとも以下の利点が、本明細書に開示される実施形態によって達成される。第1に、本実施形態に従って構成される減速段内の電極構成は、操作者によって、減速段を取り外す必要がなく、手動調整を必要とせずに、好都合に調整されてもよい。第2に、数百eV程度の低いエネルギーを有する低エネルギーイオンビームは、減速段内に収容され、一方、より高いイオンエネルギーで適切な焦点を有する高ビーム電流を伝達することができる。
【0034】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載された実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、前述の記載および添付図面から当業者には明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲内に含まれるものと意図している。さらに、本発明は、特定の環境における特定の目的のための特定の実装の文脈にて本明細書中で説明したけれども、当業者は、その実施形態の有用性はそれらに限定されるものでなく、本実施形態は任意の数の環境における任意の数の目的のために有益に実装し得ることを認識するであろう。従って、以下に記載する特許請求の範囲は本明細書に記載された本発明の全範囲及び精神に鑑みて解釈しなければならない。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5