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  • 特許-低ナトリウム樹脂の製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】低ナトリウム樹脂の製造
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/00 20060101AFI20230425BHJP
   C08F 12/26 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C08F6/00
C08F12/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020521983
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018054794
(87)【国際公開番号】W WO2019083712
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】62/576,677
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】520082968
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス エイト,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】ロハンナ、ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】テーガン、マーヴィン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シュルズ、アルフレッド ケー.
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-130306(JP,A)
【文献】特開平9-141108(JP,A)
【文献】特表平3-504374(JP,A)
【文献】特表2019-531370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/
B01J41/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)樹脂ビーズ(a)の収集物を提供するステップであって、
前記樹脂ビーズ(a)が、第四級アンモニウム基を有する1種以上のビニルポリマーを含み、
前記第四級アンモニウム基の90モル%以上が、塩化物陰イオンとそれぞれ関係している
ステップ;
(b)樹脂ビーズ(a)の前記収集物を、1種以上の溶解した(M) を含む水溶液(b)と接触させて混合物(b)を形成するステップであって、
Mが、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+i)の陽イオンであり;
Xが、電荷(-j)の陰イオンであり、Xが、カーボネート、ビカーボネート、二水素ホスフェート、ホルメート、アセテート、及びアミノアセテートからなる群から選択され;
並びに(n×i)=(q×j)である
ステップ;
(c)水及び前記水に溶解した化合物を前記混合物(b)から分離して、樹脂ビーズ(c)と廃液(bw)とを形成するステップ;
(d)樹脂ビーズ(c)を、溶解した(M3)(OH)を含む水溶液(c)と接触させて、混合物(d)を形成するステップであって、
M3が、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+k)の陽イオンであり;
並びにp=kである
ステップ
を含む樹脂ビーズの収集物の処理方法。
【請求項2】
水及び前記水に溶解した化合物を前記混合物(d)から分離して、樹脂ビーズ(e)と廃液(ew)とを形成する追加のステップ(e)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上のビニルポリマーが、1種以上のビニル芳香族ポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種以上のビニル芳香族ポリマーが、構造(II)
【化1】
(式中、芳香環上の2つの置換基は、オルト、メタ、又はパラ位にあり得るし;式中、
【化2】
は陰イオンであり;式中、R、R、及びRのそれぞれは、少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも1個の水素原子を含有する有機基であり;並びに式中、構造(II)における窒素原子は、R、R、及びRのそれぞれの中の炭素原子に結合している)
の重合単位を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(e)の後に、樹脂(e)のナトリウム含有量が、樹脂(e)の総重量を基準として重量で、100ppb以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
Mが、アンモニウム、トリアルキルアンモニウム、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Mがアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上の化合物Mが、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有用なクラスの製品は、第四級アンモニウム基を有するビニルポリマーを含有する樹脂ビーズである。多くの場合、水酸化物形態、すなわち、第四級アンモニウム基の90モル%以上がそれぞれ水酸化物イオンと関係している形態のそのような樹脂ビーズを提供することが望ましい。しかしながら、本発明の開発の過程で、既知の方法によって製造されたヒドロキシル形態のそのような樹脂ビーズの収集物は、重量で、100ppb超、多くの場合、500ppb超、又は5000ppb超さえのナトリウムを通常含有することが観察された。樹脂ビーズのいくつかの可能な使用のためには、そのような量のナトリウムは、不必要に高い。それ故、ナトリウムレベルが重量で100ppb以下である樹脂ビーズの収集物の製造方法を提供することが望ましい。
【背景技術】
【0002】
第四級アンモニウム基を持ったビニルポリマーを含有する樹脂ビーズの通常の既知の製造方法において、その方法は、塩化物イオンの量が第四級アンモニウム基の90モル%以上である樹脂を生成する。しかしながら、塩化物対イオンを有する樹脂は、多くの用途向けに望ましくなく、だから、樹脂は、
【化1】

【化2】
と交換するために、それらの1つ以上が歴史的にNaOHの水溶液であった、1つ以上の水溶液と歴史的に接触させられてきた。例えば、歴史的に、塩化物対イオンを有する樹脂は、第1ステップにおいて、NaHCO又はNaCOの水溶液と接触させられ、次に、第2ステップにおいて、NaOHの水溶液と接触させられてきた可能性がある(例えば、米国特許第4,025,467号明細書に記載されているように)。NaHCO又はNaCOの水溶液との接触は、主として
【化3】

【化4】
と又は
【化5】
と交換するであろうが、また時には、
【化6】
を陰イオン
【化7】
と交換するであろうと考えられる。このように、主プロセスは、陰イオンの交換であるけれども、樹脂はいくらかのナトリウム原子を獲得すると考えられる。
【0003】
もう一つ例を挙げると、塩化物対イオンを有する樹脂は、NaOHの水溶液と直接接触させられ得る。NaOHの水溶液はいくらかのカーボネートイオン、
【化8】
、及び/又は陰イオン
【化9】
のいくらかを含有すると考えられる。
【化10】
及び/又は
【化11】
は、貯蔵中に起こる溶解COの中和のために存在すると考えられる。更に、塩化物対イオンを有する樹脂とNaOHの水溶液との間の接触は、
【化12】
対イオンの大部分が
【化13】
と置き換えられることを引き起こすであろうが、
【化14】
対イオンの一部は
【化15】
と置き換えられるであろうと考えられる。したがって、この例において、主プロセスは陰イオンの交換であるが、樹脂はいくらかのナトリウム原子を獲得すると考えられることもまた事実である。
【0004】
欧州特許第0 183 158号明細書は、塩化物形態から水酸化物形態への強塩基性陰イオン交換樹脂の変換方法を記載している。欧州特許第0 183 158号明細書によって記載されている一方法は、2ステッププロセスである。第1ステップにおいて、樹脂は、カーボネート、ビカーボネート、又はそれらの混合物を含有する第1溶液を接触させられる。第2ステップにおいて、樹脂は、水酸化物を含有する第2溶液と接触させられる。第1溶液か又は第2溶液かのどちらかに使用するために欧州特許第0 183 158号明細書によって開示されている唯一の陽イオンは、ナトリウムである。非常に低いナトリウム含有量を有する塩化物形態の樹脂を生成する、塩化物形態から水酸化物形態への強塩基性陰イオン交換樹脂の変換方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下は本発明の記載である。
【0006】
本発明の第1態様は、
(a)樹脂ビーズ(a)の収集物を提供するステップであって、
樹脂ビーズ(a)が、第四級アンモニウム基を有する1種以上のビニルポリマーを含み;
第四級アンモニウム基の90モル%以上が、塩化物陰イオンとそれぞれ関係している
ステップ;
(b)樹脂ビーズ(a)の収集物を、1種以上の溶解した(M)を含む水溶液(b)と接触させて混合物(b)を形成するステップであって、
Mが、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+i)の陽イオンであり;
Xが、電荷(-j)の陰イオンであり、Xが、カーボネート、ビカーボネート、二水素ホスフェート、ホルメート、アセテート、及びアミノアセテートからなる群から選択され;
並びに(n*i)=(p*j)である
ステップ;
(c)水及び水に溶解した化合物を混合物(b)から分離して、樹脂ビーズ(c)と廃液(bw)とを形成するステップ;
(d)樹脂ビーズ(c)を、溶解した(M3)(OH)を含む水溶液(c)と接触させて、混合物(d)を形成するステップであって;
M3が、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+k)の陽イオンであり;
並びにp=kである
ステップ
を含む樹脂ビーズ(a)の収集物の処理方法である。
【0007】
以下は、図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のステップを例示するフローダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は本発明の詳細な説明である。
【0010】
本明細書で用いるところでは、以下の用語は、文脈がそうではないと明らかに示さない限り、指定された定義を有する。
【0011】
「樹脂」は、本明細書で用いるところでは、「ポリマー」と同意語である。「ポリマー」は、本明細書で用いるところでは、より小さい化学繰り返し単位の反応生成物で構成された比較的大きい分子である。ポリマーは、線状、分岐状、星形、ループ状、超分岐状、架橋、又はそれらの組み合わせである構造を有し得;ポリマーは、単一タイプの繰り返し単位を有し得(「ホモポリマー」)、又はそれらは、2つ以上のタイプの繰り返し単位を有し得る(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダムに、順序正しく、ブロックで、他の配列で、又はそれらの任意の混合若しくは組み合わせで配列された様々なタイプの繰り返し単位を有し得る。ポリマーは、2,000以上の重量平均分子量を有する。
【0012】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、「モノマー」として本明細書では知られている。そのようにして形成された繰り返し単位は、モノマーの「重合単位」として本明細書では知られている。
【0013】
ビニルモノマーは、フリーラジカル重合プロセスに関与することができる非芳香族炭素-炭素二重結合を有する。ビニルモノマーは、2,000未満の分子量を有する。ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体としては、例えば、次のもの:酢酸ビニル及びアクリルモノマーの非置換型及び置換型が挙げられる。「置換」は、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、第四級アンモニウム基、他の官能基、及びそれらの組み合わせなどの少なくとも1個の結合した化学基を有することを意味する。
【0014】
本明細書で用いるところでは、アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステル、それらのアミド、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルが挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸のエステルとしては、アルキル基が置換されているか又は非置換であるアルキルエステルが挙げられる。アクリル酸及びメタクリル酸のアミドは、構造(III)
【化16】
(式中、Rは、水素又はメチルであり;式中、R及びRのそれぞれは有機基であり;ここで、構造(III)におけるNは、R及びRのそれぞれ中の炭素原子に結合している)
を有する。
【0015】
本明細書で用いるところでは、ビニル芳香族モノマーは、1個以上の芳香環を含有するビニルモノマーである。
【0016】
ビニルモノマーは、炭素-炭素二重結合が互いに反応してポリマー鎖を形成する、ビニル重合のプロセスによってポリマーを形成すると考えられる。
【0017】
ポリマーの重量を基準として重量で、重合単位の90%以上が1種以上のビニルモノマーの重合単位であるポリマーがビニルポリマーである。ビニル芳香族ポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、重合単位の50%以上が1種以上のビニル芳香族モノマーの重合単位であるポリマーである。第四級アンモニウム基をビニル芳香族ポリマーに取り付けるために1つ以上の化学反応にかけられたビニル芳香族ポリマーは、ビニル芳香族ポリマーであると本明細書では依然として考えられる。アクリルポリマーは、ポリマーの重量を基準として重量で、重合単位の50%以上が1種以上のアクリルモノマーの重合単位であるポリマーである。第四級アンモニウム基をアクリルポリマーに取り付けるために1つ以上の化学反応にかけられたアクリルポリマーは、アクリルポリマーであると本明細書では依然として考えられる。
【0018】
樹脂は、ポリマーをいかなる溶剤にも溶けないようにするのに十分な分岐点をポリマー鎖が有する場合には架橋されていると本明細書では考えられる。ポリマーが溶剤に溶けないと本明細書で言われる場合、それは、0.1グラム未満の樹脂が25℃で100グラムの溶剤に溶解するであろうことを意味する。
【0019】
水性環境は、液体の重量を基準として重量で75%以上の水を含有する液体である。
【0020】
陰イオン交換樹脂は、樹脂に共有結合した陽イオン基を有するポリマーである。本発明に関係がある陰イオン交換樹脂上の陽イオン基は、第四級アンモニウム基である。
【0021】
第四級アンモニウム基は構造(I):
【化17】
(式中、
【化18】
は、第四級アンモニウム基と何らかの他の有機基との間の連結を意味し、
【化19】
は陰イオンである)
を有する。R、R、及びRのそれぞれは、少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも1個の水素原子を含有する有機基である。構造(I)における窒素原子は、R、R、及びRのそれぞれ中の炭素原子に結合している。
【0022】
樹脂ビーズの収集物は、ビーズの直径で特徴付けられる。ビーズが球形でない場合、ビーズの直径は、そのビーズと同じ体積を有する粒子の直径であると考えられる。樹脂ビーズの収集物は、本明細書では、収集物の体積平均径で特徴付けられる。体積平均径は、ビーズの収集物を一連のワイヤ網目スクリーンに通すことによって測定され、ここで、各スクリーンの開口部サイズは既知であり、各スクリーンは、前のスクリーンよりも小さい開口部を有する。各スクリーン上に保持されたビーズの体積は、直径の分布を提供し、直径の分布から体積平均径は計算される。
【0023】
樹脂ビーズの収集物中に存在するナトリウムの量は、誘導結合プラズム質量分析法(ICP-MS)によって測定される。省略形「ppb」は十億当たりの部であり、「ppm」は百万当たりの部である。特に明記しない限り、ppb及びppmは、重量によって本明細書では報告される。
【0024】
本発明の樹脂ビーズ(a)は、1種以上のビニルポリマーを含む。ビニル芳香族ポリマー及びアクリルポリマーが好ましく;ビニル芳香族ポリマーがより好ましい。
【0025】
ビニル芳香族ポリマーの中で、スチレン、置換スチレン、ジビニルベンゼン、及びそれらの組み合わせの重合単位を含むものが好ましい。好ましくは、スチレン、置換スチレン、及びジビニルベンゼンの重合単位の総量は、ビニル芳香族ポリマーの重量を基準として重量で、75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上である。
【0026】
本発明において使用されるビニルポリマーは、第四級アンモニウム基を有する。
【0027】
ビニルポリマーがビニル芳香族ポリマーである場合、好ましくは、第四級アンモニウム基は、芳香環に隣接している炭素原子に結合している。ビニル芳香族ポリマーの中で、好ましくは、ビニル芳香族ポリマーは、構造(II):
【化20】
の1種以上の重合単位を有する。
式中、重合単位は、括弧間の構造であり、括弧を通って伸びる線は、重合単位と隣接重合単位との間の結合を意味する。構造(II)において、第四級アンモニウム含有基は、パラ位に示されている。第四級アンモニウム含有基が、オルト又はメタ位、及びそれらの組み合わせで結合している構造(II)もまた好適である。R、R、R、及び
【化21】
は、構造(I)における通り定義される。好ましくは、R、R、及びRのそれぞれは、6個以下の炭素原子;より好ましくは4個以下の炭素原子;より好ましくは2個以下の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基である。好ましくは、R、R、及びRのそれぞれは、非置換アルキル基又はヒドロキシル基以外の置換基も持たないヒドロキシル置換アルキル基である。好ましくは、R及びRは、互いに同じものであり;より好ましくは、R及びRは、同一の非置換アルキル基である。1つの好ましい実施形態において、R、R、及びRは、互いに同じものである。別の好ましい実施形態において、R及びRは、同一の非置換アルキル基であり、Rは、ヒドロキシル基である、1個の置換基を持ったアルキル基である。
【0028】
アクリルポリマーの中で、アクリル酸の置換又は非置換アルキルエステル、メタクリル酸の置換又は非置換アルキルエステル、アクリル酸の非置換又はN置換アミド、メタクリル酸の非置換又はN置換アミド、及びそれらの組み合わせの重合単位を含むものが好ましい。アクリルポリマーの中で、アクリル酸の置換又は非置換アルキルエステル、アクリル酸の非置換又はN置換アミド、及びそれらの組み合わせの重合単位を含むものがより好ましい。アクリルポリマーの中で、好ましくは、アクリルモノマーの重合単位の総量は、アクリルポリマーの重量を基準とする重量で、75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上である。
【0029】
ビニルポリマーがアクリルポリマーである場合、好ましくは、アクリルポリマーは、構造(IV):
【化22】
(式中、Rは、水素又はメチル、好ましくは水素であり;式中、Rは、水素又はメチル若しくはエチル、好ましくは水素であり;式中、Qは、1~8個の炭素原子を有する非置換アルキル基、好ましくはエチル又はn-プロピルであり;式中、R、R、及びRのそれぞれは、1個以上の炭素原子と1個以上の水素原子とを含有する有機基であり;式中、R、R、及びRのそれぞれ内の炭素原子は、構造(IV)におけるアンモニウム窒素原子に結合している)の1種以上の重合単位を有する。R、R、及びRについて好ましい有機基は、1~8個の炭素原子を有する非置換アルキル基及び1~8個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基であり;1~2個の炭素原子を有する非置換アルキル基及び1~2個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基がより好ましい。構造(IV)について好ましい2つの実施形態は、次の通りである:(1)R、R、及びRのそれぞれはメチルである;並びに(2)R及びRはメチルであり、Rは2-ヒドロキシエチルである。
【0030】
好ましくは、第四級アンモニウム基を有する樹脂ビーズ(a)の収集物は、陰イオン交換樹脂として有用である。
【0031】
第四級アンモニウム基を有するビニルポリマーは、任意の方法によって製造され得る。好ましい方法において、ビニルモノマーを含むモノマーのフリーラジカルビニル重合によって予備ビニルポリマーが製造される第1ステップが行われる。次に、この予備ビニルポリマーは、好ましくは、ビニルポリマーへの第四級アンモニウム基の結合をもたらす1つ以上の化学反応にかけられる。
【0032】
ビニルポリマーがビニル芳香族ポリマーである場合、予備ビニル芳香族ポリマーを製造するための好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン及びジビニルベンゼンである。好ましくは、スチレンの重合単位の量プラスジビニルベンゼンの重合単位の量の合計は、予備ビニル芳香族ポリマーの重量を基準として重量で、50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上である。次に、この予備ビニル芳香族ポリマーは、好ましくは構造(II)に示されるような構造物を形成することによって、ポリマーへの第四級アンモニウム基の結合をもたらす1つ以上の化学反応に好ましくはかけられる。
【0033】
ビニルポリマーがアクリルポリマーである場合、好ましいアクリルモノマーは、アルキル基が1~8個の炭素原子;より好ましくは1~4個の炭素原子;より好ましくは1又は2個の炭素原子;より好ましくは1個の炭素原子を有する、アクリル酸又はメタクリル酸の非置換アルキル基エステルである。アクリル酸のアルキルエステルが好ましい。好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸の非置換アルキルエステルの重合単位の量の合計は、予備アクリルポリマーの重量を基準として重量で、50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上である。次に、この予備アクリルポリマーは、好ましくは構造(IV)に示されるような構造物を形成することによって、ポリマーへの第四級アンモニウム基の結合をもたらす1つ以上の化学反応に好ましくはかけられる。
【0034】
好ましくは、樹脂ビーズ(a)中のビニルポリマーの量は、樹脂ビーズの重量を基準として重量で、50%以上;より好ましくは75%以上;より好ましくは85%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上である。
【0035】
好ましくは、本発明の樹脂ビーズ(a)の収集物は、300マイクロメートル以上;より好ましくは500マイクロメートル以上の体積平均径を有する。好ましくは、本発明の樹脂ビーズ(a)の収集物は、1500マイクロメートル以下;より好ましくは1200マイクロメートル以下;より好ましくは1000マイクロメートル以下の体積平均径を有する。
【0036】
本発明の方法のステップ(b)の前に、樹脂ビーズ(a)のビニルポリマーに結合した第四級アンモニウム基の中で、塩化物である
【化23】
を有する量は、90モル%以上;好ましくは95%以上;より好ましくは99モル%である。
【0037】
本発明の方法は、樹脂ビーズ(a)の収集物を水溶液(b)と接触させるステップ(b)を含む。水溶液(b)は、1種以上の溶解したMを含む。Mは、金属原子、アルカリ金属原子、及びアルカリ土類原子を含有しない電荷(+i)の陽イオンである。Xは、カーボネート、ビカーボネート、二水素ホスフェート、ホルメート、アセテート、及びアミノアセテートからなる群から選択される電荷(-j)のイオンである。値i、j、n、及びqは正の整数である。n及びqの値は、基準n*i=q*jを満たす。
【0038】
好ましくは、Mは、トリアルキルアンモニウム陽イオン又はアンモニウム陽イオンであり;より好ましくは、Mはアンモニウム陽イオンである。Mがトリアルキルアンモニウム陽イオンである場合、好ましいアルキル基は、6個以下;より好ましくは4個以下;より好ましくは2個以下の炭素原子を有する。好ましくは、Xは、カーボネート又はビカーボネートである。
【0039】
任意選択的に、2種以上の異なる化合物Mの混合物が使用される。そのような混合物が使用される場合、好ましくは、あらゆるMは、トリアルキルアンモニウム陽イオン又はアンモニア陽イオンであり;より好ましくは、あらゆるMはアンモニア陽イオンである。
【0040】
本発明はいかなる理論にも制約されないが、以下の考察は、本発明の動機付けのいくつかを理解するのに役立ち得る。本発明の方法の1つの目標は、水酸化物形態への塩化物形態樹脂の変換である。すなわち、当初は、樹脂上の第四級アンモニウム基は、大部分は塩化物イオンと関係しており、それらの塩化物イオンを水酸化物イオンで置き換えることが望ましい。塩化物形態樹脂を水酸化物塩の溶液で処理することによって直接この変換を行うことが可能である。しかしながら、第四級アンモニウム基を含有する多くの樹脂は、水酸化物イオンに対するよりも塩化物イオンに対して大きい親和性を有するので、そのような直接処理は、多くの場合、不十分である。この親和性は、塩化物イオンの「選択性」が水酸化物イオンの「選択性」よりも「高い」と言うことによって通常表現される(例えば、Wheaton and Bauman,“Properties of Strongly Basic Anion Exchange Resins,”Industrial and Engineering Chemistry,volume 43,page 1088,1951;及び欧州特許第0 183 158号明細書を参照されたい)。高濃度の水酸化物が処理溶液中に必要とされるか、又は大量の処理溶液が必要とされるかのどちらか、又は両方であるので、直接変換は非効率的であろうと予期される。塩化物の選択性と水酸化物の選択性との間において選択性を有するより効率的な方法は、1種以上の「中間」陰イオンを特定することであろうと予期される。そのとき、中間陰イオンの溶液での処理は、塩化物を効率的に除去することができ、次に、第2ステップにおいて、水酸化物溶液での処理は、中間陰イオンを除去することができ得る。陰イオン「A」と本明細書で明記される陰イオンは、中間陰イオンとして機能すると予測される。
【0041】
は、ここでは、「非金属塩」と言われる。水溶液(b)中の溶解非金属塩の全濃度は、好ましくは0.02N以上;より好ましくは0.05N以上;より好ましくは0.1N以上である。水溶液(b)中の非金属塩の全濃度は、好ましくは2N以下;より好ましくは1N以下;より好ましくは0.5N以下である。本発明の方法において、ステップ(b)の後に、次にステップ(c)が行われる。ステップ(c)において、樹脂ビーズ(今や樹脂ビーズ(c)と表示される)は、水及び溶解物質のいくらか(今や水溶液(bw)と表示される)から分離される。
【0042】
ステップ(b)及び(c)は、多種多様な方法のいずれかによって行われ得る。2つの好ましいタイプの方法は、バッチ法及びフロー法である。フロー法がより好ましい。任意の方法について、非金属塩の総質量(グラム単位での)対樹脂ビーズの収集物の体積(リットル単位での)の比である、「C/R比」によって方法を特徴付けることは有用である。C/R比は、樹脂ビーズの1リットル当たりの(b)カーボネート塩の合計グラムの単位で、単一数字として報告される。
【0043】
バッチ法において、ある量の樹脂ビーズ(a)及びある量の水溶液(b)が容器へ入れられて混合物(b)を形成する。通常は、何らかの機械的かき混ぜがこの混合物(b)に加えられる。そのとき、混合物(b)は、樹脂ビーズ(b)の収集物を含有し、及び1種以上の溶解化学種を含有する水溶液を含有すると考えられ、それらの溶解化学種の1種以上は、樹脂ビーズ(b)から除去された塩化物を含有する。水溶液中の塩化物は、例えば、溶解塩化物陰イオン、錯体の一部としての塩化物、他の形態、又はそれらの組み合わせを含む、任意の形態にあり得る。
【0044】
バッチ法において、混合物(b)の形成及びかき混ぜの後に、結果として生じた水溶液のいくらか又は全てが、混合物(b)から分離され、分離水溶液は、水溶液(bw)と表示される。例えば、デカンテーション、濾過、遠心分離、他の分離方法、及びそれらの組み合わせを含む、分離の任意の方法が用いられ得る。好ましくは、混合物(b)から分離される水溶液(bw)の量は、混合物(b)に添加された水溶液(b)の元の重量を基準として重量で、50%以上;より好ましくは75%以上である。分離が成し遂げられた後に、樹脂ビーズの収集物は、今や樹脂ビーズ(c)と表示される。たぶん1種以上の溶解物質を含んだ、いくらかの水が、分離後に樹脂ビーズ(c)に付着してとどまり続けるであろうし、そのような付着水は、樹脂ビース(c)の収集物の一部と考えられる。
【0045】
バッチ法について、C/R比は、容器中に入れられた量の水溶液(b)中に存在する非金属塩の合計グラムを、容器中に入れられた樹脂ビーズ(a)の収集物の体積で割ることによって得られる。樹脂ビーズ(a)の収集物の体積は、混合物(b)を形成する前に測定される。
【0046】
フロー法において、樹脂ビーズ(a)は、水溶液が容器へ導入されながら、樹脂ビーズ(a)を適所に保つ、例えば、クロマトグラフィーカラムなどの、容器に入れられる。容器が樹脂ビーズ(a)を容器内に保ちながら、水溶液は、樹脂ビーズ(a)の収集物を通過し、次に、出口を通って容器を出る。水溶液(b)は容器を通って流れるが、水溶液(b)の一部は、樹脂ビーズ(a)と接触して容器内に存在し、容器内部の水溶液(b)及び容器内の樹脂ビーズ(a)は一緒に、混合物(b)を形成すると考えられる。樹脂ビーズとの接触後に容器を出る水溶液は、混合物(b)から「除去される」と考えられ、水溶液(bw)と表示される。所望量の水溶液(b)が容器を通って流れた後に、フローは停止され、容器中にとどまっている樹脂ビーズは、樹脂ビーズ(c)と表示される。水溶液(b)のフローが停止され、そして水溶液(b)が重力によって容器から排水するに任せられた後に、1種以上の溶解化合物をたぶん含有する、いくらかの水が、容器中の樹脂ビーズ(c)に付着し続けるであろうと考えられる。そのような水は、樹脂ビーズ(c)の収集物の一部であると考えられる。
【0047】
フロー法について、C/R比は、容器中へ導入された総量の水溶液中に存在する非金属塩の合計グラムを、容器中に入れられた樹脂ビーズ(a)の収集物の体積で割ることによって得られる。樹脂ビーズ(a)の収集物の体積は、容器への配置前に測定される。
【0048】
好ましくは、C/R比は、樹脂ビーズ(a)の1リットル当たりの非金属塩の合計グラム単位で、0.5以上;より好ましくは1以上;より好ましくは2以上である。好ましくは、C/R比は、樹脂ビーズ(a)の1リットル当たりの非金属塩のグラム単位で、20以下;より好ましくは10以下である。
【0049】
ステップ(c)が行われた後に、次に、ステップ(d)が行われる。ステップ(d)において、樹脂ビーズ(c)の収集物は、水溶液(c)と接触させられて混合物(d)を形成する。好ましくは、ステップ(d)の後に、次に、樹脂ビーズ(e)が水溶液(ew)から分離される、ステップ(e)が行われる。ステップ(d)及び(e)は、多種多様な方法のいずれかによって好適にも行われる。好ましい方法は、上に記載されたようなバッチ法及びフロー法である。フロー法がより好ましい。
【0050】
水溶液(c)は、水に溶解した(M3)(OH)を含有する。M3は、金属原子、アルカリ金属原子、及びアルカリ土類原子を含有しない電荷(+k)の陽イオンである。値p及びkは、正の整数であり、p=kである。M3は、好ましくは、トリアルキルアンモニウム若しくはアンモニウム又はそれらの混合物;より好ましくはアンモニウムである。
【0051】
(M3)(OH)は、「非金属水酸化物」と本明細書では言われる。好ましくは、水溶液(c)中の非金属水酸化物の濃度は、0.02N以上;より好ましくは0.05N以上;より好ましくは0.1N以上である。好ましくは、水溶液(c)中の非金属水酸化物の濃度は、2N以下;より好ましくは1N以下;より好ましくは0.5N以下である。
【0052】
ステップ(d)及び(e)について、H/R比は、ステップ(d)及び(e)についてのH/R比が、ステップ(d)及び(e)において使用される非金属水酸化物のグラム単位を、樹脂ビース(c)の収集物の体積で割ることによって得られる商であることを除いてC/R比について上に記載された通り計算される。好ましくは、H/R比は、樹脂ビーズ(a)の1リットル当たりの非金属水酸化物の合計グラム単位で、0.5以上;より好ましくは1以上;より好ましくは2以上である。好ましくは、H/R比は、樹脂ビーズ(a)の1リットル当たりの非金属水酸化物のグラム単位で、20以下;より好ましくは10以下である。
【0053】
本発明の樹脂ビーズの収集物中のナトリウムの量は、例えば、中性元素ナトリウム、陽イオン性ナトリウム、錯体中のナトリウム、他の形態、及びそれらの組み合わせ含む、あらゆる形態でのナトリウムの量を言う。ステップ(d)及び(e)の後に、ナトリウムの量は、樹脂ビーズの収集物の重量を基準として重量で、好ましくはゼロか、又はゼロでない場合、NaMAX以下であり、ここで、NaMAXは、好ましくは500ppb;より好ましくは200ppb;より好ましくは100ppb;より好ましくは75ppb;より好ましくは50ppbである。最も好ましくは、ナトリウムが存在しない。
【0054】
好ましくは、ステップ(e)の後に、樹脂ビーズ(e)は、水酸化物形態にある。すなわち、樹脂ビーズ(e)の収集物中に存在する水酸化物イオンの量は、第四級アンモニウム基のモルを基準としてモル%で、90%以上;より好ましくは95%以上;より好ましくは99%以上である。
【0055】
本発明の方法を行う際に、上に記載されたものに加えて追加のステップが取られ得ると想像される。例えば、どの時点についても、樹脂ビーズの収集物は、任意選択的に、水と接触させることによって洗浄され、次に水から分離される。そのような水洗浄は、例えば、以下の時点:ステップ(b)の前、ステップ(c)と(d)との間、及びステップ(e)の後の1つ以上で任意選択的に行われる。好ましくは、樹脂ビーズの収集物は、ナトリウムを含有するいかなる水溶液とも接触させられない。
【0056】
本発明の実施形態は、図1に例示される。ステップ(b)において、樹脂ビーズ(a)(樹脂は、塩化物型第四級基を有する)の収集物は、水溶液(b)(非金属塩)と接触させられて混合物(b)を形成する。次に、ステップ(c)において、樹脂ビーズ(c)の収集物は、水溶液(bw)から分離される。次に、ステップ(d)において、樹脂ビーズ(c)の収集物は、水溶液(c)(非金属水酸化物)と接触させられて混合物(d)を形成する。次に、ステップ(e)において、樹脂ビーズ(e)の収集物は、水溶液(ew)から分離される。
【実施例
【0057】
以下は、本発明の実施例である。
【0058】
以下の実施例に使用される樹脂ビーズは、第四級アンモニウム基を取り付けているスチレン/ジビニルベンゼンコポリマーである。体積平均ビーズ径は、300~1500マイクロメートルであった。
【0059】
調製実施例1
公知の方法を用いて、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマービーズを懸濁重合によって調製した。ジビニルベンゼンは、およそ37重量%のエチルビニルベンゼン入りで、純度63重量%であった。ビーズを、ZnCl触媒の存在下でクロロメチルメチルエーテルと反応させて芳香環にクロロメチル基を取り付けた。生成物をトリメチルアミンと反応させて、窒素原子がクロロメチル基の炭素原子に結合する状態で、クロロメチル基の塩素原子を第四級塩化アンモニウムに変換し、樹脂(a)を生成した。
【0060】
次の通り、炭酸アンモニウムの水溶液との接触、引き続く水酸化アンモニウムの水溶液との接触による処理によって、樹脂(a)のビーズを処理した。
【0061】
3L丸底フラスコに、1.6Lの樹脂(a)及び1Lの0.2N炭酸アンモニウムを添加して混合物を形成した。この混合物を1時間撹拌するに任せ、その後、水性混合物をサイフォンで吸い出すことによって、樹脂ビーズ(c)を水溶液から分離した。結果として生じた樹脂ビーズに、1Lの0.2N水酸化アンモニウム溶液を添加した。この混合物を1時間撹拌するに任せ、その後、水溶液をサイフォンで吸い出し、結果として生じた樹脂を純水で3回洗浄して樹脂(e)、実施例1の生成物を得た。
【0062】
比較調製実施例C2
クロロメチル化反応のための触媒がFeClであったことを除いて、樹脂(a)を製造するための調製実施例1の手順を用いて、ビーズ(本明細書では「樹脂R1」と表示される)を調製した。次の通り、重炭酸ナトリウムの水溶液との接触、引き続く水酸化ナトリウムの水溶液との接触による洗浄によって、樹脂R1のビーズを洗浄した。
【0063】
3L丸底フラスコに、1.6Lの樹脂R1及び1Lの0.2N炭酸ナトリウムを添加して混合物を形成した。この混合物を1時間撹拌するに任せ、その後、水性混合物をサイフォンで吸い出すことによって、樹脂ビーズを水溶液から分離した。結果として生じた樹脂ビーズに、1Lの0.2N水酸化ナトリウム溶液を添加した。この混合物を1時間撹拌するに任せ、その後、水溶液をサイフォンで吸い出し、結果として生じた樹脂を純水で3回洗浄して比較樹脂C2を得た。
【0064】
実施例3:Na含有量
実施例1及び比較例C2からの結果として生じたビーズのナトリウム含有量を次の通り測定した。樹脂のアリコートを、電子レンジ中で硫酸での処理によって蒸解した。均一溶液が形成されるまで、混合物を加熱した。Agilent(商標)8000シリーズICP-MSを用いて、この均一溶液のアリコートを分析して以下の結果を得た。
【0065】
【表1】
【0066】
アンモニウム塩で処理された、実施例1は、ナトリウム塩で処理された、比較例C2よりもはるかに少ないナトリウムを有した。
(態様)
(態様1)
(請求項1)
(a)樹脂ビーズ(a)の収集物を提供するステップであって、
前記樹脂ビーズ(a)が、第四級アンモニウム基を有する1種以上のビニルポリマーを含み、
前記第四級アンモニウム基の90モル%以上が、塩化物陰イオンとそれぞれ関係している
ステップ;
(b)樹脂ビーズ(a)の前記収集物を、1種以上の溶解した(M) を含む水溶液(b)と接触させて混合物(b)を形成するステップであって、
Mが、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+i)の陽イオンであり;
Xが、電荷(-j)の陰イオンであり、Xが、カーボネート、ビカーボネート、二水素ホスフェート、ホルメート、アセテート、及びアミノアセテートからなる群から選択され;
並びに(n*i)=(p*j)である
ステップ;
(c)水及び前記水に溶解した化合物を前記混合物(b)から分離して、樹脂ビーズ(c)と廃液(bw)とを形成するステップ;
(d)樹脂ビーズ(c)を、溶解した(M3)(OH) を含む水溶液(c)と接触させて、混合物(d)を形成するステップであって、
M3が、金属原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類原子を含有しない電荷(+k)の陽イオンであり;
並びにp=kである
ステップ
を含む樹脂ビーズの収集物の処理方法。
(請求項2)
水及び前記水に溶解した化合物を前記混合物(d)から分離して、樹脂ビーズ(e)と廃液(ew)とを形成する追加のステップ(e)を含む、請求項1に記載の方法。
(請求項3)
前記1種以上のビニルポリマーが、1種以上のビニル芳香族ポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
(請求項4)
前記1種以上のビニル芳香族ポリマーが、構造(II)
【化1】
(式中、芳香環上の2つの置換基は、オルト、メタ、又はパラ位にあり得るし;式中、
【化2】
は陰イオンであり;式中、R 、R 、及びR のそれぞれは、少なくとも1個の炭素原子及び少なくとも1個の水素原子を含有する有機基であり;並びに式中、構造(II)における窒素原子は、R 、R 、及びR のそれぞれの中の炭素原子に結合している)
の重合単位を含む、請求項3に記載の方法。
(請求項5)
ステップ(e)の後に、樹脂(e)のナトリウム含有量が、樹脂(e)の総重量を基準として重量で、100ppb以下である、請求項2に記載の方法。
(請求項6)
Mが、アンモニウム、トリアルキルアンモニウム、又はそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
(請求項7)
Mがアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
(請求項8)
前記1種以上の化合物M が、炭酸アンモニウム及び重炭酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
図1