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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】動物飼料材料
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/163 20160101AFI20230425BHJP
【FI】
A23K20/163
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020534960
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018086173
(87)【国際公開番号】W WO2019122112
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】BE2017/5984
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】521046871
【氏名又は名称】ニュートリ エーディー インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グーセンス ティム
(72)【発明者】
【氏名】ファン・インマゼール フィリップ・フロリモンド・マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】クワッケル ルネ
(72)【発明者】
【氏名】モケット ピエール・クレメント・アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】オンラスト ロンネケ
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-104010(JP,A)
【文献】特表平09-505060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0020091(US,A1)
【文献】特開2018-158895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料要求率を減少させ、生命体の体重を増加させ、又は1日あたりの平均増体量を増加させるための、治療的でない方法であって、アセチルエステル基をさらに含むセルロース酪酸エステルを投与することを含み、前記セルロース酪酸エステルは、数平均モル質量が2000~1000000g/molであり、
前記セルロース酪酸エステルは、少なくとも1重量%及び10重量%以下のアセチル基を含有することを特徴とする治療的でない方法。
【請求項2】
請求項1に記載の治療的でない方法であって、前記セルロース酪酸エステルは、数平均モル質量が7000~250000g/molであることを特徴とする、治療的でない方法。
【請求項3】
請求項2に記載の治療的でない方法であって、前記セルロース酪酸エステルは、数平均モル質量が13000~250000g/molであることを特徴とする、治療的でない方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の治療的でない方法であって、単糖ユニットあたりに含まれるブチリル基の平均数は、0.1~4である、治療的でない方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の治療的でない方法であって、前記セルロース酪酸エステルは、セルロース酪酸エステルの全重量に対し、少なくとも重量%の、アセチル基を含有することを特徴とする、治療的でない方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の治療的でない方法であって、前記セルロース酪酸エステルは、セルロース酪酸エステルの全重量に対し、8重量%以下の、アセチル基を含有することを特徴とする、治療的でない方法。
【請求項7】
請求項からのいずれか1項に記載の治療的でない方法であって、処理される動物の種類は家禽である、治療的でない方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜動物の飼料の分野に関し、とりわけ、家畜の病原性感染を防止若しくは治療するのに効果的であり、及び/又は、家畜の生産性の効率を増加させることに効果的である、飼料材料に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に家畜の生産の需要が増大していることにより、家畜生産の効率性を向上させることが可能な新規戦略が必要となってきている。このような戦略において、栄養分の利用の最適化は、重要な要素である。食物の安全性、環境影響の低下、よりよい動物愛護、堅実な抗菌剤の使用に対して、消費者及び行政機関が注目することにより、家畜の生産に対する付加的な需要が生じている。
【0003】
家畜の生産において注目される1つの特定の領域は、サルモネラ菌及びその他の細菌などの、病原菌の根絶である。サルモネラ菌は、主に鶏肉や汚染された卵の消費に起因する、人の食物媒介感染の、最も重要な原因である。農業部門は、ワクチンの接種、衛生的手段の強化、及び/又は、抗生物質、共生細菌、酸性化剤、又は短鎖若しくは中鎖の脂肪酸又はそれらの塩の投与などの、様々な手段によって、サルモネラ菌感染の数を減少させようと試みている。
【0004】
近年、グラム陰性細菌に対する揮発性短鎖脂肪酸の静菌効果が、注目を浴びている。揮発性短鎖脂肪酸の群は、腸管微生物叢に重大な影響を与えることなく病原性微生物を除去することが可能な、生分解性の弱有機酸からなる。揮発性短鎖脂肪酸は、溶血性の大腸菌の菌株の成長を、50%阻害することが明らかとなっている。動物の体内の病原菌を減少させることを実現可能とするための飼料添加物として用いるために、様々な短鎖脂肪酸の組成が開発されてきた。
【0005】
欧州特許第1354520号明細書には、脂質構造(ワックス)を有するマトリックスにn-酪酸が含まれるマイクロカプセルと、噴霧冷却によるマイクロカプセルの調製方法が、記載されている。欧州特許第1354520号明細書における酪酸のマイクロカプセル化は、酪酸の揮発性と悪臭とに関連する困難性を弱めるのに、とりわけ役に立つ。酪酸の揮発性と悪臭は、飼料添加物としての取扱いを困難なものにしている。また、欧州特許第1354520号明細書では、その形成は胃での分解に対して安定であることが示されている。
【0006】
F. Van Immerseelら(2005 Poultry Science 84: 1851-1856)は、家畜用の飼料添加物として使用したときの、酪酸と、脂肪マトリックスに埋め込まれた酪酸と、の効果を比較した。彼らは、脂肪マトリックスに埋め込まれた酪酸が投与されたグループにおいて、サルモネラ菌による盲腸のコロニー形成及びサルモネラ菌の糞便排出が、著しく低下したことを、報告している。
【0007】
国際公開第2007/124949号には、飼料添加物として、3-ヒドロキシ酪酸及びポリ-3-ヒドロキシ酪酸の化合物を使用することが、記載されている。
【0008】
ベルギー特許第1023491号明細書には、微結晶ワックスを含むワックスマトリックス中に酪酸を含む飼料添加物、及び溶融押出を用いた飼料添加物の生産方法が、記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、家畜の病原菌感染を防止し又は治療するのに改善された効果を有し、及び/又は、家畜の生産効率を向上することができる、動物用の飼料添加物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、これらの目的が、驚くべきことに、ある多糖と酪酸のエステルにより達成されることを発見した。
【0011】
本発明に係る多糖酪酸エステルを家畜動物に腸内投与すると、下部腸管における酪酸塩の濃度が増加することが分かった。本発明の発明者は、これは、生体内での試験により発見された、下部腸管及び糞便に病原菌が存在する場合における多糖酪酸エステルの有効性と、相互に関連していると推測している。また、驚くべきことに、多糖酪酸エステルを投与した場合には、他の酪酸の処方やプロダクトを投与した場合と比べて、優れた成長能力結果が見られることが、明らかとなった。本発明に係る多糖酪酸エステルは、飼料要求率(FCR)の低減と、仕上げ期間における死亡率を上昇させることなく補給期間における死亡率を低減させることと、それと組み合わされた1日当たりの平均体重増加(ADG)と、1日当たりの平均食糧摂取量(ADFI)と、の非常に望ましい組み合わせを提供する。
【0012】
酪酸は、腸絨毛の成長を刺激し、及び/又は、胃腸内の微生物の発育を改善すると推測される。また、少量の酪酸は、サルモネラ菌の増殖に関与する遺伝子の発現を下方制御することができると考えられている。本発明に係る多糖酪酸組成物の利用によってもたらされる有利な効果であって、発明者が予想する効果には、他に、小さな腸における腸内容物の保持効果の改善、メチオニンの消化・吸収の改善、及び/又は、下部胃腸管における微生物個体群のより一層の多様化が、含まれる。
【0013】
酪酸濃度が増加する要因には、プレバイオティクス効果(例えば、酪酸生産細菌によるプレバイオティクス効果が挙げられるが、これに限られない。)、多糖酪酸エステルの分解による酪酸の直接的な解放、あるいはその他の酪酸濃度の増加を招くメカニズムまたはそれらの組み合わせなどが、挙げられる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、発明者は、本発明に係る多糖酪酸エステルにおいて発見された効果は、上部胃腸管に比して下部胃腸管において多糖発酵を行うことが可能な微生物の存在が増加したことと、相互に関連すると考えている。
【0014】
このような訳で、本発明は、例えば家畜の病原菌感染を防止し若しくは治療するための、及び/又は、家畜の生産効率を向上させるための、新規の多糖酪酸エステル、多糖酪酸エステルを含む飼料添加物及び/又は飼料などの組成物、並びに、飼料添加物としての多糖酪酸エステルの使用を、提供する。
【0015】
これら及び本発明のその他の態様は、以降の詳細な説明及び添付の例に基づいて、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例1において酪酸濃度を測定したもの。-回腸接種
図2】例1において酪酸濃度を測定したもの。-結腸接種
図3】例1において酪酸濃度を測定したもの。-盲腸接種
図4】例2において酪酸濃度を測定したもの。-結腸
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の態様は、多糖酪酸エステルを含む飼料用の組成物に関する。
【0018】
酪酸は、1つのカルボキシル基を持つ脂肪族の短鎖の揮発性の酸であり、分子式としてCH―CH-CH-COOHを有する。ここで使用される「酪酸」及び「酪酸塩」という用語は、言い換え可能であり、プロトン化した形(酸、酪酸)と、脱プロトン化した形(共役塩基、酪酸塩)とを、それぞれ意味すると解釈されるべきである。当業者は、酪酸は弱い酸であるので、水媒体に溶解されたときには通常、プロトン化した形と、脱プロトン化した形と、の両方の形で存在し、各形の濃度は媒体のpHに依存して決まると理解するであろう。酸の形のものは、腸壁、及び微生物の細胞膜によって、吸収される。
【0019】
ここで用いられるように、「多糖酪酸エステル」という用語は、概略的には、中心部に多糖分子を備え、酪酸分子のカルボン酸部分と、多糖のヒドロキシル基と、の間にエステル結合が形成されることにより、多糖分子が複数の酪酸分子により誘導体化/置換された化合物を、指す。
【0020】
ここで用いられるように、「多糖」という用語は、単糖の繰り返し単位及び/又は誘導体化された単糖の繰り返し単位を含む主鎖を備えるポリマーを指し、単糖は、典型的には環状ペントースであり、特にCアルドース若しくはケトースであり、又は環状ヘキソースであり、特にCアルドース若しくはケトースである。限定的ではない例として、C-Cアルドースには、アロース、アルトローズ、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースが含まれる。限定的ではない例として、C-Cケトースには、リブロース、キシルロース、果糖、ソルボース、タガトースが含まれる。ここで用いられるように、「単糖誘導体」は、単糖を化学的に又は酵素学的に修飾したあらゆるものを指す。
【0021】
多糖は、ホモ多糖又はヘテロ多糖とすることができるが、好ましくはホモ多糖である。
【0022】
多糖は、修飾されていても、修飾されていなくてもよい。本発明の好適な実施形態においては、多糖が、澱粉、加工澱粉、アミロペクチン、加工アミロペクチン、アミロース、加工アミロース、キトサン、キチン、グアーガム、加工グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、コンニャクガム、コンニャク粉、コロハガム、メスキートガム、アロエマンナン、加工セルロース、酸化多糖、硫酸化多糖、カチオン多糖、アラビアゴム、カラヤゴム、キサンタン、カッパ、イオタ若しくはラムダカラギーナン、寒天、アルギン酸塩、カロース、らミナリン、クリソラミナリン、キシラン、マンナン、ガラクトマンナン、ヘミセルロース、ペクチン、アラビノキシラン、キサンタンゴム、ニゲラ、イソリケナン、ラミナラン、リケニン、グリコーゲン、プルラン、デキストラン、プスツラン、イヌリン、グラスレバンズ、カラギーナン、ガラクトカロロース、ロディメナン、フコイダン、アガロース、ポルフィラン、アルギン酸、ケラト硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、及びセルロースからなる群の中から選択され、好ましくは、ヘミセルロース、澱粉、及びセルロースからなる群の中から選択され、最も好ましくは、多糖がセルロースであるような、多糖酪酸エステルが提供される。
【0023】
本発明の好適な実施形態においては、多糖が水不溶性多糖からなる群の中から選択されるような、多糖酪酸エステルが提供される。
【0024】
本発明の目的のために、多糖酪酸エステルは、化学的に、酵素学的に、発酵学的に、自然の又は遺伝的に修飾された微生物による生合成により形成される。典型的には、本発明によれば、多糖酪酸エステルは、例えば酸化触媒によるエステル化のような、多糖のエステル化によって生産される。
【0025】
多糖の(無水)単糖ユニットが有する置換基の量は、重量%、又は、環に結合される置換基の平均的な数によって決められる。このような概念は、多糖の化学者の間で、「置換度(D.S.)」として知られている。C単糖の場合、各ユニットの3つの全てのあり得る位置が置換されているときD.S.は3と決められる一方、各環につき平均2つが置換されているときD.S.は2として決められる。多糖の置換基の数は、置換することが可能な位置のパーセンテージとして表現することができるものと類推される。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、多糖酪酸エステルは、1つの単糖ユニット辺りの酪酸基の平均的な数(D.S.)が0.1~4の範囲内である。例えば、この実施形態によれば、D.S.は、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.75、少なくとも1.0、少なくとも1.25、少なくとも1.5、少なくとも1.75、少なくとも2.0、少なくとも2.25、若しくは少なくとも2.5であり、そして/又は、3.75よりも少なく、3.5よりも少なく、3.25よりも少なく、若しくは3よりも少ない、としてもよい。例示としての実施形態では、上記D.S.は、0.5~3.5の範囲内、1.0~3.25の範囲内、1.5~3の範囲内、又は2.0~2.95の範囲内である。
【0027】
本発明の特に好適な実施形態においては、多糖酪酸エステルはセルロース酪酸エステルであり、単糖ユニット当たりの酪酸基の平均的な数(D.S.)が、0.1~4の範囲内、好ましくは1~3.5の範囲内、好ましくは1.75~3.25の範囲内、好ましくは2.25~3の範囲内、好ましくは2.5~2.95の範囲内である。
【0028】
他の実施形態においては、多糖酪酸エステルは、多糖酪酸エステルの重量に対して少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくともの50重量%、又は少なくとも55重量%の濃度の酪酸を有する。本発明の実施形態においては、多糖酪酸エステルはセルロール酪酸エステルであり、多糖酪酸エステルの重量に対して、5~80重量%の範囲内の、好ましくは25~70重量%の範囲内の、40~60重量%の範囲内の、又は50~56重量%の範囲内の濃度の酪酸を有することを特徴とする。
【0029】
他の実施形態においては、多糖酪酸エステルは、置換可能な多糖ヒドロキシル基のパーセンテージとして表現される酪酸の濃度が、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、又は少なくとも55%である。他の実施形態では、多糖酪酸エステルは、結果として置換の程度を表す、置換可能な多糖ヒドロキシル基のパーセンテージとして表現される酪酸の濃度が、100%又はそれ未満、例えば99%未満、98%未満、97%未満、95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、又は75%未満である。
【0030】
本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルはセルロース酪酸エステルであり、置換可能な多糖ヒドロキシル基のパーセンテージとして表現される酪酸の濃度が、5~80%の範囲内、好ましくは25~75%の範囲内、40~60%の範囲内、又は50~56%の範囲内である。
【0031】
他の好適な実施形態では、本発明に係る多糖酪酸エステルはさらに、アセチルエステル基を含む。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルには、ブチリル基とアセチル基とが、少なくとも1/1、好ましくは少なくとも1.5/1、少なくとも2/1、少なくとも2.5/1、少なくとも3/1、少なくとも3.5/1、少なくとも4/1、少なくとも5/1、少なくとも6/1、少なくとも7/1、少なくとも8/1、少なくとも9/1、又は少なくとも10/1のモル比率で含まれる。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルには、酪酸基とアセチル基とが、100/1未満、好ましくは75/1未満、50/1未満、40/1未満、30/1未満、25/1未満、20/1未満、又は15/1未満のモル比率で含まれる。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルにはアセチル基が含まれ、多糖酪酸エステルの重量に対するアセチル基の濃度が、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%であることを特徴とする。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルにはアセチル基が含まれ、多糖酪酸エステルの重量に対するアセチル基の濃度が、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、好ましくは5重量%以下であることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、多糖酪酸エステルはセルロース酪酸エステルであり、セルロース酪酸エステルの重量に対するアセチル基の濃度が、0.1~60重量%の範囲内、好ましくは0.5~45重量%の範囲内、好ましくは1~30重量%の範囲内、好ましくは2~15重量%の範囲内、好ましくは3~10重量%の範囲内、好ましくは4~6重量%の範囲内であることを特徴とする。
【0033】
本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルは、平均モル質量(M)が2,000~1,000,000g/molの範囲内、好ましくは5,000~500,000g/molの範囲内、7,000~250,000g/molの範囲内、10,000~100,000g/molの範囲内、12,000~50,000g/molの範囲内、13,000~25,000g/molの範囲内、又は15,000~17,000g/molの範囲内である。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルは、平均モル質量(M)が、少なくとも2,000g/mol、好ましくは少なくとも4,000g/mol、好ましくは少なくとも8,000g/mol、好ましくは少なくとも12,000g/molであることを特徴とする。さらに、本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルは、平均モル質量(M)が、1,000,000g/mol未満、好ましくは500,000g/mol未満、好ましくは250,000g/mol未満、好ましくは100,000g/mol未満、好ましくは70,000g/mol未満、好ましくは25,000g/mol未満、好ましくは17,000g/mol未満であることを特徴とする。平均モル質量(M)の数は、当該技術分野の当業者に知られた適切な方法により決められ、例えば、浸透作用、静的光散乱、沈降平衡、ゲル浸透クロマトグラフィー、粘度測定法、沈降速度、動的光散乱、末端基分析などにより決められる。平均モル質量(M)の数を決定するのに好適な方法は、ゲル浸透クロマトグラフィーである。
【0034】
本発明によれば、多糖酪酸エステルを含む組成物は、飼料用の組成物である。ここで用いられるように、「飼料用」という用語は、動物、とりわけ家畜による消費に適していることを意味する。1つの実施形態においては、それは、その組成物が、動物の食料としての意図した使用において安全で、機能的であり、ふさわしいことが分かったことを意味する。例えば、関連する管轄において、動物の食料としてのその組成物の使用を管理する適切な規制に従い、及び/又は、適切に取り扱われ、表示される。
【0035】
本発明の実施形態において、飼料用の組成物には、飼料添加物、飼料等級を形成するための補助剤若しくは添加剤、又は栄養成分からなる群から選択される更なる1つの含有物が含まれる。
【0036】
このような付加的な含有物の選択及び(相対的な)量は、飼料用の組成物の正確な形及び目的に委ねられると理解されるべきであろう。飼料用の組成物が、飼料添加物や飼料原料であるような、実施形態が予測される。また、飼料用の組成物が、予備混合された飼料、又は使用するための準備がされた飼料若しくは飼い葉であるような、実施形態も予測される。他の意図が示唆されない限り、「飼料添加物」及び「飼料材料」という用語は、交換可能に用いられ、それらは全般的に、多糖酪酸エステルを高濃度で含有する組成を意味する。これらの組成は、多糖酪酸エステルを十分な量/投与量だけ供給するように、飼料又は飼い葉に混合されることが意図され又はデザインされる。ここでのこれらの用語は、動物飼料の規制についての文脈で用いられるような、法的な定義付けを意味するものではないと理解されるべきである。これらの法的な定義付けは、法域によって異なり、及び/又は、時間の経過とともに変化する。上述したことに関わらず、本発明に係る飼料用の組成物は、厳格に法的な(すなわち、規制された)意味で、飼料添加物又は飼料材料として認可されるような形で提供されてもよい。
【0037】
本発明の実施形態では、飼料用の組成物は、多糖酪酸エステルと、それと関連付けられた少なくとも1つの他の飼料用の材料と、を含む飼料材料である。本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルと、1つ又はそれ以上の他の飼料用の材料とを、0.1~80重量%、好ましくは0.1~60重量%、1~50重量%、2~40重量%、3~30重量%、4~20重量%、5~15重量%含んだ、飼料材料が提供される。
【0038】
本発明の実施形態では、少なくとも1つの他の飼料用の材料が、技術的な添加物、知覚的な添加物、栄養学的な添加物、畜産学的な添加物、抗コクシジウム剤、及び抗ヒスロモナス剤からなる群から選択されて、ここに定義される飼料材料が提供される。
【0039】
本発明の多糖酪酸エステルと組み合わせるのに好適な、技術的な添加物の例には、防腐剤、抗酸化物質、乳化剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、結合剤、放射性核種による汚染を制御するための物質、凝固阻止物質、pH調製剤、サイレージ添加剤、及び変性剤が、含まれる。
【0040】
本発明の多糖酪酸エステルと組み合わせるのに好適な、知覚的な添加物の例には、着色剤、香味化合物が含まれる。着色剤は、広く解釈されるべきであり、飼料に色を添加したり回復させたりする物質、動物に供給したときに動物由来の食料に色を添加する物質、及び/又は装飾的な魚や鳥の色に好適に影響する物質、などが含まれてもよい。
【0041】
本発明の多糖酪酸エステルと組み合わせるのに好適な栄養学的な添加物の例には、ビタミン、ビタミン前駆体、同様の効果を有する化学的に明確な物質、微量元素の化合物、アミノ酸、それらの塩及び類似物、尿素及びそれの誘導体が、含まれる。
【0042】
本発明の多糖酪酸エステルと組み合わせるのに好適な畜産学的な添加物には、消化性促進剤、腸管内菌叢安定剤、及び環境に好適に影響する物質が、含まれる。本発明の好適な実施形態においては、飼料材料に含まれる少なくとも他の1つの飼料等級の材料は、結合剤、凝固阻止剤、安定剤、キャリア、及び/又は、防腐剤が、含まれる。本発明の好適な実施形態では、少なくとも1つの他の飼料用の材料は、酵母製品、粘土、脂肪酸の塩、シリカ、セピオライト、ベントナイト、クリノプチロリト、グアーガム、キサンタンガム、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム、酢酸、酢酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸、植物油からのトコフェロールの豊富な抽出物、及び小麦ふすまからなる群から選択される。ここで用いられる酵母製品は広く解釈されるべきであり、酵母及びその誘導体生産物を指し示すものとしてもよい。すなわち、酵母製品は、例えば、サッカロマイセス・セロヴィシエ、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス、クルイベロマイセス・ラクティス、クルイベロマイセス・フラジリス、トルラスポラ・デルブルッキ等から得られる不活性化された乾燥酵母、酵母の細胞壁、自己消化物、又はヌクレオチドとすることができる。本発明の実施形態では、組成の全重量に対する多糖酪酸エステルの量が50重量%以下、好ましくは40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下の、ここで以前に定義された飼料材料が提供される。
【0043】
本発明の実施形態では、上記で定義された飼料用の材料のような、1つ又はそれ以上の他の飼料用の材料を含む飼料材料が提供される。ここで、組成の全重量に対する飼料等級材料の(結合された)量は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%である。
【0044】
本発明の実施形態では、飼料用の組成物は、家畜の飼料であり、飼い葉とも呼ばれ、ここで示されるような多糖酪酸エステルを含むとともに、1つ又はそれ以上の動物飼料含有物を含む。当業者によって理解されるように、ここで用いられる「飼料含有物」という用語は、動物の通常の成長及び発育に必要な一般的な栄養分を提供する飼料成分を指す。典型的には、飼料含有物は、タンパク源、エネルギー源、脂質源、及びミネラル源に広く分類される。
【0045】
このように、本発明の実施形態では、ここで定義される家畜飼料は、1つ又はそれ以上の飼料含有物が、タンパク源、エネルギー源、脂質源、及びミネラル源からなる群から選択されて、提供される。タンパク源の好適な例には、大豆かす、菜種かす、パーム核粕、ヒマワリかす、エンドウ、豆、ルピナス、魚粉、家禽肉、及び血漿が、含まれる。エネルギー源の好適な例には、トウモロコシ、小麦、大麦、及び米が、含まれる。脂質源の好適な例には、魚油、獣脂、トウモロコシ油、大豆油、ぬか油、ヤシ油、及びキャノーラ油が、含まれる。ミネラル源の好適な例には、カルシウム、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、銅、セレン、亜鉛、鉄、マンガン、ヨウ素、及びコバルトが、含まれる。
【0046】
本発明の実施形態では、ここで定義される家畜飼料は、組成物の全重量に対し、少なくとも0.0001重量%、好ましくは少なくとも0.001重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.025重量%、少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%の多糖酪酸エステルが含まれるように、提供される。本発明の実施形態では、ここで定義される家畜飼料は、組成物の全重量に対し、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下の多糖酪酸エステルが含まれるように、提供される。
【0047】
本発明の実施形態においては、飼料用の組成物には、組成物の重量に対し5%未満、好ましくは重量において2%未満、好ましくは重量において1%未満、好ましくは重量において0.5%未満、好ましくは重量において0.1%未満、好ましくは重量において0.05%未満、好ましくは重量において0.01%未満の含有量の遊離酸が含まれる。遊離酸の含有量は、当該技術分野の当業者により知られた好適な方法により決められる。
【0048】
本発明の実施形態では、飼料用の組成物には、組成の重量に対し5%未満、好ましくは重量において2%未満、好ましくは重量において1%未満、好ましくは重量において0.5%未満、好ましくは重量において0.1%未満、好ましくは重量において0.05%未満、好ましくは重量において0.01%未満の含有量の水が含まれる。水の含有量は、カール・フィッシャー滴定法のような、当該技術分野の当業者により知られた好適な方法により決められる。
【0049】
ここに記載される多糖酪酸エステルを含む飼料用の組成物は、粉末、又は、圧縮された、粒状にされた、若しくはペレット化された態様で提供されてもよい。好適な実施形態においては、多糖酪酸エステルは、飼料用の組成物において均質的に分布される。
【0050】
好適な実施形態においては、飼料用の組成物は、圧縮された、粒状にされた、又はペレット化された態様で提供され、多糖酪酸エステルは、飼料用の組成物を形成する一次粒子の間に分散される。
【0051】
特に好適な実施形態では、飼料用の組成物は、圧縮された、粒状にされた、又はペレット化された態様で提供され、当該飼料用の組成物を形成する一次粒子が区別可能な層や相を生じないようになっている。特に好適な実施形態では、飼料用の組成物は、圧縮された、粒状にされた、又はペレット化された態様で提供され、当該飼料用の組成物を形成する多糖酪酸エステルを含む一次粒子が、コーティングの全重量のうち70%よりも多く、50%よりも多く、20重量%よりも多くの酪酸エステルを含んでなるようなコーティングを生じないようになっている。
【0052】
本発明の第2の態様は、ここで定義されるような多糖酪酸エステルを投与することにより、動物を治療する方法に関する。典型的には、上述の事情に基づき理解されるように、そのような方法は、特に動物の腸の健康、状態、及び/性能を向上させる目的のために、動物の生理学的な状態に影響を与える用途で、多糖酪酸エステルを動物に、腸を介して、特に口腔を介して、投与することを伴っている。このように、本発明に係る方法は、予防的な又は治療的な効果を有する。本発明に係る方法は、純粋な経済学的な目的を有していてもよい。
【0053】
本発明によれば、動物は好ましくは家畜動物であり、それには鳥類、水生種、及び哺乳類が含まれる。鳥類の例には、例えば七面鳥、カモ、及び鶏などの家禽が含まれる。水生種の例には、例えばサケ、マス、テラピア、ナマズ、及びコイのような魚類、並びに、エビ及び小エビを含む甲殻類が、含まれる。哺乳類の例には、例えば羊、山羊、及び牛のような反すう動物、並びに、例えば牛及び豚のような反すうしない動物が、含まれる。本発明の好適な実施形態では、動物は、単胃動物であって、後腸発酵する動物からなる群の中から選択される。他の好適な実施形態では、動物は、鶏、豚、馬、子牛、山羊、羊、ウサギ、犬、猫、及び魚からなる群の中から選択される。より好適な実施形態では、動物は、鶏、豚、馬、子牛、山羊、羊、及びウサギからなる群の中から選択され、より好ましくは、鶏、豚、馬、及び子牛からなる群の中から選択され、より好ましくは、鶏及び豚からなる群の中から選択され、最も好ましくは鶏である。
【0054】
本発明の実施形態では、治療される動物は、離乳期にある動物であってもよく、幼動物期にある動物であってもよく、発育期にある動物であってもよく、仕上げ期にある動物であってもよい。好適な実施形態では、動物は、幼動物期にある動物である。
【0055】
本発明の実施形態では、治療の方法には、動物に飼料又は飼い葉を与えることが含まれる。典型的には、飼料又は飼い葉はここのどこかに定義されたものであり、多糖酪酸エステルを含んでいるものである。最適な治療のための投与計画は、治療される動物の種類、及び/又は、狙われる効果によって決まる。また、現在までの教示に従い、適切な治療のための投与計画を決めることは、当該技術分野の当業者の通常の能力の範囲内でできることであろう。本発明の実施形態では、治療には、胃を介しての(例えば、口を介しての)多糖酪酸エステルの投与が含まれ、その投与量は、24時間の間に動物により消費される動物飼料の全重量に対して少なくとも0.0001重量%、好ましくは少なくとも0.001重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.025重量%、少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%である。本発明の実施形態では、ここに定義される治療には、腸を介しての(例えば、口を介しての)多糖酪酸エステルの投与が含まれ、その投与量は、24時間の間に動物により消費される動物飼料の全重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下である。
【0056】
本発明の実施形態では、多糖酪酸エステルはこのような投与量で少なくとも週に一度投与され、好ましくは少なくとも3日に一度投与され、より好ましくは少なくとも2日一度投与され、最も好ましくは1日に一度投与される。
【0057】
本発明に係る方法は、上述の事情に基づいて明らかなように、様々な理由により実行することができ、とりわけ動物の健康を向上させ及び/若しくは維持するために実行され、並びに/又は、動物の性能を向上させるために実行される。
【0058】
これ故に、本発明の実施形態では、ここで定義されるような方法が提供され、当該方法は非治療的である。これ故に、ここで定義されるような方法が提供され、当該方法においては、治療される動物は、健康状態が良好な又は普通の動物である。本発明の好適な実施形態では、当該方法は、飼料要求率を減少させ、生体の重量を増大させ、及び/又は、1日当たりの増体量を増大させることを狙いとする。
【0059】
本発明の実施形態では、当該方法は、例えば食肉処理までの間や35日間のような、好ましくは35日間のような、与えられた時間の間での生体の重量の増大を狙いとし、好ましくは1%を上回る増大を狙いとし、好ましくは2%を上回ることを狙いとし、好ましくは4%を上回ることを狙いとし、好ましくは6%を上回ることを狙いとする。好適な実施形態においては、当該方法は、与えられた時間の間に生体の重量を1~12%増大させることを狙いとし、好ましくは2~6%増大させることを狙いとする。与えられた時間の間における生体の重量の増加は、当業者により、例えば、コントロールグループを用いての生体の実験により、日常の実験で決定される。
【0060】
本発明の実施形態では、例えば補給期間や寿命、好ましくは補給期間のような、与えられた期間にわたって計算される飼料要求率を、1%よりも多く減少させること、好ましくは2%よりも多く減少させること、好ましくは4%よりも多く減少させること、好ましくは6%よりも多く減少させることを、狙いとする。好適な実施形態では、与えられた期間にわたって計算される飼料要求率を1~12%減少させることを狙いとし、好ましくは2~6%減少させることを狙いとする。与えられた期間にわたって計算される飼料要求率の減少は、当業者により、例えば、コントロールグループを用いての生体の実験により、日常の実験で決定される。
【0061】
本発明の実施形態では、当該方法は、例えば補給期間や寿命、好ましくは補給期間のような、与えられた期間にわたって計算される1日あたりの平均増体量を、1%より大きく、好ましくは2%より大きく、好ましくは4%より大きく、好ましくは6%より大きく、増大させることを狙いとする。好適な実施形態においては、当該方法は、与えられた時間の間に1日あたりの平均増体量を1~12%増やすことを狙いとし、好ましくは2~6%増やすことを狙いとする。与えられた時間の間における1日あたりの増体量は、当業者により、例えば、コントロールグループを用いての生体の実験により、日常の実験で決定される。
【0062】
本発明の実施形態では、方法はここで定義されるように提供され、当該方法は、動物の健康の向上又は維持を狙いとして実行される。
【0063】
それ故に、本発明の実施形態では、ここに定義されるように方法が提供され、当該方法では、治療される動物は、病気又は病変を患っている又は患う虞がある動物である。さらに、本発明の実施形態では、ここで定義されるように、動物の病気又は病変を治すための及び/又は予防するための方法が、提供される。
【0064】
とりわけ、本発明の実施形態では、ここで定義されるように方法が提供され、当該方法では、治療される動物は、病原菌感染、好ましくは腸内の病原菌感染、より好ましくは盲腸内及び/又は結腸内の病原菌感染を患っている又は患う虞のある動物である。本発明の実施形態では、ここで定義されるように、病原菌感染、好ましくは、腸内の病原菌感染、より好ましくは盲腸内及び/又は結腸内の病原菌感染を、治療し及び/又は防止するための方法が、提供される。本発明によれば、病原菌は、バクテリア、エイメリア、ウィルス、及び真菌の中から選択され、より好ましくは、上記の病原菌は、バクテリアの中から選択され、最も好ましくは、クロストリジウム・アセトブチリクム、大腸菌、ストレプトコッカス・クレモリス、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトコッカス・クレモリス、ウエルシュ菌、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、ローソニア・イントラセルラリス、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア、エンテロコッカス・カエコラム、豚レンサ球菌、サルモネラ・エンテリティディス及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、ウエルシュ菌、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、ローソニア・イントラセルラリス、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア、エンテロコッカス・カエコラム、豚レンサ球菌、サルモネラ・エンテリティディス及びそれらの組み合わせから選択される。
【0065】
1つの実施形態においては、ここで定義されるように方法が提供され、当該方法においては、治療される動物は、腸内フローラの撹乱、特に盲腸内及び/又は結腸内のミクロフローラの撹乱を患っている又は患う虞のある動物である。本発明の実施形態では、ここに定義されるように、動物の腸内ミクロフローラを向上させるための、及び/又は、動物において健康な腸内フローラを維持するための、特に盲腸内及び/若しくは結腸内のミクロフローラを向上させるための並びに/又は健康な盲腸内及び/若しくは結腸内のミクロフローラを維持するための、方法が提供される。本発明の実施形態では、ここで定義されるように、胃腸管内の、好ましくは下部胃腸管内の、好ましくは盲腸内又は結腸内の、乳酸菌属又はビフィドバクテリウム属の微生物数を増加させる結果を招く、及び/又は、増加させることを狙った方法が提供される。本発明の実施形態では、ここに定義される方法が提供され、当該方法においては、胃腸管内の、好ましくは下部胃腸管内の、好ましくは盲腸内又は結腸内の、腸内細菌科の細菌の微生物数と比して、乳酸菌属又はビフィドバクテリウム属の微生物数の比率を増加させる結果が招かれ、及び/又は、増加させることが狙いとされる。本発明の実施形態では、ここに定義される方法が提供され、当該方法においては、胃腸管内の、好ましくは下部胃腸管内の、好ましくは盲腸内又は結腸内の、サルモネラ属の細菌の微生物数と比して、乳酸菌属又はビフィドバクテリウム属の微生物数の比率を増加させる結果が招かれ、及び/又は、増加させることが狙いとされる。本発明の実施形態では、ここに定義される方法が提供され、当該方法においては、胃腸管内のミクロフローラを向上させる結果が招かれ、及び/又は、向上させることが狙いとされ、それには胃腸管内の、好ましくは下部胃腸管内の、好ましくは盲腸内又は結腸内の、サルモネラ属の細菌の微生物数と比して、乳酸菌属又はビフィドバクテリウム属の微生物数の比率を増加させることが含まれる。ここで、比率は、各属において代表的なバクテリアの1つの種の微生物数を決定し、代表的なバクテリアの微生物数を用いて比率を計算することにより、求められる。このような実施形態においては、微生物数若しくは微生物数の比率を減少させ又は増加させることは、広く解釈されるべきであり、例えば以下の1つ又はそれ以上を意味すると理解することができる。
【0066】
・治療が開始されてから1~10日、好ましくは1~5日、好ましくは3日後に、当該技術分野の当業者にとって適した方法を用いて決定されるとともに、治療が行われてない動物のグループの場合と比較することにより決定される、コロニー形成ユニット(CFU)の数の増減。
【0067】
・同一の動物に対し、治療前と、治療開始後1~10日、好ましくは1~5日、好ましくは1~3日後に当該技術分野の当業者にとって適した方法を用いて決定されるコロニー形成ユニット(CFU)の数の増減。
【0068】
・本発明における多糖酪酸エステルとともに飼料補給をしたときの効果を決定することができる、当該技術分野の当業者に知られたその他の方法。
【0069】
本発明の更なる態様は、ここで定義されたような多糖酪酸エステルの使用、及び/又は、ここで定義されたような上記多糖酪酸エステルを含有する飼料用の組成物に関し、ここで上に定義されたような治療の方法のための使用及び組成物である。
【0070】
本発明の更なる態様は、ここで定義されたような多糖酪酸エステルの使用、及び/又は、ここで定義されたような上記多糖酪酸エステルを含有する飼料用の組成物に関し、ここで上に定義されたような治療の方法のための使用を目的とする組成物の製造に関する。
【0071】
本発明の更なる態様は、ここで定義されたような多糖酪酸エステル、及び/又は、ここで定義されたような上記多糖酪酸エステルを含有する飼料用の組成物に関し、ここで上に定義されたような治療の方法のために使用されるものである。
【0072】
本発明の更なる態様は、ここで定義されたような多糖酪酸エステルの、動物飼料の成分としての又は含有物としての使用に関する。
【0073】
本発明の更なる態様は、ここに記載されるような動物飼料の組成物を調製する方法に関し、当該方法には、
・第1の動物飼料成分を提供することと、
・多糖酪酸エステルを提供することと、そして
・前記第1の動物飼料成分と前記多糖酪酸エステルとを混合して、均質な混合物を得ることと、
が含まれる。
【0074】
1つの実施形態においては、上記方法には、
・第1の動物飼料成分を提供することと、
・多糖酪酸エステルを提供することと、
・前記第1動物飼料成分と前記多糖酪酸エステルとを混合して、均質な混合物を得ることと、そして
・均質な混合物をペレット化することと、
が含まれる。
【0075】
このように、上で論じた複数の実施形態を参照することにより、本発明について記載した。これらの実施形態には、様々な改善が加えられる余地があり、また、当該技術分野の通常の知識を有する者にとってよく知られた代替的な形をとる余地があると、理解されるであろう。本発明の精神及び範囲から逸脱しない範囲で、ここに記載された構造及び技術に対し、上で示したのに付加して様々な変更を加えることが可能である。したがって、具体的な実施形態は示したが、これらは例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、この書類及びそのクレームを適切に理解するために、「備える」という動詞及びその活用は、制限的でない意味で用いられると理解されるべきである。すなわち、この言葉に続く項目が含まれることを意味するが、具体的に言及していない他の項目が含まれないことを意味する訳ではない。さらに、不定冠詞の“a”や“an”を用いて要素を参照した場合には、文脈においてその要素がただ1つのみであることが明確に要求されている場合以外は、2つ以上の要素が存在する可能性を排除するものではない。このように、不定冠詞の“a”や“an”は、通常、「少なくとも1つ」であることを意味する。以降に続く例は、単に理解を助ける目的で提供されたものであり、決して、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0076】
[実施例]
[実施例1]試験管内での発酵の評価
本発明に係る多糖酪酸エステルが、動物の胃腸管(GIT)内における酪酸濃度を増加させるために、どの程度の影響力を持っているかを評価するために、試験管内での発酵の評価が実行された。この評価においては、ブロイラー鶏のGITバクテリアが、本発明に係るプロダクトと共に植え付けられた。ポジティブコントロールとネガティブコントロールとが用意された。
【0077】
培養液
1リットルの培養液は、0.6gのKCL、0.6gのNaCl、0.2gのCaCl・2HO、0.5gのMgSO・7HO、1.5gのパイプスバッファー、0.54gのNHCl、1.0gのトリプチケース、1mlのレサズリン溶液(200mlの蒸留水につき0.2gのレサズリン)、10mlの「トレースミネラル溶液」、12mlのビタミン/リン酸溶液、10mlのヘミン溶液(1Lの蒸留水につき0.1gのヘミン)、4mg/mlのNaHCO、及び1mg/mlのシステインHCLを含むものである。
【0078】
・トレースミネラル溶液
1Lの0.02M HCl溶解液中に、0.025gのCuCl・2HO、0.020gのFeSO・7HO、0.025gのZnCl、0.025gのCuCl・HO、0.050gのCoCl・6HO、0.050gのSeO、0.250gのNiCl・6HO、0.250gのNaMoO・2HO、0.0314gのNaVO、0.0250gのHBOを含有するもの。
【0079】
・ビタミン/リン酸溶液
54.7gのKHPOを含む蒸留水1Lにつき、0.0204gのビオチン、0.0205gの葉酸、0.1640gのカルシウムD-パントテン酸、0.1640gのニコチンアミド、0.1640gのリボフラビン、0.1640gのチアミンHCl、0.1640gのピリドキシンHCl、0.0204gのパラ-アミノ安息香酸、0.0205gシアノコバラミン(ビタミンB12)を含有するもの。
【0080】
種菌
誕生から4週間のブロイラーROSS408のGITの、回腸、結腸、及び盲腸の腸サンプルが収集された。各セグメントにつき、同様の方法で、種菌が用意された。解剖のすぐ後、サンプルは、37度の温度条件のもと、嫌気状態に置かれた(嫌気チャンバー、ラスキン・テクノロジー、ブリジェンド、英国)。各セグメントについて内容物が秤量され、予め温められた(37度)嫌気性の滅菌されたリン酸緩衝食塩水と1:9の割合となるように希薄された。均質化の後、試験プロダクトが添加され、希釈された材料が上述の培養液に対し1:10の割合となるように接種された。
【0081】
試験材料
下の表に示すように、3つの異なる材料において、GITにおける酪酸濃度を増加させる機能に関する試験を行った。全ての試験は、最終濃度が0.5%w/vとなるような条件で行われた。
【0082】
本発明に係る多糖酪酸エステルの代表例は、酢酸酪酸セルロースである。酪酸生産バクテリアに対して単純な効果を奏することが知られていることから、キシロオリゴ糖が正のコントロールとして含まれた。セルロースの主鎖が酪酸濃度に及ぼす効果を評価するために、セルロースからなる負のコントロールについても、試験を行った。
【0083】
【表1】
【0084】
酪酸濃度の測定
HPLC-UVによる酪酸濃度の分析のために接種した後、0時間、4時間、6時間、及び24時間後の時点で、流動性のサンプルが収集された。De Baere ら(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 80 (2013) 107-115)によって示されるように、抽出プロトコル及び装置が用いられた。
【0085】
結果
図1は、回腸接種において測定された酪酸濃度を示している。
【0086】
図2は、結腸接種において測定された酪酸濃度を示している。
【0087】
図3は、盲腸接種において測定された酪酸濃度を示している。
【0088】
その結果、CABによれば、負のコントロールにおいて測定された酪酸濃度に対して、酪酸濃度を著しく増加させることが可能であることが、明らかとなった。
【0089】
[実施例2:家禽の結腸における酪酸濃度の、生体内での決定]
本発明に係る多糖酪酸エステルの、動物の下部胃腸管で酪酸濃度を増加させる能力を評価するために、生体内での実験が実行された。本発明に係るプロダクトが、家禽の飼料に添加され、結腸における酪酸濃度が決定され、他の遅延放出製剤やプロダクトにより得られた結果と比較された。
【0090】
Ross308ボイラー鶏が、この飼養試験に用いられた。生後1日のひよこが、商業的な孵化場により得られ、隔離して保存された。全ての処理グループのひよこは、同じ部屋で、寝わらが敷かれた個別の鳥かごに収容された。60羽のひよこが、それぞれが7~8羽のひよこからなる、8つのグループ(ブランクのグループを含む。)に分割された。
【0091】
試験飼料の組成
下の表に示される試験プロダクトを、商用のマッシュ状のブロイラー飼料(Versele-Laga, ベルギー)に、飼料1kg当たり3gの酪酸ナトリウムが含まれるように混合することにより、7つの異なる試験飼料の組成が用意された。選択的に飼料が取り入れられるのを回避するために、試験飼料は、続いてペレット化(水蒸気なし)された。全ての試験プロダクトに関して、ペレット化の技術、ペレットの大きさ、及び商用のブロイラー飼料は、同じであった。
【0092】
【表2】
【0093】
実験準備
生後19日、20日、21日目の、平均した1日当たりの飼料の摂取量が、畜舎により測定された。生後22日の雄及び雌のひよこに対して、ランダムに、上述の試験飼料の組成が適用されて、生後22~27日の間、制限的な飼料の供給(以前に測定した摂取量の平均の、95%)を受けた。生後28日目に、ひよこを犠牲にし、結腸が収集された。
【0094】
酪酸濃度の測定
各ひよこの結腸の腸内容物のうちの1グラムが秤量され、1mlの蒸留水により希釈された。希釈した後、サンプルは均質化され、13,000rpmで20分間遠心処理された。そして、HPLC-UVによる分析のために抽出されるまでの間、-20℃で保存された。抽出のプロトコル及び装置には、De Baereら(Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 80 (2013) 107-115)に示されるようなものが用いられた。試験4では、ポリヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酪酸の濃度が測定され、図4に示された。
【0095】
結果
腸内容物における酪酸濃度をmM/g単位で、処理グループごとにプロットしたものが、図4に結果として示されている。腸内容物の量が十分でない場合、又は抽出に失敗した場合には、この測定にはデータが含まれない。
【0096】
この結果によれば、CABが、コントール又はその他の遅延放出形成若しくはプロダクトにおいて測定される酪酸濃度をはるかに上回るような、結腸における高い酪酸濃度を可能とすることが明らかとなった。
【0097】
[例3:盲腸における感染後のサルモネラ菌の存在の、生体内での決定]
本発明に係る多糖酪酸エステルが、サルモネラ・エンテリティディスに感染した動物の腸におけるサルモネラ菌のコロニー形成を減少させる能力を評価するために、生体内での実験が実行された。本発明に係るプロダクトが家禽の飼料に添加され、盲腸におけるサルモネラ・エンテリティディスの存在が調べられ、他の遅延放出酪酸製剤又はプロダクトにより得られた結果と、比較された。
【0098】
動物
この試験においては、Ross308ボイラー鶏が用いられた。生後1日のひよこが、商業的な孵化場により得られた。全ての処理グループは、同一の条件下で、床に寝わらを敷いた状態の個別の鳥かごに収容された。160羽のひよこが、各20羽からなる、8つのグループ(コントロールのグループを含む。)に分割された。4つの試験飼料の組成は、2倍で試験された。全てのひよこは、任意の時に水や飼料にアクセスできるようにしていた。
【0099】
試験飼料の組成
飼料1kg当たりの酪酸ナトリウムの濃度が3gとなるように、下の表に示される試験プロダクトを商用のマッシュ状のブロイラー飼料(Versele-Laga,ベルギー)に混合することで、4つの異なる試験飼料の組成物が用意された。選択的に飼料が取り入れられるのを回避するために、試験飼料は、続いてペレット化(水蒸気なし)された。全ての試験プロダクトに関して、ペレット化の技術、ペレットの大きさ、及び商用のブロイラー飼料は、同じであった。
【0100】
【表3】
【0101】
サルモネラ株
この実験には、家禽農場から単離された特徴がはっきりとしたストレプトマイシン耐性の菌種(Methnerら、1995年)である、サルモネラ・エンテリティディスの菌株SE147が、用いられた。この菌株は、Luria-Bertoni培地(LB, Sigma, St. Louis MO)で6時間成長され、100μg/mLのストレプトマイシン(Sigma, St. Louis, MO)を含むキリロース・リジン・デオキシコール酸寒天培地(XLD, Oxoid, Basingstoke,英国)に10倍希釈したバクテリア懸濁液をプレーティングすることにより、ミリグラム当たりのコロニー形成単位が決定された。バクテリア懸濁液は、プレートカウントを行う間、4℃で保存され、所望の感染量を得るためにPBSで希釈された。
【0102】
実験準備
孵化後17日のときに、全てのひよこには経口的に、1羽当たり10^5のコロニー形成単位のサルモネラ・エンテリティディスが接種された。感染後4日目に、全てのひよこを安楽死させ、細菌学的分析のために、盲腸のサンプルが採取された。実験は、ゲント大学獣医学部の倫理委員会により承認された。
【0103】
細菌学的分析
盲腸のサンプルは、緩衝ペプトン水(BPW, Oxoid, Basingstoke,英国)のボリュームで均質化され、PBSにより10倍希釈したものが作製された。各希釈液につき、6×20μLが接種され、100μg/mLのストレプトマイシンを含むXLDプレートに播かれた。ダイレクト・プレーティングの後、陰性であったサンプルは、緩衝ペプトン水(BPW, Oxoid, Basingstoke,英国)中において37℃で一晩、プレ高濃度化された。その後、全てのサンプルは、1mLのこの懸濁液を9mLのブリリアント・グリーン・テトラチオネート液体培地(Oxoid, Basingstoke,英国)に添加することで、高濃度化された。滴定の後サルモネラ菌が陰性だったのが、高濃度化の後には陽性になったようなサンプルは、1×10^1cfu/gの組織を含んでいたものと考えられる。高濃度化後も依然として陰性であったものは、0cfu/gの組織を有していたものと考えられる。
【0104】
結果
下の表に示されるように、CABのような多糖酪酸エステルを含む飼料の管理をすることで、盲腸でのサルモネラ菌のコロニー形成に関し、他の遅延放出製剤又はプロダクトと比して、著しく向上した結果が得られた。
【0105】
【表4】
【0106】
[例4:排泄標本における感染後のサルモネラ菌の存在の生体内での決定]
サルモネラ・エンテリティディスに感染した動物からのサルモネラ菌の糞便排出を減少させるのに、本発明に係る多糖酪酸エステルがどの程度寄与するかを評価するために、生体内での実験が実行された。本発明に係るプロダクトが家禽の飼料に添加され、排泄標本におけるサルモネラ・エンテリティディスの存在が決定され、他の遅延放出酪酸製剤又はプロダクトで得られた結果と比較された。
【0107】
動物
この試験においては、Ross308ボイラー鶏が用いられた。生後1日のひよこが、商業的な孵化場により得られた。全ての処理グループのひよこは、同一の条件で、寝わらが敷かれた個別の鳥かごに収容された。80羽のひよこは、それぞれが20羽からなる(コントロールグループ含む)、4つのグループに分割された。以下にリスト化した4つの試験飼料の組成について試験がされた。全てのひよこは、任意の時に水や飼料にアクセスできるようにしていた。
【0108】
試験飼料の組成
飼料1kg当たりに酪酸ナトリウムが3gの濃度だけ含まれるように、以下の表に示した試験プロダクトを、商用のブロイラー飼料(Versele-Laga,ベルギー)と混合することにより、1つの異なる試験飼料の組成が用意された。
【0109】
【表5】
【0110】
サルモネラ菌
この実験には、家禽農場から単離された特徴がはっきりとしたストレプトマイシン耐性の菌種(Methnerら、1995年)である、サルモネラ・エンテリティディスの菌株SE147が、用いられた。この菌株は、Luria-Bertoni培地(LB, Sigma, St. Louis MO)で6時間成長され、100μg/mLのストレプトマイシン(Sigma, St. Louis, MO)を含むキリロース・リジン・デオキシコール酸寒天培地(XLD, Oxoid, Basingstoke,英国)に10倍希釈したバクテリア懸濁液をプレーティングすることにより、ミリグラム当たりのコロニー形成単位が決定された。バクテリア懸濁液は、プレートカウントを行う間、4℃で保存され、所望の感染量を得るためにPBSで希釈された。
【0111】
実験準備
孵化後17日のときに、全てのひよこには経口的に、1羽当たり10^5のコロニー形成単位のサルモネラ・エンテリティディスが接種された。感染日の一日前、感染後一日目及び三日目に、細菌学的分析のために、排泄標本が採取された。実験は、ゲント大学獣医学部の倫理委員会により承認された。
【0112】
細菌学的分析
排泄標本が、100μg/mLのストレプトマイシンを含むXLDプレートに播かれ、37℃で一晩培養された。ダイレクト・プレーティングの後、陰性であったサンプルは、緩衝ペプトン水(BPW, Oxoid, Basingstoke,英国)中において37℃で一晩、プレ高濃度化された。その後、全てのサンプルは、1mLのこの懸濁液を9mLのブリリアント・グリーン・テトラチオネート液体培地(Oxoid, Basingstoke,英国)に添加することで、高濃度化された。この懸濁液は再び、37℃で一晩培養され、その後、100μg/mLのストレプトマイシンを含むXLDに播かれた。37℃での一晩にわたる培養の後、排泄標本1つについてのコロニー形成単位の数が決定された。滴定の後、サルモネラに対して陰性であったが、高濃度化の後に陽性となったサンプルは、サルモネラ菌の存在に対して陽性であると評価された。高濃度化の後の依然として陰性であったサンプルは、サルモネラ菌の存在に対して陰性であると評価された。
【0113】
結果
下の表に示されるように、CABのような多糖酪酸エステルを含む飼料を管理することにより、サルモネラ菌の糞便排出に関し、他の遅延放出製剤又はプロダクトと比して、著しく向上した結果が得られた。
【0114】
【表6】
【0115】
[例5:成長能力の生体内での決定]
本発明に係る多糖酪酸エステルが、最適以下の農業行為の下で成長能力に及ぼす影響を評価するために、生体内での実験が行われた。本発明に係るプロダクトが負荷菜種飼料(RSM)に転嫁され、成長能力に与える影響が決定され、他の遅延放出酪酸製剤又はプロダクトで得られた結果と比較された。
【0116】
実験の設定
実験は、完全乱塊法計画として設定された。処理グループは、3つの遅延放出酪酸製剤又はプロダクト及び2つの補足レベル(餌をやるベースとして、飼料1kgにつき0.25g又は1gの酪酸を含む)を伴って、3×2の要因実験及びコントロールとして、用意された。各処理グループは、6回再現され、結果として全部で6ブロックが再現された。食事は、下の表に詳細に示すような、RSM-トウモロコシ-小麦の幼動物期用、成長期用、及び仕上げ期用の食事に基づいていた。実験的な幼動物期用の食事、及び成長期用の食事は、基礎的なレシピに由来し、大豆油の代わりに飼料添加物を添加することにより得られた。
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
プレミックスには、飼料1kgにつき、ビタミンAが12.000IU、ビタミンD3が2.500IU、ビタミンEが50mg、ビタミンB2が7.5mg、ビタミンB6が3.5mg、ビタミンB1が2.0mg、ビタミンK3が1.5mg、ビタミンB12が20μg、コリンクロリドが460mg、抗酸化剤(オキシトラップPXN)が125mg、ナイアシンが35mg、パントテン酸が12mg、ビオチンが0.2mg、葉酸が1mg、Mnが85mg、鉄が80mg、亜鉛が60mg、銅が12mg、ヨウ素が0.8mg、セレンが0.15mg、含まれる。
【0122】
幼動物期用の飼料は、0日目~21日目に与えられ、成長期用の飼料は22日目~35日目に与えられ、仕上げ期用の飼料は36日目~42日目まで与えられた。食餌は、ブロイラー鶏の要求に合うように又はそれを上回るように形成され、Research Diet Service(Wijik bij Duurstede,オランダ)で生産された。
【0123】
鶏と実験手順
実験は、ヴァーヘニンゲン大学のカルス研究農場で行われた。合計で357羽の雄の生後1日のブロイラー(出生時体重47g;Ross308,Aviagen Group, Newbridge,英国)が、商業的な孵化場(Morren Breeders B.V., Lunteren,オランダ)から得られた。到着時に、ひよこは個別に秤量され、体重ごとのカテゴリーに割り当てられた(小<μ-0.68×σ;μ-0.68×σ<中<μ+0.68×σ;大>μ+0.68×σ)。各カテゴリーのひよこが、2つの環境制御された部屋の、42の床の畜舎の1つにランダムに割り当てられた。各畜舎は8~9羽のひよこを収容し、1.85×1m(長さ×幅)の面積を有し、休める場所が豊富に供給されていた。かんなくずが、寝床の材料として用いられた。環境温度は、生後3日目までは32℃に維持され、その後、生後23日目に22℃となるように徐々に低下された。生後3日目までは、23L:1Dの光周期が適用され、その後、16L:8Dに変化させた。ひよこは、飼料及び水に自由にアクセスできるようにしていた。畜舎の重量と、畜舎の飼料摂取量とが、生後21日目、35日目、及び42日目に、記録された。死亡率が日ごとに監視され、死亡したひよこの体重が記録された。
【0124】
結果
下の表には、飼料要求率(FCR)、平均体重増加量(ADG)、1日の飼料摂取量の平均(ADFI)、及び死亡率が示されている。FCRは、ADGとADFIを用いて、畜舎の単位で算出された。また、結果は再計算されて、それぞれのコントロールに対する変化のパーセンテージが求められた。
【0125】
下の表には、この実験の結果得られた死亡率、平均体重増加量(ADG)、1日の飼料摂取量の平均(ADFI)、及び飼料要求率(FCR)が示されている。データによれば、CABのような多糖酪酸エステルの飼料を補給することで、他の遅延放出酪酸製剤又はプロダクトを補給した場合と比して、優れた成長能力を示す結果が得られたことが分かる。本発明に係る多糖酪酸エステルによれば、補給期間において、向上されたADGとADFIとの大変望ましい組み合わせと共に、FCR及び死亡率の減少が提供された。その際、仕上げ期間において逆の効果が奏されることはなかった。
【0126】
また、この結果によれば、幼動物期及び成長期の段階において、多糖酪酸エステル(4-L vs. 4-H)の含有量を増加させると、成長能力が増大することが分かる(これは、ワックス組成である3-L vs. 3-Hで観察された結果とは対照的である。)
表11は、幼動物期、成長期、仕上げ期のそれぞれの時期において、食餌処理が性能パラメータに与える影響を示している。
【0127】
【表11】
【0128】
表12は、補給時期及び実験中の総時期において、食餌処理が性能パラメータに与える影響を示している。
【0129】
【表12】
【0130】
【表13】
【0131】
[例6:飼料要求率の生体内での決定]
最適ではない農業技術の下で、本発明に係る多糖酪酸エステルが飼料要求率に与える影響を評価するために、生体内での実験が行われた。本発明に係るプロダクトが負荷菜種飼料(RSM)に添加され、飼料要求率に及ぼされる効果が決定され、統計的に分析され、そして他の遅延放出(ヒドロキシ)酪酸製剤又はプロダクトにより得られた結果と比較された。
【0132】
実験計画
実験は、完全任意ブロック配列法として計画された。処理グループは、10羽/畜舎×8回繰り返し×4処理として、用意された。4処理は、1つのコントロールと、3つの遅延放出(ヒドロキシ)酪酸形成又はプロダクトである(飼料1kgにつき、1gの(ヒドロキシ)酪酸を含有)。食餌は、RSM-トウモロコシ-小麦の幼動物期用の食餌と、下の表に詳細に示す成長期用食餌とに、基づいていた。実験的な幼動物期及び成長期の飼料は、大豆油の代わりに飼料添加物を添加した基礎的なレシピに由来していた。
【0133】
【表14】
【0134】
【表15】
【0135】
【表16】
【0136】
食餌1kg当たりに含まれるプレミックスの量は、ビタミンAが12.000IU、ビタミンD3が2.500IU、ビタミンEが50mg、ビタミンB2が7.5mg、ビタミンB6が3.5mg、ビタミンB1が2.0mg、ビタミンK3が1.5mg、ビタミンB12が20μg、コリンクロリドが460mg、抗酸化物質(オキシトラップPXN)が125mg、ナイアシンが35mg、パントテン酸が12mg、ビオチンが0.2mg、葉酸が1mg、マンガンが85mg、鉄が80mg、亜鉛が60mg、銅が12mg、ヨウ素が0.8mg、セレンが0.15mgであった。
【0137】
幼動物期の食餌は生後0~21日目に供給され、成長期の食餌は生後22~35日の間に供給された。食餌は、ブロイラー鶏の要求に見合うように又はそれを上回るように処方され、Research Diet Service(Wijk bij Duurstede, オランダ)により生産された。
【0138】
ひよこおよび実験手順
実験は、ILVO―DIER(Burge, Merelbeke, ベルギー)の実験的な鶏舎12で行われた。合計で320羽の雄の生後1日のブロイラー(Ross 308, Aviagen Group, Newbridge, イギリス)が、商業的な孵化場(Belgabroed NV, Merksplas, ベルギー)から得られた。到着すると、ひよこは、単一の気候調製室の32の床のうちの1つの畜舎にランダムに割り当てられた。各畜舎は10羽のひよこを収容し、2.1×1mの面積を有していた。環境温度は、生後7日目までは29~30℃に保たれ、その後、1週間に2℃ずつ低下された。生後7日目までは23L:1Dの光周期が適用され、その後16L:8Dに変更された。ひよこは自由に、飼料及び水にアクセスできた。個々の重量、そして畜舎の重量と、畜舎での飼料の摂取量とが、毎週記録された。
【0139】
統計的な分析
以下のモデルを用いて、SAS(version 9.3, SAS Institute Inc., Cary, NC)のPROC GLMを利用して、性能パラメータが分析された。
【0140】
【数1】
【0141】
ijkは、j番目(j=1~5)の週のときに、k番目(k=1~8)の反復回数においてi番目(i=CTR,FCB,PHB,CAB)の食餌の与えたときに観察された反応を表す。Dは、i番目の固定された食餌の効果を表す。Bは、k番目の固定されたブロックの効果を表す。Wは、測定期間におけるj番目のランダムな効果を表す。ADijは、食餌と測定機関との間の相互効果を表す。εijkは、j番目の測定期間において、k番目の反復回数においてi番目の食餌が与えられたときの残余誤差期間である。顕著な食餌の効果が検出されたとき、テューキーのポストホックテストを用いて、期待値が分離された。食餌と測定期間の間において、顕著な相関関係が見られたとき、テューキーのポストホックテストを用いて、期待値が分離され、相互作用項は、簡単な効果試験によって、週ごとに分けられた。
【0142】
結果
下の表に、生後0~35日の補給期間における、食餌による酪酸の補給が飼料要求率(FCR)に与える影響を示している。
【0143】
データによれば、CABのような多糖酪酸エステルを含む飼料を補給することにより、他の遅延放出酪酸製剤又はプロダクトを用いた場合の結果と比して、優れた飼料要求率が得られることが読み取れる。
【0144】
【表17】
図1
図2
図3
図4