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特許7268043ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖の製造方法
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  • 特許-ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230425BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 31/732 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 36/75 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 36/21 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20230425BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L2/00 F
A61K31/732
A61K36/73
A61K36/75
A61K36/23
A61K36/21
A61K36/28
C12P19/04 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020543708
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018079058
(87)【国際公開番号】W WO2019081525
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】17197706.9
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/NL2017/050807
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/074127
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520145366
【氏名又は名称】ニュートリリーズ・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】NUTRILEADS B.V.
【住所又は居所原語表記】Bronland 12-N,6708 WH Wageningen,Netherland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】アルベルス、ルート
(72)【発明者】
【氏名】ゾーマキ、マリア
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/192247(WO,A1)
【文献】Food Chem.,2012年,vol.131, no.4,pp.1207-1216
【文献】Crit. Rev. Biotechnol.,2015年02月02日,online,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
C12P 19/00-19/64
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖加水分解物の製造方法であって、当該方法は、
・搾りかす、搾りかすの水性抽出物、オイルケーキ、オイルケーキの水性抽出物及びその組合せから選択されるペクチンに富む基質を準備する工程、
ここで、前記ペクチンに富む基質は、有機溶媒を使用せずに、リンゴ、ナシ、柑橘類、ニンジン、甜及びチコリーから選択される1以上の作物から得られ、前記ペクチンに富む基質は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格を有するペクチン性多糖を少なくとも3乾燥重量%含み、前記ラムノース残基は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格に含まれ、前記ラムノース残基は、α(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基に含まれる、
・前記ペクチンに富む基質を酵素処理し、ペクチン性多糖を部分的に加水分解する工程、
ここで、前記酵素処理は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼの使用を含む、
・前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が5~100kDaの限外ろ過膜を使用して、限外ろ過を行う工程、及び
・前記限外ろ過保持液を回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ペクチンに富む基質は、搾りかす、搾りかすの水性抽出物及びその組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペクチンは、リンゴ、ナシ、チコリー、ニンジンから得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペクチンは、ニンジン及び/又はリンゴから得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ペクチンに富む基質は、セルロース、ヘミセルロース及びその組合せから選択されるセルロース成分を少なくとも10~80乾燥重量%含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基質中の前記ペクチン性多糖の少なくとも50重量%は、前記ペクチン性多糖の濃度が1g/lの場合、45℃、pH5.5の蒸留水に溶解しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ペクチン性多糖部分加水分解物を含む水性液体を、酵素処理後、限外ろ過前に、固液分離する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペクチンに富む基質は、ペクチン性多糖を少なくとも10乾燥重量%含むペクチンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ペクチンに富む基質は、0.5~40乾燥重量%の前記ペクチンに富む基質を含む水性液体の形態で酵素処理される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素処理が3.0~7.5のpHで行われる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1以上のペクチナーゼは、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)及びエキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ペクチンに富む基質は酵素処理され、ここで、前記処理は、1以上のペクチナーゼを使用する部分的な加水分解の前の、又は同時の、1以上のペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)の使用を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が6~50kDaの限外ろ過膜により限外ろ過する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記回収された限外ろ過保持液は、含水量が15重量%未満まで乾燥される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ペクチン性多糖加水分解物が、
・ペクチン性多糖を少なくとも10乾燥重量%含み、前記ペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、その総単糖組成に基づき、少なくとも4モル%であり;
・15乾燥重量%未満のセルロース、ヘミセルロース、リグニン及びデンプンから選択される不溶性多糖を含み;
・タンパク質含有量は15乾燥重量%を超えず;
・重量平均分子量は20~800kDaであり;
・分子量が2.5kDa未満の糖は、15重量%未満であり;
・平均アセチル化度は少なくとも10%であり;
・平均メチル化度は60%以下であり;
前記ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の少なくとも50モル%が、ガラクツロン酸残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びガラクトース残基であり;
前記ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の少なくとも15モル%が、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基であり;
ガラクトース残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の0~50%であり;
ペクチン性多糖加水分解物中に、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基が、6:1以下のモル比で存在し;
ラムノース残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の5~50%であり;かつ、
前記ペクチンに富む基質が、リンゴ、ナシ、ニンジン、甜菜及びチコリーから選択される1以上の作物から得られた、
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法により得られるペクチン性多糖加水分解物。
【請求項16】
栄養製剤、食品、サプリメント、飲料又は医薬品から選択される製品の製造方法であって、少なくとも0.1乾燥重量%の請求項15に記載のペクチン性多糖加水分解物を、最終製品に添加することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラムノガラクツロナン-I(RG-I)多糖が強化されたペクチン性多糖を製造する方法に関する。特に、本発明は、有機溶媒を使用せずに植物材料から得た、かなりのRG-I多糖を含むペクチンに富む基質の酵素による加水分解と、その後の限外ろ過及び保持液の回収によって、そのような多糖を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペクチンは、陸生植物の一次細胞壁に存在する構造ヘテロ多糖である。ペクチン性多糖の組成と微細構造は、用いる植物源及び抽出条件で大きく変化する。ペクチン性多糖の生物活性は、その微細構造に大きく依存する。
【0003】
ペクチン性多糖は、以下の多糖成分を様々な量で含む不均一な多糖類である:
(i) ホモガラクツロナン(HG)、
(ii) キシロガラクツロナン(XG)、
(iii) アピオガラクツロナン(AG)、
(iv) ラムノガラクツロナンI(RG-I)、及び
(v) ラムノガラクツロナンII(RG-II)。
【0004】
図1は、上述した4つの多糖成分を含むペクチン性多糖の構造の概略図である。多糖成分のAG、XG及びRG-IIは、通常、ペクチン性多糖のごく一部であることに留意されたい。
【0005】
多糖成分HG、XG及びRG-IIは、それぞれ、α-(1-4)結合D-ガラクツロン酸単糖ユニットの直鎖からなる骨格で構成される。
【0006】
RG-Iのみが、反復二糖単位 4)-α-D-ガラクツロン酸-(1,2)-α-L-ラムノース-(1 の直鎖からなる骨格で構成される。RG-Iの構造の概略図を図2に示す。
【0007】
ホモガラクツロナンドメインは、約100までの連続したD-GalA残基を有することができる。側鎖を有するRG-Iドメインは、通常、「分岐領域」又は「毛深い領域」と呼ばれ、一方、(2つのRG-Iドメインの間の)ホモガラクツロナンドメインは、通常、オリゴ糖で置換されない。
【0008】
RG-1のGalA残基は、1位及び4位でRha残基に結合し、一方、Rha残基は、アノマー位及び2-OH位でGalA残基に結合する。一般に、Rha残基の約20~80%は4-OH位で分岐し(植物源及び分離方法による)、中性及び酸性の側鎖を有する。これらの側鎖は、さまざまな様式で結合したAra及びGal残基から主に構成され、アラビノガラクタンI(AG-I)及び/又はAG-IIとして知られているポリマーを形成する。AG-Iは、3-OH位がα-L-アラビノシル基で置換されたβ-(1,4)-結合D-Gal骨格で構成され、当該Gal骨格は、間にα(1,5)-L-Ara単位を有してもよい。AG-IIは、β(1,3)結合したD-Galを主鎖とし、短い(1,6)結合の側鎖で置換された、高度に分岐したガラクタンで構成される。側鎖は、さらに、(1,3)-及び/又はα(1,5)-結合L-Araを有する。オリゴ糖側鎖は、直鎖状又は分枝状であってもよく、そのいくつかは、α-L-フコシド、β-D-グルクロニド、及び4-O-メチル β-D-グルクロニル残基で終結してもよい。
【0009】
Khodaei及びKarbouneは、アルカリ(NaOH及びKOH)と酵素(Aspergillus niger由来エンドポリガラクツロナーゼ)を用いる、ガラクタンに富むラムノガラクツロナンI型(RG-I)のペクチン性多糖の抽出について説明した("Extraction and structural characterisation of rhamnogalacturonan I-type pectic polysaccharides from potato cell wall". Food Chemistry, 1:39 (2013), p. 617-623)。
【0010】
Khodaei及びKarbouneは、Aspergillus niger由来エンドポリガラクツロナーゼを用いる、ガラクタンに富むラムノガラクツロナンI(RG-I)の酵素抽出におけるさまざまなパラメーターの影響をさらに調査した("Enzymatic extraction of galactan-rich rhamnogalacturonan I from potato cell wall by-product". LWT - Food Science and Technology, 57 (2014), p. 207-216)。
【0011】
国際公開第2015/192247号には、ジャガイモからラムノガラクツロナンを抽出し、抽出したラムノガラクツロナンを酵素混合物で処理して、抽出されたラムノガラクツロナンから難消化性オリゴ糖を得、難消化性オリゴ糖を分離することによる、ジャガイモから難消化性オリゴ糖を分離する方法が記載されている。
【0012】
国際公開第2016/132130号には、ジャガイモからRG-1のフラグメントを製造する方法、及び被験者に免疫調節活性を提供するためのその使用が記載されている。当該方法は、ジャガイモの酵素抽出で得たRG-1の提供し、前記RG-1を選択的に解重合して、平均分子量が5~30kDaで、単糖組成が、アラビノース7~13%、ラムノース5~10%、キシロース0~1%、ガラクツロン酸20~40%、及びガラクトース35~60%であるRG-1のフラグメントを調製する工程を含む。
【0013】
中国特許出願公開第102784193号明細書には、Hedysarum polybotrysから多糖類を分離する方法が記載されている。
【0014】
韓国公開特許第2017-053144号公報には、オオムギの葉からの多糖画分の抽出について記載されている。この多糖類画分は、免疫機能促進活性を示すと記載されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、高い生物学的機能を有するラムノガラクツロナン-I(RG-I)多糖が強化された多糖の単離物を、
・有機溶媒を使用せずに植物材料から得た、かなりのRG-I多糖を含むペクチンに富む基質を酵素で加水分解し、RG-I多糖を部分的に加水分解する工程、
・前記RG-I多糖部分加水分解物を、分画分子量が5~100kDaの限外ろ過膜を使用して、限外ろ過を行う工程、及び
・前記限外ろ過保持液を回収する工程
を含む方法により得ることができることを発見した。酵素による加水分解は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、ラムノガラクツロナン ガラクツロノヒドラーゼ(EC 3.2.1.173)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼの助けを借りて行われる。
【0016】
本発明の第1の側面は、ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖加水分解物の製造方法であって、当該方法は、
・有機溶媒を使用せずに植物材料から得たペクチンに富む基質を準備する工程、
ここで、前記ペクチンに富む基質は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格を有するペクチン性多糖を少なくとも3乾燥重量%含み、前記ラムノース残基は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格に含まれ、前記ラムノース残基は、α(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基に含まれる、
・前記ペクチンに富む基質を酵素処理し、ペクチン性多糖を部分的に加水分解する工程、
ここで、前記酵素処理は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、ラムノガラクツロナン ガラクツロノヒドラーゼ(EC 3.2.1.173)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼの使用を含む、
・前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が5~100kDaの限外ろ過膜を使用して、限外ろ過を行う工程、及び
・前記限外ろ過保持液を回収する工程
を含む。
【0017】
本発明者らは、上述した1以上のペクチナーゼを使用するペクチン性多糖の酵素による部分加水分解と、その後の、加水分解で生成する小分子を含む小分子成分の除去が、非常に高い生物学的機能を示すペクチン性多糖加水分解物をもたらすことを発見した。
【0018】
本発明者らは、理論に羈束されることを望むものではないが、この高い生物学的機能は、基質に含まれるペクチン性多糖のホモガラクツロナンドメインの少なくとも一部を除去し、そして、セルロースやヘミセルロースなどの不活性成分を除去することにより達成されると信じられている。ホモガラクツロナンドメインの除去は、RG-I多糖の物理化学的特性を変え、腸管及びヒト末梢血単核球のいわゆるパターン認識受容体とより効果的に相互作用することが可能な分子の三次元構成をもたらす。ペクチン性多糖からホモガラクツロナンドメインを除去することにより、RG-Iドメイン含量が増加する。腸管細胞や他の免疫学的に活性な細胞で発現するパターン認識受容体とRG-I多糖ドメインとの相互作用は、それらの機能的応答性を調節することができ、そのことは、メディエーターの産生及び免疫学的に活性な細胞の再循環により、腸管のみならず、口腔、気道、尿路、膣、皮膚などの体の他の部位での感染に対する耐性を改善できると信じられている。
【0019】
この方法は、高活性のペクチン性多糖加水分解物が有機溶媒を使用せずに得たペクチンに富む基質から得られるという利点をさらに提供する。ペクチン性多糖の単離を助けるための有機溶媒による沈殿を利用する先行技術とは異なり、この方法は、有機溶媒と接触していないペクチンに富む基質を使用し、また、この方法による基質のさらなる処理は、有機溶媒を必要としない。
【0020】
さらに、本発明は、この方法によって得られるペクチン性多糖加水分解物に関し、また、上述したペクチン性多糖加水分解物を添加することを含む、栄養製剤、食品、サプリメント、飲料又は医薬品から選択される製品を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1
図2
図3
【発明の詳細な説明】
【0022】
本発明の第1の側面は、ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖加水分解物の製造方法であって、当該方法は、
・有機溶媒を使用せずに植物材料から得たペクチンに富む基質を準備する工程、
ここで、前記ペクチンに富む基質は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格を有するペクチン性多糖を少なくとも3乾燥重量%含み、前記ラムノース残基は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格に含まれ、前記ラムノース残基は、α(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基に含まれる、
・前記ペクチンに富む基質を酵素処理し、ペクチン性多糖を部分的に加水分解する工程、
ここで、前記酵素処理は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、ラムノガラクツロナン ガラクツロノヒドラーゼ(EC 3.2.1.173)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼの使用を含む、
・前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が5~100kDaの限外ろ過膜を使用して、限外ろ過を行う工程、及び
・前記限外ろ過保持液を回収する工程
を含む方法に関する。
【0023】
この方法で使用されるペクチンに富む基質は、有機溶媒を使用せずに植物材料から得られ、このことは、この基質が有機溶媒と接触していない植物材料から得られたことを意味する。したがって、このペクチンに富む基質は、有機溶媒による抽出又は沈殿では得られない。
【0024】
本明細書において、「骨格鎖」及び「骨格」という用語は同義語である。
【0025】
本明細書において、「糖」という用語は、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖を包含する。
【0026】
本明細書において、「オリゴ糖」という用語は、3~10個の単糖を含む糖のポリマーを指す。
【0027】
本明細書において、「多糖」という用語は、特に明記しない限り、少なくとも11の単糖を含む糖のポリマーを指す。
【0028】
本明細書において、「ペクチン性多糖」という用語は、少なくとも10kDaの分子量を有し、ラムノース残基がα(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基に含まれるガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格を含む、場合により分岐した多糖を指す。本明細書において、「ペクチン性多糖」という用語は、特に明記しない限り、少なくとも10kDaの分子量を有するペクチン性多糖加水分解物も包含する。
【0029】
本明細書において、「分岐した多糖」という用語は、骨格鎖内の少なくとも1つの単糖がグリコシド結合によって結合した単糖の側鎖を1つ以上の有する、グリコシド結合で結合する単糖の直線状骨格鎖を含む多糖を指す。
【0030】
本明細書において、「ストレッチ」という用語は、多糖骨格中のグリコシド結合した2つの単糖であって、結合した側鎖を含まない単糖の並びを指す。
【0031】
本明細書において、「ドメイン」という用語は、ストレッチとストレッチに結合する側鎖を指す。
【0032】
「ラムノガラクツロナンIストレッチ」又は「RG-Iストレッチ」という用語は、ガラクツロン酸(GalA)及びラムノース(Rha)から成るストレッチを指し、ここで、GalA残基は1位及び4位でRha残基で結合し、Rha残基はアノマー位及び2-OH位でGalA残基に結合し、すなわち、α(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基の繰り返しである。RG-1ドメインは、例えばガラクタン、アラビナン及びアラビノガラクタン側鎖などの側鎖を含むことができる。
【0033】
「ラムノガラクツロナンI多糖」又は「RG-I多糖」という用語は、1以上のラムノガラクツロナンIストレッチを含む骨格を含む、場合により分岐したペクチン性多糖を指す。
【0034】
「α(1,4)-結合ガラクツロン酸ストレッチ」という用語は、α(1→4)-ガラクツロン残基から成るストレッチを指す。
【0035】
RG-Iドメインのほかに、本発明の方法により得られるペクチン性多糖加水分解物は、1以上の以下のドメインを含んでいてもよい:
・ホモガラクツロナン(HG)、
・キシロガラクツロナン(XG)、
・アピオガラクツロナン(AG)、
・ラムノガラクツロナンII(RG-II)。
【0036】
ドメインXG、AG、及びRG-IIは、通常、RG-I多糖のごく一部である。
【0037】
本発明のRG-1ポリサッカライド中に場合によって存在するHGドメイン、XGドメイン、AG及びRG-IIドメインは、2以上のα-(1-4)-結合D-ガラクツロン酸の直鎖から成る骨格を含む。
【0038】
HGドメインは側鎖を含まない。HGドメインの骨格中のガラクツロン酸残基のカルボキシル基は、エステル化されていてもよい。エステル化されたガラクツロン酸は、メチルエステル又はアセチルエステルであってもよい。
【0039】
XGドメインの骨格は、D-キシロース側鎖を1つ以上含む。
【0040】
AGドメインの骨格は、1以上のD-アピオース残基を含む側鎖を1以上含む。
【0041】
RG-IIドメインの骨格は、D-キシロース又はD-アピオースのみから成るものではない側鎖を1以上含む。RG-IIドメインの骨格中のガラクツロン酸残基のカルボキシル基は、エステル化されていてもよい。エステル化されたガラクツロン酸は、メチルエステル又はアセチルエステルであってもよい。
【0042】
「アセチル化度」という用語は、割合として表される、ガラクツロン酸残基あたりのアセチル残基の数を指す。
【0043】
「メチル化度」という用語は、割合として表される、ガラクツロン酸残基あたりのメチル残基の数を指す。
【0044】
多糖の濃度及び単糖組成は、当業者に公知の分析技術で決定することができる。メタノリシス後、単糖組成はパルスアンペロメトリー検出器付の高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)によって適切に決定できる。
【0045】
分子サイズ分布は、高速サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、屈折率(RI)検出(濃度)、光散乱検出(分子量検出)、UV検出(タンパク質の存在を示す)及び差圧検出(固有粘度検出)により決定できる。
【0046】
上記分析方法は、Analytical Biochemistry Vol. 207, Issue 1, 1992, pg 176(メタノリシス及び中性糖分析)、並びにMol. Nutr. Food Res., Vol 61, Issue 1, 2017, 1600243(ガラクツロン酸分析及び分子サイズ分布)に記載されている。
【0047】
本明細書において、「搾りかす」又は「ケーキ」という用語は、ジュース又はオイルを搾った後に残る果物、野菜又は種子の残留物を指し、これは場合によって乾燥していてもよい。「オイルケーキ」という用語は、種子、果物又は野菜から油分を取り除いた後に得られるケーキを指す。
【0048】
本明細書において、すべての割合は、特に明記しない限り重量パーセントを指す。
【0049】
この方法は、好ましくは、いかなる有機溶媒も使用しない。言い換えると、有機溶媒を使用せずに植物材料から得たペクチンに富む基質は、有機溶媒を使用せずにさらに処理(酵素処理及び限外ろ過)し、目的のペクチン性多糖加水分解物を得る。
【0050】
本方法で使用されるペクチンに富む基質は、好ましくは少なくとも4乾燥重量%、より好ましくは少なくとも6乾燥重量%、さらにより好ましくは少なくとも8乾燥重量%のペクチン性多糖を含有する。
【0051】
ペクチンに富む基質中のペクチン性多糖は、好ましくは少なくとも100kDa、より好ましくは少なくとも150kDa、最も好ましくは少なくとも200kDaの重量平均分子量により特徴付けられる。
【0052】
ペクチンに富む基質中のペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、通常、その総単糖組成に基づき、少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.5モル%、さらにより好ましくは少なくとも1モル%、最も好ましくは少なくとも2モル%である。
【0053】
この方法で用いるペクチンに富む基質は、異なる作物から得てもよい。好ましい態様では、ペクチンに富む基質は、果物(トマトを含む)、ニンジン、オリーブ、エンドウ豆、甜菜、チコリー、大豆、ヒマワリ、菜種及びトウモロコシから選択される1以上の作物から得られる。より好ましくは、ペクチンに富む基質は、リンゴ、ナシ、柑橘類、ニンジン、甜菜及びチコリーから選択される1以上の作物から得られる。さらにより好ましくは、ペクチンに富む基質は、リンゴ、ナシ、ニンジン及びチコリーから選択される1以上の作物から得られる。特に好ましい態様では、ペクチンに富む基質は、ニンジン及び/又はリンゴから得られる。
【0054】
この方法では、ペクチンに富む作物材料はペクチンに富む基質などとして用いることができる。そのような作物材料は、ペクチナーゼが基質中のペクチン性多糖を分解することを可能にするためのパルプ又はジュースを製造するために細かく砕かれるべきである。細かく砕かれた作物材料は、この方法で使用する前に乾燥又は濃縮してもよい。
【0055】
好ましくは、ペクチンに富む基質は、出発原料として作物材料を使用する製造方法からの副産物として得られ、ここで、この副産物が得られる段階まで、有機溶媒又は化学反応は用いられない。この方法の特に好ましい態様では、ペクチンに富む基質は、搾りかす、搾りかすの水性抽出物、オイルケーキ、オイルケーキの水性抽出物、削りくず、皮(skin)、皮(peel)、種(pit)、種(seed)及びその組合せから選択される。最も好ましくは、ペクチンに富む基質は、搾りかす、搾りかすの水性抽出物及びその組合せから選択される。
【0056】
この方法で用いるペクチンに富む基質は、細胞壁を破壊しペクチン性多糖の酵素による加水分解を促進する粉砕、加熱、マイクロ波照射、乾燥又は代替技術を含む方法で適当に得ることができる。
【0057】
ペクチンに富む基質の含水量は、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは8重量%以下である。
【0058】
ペクチンに富む基質は、好ましくは0.5~40乾燥重量%、より好ましくは1~30重量%、さらにより好ましくは2~20重量%、最も好ましくは3~15重量%のペクチンに富む基質を含む水性液体の形態で酵素処理される。この水性液体は、ペクチンに富む基質を水と混合することにより適当に得ることができる。
【0059】
酵素処理される水性液体の、好ましくは少なくとも50乾燥重量%、より好ましくは少なくとも75乾燥重量%、最も好ましくは少なくとも85乾燥重量%が、ペクチンに富む基質である。
【0060】
本発明に係る方法の酵素処理は、好ましくは3.0~7.5、より好ましくは4~7.5、さらにより好ましくは4.5~7、最も好ましくは5~7のpHで行われる。
【0061】
ペクチン性多糖を部分的に加水分解するために使用される処理は、好ましくは、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)及びエキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼを使用する。
【0062】
好ましい態様では、ペクチン性多糖は、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)及びエキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼで部分的に加水分解される。
【0063】
別の好ましい態様では、ペクチン性多糖は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)及びペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)から選択される1以上のペクチナーゼで部分的に加水分解される。これらのリアーゼによるペクチン性多糖の加水分解は、必然的に不飽和非還元末端ガラクツロン酸残基を含む多糖の断片をもたらす。
【0064】
この方法では、ペクチン性多糖は、好ましくは、上述した1以上のペクチナーゼ及び1以上のペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)の組合せで加水分解される。1以上のペクチンエステラーゼは、1以上のペクチナーゼの前に、又は同時に、使用してもよい。ペクチナーゼとペクチンエステラーゼの組合せは、エンドポリガラクツロナーゼ、エキソポリガラクツロナーゼ及びその組合せから選択されるペクチナーゼを用いる場合に特に有利である。ペクチナーゼとペクチンエステラーゼの組合せは、通常、メチル化度が低く、アセチル化/メチル化の比率が高い、ペクチン性多糖部分加水分解物をもたらす。
【0065】
特に好ましい態様では、ペクチンに富む基質は、1以上のペクチナーゼを使用する部分的な加水分解の前に、又は同時に、1以上のペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)で酵素処理される。最も好ましくは、ペクチンエステラーゼによる酵素処理と1以上のペクチナーゼによる酵素処理は同時に行われる。
【0066】
この方法では、ペクチンに富む基質は、ペクチナーゼによる酵素処理の前に、又は前記処理の一部として、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼ(EC 3.2.1.4、EC 3.2.1.176、EC 3.2.1.203)で適当に処理することができる。セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼによる処理は、基質中の植物の細胞壁を破壊し、細胞壁に含まれるペクチンの放出を誘発し、したがって、これらのペクチンはペクチナーゼの影響を受けやすくなる。
【0067】
1以上のペクチナーゼによるペクチンに富む基質の酵素処理は、好ましくは15~70℃、より好ましくは25~55℃で行われる。酵素処理の時間は、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは20分~3時間である。
【0068】
この方法は、植物のほとんど無傷の細胞壁を比較的大量に含むペクチンに富む基質を適当に用いてもよい。通常、そのようなペクチンに富む基質は、セルロース、ヘミセルロース及びその組合せから選択されるセルロース成分を少なくとも40乾燥重量%含む。通常、これらの基質中のペクチン性多糖の大部分は水不溶性、つまり、細胞壁(破片)のセルロース/ヘミセルロースのマトリックス中に閉じ込められているペクチン性多糖である。好ましくは、基質中のペクチン性多糖の少なくとも50重量%は、ペクチン性多糖の濃度が1g/lの場合、45℃、pH5.5の蒸留水に溶解しない。
【0069】
この方法の特に好ましい態様では、酵素処理後であって、限外ろ過を行う前に、ペクチン性多糖部分加水分解物を含む水性液体を固液分離することで、水溶性のペクチン性多糖が非水溶性の固体から分離される。使用してもよい固液分離技術には、沈殿、デカンテーション、遠心分離、ハイドロサイクロン及び/又はろ過が含まれる。この実施の形態は、所望のペクチン性多糖の高い収量を達成できるという利点を提供する。
【0070】
この方法のある態様では、ペクチンに富む基質は、ペクチン、セルロース、ヘミセルロース及びその組合せから選択される細胞壁多糖を10~80乾燥重量%含む。最も好ましくは、前記基質は、20~70乾燥重量%の細胞壁多糖を含む。最も好ましくは、前記基質は、30~60乾燥重量%の細胞壁多糖を含む。搾りかすは、この方法で使用することができ、比較的大量の細胞壁多糖を含むペクチンに富む基質の例である。
【0071】
搾りかすは、通常、分子量が20kDa未満の炭水化物を2~50乾燥重量%、好ましくは5~40乾燥重量%、より好ましくは10~30乾燥重量%含む。
【0072】
搾りかすのタンパク質含有量は、通常、0~20乾燥重量%、より好ましくは1~18乾燥重量%、さらにより好ましくは2~16乾燥重量%である。
【0073】
ペクチンに富む基質が搾りかす又はオイルケーキである場合、限外ろ過の前に、酵素処理された搾りかす又はオイルケーキから非溶解性物質(粒子サイズ>5μm)が取り除かれる。非溶解性物質は、好ましくは固液分離により、より好ましくはデカンテーション、遠心分離及び/又はろ過により取り除かれる。
【0074】
この方法の別の態様では、ペクチンに富む基質は、少なくとも10乾燥重量%、好ましくは少なくとも20乾燥重量%、より好ましくは少なくとも40乾燥重量%のペクチン性多糖を含み、20乾燥重量%未満のセルロース、ヘミセルロース及びその組合せから選択される細胞壁多糖を含むペクチンの単離物である。より好ましくは、前記ペクチン単離物は、10乾燥重量%未満、さらにより好ましくは5乾燥重量%未満の細胞壁多糖類を含む。搾りかすの水性抽出物及びオイルケーキの水性抽出物は、この方法においてペクチンに富む基質として使用されてもよいペクチンの例である。
【0075】
好ましくは、水性の搾りかす抽出物は、一連の水性抽出工程、より好ましくは少なくとも2つの水性抽出工程によって得られる。第1の抽出工程は、好ましくは、搾りかすと水の混合と、その後の固液分離を含む。第2の工程は、好ましくは、回収した固体画分と水の混合と、その後の第二の固液分離を含む。適当な固液分離法は、例えば、デカンテーション、遠心分離及びろ過である。
【0076】
水性抽出のpHは、好ましくは2.0~8.5、より好ましくは4.5~7.5、さらにより好ましくは6.0~7.0である。
【0077】
この方法の特に好ましい態様では、ペクチン性多糖部分加水分解物を、6~50kDa、好ましくは7~40kDa、好ましくは8~30kDaの分画分子量を有する限外ろ過膜で限外ろ過を行う。
【0078】
回収された限外ろ過保持液は、噴霧乾燥、凍結乾燥、風乾、ローラー乾燥、平面乾燥、ベルト乾燥及びドラム乾燥から選択される1以上の乾燥技術で適当に乾燥することができる。
【0079】
好ましくは、回収された限外ろ過保持液は、含水量が15重量%未満、より好ましくは13重量%未満、さらにより好ましくは11重量%未満、最も好ましくは9重量%未満まで乾燥される。
【0080】
回収された限外ろ過保持液は、好ましくは6:1以下、より好ましくは5:1以下、さらにより好ましくは4:1以下、最も好ましくは3.5:1以下のモル比でガラクツロン酸残基及びラムノース残基を含む。
【0081】
回収された限外ろ過保持液中に存在するペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、その総単糖組成に基づき、好ましくは少なくとも4%、より好ましくは5~50%、さらにより好ましくは6~45%、さらにより好ましくは6.5~40%、最も好ましくは7~30%である。
【0082】
回収された限外ろ過保持液は、好ましくは少なくとも5乾燥重量%、好ましくは少なくとも15乾燥重量%、より好ましくは少なくとも25乾燥重量%、最も好ましくは少なくとも50乾燥重量%のペクチン性多糖を含み、前記ペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、その総単糖組成に基づき、少なくとも4モル%である。
【0083】
より好ましい態様では、回収された保持液中のペクチン性多糖の重量平均分子量は、20kDa、より好ましくは30kDa、さらにより好ましくは40kDa、最も好ましくは50kDaを超える。
【0084】
本発明の方法は、好ましくは、以下に示すペクチン性多糖加水分解物をもたらす。
【0085】
本発明の第2の側面は、本発明に係る方法で得られるペクチン性多糖加水分解物に関する。
【0086】
ペクチン性多糖加水分解物は、通常、少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の乾燥物質を有する。
【0087】
好ましくは、ペクチン性多糖加水分解物は、少なくとも10乾燥重量%、より好ましくは少なくとも20乾燥重量%、さらにより好ましくは少なくとも40乾燥重量%のペクチン性多糖を含み、前記ペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、その総単糖組成に基づき、少なくとも4モル%である。
【0088】
特に好ましい態様では、ペクチン性多糖加水分解物の重量平均分子量は、20kDa、より好ましくは30kDa、さらにより好ましくは40kDa、最も好ましくは50kDaを超える。
【0089】
特定の態様では、ペクチン性多糖加水分解物に含まれる分子量が2.5kDa未満の糖(多糖、オリゴ糖、二糖、単糖)は、15重量%未満、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満である。
【0090】
好ましくは、ペクチン性多糖加水分解物は、30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、さらにより好ましくは10重量%未満の、20kDa未満の分子量の有機物を含む。
【0091】
通常、ペクチン性多糖加水分解物は、15乾燥重量%未満、好ましくは10乾燥重量%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1乾燥重量%未満のセルロース、ヘミセルロース、リグニン及びデンプンから選択される不溶性多糖を含む。
【0092】
ペクチン性多糖加水分解物のタンパク質含有量は、好ましくは15乾燥重量%を超えず、より好ましくは0.5~10乾燥重量%、最も好ましくは1~5乾燥%である。
【0093】
好ましくは、ペクチン性多糖加水分解物は、少なくとも10乾燥重量%、好ましくは少なくとも乾燥重量20%、より好ましくは少なくとも乾燥重量30%のペクチン性多糖を含み、前記ペクチン性多糖の平均ラムノース含有量は、その総単糖組成に基づき、少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも6%である。
【0094】
通常、ガラクツロン酸残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びガラクトース残基は合わせて、ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の少なくとも50モル%である。この組合せは、ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の、より好ましくは少なくとも60モル%、さらにより好ましくは少なくとも65モル%、さらにより好ましくは少なくとも70モル%、最も好ましくは少なくとも75モル%である。
【0095】
ペクチン性多糖加水分解物の特に好ましい態様では、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基は合わせて、ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の少なくとも15モル%、より好ましくは17~70モル%、最も好ましくは18~60モル%である。
【0096】
ペクチン性多糖加水分解物中に、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基が、好ましくは6:1以下、より好ましくは5:1以下、さらにより好ましくは4:1以下、最も好ましくは3.5:1以下のモル比で存在する。
【0097】
ラムノース残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の、通常は5~50%、より好ましくは6~45%、さらにより好ましくは6.5~40%、最も好ましくは7~30%である。
【0098】
ガラクツロン酸残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の、通常は5~80%、より好ましくは8~60%、最も好ましくは10~50%である。
【0099】
加水分解物中のペクチン性多糖の重量平均分子量は、好ましくは、800kDa以下である。ペクチン性多糖の重量平均分子量は、より好ましくは、22kDa~500kDa、最も好ましくは25kDa~250kDaである。
【0100】
ある態様では、本発明の加水分解物中のペクチン性多糖の平均アセチル化度は、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは20~110%、さらに好ましくは25~100%、最も好ましくは30~80%である。
【0101】
別の態様では、加水分解物中のペクチン性多糖の平均メチル化度は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、最も好ましくは5~30%である。
【0102】
加水分解物中のペクチン性多糖の骨格は、1以上の側鎖を含むことができる。これらの側鎖は、アラビノース残基及び/又はガラクトース残基、並びに少量のフコース、グルコース、グルクロン酸、キシロース及び/又はウロン酸のモノマーを含んでいてもよい。1以上の側鎖は、好ましくは、ガラクタン側鎖、アラビナン側鎖及びアラビノガラクタン側鎖から選択される。
【0103】
アラビナン側鎖は、1以上のα(1,5)-結合アラビノース残基を含み、かつ、RG-Iドメインのラムノース残基の4-OH位に結合している。アラビナン側鎖は、直鎖状又は分枝状であってもよい。側鎖が直鎖状である場合、側鎖はα(1,5)結合アラビノース残基から成る。アラビナン側鎖が分岐状側鎖である場合、1以上のα-アラビノース残基は、α(1,5)結合アラビノースの2-OH及び/又は3-OHに結合する。
【0104】
ガラクタン側鎖は、1以上のβ(1,4)結合ガラクトース残基を含み、かつ、RG-Iドメインのラムノース残基の4-OH位に結合している。
【0105】
アラビノガラクタン側鎖は、RG-Iドメインのラムノース残基の4-OHに結合しており、I型アラビノガラクタン(AG-I)又はII型アラビノガラクタン(AG-II)であり得る。AG-Iは、GalpのO-6位又はO-3位が置換される(1→4)-β-D-Galp骨格から成る。AG-Iは、α-L-Araf-p残基及び/又は(1→5)-α-L-Arafの短い側鎖でさらに置換される。AG-IIは、アラビノシル化された(1→6)-β-D-Galp二次鎖で修飾されたα(1→3)-β-D-Galp骨格から成る。
【0106】
アラビノース残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の、通常は0~50%、より好ましくは3~48%、最も好ましくは5~46%である。
【0107】
ガラクトース残基は、ペクチン性多糖加水分解物中に存在するペクチン性多糖に含まれるすべての単糖残基の、通常は0~50%、より好ましくは3~35%、最も好ましくは5~25%である。
【0108】
ガラクトース残基及びラムノース残基は、加水分解物中のペクチン性多糖中に、好ましくは4:1未満のモル比、より好ましくは3:1未満、最も好ましくは2:1未満で存在する。
【0109】
本発明の第3の側面は、少なくとも0.1乾燥重量%の本発明に係るペクチン性多糖加水分解物を最終製品に添加することを含む、栄養製剤、食品、サプリメント、飲料又は医薬品から選択される製品の製造方法に関する。
【0110】
ペクチン性多糖加水分解物は、最終製品に、好ましくは0.2乾燥重量%、より好ましくは0.3~95乾燥重量%、最も好ましくは1~80乾燥重量%、添加される。
【0111】
本発明の製品は、ペクチン性多糖加水分解物の製造で使用した1以上のペクチナーゼを僅かに含んでいてもよい。これらのペクチナーゼは、活性及び/又は不活性な形態で製品中に存在してもよい。
【0112】
特に好ましい態様では、ペクチン性多糖加水分解物中のペクチン性多糖は、最終生成物中に存在するペクチン性多糖の総量の少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは60重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%である。
【0113】
本発明を、以下の非限定的な実施例でさらに説明する。
【実施例
【0114】
実施例1
ジュースの圧搾で得た乾燥ニンジン搾りかす(タンパク質14~15%、炭水化物73%(糖質16~18%、食物繊維55%)、灰分3~4%、脂質6~7%)500kgを、撹拌しながら45℃の水4500Lに分散させた。混合物に5kgの酵素調製物(Pectinex(登録商標)Ultra Mash、Novozymes社、主活性はペクチンリアーゼ及びポリガラクツロナーゼ)を加え(合計5000Lの0.1%)、45℃で2時間インキュベートした。酵素の不活性化(90℃で30秒間)により、インキュベーションを終了し、次いで、デカンターで液固分離した。
【0115】
得られた液体を1μmフィルターでろ過し、凝集物/固形物を除去した。その後、10kDaのPolyEtherSulfone膜(Microdyn Nadir;UP010)で限外ろ過し、液体を元の容量の1/3に濃縮した。次いで、保持液を水で元の容量に希釈し、再び元の容量の1/3に濃縮した。
【0116】
固形分を増加させるために、得られた保持液を蒸発により濃縮し、その後、噴霧乾燥した。
【0117】
表1に、得られたペクチン性多糖加水分解物の基本組成を示す。
【0118】
【表1】
【0119】
得られた加水分解物の単糖組成を、Analytical Biochemistry Vol. 207, Issue 1, 1992, pg 176(中性糖分析)及びMol. Nutr. Food Res., Vol 61, Issue 1, 2017, 1600243(ウロン酸分析及び分子サイズ分布)に記載の分析方法で決定した。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
実施例2
乾燥リンゴ搾りかす(タンパク質6.5~8%、炭水化物71%(糖質11%、食物繊維60%)、灰分1.0~1.5%、脂肪3.0~4.0%)2kgを、25Lのステンレス製容器中で水18kgに溶解し、45℃の水浴に入れた。不溶性成分を分散状態に保つために、混合物を連続的に撹拌した。リンゴ搾りかす分散液が45℃に達した後、20gのPectinex(登録商標)Ultra Mashを添加した。インキュベーションを2時間続けた。2時間後、容器を氷浴に入れた。次いで、分散液を遠心バケットに装填し、6000gで5分間遠心分離した。上清を10μmフィルターでろ過し、25Lのステンレス製容器に集めた。容器を98℃の水浴に入れた。分散液が90℃に達した後、酵素を失活させるために混合物をさらに10分間加熱した。その後、容器を氷浴に入れ、混合物を50℃に冷却した。
【0122】
33%(m/m)NaOH溶液を加え、混合物のpHを5.0に調節した。次いで、混合物を5倍に濃縮し、50℃で10kDaのPolyEtherSulfone膜(Microdyn Nadir;UP010)有するLAB20セットアップを使用して、限外ろ過膜上で200%の水で洗浄した。限外ろ過/透析ろ過の後、実験室規模の凍結乾燥機で加水分解物を凍結乾燥した。
【0123】
加水分解物の単糖組成を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
実施例3
実施例1の乾燥ニンジン搾りかすを脱塩水(100g/l)に分散させ、3種の異なる酵素分解条件:
1.Pectinex(登録商標)Yield Mash、Novozymes社(全分散物の0.2%)
2.Pectinex(登録商標)Ultra Mash、Novozymes社(全分散物の0.2%)
3.Pectinex(登録商標)Ultra Mash、Novozymes社(全分散物の0.05%)
で実験室規模の加水分解を行った。
【0126】
90℃で10分間加熱することにより酵素分解(45℃、120分)を終了し、次いで、遠心分離し、10kDaのPolyEtherSulfone膜(Microdyn Nadir;UP010)を用いてその上清を徹底的に透析した。
【0127】
対照は、水に乾燥ニンジン搾りかすを加え(100g/l)、90℃を120分間維持し、遠心分離し、酵素分解物の分散液と同じ方法でその上清を透析することにより製造した。
【0128】
実施例4
実施例3の非加水分解ニンジンRG-I多糖(対照)及び実施例3の酵素加水分解ニンジンRG-I多糖(試料1~3)の単糖組成は、実施例1と同様の方法で決定した。
【0129】
単糖分析の結果を表4に示す。(Rha=ラムノース;GalA=ガラクツロン酸;Ara=アラビノース;Gal=ガラクトース)
【0130】
【表4】
【0131】
実施例5
実施例3の非加水分解ニンジンRG-I多糖(対照)及び実施例3の酵素加水分解ニンジンRG-I多糖(試料1~3)の免疫調節活性は、ヒト末梢血単核球(PBMC)アッセイにより決定した。
免疫調節アッセイ
免疫機能に対する多糖の効果を評価するため、それらを新たに単離した末梢血単核球(PBMC)とインキュベートした。手短にいうと、PBMCはフィコールプラーク(Amersham)を用い、血液のバフィーコートから単離した。PBMC(2×10細胞/mL)を、RPMI培地(Gibco(登録商標)RPMI 1640培地)中で、300μgのRG-I多糖と共に20時間インキュベート(5%CO、37℃)した。続いて、上清を回収し、製造者の指示に従い、ビーズアレイ(CBA human inflammation kit、BD-Bioscience)を使用し、フローサイトメーター(BD FACSCANTO II)でサイトカインを測定した。陰性対照としてRPMIを、100%として結果を正規化する参照としてLPS(大腸菌由来、Sigma L3012、5mg)を使用した。データは、LPSによって誘発された応答に対して正規化された%として表され、4種のサイトカインとその合計について、3種のドナーで平均化される。
【0132】
表5に免疫調節アッセイの結果を示す。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例6
ペクチナーゼ処理の有無にかかわらず、さまざまな原料からペクチン性多糖加水分解物を製造した。パプリカ、ニンジン搾りかす、リンゴ搾りかす、柑橘類パルプ、甜菜パルプ、ビルベリー搾りかす、赤ぶどう搾りかす、白ぶどう搾りかす、チコリーパルプ、オリーブの種子及び内果皮、及びオリーブ搾りかすを粉砕し、乾燥した粉末を脱塩水(100g/L)に分散し、全分散液に対する酵素濃度1g/100mLで、Rapidase C600(ペクチンリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンエステラーゼ、セルラーゼ及びヘミセルラーゼ活性を有する酵素ミックス、Militz, H. Wood Sci.Technol. (1993) 28: 9)を用いて、45℃で120分間、実験室規模の加水分解を行った。100℃で10分間加熱することにより酵素分解を終了し、次いで、遠心分離(18000g、10分)し、分画分子量が12~14kDaの膜(Visking、London、英国)で徹底的に透析した。
【0135】
対照は、乾燥粉末に水(100g/L)を加え、溶液を90℃で120分間維持し、遠心分離し、酵素溶解した分散液と同じ透析方法で上清を透析することにより作成した。
【0136】
得られたもの(ペクチナーゼ処理;有/無)の免疫調節活性は、実施例3に記載されているように、300μg/mLでヒト末梢血単核細胞(PBMC)アッセイにより決定した。
【0137】
表6に免疫調節アッセイの結果を示す。
【0138】
【表6】
【0139】
単糖分析の結果を表7に示す。(Rha=ラムノース;GalA=ガラクツロン酸;Ara=アラビノース;Gal=ガラクトース)
【0140】
【表7】
【0141】
実施例7
酵素Pectinex(登録商標)Ultra Mash(Novozymes社)を使用し、異なるスケール、すなわち、20リットル(試料1)、5,000リットル(試料2)及び10,000リットル(試料3)で、実施例3を繰り返した(条件:全分散液の0.1%w/w、45℃、2時間、酵素失活:90℃で10分間)。試料2及び3では、液体と固体を分けるために、遠心分離の代わりにデカンテーションを行った。上清を10kDa膜で限外ろ過し、小さな分子を除去した。
【0142】
多糖加水分解物の単糖組成を、実施例1と同様の方法で分析した。
【0143】
分析結果を表8に示す。
【0144】
【表8】
【0145】
アセチル化度及びメチル化度を、以下のように決定した:多糖試料(2~5mg)を水酸化ナトリウム(0.1M、一晩、20℃)で処理した。放出されたメタノールを、DB-WAX ETRカラム、Cryo Focus-4コールドトラップ及びFID検出器を備えたヘッドスペースGCで測定した(Huisman et al., Food Hydrocolloids, 18, 4, 2004, 665-668を変更)。
【0146】
試料を中和し(1M HCl)、放出されたアセチル基を、ガードカラム付きAminex HPX 87Hカラム及びRI検出器を備えたHPLCで定量した(Voragen et al. Food Hydrocolloids,1, 1, 1986, 65-70を変更)。エステル化度は、ウロン酸の量の割合として放出されるメタノール及び酢酸のモル量として表される。
【0147】
エステル化度の分析結果を表9に示す。
【0148】
【表9】
【0149】
実施例8
実施例7の酵素加水分解ニンジンRG-1多糖(試料1~3)の免疫調節活性は、実施例5に記載のヒト末梢血単核球(PBMC)アッセイで決定した。結果を表10に示す。
【0150】
【表10】
【0151】
実施例9
実施例7の試料2の多糖加水分解物をさらに加水分解し、続いて、高分子量画分を単離した。多糖加水分解物を脱塩水(100g/l)に溶解し、さらに酵素で加水分解した(Pectinex(登録商標) Ultra Mash、Novozymes社、45℃、14時間)。90℃で10分間加熱することにより酵素分解を終了した。
【0152】
酵素分解された多糖溶液の一部を、セミ分取サイズ排除クロマトグラフィーにかけ、70kDaを超える分子量の多糖を含む画分を得た。
【0153】
非分画多糖加水分解物及び単離した高分子画分の単糖組成を、実施例1と同様の方法で分析した。
【0154】
分析結果を表11に示す。
【0155】
【表11】
【0156】
酵素分解された多糖及びその高分子画分の免疫調節活性を、実施例5に記載の方法で決定した。結果を表12に示す。
【0157】
【表12】
【0158】
実施例10
乾燥し粉砕されたエンドウ豆の莢の粉末(Cosucra社、Warcoing、ベルギー)を脱塩水(100g/L)に分散させ、熱安定性αアミラーゼ(Megazyme)を使用して、90℃で30分間、事前の加水分解を行い、ペクチナーゼを用いてさらに加水分解を行った(2時間、45℃、0.2v/v%のPectinex(登録商標)Ultra Mash、Novozymes)。100℃で10分間加熱することにより酵素分解を終了し、次いで、遠心分離(18000g、10分)し、分画分子量が12~14kDaの膜(Visking、London、英国)で徹底的に透析した。次いで、材料を凍結乾燥した。
【0159】
粉砕された甜菜パルプ(Suiker Unie社、Dinteloord、オランダ)を、α-アミラーゼによる前処理工程を省略したことを除き、エンドウ豆の粉末と同じ方法で処理した。
【0160】
加水分解物の単糖組成を実施例1と同じ方法で決定した。結果を表13に示す。
【0161】
【表13】
【0162】
実施例11
ニンジン搾りかすを水に分散(100g/L)させることにより、ペクチン性多糖加水分解物を製造した。
試料1は、酵素を添加せずに90℃で120分間抽出した(抽出収率:4.8%)。
試料2は、1g/100mL(総分散液)の酵素濃度でRapidase C600(ペクチンリアーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンエステラーゼ、セルラーゼ及びヘミセルラーゼ活性を有する酵素混合物、Militz, H. Wood Sci. Technol. (1993) 28: 9)を添加し、45℃で120分間抽出した(抽出収率:5.6%)。
【0163】
次いで、両方の試料を遠心分離(18000g、10分)し、上清を分画分子量が12~14kDaの膜(Visking、London、英国)で徹底的に透析した。限外ろ過/透析ろ過の後、実験室規模の凍結乾燥機で酵素分解物を凍結乾燥した。
【0164】
屈折率検出器を備えたHPSECで測定した試料1及び試料2の分子サイズ分布を図3に示す。
【0165】
2つの試料の単糖組成を、実施例1に記載の方法で分析した。分析結果を表14に示す。
【0166】
【表14】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ラムノガラクツロナン-Iが強化されたペクチン性多糖加水分解物の製造方法であって、当該方法は、
・有機溶媒を使用せずに植物材料から得たペクチンに富む基質を準備する工程、
ここで、前記ペクチンに富む基質は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格を有するペクチン性多糖を少なくとも3乾燥重量%含み、前記ラムノース残基は、ガラクツロン酸残基及びラムノース残基から成る骨格に含まれ、前記ラムノース残基は、α(1→4)-ガラクツロン酸-α(1→2)-ラムノース残基に含まれる、
・前記ペクチンに富む基質を酵素処理し、ペクチン性多糖を部分的に加水分解する工程、
ここで、前記酵素処理は、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、ラムノガラクツロナン ガラクツロノヒドラーゼ(EC 3.2.1.173)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)、エキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される1以上のペクチナーゼの使用を含む、
・前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が5~100kDaの限外ろ過膜を使用して、限外ろ過を行う工程、及び
・前記限外ろ過保持液を回収する工程
を含む、方法。
[2] 前記ペクチンに富む基質は、搾りかす、搾りかすの水性抽出物、オイルケーキ、オイルケーキの水性抽出物及びその組合せから選択される、[1]に記載の方法。
[3] 前記ペクチンに富む基質は、果物、ニンジン、オリーブ、エンドウ豆、甜菜、チコリー、大豆、ヒマワリ、菜種、トウモロコシから選択される1以上の作物から得られる、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記ペクチンは、柑橘類、リンゴ、ナシ、甜菜、チコリー、ニンジンから得られる、[3]に記載の方法。
[5] 前記ペクチンに富む基質は、セルロース、ヘミセルロース及びその組合せから選択されるセルロース成分を少なくとも10~80乾燥重量%含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6] 前記基質中の前記ペクチン性多糖の少なくとも50重量%は、前記ペクチン性多糖の濃度が1g/lの場合、45℃、pH5.5の蒸留水に溶解しない、[5]に記載の方法。
[7] 前記ペクチン性多糖部分加水分解物を含む水性液体を、酵素処理後、限外ろ過前に、固液分離する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8] 前記ペクチンに富む基質は、ペクチン性多糖を少なくとも10乾燥重量%含むペクチンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[9] 前記回収された限外ろ過保持液中にガラクツロン酸残基及びラムノース残基が6:1以下のモル比で存在する、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10] 前記ペクチンに富む基質は、0.5~40乾燥重量%の前記ペクチンに富む基質を含む水性液体の形態で酵素処理される、[1]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[11] 前記酵素処理が3.0~7.5のpHで行われる、[1]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12] 前記1以上のペクチナーゼは、ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)、エンドポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)及びエキソポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67及びEC 3.2.1.82)から選択される、[1]~[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記ペクチンに富む基質は酵素処理され、ここで、前記処理は、1以上のペクチナーゼを使用する部分的な加水分解の前の、又は同時の、1以上のペクチンエステラーゼ(EC 3.1.1.11)の使用を含む、[1]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14] 前記ペクチン性多糖部分加水分解物を、分画分子量が6~50kDaの限外ろ過膜により限外ろ過する、[1]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15] 前記回収された限外ろ過保持液は、含水量が15重量%未満まで乾燥される、[1]~[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16] 前記回収された限外ろ過保持液は少なくとも20乾燥重量%のペクチン性多糖を含み、前記ペクチン性多糖は、その総単糖組成に基づき、平均で少なくとも4モル%のラムノース残基を含む、[1]~[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17] [1]~[16]のいずれか1つに記載の方法により得られるペクチン性多糖加水分解物。
[18] 前記ペクチン性多糖加水分解物中にガラクツロン酸残基及びラムノース残基が6:1以下のモル比で存在する、[17]に記載のペクチン性多糖加水分解物。
[19] 前記ペクチン性多糖加水分解物に含まれる20kDa未満の分子量の糖類が5重量%未満である、[17]又は[18]に記載のペクチン性多糖加水分解物。
[20] 前記ペクチン性多糖加水分解物中に含まれる糖に存在する単糖残基の少なくとも50モル%が、ガラクツロン酸残基、ラムノース残基、アラビノース残基及びガラクトース残基である、[17]~[19]のいずれか1つに記載のペクチン性多糖加水分解物。
[21] 栄養製剤、食品、サプリメント、飲料又は医薬品から選択される製品の製造方法であって、少なくとも0.1乾燥重量%の[17]~[20]のいずれか1つに記載のペクチン性多糖加水分解物を、最終製品に添加することを含む方法。
図1
図2
図3