(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】低温ろう付けおよび高強度材料用の複合ろう付けライナー
(51)【国際特許分類】
B23K 35/22 20060101AFI20230425BHJP
B23K 35/28 20060101ALI20230425BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20230425BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230425BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B23K35/22 310E
B23K35/28 310B
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 N
B23K1/00 S
B23K1/00 330L
B23K1/19 E
(21)【出願番号】P 2020543821
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018019120
(87)【国際公開番号】W WO2019164487
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】520119242
【氏名又は名称】アーコニック テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ARCONIC TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バオルート・レン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・ダンズ
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン・ゴインズ
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-225677(JP,A)
【文献】米国特許第08455110(US,B2)
【文献】特開2003-112286(JP,A)
【文献】国際公開第2002/090031(WO,A2)
【文献】特開2013-094837(JP,A)
【文献】特開2013-146756(JP,A)
【文献】特開2014-155955(JP,A)
【文献】特開2018-103260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
C22C 21/00-21/18
B23K 1/00
B23K 1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付けシートであって、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のコアと、
前記コアに隣接する複合ろう付けライナーであって、
4XXXアルミニウム合金層と、
前記4XXXアルミニウム合金層に接合されている低融点アルミニウム合金層と、
を含む、複合ろう付けライナーと、を含み、
前記低融点アルミニウム合金層が、前記4XXXアルミニウム合金層より低い融点を有し、
前記低融点アルミニウム合金が、4~12重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、1.0~5重量%のCu
、5~20重量%のZn
、および0.01重量%以下のMgを含む、ろう付けシート。
【請求項2】
前記4XXXアルミニウム合金層が、前記コア上に配置され、前記低融点アルミニウム合金層が、前記4XXXアルミニウム合金層上に配置されている、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項3】
前記低融点アルミニウム合金層が、前記コア上に配置され、前記4XXXアルミニウム合金層が、前記低融点アルミニウム合金層上に配置されている、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項4】
水側ライナーを含む、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項5】
前記水側ライナーが、1.0~15重量%のZnを含む、請求項4に記載のろう付けシート。
【請求項6】
前記低融点アルミニウム合金層が、560℃以下の固相線温度を有する、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項7】
前記低融点アルミニウム合金層が、4~12重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、1.0~5重量%のCu、0.1重量%以下のMn
、5~20重量%のZn
、および0.01重量%以下のMgを含む、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項8】
前記コアが、590℃を超える固相線温度を有し、前記コアが、650℃を超える液相線温度を有する、請求項1に記載のろう付けシート。
【請求項9】
前記コアが、0.10~1.2重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~3.5重量%のCu、0.10~1.8重量%のMn、0.20~1.85重量%のMg、≦0.01重量%のCr、≦0.20重量%のZnおよび≦0.20重量%のTiを含む、請求項8に記載のろう付けシート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のろう付けシートから形成された第1の部分を提供するステップと、
アルミニウム合金から形成された第2の部分を提供するステップと、
Nocolokフラックスを前記第1の部分と前記第2の部分のうちの少なくとも一方に適用して、その表面から酸化物を除去するステップと、
前記第1の部分を前記第2の部分に接触させるステップと、
制御された雰囲気内で前記第1の部分および前記第2の部分を加熱するステップと、
前記4XXXアルミニウム合金が溶融する前に、前記低融点アルミニウム合金層を溶融するステップと、
前記4XXXアルミニウム合金層を溶融し、前記低融点アルミニウム合金と前記4XXXアルミニウム合金との混合溶融合金を形成するステップと、
前記混合溶融合金から前記第1の部分と前記第2の部分との間にろう付け接合を形成するステップと、
前記混合溶融合金を冷却させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を作製するための装置および方法に関し、より具体的には、熱交換器構成要素に形成され、ろう付けによってアセンブリに一体化されるアルミニウム合金ろう付けシートから熱交換器を作製するために使用される材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を作製するための様々な装置、材料および方法が知られている。ラジエータ、コンデンサ、ヒーターコアなどのアルミニウム熱交換器は、主に制御雰囲気ろう付け(CAB)および真空ろう付けなどのろう付け技術を使用して組み立てられる。ろう付けプロセスでは、複合ろう付けシートのろう付けライナー層は、例えば炉内などの高温に曝されることによって溶融し、溶加金属として機能して、チューブとヘッダー、チューブとフィンなどなどの熱交換器構成要素間にろう付け接合部を形成する。
【0003】
低温ろう付けは、溶融温度が低いろう付け合金ライナーの単層を使用して提案されているが、これは、作業性、腐食性能、接合強度、硬度、脆性、および圧延結合の困難性に悪影響を及ぼす。既知の方法、材料および装置にもかかわらず、熱交換器を作製するための代替の方法、装置および材料は依然として望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示された主題は、低融点アルミニウム合金の層と4XXXアルミニウム合金の層を有する、2XXX、3XXX、5XXXまたは6XXXアルミニウム合金のコアと、複合ろう付けライナーと、を有するシート材料に関する。
【0005】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、4XXXアルミニウム合金より低い融点を有する。
【0006】
別の実施形態では、4XXXアルミニウム合金は、コア上に配置され、低融点アルミニウム合金は、コアの遠位にある4XXXアルミニウム合金上に配置されている。
【0007】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、コア上に配置され、4XXXアルミニウム合金は、コアの遠位にある低融点アルミニウム合金上に配置されている。
【0008】
別の実施形態では、4XXXアルミニウム合金は、4XXXアルミニウム合金の第1の層と4XXXアルミニウム合金の第2の層と、を含み、4XXXアルミニウム合金の第1の層は、コア上に配置され、低融点アルミニウム合金は、コアの遠位にある4XXXアルミニウム合金の第1の層上に配置され、4XXXアルミニウム合金の第2の層は、4XXXアルミニウム合金の第1の層より遠位にある低融点アルミニウム合金上に配置されている。
【0009】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーの遠位側のコア上に配置されたアルミニウム合金の少なくとも1つの遠位層をさらに含む。
【0010】
別の実施形態では、少なくとも1つの遠位層は、4XXXアルミニウム合金の層である。
【0011】
別の実施形態では、少なくとも1つの遠位層は、第2の複合ろう付けライナーである。
【0012】
別の実施形態では、少なくとも1つの遠位層は、水側ライナーである。
【0013】
別の実施形態では、水側ライナーは、1.0~15重量%の範囲の亜鉛を有する7XXXアルミニウム合金である。
【0014】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、510℃~560℃の範囲の融点を有する。
【0015】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、1.0~5.0重量%のCuおよび5.0~20.0重量%のZnを含む。
【0016】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、510℃~560℃の範囲の固相線と、565℃~585℃の範囲の液相線と、を有する。
【0017】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金内のSiの量は、4~9重量%の範囲である。
【0018】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金内のZnの量は、6~18重量%の範囲である。
【0019】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーは、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、≦2.0重量%のCu、1.0~6.0重量%のZnを含み、複合ろう付けライナーは、515℃~575℃の固相線と、565℃~595℃の液相線と、を有する。
【0020】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーは、10.0~10.5重量%のSi、0.15~2.0重量%のFe、≦0.7重量%のCu、≦4.0~6.0重量%のZnを含み、複合ろう付けライナーは、550℃~575℃の固相線と、575℃~590℃の液相線と、を有する。
【0021】
別の実施形態では、コアは、0.10~1.2重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~3.5重量%のCu、0.10~1.8重量%のMn、0.20~1.85重量%のMg、≦0.01重量%のCr、≦0.20重量%のZnおよび≦0.20重量%のTiを含み、コアは、>590℃の固相線と、>650℃の液相線と、を有する。
【0022】
別の実施形態では、コアは、0.10~0.90重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~2.60重量%のCu、0.10~1.55重量%のMn、0.20~1.0重量%のMg、≦0.01重量%のCr、≦0.0.20重量%のZnおよび≦0.20重量%のTiを含み、コアは、>590℃の固相線と、>650℃の液相線と、を有する。
【0023】
別の実施形態では、コアは、Si、Cu、MnおよびMgから選択される少なくとも1つの強化元素を含む。
【0024】
別の実施形態では、ろう付け前にコア内に存在するMgは、0.2~1.85重量%の量であり、Cuは、0.4~3.5重量%の量であり、Mnは、0.1~1.8重量%の量であり、Siは、0.1~1.2重量%の量である。
【0025】
別の実施形態では、複合材ろう付けライナーとコアのクラッド比率は、4~18%の範囲である。
【0026】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーの低融点アルミニウム合金の厚さと4XXXアルミニウム合金の厚さとの比率は、5~50%の範囲である。
【0027】
別の実施形態では、LPMライナーと4000ライナーは、別々に圧延結合されて調製され、次いでコアと圧延結合されるか、またはLPMライナー、4000ライナー、コアおよび/または水側ライナーが、同じプロセスで圧延結合される。
【0028】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、510~560℃の範囲で溶融が開始する温度と、565~585℃の範囲で溶融が完了する温度と、を有する。
【0029】
別の実施形態では、ろう付け前の状態で低融点アルミニウム合金中に存在するZnは、それに隣接する4XXXアルミニウム合金中に、およびろう付け後の状態でコア中に分布する。
【0030】
別の実施形態では、ろう付け後の状態での低融点アルミニウム合金の残留物は、コアのアノード型耐食層を形成する。
【0031】
別の実施形態では、耐食層は、表面とコア間とに15~150mVの範囲の腐食電位差を有する。
【0032】
別の実施形態では、シート材料は、第1の部分内に形成され、アルミニウム合金で形成された第2のシート材料をさらに含み、第1の部分は、第2の部分にろう付けされてアセンブリを形成する。
【0033】
別の実施形態では、アセンブリは、熱交換器である。
【0034】
別の実施形態では、ろう付けのための方法は、
2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のコアと、低融点アルミニウム合金の層と4XXXアルミニウム合金の層と、を有する複合ろう付けライナーと、を有するシート材料から形成された部分を提供するステップと、アルミニウム合金から形成された第2の部分を提供するステップと、第1の部分を第2の部分と接触して載置させるステップと、第1の部分と第2の部分を加熱するステップと、4XXXアルミニウム合金を溶融する前に、低融点アルミニウム合金を溶融するステップと、4XXXアルミニウム合金を溶融し、低融点アルミニウム合金と4XXXアルミニウム合金との混合溶融合金を形成するステップと、混合された溶融合金から第1の部分と第2の部分の間にろう付け接合を形成するステップと、混合された溶融合金を冷却させるステップと、を含む。
【0035】
別の実施形態では、加熱するステップは、制御された雰囲気内で行われ、Nocolokフラックスを第1の部分と第2の部分の少なくとも一方に適用して、その表面から酸化物を除去することをさらに含む。
【0036】
別の実施形態では、最大温度は、5分未満維持される。
【0037】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、560℃未満の温度で溶融を開始する。
【0038】
別の実施形態では、コアは、0.2~1.0重量%のMg、0.4~2.6重量%のCuおよび0.1~1.0重量%のSiのうちの少なくとも1つを含む組成を有する。
【0039】
別の実施形態では、拡散するステップは、Si、Cu、Znを4XXXアルミニウム合金に拡散させ、4XXXアルミニウム合金が溶融する温度を下げることを含む。
【0040】
別の実施形態では、シート材料は、低融点アルミニウム合金の層と4XXXアルミニウム合金の層とを有する、2XXX、3XXX、5XXXまたは6XXXアルミニウム合金のコアと、複合ろう付けライナーと、を含み、低融点アルミニウム合金は、4XXXアルミニウム合金より低い融点を有する。
【0041】
別の実施形態では、4XXXアルミニウム合金は、コア上に配置され、低融点アルミニウム合金は、コアの遠位にある4XXXアルミニウム合金上に配置され、または低融点アルミニウム合金は、コア上に配置され、4XXXアルミニウム合金は、コアの遠位の低融点アルミニウム合金上に配置され、または4XXXアルミニウム合金は、4XXXアルミニウム合金の第1の層と4XXXアルミニウム合金の第2の層とを含み、4XXXアルミニウム合金の第1の層は、コア上に配置され、低融点アルミニウム合金は、コアの遠位にある4XXXアルミニウム合金の第1の層上に配置され、4XXXアルミニウム合金の第2の層は、4XXXアルミニウム合金の第1の層より遠位の低融点アルミニウム合金上に配置される。
【0042】
別の実施形態では、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料は、複合材ろう付けライナーの遠位側のコア上に配置されたアルミニウム合金の少なくとも1つの遠位層をさらに含み、および/または少なくとも1つの遠位層は、4XXXアルミニウム合金の層であり、および/または少なくとも1つの遠位層は、第2の複合ろう付けライナーであり、および/または少なくとも1つの遠位層は、水側ライナーであり、および/または水側ライナーは、1.0~15重量%の範囲の亜鉛を含む7XXXアルミニウム合金である。
【0043】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、510℃~560℃の範囲の融点を有する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0044】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、1.0~5.0重量%のCuおよび5.0~20.0重量%のZnおよび/または低融点アルミニウム合金は、510℃~560℃の範囲の固相線と、565℃~585℃の液相線と、を有し、および/または低融点アルミニウム合金中のSiの量は、4~9重量%の範囲であり、および/または低融点アルミニウム合金中のZnの量は、6~18重量%の範囲である、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0045】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーは、4.0~12.0重量%Si、0.1~1.0重量%Fe、≦2.0重量%Cu、1.0~6.0重量%Znを含み、複合ろう付けライナーは、515℃~575℃の固相線と、565℃~595℃の液相線と、を有し、または複合ろう付けライナーは、10.0~10.5重量%Si、0.15~2.0重量%Fe、≦0.7重量%Cu、≦4.0~6.0重量%Znを含み、複合ろう付けライナーは、550℃~575℃の固相線および575℃~590℃の液相線を有する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0046】
別の実施形態では、コアは、0.10~1.2重量%Si、0.15~0.5重量%Fe、0.40~3.5重量%%Cu、0.10~1.8重量%Mn、0.20~1.85重量%Mg、≦0.01重量%Cr、≦0.20重量%Znおよび≦0.20重量%Tiを含み、コアは、>590℃の固相線と、>650℃の液相線と、を有し、コアは、0.10~0.90重量%Si、0.15~0.5重量%Fe、0.40~2.60重量%Cu、0.10~1.55重量%Mn、0.20~1.0重量%Mg、≦0.01重量%Cr、≦0.20重量%Znおよび≦0.20重量%%Tiを含み、コアは、>590℃の固相線と、>650℃の液相線と、を有する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0047】
別の実施形態では、コアは、Si、Cu、MnおよびMgから選択される少なくとも1つの強化元素を含み、および/またはろう付け前にコア内に存在するMg、は、0.2~1.85重量%の量であり、Cuは、0.4~3.5重量%の量であり、Mnは、0.1~1.8重量%の量であり、Siは、0.1~1.2重量%の量である、前述の実施形態のいずれかのシート材料。
【0048】
別の実施形態では、複合材ろう付けライナーとコアのクラッド比率は、4~18%の範囲であり、および/または
複合ろう付けライナーの低融点アルミニウム合金の厚さと4XXXアルミニウム合金の厚さとの比率は、5~50%の範囲であり、および/または
LPMライナーと4000ライナーは、別々に圧延結合されて調製され、次いでコアと圧延結合されるか、またはLPMライナー、4000ライナー、コアおよび/または水側ライナーは、同じプロセスで圧延結合される、前述の実施形態のいずれかのシート材料。
【0049】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金は、510~560℃の範囲で溶融が開始する温度と、565~585℃の範囲で溶融が完了する温度と、を有する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0050】
別の実施形態では、ろう付け前の状態で低融点アルミニウム合金に存在するZnは、隣接する4XXXアルミニウム合金と、ろう付け後の状態でコアに分布し、ろう付け後の状態での低融点アルミニウム合金の残留物は、コアのアノード型腐食耐性層を形成し、および/または耐食層は、表面とコアとの間に15~150mVの範囲の腐食電位差を有する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0051】
別の実施形態では、シート材料は、第1の部分内に形成され、アルミニウム合金で形成された第2のシート材料をさらに含み、第1の部分は、第2の部分にろう付けされて熱交換器を形成する、前述の実施形態のいずれかに記載のシート材料。
【0052】
別の実施形態では、ろう付けのための方法であって、
方法は、2XXX、3XXX、5XXX、または6XXXアルミニウム合金のコアと、低融点アルミニウム合金の層と4XXXアルミニウム合金の層と、を有する複合ろう付けライナーと、を有するシート材料から形成された部分を提供するステップと、アルミニウム合金から形成された第2の部分を提供するステップと、第1の部分を第2の部分と接触させるステップと、第1の部分と第2の部分部分を加熱するステップと、4XXXアルミニウム合金を溶融する前に、低融点アルミニウム合金を溶融するステップと、4XXXアルミニウム合金を溶融し、低融点アルミニウム合金と4XXXアルミニウム合金との混合溶融合金を形成するステップと、混合された溶融合金から第1の部分と第2の部分の間にろう付け接合を形成するステップと、混合された溶融合金を冷却させるステップと、を含む。
【0053】
別の実施形態では、加熱するステップは、制御された雰囲気内で行われ、Nocolokフラックスを第1の部分と第2の部分の少なくとも一方に適用して、その表面から酸化物を除去することをさらに含む、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0054】
別の実施形態では、最大温度は、5分未満維持され、および/または低融点アルミニウム合金は、560℃未満の温度で溶融を開始する、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0055】
別の実施形態では、コアは、0.2~1.0重量%のMg、0.4~2.6重量%のCuおよび0.1~1.0重量%のSiのうちの少なくとも1つを含む組成を有し、拡散するステップは、Si、Cu、Znを4XXXアルミニウム合金に拡散し、4XXXアルミニウム合金が溶融する温度を下げることを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0056】
本開示をより完全に理解するために、添付の図面と併せて考慮される例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施形態によるろう付けシートの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の実施形態によるろう付けシートの概略図である。
【
図1C】
図1Cは、本開示の別の実施形態によるろう付けシートの概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の実施形態によるろう付けシートの断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の実施形態によるろう付けシートの断面図である。
【
図3】
図3Aは、本開示の実施形態による低融点合金に対する示差走査熱量測定(DSC)試験のグラフであり、
図3Bは、本開示の実施形態による低融点合金に対する示差走査熱量測定(DSC)試験のグラフである。
【
図4】
図4Aは、本開示の実施形態による、低融点合金を有する4層ろう付けシートに対する示差走査熱量測定(DSC)試験のグラフであり、
図4Bは、本開示の実施形態による、低融点合金を有する4層ろう付けシートに対する示差走査熱量測定(DSC)試験のグラフである。
【
図5】
図5Aは、ろう付け前の、本開示の実施形態による、低融点合金を有する複合4層ろう付けシート内の元素分布のグラフであり、
図5Bは、ろう付け後の、
図5Aの、複合4層ろう付けシート内の元素分布のグラフである。
【
図6】
図6は、ろう付け後の、
図5Bのろう付けシート中の元素Cu、ZnおよびMgの分布のグラフである。
【
図7】
図7は、
図6の複合ろう付けシート内の腐食電位のグラフである。
【
図8A】
図8Aは、本開示の実施形態による、ろう付けシートをろう付けすることによって形成されたろう付け接合部の断面図である。
【
図8B】
図8Bは、本開示の実施形態による、ろう付けシートをろう付けすることによって形成されたろう付け接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
熱交換器構造は、少なくとも2つの層を持つアルミニウム合金シート材料、すなわち、例えば、ベース合金としての2000、3000、5000または6000シリーズのアルミニウムのコア層と、例えば、4000シリーズのベース合金から形成されたろう付け層/ろう付けライナーと、から形成され得る。この種類の材料は、ろう付けシートとして記述され得る。ろう付けによって熱交換器構造をアセンブリする前に、ろう付け層の表面は、例えば、製作プロセスおよび大気への露出を通じて、Al酸化物、Mg酸化物などの酸化物膜の層を発達させている可能性がある。ろう付けプロセスの前または最中に酸化物層が除去される溶加金属が接合される表面を「濡らし」、ブリッジして、接合された要素間の酸化物バリアが接合部を汚染し、傷つけることなく、妥良好な接合部を生成することを保証する。本開示は、真空ろう付けプロセスにおいて、望ましくない酸化物層が、ろう付けライナーまたはろう付けシートのコアのいずれかに存在するMgの蒸発によって破壊されることを認識する。Mgは、材料の強度を高めアルミニウム合金のろう付けシートの重要な合金元素であり、そのため、真空ろう付けプロセスでは、ろう付けシート内のMgの存在を利用して、構成要素表面の酸化物を除去し、得られるろう付け熱交換器アセンブリを強化することができる。
【0059】
制御雰囲気ろう付け(CAB)プロセスでは、周囲の酸素をほとんど排除する不活性ガス雰囲気でろう付けが行われるため、ろう付けプロセス中に形成される酸化物が減量される。ろう付けシート上に存在する既存の酸化物膜(複数可)は、Nocolokフラックスなどのフラックスによって除去される。フラックスは、ろう付けシートの表面上の酸化物膜を溶解し、接合される表面の湿潤性を促進することができる。Nocolokフラックスは、酸化Mgの溶解性を制限し、酸化Mgを除去する能力を限定する。さらに、ろう付けプロセス中に表面に拡散したMgは、フラックス内のFおよびKと反応し、MgF2、KMgF3、およびK2MgF4を形成してフラックスの組成を変化させ、フラックスの融点を上げ、酸化物膜の除去に悪影響を及ぼす。6063などのMgを含有するアルミニウム合金のためのCs含有Nocolokフラックスが開発された。Csフラックスは、MgO皮膜を効果的に破壊および除去できるため、Mg含有ろう付けシートの良好なろう付け性を確保することができるが、Nocolokフラックスよりも約3倍高価であるため、熱交換器メーカーによればNocolokよりも好ましくない。結果として、Mg含有アルミニウム合金は、CABプロセスによって作製された熱交換器を作製するために広く使用されていない。
【0060】
本開示の態様は、CABプロセス中のNocolokフラックスを使用してMg含有アルミニウム合金をろう付けアセンブルすることを可能にする複合ろう付ライナー(CBL)である。より具体的には、CBLは、4XXXろう付けライナーに結合された低融点(LMP)アルミニウム合金の層を含む。CABの加熱を受けた時、LMP層は、ろう付けプロセス中に4XXXのろう付けライナーが溶融する前に低温で溶融する。その後、LMP層から得られた液体金属は、LMP合金および隣接する4XXXライナーのSi拡散を加速することができる。さらに、LMP合金から4XXXろう付けライナーに拡散したCuおよびZnなどの合金元素は、4XXXライナーの融点を低下させることができる。これらの要因は両方とも、4XXXろう付けライナーの溶加金属の溶融と流動を高速化できるため、現在広く使用されているCABろう付けプロセスの577℃~613℃の従来の温度範囲と比較して、ろう付けプロセスをより低い温度範囲、例えば約565℃~590℃ですばやく完了することができる。一実施形態では、本開示による低下した温度範囲の上限は、577℃未満である。LMPはまた、本開示の実施形態に従って、ろう付けに必要な時間の長さを、例えば、従来のプロセスの場合の約25~45分から、約15~30分の短縮時間に短縮する有利な影響を与える。一実施形態では、本開示によるろう付けの時間長さは、25分未満である。低温範囲での迅速なろう付けプロセスは、接合されるろう付けシート構成要素の表面へのMg拡散を低減することができ、ろう付け性に対するMgの悪影響を、すなわちMgO形成およびNocolokフラックスとMgの反応を低減することにより、低減することができる。したがって、本開示は、CABプロセスのNocolokフラックスを使用して、ろう付けされる、Mg含有アルミニウム合金から作製された熱交換器構成要素を可能にする。さらに、低いろう付け温度で行われるろう付けプロセスは、コアの固相線温度を、例えば溶融せずに従来のCABろう付けに必要な温度に逆らわない<590℃のレベルに下げる、Si、Cuなどの他の合金元素をコア合金で使用できるようにする。したがって、本開示は、高強度ろう付けシート材料から作製された構成要素、例えば、チューブ、タンクおよび/または熱交換器のフィンのCABろう付けを可能にする。
【0061】
本開示に従ってCABによって接合されることを可能にする新しい材料は、例えば、0.3~1.0重量%、さらに高くは例えば1.85重量%までの範囲の相当量のマグネシウムを含有するものなどの、例えばコア用の高強度材料を含むであろう。高強度材料は、より薄いゲージろう付けシートを使用し、より軽く、高性能の熱交換器をもたらす。本開示に開示されるCBL組成およびクラッド比率は、LMP層が溶融して4XXXろう付け層と混合した後、例えば自動車ラジエータなどとしての使用中にコアの腐食を防止する保護層を形成できるように選択することができる。本開示によるろう付けシートはまた、熱交換器メーカーが低温のろう付けプロセスを使用することを可能にし、これはより簡単であり、エネルギーおよび製造コストを節約する。
【0062】
図1Aは、2000、3000、5000または6000シリーズのアルミニウム合金の基本組成を有するコア12、4XXX(4000)シリーズのアルミニウム合金およびLMP(低融点)層(ライナー)16の基本組成を有するろう付けライナー(層)14を有するろう付けシート材料10を示す。ろう付けライナー14とLMP層16との組み合わせは、複合ろう付けライナー(CBL)18の構成要素として特定され得る。
図1Aでは、LMP層16は、コア12の第1の側にある4XXXろう付けライナー14上に配置された外側ライナー/層である。コア12の第2の側には、別のCBL18、単一のろう付けライナー、または水側ライナーが存在してもよく、または用途に応じてライナーが存在しない場合がある。水側ライナーは、Znを添加した、例えば1.0~15.0重量%のZnを添加した7000合金または3000シリーズ合金であり得る。
【0063】
図1Bは、
図1Aのろう付けシート材料10のような、コア22およびろう付けライナー24を有するが、LMP層26がコア22と4XXXろう付けライナー24との間に位置決めされ、その結果、
図1AのCBL18の向きとは逆の向きのCBL28が得られるろう付けシート材料20を示す。CBL28の配向および位置によって、LMP層26は、4XXXろう付けライナー24とコア22との間のインターライナーとして記述され得る。同様に、コア22の第2の側、別のCBL28、単一のろう付けライナー、または水側ライナーが存在してもよく、または用途に応じてライナーが存在する場合がある。
【0064】
図1Cは、
図1Aおよび1Bのろう付けシート材料10および20と同様の、ろう付けシート材料30を示し、コア32、および2つの部分ろう付けライナー34A、34Bを有し、LMP層36は、2つのろう付けライナー34A、34Bの部分間に配置され、その結果CBL38は、3つの層を有する。破線で示される任意の層39は、CBL38と反対側のコア32上に提供されてもよく、CBL38、28、18などの別のCBL、腐食保護用のアノード型層、CBL18、28、38によって覆われたアノード型層であり得、または用途によっては、存在しない場合もある(コアのこの側にクラッド層がない)。
【0065】
層16、26および/または36で使用されるようなLMP合金の例は、この例では4000シリーズのろう付けライナー14、24、34A、34B、4047合金と組み合わされ、残部がアルミニウムである重量パーセントで表現される表1に示すように試験された。表示された固相線および液相線は、表1のそれぞれの合金の組成に基づいて計算された。
【0066】
【0067】
表1のLMP層組成物のすべては、低温での複合ろう付けライナー(CBL)18、28、38の溶融を開始する低固相線および液相線を有する。LMP層16、26、36の液化金属は、Si拡散および溶融を加速することができる。LMP層の合金元素16、26、36、これに限定されないが、ZnおよびCuは、隣接する4XXXライナー14、24、34A、34B内に拡散することができ、その結果複合材ろう付けライナーCBL18、28、38全体が、従来の4XXXろう付けライナーよりも低い温度ですばやく溶融する。LMP層16、26、36は、圧延プロセスでろう付け層14、24、34A、34Bと同様に良好な加工性と同様の金属流れを備えている必要がある。さらに、複合材ろう付けライナー(CBL)のクラッド比率は、溶融後、CBL18、28、38(LMPライナーと4XXXライナーの混合物)の合成により、4XXXライナーのみで形成されたろう付け接合部に匹敵する優れた強度と腐食特性を有する良好なろう付け接合が形成されるように選択される。本開示によれば、ろう付け後に残留する複合ライナー(CBL)残留物は、コアに対する腐食防止を提供し、熱交換器の良好な耐用年数を確保する。
【0068】
一実施形態では、LMP層は、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、≦5.0重量%のCu、≦0.1重量%のMn、≦0.01重量%のCr、5.0~20.0重量%Znおよび≦0.02重量%Tiの組成、および510℃~560℃の範囲の固相線と、565℃~585℃の液相線と、を有し得る。
【0069】
別の実施形態では、低融点アルミニウム合金内のSiの量は、4~9重量%の範囲である。別の実施形態では、低融点アルミニウム合金内のZnの量は、6~18重量%の範囲である。
【0070】
表2は、重量パーセントで表され、残部がアルミニウムである4047ライナーを有する表1)からのLMP合金L1およびL2の組み合わせから得られる2つの例示的な組成CBL1およびCBL2を示す。組成CBL1およびCBL2は、拡散を考慮せずに計算に基づいて決定され、固相線および液相線は、鋳造時の組成に基づいて計算される。
【0071】
【0072】
一実施形態では、CBLは、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、≦2.0重量%のCu、≦0.1重量%のMn、1.0~6.0重量%のZnを含む組成を有し得、複合ろう付けライナーは、515℃~575℃の固相線と、565℃~595℃の液相線と、を有する。
【0073】
別の実施形態では、複合ろう付けライナーは、10.0~10.5重量%のSi、0.15~1.0重量%のFe、≦1.0重量%のCu、≦0.1重量%のMn、4.0~6.0重量%のZnを有し、複合ろう付けライナーは、550℃~575℃の固相線と、575℃~590℃の液相線と、を有する。
【0074】
図2Aおよび2Bは、それぞれ
図1Bおよび1Aに示されるろう付けシート20および10の複合材サンプルの微細構造を示し、
図2AはインターライナーとしてのLMP層26を示し、
図2Bは、外側ライナーとしてのLMP層16を示す。サンプルは、商業製造の製作プロセスと類似した処理パラメータを使用して、ラボスケールの高温圧延および低温圧延プロセスで行われた。LMP層16および26、ろう付けライナー14および24およびコア12、22は、欠陥なしにそれぞれの隣接する薄膜と良く結合されている。
【0075】
本開示によるコア合金の例示的な組成物の固相線および液相を試験し、結果を表3に示す。コア合金、例えば、C3、C4、およびC10、の一部は、Nocolokフラックスを用いたCABプロセスにおいて問題となるであろう高レベルのMgを含む。コア合金組成物の一部には、低い融点を有し、かつCABプロセス中の溶融を開始することが予想されるであろうCuおよびMg、例えば、C3およびC10を含有する。
【0076】
【0077】
一実施形態では、コアは、0.10~1.2重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~3.5重量%のCu、0.10~1.8重量%のMn、0.20~1.85重量%のMg、≦0.01重量%のCr、≦0.2重量%のZnおよび≦0.2重量%のTiを有する組成を有し、コアは、>590℃の固相線と、>650℃の液相線と、を有する。
【0078】
別の実施形態では、コアは、0.10~1.0重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~3.0重量%のCu、0.10~1.7重量%のMn、0.20~1.5重量%のMg、≦0.2重量%のZn、および≦0.2重量%のTiを含み、コアは、>590℃の固相線と、>650Cの液相線と、を有する。
【0079】
一実施形態では、コアは、Mg、Cu、Si、Mnから選択される少なくとも1つの強化元素を有する。
【0080】
別の実施形態では、Mgは、コア中に0.2~0.8重量%の量で存在し、Cuは、1.5~2.5重量%の量で、Siは、0.2~1.0の量である
図3Aおよび3Bは、グラフ50、52をそれぞれ示し、2つの低融点アルミニウム合金(LMP)、すなわち合金L1およびL2の融点を測定するために行われた示差走査熱量測定(DSC)試験の結果を表1にそれぞれ示す。
図3A、3B、4A、4B、5Aおよび5Bの加熱においてグラフ化されたDSC試験では、1分あたり20℃の速度で加熱を行った。
図3Aのグラフ50は、合金L1が溶融していることを示す928.4F(497C)で開始された熱流を示す。熱吸収は、1001.1F(538C)でピークに達し、大量のLMP金属溶融を示している。その後、熱吸収は減少し始めたが、その後、残りのAl-Si共晶溶融が開始する可能性が1069F(576C)の別のピークを上昇させ始めた。溶融は、1089.6F(588C)で完了した。
【0081】
図3Bのグラフ52は、合金L2の溶融が945.4F(507C)で開始され、1012.7F(545C)でピークに達したことを示している。金属の溶融が減速し、その後、Si共晶の溶融が開始する1068F(575.5C)で第2のピークを開始した。1109.2F(598C)で完了した複合ろう付けライナーの溶融。
【0082】
表4は、4層材料サンプルのDSC試験結果を示す。サンプルAは、コアC3(表3)の一側面上のCBL1(表2)および他方側の4047を有していた。サンプルBは、コアの一側面上のCBL2(表2)および他方側の4047を有していた。CBL1およびCBL2の両方と4047層とのクラッド比率は、15%であり、コアは表3の合金C3であった。サンプルAおよびBの積層構造および組成物を、重量パーセント、アルミニウム残部で表現して表4に示す。
【0083】
【0084】
表4のサンプルAおよびBは、ライナーとコアを一緒にアセンブリし、熱間圧延温度に再加熱し、450~515Cの範囲の温度での熱間圧延し、アニーリングしてから最終ゲージまで圧延するかまたは最終アニールのために薄いゲージに冷間圧延することによって調製された。
【0085】
図4Aは、グラフ54のサンプルAのDSC結果を示しており、CBL1を含むサンプルAの第1の溶融(インターライナー)は、1026.1F(552.3C)で開始し、第2の溶融は、約1062.1F(572.2C)で開始した。1つの側面上にCBL1、他の側面に4047を含むサンプルAのろう付けライナー溶融は、1104.4F(598C)で完了した。
【0086】
図4Bは、グラフ56のサンプルBのDSC結果を示しており、第1の溶融(インターライナー)は、1037.7F(559C)で開始し、第2の溶融は、約1060.9F(571.6C)で開始した。1106.2F(596.8C)で完了したCBLおよび4047の両方を含むサンプルBのろうライナーの溶融。
【0087】
グラフ54と56に示すように、複合材のLMP層は、製作プロセスとろう付けプロセスの両方の間、Cu、Znなどの合金元素の拡散に関連する組成変化により、モノリシック合金よりも高い温度で溶融を開始する。上記のように、552~559Cで開始された液体金属の溶融は、4047ろう付けライナーでのSiの溶解を加速し、4047ライナーに拡散したCu/Znは、ろう付けライナーがより低い温度で溶融を開始することができるようにライナーの融点を低減する。
【0088】
図5Aは、表4のサンプルAなどの層:LMP60、ろう付けライナー62、コア64、およびクラッドろう付けシート68のろう付けライナー66における層内のろう付け前の合金元素分布のグラフ58を示す。LMP60およびろう付けライナー62は、結果として複合ろう付けライナーCBL18(
図1A)をもたらし、低融点ライナー60は、外側ライナーである。CuレベルおよびZnレベルは、LMPライナー60の薄層で高い。
【0089】
ろう付け後のサンプル(表4のサンプルB)の合金化元素分布を
図5Bに示しており、層72、74、76および78は、
図5Aの層LMP60、ろう付けライナーがー62、コア64およびろう付けライナー66に対応するが、ただしろう付け後の状態である。拡散は、ろう付け熱サイクルでの固相拡散に基づいてシミュレーションされ、ZnおよびCuレベルは、ろう付け前の状態での初期レベルよりも大幅に低かった。これらのCuおよびZnレベルは、許容可能なレベルの腐食耐性を示唆している。実際のろう付け後のサンプルの合金元素分布は、シミュレーションと良く一致した。5Aの表面では、Znは、15%およびCuは、約2.35%であるが、5Bの表面上では、Znは、2.3~2.4%であり、Cuは、0.65~0.7%である。
【0090】
図6は、ろう付けシート90の層CBL84、コア86および内側ろう付けライナー88内のろう付け後のCu、MgおよびZn分布のグラフ82を示し、LMPライナーの組成は、表1のL2であり、表2の合金C3が、4047合金の外側クラッドライナーを有するコア合金として使用された。隣接するろう付けシート90間に形成されたろう付け接合部の2つの側面上の場所を試験した(
図6のキーでは-1および-5として指定)。
【0091】
図7は、4000シリーズ合金の外側ライナー、コア100および外側ライナー102としてLMP層96および4000シリーズ層98(表2のCBL2を形成する)を有する複合ろう付けシート材料104における腐食電位分布のグラフ94を示す。ろう付け後の材料104の腐食性能を評価するために、ろう付け後の材料の合金元素分布に基づいて腐食電位がシミュレーションされた。サンプルの表面の腐食電位は、約-900mvの腐食電位を有し、これは、コアに対してアノード型であるため、コアに良好な腐食保護を提供することができる。
【0092】
本開示は、4343、4045、4047など、正常な4XXXろう付けライナー合金で結合されたLMPアルミニウム合金の薄層を有するCBLとして知られる新規材料を開示している。ろう付けプロセスの早期段階で、LMPアルミニウムライナーが溶融開始する前に、CuおよびZnなどの合金元素が隣接する4XXXろう付けライナー内に拡散し、これは4XXXろう付けライナー合金の融点を低下させる。低融解合金層が、例えば、おおよそ510℃で溶融を開始するとき、液体金属中のSi拡散が固体金属よりもずっと速くなるため、液体金属は、Si共晶溶融を加速することができる。このようにして4XXXろう付けライナーは、その共晶温度、すなわち577℃より低い温度で迅速に溶融することができる。
【0093】
本開示によれば、ろう付けプロセスは、低温でサンプルをろう付けするために開発された。サンプルは、約8~12分の短いろう付けサイクルに供され、560C~575+/-5Cの温度まで加熱された。短いろう付けサイクルでは、コアからろう付け表面へのMgの拡散が低下し、これが酸化物の形成を減少させ、またフラックス中のMgとF/Kとの間の反応を減少させる。高温でのろう付けおよび/または長時間のMg拡散の減少は、高いMg含有コア合金のためのNocolokフラックスの動作を促進し、ろう付け表面に存在する表面酸化物の効果的な溶解および除去を可能にする。
【0094】
図8Aは、本開示によるろう付けシート材料112と非クラッドフィン114との間のろう付け接合部110を示す。ろう付けシート112は、表1の合金L1の層をインターライナーとして有し、4047でクラッド化されたCBL118で、コア116の第1の側に、総クラッド率15%で形成された。コア合金は、表2の合金C3であった。4047合金のろう付けライナー120を、コアの第2の側に15%のクラッド比率でクラッド化した。波型の非クラッドフィン114は、ろう付けシート112の両側でアセンブルされた(
図8Aでは1つの側のみが見えている)。フィンを有するサンプルを、Nocolokフラックスでフラックス化し、CABプロセスで、575℃でろう付けした。ろう付け接合部は、示されるように、複合ろう付けライナーCBL118側に形成されたが、4047ライナーでのみクラッド化されたコア116(図示せず)の反対側には形成されていなかった。
【0095】
図8Bは、本開示によるろう付けシート材料132と非クラッドフィン134との間のろう付け接合部130を示す。ろう付けシート132は、表1の合金L2の層を有するCBL138で形成され、コア136の第1の側に、4047のろう付けライナーの上にクラッド化された外側ライナーとして、15%の総クラッド比率で形成された。コア合金は、表2の合金C3であった。4047合金のろう付けライナー140を、コア136の第2の側に15%のクラッド比率でクラッド化した。波型の非クラッドフィン134は、ろう付けシート132の両側でアセンブルされた(
図8Bでは1つの側のみが見えている)。フィン134を有するサンプルを、Nocolokフラックスでフラックス化し、CABプロセスで、575°Cでろう付けした。ろう付け接合部は、示されるように、複合ろう付けライナーCBL138側に形成されたが、4047ライナーでのみクラッド化されたコア136(図示せず)の反対側には形成されていなかった。CBL、例えば、118、138は、通常の圧延プロセスを使用して他のライナーとコアと共に、熱間圧延プロセスで一緒に圧延結合され得る。また、これは、LMPアルミニウム合金粉末の層を4XXXろう付けライナーにコーティングするコーティング技術、LMPアルミニウム合金の層を4XXXろう付けライナーに溶射する溶射技術、などを含むがこれらに限定されない他の技術やプロセスによって形成することもできる。
【0096】
本開示によるサンプル材料は、表5に示すように、高いろう付け後強度を示した。サンプルを0.20mm以下のゲージで6%~12重量%の範囲の高いZnを含有する10%の水側ライナーで作製した。それらはH14またはH24テンパーのいずれかで調製された。表5のブラケットサンプルは、自然時効または人工的時効のいずれかであった。
【0097】
【0098】
LMP、CBLおよびコアに対する上述の組成範囲は、すべての中間値を含む。例えば、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、1.0~5.0重量%のCu、≦0.1重量%のMnおよび5.0~20.0重量%Znの組成を有するLMPの実施形態の組成範囲には、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7など0.1の増分で最大12.0までの量およびすべての中間値のSiと、0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0~5.0で、0.1重量%の増分または任意の中間値の量のFeと、1.0~5.0で0.5重量%の増分または任意の中間値の量のCuと、0.0~0.1で0.01重量%の増分または任意の中間値の量のMnと、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5または20.0重量%または任意の中間値の量のZnと、を含むであろう。
【0099】
本開示による代替実施形態のさらなる例では、4.0~12.0重量%のSi、0.1~1.0重量%のFe、≦2.0重量%のCu、≦0.1重量%のMn、1.0~6.0重量%のZnの組成を持つCBLの実施形態の組成範囲は、前の段落のように、例えば、指定された範囲全体で各元素について0.01重量%ずつ変化する、すべての増分中間値を含むであろう。
【0100】
本開示による代替実施形態のさらなる例では、0.10~1.2重量%のSi、0.15~0.5重量%のFe、0.40~3.5重量%のCu、0.10~1.8重量%のMn、0.20~1.85重量%のMg、≦0.2重量%のZnおよび≦0.2重量%のTiの組成を持つコアの実施形態の組成範囲は、前の段落のように、例えば、範囲全体で各元素についてすべての中間値を含むであろう。
【0101】
本開示は、現在の業界で広く使用されている温度より低い温度でろう付け熱交換器アセンブリを可能にする複合ろう付けライナーを記述する。この低温ろう付けにより、Si、Cu、Mgなどの特性強化合金元素の高レベルの付加が可能となり、融点の低下が可能になる。さらに、これは、ろう付け熱交換器アセンブリにおけるエネルギー消費も低減する。
【0102】
別の実施形態では、本開示は、高い強度を達成するために、制御された雰囲気ろう付け(CAB)プロセスにおいて、Nocolokフラックスなどの通常のフラックスを使用して高いMgを含有するろう付けシート製品をろう付けすることを可能にする。別の実施形態では、複合ろう付けライナーの組成物およびクラッド比率を、優れた耐食性特性を持つ材料を達成するように設計することができる。
【0103】
本開示は、元素の周期表に現れる元素の標準的な略語、例えば、Mg(マグネシウム)、O(酸素)、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、F(フッ素)、K(カリウム)、Cs(セシウム)などを利用する。
【0104】
図は、本明細書の一部を構成し、本開示の例示的な実施形態を含み、様々な対象物およびその特徴を例示する。加えて、図に示される任意の測定値、仕様等は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。従って、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、本発明を様々に用いることを当業者に教示するための単に代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0105】
開示された利点および改良点の中で、本発明の他の目的および利点は、添付図面と共に以下の説明から明らかになるであろう。本発明の詳細な実施形態は、本明細書に開示されている。しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で具現化され得る本発明を単に例示するものであることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態に関連して得られる各実施例は例示的であり、限定的ではないことが意図される。
【0106】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除いて、本明細書に明示的に関連する意味を取る。本明細書で使用する句「一実施形態では」および「いくつかの実施形態では」は、必ずしも同じ実施形態を指さないが、それを指す場合もある。さらに、本明細書で使用する句「別の実施形態では」および「いくつかの別の実施形態では」は、必ずしも異なる実施形態を指さないが、それを指す場合もある。従って、下記に説明するように、本発明の様々な実施形態を、本発明の主題の範囲と趣旨から逸脱することなく、容易に組合せてもよい。
【0107】
加えて、本明細書で使用される場合、「または」という用語は包括的な「または」であり、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、「および/または」と同等である。「に基づく」という用語は排他的ではなく、文脈から判断して明らかに他の意味に解釈すべき場合を除き、記述されていない追加的な要因に基づくことができる。加えて、本明細書を通して、「a」、「an」、および「the」の意味は複数の参照を含む。「中に(in)」の意味は、「中に(in)」および「上に(on)」を含む。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものにすぎず、限定的なものではなく、多くの変更が当業者には明らかになり得ることを理解されたい。さらになお、様々なステップを任意の所望の順序で実行することができる(および任意の所望のステップを追加することができ、および/または任意の所望のステップを排除することができる)。そのような変形および変更の全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
10、20、30 ろう付けシート材料
12、22、32 コア
14、24、34A、34B ろう付けライナー(層)
16、26、36 LMP(低融点)層
18、28、38 複合ろう付けライナー(CBL)
110、130 ろう付け接合部
112、132 ろう付けシート材料
114、134 非クラッドフィン
116、136 コア
118、138 CBL
120、140 ろう付けライナー