(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20230425BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20230425BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01R31/08 Z
H01R12/71
H01R13/46 B
(21)【出願番号】P 2021085495
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 修司
(72)【発明者】
【氏名】奥田 定治
(72)【発明者】
【氏名】山口 隼人
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-229471(JP,A)
【文献】特公平7-50969(JP,B2)
【文献】実開昭54-158289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/08
H01R 12/71-12/73
H01R 13/46
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥壁と該奥壁から前方に延出するフード壁とで相手側コネクタの嵌合空間を画成するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングが着脱可能に装着される筐体本体に固定され、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記コネクタハウジングの奥壁の背後に部品スペースを介して位置する回路基板と、
前記回路基板の回路導体に基端が接合され、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、先端の端子部が前記コネクタハウジングの奥壁を貫通して前記嵌合空間に突出しコネクタ端子となる独立端子と、
基端が前記回路基板の回路導体に接合された中継端子と、
前記コネクタハウジングの奥壁に固定されたブリッジ部を有すると共に、該ブリッジ部により互いに導通された状態で該ブリッジ部から前方に延出して前記コネクタハウジングの嵌合空間に突出しコネクタ端子となる複数の端子部、および、前記ブリッジ部から前記コネクタハウジングの奥壁の背後に延出し、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、弾性変形部を介して前記中継端子に弾性的に接触導通する1つの接触導通片を有するジョイント端子と、
を備えることを特徴とするジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記独立端子の1つが前記中継端子を兼ね、前記ジョイント端子の接触導通片に前記弾性変形部が一体に設けられており、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記接触導通片の弾性変形部が前記独立端子の1つに弾性的に接触導通する、
ことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記中継端子の先端が、前記弾性変形部を有し前記コネクタハウジングの奥壁の背後に位置する挟持型端子部として構成されており、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記ジョイント端子の接触導通片が、前記挟持型端子部の弾性変形部により弾性的に挟持されて、前記接触導通片と前記中継端子とが接触導通する、
ことを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記筐体本体に着脱自在に装着される筐体カバーに、前記コネクタハウジングが一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐回路を構成するためのジョイントコネクタに係り、特に、相手側コネクタが嵌合されることで、当該コネクタに接続された複数の電線を、相互に導通させながら、電子回路ユニット内の回路基板に電気接続させる機能を有したジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載される電子回路ユニットの筐体に、外部電線との接続用のコネクタが直接設けられるケースがある。これらのコネクタの一つとして、オス型の相手側コネクタが嵌合された際に、当該コネクタに接続された複数の電線のうち、ある複数の電線を、互いに導通(短絡)させながら、電子回路ユニット内の回路基板に接続させるジョイント機能を有したメス型のジョイントコネクタがある。
【0003】
例えば、回路基板上の1つの回路導体に接続すべき電線が、相手側コネクタに複数あるような場合は、分岐回路を形成するために、この種のジョイントコネクタが使用される。
【0004】
従来のこの種のジョイントコネクタでは、回路基板の回路導体でオス端子間のジョイントを取るため、ジョイントを取るべき各オス端子の基端部をそれぞれ回路基板まで延ばして、回路基板上の回路導体(回路パターン)にはんだ接合している。
【0005】
しかし、このようなジョイントコネクタでは、ジョイントを取るべき各オス端子の数だけ回路基板にジョイント用のスペースを確保しておく必要があるため、基板面積が大きくなる要因になっている。また、そのために、回路基板を収容する電子回路ユニットのサイズが大きくなる問題も生じている。
【0006】
また、回路基板とコネクタハウジングの奥壁との間に、ジョイントを取るべき各オス端子の数だけの導体が架け渡されてスペースが占有されるので、回路基板とコネクタハウジングの奥壁との間に空きスペースを確保する余裕がなく、その空きスペースに電子部品を配置することなどができないという問題もあった。
【0007】
なお、特許文献1には、1つの基板接続部(基板に接合される端子の基端側)から複数の端子嵌合部(相手コネクタ端子と嵌合するオス端子部に相当)が延出したジョイント端子を用いた回路基板用コネクタが開示されている。このコネクタによれば、ジョイント端子の分岐作用によって、回路基板の1つの回路を複数の回路に分岐することができる。
【0008】
また、特許文献2には、コネクタハウジングの相手コネクタの嵌合空間の内部で、ジョイント端子の一端を、回路基板に接続したコネクタ端子に導通させる構成のコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-72032号公報
【文献】実開平6-5327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、この種のジョイントコネクタにおいては、回路基板の面積を縮小したり、電子部品を収容するための空きスペースを確保したいとの要望に加え、次のような要望もあった。
【0011】
すなわち、
(1)ジョイントを取るべき端子の数が変更されたとしても、回路基板を変更せずに、つまり回路基板を共通化しながらジョイントを取るべき端子の数の変更に対応できるようにしたい。
(2)コネクタハウジングの嵌合空間の内部の構造にあまり影響を及ぼしたくない。つまり、ジョイント端子の使用に起因して、コネクタハウジングの嵌合空間内に配列されるコネクタ端子の形状に違いが出ることは回避したい。
等の要望があった。
【0012】
この点、特許文献1のコネクタでは、ジョイント端子の基板接続部と端子嵌合部とが一体に結合されていて分離困難であるため、ジョイント端子の数の変更に容易には対応できないという問題あった。
【0013】
また、特許文献2のコネクタでは、コネクタハウジングの嵌合空間内でジョイント端子を回路基板に接続したコネクタ端子に導通させているので、当該部分の端子形状が変わってしまい、他のコネクタ端子と同じ形状にすることができないという問題があった。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板の面積の縮小あるいは回路基板に余分な電子部品の搭載スペースを確保することができ、しかも、回路基板を共通化しながら、要求に応じたジョイントすべき端子数の変更に容易に対応できると共に、コネクタハウジングの嵌合空間内のコネクタ端子の配列に大きな変更を加えずに済むジョイントコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係るジョイントコネクタは、下記(1)~(4)を特徴としている。
(1) 奥壁と該奥壁から前方に延出するフード壁とで相手側コネクタの嵌合空間を画成するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングが着脱可能に装着される筐体本体に固定され、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記コネクタハウジングの奥壁の背後に部品スペースを介して位置する回路基板と、
前記回路基板の回路導体に基端が接合され、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、先端の端子部が前記コネクタハウジングの奥壁を貫通して前記嵌合空間に突出しコネクタ端子となる独立端子と、
基端が前記回路基板の回路導体に接合された中継端子と、
前記コネクタハウジングの奥壁に固定されたブリッジ部を有すると共に、該ブリッジ部により互いに導通された状態で該ブリッジ部から前方に延出して前記コネクタハウジングの嵌合空間に突出しコネクタ端子となる複数の端子部、および、前記ブリッジ部から前記コネクタハウジングの奥壁の背後に延出し、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、弾性変形部を介して前記中継端子に弾性的に接触導通する1つの接触導通片を有するジョイント端子と、
を備えることを特徴とするジョイントコネクタ。
【0016】
(2) 前記独立端子の1つが前記中継端子を兼ね、前記ジョイント端子の接触導通片に前記弾性変形部が一体に設けられており、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記接触導通片の弾性変形部が前記独立端子の1つに弾性的に接触導通する、
ことを特徴とする上記(1)に記載のジョイントコネクタ。
【0017】
(3) 前記中継端子の先端が、前記弾性変形部を有し前記コネクタハウジングの奥壁の背後に位置する挟持型端子部として構成されており、前記コネクタハウジングが前記筐体本体に装着された際に、前記ジョイント端子の接触導通片が、前記挟持型端子部の弾性変形部により弾性的に挟持されて、前記接触導通片と前記中継端子とが接触導通する、
ことを特徴とする上記(1)に記載のジョイントコネクタ。
【0018】
(4) 前記筐体本体に着脱自在に装着される筐体カバーに、前記コネクタハウジングが一体的に形成されている、
ことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のジョイントコネクタ。
【0019】
上記(1)の構成のジョイントコネクタによれば、ジョイント端子自体で端子部間(コネクタ端子間)のジョイントを行っているので、回路基板に直接接合する端子の数を減らすことができる。したがって、基板面積の縮小を図ることができ、電子回路ユニットの小型化に貢献することができる。また、回路基板に直接接合する端子の数が減ることにより、回路基板とコネクタハウジングの奥壁との間に空きスペースが生じることになり、従来コネクタ用に使用していたそのスペースに電子部品などを収容することが可能になる。そして、それによって基板面積の更なる縮小を図ることも可能になる。
また、ジョイント端子は、筐体本体に着脱自在に装着されるコネクタハウジングの奥壁に固定されているので、筐体本体からコネクタハウジングを取り外すことにより、ジョイント端子を一緒に取り外すことができる。つまり、ジョイント端子と中継端子の電気的接続は、弾性変形部を介しての弾性的な接触導通であるから、切り離しが容易であり、ジョイント端子を回路基板側から容易に取り外すことができる。したがって、筐体本体に固定された回路基板を共通化しながら、ジョイント端子の仕様変更を簡単に行うことができる。例えば、要求に応じて、ジョイント端子の端子部の本数、つまり、相互に導通させるコネクタ端子の本数を簡単に変更することが可能になる。
また、ジョイント端子の接触導通片と回路基板との接続は、コネクタハウジングの奥壁の背面側で行うので、コネクタハウジングの嵌合空間にその接続の影響が及ぶことはなく、独立端子の端子部とジョイント端子の端子部とを、同じ形状のコネクタ端子として、嵌合空間内に配列することができる。
上記(2)の構成のジョイントコネクタによれば、独立端子の1つに中継端子の機能を持たせているので、独立した中継端子が不要であり、そのぶん回路基板の面積縮小や空きスペース確保に有利となる。
上記(3)の構成のジョイントコネクタによれば、ジョイント端子の接触導通片を接続するために独立した中継端子を用いるので、独立端子に影響を与えずに、ジョイントを実現することができる。なお、挟持型端子部としては、一対の挟持片の間にジョイント端子の接触導通片を挟持する音叉型端子部や、ボックス部の内壁とボックス部の内部に配されたバネ片との間にジョイント端子の接触導通片を挟持する箱型メス端子部などが採用可能である。
上記(4)の構成のジョイントコネクタによれば、筐体カバーを筐体本体に装着することでジョイントコネクタを構成することができる。また、筐体カバーを筐体本体から取り外すことで、ジョイント端子を回路基板側から分離することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回路基板の面積の縮小あるいは回路基板に余分な電子部品の搭載スペースを確保することができる。また、回路基板を共通化しながら、要求に応じたジョイントすべき端子数の変更に容易に対応することができる。また、コネクタハウジングの嵌合空間内のコネクタ端子の形状を揃えることができ、コネクタ端子の配列に大きな影響を及ぼすことがない。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタを備えた電子回路ユニットの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合される相手側コネクタの嵌合前の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合される相手側コネクタの嵌合状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合される相手側コネクタの嵌合前の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態の比較対象となる第1例のジョイントコネクタの断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態の比較対象となる第2例のジョイントコネクタと相手側コネクタとの嵌合前の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第2例のジョイントコネクタと相手側コネクタとの嵌合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図1は、実施形態に係るジョイントコネクタを備えた電子回路ユニットの外観斜視図である。
【0025】
図1に示すように、電子回路ユニット1は、ユニット筐体本体2Aとユニット筐体カバー2Bとをケース部材として備えるものであり、その内部に回路基板5を含む必要な部材や部品が配置されている。ユニット筐体カバー2Bは、ユニット筐体本体2Aに着脱自在に装着されるものである。このユニット筐体カバー2Bに、実施形態のジョイントコネクタ10が直接設けられている。
【0026】
図2は、本発明の第1実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合されるオス型の相手側コネクタの嵌合前の状態を示す断面図である。
図3は、第1実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合されるオス型の相手側コネクタの嵌合状態を示す断面図である。
【0027】
図2および
図3に示すように、ジョイントコネクタ10は、コネクタハウジング11と、回路基板5と、複数の独立オス端子15と、1つのジョイント端子17と、独立オス端子固定部材16と、ジョイント端子固定部材19と、を備えている。
【0028】
コネクタハウジング11は、奥壁11aと、該奥壁11aから前方に延出するフード壁11bとで、オス型の相手側コネクタ30の嵌合空間12を画成するメス型のコネクタハウジングである。このコネクタハウジング11は、ユニット筐体本体2A(
図1参照)に着脱自在に装着されるユニット筐体カバー2Bに一体的に形成されている。コネクタハウジング11のフード壁11bには、相手側コネクタ30が嵌合空間12の適正位置に嵌合された際に、相手側コネクタ30のコネクタハウジング31に形成されたロックアーム33が係合する係合部13が設けられている。
【0029】
回路基板5は、ユニット筐体本体2A側に固定されており、コネクタハウジング11と一体に形成されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、コネクタハウジング11の奥壁11aの背後に部品スペース6を介して位置するように配置されている。
【0030】
独立オス端子15は、ジョイント機能を有しない1本ずつ独立したオス端子である。各独立オス端子15は、回路基板5の回路導体(回路パターン)に基端15bがはんだ接合されて、ユニット筐体本体2A側に固定されている。そして、コネクタハウジング11と一体化されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、各独立オス端子15の先端のオス端子部15aが、それぞれコネクタハウジング11の奥壁11aの貫通孔14を挿通して、嵌合空間12に突出しコネクタ端子となるように構成されている。なお、複数の独立オス端子15の基部は、回路基板5に固定された独立オス端子固定部材16によって安定的に保持されている。独立オス端子固定部材16は、回路基板5に固定される樹脂部品で、ペグ(図示略)が取付けられており、このペグを回路基板5にはんだ付けすることで回路基板5に固定されている。これにより、独立オス端子15のはんだ付け部が、余計なストレスを受けないように保護されている。
【0031】
本実施形態では、複数の独立オス端子15のうちのジョイント端子17に近い位置にある1本が、ジョイント端子17を回路基板5に導通させる中継端子を兼ねている。
【0032】
ジョイント端子17は、コネクタハウジング11の奥壁11aに固定された短絡用のブリッジ部17cを有している。ブリッジ部17cからは、前方に向けて複数のオス端子部17aが延出している。これら複数のオス端子部17aは、ブリッジ部17cにより互いに導通された状態となっており、ブリッジ部17cから前方に延出したオス端子部17aは、それぞれコネクタハウジング11の奥壁11aの貫通孔14を挿通して、嵌合空間12に突出しコネクタ端子となっている。また、ブリッジ部17cには、ブリッジ部17cからコネクタハウジング11の奥壁11aの背後側に延出し、ユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、バネ部18を介して、中継端子として機能する1本の独立オス端子15に弾性的に接触導通する接触導通片17bが設けられている。
【0033】
このジョイント端子17は、複数のオス端子部17aを、コネクタハウジング11の奥壁11aの貫通孔14から嵌合空間12に突出させた状態で、コネクタハウジング11の奥壁11aの背面にブリッジ部17cをジョイント端子固定部材19によって固定することにより、ユニット筐体カバー2Bに取り付けられている。
【0034】
本実施形態では、ジョイント端子17の接触導通片17bにバネ部18が一体に設けられている。そして、コネクタハウジング11と一体化されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、接触導通片17bのバネ部18が、独立オス端子15の1本の側面に弾性的に接触導通するようになっている。
【0035】
次に作用を説明する。なお、
図3において、複数のメス端子32は実際には不図示の電線の先端部にそれぞれ加締められている。
ジョイントコネクタ10に、
図3に示すように、オス型の相手側コネクタ30を嵌合すると、ジョイントコネクタ10の独立オス端子15およびジョイント端子17のオス端子部15a、17aが、相手側コネクタ30のコネクタハウジング31の前端孔22を通して、端子収容室に収容されたメス端子32に嵌合される。それにより、回路基板5と相手側コネクタ30に繋がる電線がそれぞれ接続される。そして、回路基板5上の1つの回路が、ジョイント端子17を介して分岐されて電線に接続される。
【0036】
このジョイントコネクタ10によれば、ジョイント端子17自体でオス端子部17a間(コネクタ端子間)のジョイントを行っており、回路基板5に直接はんだ付けしないので、回路基板5に直接接合する端子の数を減らすことができる。したがって、
図3に示すように、回路基板5の面積の縮小を図ることができ、電子回路ユニット1の小型化に貢献することができる。
【0037】
また、回路基板5に直接接合する端子の数が減ることにより、回路基板5とコネクタハウジング11の奥壁11aとの間に空きスペースS(
図2参照)が生じることになり、その空きスペースに電子部品などを収容することが可能になる。そして、それによって基板面積の更なる縮小を図ることも可能になる。
【0038】
また、ジョイント端子17は、ユニット筐体カバー2Bに一体化されたコネクタハウジング11の奥壁11aに固定されているので、ユニット筐体本体2Aからユニット筐体カバー2Bを取り外すことにより、ジョイント端子17を一緒に取り外すことができる。つまり、ジョイント端子17と中継端子(ジョイント端子17に近い位置にある1本の独立オス端子15)の電気的接続は、バネ部18を介しての弾性的な接触導通であるから、切り離しが容易であり、ジョイント端子17を回路基板5側から容易に取り外すことができる。したがって、ユニット筐体本体2A側に固定された回路基板5を共通化しながら、ジョイント端子17の仕様変更を簡単に行うことができる。例えば、要求に応じて、ジョイント端子17のオス端子部17aの本数を簡単に変更し、相互に導通させるコネクタ端子の本数を変更することができる。
【0039】
また、ジョイント端子17の接触導通片17bと回路基板5との接続は、コネクタハウジング11の奥壁11aの背面側で行うので、コネクタハウジング11の嵌合空間12にその接続の影響が及ぶことはなく、独立オス端子15のオス端子部15aとジョイント端子17のオス端子部17aとを、同じ形状のコネクタ端子として、嵌合空間12内に配列することができる。
【0040】
また、本実施形態のジョイントコネクタ10では、独立オス端子15の1つに中継端子の機能を持たせているので、独立した中継端子が不要であり、そのぶん回路基板5の面積縮小や空きスペース確保に有利となる。
【0041】
図4は、本発明の第2実施形態に係るジョイントコネクタとそれに嵌合される相手側コネクタの嵌合前の状態を示す断面図である。
【0042】
図4に示すように、第2実施形態のジョイントコネクタ110は、コネクタハウジング111と、回路基板105と、複数の独立オス端子115と、1つのジョイント端子117と、1つの中継端子118と、端子固定部材116と、ジョイント端子固定部材119と、を備えている。
【0043】
コネクタハウジング111は、奥壁111aと、該奥壁111aから前方に延出するフード壁111bとで、オス型の相手側コネクタ130の嵌合空間112を画成するメス型のコネクタハウジングである。このコネクタハウジング111は、ユニット筐体本体2A(
図1参照)に着脱自在に装着されるユニット筐体カバー2Bに一体的に形成されている。
【0044】
回路基板105は、ユニット筐体本体2A側に固定されており、コネクタハウジング111と一体に形成されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、コネクタハウジング111の奥壁111aの背後に部品スペース106を介して位置するように配されている。
【0045】
独立オス端子115は、ジョイント機能を有しない1本ずつ独立した単純なオス端子である。各独立オス端子115は、回路基板105の回路導体(回路パターン)に基端115bがはんだ接合されて、ユニット筐体本体2A側に固定されている。そして、コネクタハウジング111と一体化されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、各独立オス端子115の先端のオス端子部115aが、それぞれコネクタハウジング111の奥壁111aの貫通孔114を挿通して、嵌合空間112に突出しコネクタ端子となるように構成されている。
【0046】
中継端子118は、基端118bが回路基板105の回路導体に接合されており、先端が、バネ片118aを有する挟持型端子部として構成されている。図示例では、音叉型端子部として構成されており、一対のバネ片118aの間に相手側の接触導通片117bを挟持できるようになっている。この中継端子118は、コネクタハウジング111の奥壁11aの背後に位置するように配置されている。
【0047】
なお、複数の独立オス端子15の基部と中継端子118の基部は、回路基板105に固定された端子固定部材116によって安定的に保持されている。この端子固定部材116は、回路基板105に固定される樹脂部品で、金属製のペグ120が取付けられており、このペグ120を回路基板105にはんだ付けすることで回路基板105に固定されている。それにより、独立オス端子15のはんだ付け部や中継端子118のはんだ付け部が、余計なストレスを受けないように保護されている。
【0048】
本実施形態では、複数の独立オス端子15とは別に、ジョイント端子117を回路基板105に導通させるための中継端子118が設けられている点が、第1実施形態と異なっている。
【0049】
ジョイント端子117は、コネクタハウジング111の奥壁111aに固定された短絡用のブリッジ部117cを有している。ブリッジ部117cからは、前方に向けて複数のオス端子部117aが延出している。これら複数のオス端子部117aは、ブリッジ部117cにより互いに導通(短絡)された状態となっており、ブリッジ部117cから前方に延出したオス端子部117aは、それぞれコネクタハウジング111の奥壁111aを貫通して、嵌合空間112に突出しコネクタ端子となっている。また、ブリッジ部117cには、ブリッジ部117cからコネクタハウジング111の奥壁111aの背後側に延出し、コネクタハウジング111と一体化されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、バネ片118aを介して、中継端子118に弾性的に接触導通する1つの接触導通片117bが設けられている。
【0050】
このジョイント端子117は、複数のオス端子部117aを、コネクタハウジング111の奥壁111aから嵌合空間12に突出させた状態で、コネクタハウジング111の奥壁111aの背面凹部111cに収容したブリッジ部117cを、ジョイント端子固定部材119によって固定することにより、ユニット筐体カバー2Bに取り付けられている。
【0051】
本実施形態では、ジョイント端子117の接触導通片117bとは別に、中継端子118にバネ片118aが設けられている。そして、コネクタハウジング111と一体化されたユニット筐体カバー2Bがユニット筐体本体2Aに装着された際に、ジョイント端子117の接触導通片117bが、挟持型端子部(音叉型端子部)の一対のバネ片118aにより弾性的に挟持されて、接触導通片117bと中継端子118とが接触導通するようになっている。
【0052】
この第2実施形態のジョイントコネクタ110によれば、ジョイント端子117の接触導通片117bを接続するために独立した中継端子118を用いるので、独立オス端子115に影響を与えずに、ジョイントを実現することができる。そのほかの作用効果は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
なお、本実施形態では、挟持型端子部としては、一対の挟持片(バネ片118a)の間にジョイント端子117の接触導通片117bを挟持する音叉型端子部を用いた場合を示したが、そのほかにボックス部の内壁とボックス部の内部に配されたバネ片との間にジョイント端子117の接触導通片117bを挟持する箱型メス端子部などが採用可能である。
【0054】
図5は、本発明の実施形態の比較対象となる第1例のジョイントコネクタの断面図である。
この例のジョイントコネクタ210では、ジョイント端子217の基端部217bを直接回路基板5にはんだ付け接合している。このジョイント端子217は、ブリッジ部217cで短絡されてコネクタハウジング11の奥壁11aの貫通孔14から嵌合空間12に突出する3本のオス端子部217aを有している。ジョイント端子217と独立オス端子15は、端子固定部材219により保護的に支持さている。この例では、1本の基端部217bでジョイント端子217を回路基板5に接合しているので、オス端子部217aの背後に空きスペースSを確保することができる。ただし、回路基板5にジョイント端子217が固定されているので、回路基板5を共通にしてオス端子部217aの数の変更を行うことはできない。
【0055】
図6は、本発明の実施形態の比較対象となる第2例のジョイントコネクタと相手側コネクタとの嵌合前の状態を示す断面図、
図7は、同第2例のジョイントコネクタと相手側コネクタとの嵌合状態を示す断面図である。
【0056】
この例のジョイントコネクタ310では、ジョイント端子317は、ブリッジ部317cで相互導通された複数のオス端子部317aをコネクタ端子として使用しているものの、回路基板5には電気接続していない。したがって、回路基板5を共通にしてオス端子部317aの数の変更を行うことができるものの、オス型の相手側コネクタ30を嵌合させた際に同オス型コネクタ30のメス端子同士を導通させることしかできない。
【0057】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るジョイントコネクタの特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 奥壁(11a、111a)と該奥壁(11a、111a)から前方に延出するフード壁(11b、111b)とで相手側コネクタ(30、130)の嵌合空間(12、112)を画成するコネクタハウジング(11、111)と、
前記コネクタハウジング(11、111)が着脱可能に装着される筐体本体(2A)に固定され、前記コネクタハウジング(11、111)が前記筐体本体(2A)に装着された際に、前記コネクタハウジング(11、111)の奥壁(11a、111a)の背後に部品スペース(6、106)を介して位置する回路基板(5、105)と、
前記回路基板(5、105)の回路導体に基端が接合され、前記コネクタハウジング(11、111)が前記筐体本体(2A)に装着された際に、先端の端子部(15a)が前記コネクタハウジング(11、111)の奥壁(11a、111a)を貫通して前記嵌合空間(12、112a)に突出しコネクタ端子となる独立端子(15、115)と、
基端が前記回路基板(5、105)の回路導体に接合された中継端子(15、118)と、
前記コネクタハウジング(11、111)の奥壁(11a、111a)に固定されたブリッジ部(17c、117c)を有すると共に、該ブリッジ部(17c、117c)により互いに導通された状態で該ブリッジ部(17c、117c)から前方に延出して前記コネクタハウジング(11、111)の嵌合空間(12、112)に突出しコネクタ端子となる複数の端子部(17a、117a)、および、前記ブリッジ部(17c、117c)から前記コネクタハウジング(11、111)の奥壁(11a、111a)の背後に延出し、前記コネクタハウジング(11、111)が前記筐体本体(2A)に装着された際に、弾性変形部(18、118a)を介して前記中継端子(15、118)に弾性的に接触導通する1つの接触導通片(17b、117b)を有するジョイント端子(17、117)と、
を備えることを特徴とするジョイントコネクタ(10、110)。
【0058】
[2] 前記独立端子(15)の1つが前記中継端子を兼ね、前記ジョイント端子(17)の接触導通片(17b)に前記弾性変形部(18)が一体に設けられており、前記コネクタハウジング(11)が前記筐体本体(2A)に装着された際に、前記接触導通片(17b)の弾性変形部(18)が前記独立端子(15)の1つに弾性的に接触導通する、
ことを特徴とする上記[1]に記載のジョイントコネクタ(10)。
【0059】
[3] 前記中継端子(118)の先端が、前記弾性変形部(118a)を有し前記コネクタハウジング(111)の奥壁(111a)の背後に位置する挟持型端子部として構成されており、前記コネクタハウジング(111)が前記筐体本体(2A)に装着された際に、前記ジョイント端子(117)の接触導通片(117b)が、前記挟持型端子部の弾性変形部(118a)により弾性的に挟持されて、前記接触導通片(117b)と前記中継端子(118)とが接触導通する、
ことを特徴とする上記[1]に記載のジョイントコネクタ(110)。
【0060】
[4] 前記筐体本体(2A)に着脱自在に装着される筐体カバー(2B)に、前記コネクタハウジング(11、111)が一体的に形成されている、
ことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のジョイントコネクタ(10、110)。
【符号の説明】
【0061】
1 電子回路ユニット
2A ユニット筐体本体
2B ユニット筐体カバー
5 回路基板
6 部品スペース
10 ジョイントコネクタ
11 コネクタハウジング
11a 奥壁
11b フード壁
12 嵌合空間
15 独立オス端子(独立端子、中継端子)
15a 端子部(オス端子部)
15b 基端
17 ジョイント端子
17a 端子部(オス端子部)
17b 接触導通片
17c ブリッジ部
18 バネ部(弾性変形部)
30 相手側コネクタ
105 回路基板
106 部品スペース
110 ジョイントコネクタ
111 コネクタハウジング
111a 奥壁
111b フード壁
112 嵌合空間
115 独立オス端子
115a 先端のオス端子部
115b 基端
117 ジョイント端子
117a オス端子部
117b 接触導通片
117c ブリッジ部
118 中継端子
118a バネ片(弾性変形部)
130 相手側コネクタ