IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイディーエス ユニフェイズ コーポレーションの特許一覧

特許7268086光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
<>
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図1
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図2
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図3
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図4
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図5
  • 特許-光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】光学的特性及び機械的特性を有する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20230425BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20230425BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20230425BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20230425BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20230425BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
G02B1/16
G02B1/18
G02B5/28
G02B5/30
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021087644
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2019011620の分割
【原出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2021177240
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/624,009
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスロウ ジエバ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ビルガー
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/169987(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183145(WO,A1)
【文献】特開2008-268277(JP,A)
【文献】特開2004-198617(JP,A)
【文献】特開2016-224113(JP,A)
【文献】特表2015-506459(JP,A)
【文献】特開2006-255694(JP,A)
【文献】特開2003-004942(JP,A)
【文献】特開2009-054902(JP,A)
【文献】国際公開第2017/218433(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101276005(CN,A)
【文献】国際公開第2018/052057(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/151984(WO,A2)
【文献】特開平09-230031(JP,A)
【文献】特開2006-194639(JP,A)
【文献】特開2017-161897(JP,A)
【文献】特開2017-151430(JP,A)
【文献】特表2003-521679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0127578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
G02B 5/20 - 5/28
G01S 7/481
G01S 7/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側と第2の側とを有する基板と、
前記基板の前記第1の側に施された反射防止コーティングと、
前記基板の前記第2の側に施された導電性コーティングであって、該導電性コーティングは発熱体であり、850nm~2000nmの光の波長で透明である、導電性コーティングと、
前記導電性コーティングに施されたグレア低減コーティングと、
前記グレア低減コーティングと前記導電性コーティングとの間に施されているバンドパスフィルタであって、該バンドパスフィルタは、400nm~850nmの波長を遮断することがでるバンドパスフィルタと
を備えた光学デバイスであって、
該光学デバイスは、環境に露出した第1の側と露出していない第2の側とを有し、
前記グレア低減コーティングは、四分の一波長光学位相子と組み合わせた直線偏光子を含む多層円偏光子である、光学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、前記基板は、プラスチック、合成サファイア、ガラス、又は合成ダイヤモンドを含む光学デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、該光学デバイスは、2つ以上の基板を含む光学デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の光学デバイスにおいて、前記2つ以上の基板は、積層板である光学デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、保護剤コーティングが前記反射防止コーティングに施されている光学デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、第2の反射防止コーティングが前記グレア低減コーティングに施されている光学デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、前記反射防止コーティングは、第1屈折率を有する第1の複数の誘電体層と、少なくとも第2屈折率を有する第2の複数の誘電体層とを交互に含むスタックである光学デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、前記反射防止コーティングは、第1NbTiO層、第1SiO層、第2NbTiO層、および第2SiO層の誘電体スタックである光学デバイス。
【請求項9】
請求項5に記載の光学デバイスにおいて、前記保護剤コーティングは、官能性シランを有するフッ素化アルキルエーテルポリマーである光学デバイス。
【請求項10】
請求項1に記載の光学デバイスにおいて、前記導電性コーティングは、酸化インジウムスズ、ナノ粒子系透明複合材、又は、光学的に透明な導体を含む光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、基板と基板に施されたコーティングとを含む光学デバイスであって
、環境に露出した第1の側と露出していない第2の側とを有する光学デバイスに関する。
【0002】
本願は、2018年1月30日付けの米国仮出願第62/624,009号の優先権を
主張し、その開示を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
光センサ用の光学デバイスは、半自動運転車両、自動運転車両、及び遠隔操縦車両の登
場により重要性を増しつつある。例えば、車両におけるLIDAR(Light det
ecion and ranging)技術の適用への関心が高まっている。しかしなが
ら、光センサ用の光学デバイスの使用は、センサに損傷を与えるか又はセンサの機能に悪
影響を及ぼし得る機械的、光学的、及び環境的要因にセンサが耐えることができるかとい
う懸念をもたらす。例として、センサは風雨等の環境要因の影響を受けやすく、これらは
、センサの耐久性及び操作性に損傷、引掻き、又はそれ以外の方法で影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、基板と基板に施されたコーティングとを含む光学デバイスであって、環境
に露出した第1の側と露出していない第2の側とを有する光学デバイスが開示される。
【0005】
種々の実施形態のさらに他の特徴及び利点は、一部が以下の説明に記載され一部が説明
から明らかとなるか、又は種々の実施形態の実施により会得され得る。種々の実施形態の
目的及び他の利点は、本明細書の説明で特に指摘される要素及び組み合わせにより実現及
び達成されるであろう。
【0006】
本開示のいくつかの態様及び実施形態は、詳細な説明及び添付図面からさらに十分に理
解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一態様による光学デバイスの断面である。
図2】本発明の別の態様による光学デバイスの断面である。
図3】本発明の別の態様による光学デバイスの断面である。
図4】本発明の別の態様による光学デバイスの断面である。
図5】本発明の別の態様による光学デバイスの断面である。
図6】本発明の別の態様による光学デバイスの断面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び図を通して、同じ参照符号は同じ要素を示す。
【0009】
上述の概要及び以下の詳細な説明の両方が、例示及び説明のためのものにすぎず、本教
示の種々の実施形態の説明を提供するものであることを理解されたい。各図に示す層/コ
ンポーネントは、特定の図に関して説明されている場合があるが、特定の層/コンポーネ
ントの説明が他の図の同等の層/コンポーネントにも当てはまることを理解されたい。
【0010】
図1に示すように、広範且つ多様な実施形態において、基板20と、基板20に施され
た少なくとも1つのコーティング30とを含む光学デバイス10であって、環境に露出し
た第1の側と露出していない第2の側とを有する光学デバイス10が開示される。「露出
した」第1の側は、光、空気、汚れ、風等の環境に面していることを意味する。「露出し
ていない」第2の側は、環境に面していないことを意味し、窓、センサ(例えば、LID
ARセンサ)、又はレンズ、例えば自立性レンズ、又は複雑な光学系の一部としてのレン
ズ等の別のデバイスに取り付けられることを含み得る。
【0011】
開示されている光学デバイス10は、上記に開示したような別のデバイスを機械的、光
学的、化学的、及び環境的要因から保護することができる少なくとも1つのコーティング
30を含み得る。少なくとも1つのコーティング30は、少なくとも1つの機能を提供し
得る。少なくとも1つのコーティング30は、光学デバイス10に複数の機能を提供する
ために1つ又は複数のコーティングを含み得る。さらに、少なくとも1つのコーティング
30は、基板10の露出した第1の側及び/又は露出していない第2の側に1つ又は複数
のコーティング30を含むことにより、光学デバイス10の各コーティング30の機能を
最適化することができる。
【0012】
光学デバイス10の基板20は、コーティング可能な任意の材料であり得る。基板20
の非限定的例としては、プラスチック、合成サファイア、ガラス、合成ダイヤモンド、光
学セラミックス材料、光学品質ポリマー(optical quality polymers)、及びケイ素等の
光学デバイス10の機能用途に必要な吸収スペクトルを有する透光性基板が挙げられる。
光学品質ポリマーとしては、ポリカーボネート、アクリレート、及び環状オレフィンポリ
マーが挙げられる。化学強化ガラスを含む種々のタイプのガラスを用いることができる。
【0013】
一態様では、図6に示すように、光学デバイス100は、複数の基板110a、110
bを含み得る。複数の基板110a、110bを含むことで、光学デバイス100及びそ
れが取り付けられるセンサの安全性を高めることができる。さらに、複数の基板110a
、110bを光学デバイス100に含むことで、光学デバイス100の構造強度及び/又
は可撓性を高めることができる。光学デバイス100は、2つ以上の基板110a、11
0bを含み得る。2つ以上の基板110a、110bは、2つ以上の基板110a、11
0bを合わせて固定した積層板であり得る。一態様では、接着剤を2つ以上の基板110
a、110b間に含んで積層板が形成され得る。積層基板は、光学デバイス100を薄く
し且つ強度を高くすることができる。しかしながら、単一基板又は積層基板の厚さは、光
学デバイス100に適した基板を選択する際の制限要因ではない。
【0014】
少なくとも1つの基板110a、110bは、同じであっても異なっていてもよい。一
態様では、第1の基板110aは、用途及び場所に応じて、化学強化ガラスから合成サフ
ァイア又はダイヤモンド等の本質的に極めて硬質の耐衝撃性材料までに及ぶ硬質光学材料
から製造され得る。第1の基板110aは、露出した第1の側に機械的機能及び保護機能
を与えるコーティング30を含み、露出していない第2の側に第2の基板及び/又は光学
機能を与えるコーティング30を含み得る。第2の基板110bは、光学デバイス100
に付加的な保護機能を与えることができる光学コーティングのキャリアとして機能し得る
【0015】
光学デバイス10、100で用いられる基板(単数又は複数)20、110a、110
bは、安全性、費用、重量等に基づいて選択され得る。基板20、110a、11bの選
択は、光学デバイス10、100の形成における変動要素である。特に、基板(単数又は
複数)20、110a、110bの選択により、光学デバイス10、100におけるコー
ティング30の層の順序が変わり得る。
【0016】
図2図5は、本明細書において企図される種々の光学デバイス10を示す。これらは
例示的なものである。露出した第1の側及び露出していない第2の側のコーティングの順
序は変わり得ることを理解すべきである。さらに、露出した第1の側及び露出していない
第2の側にあるコーティングのタイプは変わり得る。概して、機械的機能又は保護機能を
提供できるコーティング30は、光学デバイスの露出した第1の側にあり、光学機能を提
供できるコーティングは、光学デバイスの露出していない第2の側にある。図2図5
コーティング30について以下でより詳細に説明する。
【0017】
図2に示すように、露出した第1の側の防汚処理を施した反射防止コーティング30a
と、基板20と、露出していない第2の側の導電性コーティング30b及びグレア低減(
glare reducing:防眩)コーティング30cとを含む、光学デバイス10が図示されてい
る。
【0018】
図3に示すように、露出した第1の側の防汚処理を施した反射防止コーティング30a
と、基板20と、露出していない第2の側の導電性コーティング30b、グレア低減コー
ティング30c、及び反射防止コーティング30eとを含む、光学デバイス10が図示さ
れている。
【0019】
図4に示すように、露出した第1の側の防汚処理を施した反射防止コーティング30a
と、基板20と、露出していない第2の側の導電性コーティング30b、バンドパスフィ
ルタ30d、及びグレア低減コーティング30cとを含む、光学デバイス10が図示され
ている。
【0020】
図5に示すように、露出した第1の側の防汚処理を施した反射防止コーティング30a
と、基板20と、露出していない第2の側の導電性コーティング30b、バンドパスフィ
ルタ30d、グレア低減コーティング30c、及び反射防止コーティング30eとを含む
、光学デバイス10が図示されている。
【0021】
光学デバイス10は、反射防止コーティング30e等の基板20に施されたコーティン
グ30を含み得る。一態様では、反射防止コーティング30eは、光学デバイス10の第
1の側にあり得る。図2図5に示すように、反射防止コーティング30は、防汚30a
特性を与えるように処理することもできる。図3及び図6に示すように、別の態様では、
反射防止コーティング30eは、光学デバイス10の第2の側にあり得る。光学デバイス
10は、第1の側に防汚処理を施した反射防止コーティング30a、第2の側に反射防止
コーティング30e(防汚処理なし)を含み得る。
【0022】
反射防止コーティング30eは、誘電体スタックとすることができ、基板20との境界
面の光の反射を低減することができる。誘電体スタックを形成するのに適した誘電体とし
ては、TiO、Ta、ZrO、及びSiO等の金属酸化物が挙げられ、これ
らは、可視波長スペクトル域(例えば、400nm~700nm)で高い透明度を示すこ
とができる。反射防止コーティング30eは、低屈折率等の第1屈折率を有する複数の第
1誘電体層、例えばSiO又はフッ化マグネシウム(MgF)と、少なくとも高屈折
率等の第2屈折率を有する複数の第2誘電体層とを交互に含むスタックであり得る。高屈
折率材料の非限定的例としては、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チ
タン、酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
反射防止コーティング30eは、NbTiOx、SiO等の層のスタックから形成さ
れ得る。一態様では、反射防止コーティング30eは、約50nmの第1NbTiOx層
、約18nmの第1SiO層、約16nmの第2NbTiOx層、約101nmの第2
SiO層の薄膜誘電体スタックであり得る。
【0024】
光学デバイス10は、保護剤コーティング等の基板に施されたコーティング30を含み
得る。保護剤コーティングは、光学デバイスの第1の側にあり得る。光学デバイス10は
、保護剤コーティングを単独で又は反射防止コーティング30eと組み合わせて含み得る
。一態様では、保護剤コーティングは、基板20に施された反射防止コーティング30e
に施される。保護剤コーティング及び反射防止コーティング30eの両方が、光学デバイ
ス10の第1の側にある。
【0025】
一態様では、保護剤コーティングは、官能性シランを有するフッ素化アルキルエーテル
ポリマーを含み得る。このような化合物の例は、一般式R-Si-X (1)を有し
、式中、Rはフッ素化アルキルエーテル繰り返し単位を含み、Xは、アルコキシ基、塩化
物、又はアミン基であり得るものとし、m+n=4である。例えば、トリメチルシラン基
で官能基化されたポリ(パーフルオロプロピルエーテル)及びシラザン基で官能基化され
たポリ(パーフルオロエチルエーテル)が、2つのこうした化合物である。
【0026】
保護剤コーティングは、耐久性があり得ると共に、簡易式:CF-[CH(CF
-CH-O-]-CONCH-(CH-Si-(OC (2)を
有する化合物を含み得るものであり、式中、xは7~11の整数である。この化合物は、
2価の連結基(すなわち、-CONCH-(CH-)も含み得る。当然ながら、
式(2)に示すものと構造及び機能が同様の化合物を、保護剤コーティングで用いること
もできる。特に、市販の化合物であるN-メチル-N-(-トリエトキシプロピル)-2
-[α-ヘプタフルオロプロポキシ{ポリ(オキシ(トリフルオロメチル)-1,2-エ
タンジイル)}テトラフルオロプロピオンアミドを、保護剤コーティングで用いることが
できる。
【0027】
保護剤コーティングを施す方法は、コーティング化合物を含有する液体、溶液、又はゲ
ル状担体に表面を浸漬する、前者を後者に流す、前者で後者を拭く、且つ/又は前者を後
者に吹き付ける等のウェット技法、及びコーティング化合物を表面に(大気圧で又は真空
下で)蒸着する等のドライ技法を含み得る。
【0028】
図2図5に示すように、光学デバイス10は、導電性コーティング30b等の基板2
0に施されたコーティング30を含み得る。導電性コーティング30bは、光学デバイス
10の第2の側にあり得る。導電性コーティング30bは、撥汚、撥水、及び防塵表面と
して働く低表面エネルギー処理であり得る。このコーティング30bは、0.08未満等
の低い摩擦係数を有し得る。このように、導電性コーティング30bは、光学デバイス1
0の研磨媒体による損傷の受けやすさを低減することができる。
【0029】
導電性コーティング30bとしては、酸化スズ(ITO)、ナノ粒子系透明複合材、及
び他の一般的に用いられる光学的に透明な導体が挙げられる。一態様では、導電性コーテ
ィング30bは、約850nm~約2000nm等のLIDARセンサの動作波長で透明
であり得る。
【0030】
導電性コーティング30bは、発熱体として働いて約30℃から80℃へのように光学
デバイス10の温度を上昇させることができる。発熱体としてこのコーティング30bを
含む光学デバイス10を用いて、センサが取り付けられた窓が曇るリスクの排除及び/又
は低減、結露のリスクの排除及び/又は低減、及び光学デバイス10の露出した第1の側
の撥汚性の向上のうち少なくとも1つを行うことができる。
【0031】
さらに、この導電性コーティング30bは、撥水及び汚染物質防除効率を高めることに
より、基板の第1の側の外側反射防止コーティング30の疎水性及び疎油性を高めること
ができる。
【0032】
導電性コーティング30bは、堅牢な表面を作るのに十分な機械的耐久性がない場合が
ある。この理由から、導電性コーティング30bは、第2の側、すなわち光学デバイスの
うちセンサに面している側に施されるべきである。
【0033】
光学デバイス10は、グレア低減コーティング30c等の基板20に施されたコーティ
ング30を含み得る。図2図5に示すように、グレア低減コーティング30cは、光学
デバイス10の露出していない第2の側にあり得る。グレア低減コーティング30c及び
導電性コーティング30bの両方が、光学デバイス10の露出していない第2の側にあり
得る。一態様では、グレア低減コーティング30cは、基板20に施された導電性コーテ
ィング30bに施すことができる。
【0034】
グレア低減コーティング30cの一例は、四分の一波長光学位相子(retarder)と組み
合わせた直線偏光子を含む円偏光子の多層構造であり得る。波長位相子は、そこを通過す
る光の偏光状態又は位相を変える(遅らせる)複屈折材料である。波長位相子は、進相(
異常)及び遅相(常)軸を有する。偏光が波長位相子を通過する際、進相軸を通過する光
は、遅相軸よりも速く波長位相子を通過する。四分の一波長位相子の場合、波長板は、偏
光成分の一方(x又はy)の速度に他方の偏光成分から四分の一波長の位相遅れを生じさ
せる。四分の一波長位相子を通過する偏光は、こうして円偏光される。グレア低減コーテ
ィング30cは、光学デバイス10により保護されたセンサの動作波長でグレアを低減及
び/又は排除することができる。グレア低減コーティング30cは、信号光の偏光状態の
解析を可能にすることもできる。
【0035】
光学デバイス10は、バンドパスフィルタ30d等の基板20に施されたコーティング
30を含み得る。図4及び図5に示すように、バンドパスフィルタ30dは、光学デバイ
ス10の露出していない第2の側にあり得る。バンドパスフィルタ30dは、グレア低減
コーティング30cに施すことができ、グレア低減コーティング30cは、基板20に施
された導電性コーティング30bに施すことができる。一態様では、バンドパスフィルタ
30d、グレア低減コーティング30c、及び導電性コーティング30bの全てが、光学
デバイス10の露出していない第2の側にあり得る。一態様では、グレア低減コーティン
グ30cは、基板20に施された導電性コーティング30bに施すことができる。
【0036】
バンドパスフィルタ30dは、誘電体低屈折率及び高屈折率材料のフルスタックにより
実現され得る。各層は、所望のフィルタの波長で四分の一波長(QW)の厚さとして成膜
され得る。単層のみからなり得る各部分反射鏡を、四分の一波長スタック(QWS)と呼
ぶ。フィルタの帯域幅は、構造中の四分の一波長スタックの反射率の関数である。通過帯
域の中心波長は、スペーサ誘電体材料の厚さにより決まる。四分の一及び/又は半波長層
に用いられる誘電体材料は、1.3~4.0を超える範囲の屈折率を有する。例えば、適
当な材料には、フッ化マグネシウム(1.38)、フッ化トリウム(1.47)、クライ
オライト(1.35)、二酸化ケイ素(1.46)、酸化アルミニウム(1.63)、酸
化ハフニウム(1.85)、五酸化タンタル(2.05)、酸化ニオブ(2.19)、硫
化亜鉛(2.27)、酸化チタン(2.37)、ケイ素(3.5)、ゲルマニウム(4.
0)、及びテルル化鉛(5.0)がある。他の誘電体材料も同様の役割を果たす。それに
加えて、完全誘電体バンドパスフィルタ30dは、反射防止特性も兼ね備えることができ
る。
【0037】
一態様では、バンドパスフィルタ30dは、必要な吸光度又は誘電体構造及び高分子構
造の組み合わせをもたらすのに適した染料混合物を含有する高分子コーティングであり得
る。
【0038】
バンドパスフィルタ30dは、センサが動作する光の波長を通過させることができると
共に他の全ての波長を排除することができる。例えば、バンドパスフィルタ30dは、約
400nm~約850nm等の可視及び近紫外スペクトル域の波長を遮断することができ
ると共に約850nmを超える波長を透過することができる。このように、バンドパスフ
ィルタ30dは、光学デバイス10に取り付けられたセンサに達する不所望の放射線を低
減及び/又は排除することができる。
【0039】
光学デバイス10は、別のデバイスに取り付けられて光学系を形成することができる。
他方のデバイスは、窓、センサ(例えば、LIDARセンサ)、又はレンズ、例えば自立
性光学レンズ、又はレンズであり得る。光学デバイス10は、従来の成膜プロセスを用い
て他方のデバイスに取り付けることができる。
【0040】
光学デバイス10を作製する方法も開示される。光学デバイス10は、半導体プロセス
を用いて形成することができる。
【0041】
光学系を作製する方法も開示される。光学デバイス10を従来の成膜プロセスにより別
のデバイスに取り付けて、光学系を形成することができる。
【0042】
上述した説明から、本教示をさまざまな形態で実施できることが当業者には理解され得
る。したがって、これらの教示を特定の実施形態及びその例に関連して説明したが、本教
示の真の範囲をそれに限定すべきではない。本明細書中の教示の範囲から逸脱せずに、種
々の変更及び修正を行うことができる。
【0043】
この範囲開示は、広義に解釈されるものとする。本開示は、本明細書に開示されたデバ
イス、活動、及び機械的作用を達成するための等価物、手段、システム、及び方法を開示
するためのものである。開示された各デバイス、製品、方法、手段、機械要素、又は機構
について、本開示は、本明細書に開示された多くの態様、機構、及びデバイスを実施する
等価物、手段、システム、及び方法を同じくその開示に包含し且つ教示することが意図さ
れる。さらに、本開示は、コーティング及びその多くの態様、特徴、及び要素に関する。
このようなデバイスの使用及び動作は動的なものとすることができ、本開示は、デバイス
及び/又は製品の使用の等価物、手段、システム、及び方法、並びに本明細書に開示され
た動作及び機能の説明及び趣旨と一致したその多くの態様を包含することが意図される。
本願の特許請求の範囲も同様に、広義に解釈されるものとする。
【0044】
本明細書中の発明の多くの実施形態での説明は、例示的なものにすぎず、したがって、
本発明の要旨から逸脱しない変形形態は、本発明の範囲内にあることが意図される。この
ような変形形態は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものとみなされないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6