(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230425BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230425BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20230425BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
G06F1/16 312U
G06F3/02 400
H05K7/20 H
H05K7/20 G
(21)【出願番号】P 2021184087
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】糸山 水季
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特許第6846547(JP,B1)
【文献】特開2014-130487(JP,A)
【文献】特開2012-190060(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112306204(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153676(US,A1)
【文献】特許第6868716(JP,B1)
【文献】中国実用新案第2598041(CN,Y)
【文献】中国実用新案第211956262(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0149495(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0256519(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
G06F 3/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
内部に発熱体を搭載した筐体と、
前記筐体の上面側に設けられ、上下方向に空気を通過させる連通孔が設けられたキーボード装置と、
前記筐体内に設けられ、上面に吸気口を有するファン装置と、
前記筐体の一部を構成する筐体部材であって、前記キーボード装置の
下面を支持すると共に、前記ファン装置の上
面との間に隙間を設けて配置されたプレート状部材と、
を備え、
前記プレート状部材には、前記連通孔と前記吸気口とを連通させる開口部が設けられ、
前記筐体の平面視において、前記開口部
は、前記連通孔とは一部がオーバーラップし、一方、前記吸気口とは互いに位置ずれしている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記キーボード装置は、最下層が導光板又は防水シートで構成され、前記連通孔が貫通形成された積層板を有し、
前記プレート状部材は、前記積層板の下面を支持しており、
さらに、前記隙間の一部及び前記開口部を含む空間であって、前記積層板の下面と前記ファン装置の上面との間に形成されたバッファ空間を備え、
前記バッファ空間は、前記プレート状部材と前記ファン装置との間に形成され、当該バッファ空間よりも幅狭な第1流路と、前記積層板と前記プレート状部材との間に形成され、当該バッファ空間よりも幅狭な第2流路との間に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の電子機器であって、
前記プレート状部材は、金属製である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記開口部及び前記吸気口をまとめて囲むように配置され、前記ファン装置の上面と前記プレート状部材の下面との間で起立したシール材をさらに備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ノート型PCのような電子機器において、筐体の上面にあるキーボード装置を通して外気を吸気可能な構成を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の構成は、ファン装置の風量が増加して冷却性能は向上する反面、ノイズが増加することが分かってきた。その理由として、当該構成は、筐体の下面だけでなく上面にも開口があるため、ファン装置のノイズが筐体の上面から外部に漏れることに起因すると考えられる。このため、当該構成では、ノイズを低下させるためにファン装置の駆動回転数を低下させる必要があり、結果として電子機器の冷却性能が低下する懸念があることが確認された。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ノイズを抑制し、冷却性能を向上させることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、内部に発熱体を搭載した筐体と、前記筐体の上面側に設けられ、上下方向に空気を通過させる連通孔が設けられたキーボード装置と、前記筐体内に設けられ、上面に吸気口を有するファン装置と、前記キーボード装置の下で前記ファン装置の上に隙間を設けて配置されたプレート状部材と、を備え、前記プレート状部材には、前記連通孔と前記吸気口とを連通させる開口部が設けられ、前記筐体の平面視において、前記開口部と前記吸気口が互いに位置ずれしている。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、内部に発熱体を搭載した筐体と、前記筐体の上面側に設けられ、上下方向に空気を通過させる連通孔が設けられたキーボード装置と、前記筐体内に設けられ、上面に吸気口を有するファン装置と、を備え、前記筐体の平面視において、前記連通孔と前記吸気口が互いに位置ずれしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ノイズを抑制し、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【
図3A】
図3Aは、ファン装置及びプレート状部材の模式的な分解斜視図である。
【
図5】
図5は、上連通孔を開口部の直上に配置した構成とした筐体の一部拡大図である。
【
図6A】
図6Aは、変形例に係る開口部を有するプレート状部材及びその周辺部の構成を示す模式的な分解斜視図である。
【
図7】
図7は、キーボード装置を取り外した筐体を斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るカバー部材を備えた筐体の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、キーボード装置12を搭載した筐体14と、ディスプレイ16を搭載したディスプレイ筐体18とを備える。電子機器10は、筐体14とディスプレイ筐体18とをヒンジ20で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。
図1は、ディスプレイ筐体18を筐体14から開いて使用形態とした状態を示す。電子機器10は、クラムシェル型以外の電子機器でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体18は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体18には、ディスプレイ16が搭載されている。ディスプレイ16は、例えば有機ELや液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、
図1に示すキーボード装置12を操作する姿勢を基準として、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【0015】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面14a及び四周の側面を形成するカバー部材21と、下面14bを形成するプレート状のカバー部材22とを有する。カバー部材21,22は、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14は、後端部がヒンジ20を用いてディスプレイ筐体18と連結されている。
【0016】
上側のカバー部材21には、上面14aよりも一段低い位置にプレート状部材23が設けられている。プレート状部材23は、カバー部材21と一体に構成された筐体部材である(
図7も参照)。プレート状部材23は、カバー部材21と一体成形されてもよいし、カバー部材21と別体に成形された後にカバー部材21に固定されてもよい。カバー部材21は、例えば大部分がマグネシウム等の金属で形成されている。プレート状部材23は、例えば全体がマグネシウム等の金属で形成されている。
【0017】
プレート状部材23は、キーボード装置12を支持するものである。キーボード装置12は、その下面12aがプレート状部材23の上面23aに載置され、上面23aにねじ止め固定される。
【0018】
筐体14の上面14aには、キーボード装置12及びタッチパッド24が設けられている。キーボード装置12は、上面14aの大部分を構成している。筐体14の内部には、基板26と、冷却モジュール28とが収容されている。筐体14の内部には、さらにバッテリ装置等の各種電子部品や機械部品等が設けられる。
【0019】
基板26は、電子機器10のマザーボードである。基板26は、CPU(Central Processing Unit)30が実装されたプリント基板である。基板26は、さらに、GPU(Graphics Processing Unit)、通信モジュール、メモリ、及び接続端子等の各種電子部品が実装されている。基板26は、キーボード装置12の下方に配置されている。基板26は、キーボード装置12の裏面やプレート状部材23の内面にねじ止めされ、これにより筐体14に固定されている。基板26は、上面がカバー部材21に対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面となる。
【0020】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う処理装置である。CPU30は、電子機器10に搭載されたデバイス中で最大級の発熱体である。
【0021】
冷却モジュール28は、主としてCPU30が発生する熱を吸熱して輸送し、筐体14外へと排出する装置である。冷却モジュール28は、CPU30以外の発熱体、例えばGPU31等の熱も筐体14外に排出可能である。冷却モジュール28の大部分は、基板26の下方に配置されている。冷却モジュール28は、基板26の下面、キーボード装置12の裏面、及びプレート状部材23の内面等にねじ止めされ、これにより筐体14に固定されている。
【0022】
冷却モジュール28は、ファン装置32,33と、冷却フィン34,35と、ヒートパイプ36と、を備える。
【0023】
本実施形態の冷却モジュール28は、CPU30及びGPUの冷却のために用いられるため、ファン装置及び冷却フィンをそれぞれ一対ずつ搭載している。冷却モジュール28は、その冷却対象や必要能力等によっては、ファン装置及び冷却フィンをそれぞれ1台ずつ搭載した構成としてもよい。ファン装置32,33は、大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。冷却フィン34,35についても大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。そこで、以下ではファン装置32及び冷却フィン34について代表的に説明し、ファン装置33及び冷却フィン35の説明は省略する。
【0024】
ファン装置32,33は、それぞれ筐体14の左右の後角部付近に配置されている(
図1参照)。
図2に示すように、ファン装置32は、ファン筐体40と、回転部41と、インペラ42とを備える。ファン装置32は、回転部41がモータによって回転することで、その外周側に設けられたインペラ42が回転する遠心ファンである。
【0025】
ファン筐体40は、回転部41及びインペラ42を収納する扁平な箱体である。ファン筐体40は、下板40Aと、上板40Bと、側板40Cとを有する。各板40A~40Cは、例えば金属板である。
【0026】
下板40Aは、矩形板の一側を円形状に形成した略弾丸形状の薄板である。下板40Aは、ファン装置32の下面32aを形成する。下板40Aには、下吸気口44が形成されている。下吸気口44は、例えば円形状、ドーナツ形状、又は複数の楕円を周方向に並べた形状の貫通孔である。
【0027】
上板40Bは、下板40Aと同一の外形形状を有する薄板である。上板40Bは、ファン装置32の上面32bを形成する。上板40Bには、上吸気口45が形成されている。上吸気口45は、下吸気口44と同一又は同様な形状でよい(
図3Aも参照)。吸気口44,45は、インペラ42の回転によってファン筐体40の外部の空気を内部へと取り込むための開口である。
【0028】
側板40Cは、下板40Aと上板40Bとの間に形成されるファン筐体40の内部空間の側部を覆う湾曲板である。本実施形態の側板40Cは、上板40Bと一体に構成されている。
【0029】
ファン筐体40の後方を向いた側面は、側板40Cが設けられていないか又は側板40Cに穴が設けられることで、開口が形成されている。この開口が、ファン装置32の排気口46となる。排気口46は、冷却フィン34と対向配置される。
【0030】
冷却フィン34,35の前面は、それぞれファン装置32,33の直後に配置され、排気口46に面している。冷却フィン34,35の後面は、筐体14の後側面に開口した筐体排気口14cに面している。冷却フィン34は、複数のプレート状の金属フィンをプレートの表面で左右方向に等間隔に並べた構造である。各フィンは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接するフィンの間には、ファン装置32から送られた空気が通過する隙間が形成されている。冷却フィン34は、ヒートパイプ36を介してCPU30と熱的に接続されている。
【0031】
ヒートパイプ36は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ36は、1本又は2本以上の組で用いられる。ヒートパイプ36は、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、内部の密閉空間に作動流体が封入されたものであり、公知のヒートパイプでよい。ヒートパイプ36は、例えば一端の吸熱部がCPU30と熱的に接続され、他端の放熱部が冷却フィン34,35と接続されている。
【0032】
このような冷却モジュール28は、ヒートパイプ36によって運ばれたCPU30等の熱が冷却フィン34,35に伝達される。冷却フィン34,35に伝達された熱は、ファン装置32,33の排気口46からの送風により、筐体排気口14cを通過して筐体14の外部に排出される。
図1中の参照符号47,48は、CPU30等の熱を拡散するプレート型の熱輸送デバイスであり、例えば金属プレート又はベーパーチャンバである。
【0033】
図1及び
図2に示すように、キーボード装置12は、複数のキースイッチ50と、積層板52と、フレーム54とを備える。
【0034】
各キースイッチ50は、ガイド機構50a及びラバードーム50bで上下動可能に支持されたキーキャップ56を有する。ガイド機構50aは、キーキャップ56の下面と積層板52の上面との間を連結するシザー機構である。ラバードーム50bは、シリコーンゴム等の可撓性を有する弾性材料で形成されたドーム形状部材である。ラバードーム50bは、ガイド機構50aの中央に配置され、キーキャップ56と積層板52との間に介在している。各キーキャップ56は、例えば樹脂で成形され、平面視で略矩形に形成されている。各キーキャップ56は、操作面を形成する上板の四周縁部から側壁を垂下させた構成である。
【0035】
積層板52は、上から下に向かって順に、メンブレンシート57と、ベースプレート58と、導光板59と積層した構成である。メンブレンシート57は、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートである。メンブレンシート57は、キーキャップ56が押し下げされた際に圧縮されるラバードーム50bによって接点が閉じられる。ベースプレート58は、各所に切り起こしや孔部が形成された金属プレートである。導光板59は、下面に取り付けられた光源が発する光を左右方向に導き、光反射面で反射して各キーキャップ56を裏面から照射するための透明な樹脂板である。導光板59は省略してもよく、この場合はベースプレート58の下面に防水シートを積層するとよい。
【0036】
フレーム54は、樹脂や金属等で形成された網目状のプレートである。フレーム54は、カバー部材21と一体成形されてもよい。フレーム54は、各キーキャップ56の周囲を仕切るものである。フレーム54は、樹脂や金属等で形成されている。
【0037】
図2に示すように、筐体14は、下面14bから内部に空気Aを流入させるための下連通孔60を備える。
【0038】
下連通孔60は、筐体14の下面14bを形成するカバー部材22に形成された貫通孔である。下連通孔60は、例えば複数本のスリット状の孔部を並列した構成である。下連通孔60は、平面視でファン装置32,33の下吸気口44とオーバーラップした位置に設けられ、これと対向している。
【0039】
図2に示すように、筐体14は、上部から内部に空気Aを流入させるための開口部61及び上連通孔62を備える。
【0040】
開口部61は、プレート状部材23に形成された貫通孔である。開口部61は、ファン装置32,33の上吸気口45と連通している。開口部61は、例えば円形状、ドーナツ形状、又は複数の楕円を周方向に並べた形状の貫通孔である(
図3A参照)。
【0041】
上連通孔62は、キーボード装置12を上下方向に貫通した貫通孔であり、開口部61と連通している。上連通孔62は、上から下に向かって順に、隣接するキーキャップ56,56間の隙間と、切欠状凹部54aと、孔部12bとが連通することで形成されている。切欠状凹部54aは、フレーム54の下面側を切り欠くことで空気Aの流路を形成したものである。孔部12bは、積層板52に形成された貫通孔である。孔部12bは、例えばフレーム54の左右方向に沿う横枠部分の下方に設けられ、左右方向に延びた複数の矩形状の長孔である(
図6A参照)。
【0042】
従って、
図2に示すように、ファン装置32,33は、筐体14の下側の空気Aをカバー部材22の下連通孔60から下吸気口44を介して吸気する。同時に、ファン装置32,33は、筐体14の上側の空気Aを上連通孔62から上吸気口45及び開口部61を介して吸気する。ファン装置32,33は、各吸気口44,45から吸い込んだ空気Aを排気口46から筐体14外に排出する際、冷却フィン34,35を空冷する。これによりファン装置32,33は、筐体14の上下面から十分に空気を取り込むことができ、高い冷却効率が得られる。
【0043】
図2中の参照符号63a,63bは、スポンジ等で形成されたシール材である。シール材63a,63bは、キーボード装置12上に飲料等の液体がこぼされた際、筐体14内の基板26等への浸水を防止するためのものである。シール材63aは、下吸気口44及び下連通孔60をまとめて囲むようにリング状に設けられ、下吸気口44の周囲に止水壁を形成する。シール材63bは、上吸気口45及び開口部61をまとめて囲むようにリング状に設けられ、上吸気口45の周囲に止水壁を形成する。
【0044】
このように、本実施形態の筐体14は、下面14bだけでなく上面14aにも上連通孔62及び開口部61による開口が形成されている。このため、当該電子機器10は、ファン装置32,33のノイズが筐体14の上面14aから外部に漏れる。筐体14の上面14aからのノイズは、机の表面等で覆われる下面14bからのノイズよりも外部に漏れ易く、大きくなり易い。その結果、電子機器10は、筐体14外に漏れるノイズを抑制するためにファン装置32,33の駆動回転数を低下させる制御を行わざるを得ず、結果として冷却モジュール28の冷却性能が低下する。
【0045】
そこで、本実施形態の電子機器10は、筐体14の上面14aから漏れるノイズを抑制する構造(以下、「ノイズ抑制構造」と呼ぶ。)を備える。
【0046】
図3Aは、ファン装置32(33)及びプレート状部材23の模式的な分解斜視図である。
図3Bは、
図3Aに示すファン装置32(33)及びプレート状部材23の平面図である。
図4は、
図2に示す筐体14の一部拡大図である。
図3A及び
図3Bでは、プレート状部材23の外形をファン装置32(33)の外形と一致させて図示しているが、実際のプレート状部材23の外形はファン装置32(33)の外形よりも相当に大きい(
図2参照)。
【0047】
図2~
図4に示すように、プレート状部材23は、ファン装置32(33)の上に配置されている。プレート状部材23の下面23bとファン装置32(33)の上面32bとの間には、隙間Cが形成されている。
【0048】
図2~
図4から明らかなように、筐体14の平面視において、プレート状部材23の開口部61とファン装置32(33)の上吸気口45とは、互いに位置ずれしている。つまり開口部61は、上吸気口45の直上にはない。これにより上吸気口45から開口部61を介して上連通孔62に至る空気経路には、ノイズ抑制構造が形成されている。他方、筐体14の平面視において、キーボード装置12の上連通孔62は、一部がプレート状部材23の開口部61とオーバーラップしている。
【0049】
図4に示すように、このノイズ抑制構造は、バッファ空間Bと、入口N(in)と、出口N(out)とを有する。
図2及び
図4中に実線で示す矢印Nは、ノイズNの流れを模式的に示したものである。
【0050】
バッファ空間Bは、隙間Cの一部及び開口部61を含む空間である。バッファ空間Bは、入口N(in)と出口N(out)との間に形成された拡張空間である。入口N(in)は、プレート状部材23とファン筐体40の上板40Bとの間に形成された流路である。入口N(in)は、バッファ空間Bよりも幅狭な流路であり、開口部61と上吸気口45とが互いに位置ずれしていることで隙間Cに形成されている。出口N(out)は、キーボード装置12の積層板52とプレート状部材23との間に形成された流路である。出口N(out)は、バッファ空間Bよりも幅狭な流路であり、上連通孔62の孔部12bと開口部61とが互いの一部のみでオーバーラップしていることで形成されている。
【0051】
このようなノイズ抑制構造は、拡張型消音器を形成している。拡張型消音器とは、経路の一部に断面積が大きい拡張空間をし、流路を通ってきた音を拡張空間に開放し、ここで反射や干渉等を生じさせて音エネルギーを減衰させ消音するものであり、一般的に知られた技術理論である。
【0052】
従って、
図4に示すように、ファン装置32(33)で発生したノイズNは、上吸気口45を通してファン筐体40外に出た後、入口N(in)を通過してバッファ空間Bに開放される。これによりノイズNの音エネルギーは、バッファ空間Bで減衰される。バッファ空間Bで音エネルギーが減衰したノイズNは、出口N(out)から上連通孔62を通して筐体14外に放出される。なお、
図2に示すように、
図4で拡大したバッファ空間B以外のバッファ空間Bでも同様にノイズが低減される。
【0053】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、筐体14の平面視において、プレート状部材23の開口部61とファン装置32(33)の上吸気口45が互いに位置ずれしている。これにより電子機器10は、キーボード装置12を通して上吸気口45に空気Aを取り込む空気経路の一部がバッファ空間Bとして拡張される。その結果、この空気経路を通過するファン装置32(33)のノイズは、バッファ空間Bで減衰される。このため当該電子機器10は、筐体14の上面14aからのノイズの影響を抑制してファン装置32(33)の駆動回転数を高めることができ、冷却モジュール28の冷却性能を向上させることができる。
【0054】
この際、開口部61は、その開口面積が上吸気口45の開口面積よりも大きい(
図3B参照)。このため、電子機器10は、バッファ空間Bの容積を大きく確保することができ、高いノズル抑制効果が得られると同時に、空気Aの通風抵抗も低下する。またバッファ空間Bを形成する開口部61は、金属製のプレート状部材23に形成されている。これによりバッファ空間Bは、その内面が硬質な材料で形成されるため、一層高いノイズ抑制効果が得られる。
【0055】
当該電子機器10は、キーボード装置12に形成した上連通孔62は、その一部が開口部61とオーバーラップしている。また上記のように、開口部61は、ファン装置32(33)の上吸気口45と位置ずれしている。このため、
図4に示すように、電子機器10は、バッファ空間Bの前後にある入口N(in)及び出口N(out)の断面積を確実に絞ることができ、一層高いノイズ抑制効果が得られる。
【0056】
当該電子機器10は、開口部61及び上吸気口45をまとめて囲むように配置されたシール材63bを備える。このため、バッファ空間Bは、シール材63bと開口部61により略閉じられた空間となり(
図4参照)、一層高いノイズ抑制効果が得られる。
【0057】
図5に示すように、上連通孔62を構成する孔部12bは、プレート状部材23の開口部61の直上に配置されてもよい。
図5の構成例では、出口N(out)は、その断面積が入口N(in)の断面積よりも大きく、バッファ空間Bの出口断面積とほとんど変わらない。しかしながら、この構成例においても、開口部61と上吸気口45とが位置ずれしてバッファ空間Bを形成すると共に、上吸気口45から上連通孔62までが一直線上に並ばない。このため、この構成例でも入口N(in)からバッファ空間BにノイズNが開放されることによる音エネルギーの減衰効果は確保でき、十分なノイズ抑制効果は期待できる。
【0058】
図5では、キーボード装置12の下面12aと、ファン装置32(33)の上面32bとの間で隙間C及び開口部61によって形成された空間をバッファ空間Bとして図示している。また
図5では、出口N(out)は、積層板52の孔部12bとして図示している。しかしながら、
図5に示す構成例では、隙間C及び開口部61によって形成された空間に孔部12bを加えた空間をバッファ空間Bと見ることもでき、
図8に示す構成例でも同様である。この場合、フレーム54の切欠状凹部54a及びその周辺部が、出口N(out)となる。
【0059】
図6Aは、変形例に係る開口部66を有するプレート状部材23及びその周辺部の構成を示す模式的な分解斜視図である。
図6Bは、
図6Aに示すプレート状部材23及びその周辺部の平面図である。
図7は、キーボード装置12を取り外した筐体14を斜め上方から見た斜視図である。
図6A及び
図6Bでは、プレート状部材23及び導光板59の外形をファン装置32(33)の外形と一致させて図示しているが、実際のプレート状部材23及び導光板59の外形はファン装置32(33)の外形よりも相当に大きい(
図2参照)。
【0060】
上記したプレート状部材23の開口部61は、複数の楕円を周方向に並べた形状の貫通孔であった(
図3A参照)。これに対して、本変形例に係る開口部66は、
図6A~
図7に示すように、左右方向に延びた複数の矩形状の長孔で構成されている。この開口部66についても、平面視においてファン装置32(33)の上吸気口45と位置ずれしている。さらに開口部66は、一部のみが孔部12bとオーバーラップしている。このため、本変形例に係る開口部66を備えた構成においても、
図2及び
図5に示す構成例の場合と同様に、高いノイズ抑制効果が得られる。また開口部66は、キーボード装置12の孔部12bと類似した矩形状の単純な形状であるため、加工が容易で製造コストを低減できる。
【0061】
ここで、開口部66がファン装置32(33)の上吸気口45に対して、
図6Bに示すように位置ずれさせた構成と、オーバーラップさせた構成とで、ノイズを48(dB)で一定とした条件でファン装置32(33)の風量を測定した実験結果を説明する。その結果、位置ずれさせた構成は、オーバーラップさせた構成と比べて、ファン装置32(33)の風量が3~8%増加した。このことから、開口部61,66と上吸気口45とを位置ずれさせることで、ノイズ抑制効果が得られ、ファン装置32(33)の駆動回転数を上昇させて風量を増大させることができることが明らかとなった。
【0062】
図8は、変形例に係るカバー部材68を備えた筐体14の内部構造を模式的に示す要部拡大側面断面図である。
【0063】
図8に示すカバー部材68は、
図2に示すカバー部材21と比べてプレート状部材23を有していない点が異なる。このカバー部材68を備えた構成では、フレーム54がカバー部材68と一体形成され、キーボード装置12とは別体である。このため、
図8に示す構成例のキーボード装置12は、カバー部材68に対して下からねじ止めされ、各キーキャップ56がカバー部材68と一体形成されたフレーム54の網目に挿入される。
【0064】
図8に示す構成例では、キーボード装置12の直下にファン装置32(33)が配置されている。従って、
図8に示す構成例では、積層板52の最下層にある導光板59が、プレート状部材23の代わりにファン装置32(33)の上面32bとの間に隙間Cを形成するプレート状部材として機能する。
【0065】
そこで、ここでは、上連通孔62を構成する孔部12bのうち、導光板59に形成された孔部を開口部70と呼ぶ。開口部70は、
図2に示す開口部61と同様に、筐体14の平面視において、ファン装置32(33)の上吸気口45と位置ずれしている。このため、
図8に示す構成例の場合、バッファ空間Bは、隙間Cの一部に形成された空間である。入口N(in)は、バッファ空間Bよりも幅狭な流路であり、開口部70と上吸気口45とが互いに位置ずれしていることで導光板59と上板40Bとの間に形成されている。このため、本変形例に係る開口部70を備えた構成においても、
図5に示す構成例の場合と同様に、高いノイズ抑制効果が得られる。
【0066】
この構成例では、積層板52に形成した孔部12bのうち、少なくとも導光板59に形成した開口部70が上吸気口45と位置ずれしていればよい。また上記したように、
図8に示す構成例でも、バッファ空間Bは、隙間C及び開口部70を含む孔部12bによって形成された空間として考えてもよい。さらに
図8に示す構成例において、キーボード装置12が導光板59に代えて防水シートを備えた構成とした場合、防水シートは、ベースプレート58の下面に貼り付けられることである程度硬質なプレート状部材として機能する。このため、この場合は、少なくとも防水シートに設けた開口部70を上吸気口45と位置ずれさせればよい。
【0067】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
10 電子機器
12 キーボード装置
14 筐体
23 プレート状部材
28 冷却モジュール
30 CPU
32,33 ファン装置
45 上吸気口
52 積層板
54 フレーム
61,66,70 開口部
62 上連通孔
63a,63b シール材
【要約】
【課題】ノイズを抑制し、冷却性能を向上させることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、内部に発熱体を搭載した筐体と、前記筐体の上面側に設けられ、上下方向に空気を通過させる連通孔が設けられたキーボード装置と、前記筐体内に設けられ、上面に吸気口を有するファン装置と、前記キーボード装置の下で前記ファン装置の上に隙間を設けて配置されたプレート状部材と、を備える。前記プレート状部材には、前記連通孔と前記吸気口とを連通させる開口部が設けられ、前記筐体の平面視において、前記開口部と前記吸気口が互いに位置ずれしている。
【選択図】
図4