(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電子機器及び冷却モジュール
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230425BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230425BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
G06F1/16 312L
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H05K7/20 B
H05K7/20 F
H05K7/20 Q
H05K7/20 R
(21)【出願番号】P 2021200340
(22)【出願日】2021-12-09
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】真下 峻典
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3084059(JP,U)
【文献】特開2016-181547(JP,A)
【文献】特開2011-119775(JP,A)
【文献】特開2006-024756(JP,A)
【文献】特開2002-190685(JP,A)
【文献】特開平11-340669(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0250515(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0073864(US,A1)
【文献】米国特許第06328097(US,B1)
【文献】中国実用新案第204129641(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
厚み方向で一方側の外面を形成する第1カバー部材と、他方側の外面を形成する第2カバー部材とを有
し、一側壁に筐体排気口が形成された筐体と、
前記筐体内に設けられた発熱体と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
空気を取り込む吸気口と、空気を排出する排気口とを有する送風ファンと、
相互間に隙間を設けて並んだ複数のフィンを有し、第1面が前記第1カバー部材との間に第1の隙間を設けて配置され、第2面が前記第2カバー部材との間に第2の隙間を設けて配置され、前記第1面及び前記第2面と交差する側面が前記排気口に臨んで配置され
、該側面とは反対側の面が前記筐体排気口に臨んで配置されたヒートシンクと、
前記第1の隙間に配置され、前記ヒートシンクの前記第1面を
、前記筐体排気口側の一辺を除いて囲むように該第1面に取り付けられたシール部材と、
前記ヒートシンクの前記第1面を覆うように前記シール部材の表面に取り付けられることで、前記第1面との間に前記送風ファンからの空気が通過するダクトを形成するカバーシートと、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、前記発熱体の熱を吸熱するプレート型のベーパーチャンバを有し、
前記カバーシートは、熱伝導材料で形成された熱伝導シートで構成され、
前記熱伝導シートは、
前記ヒートシンクの前記第1面を覆う第1部分と、
前記第1部分から延長されて前記ベーパーチャンバに接続された第2部分と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記発熱体及び前記熱伝導シートは、前記ベーパーチャンバの表裏2面のうちの一方の面の異なる領域にそれぞれ接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記冷却モジュールは、さらに、一部が前記第2の隙間に配置され、前記発熱体の熱を吸熱して前記ヒートシンクに輸送するヒートパイプを有し、
前記ヒートパイプは、前記ベーパーチャンバの前記表裏2面のうちの他方の面と、前記ヒートシンクの前記第2面との間に接続されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器であって、
前記ヒートシンクは、前記第1面と前記側面とが交差する角部を面取りしたように形成され、前記排気口からの空気を前記ダクトへと導くダクト導入部と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
電子機器に搭載される冷却モジュールであって、
空気を取り込む吸気口と、空気を排出する排気口とを有する送風ファンと、
相互間に隙間を設けて並んだ複数のフィンを有し、各フィンの起立方向で一方側の第1面及び他方側の第2面と交差する側面が前記排気口に臨んで配置されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記第1面を
、前記側面側とは反対側の一辺を除いて囲むように該第1面に取り付けられたシール部材と、
前記ヒートシンクの前記第1面を覆うように前記シール部材の表面に取り付けられることで、前記第1面との間に前記送風ファンからの空気が通過するダクトを形成するカバーシートと、
を備えることを特徴とする冷却モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却モジュールであって、
さらに、プレート型のベーパーチャンバを備え、
前記カバーシートは、熱伝導材料で形成された熱伝導シートで構成され、
前記熱伝導シートは、
前記ヒートシンクの前記第1面を覆う第1部分と、
前記第1部分から延長されて前記ベーパーチャンバに接続された第2部分と、
を有する
ことを特徴とする冷却モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を冷却するための冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。この種の冷却モジュールは、ヒートパイプ等で輸送されたCPU等の熱を放熱するためのヒートシンク及び送風ファンを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器の筐体を構成するカバー部材は、その内面に凹凸形状を有する場合がある。ヒートシンクがこの凹凸形状に面している場合、送風ファンからの空気がカバー部材の凹凸形状に干渉し、ヒートシンクの表面を円滑に流れない懸念がある。このような場合、冷却モジュールは、ヒートシンクでの冷却効率が低下し、或いはヒートシンクの表面を流れる高温の排気が送風ファンの吸気口に逆流し、モジュール全体での冷却性能を低下させる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却性能を向上させることができる冷却モジュールを備えた電子機器及び冷却モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、厚み方向で一方側の外面を形成する第1カバー部材と、他方側の外面を形成する第2カバー部材とを有する筐体と、前記筐体内に設けられた発熱体と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、空気を取り込む吸気口と、空気を排出する排気口とを有する送風ファンと、相互間に隙間を設けて並んだ複数のフィンを有し、第1面が前記第1カバー部材との間に第1の隙間を設けて配置され、第2面が前記第2カバー部材との間に第2の隙間を設けて配置され、前記第1面及び前記第2面と交差する側面が前記排気口に臨んで配置されたヒートシンクと、前記第1の隙間に配置され、前記ヒートシンクの前記第1面を囲むように該第1面に取り付けられたシール部材と、前記ヒートシンクの前記第1面を覆うように前記シール部材の表面に取り付けられることで、前記第1面との間に前記送風ファンからの空気が通過するダクトを形成するカバーシートと、を有する。
【0007】
本発明の第2態様に係る冷却モジュールは、電子機器に搭載される冷却モジュールであって、空気を取り込む吸気口と、空気を排出する排気口とを有する送風ファンと、相互間に隙間を設けて並んだ複数のフィンを有し、各フィンの起立方向で一方側の第1面及び他方側の第2面と交差する側面が前記排気口に臨んで配置されたヒートシンクと、前記ヒートシンクの前記第1面を囲むように該第1面に取り付けられたシール部材と、前記ヒートシンクの前記第1面を覆うように前記シール部材の表面に取り付けられることで、前記第1面との間に前記送風ファンからの空気が通過するダクトを形成するカバーシートと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、冷却モジュールを上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す冷却モジュールの一部拡大図である。
【
図5】
図5は、筐体の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図6】
図6は、筐体の内部構造を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び冷却モジュールについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、
図1に示すように筐体14の上面にあるキーボード20を操作する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14は、カバー部材14Aを平板形状とし、カバー部材14Bをバスタブ形状としてもよい。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部がヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す平面図である。
図2は、筐体14をキーボード20の少し下で切断した状態を模式的に示す。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に亘って延在している。マザーボード24は、CPU(Central Processing Unit)30、及びGPU(Graphics Processing Unit)31の他、通信モジュール、メモリ等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面やカバー部材14Aの内面14Aaにねじ止めされている。マザーボード24は、上面がカバー部材14Aに対する取付面となり、下面がCPU30やGPU31等の実装面となる。
【0018】
CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。本実施形態の電子機器10の場合、GPU31は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体である。CPU30は、GPU31に次ぐ発熱量の発熱体である。
【0019】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0020】
次に、冷却モジュール22の構成を説明する。
【0021】
冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出する冷却装置である。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、CPU30及びGPU31の一方、又はこれら以外であってもよい。冷却モジュール22は、大部分がマザーボード24の下面に積層される。
【0022】
図3は、冷却モジュール22を上方から見た斜視図である。
図4は、
図3に示す冷却モジュール22の一部拡大図である。
図2~
図4に示すように、冷却モジュール22は、左右一対のヒートシンク36L,36Rと、左右一対の送風ファン38L,38Rと、前後一対のヒートパイプ40,41と、ベーパーチャンバ42とを備える。
【0023】
本実施形態の冷却モジュール22は、CPU30及びGPU31の冷却のために用いられるため、ヒートシンク及び送風ファンをそれぞれ一対ずつ搭載している。冷却モジュール22は、その冷却対象や必要能力等によっては、ヒートシンク及び送風ファンをそれぞれ1台ずつ搭載した構成としてもよい。ヒートシンク36L,36Rは、大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。送風ファン38L,38Rについても大きさや形状が多少異なる以外、基本的な構成は同一又は同様である。そこで、以下では、主として右側のヒートシンク36R及び送風ファン38Rについて代表的に説明し、左側のヒートシンク36L及び送風ファン38Lについては右側のものと同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0024】
図2~
図4に示すように、ヒートシンク36Rは、前後方向に沿って延在し、上下方向に起立した複数のプレート状のフィン36aを左右方向に等間隔に並べた構造である。隣接するフィン36a,36a間には、送風ファン38Rから送られた空気が通過する隙間G0が形成されている。隙間G0は、前後方向に貫通し、複数が左右方向に並んでいる。
【0025】
各フィン36aは、例えば下端面がプレート36bで接合され、一体化されている(
図5及び
図6参照)。各フィン36aは、上端面もプレートで接合され、一体化されていてもよい(
図6参照)。フィン36a及びプレート36bは、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属のプレートある。
図3及び
図4では、各フィン36a及びプレート36bをまとめて1つのブロックとして模式的に図示している。
【0026】
図2~
図4に示すように、送風ファン38Rは、ヒートシンク36Rの前部に配置され、後向きに開口した排気口38aがヒートシンク36Rの前側の側面36cに面している。送風ファン38Rは、ファン筐体38bの内部に収容されたインペラ部38c(
図5参照)をモータによって回転させる遠心ファンである。ファン筐体38bは、上面に開口した吸気口38dと、下面に開口した吸気口38eとを有する。吸気口38d,38eは、一方を省略してもよい。
【0027】
図2、
図5及び
図6に示すように、ヒートパイプ40,41は、例えば中央部が湾曲したパイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ40,41は、CPU30及びGPU31の熱をヒートシンク36L,36Rに輸送する。本実施形態では、2本のヒートパイプ40,41を前後に2本1組で並列して用いているが、ヒートパイプは1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプは、例えばCPU30とヒートシンク36Lを接続するものと、GPU31とヒートシンク36Rを接続するものとを分けて用いてもよい。
【0028】
ヒートパイプ40,41は、薄く扁平な金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入したものである。金属パイプは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間は、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。ウイックは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0029】
図2~
図4に示すように、ベーパーチャンバ42は、ヒートパイプの一種類であるプレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ42は、CPU30及びGPU31の熱を拡散すると共に、ヒートパイプ40,41に伝達する。ベーパーチャンバ42は、2枚の薄い金属プレート間に密閉空間を形成し、この密閉空間に作動流体を封入したものである。ベーパーチャンバ42において、金属プレートの材質、作動流体の種類、及び密閉空間内に設置されるウイックの構成等は、上記したヒートパイプ40,41と同様でよい。
【0030】
図2及び
図4中の参照符号44,45は、金属プレートである。金属プレート44,45は、アルミニウムや銅等の金属で形成され、ベーパーチャンバ42が拡散した熱をさらに拡散し放熱する補助的な熱拡散部材である。金属プレート44,45に代えて、ベーパーチャンバ42を延出して用いてもよい。
【0031】
以上のように構成された冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ42の上面42aがCPU30及びGPU31に対してそれぞれ受熱板30a,31aを介して接続される。受熱板30a,31aは、銅やアルミニウム等の熱伝導率が高い金属で形成されたプレートであり、省略されてもよい。ヒートパイプ40,41は、受熱部となる中央部がベーパーチャンバ42の下面42bに接合され、放熱部となる両端部がそれぞれヒートシンク36L,36Rの下面36dに接合される。
【0032】
これによりCPU30及びGPU31が発生した熱は、ベーパーチャンバ42で吸熱及び拡散されると共に、ヒートパイプ40,41を介してヒートシンク36L,36Rまで効率よく輸送された後、送風ファン38L,38Rの送風によって筐体14の外部へと排出される。なお、筐体14の後側壁には、ヒートシンク36L,36Rを通過した空気を外部に排出するための筐体排気口46が開口形成されている。また、ベーパーチャンバ42で拡散した熱は、金属プレート44,45を介してさらに拡散及び放熱される。
図5中に1点鎖線で示す矢印は、送風ファン38Rから排出される空気Aの流れを模式的に示したものである。
【0033】
次に、ヒートシンク36R及びその周辺部のより詳細な構造を説明する。
【0034】
図5は、筐体14の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図6は、筐体14の内部構造を模式的に示す正面断面図である。
図5は、前後方向に沿う鉛直平面で筐体14をヒートシンク36R及び送風ファン38Rを通過する位置で切断した図である。
図6は、左右方向に沿う鉛直平面で筐体14をヒートシンク36Rを通過する位置で切断した図である。
【0035】
図5及び
図6に示すように、ヒートシンク36Rは、上面36eがカバー部材14Aの内面14Aaとの間に隙間G1を設けて配置され、下面36dがカバー部材14Bの内面14Baとの間に隙間G2を設けて配置されている。ヒートシンク36Lもヒートシンク36Rの場合と略同様に筐体14内に配置される。
【0036】
図3~
図6に示すように、ヒートシンク36Rは、上面36eにシール部材48及びカバーシート50が設けられている。本実施形態のヒートシンク36Rは、さらに上面36eと側面36cとの間の角部に、面取り状のダクト導入部52が設けられている。ヒートシンク36Rは、下面36dにヒートパイプ40,41が接続されている。
【0037】
図3及び
図4に示すように、シール部材48は、ヒートシンク36Rの上面36eの外周縁部を囲むように矩形の枠状に形成され、上面36eに粘着固定されている。シール部材48は、例えば帯状に延在するスポンジやゴム等のクッション性を有する部材である。本実施形態の場合、シール部材48は、さらに、送風ファン38Rの上面の外周縁部にも固定され、吸気口38dを囲んでいる。シール部材48は、ヒートシンク36Rの上面36eを囲む部分の一辺は、送風ファン38Rの排気口38aの前方で左右方向に延びている。
【0038】
シール部材48は、隙間G1に配置され、上面36eとカバー部材14Aの内面14Aaとの間を塞ぐ。これによりシール部材48は、ダクト54の一部を構成する。ダクト54は、送風ファン38Rから送られた空気Aをヒートシンク36Rの上面36eに沿って流通させる空気経路である。ヒートシンク36Rは、下部はヒートパイプ40,41の熱で高温になり易いが、ヒートパイプ40,41から遠い上部は温度が上がりにくい。ダクト54は、上面36eに送風ファン38Rからの低温の空気を流通させることで、ヒートシンク36Rの上部での放熱を促進するものである。
【0039】
図5に示すように、本実施形態のカバー部材14Aの内面14Aaは、例えば突起14Abが設けられた凹凸形状を有する。このため、シール部材48は、
図5及び
図6に示すように、例えば一部が内面14Aaに密着できずに隙間を生じ、ダクト54からの空気漏れを惹起する。この空気漏れは、ヒートシンク36Rの放熱効率を低下させるだけでなく、漏れた高温の空気が吸気口38dに逆流する懸念もあり、冷却モジュール22全体の冷却性能を低下させる。なお、仮にカバー部材14Aの内面14Aaが凹凸形状のない平坦な場合でも、例えば隙間G1の高さが大きく、シール部材48を上面36e及び内面14Aaに密着させるのが難しい場合等にも空気漏れや放熱効率低下の問題がある。
【0040】
そこで、本実施形態の冷却モジュール22は、シール部材48の表面にカバーシート50を取り付けてヒートシンク36Rの上面36eをテント状に覆い、密閉性が高く、高さが大き過ぎないダクト54を形成している。
【0041】
図3~
図6に示すように、カバーシート50は、例えば矩形状の薄いシート状部材である。カバーシート50は、ヒートシンク36Rの上面36eをフィン36aの並び方向に跨ぎ、一部はベーパーチャンバ42の上面42aまで延在している。
【0042】
カバーシート50は、例えばグラファイトシート、銅やアルミニウム等の金属シート、又はPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂シートで構成される。カバーシート50は、グラファイトや銅のような高い熱伝導性を有する材質で形成された熱伝導シートであることが好ましい。本実施形態のカバーシート50は、極めて高い熱伝導率を有するグラファイトシートで構成している。
【0043】
カバーシート50は、第1部分50aと、第2部分50bとを有する。
【0044】
第1部分50aは、ヒートシンク36Rの上面36eを覆う部分である。第1部分50aは、隙間G1に配置され、上面36eを囲む枠状のシール部材48の上面に粘着固定されている。具体的には、第1部分50aは、前後方向ではヒートシンク36Rの上面36eから排気口38aを跨いで送風ファン38Rの上面の一部までを覆い、左右方向では上面36eの大部分を覆っている。
【0045】
例えばヒートシンク36Rがダクト導入部52を持たない構成の場合、シール部材48は上面36eの外周のみに配置されてもよい。この場合、第1部分50aは、前後方向ではヒートシンク36Rの上面36eのみを覆う形状となる。
【0046】
第1部分50aは、上面36eとの間にシール部材48の厚みと同じ高さの隙間G3を形成する。隙間G3は、ダクト54の内部空間であり、少なくとも上面36e、カバーシート50、及びシール部材48で囲まれている。
【0047】
第2部分50bは、第1部分50aから左側方に延長された部分であり、ベーパーチャンバ42の上面42aに粘着固定されている。第2部分50bは、ベーパーチャンバ42の熱を吸収し、第1部分50aまで輸送する。後述する表1に示す実施例1のように、第2部分50bは省略してもよい。
【0048】
本実施形態の場合、ヒートシンク36Rの上下方向の高さは約11mmであり、ベーパーチャンバ42の厚みは約1.2mmである。また、ヒートシンク36Rの下面36dは、ベーパーチャンバ42の下面42bと略面一に配置されている(
図6参照)。このため、上面36e,42a間には、約9.8mmの段差56がある。カバーシート50は、部分50a,50b間に曲げ部50cを有し、この曲げ部50cが段差56を乗り越えている。なお、ヒートパイプ40,41の厚みは約1.4mmである。
【0049】
また、
図4に示すように、GPU31及びカバーシート50の第2部分50bは、ベーパーチャンバ42の上面42aの異なる領域にそれぞれ接続されている。すなわち冷却モジュール22は、一般的にGPU31よりも大きな表面積をベーパーチャンバ42の余剰の上面42aを利用してカバーシート50の第2部分50bを接続している。これにより冷却モジュール22は、GPU31及びカバーシート50が干渉を防止しつつ、両者の設置スペースの効率化を図っている。
【0050】
図3~
図5に示すように、ダクト導入部52は、ヒートシンク36Rの上面36eと側面36cとが交差する角部に設けられた面取りである。ダクト導入部52は、例えば並び方向で両端を除く大部分のフィン36aの角部に形成されている。ダクト導入部52の下端部は、対向する送風ファン38Rの排気口38aの上下中央部或いはその近傍に位置している。これによりダクト導入部52は、排気口38aから排出された空気をダクト54へと円滑に流通させる空気経路を形成している。
【0051】
例えば、
図5に示すように側面36cと排気口38aとの間に隙間がある場合、上面36eよりも排気口38aが上に突出している場合、又は、上面36eに
図6に示すプレートがなく、隙間G0が上面36eで開口している場合等には、ダクト導入部52は省略してもよい。このような場合は、ダクト導入部52を設けなくても、排気口38aからの空気が十分にダクト54に流通するからである。なお、ヒートシンク36Rは、上面36eに
図6に示すプレートがない場合は、各フィン36aの上端面を含む仮想平面が実質的に上面36eとなり、プレートを持たない側面36cも同様である。
【0052】
次に、カバーシート50による冷却能力の向上効果について実験結果を示して説明する。
【0053】
実験は、PET製の樹脂シートで形成し、第2部分50bを省略したカバーシート50を用いた実施例1と、グラファイトシートで形成し、部分50a,50bを設けたカバーシート50を用いた実施例2について、冷却モジュール22を電子機器10に搭載して各部温度を測定した。表1は、実施例1,2の実験結果を示す。
【0054】
表1に示すように、実施例2は、ほとんどの測定位置、具体的にはCPU30(CPU温度)、GPU31(GPU温度)、キーボード20の表面(キートップ温度)、及びカバー部材14B(下カバー部材温度)の温度が、実施例1よりも低温であった。このことから、カバーシート50は、グラファイトシートのような熱伝導シートで形成し、第1部分50a及び第2部分50bを設けることで、冷却モジュール22の冷却性能が向上することが分かった。
【0055】
このような結果が得られた理由として、第1に、実施例2はベーパーチャンバ42の熱がグラファイトシートからなるカバーシート50で第2部分50bから第1部分50aへと効率よく輸送され、ダクト54を流れる送風ファン38Rからの空気で効率的に冷却されたことが考えられる。第2に、実験で使用したヒートシンク36Rは、11mmと大きな高さを有していた。このため、実施例1は高温のヒートパイプ40,41からの熱が各フィン36aの上部に移動する前に冷却され、各フィン36aの上部は冷却モジュール22の冷却性能への寄与が少なかったと考えられる。一方、実施例2は、第2部分50bから輸送されたベーパーチャンバ42の熱で各フィン36aの上部を有効に活用でき、その結果、冷却モジュール22の冷却性能が向上したことが考えられる。つまり冷却モジュール22は、ヒートシンク36Rの高さを利用して、その上下をカバーシート50によるダクト54とヒートパイプ40,41とでサンドイッチすることで、高い冷却効率を得ることを可能としている。
【0056】
ところで、表1に示すように、カバー部材14Aの温度(上カバー部材温度)は、実施例2よりも実施例1の方が低温であった。この理由として、実施例2は、ベーパーチャンバ42の熱がカバー部材14Aに近接したヒートシンク36Rの上部に輸送された結果、この輸送された熱でカバー部材14Aの温度が上昇したためと考えられる。但し、表1から明らかなように、実施例2の場合も、カバー部材14Aの温度は37.7℃と十分に低く、実用上の問題はないと考えられる。特に、送風ファン38Rの風量が大きい場合は、ダクト54の風量を十分に確保でき、実施例2の場合にもカバー部材14Aの温度上昇を一層抑制できる。
【0057】
なお、実施例1の構成についても、カバーシート50を用いない従来構成よりは、ダクト54による冷却性能の向上効果が得られるため、十分に有効であることは言うまでもない。
【0058】
【0059】
図5中の参照符号58は、送風ファン38Rの下面に形成された補助排気口である。補助排気口58は、ファン筐体38bの下面を形成するプレートの一部を切り欠いて形成したものであり、排気口38aの下方を含むファン筐体38bの後部に配置されている。
【0060】
補助排気口58は、インペラ部38cによって送られる空気の一部を隙間G2へと流通させるための開口である。補助排気口58からの空気Aは、隙間G2を流れつつ、ヒートパイプ40,41及びヒートシンク36Rを冷却する。送風ファン38Rの下面には、補助排気口58から排出された空気が吸気口38eに逆流することを防止するためのシール部材60が設けられている。
【0061】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の場合、左側のヒートシンク36Lの上面には、シール部材48を設けているが、カバーシート50は設けていない。しかしながら、当然、このヒートシンク36Lにもカバーシート50を設けてもよい。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0063】
上記では、上面36eを囲むシール部材48は、矩形の枠状である構成を例示した。しかしながら、シール部材48は、例えば上面36eの3辺のみを囲む三方枠等で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 電子機器
12 ディスプレイ筐体
14 筐体
14A,14B カバー部材
22 冷却モジュール
30 CPU
31 GPU
36L,36R ヒートシンク
38L,38R 送風ファン
40,41 ヒートパイプ
42 ベーパーチャンバ
48,60 シール部材
50 カバーシート
52 ダクト導入部
54 ダクト
【要約】
【課題】冷却性能を向上させる。
【解決手段】電子機器は、筐体と、筐体内に設けられた発熱体と、筐体内に設けられ、発熱体を冷却する冷却モジュールとを備える。冷却モジュールは、送風ファンと、相互間に隙間を設けて並んだ複数のフィンを有し、第1面が前記第1カバー部材との間に第1の隙間を設けて配置され、第2面が前記第2カバー部材との間に第2の隙間を設けて配置されたヒートシンクと、ヒートシンクの第1面を囲むように該第1面に取り付けられたシール部材と、ヒートシンクの第1面を覆うようにシール部材の表面に取り付けられることで、第1面との間に送風ファンからの空気が通過するダクトを形成するカバーシートとを有する。
【選択図】
図6