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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/69 20060101AFI20230425BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230425BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K31/69
A61P17/06
A61K9/107
A61K47/14
A61K47/10
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021505277
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 GB2018052191
(87)【国際公開番号】W WO2020025910
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】506029037
【氏名又は名称】エムシー2・セラピューティクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MC2 Therapeutics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・クラッチリー
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515344(JP,A)
【文献】特開2017-105763(JP,A)
【文献】特表2009-531292(JP,A)
【文献】特許第6975244(JP,B2)
【文献】Journal of the American Academy of Dermatology,2007年,Vol.56, No.2, Suppl.2,p.AB177, Abstract No.P2712
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む、局所適用のための組成物であって、不連続液体油相が25℃にて液体であり、組成物がポリアフロン分散体を含まない、組成物。
【請求項2】
クリサボロールが、組成物重量に対して1~5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クリサボロールが、組成物重量に対して1.5~3.5重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
クリサボロールが、主に不連続液体油相中にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、1つ以上の更なる医薬的活性物質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
不連続液体油相が、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルが、不連続液体油相重量に対して少なくとも60重量%の総量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
不連続液体油相が、組成物重量に対して:
(i)5~45重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~45重量%の総量のセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル;および
(iii)5~45重量%の総量のヒマシ油および/またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物重量に対して5重量%未満の合計界面活性剤含有量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物重量に対して3重量%未満の合計界面活性剤含有量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、架橋共重合体を含む界面活性剤を含み、該架橋共重合体が、アクリル酸モノマー単位を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、組成物重量に対して5重量%未満の、モノステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、リシノール酸セチル、ステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸PEG-2、ソルビタンモノステアレート、またはそれら2つ以上の混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、組成物重量に対して少なくとも10重量%の水を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、ローション剤またはクリーム剤の形態である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも95重量%のクリサボロールが、組成物中に溶解する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも95重量%のクリサボロールが、4~20℃の範囲の温度全体にわたって、組成物中に溶解する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が、60%RH±5%で測定する場合、25℃±2℃にて少なくとも12か月間化学的および/または物理的に安定である;および/または組成物が、60%RH±5%で測定する場合、40℃±3℃にて少なくとも6か月間化学的および/または物理的に安定である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置における使用のための、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
アトピー性皮膚炎または乾癬の処置における使用のための、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物20~300 gを含む、包装物。
【請求項21】
下記工程:
(i)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、親水性溶媒を準備する工程;
(ii)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、疎水性溶媒を準備する工程;および
(iii)適切な条件下で、親水性溶媒を疎水性溶媒と混合して、連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む局所適用のための組成物を形成する工程
を含む、組成物の製造方法であって、
不連続液体油相が25℃にて液体であり、組成物がポリアフロン分散体を含まない、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所用組成物に関する。特に、本発明は、既存のクリサボロール(crisaborole)製剤と比較して皮膚浸透性、安定性および/または患者コンプライアンスが向上した、クリサボロールを含む局所用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、一般的な慢性再発性の炎症性皮膚疾患である。疾患の正確な原因は、議論の余地があるが、湿疹性病変、皮膚乾燥および強度の掻痒(かゆみ)により特徴付けられる。アトピー性皮膚炎の有病率は、近年増加しているという強力な証拠もある。状態は、軽度から重度まで変化し、その後のクオリティ・オブ・ライフを損ない得る。
【0003】
現在の処置計画は、皮膚軟化クリーム剤の使用を含み、そして段階的な規模で他の治療でこれを補う。酢酸ヒドロコルチゾンなどの弱いコルチコステロイドの局所適用は、通常次のステップであり、必要な場合にのみ使用するコルチコステロイドの強度を上げる。しかしながら、局所コルチコステロイドに関連する多くの潜在的な欠点がある。より強いコルチコステロイドが特に該当するこれらの欠点は、皮膚薄化、タキフィラキシーおよび反跳現象を含み得る。これらおよび他の潜在的な副作用のため、コルチコステロイドは、顔面領域での使用は勧められない。これは、顔面で発症するアトピー性皮膚炎が患者のクオリティ・オブ・ライフに最も有害であり得るという事実にもかかわらずである。さらに、アトピー性皮膚炎は慢性疾患であるが、コルチコステロイドの継続使用は推奨されない。
【0004】
最近、クリサボロールが、少なくとも2歳の患者における軽度から中度のアトピー性皮膚炎の処置について米国食品医薬品局(FDA)により承認された。クリサボロールは、非ステロイド性の局所ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤である。その作用メカニズムは、未だ完全には理解されていないが、クリサボロールが標的細胞においてPDE-4を阻害すると考えられている。次いで、これは、アトピー性皮膚炎の兆候および症状を引き起こすと考えられる炎症誘発サイトカインの産生を減少させると考えられている。クリサボロールはまた、乾癬などの他の炎症性皮膚状態のために開発中である。
【0005】
FDA承認のクリサボロール製剤(商品名Eucrisa(登録商標))は、クリサボロール濃度が2%である非水性局所軟膏剤である。水が存在しないため、加水分解またはpH不適合による化学的分解の可能性が制限され、添加剤の大部分が密封性であるため、活性物質の浸透を助ける高度の閉鎖を生じる。しかしながら、ほとんどの軟膏剤と同様に、水を欠き、パラフィンおよびワックス成分が存在することから、製剤の審美的プロファイルは不良となる(S.E. Wolverton, Comprehensive Dermatologic Drug Therapy 3rd Edition (2012), p13)。これは、患者コンプライアンスを潜在的に制限し得る。
【0006】
US2016/0318955A1は、抗炎症剤としてホウ素含有小分子を開示しており、クリサボロールを例示する。また、当該文献は、文献に記載のホウ素化合物をクリーム剤に製剤化し得ることを示唆しており、いくつかのホウ素含有小分子を含有するが、クリサボロール自体を含有しないクリーム剤の製剤例を提供する。クリーム剤の製剤はすべて、固体の乳化剤および構造化剤(実施例28Bおよび29では8重量%のモノステアリン酸グリセリル)を含めることにより油相を固化した、水中油型分散体である。固体の乳化剤は、加熱し、油相へ組み込むのに必要であるが、その後、乳化後の冷却時に油相を固化する。WO2017/093857A1において、これら2つの実施例が繰り返されているが、活性物質としてクリサボロールを用いている。
【0007】
クリーム剤は、良好な審美的プロファイルを一般的に有し、患者コンプライアンスの向上をもたらすという意味で非水性の軟膏剤に対して有利である。しかしながら、US2016/0318955A1は、クリーム剤の物理的/化学的安定性、または薬物が溶液中に残存するかについて何ら記載していない。クリサボロールは、特に比較的高濃度(例えば2%)で存在するとき、US2016/0318955A1に記載のクリーム剤の製剤から析出する傾向があると考えられる。これは、製剤の物理的不安定を生じ得る。クリサボロールの低溶媒和は皮膚浸透性に対して負の影響も及ぼし得る。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、先行技術の軟膏剤の製剤より良好な審美性を有して皮膚へクリサボロールを送達できる製剤を提供することである。言い換えれば、本発明の1つの目的は、先行技術の軟膏剤の製剤より良好な患者コンプライアンスを有するクリサボロール製剤を提供することである。
【0009】
先行技術のクリーム剤および/または軟膏剤の製剤より良好な皮膚浸透性を有するクリサボロール製剤を提供することが代替的および/または付加的目的である。
【0010】
クリサボロールが、完全に溶媒和されているか、または少なくとも既存のクリーム剤の製剤より溶媒和されているクリーム剤の製剤を提供することが代替的および/または付加的目的である。
【0011】
既存のクリーム剤の製剤と比較して化学的および/または物理的安定性が向上したクリーム剤の製剤を提供することが代替的および/または付加的目的である。
【0012】
第1態様によれば、本発明は、連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む局所適用のための組成物を提供する。
【0013】
有利には、本発明者らは、不連続液体油相を含む本発明が、US2016/0318955A1に記載の固化油相含有製剤と比較して皮膚浸透性の向上を達成することを見出した。液体油相の使用によりクリサボロールの皮膚浸透が向上するという本発明者らの発見は、この効果が同様の別の医薬的活性成分について知られていないため、驚くべきかつ予想外である。理論に拘束されること望むものではないが、固体の乳化剤および構造化剤は組成物を物理的に安定化させるのに役立つが、US2016/0318955A1に記載の濃度での組み込みは、活性物質の浸透を阻害すると考えられる。特に、固体の乳化剤および構造化剤により引き起こされる油相の固化は、クリサボロールが皮膚へ拡散する能力を制限すると考えられる。実際、クリサボロールの拡散は、固化した油相により異常に抑制されているようである。
【0014】
本発明者らはまた、US2016/0318955A1に記載の固体油相より不連続液体油相の使用が組成物の物理的安定性を損なわないことを見出した。固相が製剤を物理的に安定化すると予想されることを考えると、これは驚くべきことである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の種々の態様/実施態様をより詳細に定義する。そのように定義される各態様/実施態様は、明確に反する指示がない限り、任意の他の1つまたは複数の態様/実施態様と組み合され得る。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の1つまたは複数の特徴と組み合され得る。
【0016】
本発明は、局所適用のための組成物を提供する。局所適用のための組成物は、本明細書において、ヒトまたは動物の身体の一部への直接適用に適する組成物と定義される。好ましくは、組成物は、皮膚、例えば顔面、頭皮、足、四肢または胴体への直接適用に適する。
【0017】
組成物は、連続水相および不連続液体油相を含む。言い換えれば、組成物は、連続水相中に不連続液体油相の分散体を含む。相は、物理的に別個である。好ましくは、連続水相は水を含むが、これとは別にまたはこれに加えて、本明細書に記載のものなどの極性水混和性溶媒を含み得る。本組成物に連続水相を含めることにより、軟膏剤とは全く異なってローション剤またはクリーム剤の形態で提供することが可能になる。したがって、本組成物は、先行技術の軟膏剤と比較して審美的プロファイルが向上し、これにより患者コンプライアンスを向上させる。好ましくは、組成物は、ローション剤またはクリーム剤の形態である。
【0018】
不連続液体油相は均質であると理解されたい。言い換えれば、それは固体の含有物または沈殿物を含有しない。好ましくは、不連続液体油相は、25℃の温度にて液体である。好ましくは、不連続液体油相は、25℃の温度および105 Paの圧力にて液体である。好ましくは、不連続液体油相は、1気圧にて、22℃未満、より好ましくは20℃未満の融点を有する。
【0019】
組成物は、クリサボロールを含む。クリサボロールの化学的構造を図1に示す。クリサボロールの供給源は、好ましくは無水クリサボロールであるが、クリサボロールの他の供給源が用いられ得ることは理解される。特に、本明細書で用いられる用語「クリサボロール」は、その遊離酸、塩(例えば医薬的に許容される塩)、プロドラッグ、エステル、溶媒和物および水和物を包含する。しかしながら、本明細書に記載の組成物へ組み込まれるべきクリサボロールの量は、クリサボロールの無水形態に基づく。最終組成物中で所望の量を提供するために用いられる供給源に応じて組成物の製造で用いられる量を調整することは、当業者の能力内である。
【0020】
好ましくは、クリサボロールは、組成物重量に対して、1~5重量%、より好ましくは1.5~5重量%、さらにより好ましくは1.5~4重量%、最も好ましくは1.5~3.5重量%の量で存在する。本発明者らは、本発明により、クリサボロールが、比較的高濃度で存在するとき、組成物中で完全に溶媒和されたままであることが可能になることを見出した。好ましくは少なくとも95重量%のクリサボロール、より好ましくは少なくとも98重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が、組成物中に溶解する。言い換えれば、好ましくは少なくとも95重量%のクリサボロール、より好ましくは少なくとも98重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%が、組成物における溶液中にある。好ましくは、クリサボロールは、4~20℃の範囲の温度全体にわたってこれらの濃度で溶解する。
【0021】
好ましくは、クリサボロールは、主に不連続液体油相中にある。「主に」は、組成物中の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、およびより好ましくは少なくとも99重量%のクリサボロールが、不連続液体油相に存在することを意味する。
【0022】
高クリサボロール濃度でのクリサボロールの良好な溶媒和を達成するために本発明者らにより開発された1つの戦略は、高油負荷および/または油の特定の組合せを用いて、不連続液体油相中でクリサボロールを溶媒和させることである。したがって、いくつかの実施態様において、不連続液体油相は、組成物重量に対して、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の量で存在する。好ましくは、不連続液体油相は、組成物重量に対して最大で80重量%の量で存在する。これらの実施態様において、クリサボロールは、好ましくは主に不連続液体油相中にある。
【0023】
不連続液体油相は、油、好ましくは医薬的に許容される油を含む。好ましくは、油は、組成物重量に対して、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%の量で存在する。好ましくは、油は、組成物重量に対して最大で80重量%の量で存在する。これらの実施態様において、連続水相は、好ましくは、C1-C4アルコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、炭酸プロピレンおよび2つ以上のそれらの混合物からなる群より選択される極性水混和性溶媒を、組成物重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満含む。
【0024】
本発明で用いられ得る油の例としては、ココナッツ油、スクアラン、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、修飾トリグリセリド、カプリル酸カプリン酸グリセリド、分画トリグリセリド、トリカプリン酸グリセリル、トリカプロン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル、トリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリウンデカン酸グリセリル、リノール酸グリセリド、飽和ポリグリコール化グリセリド、主にC8-C12脂肪酸鎖を含有する合成中鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、修飾トリグリセリド、分画トリグリセリド、イソステアリン酸イソステアリル、アジピン酸ジイソプロピル、鉱油、ジメチコン、シクロメチコン、水素化ポリイソブテン、ヘプタメチルノナン、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明で用いられ得る油の更なる例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、ヒマシ油、オレイン酸、オレイルアルコール、およびそれらの混合物、所望により1つ以上の上記油との混合物が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施態様において、油は、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはセバシン酸ジブチルを含む。これらの実施態様において、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはセバシン酸ジブチルは、不連続液体油相重量に対して、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%の総量で存在する。好ましくは、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはセバシン酸ジブチルは、不連続液体油相重量に対して最大でも80重量%の総量で存在する。好ましくは、油は、アジピン酸ジイソプロピルを、より好ましくは上記の量で含む。これらの好ましい油は、クリサボロールに対して良好な溶解プロファイルを有することが見出された。しかしながら、これらの油を油相の高い割合として用いる場合、安定な分散体を得ることは困難であることが知られている。驚くべきことに、本発明者らは、これらの油を本発明において不連続液体油相の高い割合として組み込み得ることを見出した。
【0026】
これらの実施態様において、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはセバシン酸ジブチルに加えて、油は、好ましくは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油、より好ましくはヒマシ油をさらに含む。トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油は、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはセバシン酸ジブチルの粘度を増加させ、これによりその加工性を向上させる。それはまた、特に低濃度の界面活性剤を用いるとき、組成物の物理的安定性を向上させ得る。驚くべきことに、そして予想外にも、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油を含めることは、活性物質の皮膚拡散の向上を提供することが見出された。いくつかの実施態様において、油は、アジピン酸ジイソプロピルおよびヒマシ油を含むか、またはそれらからなる。
【0027】
好ましくは、油は、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルを含む。これらの実施態様において、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルは、不連続液体油相重量に対して、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%の総量で存在する。好ましくは、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルは、不連続液体油相重量に対して最大でも80重量%の総量で存在する。好ましくは、油は、アジピン酸ジイソプロピルを、より好ましくは上記の量で含む。これらの好ましい油は、クリサボロールに対して良好な溶解プロファイルを有し、実施例6に示すように、インビトロモデルにおいて活性物質の良好な皮膚拡散を達成することが見出された。しかしながら、これらの油を油相の高い割合として用いる場合、安定な分散体を得ることは困難であることが知られている。驚くべきことに、本発明者らは、これらの油を本発明において不連続液体油相の大部分として組み込み得ることを見出した。
【0028】
これらの実施態様において、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルに加えて、油は、好ましくは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油、より好ましくはヒマシ油をさらに含む。これらの更なる油の効果は、上記で説明されている。好ましくは、油は、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル、および、存在する場合、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油から本質的になるか、またはそれらからなる。好ましくは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルおよび/またはヒマシ油は、不連続液体油相重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも25重量%の総量で存在する。
【0029】
特定の特に好ましい実施態様において、油は、組成物重量に対して:
(i)5~45重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~45重量%の総量のセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル;および
(iii)5~45重量%の総量のヒマシ油および/またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
を含む。好ましくは、油は、好ましくは上記の量で、成分(i)から(iii)から本質的になるか、またはそれらからなる。
【0030】
特定の特に好ましい実施態様において、油は、組成物重量に対して:
(i)5~45重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~45重量%の総量のセバシン酸ジエチル;および
(iii)5~45重量%の総量のヒマシ油
を含む。好ましくは、油は、好ましくは上記の量で、成分(i)から(iii)から本質的になるか、またはそれらからなる。
【0031】
特定の特に好ましい実施態様において、油は、組成物重量に対して:
(i)5~33重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~33重量%の総量のセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル;および
(iii)5~33重量%の総量のヒマシ油および/またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
を含む。好ましくは、油は、好ましくは上記の量で、成分(i)から(iii)から本質的になるか、またはそれらからなる。
【0032】
特定の特に好ましい実施態様において、油は、組成物重量に対して:
(i)5~33重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~33重量%の総量のセバシン酸ジエチル;および
(iii)5~33重量%の総量のヒマシ油
を含む。好ましくは、油は、好ましくは上記の量で、成分(i)から(iii)から本質的になるか、またはそれらからなる。
【0033】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物重量に対して、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の水を含む。好ましくは、組成物は、組成物重量に対して、最大でも60重量%、より好ましくは最大でも40重量%の水を含む。
【0034】
好ましくは、本発明の組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、不連続液体油相および/または連続水相へ組み込まれ得る。適切な界面活性剤としては、アルキルポリグリコールエーテル、アルキルポリグリコールエステル、エトキシ化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、イオン性または非イオン性界面活性剤、25~60個のエトキシ基を含有する水素化ヒマシ油/ポリオキシエチレングリコール付加物、25~45個のエトキシ基を含有するヒマシ油/ポリオキシエチレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばSpan 20またはSpan 80)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー(例えばPluronic L121またはPluronic F68)、またはそれらの混合物が挙げられる。あるいは、架橋共重合体を含む界面活性剤を用い得て、当該架橋共重合体は、アクリル酸モノマー単位を含む。これらの例としては、Pemulen Tr-1およびPemulen Tr-2(Lubrizol Corporation)が挙げられる。他の適切な界面活性剤を用い得ることが理解される。
【0035】
好ましくは、組成物は、2つ以上の界面活性剤、例えば、不連続液体油相へ組み込まれる第1界面活性剤、および連続水相へ組み込まれる異なる第2界面活性剤を含む。第1および第2界面活性剤は、好ましくは、上記リストより選択される。第1界面活性剤は、容易に不連続相液体油中に溶解または分散し、好ましくは、Laureth-4(ポリオキシエチレン(4)モノドデシルエーテル)、ポリソルベート80、Span 80、Pemulen Tr-2、および2つ以上のそれらの混合物からなる群より選択される。第2界面活性剤は、容易に連続水相中に溶解または分散し、好ましくは、ポリソルベート20、Pluronic L121、Pluronic F68、PEG-40水素化ヒマシ油、Span 20、Pemulen Tr-2、および2つ以上のそれらの混合物からなる群より選択される。最も好ましくは、第1界面活性剤は、Laureth-4(ポリオキシエチレン(4)モノドデシルエーテル)であり、第2界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0036】
好ましくは、組成物は、組成物重量に対して、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満の合計界面活性剤含有量を有する。好ましくは、合計界面活性剤含有量は、少なくとも0.1重量%である。低濃度の界面活性剤の使用は、組成物により引き起こされる皮膚刺激を最小限にする。これは、患者の皮膚が既に炎症を起こしている場合、特に有利である。
【0037】
好ましくは、組成物は、組成物重量に対して、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、モノステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、リシノール酸セチル、ステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸PEG-2、ソルビタンモノステアレート、イソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸PEG-6、ステアリン酸PEG-8、またはそれら2つ以上の混合物を含む。これらの成分は、組成物中に必ず存在する必要はないが、存在する場合、それらの合計量は、5重量%未満でなければならないと理解されたい。有利には、これらの固化成分の使用を避けることは、クリサボロールの皮膚浸透を向上させるのに役立つことが見出された。
【0038】
好ましくは、組成物は、組成物重量に対して、5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、ワックス成分を含み、ここでワックス成分は、25℃にて固体である。有利には、このような固化成分の使用を避けることは、クリサボロールの皮膚浸透を向上させるのに役立つことが見出された。
【0039】
好ましくは、組成物は、第2不連続液体油相をさらに含む。この実施態様において、第2不連続液体油相は、第1不連続液体油相と物理的に別個である。第2不連続液体油相は、例えば、皮膚軟化油(使用「感」を向上させる)、皮膚の脱水を防ぎ、活性物質により皮膚浸透性を向上させる閉塞油、皮膚に適用されるときに加熱または冷却感覚を提供する物質または日焼け止めなどの物質を含み得る。好ましくは、第2不連続液体油相は、鉱油を含むか、またはそれからなる。好ましくは、第2不連続液体油相は、組成物重量に対して、10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の量で存在する。
【0040】
好ましくは、組成物は、1つ以上の更なる医薬的活性物質を含む。用語「更なる医薬的活性物質」は、物質自体、ならびにその塩(例えば医薬的に許容される塩)、プロドラッグ、エステル、溶媒和物および水和物を包含すると理解されたい。更なる医薬的活性物質は、アトピー性皮膚炎または乾癬の処置に有用であり得る。クリサボロールと組み合わせて用いるための更なる医薬的活性物質の例としては、局所コルチコステロイド、例えばフルオシノニド、デスオキシメタゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、アルクロメタゾン、デソニド、ヒドロコルチゾンおよびマプラコート;局所カルシニューリン阻害剤、例えばタクロリムス、ピメクロリムスおよびシクロスポリン;局所PDE4阻害剤、例えばアプレミラストおよびロフルミラスト;局所JAKキナーゼ阻害剤、例えばトファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ;およびビタミンD類似体、例えばカルシポトリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
単一の組成物中でクリサボロールおよび1つ以上の更なる医薬的活性物質を提供することにより、クリサボロールおよび1つ以上の更なる医薬的活性物質の同時投与が可能になる。
【0042】
好ましくは、組成物は、1つ以上の医薬的に許容される添加剤をさらに含む。局所用組成物に適する添加剤は、当該技術分野において公知であり、組成物の適用により生じる任意の皮膚損傷を修復する薬剤を含む。
【0043】
上記のように、組成物は、水中油型分散体の形態である。好ましくは、組成物は、エマルションの形態である。エマルションは、当該技術分野で公知である。
【0044】
あるいは、組成物は、ポリアフロン分散体の形態であり得る。本明細書で用いられるポリアフロン分散体は、特定の種類の疎水性液体中親水性液体型または親水性液体中疎水性液体型の分散体であって、該分散体が、(a)親水性液体混和性相、(b)第1相と非混和性であるかまたは本質的に非混和性である第2疎水相および(c)1つ以上の界面活性剤を含み、分散相または不連続液体油相は、小さい(例えば、ミクロンからサブミクロンの直径であるが、より一般には少なくとも1ミクロン直径)液滴の形態であり、その全体が、従来または一般的なエマルジョンおよび他の分散体型とポリアフロン分散体を区別する下記特徴を有する、分散体を意味する:
1. それらは、分散相の体積分率(φip)が0.7を超え、0.97まで高くなり得る安定な形態で存在することができる。(φipは、分数として表される不連続相対連続水相の体積比である)。
2. φipが0.7を超えるポリアフロン分散体の微視的外観は、個々の液滴が多面体形状に密接に押し合わされた凝集体の外観であり、気泡の外観に似ている。この形態では、分散体は、ゲル様特性を有し、ゲルポリアフロン分散体(GPD)と称される。
3. 安定なポリアフロン分散体は、組成物総重量に対して3%未満、より典型的には2%未満の濃度の界面活性剤と形成され得る。
4. ゲルポリアフロン分散体(上記2で説明)は、ゲル様特性が消失したとき、更なる界面活性剤を添加せず更なる連続水相を添加することにより任意の程度まで希釈され得る。φipが0.7未満に低下すると、内相の個々の液滴は、分離して、球状液滴の形態をとり、これは安定で無傷のままであるが、それにもかかわらず緩い会合で一緒に結合し、希釈分散体の上に浮いたり、底に沈んだりし得る(2相の相対密度に応じる)。この希釈形態では、各液滴は、コロイド流体アフロン(CLA)と称される。希釈分散体を単純に振とうすると、即座にコロイド流体アフロンの均質で安定な分散体が再形成される。
【0045】
ポリアフロン分散体は、次の文献に記載されている:Sebba "Biliquid Foams", J. Colloid and Interface Science, 40 (1972) 468-474および"The Behaviour of Minute Oil Droplets Encapsulated in a Water Film", Colloid Polymer Sciences, 257 (1979) 392-396、Hicks "Investigating the Generation, Characterisation, and Structure of Biliquid Foams", PhD Thesis, University of Bristol, 2005、Crutchley "The Encapsulation of Oils and Oil Soluble Substances Within Polymer Films", PhD Thesis, The University of Leeds, 2006およびLye and Stuckey, Colloid and Surfaces, 131 (1998) 119-136。アフロンはまた、US-A-4,486,333およびWO 97/32559にも記載されている。
【0046】
ポリアフロン分散体は、「二液発泡体」、「高内相エマルジョン(HIPE)」「高内相比エマルジョン(HIPRE)」および「ゲルエマルジョン」と称されることもある。US5,573,757において、ポリアフロン分散体を含む組成物が、「粘弾性ゲル」として記載されている。
【0047】
いくつかの実施態様において、組成物は、ポリアフロン分散体を含まない。いくつかの実施態様において、組成物は、連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含むポリアフロン分散体を含まない。
【0048】
好ましくは、本発明の組成物は、水に分散可能である。好ましくは、本発明の組成物は、水で希釈可能である。これは、例えば、髪を湿らせたままにすることにより髪を通して頭皮へ組成物を適用することの向上に、またはどこかの局所表面から調製物を洗い流すのが望ましいか必要性が生じたとき、または衣服を過失により汚したとき製品が洗い流すことによって容易に除去されることにより、本発明の使用の柔軟性を増加させる。これらの利点は、使用者の使用経験を向上させ、患者コンプライアンスを向上させる。
【0049】
好ましくは、本発明の組成物は、ゲル化剤および/またはレオロジー調整剤、例えば粘度調整剤をさらに含む。ゲル化剤は、例えば、アルギン酸ガムまたはそれらの塩、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アカシアガム、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、「カルボマー」(アクリル酸の架橋ポリマーの塩)、またはポリメタクリル酸グリセリルまたはグリコール中のそれらの分散体より選択され得る。他の適切なゲル化剤を用い得ることが理解される。また、ゲル化剤のいくつか(例えばカルボマー)はまた、化学的緩衝剤として機能し、それ故に保存または使用中の組成物のpHの望ましくない変動を防止し得ることを見出された。粘度調整剤を用いる場合、これは、好ましくは、高分子セルロース増粘剤である。ゲル化剤および/またはレオロジー調整剤を含めることにより、クリーミングに対して更なる安定性をもたらし、活性物質濃度が組成物全体で均一であることを確実にする。これらの成分の使用は、WO97/32559に記載されている。ゲル化剤/増粘剤の選択はまた、流れに著しく抵抗性である濃いクリーム剤へ容易に注ぐことができる薄いローション剤から製剤粘度の制御を可能にする。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物重量に対して、0.05~5.0重量%、より好ましくは0.1~2.0重量%、最も好ましくは0.2~1.0重量%のゲル化剤を含む。本発明の一実施態様において、組成物は、ゲルの粘稠度を有する。
【0051】
本発明の組成物はまた、他の添加剤、例えば防腐剤(例えば微生物による腐敗を防ぐため)、緩衝剤(pHの制御のためおよび皮膚の酸性マントルへの不安定性および損傷を回避するため)および抗酸化剤を含有し得る。防腐剤を用いる場合、組成物重量に対して、0.1~1重量%、より好ましくは0.5~1重量%、さらにより好ましくは0.6~0.8重量%の量で存在するのが好ましい。防腐剤は、好ましくはベンジルアルコールまたはフェノキシエタノール、より好ましくはフェノキシエタノールである。これらの添加剤は、組成物の連続相または不連続液体油相に含まれ得る。これらの添加剤の包含は、有効かつ有用であることが分かっている物質の濃度および種類であることは理解されたい。本発明の他の実施利点に対する妥協を防ぐために、これらの添加剤の選択および量に注意を払うことが必要である。
【0052】
好ましくは、組成物は、約4~約6.5、より好ましくは約5~約6、最も好ましくは約5.5のpHを有する。実施例7に示すように、クリサボロールは、これらの範囲内の水溶液中で最適な安定性を有する。任意の適切な酸または塩基が、適切な値またはpH範囲へpHを調整するために用いられ得ることを理解されたい。典型的には、組成物のpHは、塩基の添加により上昇させる必要があり、これは、適切にはトリエタノールアミンであり得る。他の適切な塩基としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。有利には、そして好ましくは、組成物のpHを、水相へ適切な緩衝剤を組み込むことにより安定化し得る。特定範囲内のpHを有する適切な緩衝剤系は、当業者に周知である。
【0053】
好ましくは、組成物は、60%RH±5%で測定する場合、5℃±3℃にて少なくとも12か月間化学的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。「化学的に安定な」は、t=0での測定値と比較して100%±5%のクリサボロールについてのHPLC定量値を有することを意味する。
【0054】
好ましくは、組成物は、60%RH±5%で測定する場合、25℃±2℃にて少なくとも12か月間化学的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。また、「化学的に安定な」は、t=0での測定値と比較して100%±5%のクリサボロールについてのHPLC定量値を意味する。
【0055】
好ましくは、組成物は、40℃±3℃にて少なくとも6か月間化学的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。「化学的に安定な」は、上記と同じ意味である。
【0056】
好ましくは、組成物は、60%RH±5%で測定する場合、5℃±3℃にて少なくとも12か月間物理的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。「物理的に安定な」は、組成物が、t=0から巨視的に明らかなレオロジーまたは外観の変化を有しない均質なクリーム剤と見えることを意味する。好ましくは、「物理的に安定な」はまた、組成物が、顕微鏡下で見たときに結晶または固体粒子を含有すると見えないこと、および/または組成物が、t=0から顕著な変化を受けない粒子径分布プロファイルを有することを意味する。粒子径分布を、顕微鏡またはレーザー回折により、例えばMalvern Mastersizer 2000またはMalvern Mastersizer 3000を用いて決定し得る。
【0057】
好ましくは、組成物は、60%RH±5%で測定する場合、25℃±2℃にて少なくとも12か月間物理的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。また、「物理的に安定な」は、組成物が、t=0から全体的に明らかなレオロジーまたは外観の変化を有しない均質なクリーム剤と見えること、好ましくは組成物が、顕微鏡下で見たときに結晶または固体粒子を含有すると見えないこと、および/または組成物が、t=0から顕著な変化を受けない粒子径分布プロファイルを有すること意味する。
【0058】
好ましくは、組成物は、60%RH±5%で測定する場合、40℃±3℃にて少なくとも6か月間物理的に安定である。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において保存した後に、安定性を測定する。「物理的に安定な」は、上記と同じ意味を取る。
【0059】
安定性測定のために、ガラス容器を組成物で満たした後であるが、組成物の貯蔵前に、ガラス容器に好ましくは窒素を散布する。
【0060】
特に好ましい実施態様において、組成物は、組成物重量に対して、
2~4重量%のクリサボロール、および
少なくとも60重量%の不連続液体油相
を含み、ここで、クリサボロールは、主に不連続液体油相中であり、油は、不連続液体油相重量に対して、少なくとも60重量%のアジピン酸ジイソプロピルを含み、組成物は、ローション剤またはクリーム剤の形態である。
【0061】
さらに特に好ましい実施態様において、組成物は、組成物重量に対して、
2~4重量%のクリサボロール、
少なくとも50重量%の不連続液体油相、および
2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、モノステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、リシノール酸セチル、ステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸PEG-2、ソルビタンモノステアレート、またはそれら2つ以上の混合物;
を含み、ここで、クリサボロールは、主に不連続液体油相中であり、油は、不連続液体油相重量に対して、少なくとも60重量%のアジピン酸ジイソプロピルを含み、組成物は、ローション剤またはクリーム剤の形態である。
【0062】
さらに特に好ましい実施態様において、組成物は、組成物重量に対して、1.5~5重量%のクリサボロールを含み、ここで、クリサボロールは、主に不連続液体油相中であり、油は、組成物重量に対して:
(i)5~45重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~45重量%の総量のセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル;および
(iii)5~45重量%の総量のヒマシ油および/またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
を含み、組成物は、ポリアフロン分散体を含まない。
【0063】
更なる態様によれば、第1態様による第1組成物、および更なる医薬的活性物質を含む第2組成物を含む組合せを提供する。更なる医薬的活性物質は、アトピー性皮膚炎または乾癬の処置に有用であり得る。このような物質の適切な例は、当業者に公知であり、第1態様に関連して本明細書に記載されている。理解されるように、クリサボロールおよび更なる医薬的活性物質を別個の組成物中で提供することにより、クリサボロールおよび更なる医薬的活性物質を連続して投与することが可能になる。また、例えば使用者が投与前に別個の組成物を混合する場合、クリサボロールおよび更なる医薬的活性物質を同時に投与することが可能になる。
【0064】
更なる態様によれば、治療によるヒトまたは動物の身体の処置における使用のための、本明細書に記載の組成物または組合せを提供する。
【0065】
更なる態様によれば、治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法であって、有効量の本明細書に記載の組成物または組合せを、処置を必要とする対象体に投与することを含む、方法を提供する。
【0066】
更なる態様によれば、治療によるヒトまたは動物の対象体の処置のための医薬の製造のための、本明細書に記載の組成物または組合せの使用を提供する。
【0067】
更なる態様によれば、アトピー性皮膚炎または乾癬の処置における使用のための、本明細書に記載の組成物または組合せを提供する。
【0068】
更なる態様によれば、ヒトまたは動物の対象体においてアトピー性皮膚炎または乾癬を処置する方法であって、有効量の本明細書に記載の組成物または組合せを、処置を必要とする対象体に投与することを含む、方法を提供する。
【0069】
更なる態様によれば、ヒトまたは動物の対象体におけるアトピー性皮膚炎または乾癬の処置のための医薬の製造のための、本明細書に記載の組成物または組合せの使用を提供する。
【0070】
本明細書に記載の組成物または組合せはまた、他の炎症性皮膚状態を処置するために用いられ得る。
【0071】
本明細書に記載の組成物または組合せは、髪を通して頭皮または他の皮膚表面へ適用され得る。好ましくはこの実施態様において、髪は、湿っている(例えば、シャンプーを用いてまたは用いずに水を使用し、その後タオルで乾燥させることによる)。その後、製品を頭皮に適量適用し、その後、髪を通して頭皮へ擦り込み得る。その後、髪を自然乾燥させるか、またはヘアドライヤーを用いて乾燥させ得る。有利には、水分散性形態の製剤は、この方法を用いて皮膚上に活性物質の均一な分布を可能にする。これとは別にまたはこれに加えて、組成物または組合せは、乾燥した髪を通して頭皮へマッサージされ得て、適切な時間(8~12時間であり得る)放置し得て、その後、過剰分または残分をシャンプーを用いてまたは用いずに水で洗い流し得る。好ましくは、組成物または組合せは、単位剤形でヒトまたは動物に適用される。
【0072】
組成物または組合せは、好ましくは少なくとも1週間に1回、より好ましくは少なくとも1日1回投与される。
【0073】
好ましくは、組成物または組合せは、直接皮膚に投与される。好ましくは、組成物または組合せは、皮膚に直接投与され、皮膚に塗り込まれる。
【0074】
組成物または組合せは、スプレーの形態で投与され得る。
【0075】
好ましくは、組成物または組合せは、1~50 mg/kg/日、より好ましくは2~20 mg/kg/日の用量のクリサボロールを提供するために、ヒト対象体に投与される。これらの用量は、アトピー性皮膚炎、乾癬および/または他の炎症性皮膚状態を処置するのに特に適する。
【0076】
更なる態様によれば、本明細書に記載の組成物20~300 gを含む包装物を提供する。好ましくは、包装物は、20~200 g、より好ましくは50~100 gの組成物を含む。好ましくは、包装物は、ジャー、チューブ、エアレスポンプ、サシェ、ボトル、タブ、ポンプアクション密閉容器またはスプレーアプリケーターである。例えば、組成物の局所適用のためにチューブを絞り得る。
【0077】
更なる態様によれば、下記工程:
(i)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、親水性溶媒を準備する工程;
(ii)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、疎水性溶媒を準備する工程;および
(iii)適切な条件下で、親水性溶媒を疎水性溶媒と混合して、連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む局所適用のための組成物を形成する工程
を含む、組成物の製造方法を提供する。
【0078】
好ましくは、当該方法により製造される組成物は、第1に関連して本明細書に記載される組成物である。このような水中油型分散体の製造方法は、当該技術分野、例えばG. Godwin, Harry’s Cosmeticology 7th Edition, 1982で公知である。必要に応じて他の製造方法を用い得ることが当業者には理解される。
【0079】
第1態様に関連して述べたとおり、組成物は、ポリアフロン分散体であり得る。ポリアフロン分散体の適切な製造方法は、US-A-4486333に記載されている。必要に応じて他の製造方法を用い得ることが当業者には理解される。
【0080】
好ましくは、当該方法は、組成物を包装することをさらに含む。
【0081】
前記態様は、本明細書で開示される前記態様のいずれかと自由に組み合され得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
以下に本発明を非限定的な図面に関連して説明する。
図1図1は、クリサボロールの化学構造を示す。
図2図2は、実施例6に記載の試料の平均拡散を示すグラフである。y軸は、g/cm2で拡散した平均累積クリサボロールを示す。エラーバーは、標準誤差を示す。データ点において、ひし形(白抜き)は、本明細書に記載の実施例4を表し、三角形は、US2016/0318955の実施例28bに基づく試料を表し、丸形は、US2016/0318955の実施例29に基づく試料を表し、ひし形(黒塗り)は、市販のEucrisa(登録商標)軟膏剤を表し、四角形は、本明細書に記載の実施例5を表す。
【実施例
【0083】
以下に本発明を非限定的例に関連して説明する。
【0084】
実施例1
本発明による局所適用のための組成物10 gを、下記成分を合わせることにより製造した:
8.75 gのポリアフロン分散体
1.1 gのゲル混合物
0.15 gのNaOH(20%水溶液)
適量の水
【0085】
ポリアフロン分散体は、下記組成を有するものであった:
【表1】
【0086】
40℃に加熱しながらベッセル中で油相成分を一緒に混合することによりポリアフロン分散体を製造し、完全に溶解するまで磁気撹拌子で撹拌した。その後、混合物を室温まで放冷した。別のベッセルにおいて、70rpmにてプロペラ型ブレードを有するオーバーヘッド撹拌機を用いて水相成分を混合した。均質になると、撹拌速度を300rpmに上げ、油相を20分かけてゆっくり加えた。系をさらに20分間混合して、均一な液滴サイズ分布を確実にした。最終ポリアフロン分散体は、白色の粘性クリームの外観を有する。
【0087】
ゲル混合物は、下記組成を有するものであった:
【表2】
【0088】
Natrosolが完全に溶解するまで、40℃に加熱しながら磁気撹拌子を用いてNatrosol、フェノキシエタノールおよび水を混合した。その後、撹拌しながら、系を放冷し、カルボマーを加えた。塊の形跡がなくカルボマーが完全に分散するまで、混合を継続した。
【0089】
その後、ゲル混合物をポリアフロン分散体に加え、オーバーヘッド撹拌機(70rpm)を用いて5分間混合した後、水酸化ナトリウム溶液で中和した。
【0090】
得られた組成物は、偏光下で結晶の兆候はなく安定であると考えられた。
【0091】
実施例2
下記成分を含む局所適用のための組成物を製造した:
【表3】
【0092】
ポリアフロン分散体を、実施例1の方法を用いて作製した。
【0093】
分散体が完全に溶媒和され、塊を有しないまで磁気撹拌子を用いて水中でカルボマーを分散させることによりゲル相を作製した。別のベッセルにおいて、磁気撹拌子を用いてクリサボロールをプロピレングリコール中に溶解させた。その後、適切な混合下で、2つを合わせた。
【0094】
その後、ポリアフロン分散体をゲル相へ混合し、トロラミン/水を加えて、pHを上げ、増粘剤を活性化させ、これにより系を増粘させた。
【0095】
得られた組成物は、偏光下で結晶の兆候はなく安定であると考えられた。
【0096】
実施例3
下記成分を含む局所適用のための組成物を製造した:
【表4】
【0097】
磁気撹拌子での単純な撹拌によりAPI溶液を作製した(加熱を必要としない)。
【0098】
カルボマーを水へ加え、カルボマーが完全に分散するまで穏やかに撹拌した後、プロピレングリコールを加えることにより、ゲル相を作製した。
【0099】
ポリアフロン分散体を実施例1に記載のように作製した。
【0100】
ゲル相をAPI溶液へゆっくり加え、続いてポリアフロン分散体を加え、続いて調整相を加えることにより、最終系を作製した。すべて適度な撹拌下で行った。
【0101】
容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において試料を保存した。試料を含有する各容器を標準的な実験室用インキュベーター(例えば、Memmert IF260PLUSインキュベーター)中で40℃の一定温度にて保存した。各試料の保存期間は、3か月間であった。
【0102】
保存期間後の各試料においてクリサボロールの化学的安定性をHPLC法により測定した。HPLC法は下記の通りであった:
【表5】
【0103】
移動相調製:
移動相A:脱イオン水1 L中トリフルオロ酢酸2 mL。使用前によく混合する。
移動相B:100%アセトニトリル
【0104】
2%強度製剤の試料調製:
アセトニトリルを試料希釈液として用いる
すべての試料を茶色ガラス器具中で調製する
【0105】
手順:
1. 20 mL茶色メスフラスコへ試料0.1 g(±0.012 g)を秤取し、フラスコの首上の試料を最小限にする。
2. 希釈液を加えて嵩上げし、倒置させて混合する。
3. 磁気撹拌子を加えて、1時間400 rpmにて撹拌する。
4. 0.45μm PTFEシリンジフィルターを通して茶色HPLCバイアルへろ過する。
【0106】
標準の調製:
アセトニトリルを試料希釈液として用いる
すべての標準を茶色ガラス器具中で調製する
100μg/mLの標的濃度でのクリサボロールのアセトニトリル中溶液
【0107】
実施例3について、40℃における3か月間の保存(上記参照)後に測定したクリサボロールのピーク純度(すなわち、パーセンテージで表される、クロマトグラフにおけるすべてのAPI関連ピークの合計面積と比較した対象とするピーク面積)は、97.1%であった。
【0108】
実施例4
下記成分を含む局所適用のための組成物を製造した:
【表6】
【0109】
組成物を、実施例1と類似の方法を用いて製造した。
【0110】
実施例3に記載の条件下での40℃における3か月間の保存後に測定したクリサボロールのピーク純度は、99.0%であった。
【0111】
実施例5
下記成分を含む局所適用のための組成物を製造した:
【表7】
【0112】
組成物を、実施例1に類似の方法を用いて製造した。
【0113】
実施例3に記載の条件下での40℃における3か月間の保存後に測定したクリサボロールのピーク純度は、99.3%であった。
【0114】
実施例6
特定の製剤を人工膜によるフランツセルインビトロ拡散実験において試験した。用いた膜は、Merck Millipore製のStrat-M膜であり、ヒト皮膚における拡散を予測する経皮拡散試験のための合成非動物ベースモデルと記載されている。75%プロピレングリコールと25%水の溶液をレセプター相として用いた。0.64 cm2の表面積および約2 cm3のレセプター容量を有するセルを用いた。製剤約30 mgを0時間の時点にて適用し、細胞を撹拌し、全体を通して37℃にてインキュベートした。レセプター相を2、4、6、8、12および24時間にてサンプリングし、置き換えた。実施例3と同様の方法を用いるが、下記パラメーターを用いて、クリサボロール濃度をHPLCにより決定した:
【表8】
【0115】
その後、各試料について膜1 cm2当たりの平均累積クリサボロールをプロットした(図2参照)。試験した製剤は、本明細書に記載の実施例4および5、US2016/0318955に従って製造した2つの製剤(実施例28Bおよび29、クリサボロールで置き換えたホウ素ベースの活性剤を有する)および市販のEucrisa(登録商標)軟膏剤(すべて2.0重量%のクリサボロール含有量を有する)であった。
【0116】
図2から、液体油相の製剤(本明細書に記載の実施例4および5)は、インビトロ拡散特性の点で、US2016/0318955に記載のものに基づく製剤およびEucrisa(登録商標)軟膏剤より優れていることが分かる。
【0117】
実施例7
クリサボロールの1%溶液を50%エタノールおよびクエン酸緩衝液でpH 5.5に調製した。その後、系を実施例3の条件下で40℃にて1か月間保存し、84%ピーク純度を得た。等価な溶液を製造し、pH 4.5、6.5、7.5および8.5にて試験した。結果を下記表に示す:
【表9】
【0118】
結果は、クリサボロールが、水性媒体に曝露されたとき、分解されやすく、化学的安定性が、pH 5.5にて最も高いことを示す。
【0119】
実施例8
本明細書に記載の実施例5の製剤、およびUS2016/0318955の実施例28Bおよび29のクリサボロール等価物(実施例6参照)を化学的および物理的安定性について試験した。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において24時間室温にて試料を保存した。その後、実施例3のHPLC法を用いて試料を分析した。2つの不純物ピークのパーセンテージを下記表に示す:
【表10】
【0120】
表に示すように、US2016/0318955の実施例29に基づく試料が、最も不安定な試験試料であり、更なる不純物を有するだけでなく、顕微鏡下で明らかな結晶を有した。油相内に封入されないため、結晶が水に曝露されるため、2つの観察は関連し得る(例えば実施例7)。これは、なぜ相対保持時間(RRT)0.73における不純物が他の製剤より著しく高いのかを説明し得る。0.73RRTにて検出される不純物は、水の曝露に関連する分解不純物であると考えられる。
【0121】
US2016/0318955の実施例28Bに基づく試料は、RRT 0.92にて高濃度の不純物を示すことが見出された。この不純物の原因は、現時点で不明である。
【0122】
並行して、試料を4℃にて2か月間保存した。US2016/0318955の実施例28Bに基づく試料(クリサボロール等価物)について、アモルファス固体塊が、顕微鏡下で試験したとき経時的に生じることが観察された。これらの塊は、US2016/0318955の実施例29に基づく試料(上記参照)においてほぼすぐに観察されたものと外観が著しく異なる。これらのアモルファス固体塊は、他の試料において観察されなかった。
【0123】
実施例9
下記成分を含む局所適用のためのエマルション組成物を製造した:
【表11】
【0124】
組成物の製造方法は次のとおりであった:
【0125】
適切なベッセル中で、60℃±5にて、精製水、メチルパラベン、プロピルパラベン、プロピレングリコールおよびエデト酸二ナトリウムを混合した。
【0126】
第2の適切なベッセル中で、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、アジピン酸ジイソプロピル、オクチルドデカノール、ブチルヒドロキシトルエン、Laureth-4およびクリサボロールを、澄明な溶液が得られるまで、60℃±5にて混合した。Pemulen TR-2を油相に急速に分散させ、その後、ホモジナイザー混合により油相を水相に速やかに混合させた。温度を60℃±5に5分間維持した。プロペラで撹拌しながら混合物を放冷し、トロラミン溶液を加え、組成物が室温になるまで混合を続けた。
【0127】
実施例10
上記実施例4および9に従って製造した組成物と、US2016/0318955の実施例28Bに従って製造した組成物(ただし、ホウ素系活性物質を2重量%のクリサボロールに置き換えたもの)の局所皮膚浸透性を評価するために、ミニブタでの局所皮膚浸透性試験を実施した。特に、当該試験は、2.5×2.5 cmの部位に局所適用することにより、1日2回、ミニブタへ7日間経皮投与した後に、クリサボロールの経皮吸収を評価して実施した。
【0128】
方法:
4匹の雌性Goettingenミニブタを試験に用いた。各動物の背中に2.5×2.5 cmの大きさの16か所の適用部位を入れ墨をし、各動物の8か所の異なる適用部位に上記の3つの製剤の各々を適用した。
【0129】
下記スケジュールに従い動物に投与した:
【表12】
【0130】
すべての製剤には、2重量%クリサボロールが含まれていた。
【0131】
以下を評価した:死亡率、臨床症状、体重、および処置した皮膚と処置していない皮膚のマクロ的観察および組織病理学による解剖検査。バイオ分析のための皮膚生検を8日目に採取した。さらに、適用部位を反応について調べ、紅斑、浮腫およびその他の皮膚反応をスコア付けした。
【0132】
8日目の洗浄後4時間±10分後に、すべての適用部位からバイオ分析のために生検材料を採った。各サンプリング時に、各適用部位から2か所(バックアップのために1か所)の生検材料を採った。各サンプリング時に各動物から合計24か所の生検材料。生検材料は、適用部位の中心から採った。皮膚試料を採取する前に、角質層を、生検材料を採取する適用部位の一部の皮膚から、2か所の生検材料当たり20枚を、市販の粘着テープを用いて分離した。
【0133】
直径5 mmのパンチを用いて、生検材料を採取した。生検から、メスを用いて表皮を真皮から可能な限り分離した。これに続いて、メスを用いて皮下組織を真皮から取り除き、その後廃棄した。生検材料の重量を測定し、直ちに液体窒素を用いてスナップフリーズし、分析するまで-80℃以下で保存した。確立された生物分析アッセイを用いて、組織試料をクリサボロール濃度について分析した。
【0134】
結果:
1日2回、試験製剤を7日間適用した後、ミニブタの皮膚生検において測定したクリサボロール濃度:
【表13】
【0135】
この試験に基づいて、本発明の組成物は、US2016/0318955に記載のものなどの既存のクリサボロールクリーム製剤より、インビボにおける皮膚浸透性を向上させると結論付けることができる。
【0136】
実施例11
本明細書に記載の実施例9の製剤、およびUS2016/0318955の実施例28Bのクリサボロール等価物(本明細書の実施例10参照)を化学的安定性について試験した。容器の利用可能な総容積の5容積%未満を含むヘッドスペースを有する密閉された気密ガラス容器において3か月室温にて試料を保存した。その後、実施例3のHPLC法を用いて試料を分析した。2つの不純物ピークのパーセンテージを下記表に示す:
【表14】
【0137】
表に示すように、本発明による組成物は、先行技術文献の組成物より、室温にて3か月保存後の化学的安定性を著しく向上させた。
【0138】
実施例12
下記成分を含む局所適用のためのエマルション組成物を製造した:
【表15】
【0139】
油相を単純な撹拌により製造した。Pemulen、クエン酸ナトリウム、クエン酸およびフェノキシエタノールを水中に適度な撹拌で分散させることにより、水相を製造した。その後、水酸化ナトリウムを加えた。その後、撹拌しながら油相を水相にゆっくり加えた。その後、pHを必要に応じて最終的に調整するか、または水で量を調整した。
【0140】
以上に記載の詳細な説明は、説明および例示のために提供され、特許請求の範囲を限定することを意図しない。本明細書で例示される現在好ましい実施態様における多くの改変が当業者に明らかであり、特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にとどまる。
本発明はまた、以下の態様および実施態様を含む。
[1] 連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む、局所適用のための組成物。
[2] 不連続液体油相が、25℃にて液体である、[1]に記載の組成物。
[3] クリサボロールが、組成物重量に対して1~5重量%、好ましくは1.5~3.5重量%の量で存在する、[1]または[2]に記載の組成物。
[4] クリサボロールが、主に不連続液体油相中にある、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 組成物が、1つ以上の更なる医薬的活性物質を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 不連続液体油相が、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルを含み、好ましくは、アジピン酸ジイソプロピルおよび/またはセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチルが、不連続液体油相重量に対して少なくとも60重量%の総量で存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 不連続液体油相が、組成物重量に対して:
(i)5~45重量%の量のアジピン酸ジイソプロピル;
(ii)5~45重量%の総量のセバシン酸ジエチルおよび/またはアジピン酸ジブチル;および
(iii)5~45重量%の総量のヒマシ油および/またはトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] 組成物重量に対して5重量%未満、好ましくは3重量%未満の合計界面活性剤含有量を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9] 組成物が、架橋共重合体を含む界面活性剤を含み、該架橋共重合体が、アクリル酸モノマー単位を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10] 組成物が、組成物重量に対して5重量%未満の、モノステアリン酸グリセリル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、リシノール酸セチル、ステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸PEG-2、ソルビタンモノステアレート、またはそれら2つ以上の混合物を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11] 組成物が、組成物重量に対して少なくとも10重量%の水を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12] 組成物が、ローション剤またはクリーム剤の形態である、[1]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13] 少なくとも95重量%のクリサボロールが、好ましくは4~20℃の範囲の温度全体にわたって、組成物中に溶解する、[1]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14] 組成物が、60%RH±5%で測定する場合、25℃±2℃にて少なくとも12か月間化学的および/または物理的に安定である;および/または組成物が、60%RH±5%で測定する場合、40℃±3℃にて少なくとも6か月間化学的および/または物理的に安定である、[1]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[15] 組成物がポリアフロン分散体を含まない、[1]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16] 治療によるヒトまたは動物の身体の処置における使用のための、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[17] アトピー性皮膚炎または乾癬の処置における使用のための、[1]~[15]のいずれかに記載の組成物。
[18] [1]~[17]のいずれかに記載の組成物20~300 gを含む、包装物。
[19] 下記工程:
(i)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、親水性溶媒を準備する工程;
(ii)クリサボロールおよび/または界面活性剤を所望により含んでいてもよい、疎水性溶媒を準備する工程;および
(iii)適切な条件下で、親水性溶媒を疎水性溶媒と混合して、連続水相、不連続液体油相およびクリサボロールを含む局所適用のための組成物を形成する工程
を含む、組成物の製造方法。
図1
図2