(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20230425BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
F01D5/18
F01D25/00 X
(21)【出願番号】P 2021507967
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2018125109
(87)【国際公開番号】W WO2020029531
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】201810911051.8
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510173476
【氏名又は名称】中国科学院▲寧▼波材料技▲術▼▲与▼工程研究所
【氏名又は名称原語表記】NINGBO INSTITUTE OF MATERIALS TECHNOLOGY & ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.519 Zhuangshi Avenue,Zhenhai District,Ningbo,Zhejiang,315201 CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】521064048
【氏名又は名称】ニンボー スリー レイザーズ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO III LASERS TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.3-1, 56 Weiyi Road, Xiaogang Street, Beilun District, Ningbo, Zhejiang, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼文武
(72)【発明者】
【氏名】郭春海
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼天▲潤▼
(72)【発明者】
【氏名】王玉峰
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07563073(US,B1)
【文献】米国特許第05458461(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108223019(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101042056(CN,A)
【文献】中国実用新案第205558979(CN,U)
【文献】中国実用新案第203867627(CN,U)
【文献】特表2016-524090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F02C 7/18
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードであって、
前記タービンブレードは、中空構造
を有し、前記タービンブレードの外壁は、
異形溝である複数の凹状の第1溝体を有し、前記第1溝体は、溝体底部と第1溝体の長手方向に沿った2つの側壁とを含み、各第1溝体底部には、概ね該溝体の長手方向に沿って配列され
、且つ、
前記中空構造と連通されるように前記タービンブレードの内壁まで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記第1溝体は、深さ方向に沿って少なくとも2つの部分からなり、第1溝体底部から深さがH
1の部分は第1部分であり、残りの部分は深さがH
2=H-H
1の第2部分であり、第2部分の少なくとも1つの側壁の
壁面は、
湾曲面であり、前記第2部分の幅は、前記第1部分
側の一端から前記外壁側に行くほど大きくなるように形成されており、
前記離散孔Aの最大直径をdとし、前記第1溝体の深さをHとし、前記第1溝体の最小幅をDとすると、D≧dであり、かつH≧2d、H
1>H
2であ
り、前記離散孔Aの中心軸線と前記外壁の法線とのなす角をθとし、前記第1溝体の深さ方向に沿った開口端部の軸線と前記外壁の法線とのなす角をαとすると、θは、αと異なり、且つ、10°≦θ≦45°、10°≦α≦90°であることを特徴とする、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項2】
まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体を製造し、各部分の内壁に前記離散孔Aを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成し、
あるいは、前記タービンブレードの外壁に第1溝体の第1部分、第2部分及び離散孔Aを順に加工して形成して、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを得ることを特徴とする、請求項1に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードの製造方法。
【請求項3】
複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードであって、
前記タービンブレードは、中空構造
を有し、前記タービンブレードの外壁は、
異形溝である複数の凹状の第1溝体を有し、前記タービンブレードの内壁は、複数の凹状の第2溝体を有し、前記第1溝体は、溝体底部と溝体の長手方向に沿った2つの側壁とを含み、前記第2溝体は、溝体底部と溝体の長手方向に沿った2つの側壁とを含み、各第1溝体底部には、概ね該第1溝体の長手方向に沿って配列され
、且つ、前記中空構造と連通されるように前記第2溝体
の底部まで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記第1溝体は、深さ方向に沿って少なくとも2つの部分からなり、第1溝体底部から深さがH
1の部分は第1部分であり、残りの部分は深さがH
2=H-H
1の第2部分であり、第2部分の少なくとも1つの側壁
の壁面は、湾曲面であり、前記第2部分の幅は、前記第1部分側の一端から前記外壁側に行くほど大きくなるように形成されており、
前記離散孔Aの最大直径をdとし、前記第1溝体の深さをHとし、前記第1溝体の最小幅をDとすると、D≧dであり、かつH≧2d、H
1>H
2であ
り、前記離散孔Aの中心軸線と前記外壁の法線とのなす角をθとし、前記第1溝体の深さ方向に沿った開口端部の軸線と前記外壁の法線とのなす角をαとすると、θは、αと異なり、且つ、10°≦θ≦45°、10°≦α≦90°であることを特徴とする、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項4】
まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体を製造し、各部分の内壁に前記第2溝体及び離散孔Aを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成することを特徴とする、請求項3に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードの製造方法。
【請求項5】
複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードであって、
前記タービンブレードは、中空構造
を有し、前記タービンブレードの内壁と外壁との間には中空キャビテが設置され、前記タービンブレードの内壁には、前記中空キャビテまで貫通する複数の離散孔Bが設置され、
前記タービンブレードの外壁は、
異形溝である複数の凹状の第1溝体を有し、前記第1溝体は、溝体底部と溝体の長手方向に沿った2つの側壁とを含み、各第1溝体底部には、概ね該溝体の長手方向に沿って配列され
、且つ、前記中空構造と連通されるように前記中空キャビテまで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記溝体は、深さ方向に沿って少なくとも2つの部分からなり、溝体底部から深さがH
1の部分は第1部分であり、残りの部分は深さがH
2=H-H
1の第2部分であり、第2部分の少なくとも1つの側壁
の壁面は、湾曲面であり、前記第2部分の幅は、前記第1部分側の一端から前記外壁側に行くほど大きくなるように形成されて
おり、前記離散孔Aの中心軸線と前記外壁の法線とのなす角をθとし、前記第1溝体の深さ方向に沿った開口端部の軸線と前記外壁の法線とのなす角をαとすると、θは、αと異なり、且つ、10°≦θ≦45°、10°≦α≦90°であることを特徴とする、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項6】
まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体及び離散孔Aを製造し、各部分の内壁に前記離散孔Bを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成することを特徴とする、請求項5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードの製造方法。
【請求項7】
前記第1溝体の深さ方向に沿った開口端部の軸線とタービンブレードの外壁の法線とのなす角をαとすると
、30°≦α≦80°であり、または、45°≦α≦70°であることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項8】
前記第1溝体の溝体の幅方向に沿った垂直断面において、第1部分の2つの側壁は、間隔を隔てる2本の直線分であることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項9】
第1部分の各直線分と溝体底部とのなす角は、10°~170°であり、または、30°~150°であり、または、60°~120°であることを特徴とする、請求項8に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項10】
第2部分の少なくとも1つの側壁は、弧線分であることを特徴とする、請求項8に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項11】
第1部分の少なくとも1つの側壁と第2部分の同側壁との接続箇所は、面取り遷移接続である、又は円弧遷移接続であることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項12】
前記離散孔Aの最大直径をdとし、前記第1溝体の深さをHとし、前記第1溝体の最小幅をDとすると、D≧dであり、かつH≧2dであることを特徴とする、請求項5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項13】
H≧3dであることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項14】
H≧4dであることを特徴とする、請求項13に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項15】
前記離散孔Aは、直円孔、又は拡散孔、又は複雑複合異形孔であり
、
または、前記離散孔Aの開口端に面取り遷移構造又は円弧遷移構造が設置されることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項16】
各第1溝体に形成された連続ガスフィルムは、基体表面を全て被覆することを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項17】
H
1≧2×H
2であることを特徴とする、請求項1、3又は5に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項18】
H
1≧3×H
2であることを特徴とする、請求項17に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【請求項19】
H
1≧4×H
2であることを特徴とする、請求項18に記載の複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空用エンジン、ガスタービンなどの技術分野に用いられるタービンブレードに関し、具体的に、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空用エンジン、ガスタービンの作業効率を向上させるキーポイントの1つは高い作業温度を利用することである。ブレードは、航空用エンジン、ガスタービンなどの動力装置のコア部品であり、そのうちタービンブレードは、熱エネルギーを変換する重要な部品として、高温高圧交番荷重下で作業する必要があり、自身の融点より高い作業温度に耐えることができるだけでなく、遠心力などの機械負荷をバランスするのに十分な強度も備える必要がある。したがって、現代航空用エンジン、ガスタービンのタービンブレードには、耐高温基材を使用する必要があり、耐高温遮熱コーティングを利用し、さらにガスフィルム冷却技術を利用して温度勾配を生じさせる必要がある。タービンブレードの材料は一般的に、高温合金や、単結晶金属、セラミックス基複合材料などである。将来のエンジンタービンのフロント作業温度は、高くなっていき、ブレード材料の許容温度との温度差は高度なガスフィルム冷却技術によって担われる必要がある。
【0003】
タービンブレードは、中空構造を一般的に使用し、ガスフィルム冷却構造を使用してブレードの主動温度制御を行い、冷却ガスを噴出し、高温ガスと隔離する。ガスフィルム冷却孔の主な目的は、ブレード表面に貼り付けられたガスフィルムを確立することであり、均一に被覆し、密着に貼り付けることが望ましい。従来に使用されていたガスフィルム冷却構造は、早期には直円孔であり、中実ブレードに対して顕著な作業温度の上昇を遂げている。しかしながら、直円孔の単孔降温保護面積が比較的小さく、ブロー比が大きくなると、ガスフィルムの剥離が深刻になるため、高度なタービンブレードは、従来から各種の三次元異形孔を広く使用することにより、単純な孔に比べて単孔降温保護面積及び各種のブロー比でのガスフィルム貼り付け度を大幅に増加させている。ガスフィルム冷却孔は、離散的に分布しており、孔の分布及び形状は、ブレード表面のガスフィルムの均一性を決定しており、ガスフィルム被覆の均一性は、タービンの最大降温勾配を制約する重要な因子となっている。
【0004】
タービンブレードは、強度を保障する前提でガスフィルム孔の設計を最適化する必要がある。気動力学の要求により、タービンブレードの形状は歪んでおり、ガスフィルム冷却孔を利用することではブレード表面の一部の領域の強力ガス膜被覆しか形成することができず、一部の領域のガスフィルムの隔離効果は低く、ひいてはガスフィルム被覆の空白領域が存在することもある。複数列の密集しているガスフィルム孔を使用して冷却効果を高めることができるが、穿孔が多すぎると加工コストが高くなりすぎ、且つ信頼性が低下してしまい、より深刻なのは、多すぎるガスフィルム孔がブレードの構造強度を低下させてしまうことである。そのため、信頼温度保護勾配が一般的に300度未満である離散ガスフィルム孔のブレードを使用している(Yahya、SM(2011). Turbines Compressors and Fans. New delhi:Tata McGraw-Hill Education、2010.pp.430-433.)。
【0005】
どのようにガスフィルム冷却構造を革新し、より高い作業温度のタービンブレードを得るかということは動力システムの長期研究のホットスポットである。離散ガスフィルム孔冷却効果の均一性が低いという課題を改善するために、特許文献US20110097188A1などには、ガスフィルム冷却孔が浅いブラインド溝に嵌め込まれ、ブラインド溝が表面と垂直になって、ガスフィルム孔の噴出気流の表面効果が調整され、一定の寸法のブラインド溝構造が有益な結果をもたらす。上記研究は、いずれも冷却孔を主体として初期ガスフィルムを形成し、表面の浅溝又は一定の深さの溝の役割は気流を補助的に調整することであり、溝の長手方向は冷却孔の中心線方向と一致する。このような技術の適切な適用は、ガスフィルムの均一性の改善につながるが、ブレード表面に連続してガスフィルムが形成するという難題を徹底的に解決することができない。また、上記ソルーションでは、冷却ガスがまず溝の長手方向に沿って噴射され、次にタービンの回転効果に依存して溝に垂直なガスフィルムを形成するので、ブレードのガスフィルムの被覆均一性を改善するには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術現状に対して、本発明は、中空構造となし、ガスフィルム冷却構造を有し、その内壁から冷却ガスがガスフィルム冷却構造によりその外壁に連続的で、均一な冷却ガスフィルムを形成でき、効率的な冷却を実現でき、タービンブレードの耐高温能力を向上させることに重要な意義を有するタービンブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術目的を達成するために、本発明者らは、長期にわたる研究探索を経て、タービンブレードの壁に、離散孔及び溝体を含むガスフィルム冷却構造を設置するとともに、溝体を2つの部分で形成された複雑複合異形溝として設計し、すなわち、溝体の深さ方向に沿って、第1部分は離散孔から入った冷却ガスを十分に広げて、連続的で、均一な正圧ガスを形成する中間拡張溝であり、第2部分は、該正圧ガスをタービンブレードの外壁側に偏らせて流出させ、タービンブレードの外壁に連続的で、均一に貼り付けられた冷却ガスフィルムを形成する横方向拡張溝である。
【0008】
すなわち、本発明の技術手段によれば、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードは、中空構造となし、前記タービンブレードの外壁は、溝体底部及び第1溝体の長手方向に沿った2つの側壁を含む複数の凹状の第1溝体を有し、各第1溝体底部に、概ね該溝体の長手方向に沿って配列される、前記タービンブレードの内壁まで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記第1溝体は、深さ方向に沿って少なくとも2つの部分からなり、第1溝体底部から深さがH1の部分が第1部分であり、残りの部分が第2部分であり、すなわち、第2部分の深さがH2=H-H1であり、第2部分の少なくとも1つの側壁が、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されている。
【0009】
上記構造のタービンブレードでは、冷却ガスが離散孔Aから第1溝体に入り、第1部分に十分に拡散され、混合され、均一な正圧ガスを形成してから第2部分を経て開口端部に伝送し前記タービンブレードの外壁に偏って流出し、タービンブレードの外壁に均一で、連続的な冷却ガスフィルムを形成する。
【0010】
上記構造のタービンブレードの製造方法は、例えば、3D印刷技術を利用して製造することや、一体加工技術を利用して製造するなど、限定されない。本発明は、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する上記タービンブレードを製造する方法をさらに提供する。その方法において、まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体を製造し、各部分の内壁に前記離散孔Aを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成する。あるいは、前記タービンブレードの外壁に第1溝体の第2部分、第1部分及び離散孔Aを順に加工して形成して、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを得る。
【0011】
前記加工プロセスは限定されず、機械加工、レーザ加工、電気化学加工などを含む。
【0012】
冷却ガスの連続性、均一性、貼り付け性をさらに向上させるために、本発明は、最適化されたタービンブレード構造をさらに提供する。
【0013】
すなわち、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードは、中空構造となし、前記タービンブレードの外壁は、溝体底部及び溝体の長手方向に沿った2つの側壁を含む複数の凹状の第1溝体を有し、前記タービンブレードの内壁は、溝体底部及び溝体の長手方向に沿った2つの側壁を含む複数の凹状の第2溝体を有し、各第1溝体底部に、概ね該第1溝体の長手方向に沿って配列される、第2溝体底部まで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記第1溝体は、深さ方向に沿って少なくとも2つの部分からなり、第1溝体底部から深さがH1の部分が第1部分であり、残りの部分が第2部分であり、すなわち、第2部分の深さがH2=H-H1であり、第2部分の少なくとも1つの側壁が、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されている。
【0014】
該最適化した構造では、前記タービンブレードの内壁に第2溝体が設置され、第2溝体の導入は、冷却気流を離散孔Aに効率的に伝送し、正圧を形成し、ガス噴射孔の加工深さを低減することに役立つ。
【0015】
前記第2溝体の高さの選択は、冷却ガスを効率的にスパッタし、正圧を形成することを最適化目標とする。
【0016】
上記構造のタービンブレードの製造方法は、例えば、3D印刷技術を利用して製造することや、一体加工技術を利用して製造するなど、限定されない。本発明は、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する上記タービンブレードを製造する方法をさらに提供する。その方法において、まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体を製造し、各部分の内壁に前記第2溝体及び離散孔Aを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成する。
【0017】
前記加工プロセスは限定されず、機械加工、レーザ加工、電気化学加工などを含む。
【0018】
冷却ガスの連続性、均一性、貼り付け性をさらに向上させるために、本発明は、他の最適化されたタービンブレード構造をさらに提供する。
【0019】
複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有するタービンブレードは、中空構造となし、前記タービンブレードの内壁と外壁との間に中空キャビテが設置され、前記タービンブレードの内壁に、前記中空キャビテまで貫通する複数の離散孔Bが設置され、
前記タービンブレードの外壁は、溝体底部及び溝体の長手方向に沿った2つの側壁を含む複数の凹状の第1溝体を有し、各第1溝体底部に、概ね該溝体の長手方向に沿って配列される、前記中空キャビテまで貫通する複数の離散孔Aが設置され、
前記第1溝体の深さはHであり、前記溝体は、深さ方向に少なくとも2つの部分からなり、溝体底部から深さがH1の部分が第1部分であり、残りの部分が第2部分であり、すなわち、第2部分の深さがH2=H-H1であり、第2部分の少なくとも1つの側壁が、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されている。
【0020】
該最適化された構造では、前記タービンブレードの内壁と外壁との間に中空キャビテが設置されており、冷却ガスは、まず、離散孔Bから中空キャビテに入って対流冷却されて正圧を形成し、次に、離散孔Aから前記第1溝体に入る。
【0021】
前記中空キャビテの高さの選択は、冷却ガスを効率的にスパッタし、正圧を形成することを最適化目標とする。
【0022】
好ましくは、前記離散孔Bは、離散孔Aと位置ずれして分布する。
【0023】
前記離散孔Bは、直円孔であってもよく、拡散孔であってもよく、複雑な三次元異形孔であってもよい。
【0024】
好ましくは、前記離散孔Bの開口端には面取り遷移構造又は円弧遷移構造が設置されて、鋭い構造による応力集中現象、及びガスの流通が順調ではないなどの問題を回避する。
【0025】
上記構造のタービンブレードの製造方法は、例えば、3D印刷技術を利用して製造することや、一体加工技術を利用して製造するなど、限定されない。本発明は、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する上記タービンブレードを製造する方法をさらに提供する。その方法において、まず、前記タービンブレードを少なくとも2つの部分に分け、次に、各部分の外壁に前記第1溝体及び離散孔Aを製造し、各部分の内壁に前記離散孔Bを製造し、最後に、各部分を組み合わせて、複合異形溝付きのガスフィルム冷却構造を有する前記タービンブレードを形成する。
【0026】
前記加工プロセスは限定されず、機械加工、レーザ加工、電気化学加工などを含む。
【0027】
好ましくは、前記第1溝体の深さ方向に沿った開口端部102の軸線と前記タービンブレードの外壁の法線とのなす角をαとすると、10°≦α≦90°であり、好ましくは、30°≦α≦80°であり、さらに好ましくは、45°≦α≦70°である。
【0028】
好ましくは、前記第1溝体の溝体の幅方向に沿った垂直断面において、第1部分の2つの側壁は、間隔を隔てる2本の直線分である。各直線分と溝体底部とのなす角は、10°~170°であり、好ましくは、30°~150°であり、より好ましくは、60°~120°である。2本の直線分は互いに平行であってもよく、一定のなす角を形成してもよい。第2部分の側壁は、直線分であってもよく、弧線分であってもよく、好ましくは、第2部分の少なくとも1つの側壁は、弧線分である。また、好ましくは、第1部分の少なくとも1つの側壁と第2部分の同側壁との接続箇所は、滑らかな接続を実現するために、面取り遷移接続である、又は円弧遷移接続である。
【0029】
前記離散孔Aの最大直径はdであり、前記第1溝体の最小幅はDである。好ましくは、D≧dである。好ましくは、H≧2dであり、さらに好ましくは、H≧3dであり、より好ましくは、H≧4dである。
【0030】
好ましくは、H1>H2であり、さらに好ましくは、H1:H2≧2:1であり、より好ましくは、H1:H2≧3:1であり、最も好ましくは、H1:H2≧4:1である。
【0031】
前記タービンブレードの内壁と外壁は互いに平行であってもよく、一定のなす角をなしてもよい。
【0032】
前記離散孔Aは、直円孔であってもよく、拡散孔であってもよく、複雑な三次元異形孔であってもよい。好ましくは、前記離散孔Aの中心軸線と前記火炎筒外壁とのなす角は、θである。なす角αとなす角θは、異なってもよい。好ましくは、なす角θは主に孔の加工厚さを減少させ、一般的に好ましくは、0°≦θ≦60°であり、より好ましくは、10°≦θ≦45°である。なす角αは主にガスフィルムのよい貼り付けを保障する。
【0033】
好ましくは、前記離散孔Aの開口端には面取り遷移構造又は円弧遷移構造が設置されて、鋭い構造による応力集中現象、及びガスの流通が順調ではないなどの問題を回避する。
【0034】
各第1溝体、第2溝体の前記タービンブレードの外壁の設置は限定されないが、タービンブレードの外壁の実際の形状に応じて間隔を隔てて平行に配列してもよく、千鳥配列などであってもよく、主として、各第1溝体に形成された連続ガスフィルムがタービンブレードの外壁を全て被覆する。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、従来技術と比較して、タービンブレードの壁に離散孔A及び第1溝体を設置してガスフィルム冷却構造を形成すると共に、第1溝体が2つの部分で形成された複合複合異形溝であり、溝体の深さ方向に沿って第1部分の深さをH1として、中間拡張溝を形成し、第2部分の深さをH2として、横方向拡張溝を形成したものであり、このような構造は、次のような効果を有する。
【0036】
(1)冷却ガスが離散孔から第1溝体に入った後に、第1溝体が二段に形成された複合異形溝であり、大きな深さを有し、第1溝体の幅方向に沿った垂直断面が細長い構造となすため、
図1に示すように、各離散孔からの拡散ガスは、第1溝体の長手方向に沿って拡張され、混合されるだけでなく、第1溝体の深さ方向に沿って拡散され、混合され、互いに重ね合わせることができ、すなわち、第1溝体の第1部分で十分に発達できることにより、連続的で、均一な正圧ガスを形成した後に、第1溝体の第2部分を経て開口端に伝送され、ガスフィルムの貼り付けの気動要件に応じて開口端の形状を最適設計し、ガスをタービンブレードの外壁一側に偏って流出させ、タービンブレードの外壁に連続的で、均一に貼り付けられた冷却ガスフィルムを形成するとともに、第1溝体の深さが大きく、第1溝体の開口端から流出した冷却ガスが強力な気圧を有するため、タービンブレードの外壁に形成された連続的で、均一な冷却ガスフィルムはタービンブレードの外壁に強く貼り付けられる。すなわち、本発明では、複合異形溝構造の設置は、連続的で、均一で、強く貼り付けられた冷却ガスフィルムに必須条件を提供している。冷却ガスは、離散孔Aから第1溝体に入り、第1部分に十分に拡散され、混合され、均一な正圧ガスを形成した後に、第2部分を経て開口端部に伝送されてタービンブレードの外壁に偏って流出し、タービンブレードの外壁に均一で連続的なガスフィルムを形成する。
【0037】
(2)冷却ガスが本発明のタービンブレードの壁を通過する気動シミュレーション図は、
図1に示すように、本発明における、冷却ガスが離散孔Aから第1溝体に噴射され、第1溝体内で拡散され、混合されて、連続的で、均一な正圧ガスを形成して、タービンブレードの外壁に全ガスフィルム被覆を形成できることを実証している。
【0038】
(3)実験により実証されたように、本発明の燃焼室においてタービンブレードが高温ホットガス環境中にある場合、冷却ガスがタービンブレードの外壁に形成できた全ガスフィルム被覆は、高い冷却効果を有し、等価冷却効率=(燃焼ガス温度-火炎筒内の火炎筒内壁から一定の距離で測定された温度)/(燃焼ガス温度-冷却ガス温度)であるとき、冷却ガスのブロー比M=1.5である場合、本発明のタービンブレードにおいて、タービンブレードの外壁から10ミリメータ以上の距離での等価冷却効率が0.5以上となり、冷却ガスのブロー比が大きくなると、等価冷却効率が0.7以上に向上することができる。
【0039】
(4)本発明のタービンブレードは、航空用エンジン及びガスタービン航空機、飛行自動車及び発電システムなどに広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】冷却ガスが本発明のタービンブレードを通過する気動シミュレーション図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるタービンブレードの構造概略図である。
【
図4】
図3中の1つの第1溝体の構造概略図である。
【
図5】
図3の1つの第1溝体における冷却ガスの伝送概略図である。
【
図6】本発明の実施例2におけるタービンブレードの構造概略図である。
【
図7】本発明の実施例3におけるタービンブレードの水平断面の構造概略図である。
【
図8】
図7中の1つの第1溝体の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。指摘すべきこととして、以下に記載の実施例は本発明を理解しやすくするもので、それに対して何ら限定的な役割を果たすものではない。
【0042】
図2~
図8に示す符号は、14-離散孔B、15-中空キャビテ、100-タービンブレード、101-タービンブレードの外壁、102-タービンブレードの内壁、105-第1溝体、106-分割線、107-第2溝体、301-溝体の第2部分、302-溝体の第1部分、400-離散孔A、500-第1溝体底部、501-第2溝体底部、600、700-第1溝体の2つの側壁、601、701-第2溝体の2つの側壁。
【0043】
(実施例1)
本実施例では、タービンブレード100は中空構造となし、その構造概略図は
図2に示すとおりであり、
図3は
図2の水平断面の構造概略図である。
【0044】
タービンブレード100の外壁101には、互いに間隔を隔てて互いに平行な複数の第1溝体105が設置されており、第1溝体の長さは、タービンブレード100の外壁101を部分的に又は全体的に貫通するものであってよい。
【0045】
図4は、
図3中の1つの第1溝体105の拡大構造概略図である。
【0046】
図4から明らかなように、各第1溝体は、溝体底部500及び溝体の2つの側壁600、700を含む。各第1溝体底部には、タタービンブレードの内壁102まで貫通する複数の離散孔A400が設置されており、本実施例では、タービンブレードの外壁101とタービンブレードの内壁102とが概ね平行となっている。これらの離散孔A400は、
図1に示すように、概ね該第1溝体105の長手方向に沿って配列されている。
【0047】
これらの離散孔Aの最大直径はdで、第1溝体の深さはHで、第1溝体の最小幅はDであり、D≧d、かつH≧2dである。
【0048】
本実施例では、第1溝体は、深さ方向に沿って2つの部分からなり、
図4に示すように、第1溝体底部から深さがH
1の部分が第1部分302であり、残りの部分が第2部分301であり、すなわち、第2部分の深さがH
2=H-H
1である。
【0049】
本実施例では、溝体の第1部分302は、傾斜した柱体構造となし、
図4に示すような垂直断面において、溝体の第1部分302の2つの側壁が間隔を隔てる2本の直線分であり、2本の直線分が互いに平行であり、各直線分と溝体底部とのなす角が70°であり、第2部分の1つの側壁も直線分であり、第1部分の同側壁から延在して形成されるものであり、他の1つの側壁が弧線分となし、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されるものである。本実施例では、第2部分の深さ方向の開口端部の軸線とタービンブレードの外壁101の法線とのなす角αは、30°である。
【0050】
本実施例では、H1はH2よりわずかに大きい。
【0051】
本実施例では、離散孔の中心軸線とタービンブレードの内壁102の法線とのなす角θが15°であり、孔の開口端に円弧遷移構造が設置されて、鋭い構造による応力集中現象を回避している。
【0052】
図5は、
図3の1つの第1溝体における冷却ガスの伝送概略図である。タービンブレードの内壁102側の冷却ガスが、離散孔Aから第1溝体に入った後に、各離散孔Aからの冷却ガスは、第1溝体の長手方向のみならず、第1溝体の深さ方向に沿って拡散され、混合され、互いに重ね合わせることができ、すなわち、第1溝体の第1部分内に十分に広がることができることにより、連続的で、均一な正圧ガスを形成した後に、第1溝体の第2部分を経て開口端に伝送され、タービンブレードの外壁側に偏って流出し、タービンブレードの外壁101に連続的で、均一に貼り付けられたガスフィルムを形成することができるとともに、第1溝体の深さが大きく、第1溝体の開口端から流出したガスが強力な気圧を有するため、タービンブレードの外壁に形成された連続的で、均一なガスフィルムはタービンブレードの外壁に強く貼り付けられる。
【0053】
本実施例では、上記タービンブレードを製造する方法は、まず、該タービンブレード100を2つの部分に分け、
図2に示すように、分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続される別体I及び別体IIを組み合わせ、次に、別体Iの外壁に第1溝体105を、内壁に離散孔Aを、別体IIの外壁に第1溝体105を、内壁に離散孔Aを製造し、最後に、別体I及び別体IIを組み合わせて分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続することである。
【0054】
(実施例2)
本実施例では、タービンブレード100は中空構造となし、その構造概略図は
図2に示すとおりであり、
図3は
図2の水平断面の構造概略図である。
【0055】
タービンブレード100の外壁101には、互いに間隔を隔てて互いに平行な複数の第1溝体105が設置されており、溝体の長さは、タービンブレード100の外壁101を部分的に又は全体的に貫通するものであってよい。タービンブレードの内壁102に互いに間隔を隔てて互いに平行な複数の第2溝体107が設置される。
【0056】
図6は、
図3中の1つの第1溝体105及び第2溝体107の拡大構造概略図である。
【0057】
図6から明らかなように、各第1溝体は、第1溝体底部500及び第1溝体の2つの側壁600、700を含む。各第2溝体107は、第2溝体底部501と、第2溝体の長手方向に沿った2つの側壁601、701とを含む。各第1溝体底部に第2溝体底部まで貫通する複数の離散孔A400が設置され、上記離散孔A400は概ね該第1溝体105の長手方向に沿って配列している。
【0058】
これらの離散孔Aの最大直径はdで、第1溝体の深さはHで、第1溝体の最小幅はDであり、D≧d、かつH≧2dである。
【0059】
本実施例では、第1溝体105は、深さ方向に沿って2つの部分からなり、
図6に示すように、第1溝体底部から深さがH
1の部分が第1部分302であり、残りの部分が第2部分301であり、すなわち、第2部分の深さがH
2=H-H
1である。
【0060】
本実施例では、溝体の第1部分302は、傾斜した柱体構造となし、
図6に示すような垂直断面において、溝体の第1部分302の2つの側壁が間隔を隔てる2本の直線分であり、2本の直線分が互いに平行であり、各直線分と溝体底部とのなす角が70°であり、第2部分の1つの側壁も直線分であり、第1部分の同側壁から延在して形成されるものであり、他の1つの側壁が弧線分となし、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されるものである。本実施例では、第2部分の深さ方向の開口端部の軸線と基体表面101の法線とのなす角αは、30°である。
【0061】
本実施例では、H1はH2よりわずかに大きい。
【0062】
本実施例では、離散孔Aの中心軸線とタービンブレードの内壁102の法線とのなす角θは15°であり、孔の開口端に円弧遷移構造が設置されて、鋭い構造による応力集中現象を回避している。
【0063】
本実施例におけるタービンブレード壁での冷却ガスの伝送は以下のとおりである:タービンブレードの内壁102側の冷却ガスが、まず第2溝体に伝送され、第2溝体に効率的に伝送され、正圧を形成した後に離散孔Aから第1溝体に入り、各離散孔Aからの冷却ガスが、第1溝体の長手方向のみならず、第1溝体の深さ方向に沿って拡散され、混合され、互いに重ね合わせることができ、すなわち、第1溝体の第1部分内に十分に広がることができることにより、連続的で、均一な正圧ガスを形成した後に、第1溝体の第2部分を経て開口端に伝送され、タービンブレードの外壁側に偏って流出し、タービンブレードの外壁に連続的で、均一に貼り付けられたガスフィルムを形成することができるとともに、溝体の深さが大きく、溝体の開口端から流出するガスが強い気圧を有するため、タービンブレードの外壁に形成された連続的で、均一なガスフィルムは、タービンブレードの外壁に強く貼り付けられる。
【0064】
本実施例では、上記タービンブレードを製造する方法は、まず、該タービンブレード100を2つの部分に分け、
図2に示すように、分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続される別体I及び別体IIを組み合わせ、次に、別体Iの外壁に第1溝体105を、内壁に第2溝体107及び離散孔Aを、別体IIの外壁に第1溝体105を、内壁に第2溝体107及び離散孔Aを製造し、最後に、別体Iと別体IIを組み合わせて分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続することである。
【0065】
(実施例3)
本実施例では、タービンブレード100は中空構造となし、その構造概略図は
図2に示すとおりであり、
図7は
図2の水平断面の構造概略図である。
【0066】
図7に示すように、タービンブレード100の内壁102と外壁101との間には、中空キャビテ15が設置されている。タービンブレードの内壁102に中空キャビテ15まで貫通する複数の離散孔B14が設置されている。
【0067】
タービンブレード100の外壁101には、互いに間隔を隔てて互いに平行な複数の第1溝体105が設置されており、溝体の長さは、タービンブレード100の外壁101を部分的に又は全体的に貫通するものであってよい。
【0068】
図8は、
図7中の1つの第1溝体105の拡大構造概略図である。
【0069】
図8から明らかなように、各第1溝体105は、第1溝体底部500と第1溝体の2つの側壁600、700とを含み、各第1溝体底部に中空キャビテ15まで貫通する複数の離散孔A400が設置されている。
【0070】
本実施例では、タービンブレードの外壁101は、タービンブレードの内壁102と概ね平行である。これらの離散孔A400は、
図1に示すように、概ね該第1溝体の長手方向に沿って配列している。
【0071】
これらの離散孔Aの最大直径はdで、第1溝体の深さはHで、第1溝体の最小幅はDであり、D≧d、かつH≧2dである。
【0072】
本実施例では、第1溝体は、深さ方向に沿って2つの部分からなり、
図4に示すように、第1溝体底部から深さがH
1の部分が第1部分302であり、残りの部分が第2部分301であり、すなわち、第2部分の深さがH
2=H-H
1である。
【0073】
本実施例では、溝体の第1部分302は、傾斜した柱体構造となし、
図4に示すような垂直断面において、溝体の第1部分302の2つの側壁が間隔を隔てる2本の直線分であり、2本の直線分が互いに平行であり、各直線分と溝体底部とのなす角が70°であり、第2部分の1つの側壁も直線分であり、第1部分の同側壁から延在して形成されるものであり、他の1つの側壁が弧線分となし、第1部分の同側壁から横方向に拡張して形成されるものである。本実施例では、第2部分の深さ方向の開口端部の軸線と基体表面101の法線とのなす角αは、30°である。
【0074】
本実施例では、H1はH2よりわずかに大きい。
【0075】
本実施例では、離散孔Aの中心軸線とタービンブレードの内壁102の法線とのなす角θは15°であり、孔の開口端に円弧遷移構造が設置されて、鋭い構造による応力集中現象を回避している。
【0076】
本実施例におけるタービンブレード壁での冷却ガスの伝送は以下のとおりである:タービンブレードの内壁102側の冷却ガスが、まず離散孔Bから中空キャビテ15に入り、中空キャビテ15で効率的に伝送され、正圧を形成した後に離散孔Aから第1溝体に入り、各離散孔Aからの冷却ガスが、第1溝体の長手方向のみならず、第1溝体の深さ方向に沿って拡散され、混合され、互いに重ね合わせることができ、すなわち、第1溝体の第1部分内で十分に発達できることにより、連続的で、均一な正圧ガスを形成した後に、第1溝体の第2部分を経て開口端に伝送され、タービンブレードの外壁側に偏って流出し、タービンブレードの外壁に連続的で、均一に貼り付けられたガスフィルムを形成することができるとともに、溝体の深さが大きく、溝体の開口端から流出するガスが強い気圧を有するため、タービンブレードの外壁に形成された連続的で、均一なガスフィルムは、タービンブレードの内壁に強く貼り付けられる。
【0077】
本実施例では、上記タービンブレードを製造する方法は、まず、該タービンブレード100を2つの部分に分け、
図2に示すように、分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続される別体I及び別体IIを組み合わせ、次に、別体Iの外壁に第1溝体105及び離散孔Aを、内壁に離散孔Bを、別体IIの外壁に第1溝体105及び離散孔Aを、内壁に離散孔Bを製造し、最後に、別体I及び別体IIを組み合わせて分割線106で1つの完全タービンブレード100として接続することである。
【0078】
上述した実施例は、本発明の技術手段を詳細に説明したものであり、以上の記載は本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の要旨の範囲内で行われるいかなる修正、補足、又は類似の形態の代替などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきであることは理解されるべきである。