(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】脆性材料で構成された構造物の切断方法および装置
(51)【国際特許分類】
C03B 33/06 20060101AFI20230425BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20230425BHJP
C03B 33/09 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C03B33/06
B23K26/38 Z
C03B33/09
(21)【出願番号】P 2021510024
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 KR2019017425
(87)【国際公開番号】W WO2020122570
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0161181
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518062668
【氏名又は名称】ミーレ カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ジェウン
(72)【発明者】
【氏名】パク テソン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1344365(KR,B1)
【文献】特開2017-077991(JP,A)
【文献】特表2018-505840(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0081246(KR,A)
【文献】特開2016-216281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/06
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を備える脆性体を準備するステップと、
アラインカメラにより前記脆性体の位置を確認し、レーザー照射手段により、予め設定された経路に沿って前記脆性体にレーザーを照射し、スクライブ線を形成するステップと、
前記スクライブ線から離隔された前記脆性体の第1領域に、予め設定された周波数で振動する振動手段を接触させ、前記脆性体を切断するステップを含み、
前記スクライブ線を形成するステップは、
前記脆性体を前記回転軸に対して回転させるステップと、
前記回転する脆性体に前記レーザーを照射するが、前記レーザーの焦点位置が前記脆性体の中心部から前記脆性体の外側部に移動するように、前記レーザーを照射するステップを含み、
前記スクライブ線を形成するステップは、前記脆性体の中心部から外側部に向けて第1方向に前記レーザー照射手段を移動しながら、前記レーザーを照射し、位置調整手段によって、前記レーザー照射手段、前記振動手段および前記アラインカメラを連結する一つのプレートの位置が制御される、脆性体の切断方法。
【請求項2】
前記スクライブ線を形成するステップは、前記レーザー照射手段を前記第1方向に移動しながら、前記レーザーを照射するが、前記第1方向に対して垂直な第2方向に前記レーザー照射手段を往復移動しながら、前記レーザーを照射する、請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項3】
前記脆性体を切断するステップは、前記振動手段を用いて前記脆性体を加圧するステップをさらに含む、請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項4】
前記振動手段の加圧方向は、前記
レーザーの焦点位置の移動方向である第1方向とは反対方向である、請求項3に記載の脆性体の切断方法。
【請求項5】
前記レーザー照射方向は、前記脆性体の回転軸と交差する、請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項6】
前記脆性体は、円形脆性体であり、
前記円形脆性体の1回転周期の間に、前記レーザー照射手段は、前記回転軸に対して一定の距離を維持する、請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項7】
前記脆性体は、多角形脆性体であり、
前記多角形脆性体の1回転周期の間に、前記レーザー照射手段の前記回転軸に対する距離は周期的に変化する、請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項8】
前記脆性体の切断面は、レーザー加工面である請求項1に記載の脆性体の切断方法。
【請求項9】
前記切断面の加工パターンは無方向性(non-oriented)である、請求項8に記載の脆性体の切断方法。
【請求項10】
回転軸を備える脆性体を回転させる回転手段と、
予め設定された経路に沿って前記脆性体にレーザーを照射し、スクライブ線を形成するレーザー照射手段と、
予め設定された周波数で振動しながら、前記スクライブ線から離隔された前記脆性体の第1領域と接触し、前記脆性体に振動エネルギーを伝達する振動手段と、
レーザーを照射するために脆性体の位置を確認するアラインカメラと、前記レーザー照射手段、前記振動手段および前記アラインカメラを連結する一つのプレートの位置を制御する位置調整手段と、を含み、
前記レーザー照射手段は、前記回転手段により回転する前記脆性体に前記レーザーを照射するが、前記レーザーの焦点位置が前記脆性体の中心部から前記脆性体の外側部に移動するように、前記レーザーを照射し、前記レーザー照射手段は前記脆性体の中心部から外側部に向けて第1方向に移動する脆性体切断装置。
【請求項11】
前記振動手段は、前記レーザーの焦点位置の移動方向である第1方向に対して反対方向に前記脆性体を加圧する手段をさらに含む、請求項10に記載の脆性体切断装置。
【請求項12】
前記振動手段の先端は、ボールタイプ(Ball type)およびローラータイプ(Roller type)のいずれか1つからなる、請求項10に記載の脆性体切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、脆性材料で構成された構造物(以下、脆性体)の切断方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脆性体を切断する方法としては、主にレーザー加工方法と機械加工方法があり、これらの方法は、材料の形態に応じて様々な方式で使用される。レーザー加工方法は、非接触方式を採用しており、機械加工方法に比べてほこりの発生が少なく、切断面の品質を高め、外部からの衝撃に耐える強度を増加させるために使用され、レーザー源としては、二酸化炭素レーザー(CO2 laser)、紫外線レーザー(UV laser)、赤外線レーザー(IR laser)などを利用する。 一方、機械加工方法では、従来のガラス切断方法であるダイヤモンドチップまたはホイール(wheel)を利用し、脆性材料の表面に物理的なクラックを形成した後、バー(bar)、ローラー(roller)、曲げ(bending)などの方法を使用してブレーキング(braking)を行うことになる。
【0003】
しかし、上記の脆性体の切断方法は、板状脆性体の場合であり、脆性体は、その特性により、板状脆性体に適用される切断方法をそのまま採用することができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、別の研磨工程を設けることなく、高品質の切断面を備える脆性体を切断する方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例は、回転軸を備える脆性体を準備するステップと、レーザー照射手段により、予め設定された経路に沿って前記脆性体にレーザーを照射し、スクライブ線を形成するステップと、前記スクライブ線から離隔された前記脆性体の第1領域に、予め設定された周波数で振動する振動手段を接触させ、前記脆性体を切断するステップを含む、脆性体の切断方法を提供する。
【0006】
本発明の一実施例では、前記スクライブ線を形成するステップは、前記脆性体を前記回転軸に対して回転させるステップと、前記回転する脆性体に前記レーザーを照射するが、前記レーザーの焦点位置が前記脆性体の中心部から前記脆性体の外側部に移動するように、前記レーザーを照射するステップとを含んでもよい。
【0007】
本発明の一実施例では、前記スクライブ線を形成するステップは、前記脆性体の中心部から外側部に向けて第1方向に前記レーザー照射手段を移動しながら、前記レーザーを照射してもよい。
【0008】
本発明の一実施例では、前記スクライブ線を形成するステップは、前記レーザー照射手段を前記第1方向に移動しながら、前記レーザーを照射するが、前記第1方向に対して垂直な第2方向に前記レーザー照射手段を往復移動しながら、前記レーザーを照射してもよい。
【0009】
本発明の一実施例では、前記脆性体を切断するステップは、前記振動手段を用いて前記脆性体を加圧するステップをさらに含んでもよい。
【0010】
本発明の一実施例では、前記振動手段の加圧方向は、前記設定されたレーザー照射方向とは反対方向であってもよい。
【0011】
本発明の一実施例では、前記レーザーの照射方向は、前記脆性体の回転軸と交差してもよい。
【0012】
本発明の一実施例では、前記脆性体は、円形脆性体であり、前記円形脆性体の1回転周期の間に、前記レーザー照射手段は、前記回転軸に対して一定の距離を維持してもよい。
【0013】
本発明の一実施例では、前記脆性体は、多角形脆性体であり、前記多角形脆性体の1回転周期の間に、前記レーザー照射手段の前記回転軸に対する距離は周期的に変化してもよい。
【0014】
本発明の一実施例は、 切断される切断面を含み、前記切断面は、レーザー加工面である脆性体を提供する。
【0015】
本発明の一実施例では、前記切断面の加工パターンは無方向性(non-oriented)であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例は、回転軸を備える脆性体を回転させる回転手段と、予め設定された経路に沿って前記脆性体にレーザーを照射し、スクライブ線を形成するレーザー照射手段と、予め設定された周波数で振動しながら、前記スクライブ線から離隔された前記脆性体の第1領域と接触し、前記脆性体に振動エネルギーを伝達する振動手段とを含む、脆性体切断装置を提供する。
【0017】
本発明の一実施例では、レーザーを照射するために脆性体の位置を確認するアラインカメラをさらに含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施例では、前記レーザー照射手段は、前記回転手段により回転する前記脆性体に前記レーザーを照射するが、前記レーザーの焦点位置が前記脆性体の中心部から前記脆性体の外側部に移動するように、前記レーザーを照射してもよい。
【0019】
本発明の一実施例では、前記振動手段は、前記レーザーの焦点位置の移動方向である第1方向に対して反対方向に前記脆性体を加圧する手段をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施例では、前記振動手段の先端は、ボールタイプ(Ball type)およびローラータイプ(Roller type)のいずれか1つからなるものであってもよい。
【0021】
前述したこと以外の他の側面、特徴、および利点は、以下の図面、特許請求の範囲、および発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施例に係る脆性体の切断方法によると、レーザーと振動子とを結合して切断することで、脆性体と呼ばれる形状の特殊性を有する加工対象物を容易に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係る脆性体切断装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1の脆性体切断装置を概略的に示す概念図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る脆性体の切断方法を順に示したフローチャートである。
【
図4-6】
図3の脆性体の切断方法によって脆性体が切断される過程を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る脆性体の切断方法を利用し、異形加工された切断部分を説明する図である。
【
図8】
図3の脆性体の切断方法を説明する断面図である。
【
図9】
図8の脆性体の切断方法において、回転周期に応じたレーザー照射手段の位置関係を説明する図である。
【
図10】
図3の脆性体の切断方法を利用し、多角形脆性体を切断する過程を説明する図である。
【
図11】
図10の脆性体の切断方法において、回転周期に応じたレーザー照射手段の位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照し、以下の実施例を詳細に説明する。図面を参照して説明するときには、同一または対応する構成要素は、同一の図面符号を付与し、これに対する重複説明は省略する。
【0025】
本実施例は、様々な変形を加えることができ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明する。本実施例の効果および特徴、さらに、それらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述されている内容を参照することで明確になるであろう。しかしながら、本実施例は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
【0026】
以下の実施例において、第1および第2などの用語は、限定的な意味ではなく、1つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用する。
【0027】
以下の実施例において、単数の表現は、文脈上、明確に別の意味を意図しない限り、複数の表現を含む。
【0028】
以下の実施例において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0029】
以下の実施例において、ユニット、領域、構成要素などの部分が、他の部分の上部、または上にあるとするとき、他の部分のすぐ上部にある場合だけでなく、その中間に他のユニット、領域、構成要素などが介在している場合も含む。
【0030】
以下の実施例において、「接続する」または「結合する」などの用語は、文脈上、明白に別の意味を意味しない限り、必ずしも2つの部材を直接的および/または固定的に接続または結合することを意味するものではなく、2つの部材の間に他の部材が介在していることを排除するものではない。
【0031】
明細書に記載の特徴または構成要素が存在することを意味し、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0032】
図面において、説明の便宜のために、構成要素の大きさは拡大または縮小され得る。 例えば、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示すものであり、以下の実施例は、必ずしも図示したものに限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の一実施例に係る脆性体切断装置10を示す斜視図であり、
図2は、
図1の脆性体切断装置10を概略的に示す概念図である。
【0034】
図1および
図2を参照すると、本発明の一実施例に係る脆性体切断装置10は、固定手段110と、レーザー照射手段130と、振動手段140と、回転手段120とを含んでもよい。
【0035】
本明細書で脆性体Tとは、回転軸を備える切断対象物を意味し、特に、中空TO(
図4を参照)を備え、中空TOを取り囲む内面A1および前記内面A1よりも外側に位置する外面A2からなる、管状(tubular)を有する管状脆性体であってもよい。脆性体Tは、クォーツ(quartz)、ソーダライム(sodalime)、ホウケイ酸塩(Borosilicate)などのガラス材料を含む脆性材料からなるものであってもよいが、本発明の技術的思想は、これに限定されず、レーザーおよび振動子を利用して切断可能な様々な材料の切断対象物に適用され得ることはもちろんである。脆性体Tの断面は、円形であるか、または三角形、四角形などの多角形からなるものであってもよいが、これに限定されず、後述する回転手段120によって回転が可能な全ての切断対象物を含み得る。
【0036】
固定手段110は、上記脆性体Tの一端を固定し、例えば、脆性体Tの一端の外面を取り囲んで固定するチャック(chuck)部材であってもよい。固定手段110は、1つ設けられているので、少なくとも脆性体Tの一端を固定することができ、後述するスクライブ線Scから離隔された脆性体Tの外面に振動手段140を加圧する間に、脆性体Tの一端が揺れないように固定する機能を実行してもよい。 他の実施例として、図示されたように、固定手段110は、脆性体Tの一端に対向する他端、または一端から離隔された一領域を固定する少なくとも一つの補助固定手段115をさらに含んでもよい。これにより、固定手段110は、脆性体Tの長さに拘わらず、安定的に固定することができ、脆性体Tの本体部分から切断される切断部分T’(
図6を参照)の意図せぬ落下を防止することができる。 すなわち、脆性体を切断しても、2つの固定手段110と補助固定手段115とによって、脆性体を安定的に固定し、落下を防止することができる。
【0037】
一方、脆性体切断装置10は、予め設定された経路のスクライブ線Scを脆性体Tに形成するために、脆性体Tの周囲に沿ってレーザーを照射することになる。このとき、脆性体Tは、固定され、後述するレーザー照射手段130が脆性体Tを中心に回転し、上記のスクライブ線Scを形成することができる。ただし、実装を容易にするために、以下では脆性体Tを回転しながら、固定されたレーザー照射手段によってレーザーを照射し、スクライブ線Scを形成する場合を中心に説明する。
【0038】
脆性体切断装置10は、脆性体Tを回転するために、固定手段110と接続される回転手段120をさらに含んでもよい。回転手段120は、モータ(motor)やアクチュエータ(actuator)などの駆動手段であってもよく、接続された固定手段110を回転させることにより、脆性体Tを回転させることができる。このとき、回転手段120は、前記脆性体Tを等速度で回転させることができる。
【0039】
レーザー照射手段130は、予め設定された経路に沿って脆性体Tにレーザーを照射し、スクライブ線(scribing line)Scを形成してもよい。レーザー照射手段130は、ベッセルビーム加工方法やフィラメンテーション加工方法によって、レーザーを脆性体に照射してもよい。すなわち、レーザー照射手段130は、フィラメンテーション(filamentation)加工方法を介してレーザーをベッセルビーム(Bessel beam)の形で形成して脆性体Tに照射することができる。
【0040】
ここで、フィラメンテーション(filamentation)加工方法は、フィラメンテーション現象を利用した加工方法であり、フィラメンテーション現象とは、フェムト秒レーザーをガラス内部に集束させると、特定の条件下で数ないし数十レイリー長(Rayleigh length)以上に長くプラズマが発生する現象を意味する。すなわち、透明なガラスのようにカー効果(Kerr effect)を有する材料で集束されたレーザーパルスにおける自己集束を起こすためには、閾値以上のパルスが照射されなければならない。自己集束の後、プラズマ分散現象が発生し、自己集束によってさらに集束されたビームは、局部的に損傷臨界点を超えるほど大きいが、アバランシェイオン化を起こすほどにパルス幅が長くないので、イオン化は起こるが材料に恒久的な損傷を与えないようになる。このような自己集束およびプラズマ分散がバランスをとりながら連続的に発生すると、その長さが数レイリー長(Rayleigh length)にわたって連続的に屈折率変化が起こるようにる。このような現象をフィラメンテーション現象という。本発明は、このようなフィラメンテーション加工方法を利用し、脆性体Tの切断面の加工品質を向上させることができる。しかし、本発明の技術的思想は、これに限定されない。
【0041】
レーザー照射手段130は、直接レーザーを発生させ、脆性体Tに向けて照射してもよいが、他の実施例として、
図2に示すように、外部に配置されるレーザー発生手段137から発生されたレーザーLを受け、これを脆性体Tに伝達してもよい。このため、レーザー照射手段130は、レーザー発生手段137から受けるレーザーLをベッセルビーム(Bessel beam)に変更し、変更されたレーザーを前記脆性体Tに案内する光学部133と、光照射部131とを含んでもよい。図では、光学部133が、レーザーLを反射して経路を変更するミラー(mirror)1331だけを図示したが、これに限定されず、レーザーLの経路を変更するための複数のミラーまたは複数のレンズを含んでもよいことはもちろんである。
【0042】
一方、レーザー照射手段130は、回転手段120によって回転する脆性体TにレーザーLを照射するが、レーザーLの焦点位置が脆性体Tの内面A1から外面A2へ移動するようにレーザーLを照射してもよい。レーザー照射手段130が、レーザーLの焦点位置を外面A2から照射する場合、加工された部分がレーザーの経路上に位置するので、加工部分によってレーザーが分散されるなど、正確な焦点位置を合わせることが難しい。したがって、本発明のレーザー照射手段130は、脆性体Tの内面A1から外面A2にレーザーLの焦点位置が移動するようにレーザーを照射する。すなわち、レーザー照射手段130は、脆性体Tの長手方向(x方向)に対して交差する第1方向(z方向)、より具体的には、長手方向(x方向)に垂直な第1方向(z方向)に、レーザーLの焦点位置を移動させながらレーザーLを照射してもよい。
【0043】
特に、レーザー照射手段130は、レーザーLの焦点位置を脆性体Tの内面A1から外面A2に移動させながらレーザーLを照射してもよい。このとき、脆性体切断装置10は、レーザー照射手段130の位置を調節する位置調節手段105を備え、レーザー照射手段130の位置に応じて、レーザーLの焦点位置を移動してもよい。 位置調節手段105は、少なくともレーザー照射手段130を第1方向(z方向)に移動させる第1方向移動部を含んでもよい。また、位置調整手段105は、レーザー照射手段130を第1方向(z方向)に垂直な円弧方向およびy方向に移動させる第2方向移動部と、第3方向移動部とをさらに含み、3軸方向にレーザー照射手段130の位置を制御することができ、これにより、様々な形態で切断対象物を切断することができる。
【0044】
一方、振動手段140は、予め設定された周波数で振動しながら、スクライブ線Scから離隔された脆性体Tの第1領域と接触し、脆性体Tに振動エネルギーを伝達してもよい。 振動手段140は、振動エネルギーを発生する振動発生部143と、脆性体Tに直接接触(contact)し、振動発生部143から生成した振動エネルギーを脆性体Tに提供する振動先端部141とを含んでもよい。
【0045】
振動手段140は、脆性体Tが静止した状態または回転する状態の両方の場合において接触することができ、静止した状態である場合は、線接触または面接触によって脆性体Tに接触し、回転する状態である場合、線または点接触によって脆性体Tに接触することができる。すなわち、振動手段140の先端がボール(Ball)タイプである場合に、脆性体Tの静止状態および回転状態の両方で点接触によって接触することができる。または、振動手段140の先端がローラー(Roller)タイプである場合に、脆性体Tの静止状態および回転状態の両方で線接触によって接触することができる。他の実施例として、振動手段140の先端が脆性体の曲面に対応する円筒(Cylinder)タイプで形成される場合は、面接触によって脆性体Tに接触することができる。静止または回転状態に応じて振動先端部の接触方式が異なるようにし、より効果的に切断対象物を切断することができる。 一実施例では、振動手段140は、超音波振動(ultrasonic oscillation)を利用してもよく、音源に応じて磁歪型、圧電/電歪型、および電磁型振動子を使用してもよい。また、共振周波数の範囲は、20kHz以上400kHz以下の範囲であってもよい。
【0046】
一方、振動手段140は、脆性体Tを加圧するように機能してもよい。このとき、振動手段140は、脆性体Tを加圧することができる任意の方向に加圧してもよい。一実施例では、振動手段140は、レーザーの焦点位置の移動方向である第1方向(+z方向)に対して反対方向(-z方向)に脆性体Tを加圧してもよい。すなわち、振動手段140は、振動と共に脆性体Tに圧力を印加することにより、脆性体Tを、より容易に切断することができる。
【0047】
このとき、振動先端部141は、曲面からなるものであってもよく、特に脆性体Tが回転する状態であっても接触できるように、ボールタイプ(ball type)またはローラータイプ(roller type)として設けられてもよい。また、振動先端部141は、脆性体Tよりも硬度が低い材料で構成され、脆性体Tの外面A2に均一に振動を発生させ、ブレーキング(braking)を実装するときに、外面A2における傷の生成を最小限に抑えることができる。
【0048】
一方、本発明の一実施例に係る脆性体切断装置10は、レーザーを照射するために脆性体Tの位置を確認するアラインカメラ(align camera)150をさらに含んでもよい。このとき、脆性体切断装置10は、上記の構成であるアラインカメラ150、レーザー照射手段130、および振動手段140の位置をそれぞれ制御してもよい。他の実施例として、図に示すように、脆性体切断装置10は、振動手段140と、アラインカメラ150と、レーザー照射手段130とを一つのプレート100により連結し、位置調節手段105を用いてプレート100の位置を制御することで、上記の構成の位置を一度に制御することが可能である。
【0049】
以下、
図3~
図11を参照し、前述の脆性体切断装置10を用いて脆性体Tを切断する方法について具体的に説明する。
【0050】
図3は、本発明の一実施例に係る脆性体の切断方法を順に示したフローチャートであり、
図4~
図6は、
図3の脆性体の切断方法によって脆性体Tが切断される過程を説明する図である。
【0051】
図3および
図4を参照すると、脆性体を切断する方法は、まず、脆性体Tを準備する(S100)。脆性体Tは、前述したように、中空TOを備え、中空TOを取り囲む内面A1および前記内面A1よりも外側に位置する外面A2からなる、管状(tubular)を有する切断対象物を意味する。脆性体Tの断面は、円形であるか、三角形、四角形などの多角形からなるものであってもよい。脆性体Tは、固定手段110によって固定されることで用意されてもよい。
【0052】
それから、脆性体の切断方法は、レーザー照射手段130によって、予め設定された経路に沿って脆性体TにレーザーLを照射し、スクライブ線Scを形成する(S200)。スクライブ線Scは、脆性体Tの周囲に沿って形成される閉曲線(closed curve)であってもよい。すなわち、脆性体Tにスクライブ線Scを形成するステップは、脆性体Tを中空TOが通る回転軸Ax1に対して回転させながら、回転する脆性体TにレーザーLを照射することで形成してもよい。
【0053】
このとき、スクライブ線Scを形成するステップは、レーザーLの焦点位置が脆性体Tの内面A1から外面A2に移動するように、レーザーLを照射してもよい。スクライブ線Scを形成することにあたり、一実施例として、脆性体の切断方法は、レーザー照射手段130を、脆性体Tの内面A1から外面A2に向けて第1方向(+z方向)に移動させながらレーザーを照射してもよい。他の実施例として、レーザー照射手段130を固定した状態で、脆性体Tの位置を-z方向に沿って移動させながらレーザーを照射してもよい。
【0054】
選択的な実施例としては、スクライブ線Scを形成するステップは、レーザー照射手段130を第1方向(z方向)に移動させながらレーザーLを照射するが、第1方向(z方向)に対して垂直な第2方向(y方向)にレーザー照射手段130を往復移動させながらレーザーLを照射してもよい。すなわち、レーザー照射手段130は、脆性体Tの径方向であるy方向に往復移動しながら、z軸に沿って脆性体Tから遠ざかる方向に移動してもよい。
【0055】
一方、レーザー照射手段130は、上記第1方向(z方向)および第2方向(y方向)の両方と交差する第3方向(x方向)に移動しながらレーザーを照射してもよい。上述したように、脆性体の切断方法は、レーザー照射手段130の位置を制御することにより、様々な形態の切断面を有するように加工することもできる。
【0056】
それから、
図3、
図5、および
図6を参照すると、脆性体の切断方法は、スクライブ線Scから離隔された脆性体の第1領域に、予め設定された周波数で振動する振動手段140を接触させ、脆性体Tを切断する(S300)。このとき、脆性体Tを切断する過程において、振動手段140を利用し、脆性体Tを加圧してもよく、振動手段140の加圧方向は、第1方向(+z方向)の反対方向(-z方向)であってもよい。
【0057】
振動手段140は、予め設定された周波数で振動しながら脆性体Tに接触し、スクライブ線Scに振動エネルギーを伝達してブレーキング(braking)を実装してもよい。 振動手段140は、脆性体Tが静止した状態または回転する状態の両方の場合において接触することができ、静止した状態である場合は、振動手段140の先端形状に応じて点接触、線接触、または面接触によって脆性体Tに接触し、回転する状態である場合、線接触または点接触によって脆性体Tに接触することができる。
【0058】
前述の過程を経て切断された切断部分T’は、
図6のように切断面A3を備える。すなわち、切断面A3は、レーザー照射によるレーザー加工面からなるが、機械切断方法のような物理的な切断方法ではなく、レーザーによって非接触方式で加工されることにより、パーティクル(particle)だけでなく、チップ(chip)、またはバー(Burr)の発生も最小限に抑えることができ、高品質の切断面を有することができる。
【0059】
また、上記の脆性体の切断方法を用いる場合には、チップ(chip)またはバー(Burr)を除去するための研磨工程を省略することができ、工程の効率を向上させることができる。このとき、これにより製造された脆性体T’は、研磨工程を行うことなく、レーザー加工のみで形成されるので、加工パターンが無方向性(non-oriented)であるようになる。
【0060】
図7は、本発明の一実施例に係る脆性体の切断方法を利用し、異形加工された切断部分T’を説明する図である。
【0061】
図7を参照すると、脆性体の切断方法は、レーザー照射手段130の位置をx方向、y方向、およびz方向の3軸方向に移動しながらスクライブ線Scを形成することができ、図に示すような異形加工が可能である。したがって、これにより切断された脆性体T’の切断面A3は、曲率を有する曲面からなるものであってもよい。脆性体の切断方法として、脆性体Tを等速で回転させながら、脆性体Tの回転速度とレーザー照射手段130のx方向(脆性体の長手方向)に対する移動速度とを同期化させ、レーザーを照射してもよい。
【0062】
図8は、
図3の脆性体の切断方法を説明する断面図であり、
図9は、
図8の脆性体の切断方法において、回転周期に応じたレーザー照射手段の位置関係を説明する図である。
【0063】
図8の(a)から(c)を参照すると、本発明の一実施例に係る脆性体の切断方法は、上記に説明したように、脆性体Tの内面A1から外面A2にレーザーの焦点位置を移動させながらレーザーを照射する。ただし、スクライブ線Scは、閉経路または閉曲線を形成しなければならない。
【0064】
一実施例では、脆性体Tが円形脆性体である場合、脆性体Tが一回り回転する間に、レーザーの焦点位置は、同一位置に固定しなければならない。すなわち、脆性体Tの1回転周期の間に、レーザー照射手段130は、回転軸Ax1に対して一定の距離を維持しなければならない。それから、脆性体Tの1回転が完了すると、レーザー照射手段130の位置は、脆性体Tから離れる第1方向に移動してもよい。
【0065】
図9を参照すると、脆性体Tの第1回転周期R1の間に、レーザー照射手段130の焦点位置は、第1位置P1(
図8の(a)を参照)で一定しており、第2回転周期R2の間に、焦点位置は、第1位置P1よりも回転軸Ax1からさらに離隔された第2位置P2(
図8の(b)を参照)で一定して維持されてもよい。このようなシーケンスは、脆性体Tの内面A1から外面A2へのレーザーの照射が完了すると、終了する。
【0066】
図10は、
図3の脆性体の切断方法を用いて多角形脆性体を切断する過程を説明する図であり、
図11は、
図10の脆性体の切断方法において、回転周期に応じたレーザー照射手段の位置関係を説明する図である。
【0067】
図10の(a)から(d)を参照すると、本発明の他の実施例に係る脆性体の切断方法は、脆性体Tが多角形である場合でも適用することができる。脆性体の切断方法は、円形脆性体と同様に、多角形脆性体Tにおいても回転しながらレーザーを照射し、閉経路または閉曲線のスクライブ線Scを形成してもよい。
【0068】
一実施例として、図面に示されているように、脆性体Tが四角形脆性体である場合、脆性体Tが一回り回転する間に、回転軸Ax1から同一距離の面にレーザーを照射するために、レーザーの焦点位置は、周期的に移動しなければならない。すなわち、断面を基準に、四角形の一辺の中央Mからレーザー照射が開始される場合、レーザーの焦点位置は、第1位置P1であってもよく、脆性体Tが回伝しながら頂点に近づくほどレーザーの焦点位置は、回転軸Ax1に対して遠ざかるようになってもよい(P1→P3)。継続的に脆性体Tが回転すると、レーザーの焦点位置は、回転軸Ax1に再度近づいたり離れたりすることを周期的に繰り返してもよい。
【0069】
図11を参照すると、脆性体Tの第1回転周期R1の間に、レーザー照射手段130の焦点位置は、第1位置P1と第3位置P3との間を周期的に繰り返すようになる。 それから、脆性体Tの第2回転周期R2の間に、レーザー照射手段130の焦点位置は、第1方向(z方向)に移動した後、新しい第1-1位置P1’と第1-3位置P3’との間を周期的に繰り返すようになる。このようなシーケンスは、脆性体Tの内面A1から外面A2へのレーザーの照射が完了すると、終了する。
【0070】
前述したように、本発明の実施例に係る脆性体の切断方法によると、レーザーと振動子とを結合して切断を行うことで、脆性体と呼ばれる材料の特殊性を有する加工対象物を容易に切断することができる。また、本発明の実施例に係る脆性体の切断方法は、別のブレーキングユニットを必要することなく、スクライブ加工と同一線上にブレーキング加工を行うことができ、装置の構成を最小限に抑えることができる。さらに、脆性体の切断方法は、物理的なホイールを用いて加工することができなかった強化ガラスの加工だけでなく、ブレーキングが難しかった短い長さの加工対象物まで加工することができる。またさらに、レーザーと振動子とを用いて加工対象物を切断することにより、チップ(chip)またはバー(burr)を除去するための別の研磨工程を省略することができ、工程の効率を向上させることができる。
【0071】
前述した実施例は、加工対象物が中空を有する管状の加工対象物である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、加工対象物が回転軸を有する場合は、本発明の技術的思想が同じように適用され得る。
【0072】
このように、本発明は、図に示された一実施例を参考に説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、様々な変形および実施例の変形が可能であることを理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められなければならないであろう。