(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】試料を走査する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20230425BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/64 E
(21)【出願番号】P 2021516682
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075104
(87)【国際公開番号】W WO2020064481
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102018123381.7
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラース フリードリヒ
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0054226(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299326(US,A1)
【文献】米国特許第05304810(US,A)
【文献】特開2009-103958(JP,A)
【文献】特開2017-198971(JP,A)
【文献】特開2008-164841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡法において試料(102)を走査する方法であって、
ドットパターン(10)を形成するために少なくとも3つの照明点(12、13)を生成し、
前記ドットパターン(10)の前記照明点(12、13)にそれぞれ対応付けられている走査ライン(14)を生成するために第1方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動させ、前記走査ライン(14)を第2方向に順次ずらして
、各位置において前記第1方向に走査を行うことで前記試料(102)の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域(40)を走査し、前記走査ライン(14)を前記第2方向に順次ずらす際、少なくとも1つの走査ライン(14)の間隔をあけてずらし、
前記ドットパターン(10)は、第1波長(L1)を有する少なくとも2つの照明点(12)と、前記第1波長(L1)とは異なる第2波長(L2)を有するただ1つの照明点(13)と、を有し、
前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)により、ただ1回の走査の繰り返し(18)で、あらかじめ定められた前記領域(40)を完全に走査し、
前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、前記第2波長(L2)を有する前記照明点(13)により、少なくとも2回の走査の繰り返し(18)で、あらかじめ定められた前記領域(40)を完全に走査する、
方法。
【請求項2】
前記第1方向および/または前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、あらかじめ定められた前記領域(40)を連続的に走査する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、前記第2波長(L2)を有する前記照明点(13)により、前記第1波長(L1)を有する照明点(12)の個数に
一致する走査の繰り返し(18)の回数で、あらかじめ定められた前記領域(40)を完全に走査
する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
一走査ステップ(16)において、前記第2方向に沿い、少なくとも2つの走査ライン(14)だけ前記ドットパターンが移動されるように、前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ドットパターン(10)の前記照明点(12、13)を前記第2方向に沿った一直線上に配置する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)を等間隔に配置する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)間の、前記走査ライン(14)において定められる間隔、および/または一走査ステップ(16)において前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)が移動される走査ライン(14)の個数は、前記第1波長(L1)を有する照明点(12)の個数に依存する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)間の、複数の走査ライン(14)において定められる前記間隔は、前記第1波長(L1)を有する照明点(12)の個数+1に等しい、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)と前記第2波長(L2)を有する前記照明点(13)とは、重ならない照明点である、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
顕微鏡法において試料(102)を走査する装置(110)であって、
前記装置(110)は、ドットパターン(10)を形成するために少なくとも3つの照明点(12、13)を生成する照明ユニット(114)を備えており、
前記装置(110)は、前記照明ユニット(114)を制御する制御ユニット(116)を有し、前記制御ユニット(116)は、前記照明ユニット(114)を制御し、これにより、前記照明ユニット(114)によって、前記ドットパターン(10)の前記照明点(12、13)にそれぞれ対応付けられている走査ライン(14)を生成するために第1方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動させ、前記走査ライン(14)を第2方向に順次ずらして
、各位置において前記第1方向に走査を行うことで前記試料(102)の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域(40)を走査し、前記走査ライン(14)を前記第2方向に順次ずらす際、少なくとも1つの走査ライン(14)の間隔をあけてずらし、
前記照明ユニット(114)によって生成される前記ドットパターン(10)は、第1波長(L1)を有する少なくとも2つの照明点(12)と、前記第1波長(L1)とは異なる第2波長(L2)を有する1つの照明点(13)と、を有し、
前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)により、ただ1回の走査の繰り返し(18)で、あらかじめ定められた前記領域(40)を完全に走査し、
前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する際に、前記第2波長(L2)を有する前記照明点(13)により、少なくとも2回の走査の繰り返し(18)で、あらかじめ定められた前記領域(40)を完全に走査する、
装置(110)。
【請求項11】
前記照明ユニット(114)は、前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)を生成する第1光源ユニット(120)と、前記第2波長を有する前記照明点を生成する第2光源ユニットと、を有し、前記照明ユニット(114)は、前記ドットパターン(10)を生成するユニットを有する、
請求項10記載の装置(110)。
【請求項12】
前記ドットパターン(10)を生成する前記ユニットは、少なくとも1つの第1波長選択ビームスプリッタ(124)を有する、
請求項11記載の装置(110)。
【請求項13】
前記第1光源ユニット(120)により、前記第1波長(L1)を有するビーム(127)が生成され、前記照明ユニット(114)は、ビームマルチプリケーションユニット(128)を有し、前記ビームマルチプリケーションユニット(128)により、前記第1波長(L1)を有する前記ビーム(127)から、前記第1波長(L1)を有する複数の前記照明点(12)が生成される、
請求項11または12記載の装置(110)。
【請求項14】
前記ビームマルチプリケーションユニット(128)に、少なくとも1つの音響光学変向器(AOD:akustooptischer Deflektor)または少なくとも1つのビームスプリッタが含まれている、
請求項13記載の装置(110)。
【請求項15】
前記照明ユニット(114)は、前記第1方向および/または前記第2方向に沿って前記ドットパターン(10)を移動する走査ユニット(130)を有する、
請求項10から14までのいずれか1項記載の装置(110)。
【請求項16】
前記第1波長(L1)を有する前記照明点(12)と前記第2波長(L2)を有する前記照明点(13)とは、重ならない照明点である、
請求項10から14までのいずれか1項記載の装置(110)。
【請求項17】
請求項10から16までのいずれか1項記載の装置(110)を有する顕微鏡。
【請求項18】
前記顕微鏡は、
前記第1波長(L1)
を前記試料(102)に照射した際に検出される第3波長(L1’)を有する、前記試料(102)から放出される検出光(138)を検出する第1検出ユニット(106)と、
前記第2波長(L2)
を前記試料(102)に照射した際に検出される第4波長(L2’)を有する、前記試料(102)から放出される検出光(139)を検出する第2検出ユニット(108)と、
を有する、
請求項17記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡法において試料を走査する方法であって、ドットパターンを形成するために少なくとも3つの照明点を生成する方法に関する。本発明はさらに、顕微鏡法において試料を走査する装置であって、ドットパターンを形成するために少なくとも3つの照明点を生成する照明ユニットを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料を走査する公知の顕微鏡法では、複数の照明点から成るドットパターンが利用される。複数の照明点を使用することにより、試料上または試料内の、照明点に対応付けられる複数の点を走査可能である。走査過程はいわば並列化され、したがって試料を走査する速度が高められる。
【0003】
試料を走査する公知の方法ではさらに、例えば、試料の異なる部分領域がマーキングされた、試料に存在する種々異なる色素を励起して蛍光させるために、異なる波長を有する照明点が利用される。これにより、試料の異なる部分領域の位置および運動を互いに相対的に観察することができる。
【0004】
P. Bingen、M. Reuss、J. Engelhardt、S. W. HellによるParallelized STED fluorescence nanoscopy、Opt Express、2011年、第19巻、第23716~23726頁からは、ウォラストンプリズムを使用して、異なる波長を有する光からそれぞれ形成される複数の照明光点を生成する方法が公知である。
【0005】
J. Bewersdorf、R. Pick、S. W. HellによるMultifocal multiphoton microscopy、Opt Lett、1998年、第23巻、第655~657頁からは、マイクロレンズを配置することによって複数の照明光点が生成される顕微鏡が公知である。照明光点は、試料内に結像され、試料から放射される蛍光がカメラによって検出される。
【0006】
米国特許出願公開第2009/109527号明細書からは、直線に沿って配置されておりかつ試料内に結像される照明点を生成するために、音響光学変向器(AOD:akustooptischer Deflektor)が利用される顕微鏡が公知である。試料から放射される蛍光は、点検出器の装置によって検出され、それぞれの照明点には点検出器が対応付けられている。
【0007】
S. P. Poland、N. Krstajic、J. Monypenny、S. Coelho、D. Tyndall、R. J. Walker、V. Devauges、J. Richardson、N. Dutton、P. Barber、D. D.-U. Li、K. Suhling、T. Ng、R. K. Henderson、S. M. Ameer-BegによるA high speed multifocal multiphoton fluorescence lifetime imaging microscope for live-cell FRET imaging、Biomed Opt Express、2015年からは、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を用いて、2次元格子に配置されておりかつ試料内に結像される複数の照明点を生成する顕微鏡が公知である。試料から放射される蛍光は、点検出器の装置によって検出され、それぞれの照明点には点検出器が対応付けられている。
【0008】
欧州特許出願公開第3217205号明細書からは、照明光ビームを生成する多色光源と、この照明光ビームを複数の照明光サブビームに分割する分割デバイスと、試料上または試料内のそれぞれの光点にこれらの照明光サブビームをガイドして集束する照明ビーム路と、を有する、マルチスポット走査顕微鏡法のための装置が公知である。複数の照明ビーム路のうちの少なくとも2つには、照明ビーム路にそれぞれ対応付けられる照明光サブビームのスペクトル組成を設定する、制御可能なビーム操作手段が含まれている。この装置にはさらに、試料上に光点をガイドする走査ユニットと、検出光を検出する検出ユニットと、走査ユニットおよび検出ユニットを制御する制御ユニットと、が含まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、波長の異なる光を用いて、試料を特に効率的に走査できるようにする方法および装置を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載された方法および請求項11に記載された装置によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項に示されている。
【0011】
本発明による方法では、ドットパターンを形成するために少なくとも3つの照明点を生成する。試料の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域を走査することを目的として、ドットパターンの照明点にそれぞれ対応付けられている走査ラインを生成するために第1方向に沿い、また走査ラインにそれぞれ続いて生成される走査ラインを生成するために第2方向に沿って、照明点によって形成されるドットパターンを移動させる。ドットパターンは、第1波長を有する少なくとも2つの照明点と、第1波長とは異なる第2波長を有するただ1つの照明点と、を有する。
【0012】
本明細書では、実質的に第1方向に延在する、試料の領域を走査ラインと称し、この領域は、第1波長を有する少なくとも2つの照明点および/または第2波長を有する照明点によって走査される。したがって、試料のあらかじめ定められた領域は、第2方向に沿って互いに連続する複数の走査ラインを有する。この領域は、ROI(region of interest)と称されることも多い。
【0013】
本発明による方法により、試料は、第1波長の少なくとも2つの照明点によって走査される。同時に試料は、第2波長を有する照明点によって走査される。種々異なる波長の照明点を使用することにより、特に、試料の種々異なる部分領域がマーキングされている種々異なる2つの蛍光塗料を励起することができる。これにより、例えば、種々異なる部分領域の位置および運動を互いに対して相対的に観察可能である。第1波長を有する2つの照明点を使用することにより、走査過程が並列化され、これにより、試料が第1波長の照明点によって走査される速度が高められる。高められたこの速度により、特に、試料における動的な過程、例えば生物学的過程を観察することができる。
【0014】
したがって本発明による方法により、複数の照明点(いわゆるマルチスポット照明)から成るドットパターンによって試料を走査する方法の利点と、ただ1つの照明点(いわゆるシングルスポット照明)を利用する、試料を走査する方法の利点と、が結び付けられる。さらに、ただ1つのドットパターンだけを動かせばよいため、ドットパターンを移動させるためにただ1つの走査ユニットだけが必要である。したがって本発明による方法は、特に容易に実現することもできる。
【0015】
好適には第1方向は、第2方向に対して垂直に延びている。このようなケースは、容易に実行可能であり、一般的な試料幾何学形状に使用可能である。択一的には、第1方向と第2方向とが、90°とは異なる任意の別の角度を成すことも可能である。
【0016】
第1方向および/または第2方向に沿ってドットパターンを移動する際に、あらかじめ定められた領域を連続的または段階的に走査すると有利である。連続的または段階的に走査することにより、後の検出方法において、画像ラインを生成するためのベースとして使用される複数の走査ラインが第1方向に沿って走査される。
【0017】
特に有利であるのは、第2方向に沿ってドットパターンを移動する際に、第1波長を有する照明点により、ただ1回の走査パスで、あらかじめ定められた領域を完全に走査する場合であり、また第2方向に沿ってドットパターンを移動する際に、第2波長を有する照明点により、少なくとも2回の走査パスで、あらかじめ定められた領域を完全に走査する場合である。このために、連続する2つの走査パスの間で、少なくとも1つの走査ラインだけ、第2方向に沿ってドットパターンがシフトされる。
【0018】
好適には、第2方向に沿ってドットパターンを移動する際に、第2波長を有する照明点により、第1波長を有する照明点の個数に対応する走査パスの回数で、あらかじめ定められた領域を完全に走査し、それぞれの走査パスの後、少なくとも1つの走査ラインだけドットパターンをシフトさせる。これにより、特に、第2波長を用いて、動的な過程が発生するいわば背景を観察することができる一方で、第1波長を用いて、試料における動的な過程の観察を行うことができる。
【0019】
好適には、一走査ステップにおいて、第2方向に沿い、少なくとも2つの走査ラインだけドットパターンが移動されるように、第2方向に沿ってドットパターンを移動する。一走査ステップにおいて、第2方向に沿って少なくとも2つの走査ラインだけドットパターンが移動されると、あらかじめ定められた領域の、最大で2つ目毎の走査ラインが、第2波長を有する照明点によって走査される。
【0020】
したがって本明細書において、走査パスとは、第1波長を有する照明点を用いて、あらかじめ定められた領域を完全に走査することであると理解される。この際、このような仕方により、あらかじめ定められた領域が、第1波長によって完全に走査される(すなわち走査ステップでカバーされる)のであれば、第2方向に沿った個々の走査パスには、ドットパターンの第2方向による移動も、第2方向とは反対の移動も共に含まれていてよい。例えば、ドットパターンをまず第2方向によって移動することも考えられ、この際には、あらかじめ定められた領域の個々の部分領域を飛び越して(すなわち走査しないで)、引き続いて往路移動の際に飛ばした部分領域を走査するために、第2方向とは逆にドットパターンを移動させる。走査パスの別の例は、第2方向によってドットパターンを移動することであり、この際には部分領域を飛び越し、次に第2方向とは逆方向に、出発位置(または別の適切な位置)に飛び越し、最初に飛び越した部分領域を走査する。走査ステップとは、走査ラインを生成するための、第2方向に沿ったドットパターンの移動のことであると理解され、このようにして生成される(走査パスの第1走査ステップの場合に除外された)走査ラインは、別の走査ラインに続く。
【0021】
例えば、第2波長を有する照明点により、あらかじめ定められた領域の2つ目毎の走査ラインだけを走査する間に、第1走査パスにおいて、第1波長を有する照明点により、あらかじめ定められた領域のそれぞれの走査ラインを走査することが可能である。第1走査パスに続く第2走査パスでは、第1走査パスにおいて第2波長を有する照明点によって走査されなかった、あらかじめ定められた領域の走査ラインが走査される。好適にはこのために一走査パスの後、ドットパターンを一走査ラインだけ、第2方向または第2方向の逆に移動させる。後の検出方法においてこれらの走査ラインを画像ラインの生成のベースとして使用する場合、第2波長に対応付けられる画像毎に、第1波長に対応付けられる2つの画像が生成される。したがって、第1波長に対応付けられている画像の高い画像繰り返し率が実現される。第2波長に対応付けられる、画像の画像繰り返し率は、第1波長を有する照明点の個数に対応する倍数だけ小さい。
【0022】
ドットパターンの照明点を第2方向に沿った一直線上に配置すると有利である。これにより、この方法が特に容易になる。というのは、2次元のドットパターンを生成して使用することは、1次元のドットパターンを生成するのに比べて比較的複雑だからである。
【0023】
さらに、第1波長を有する照明点を等間隔に配置すると有利である。第1波長を有する照明点を等間隔に配置することは、ドットパターンの特に容易な形態である。択一的には、第1波長を有する照明点を複数のグループで配置することも可能であり、それぞれ1つのグループに対応付けられる、第1波長を有する照明点は、互いに第1間隔で等間隔に配置されているのに対し、これらのグループは、第1間隔とは異なる第2間隔を互いに有する(実施例についての
図3を参照されたい)。
【0024】
特に有利であるのは、第1波長を有する照明点間の、複数の走査ラインにおいて定められる間隔、および/または一走査ステップにおいて第2方向に沿ってドットパターンが移動される走査ラインの個数が、第1波長を有する照明点の個数に依存する場合である。ここで、2つの照明点間の走査ラインにおいて定められる間隔とは、2つの照明点のうちの1つが、他方の照明点の位置に到達するために、第2方向に沿って移動されなければならない、走査ラインの個数のことであると理解される。したがって直に連続する2つの走査ラインは、一走査ラインの間隔を有する。
【0025】
例えば、第1波長を有する照明点間の、複数の走査ラインにおいて定められる間隔は、第1波長を有する照明点の個数+1に等しい。この特性を有するドットパターンを利用する際には、それぞれの走査ステップにおいて、照明点の個数に対応して、第2方向に沿って走査ラインの個数だけドットパターンが移動される場合、第1波長を有する照明点により、一走査パスにおいて、あらかじめ定められた領域のすべての走査ラインを走査することができる。したがって第2波長を有する照明点によって、あらかじめ定められた領域を走査するためには、第1波長を有する照明点の個数に対応する、走査パスの回数が必要である。
【0026】
さらに、第1波長を有する照明点と第2波長を有する照明点とが、重ならない照明点であると有利である。択一的には、第1波長を有する照明点と第2波長を有する照明点とは互いに重なり合ってよい。
【0027】
本発明はさらに、ドットパターンを形成するために少なくとも3つの照明点を生成する照明ユニットを備えた、顕微鏡法において試料を走査する装置に関する。この装置は、照明ユニットを制御する制御ユニットを有し、制御ユニットは、照明ユニットを制御し、これにより、照明ユニットによって、試料の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域を走査することを目的として、ドットパターンの照明点にそれぞれ対応付けられている走査ラインを生成するために第1方向に沿い、また走査ラインにそれぞれ続いて生成される走査ラインを生成するために第2方向に沿い、照明点によって形成されるドットパターンが移動される。照明ユニットによって生成されるドットパターンは、第1波長を有する少なくとも2つの照明点と、第1波長とは異なる第2波長を有するただ1つの照明点と、を有する。好適には、照明ユニットは、第1方向および/または第2方向に沿ってドットパターンを移動する走査ユニットを有する。
【0028】
本発明による装置は、第1波長の少なくとも2つの照明点により、また第2波長を有する1つの照明点により、試料を並列に走査する。種々異なる波長を有する照明点により、特に、例えば、試料の種々異なる2つの部分領域がマーキングされている異なる2つの蛍光色素の蛍光を励起することができる。第1波長を有する2つの照明点を設けることにより、走査過程が並列化され、これにより、試料が第1波長の照明点によって走査される速度が高められる。高められたこの速度により、特に、試料における動的な過程、例えば生物学的過程を観察することができる。
【0029】
したがって本発明による装置により、複数の照明点から成るドットパターンによって試料を走査する装置の利点と、異なる波長を有する照明点を利用する、試料を走査する装置の利点と、が結び付けられる。
【0030】
好適には、第1波長を有する照明点と第2波長を有する照明点とは重ならない照明点である。択一的には、第1波長を有する照明点と第2波長を有する照明点とは互いに重なり合っていてよい。
【0031】
ドットパターンを生成するユニットが、少なくとも1つの第1波長選択ビームスプリッタを有すると有利である。これは、複雑なドットパターンを生成するためにも特に容易な選択肢である。第1波長選択ビームスプリッタは、例えば、第1波長を有する光に対して透過であってよく、第2波長を有する光を反射することができる。
【0032】
さらに、第1光源ユニットにより、第1波長を有するビームが生成され、照明ユニットが、ビームマルチプリケーションユニットを有し、ビームマルチプリケーションユニットにより、第1波長を有するビームから、第1波長を有する複数の照明点が生成されると有利である。好適にはビームマルチプリケーションユニットに、少なくとも1つの音響光学変向器(AOD:akustooptischer Deflektor)または少なくとも1つのビームスプリッタが含まれている。AODを使用することにより、照明点間の間隔をフレキシブルに設定可能である。ビームスプリッタにより、複雑なドットパターンも生成可能である。
【0033】
本発明はさらに、上述の形式の、試料を走査する装置を有する顕微鏡に関する。本発明による顕微鏡により、特に、試料における動的な過程、例えば生物学的過程を顕微鏡視的に観察することができる。
【0034】
特に有利であるのは、顕微鏡が、第1波長に対応付けられる第3波長を有する、試料から放出される検出光を検出する第1検出ユニット、例えば空間分解能型面検出器と、第2波長に対応付けられる第4波長を有する、試料から放出される検出光を検出する第2検出ユニット、例えば空間分解能型でない点検出器と、を有する場合である。これにより、種々異なる2つの蛍光色素によってマーキングされている試料の、少なくとも2つの種々異なる部分領域を同時に顕微鏡視的に観察することができる。
【0035】
本発明の別の特徴および利点は、実施例に基づきかつ添付の図面に関連して本発明を詳しく説明する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1実施例にしたがい、第1波長を有する2つの照明点と第2波長を有する1つの照明点とによって、試料を走査する方法を示す図である。
【
図2】第2実施例にしたがい、第1波長を有する3つの照明点と第2波長を有する1つの照明点とによって、試料を走査する方法を示す図である。
【
図3】第3実施例にしたがい、第1波長を有する4つの照明点と第2波長を有する1つの照明点とによって、試料を走査する方法を示す図である。
【
図4】第4実施例にしたがい、試料を走査する方法を示す図である。
【
図5】第5実施例にしたがい、試料を走査する方法を示す図である。
【
図6】一実施例にしたがい、試料を走査する装置を備えた顕微鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1~
図5には、種々異なる実施例に基づき、試料を走査する方法が示されている。この方法では、ドットパターンを形成するために、全体的に参照符号12が付されておりかつL1P0、L1P1などで通し番号が振られた、第1波長L1を有する少なくとも2つの照明点と、第2波長L2を有する1つの照明点13と、が生成される。以下では全体的に参照符号10が付されているドットパターンは、試料102の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域40を走査するために移動される。ドットパターン10の移動は、ドットパターン10の照明点12、13に対応付けられかつ以下では全体的に参照符号14が付されている走査ラインを生成するために第1方向に沿って行われ、また走査ライン14にそれぞれ続いて生成される走査ライン14を生成するために第2方向に沿って行われる。
【0038】
ドットパターン10を移動させる際に、少なくとも1つのあらかじめ定められた領域40が、第1方向に沿って連続的に走査され、第2方向に沿って段階的に走査される。第2方向に沿ったあらかじめ定められた領域40の段階的な走査は、全体的に参照符号16が付された走査ステップにおいて行われる。
図1~
図3では、第2方向に沿った、すなわち
図1~
図3において上から下への照明点12、13のそれぞれの位置は、時間的に連続しかつ0ではじまって通し番号が振られている複数の走査ステップ16において示されている。
【0039】
試料は、全体的に参照符号18が付されておりかつ0ではじまって通し番号が振られている、時間的に連続する複数の走査パスにおいて走査される。それぞれの走査パス18において、第1波長L1を有する照明点12により、
図1~
図3においてそれぞれの走査パス18の右側に示されているそれぞれ1つの第1走査領域42が走査される。第2波長L2を有する照明点13により、それぞれの走査パス18において、
図1~
図3において同様にそれぞれの走査パス18の右側に示されているそれぞれ1つの第2走査領域43が走査される。
【0040】
図1には、第1実施例にしたがい、第1波長L1を有する2つの照明点12と、第2波長L2を有する1つの照明点13と、によって、試料を走査する方法が示されている。第1波長L1を有する2つの照明点12は、第2方向に沿って3つの走査ライン14の間隔で配置されている。第2波長L2を有する照明点13は、第2方向において、第1波長L1を有する(L1P0によって番号付けされている)第1照明点12に対して1つの走査ライン14の間隔で配置されており、これにより、ドットパターン10の3つの照明点12、13が、第2方向に沿って一直線上に配置されている。
【0041】
第2方向に沿った、あらかじめ定められた領域40の段階的な走査は、それぞれの走査ステップ16において、第2方向に沿って2つの走査ライン14だけドットパターン10を移動することによって行われる。互いに対応する走査ステップ16における、すなわち同じ通し番号を有する走査ステップ16におけるドットパターン10の位置は、(1が番号付けされている)第2走査パス18において、(0が番号付けされている)第1走査ステップ18に比べて、第2方向に1つの走査ライン14だけシフトされている。
【0042】
2つの走査パス18のそれぞれにおいて、第1波長L1を有する照明点12により、あらかじめ定められた領域40を完全に含む第1走査領域42が走査される。第2波長L2を有する照明点13により、それぞれの走査パス18において、あらかじめ定められた領域40の2つ目毎の走査ライン14が走査される。連続する2つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13により、第3走査領域44が走査され、この第3走査領域44は、あらかじめ定められた領域40を完全に含み、
図1では最も右側に示されている。したがって、あらかじめ定められた領域40は、連続する2つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13によって完全に走査される。
【0043】
有利には、それぞれの走査パス18において、検出によって得た結果を個々に使用可能である。これらの結果から、第1波長L1および第2波長L2に対応付けられる画像を生成可能である。第1波長L1に対応付けられる画像の表示は、走査パス18の後毎に行うことができる。第2波長L2に対応付けられる画像の表示は、2つ目の走査パス18の後毎に行うことができる。したがって第1波長L1に対応付けられる画像の表示は、第2波長L2に対応付けられる画像の表示の2倍の画像繰り返し率で行うことができる。
【0044】
図2には、第2実施例にしたがい、試料を走査する方法が示されている。わかり易くするために
図2は、一点鎖線において互いに隣接する3つの部分
図2A~部分
図2Cに分けられている。
図2に示された第2実施例は、試料102が、第1波長L1を有する3つの照明点12と、第2波長L2を有する1つの照明点13と、によって走査されることにより、
図1に示された第1実施例と実質的に異なっている。ドットパターン10の全部で4つの照明点12、13は、第2方向に沿って一直線上に配置されている。第1波長L1を有する3つの照明点12は、第2方向に沿って4つの走査ライン14の間隔で配置されている。第2波長L2を有する照明点13は、第2方向において、第1波長L1を有する(L1P0によって番号付けされている)第1照明点12に続いて1つの走査ライン14の間隔で配置されている。
【0045】
第2方向に沿った、あらかじめ定められた領域40の段階的な走査は、図示された第2実施例において、それぞれの走査ステップ16において、第2方向に沿って3つの走査ライン14だけドットパターン10を移動することによって行われる。互いに対応する走査ステップ16における、すなわち同じ通し番号を有する走査ステップ16におけるドットパターン10の位置は、直に連続する走査パス18において、第2方向の方向にそれぞれ1つの走査ライン14だけシフトされている。
【0046】
図2に示された第2実施例では、第2波長L2を有する照明点13により、それぞれの走査パス18において、あらかじめ定められた領域40の3つ目毎の走査ライン14が走査される。したがって連続する3つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13により、第3走査領域44が走査され、この第3走査領域44は、あらかじめ定められた領域40を完全に含み、
図2Cでは最も右側に示されている。したがってあらかじめ定められた領域40は、
図2に示された第2実施例では、連続する3つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13によって完全に走査される。
【0047】
したがって第2波長L2に対応付けられる画像の表示は、図示された第2実施例において、3つ目の走査パス18の後毎に行うことができる。したがって第1波長L1に対応付けられる画像の表示は、第2波長L2に対応付けられる画像の表示の3倍の画像繰り返し率で行うことができる。
【0048】
図3には、第3実施例にしたがい、試料を走査する方法が示されている。わかり易くするために
図3は、一点鎖線において互いに隣接する4つの部分
図3A~部分
図3Dに分けられている。
図3に示された第3実施例は、試料102が、第1波長L1を有する4つの照明点12と、第2波長L2を有する1つの照明点13と、によって走査されることにより、
図1に示された第1実施例と実質的に異なっている。ドットパターン10の全部で5つの照明点12、13は、第2方向に沿って一直線上に配置されている。第1波長L1を有する4つの照明点12は、第1波長L1を有するそれぞれ2つの照明点12を有する2つのグループ20に分けられている。2つのグループ20のそれぞれの第1波長L1を有する2つの照明点12は、第2方向に沿って2つの走査ライン14の間隔で配置されている。2つのグループ20は互いに、3つの走査ライン14の間隔を有する。第2波長L2を有する照明点13は、第2方向において、第1波長L1を有する(L1P0によって番号付けされている)第1照明点12に対して1つの走査ライン14の間隔で配置されている。
【0049】
第2波長L2を有する照明点13により、それぞれの走査パス18において、あらかじめ定められた領域40の4つ目毎の走査ライン14が走査される。したがって連続する4つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13により、第3走査領域44が走査され、この第3走査領域44は、あらかじめ定められた領域40を完全に含み、
図3Dでは最も右側に示されている。したがってあらかじめ定められた領域40は、
図3に示された第3実施例では、連続する4つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13によって完全に走査される。
【0050】
図示された第3実施例において、第2波長L2に対応付けられる画像の表示は、4つ目の走査パス18の後毎に行うことができる。したがって第1波長L1に対応付けられる画像の表示は、第2波長L2に対応付けられる画像の表示の4倍の画像繰り返し率で行うことができる。
【0051】
図4には、第4実施例にしたがい、試料を走査する方法が示されている。わかり易くするために
図4は、一点鎖線において互いに隣接する4つの部分
図4A~部分
図4Dに分けられている。
図4に示された第4実施例は、4つの照明点12が、第2方向に沿ってそれぞれ5つの走査ライン14の間隔で等間隔に配置されていることにより、
図3に示された第3実施例と実質的に異なっている。
【0052】
したがってあらかじめ定められた領域40は、
図4に示された第4実施例では、
図3に示された第3実施例と同じように、連続する4つの走査パス18において、第2波長L2を有する照明点13によって完全に走査される。
【0053】
図5には、第5実施例にしたがい、試料を走査する方法が示されている。
図5に示された第5実施例は、L1P0と記された第1波長L1を有する第1照明点とL1P1と記された第1波長L1を有する第2照明点とが、第2方向に沿って一直線上にないことにより、
図1に示された第1実施例と実質的に異なっている。さらに、第1波長L1を有する第1照明点と第2波長L2を有するL2と記された照明点とは、部分的に重なり合っている。
【0054】
図6には、一実施例にしたがい、試料102を走査する装置110を備えた顕微鏡100の概略図が示されている。顕微鏡100にはさらに、対物レンズ光学系104と、第1検出ユニット106と、第2検出ユニット108と、観察ビーム路112と、が含まれている。
図6に示された顕微鏡100は、特に、
図1~
図5に示された複数の実施例のうちの1つによる、本発明の方法を実施するのに適している。
【0055】
試料102を走査する装置110には、ドットパターン10を生成する照明ユニット114と、照明ユニット114を制御する制御ユニット116と、全体的に参照符号118によって示される、例えばレンズ、絞り、フィルタまたはプリズムのような別の光学素子と、が含まれている。
【0056】
照明ユニット114は、第1波長L1を有する照明点12を生成する第1光源ユニット120と、第2波長L2を有する照明点13を生成する第2光源ユニット122と、を有する。照明ユニット114はさらに、ドットパターン10を生成する第1波長選択ビームスプリッタ124を有する。第1光源ユニット120は、第1波長L1を有するビーム127を生成する第1光源126と、第1波長L1を有するビーム127から、第1波長L1を有する複数の照明点12を生成するビームマルチプリケーションユニット128、例えばビームスプリッタまたは音響光学変向器(AOD:akustooptischer Deflektor)と、を有する。照明ユニット114はさらに、第1方向および第2方向に沿ってドットパターン10を移動する(例えば1つまたは複数の走査ミラーを含む)走査ユニット130を有する。図示された実施例において、走査ユニット130は、観察ビーム路112の外部に配置されている。択一的には走査ユニット130は、観察ビーム路112内に配置することができ、これにより、試料102から放出される検出光138、139が戻る際の走査移動もしくはスキャン移動が廃止される。これは一般に「内部」("descanned")配置とも称される。
【0057】
制御ユニット116は、走査ユニット130により、試料102の少なくとも1つのあらかじめ定められた領域40を走査するドットパターン10が、ドットパターン10の照明点12、13にそれぞれ対応付けられている走査ライン14を生成するために第1方向に沿い、また走査ライン14にそれぞれ続いて生成される走査ライン14を生成するために第2方向に沿って移動される、ように照明ユニット114の走査ユニット130を制御する。
【0058】
観察ビーム路112は、試料102と第1検出ユニット106との間にある。観察ビーム路112には、対物レンズ光学系104と、第2波長選択ビームスプリッタ132と、第3波長選択ビームスプリッタ134と、全体的に参照符号136で示される、例えばレンズ、絞り、フィルタまたはプリズムのような別の光学素子と、が配置されている。
【0059】
第2波長選択ビームスプリッタ132は、第1波長L1を有する光および第2波長L2を有する光を反射し、第1波長L1に対応付けられる第3波長L1’を有する光に対して透過である。第2波長選択ビームスプリッタ132により、照明ユニット114によって生成されたドットパターン10が、照明ビーム路としても使用される観察ビーム路112に入力結合され、対物レンズ光学系104の方向に反射される。
【0060】
対物レンズ光学系104は、試料102上に、または試料102内にドットパターン10を結像する。そこではドットパターン10により、第3波長L1’を有する検出光138および第4波長L2’を有する検出光139を放射させるために色素が励起される。試料102から放出される、第3波長L1’を有する検出光138と、試料102から放出される、第4波長L2’を有する検出光139と、は、対物レンズ光学系104によって観察ビーム路112に導かれる。
【0061】
第3波長選択ビームスプリッタ134は、第4波長L2’を有する光を反射し、第1波長L1を有する光と第2波長L2を有する光と第3波長L1’を有する光とに対しては透過である。第3波長選択ビームスプリッタ134により、試料102から放出される、第4波長L2’を有する検出光139は、観察ビーム路112から出力結合されて、第2検出ユニット108に導かれる。
【0062】
第1検出ユニット106は、第3波長L1’を有する光に対してのみ透過である第1放射フィルタ140と、例えばCCDチップとして構成されている第1センサ素子142と、を有する。第1センサ素子142により、試料102から放出される、第3波長L1’を有する検出光138が検出される。第1センサ素子142によって検出される、第3波長L1’を有する検出光138は、特に、第1波長L1に対応付けられる画像を生成するためのベースとして使用可能である。択一的には第1センサ素子142が、複数の点検出器を有することも可能であり、この際には、第1波長L1を有するそれぞれの照明点12に、固有の点検出器が対応付けられる。
【0063】
第2検出ユニット108は、第4波長L2’を有する光に対してのみ透過である第2放射フィルタ144と、例示的には1チャネル検出器として構成されている第2センサ素子146と、全体的に参照符号148で示される、例えばレンズ、絞り、フィルタまたはプリズムのような別の光学素子と、を有する。第2センサ素子146により、試料102から放出される、第4波長L2’を有する検出光139が検出される。第2センサ素子146によって検出される、第4波長L2’を有する検出光139は、特に、第2波長L2に対応付けられる画像を生成するためのベースとして使用可能である。
【0064】
顕微鏡100の択一的な一実施形態では、第3波長L1’を有する検出光138も、第4波長L2’を有する検出光139も共に第1センサ素子142によって検出される。したがって択一的なこの実施形態による顕微鏡100は、第2検出ユニット108を必要とせず、波長選択ビームスプリッタ134を必要としない。択一的なこの実施形態において、第2波長選択ビームスプリッタ132は、第2波長L2に対応付けられる第4波長L2’を有する光に対しても透過である。択一的なこの実施形態による顕微鏡100は、第1放射フィルタ140の代わりに、第3波長L1’および第4波長L2’にしたがって、第1検出ユニット106に入射する光を分離する画像分離装置("image splitting device")を有する。
【符号の説明】
【0065】
10 ドットパターン
12、13 照明点
14 走査ライン
16 走査ステップ
18 走査パス
20 グループ
100 顕微鏡
102 試料
104 対物レンズ光学系
106、108 検出ユニット
110 装置
112 観察ビーム路
114 照明ユニット
116 制御ユニット
118、136、148 光学素子
120、122 光源ユニット
124、132、134 波長選択ビームスプリッタ
126 光源
127 ビーム
128 ビームマルチプリケーションユニット
130 走査ユニット
138、139 検出光
140、144 放射フィルタ
142、146 センサ素子