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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230425BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20230425BHJP
   H01P 5/12 20060101ALI20230425BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H04B1/38
H01P5/12 A
H01P3/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021529717
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2019076000
(87)【国際公開番号】W WO2021004646
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】102019118532.7
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508237443
【氏名又は名称】コンダクティクス-バンプフラー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウインター,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】エクレ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ベルント
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-215202(JP,A)
【文献】特開平11-284542(JP,A)
【文献】特開平08-046545(JP,A)
【文献】国際公開第2018/095803(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107104697(CN,A)
【文献】特開2005-051623(JP,A)
【文献】国際公開第2014/180536(WO,A1)
【文献】W. D. Schuck and R. Rieger,The Slotted-Waveguide Communication System of the Maglev Test Range in the Emsland,1983 13th European Microwave Conference,IEEE,1983年,pp. 681-686,URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/4131970,DOI: 10.1109/EUMA.1983.333317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
H01P 3/00-5/22
H04B 1/38-1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動経路に沿って誘導される車両(4、104)と固定局(5、105、205)との間の通信のための通信システムであって、
前記車両(4、104)の前記移動経路に平行に延在し、前記固定局(5、105、205)の送受信デバイス(10、11、110、111、210、211)に接続された少なくとも1つのアンテナ(6、106A、106B、206)、および、前記車両(4、104)の少なくとも1つのアンテナ(3、103A、103B)が突出する、スロット付き導波路(1、101)を使用し、
前記車両(4、104)の前記アンテナ(3、103A、103B)は、前記車両(4、104)の移動中に前記スロット付き導波路(1、101)長手方向に移動され、
少なくとも1つの伝送チャネル用の少なくとも2つの別個の送受信デバイス(10、11、17、18、110、111、117、118、210、211)が、前記固定局(5、105、205)および前記車両(4、104)に設けられ、
前記送受信デバイス(10、11、17、18、110、111、117、118、210、211)は、それぞれ少なくとも1つの結合器(7、14、107、120、114A、114B、207)を介して、少なくとも1つの共通アンテナ(3、6、103A、103B、106A、106B、206)にそれぞれ接続され、アンテナを介して、すべての伝送チャネル信号が送受信され
前記結合器(7、14、107、120、114A、114B、207、307A、307B)は、第1および第2の接続部を、第3の接続部に結合する双方向性3ポート結合器であり、
前記固定局は、
2つの別個の送受信デバイス(110、111)を有し、
双方向性3ポート結合器の形態の2つの結合器(107,120)が、前記2つのアンテナ(106A、106B)との間に直列に接続され、
第1の前記結合器(107)の前記第1および第2の接続部が、前記送受信デバイス(110、111)の一方に接続され、第2の前記結合器(120)の前記第1および第2の接続部が前記アンテナ(106A、106B)の一方に接続され、両方の結合器(107、120)の前記第3の接続部が、互いに接続される、
ことを特徴とする、
通信システム。
【請求項2】
前記結合器(7、14、107、114A、114B、207)は、前記第1のおよび第2の接続部を、互いに分離することを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項3】
前記結合器(7、14、107、114A、114B、207)は、ウィルキンソン型結合器であることを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項4】
前記スロット付き導波路(101)は、それらの端部が互いに隣接して配置されている位置から反対方向に延在する互いに別個の2つの区間(101A、101B)から構成され、スロット付き導波路(101)の各区間(101A、101B)は、対応する前記区間(101A、101B)内に突出する前記固定局(105)のそれ自体のアンテナ(106A、106B、306A、306B)を有することを特徴とする、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記固定局(105)の前記アンテナ(106A、106B)は、それらの端部が互いに隣接する前記位置に近い前記2つの区間(101A、101B)に配置されることを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項6】
第1の前記結合器(107)は、その第1および第2の接続部を、その第3の接続部と結合し、その第1および第2の接続部を互いに分離し、第2の前記結合器(120)が、その第1および第2および第3の接続部の3つすべてを、互いに結合することを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項7】
第2の前記結合器(120)は、タップまたは無効電力分配器であることを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項8】
2つのアンテナ(103A、103B)は、前記車両(104)上に所定の間隔進行方向に前後に配置され、
前記車両(104)は、少なくとも2つの異なる伝送チャネル用の2つの送受信デバイス(117、118)を有し、
双方向性3ポート結合器の形態の2つの結合器(114A、114B)は、前記2つのアンテナ(103A、103B)と前記2つの送受信デバイス(117,118)との間に並列に接続され、第1および第2の接続部を第3の接続部と結合し、前記第1および第2の接続部を互いに分離し、
各結合器(114A、114B)の前記第1の接続部が、第1の前記送受信デバイス(117)に接続され、各結合器(114A、114B)の前記第2の接続部が、第2の前記送受信デバイス(118)に接続され、各結合器(114A、114B)の前記第3の接続部が、前記アンテナ(103A、103B)の一つに接続されることを特徴とする、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記スロット付き導波路(101)は、ギャップ(119)によって互いに分離された2つの区間(101A、101B)から構成され、
前記アンテナ(103A、103B)の少なくとも一方が、前記スロット付き導波路(101)の前記2つの区間(101A,101B)のうちの一方において、送受信する準備が常にできる位置にある限り、車両(104)上の前記アンテナ(103A、103B)の前記間隔が、少なくとも前記ギャップ(119)の幅よりも大きいことを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項10】
減衰素子(8、9、15、16、108、109、115A、115B、116A、116B、208、209)は、前記固定局(5、105、205)の送受信デバイス(10、11、110、111、210、211)と、それに割り当てられた結合器(7、107、207)との間に、および/または、車両(4、104)の送受信デバイス(17、18、117、118)と、それに割り当てられた結合器(14、114A、114B)との間に、接続されることを特徴とする、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項11】
異なる周波数帯域は、前記異なる伝送チャネルに割り当てられることを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【請求項12】
前記異なる伝送チャネルは、各々、マルチ・チャネル送受信デバイス(210、211)と共にバンドルされた少なくとも2つの伝送チャネルから構成されることを特徴とする、
請求項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような通信システムは、例えば、特許文献1が知られている。
それは、所定の移動経路に沿って誘導される車両と固定局との間の高帯域幅および雑音耐性を有する通信を可能にする。アンテナは、スロットを通って導波路の空洞内に突出し、車両が移動している間に導波路に沿って伝搬する電磁波を送受信できるように、車両に配置される。固定局の対応するアンテナは、導波路の一端に配置される。
【0003】
この種類の通信システムでは、特に、1台または複数の車両の移動を、固定局から制御することが意図されており、この制御は安全性の観点で重要な場合があるため、高データ転送速度が求められている。例えば、障害物との衝突を回避し得るように、障害物の前で停止する制御命令が、所定の時間間隔内に確実に車両に到達することを保証しなければならない。高いデータ転送速度は、対応した広い帯域幅を有するシステム構成要素を使用することで達成できるが、そのような構成要素が市場で入手可能としても、それに対応するコストになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10 2013 002 227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、一般的な通信システムのための高データ転送速度を達成する、好都合で費用効果の高い手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する通信システムによって解決される。有利な実施形態は、対応する従属請求項に示される。
【0007】
所定の移動経路に沿って誘導される車両と固定局との間の通信のための本発明による通信システムでは、車両の移動経路に平行に延在し、車両の送受信デバイスに接続された少なくとも1つのアンテナ、および、固定局の送受信デバイスに接続された少なくとも1つのアンテナ、が突出するスロット付き導波路を使用し、車両のアンテナが、車両の移動中にスロットの長手方向に移動され、少なくとも1つの伝送チャネルのための少なくとも2つの別個の送受信デバイスが、固定局および車両に設けられ、送受信デバイスは、少なくとも1つの結合器を介して、少なくとも1つの共通アンテナに、各々接続され、それを介して、すべての伝送チャネルの信号が放射され受信される。
【0008】
したがって、スロット付き導波路が共通の伝送媒体として使用される少なくとも2つの異なる伝送チャネルを提供することで、データ転送速度の増加が達成される。少なくとも1つの追加の伝送チャネルは、追加の送受信デバイスを使用して提供される。ただ1つのアンテナで送受信できるようにするために、異なるチャネルの信号は、アンテナへの途中で少なくとも1つの結合器によって合成され、反対の送信方向で上記結合器によって送受信デバイスに同時に供給される。
【0009】
しかしながら、これは、対応したより高いデータ転送速度を可能にするだけでなく、より高い帯域幅の単一チャネル送受信デバイスの使用と比較して、異なるカテゴリのメッセージの交換も簡素化する。例えば、メッセージは、それらのコンテンツおよび/または優先度に従って異なるチャネルに容易に割り当てられ、異なる送受信デバイスで送信され得、その結果、送信機側でのメッセージ伝播および受信機側でのメッセージ処理の両方が、単純化される。異なるシステム構成要素が、固定局側および車両側の異なる送受信デバイスを介して、同時に互いに独立して通信し得るという追加の機能がある。
【0010】
複数の送受信デバイスの使用はまた、ハードウェアの部分的な冗長性をもたらし、これにより、受動システム構成要素よりも能動システム構成要素なので、より高い故障確率を有する送受信デバイスのうちの1つが故障中であっても、通信を維持することが可能になる。ハードウェアのこの部分的な冗長性は、冗長データ送信にも利用され得、すなわち、データ送信の信頼性を高めるために、同じメッセージが、異なるチャネルで異なる送受信デバイスと同時に送信され得る。この場合、信頼性を優先するので、データ転送速度の増加は行われない。
【0011】
結合器は、好ましくは、第1および第2の接続部を第3の接続部と結合する3ポート結合器である。信号経路が、第1の接続部および第2の接続部から、互いに独立して送受信するように意図された異なる送受信デバイスに通じる場合、結合器が第1の接続部および第2の接続部を互いに分離することが好都合である。一方の送受信デバイスは送信モードにあり、他方は受信モードであり得る。結合器のこれらの接続部間の減衰が低すぎる場合、これは受信モードにおける干渉をもたらす。そのような結合器の適切な実施形態は、ウィルキンソン型結合器である。これは、結合される接続部間の低損失および分離される接続部間の高減衰を特徴とし、単純な手段で実施され得る。
【0012】
十分な通信範囲を達成するために、長い伝送距離の場合、スロット付き導波路は、それらの端部が互いに隣接して配置された位置から反対方向に延びる互いに別個の2つの区間で構成され、スロット付き導波路の各区間は、対応する区間内に突出する固定局のそれ自体のアンテナを有することが有利である。これにより、伝送路の最大全長が、大幅に長くなり得る。
【0013】
固定局のアンテナは、好ましくは、伝送路の中心に好都合に位置する別個の区間の隣接する端部に配置される。この配置により、その最大全長が、個々の区間の最大長さの2倍に増加され得る。後者は、スロット付き導波路における伝搬中の信号減衰によって制限される。
【0014】
スロット付き導波路が2つの別個の区間から構成され、2つのアンテナが固定局で使用される場合、第1の結合器の第1の接続部および第2の接続部が送受信デバイスの一方に接続され、第2の結合器の第1の接続部および第2の接続部がアンテナの一方に接続され、両方の結合器の第3の接続部が互いに接続されるように、2つの結合器を双方向性3ポート結合器の形態で直列に接続することが、有利な構成となる。2つのアンテナを用いた動作への拡張を達成するために、第2のアンテナとは別に、ただ1つのアンテナを有する配置に対して、ただ1つのアンテナを有する変形例に存在するのと同じ種類の追加の結合器のみが、追加のシステム構成要素として必要とされる。
【0015】
そのような構成では、第1の結合器は、その第1の接続部および第2の接続部がその第3の接続部と結合し、その第1の接続部および第2の接続部が分離され、第2の結合器は、その接続部の3つすべてが互いに結合すると有利である。第1の結合器は、同時動作中に相互に干渉するように意図されていない2つの異なる送受信デバイスに接続されている。一方、第2の結合器は、スロット付き導波路の異なる区間内の2つのアンテナに接続され、ロット付き導波路の異なる区間が、メッセージ送信のために互いに分離するように意図されておらず、連続した伝送媒体を形成すべきである。したがって、第2の結合器の3つの接続部のうちの2つの間の分離は望ましくない。第2の結合器の適切な実施形態は、タップまたは無効電力分配器である。両方とも、本明細書の用途に望まれるように、それらの接続部の3つすべてを互いに結合する双方向性3ポート結合器であり、異なる接続部対の間の挿入損失は同じでなく、その必要はない。
【0016】
スロット付き導波路が2つの別個の区間から構成される場合、2つのアンテナが車両上に所定の距離で進行方向に前後に配置され、車両が少なくとも2つの異なる伝送チャネル用の2つの送信デバイスまたは受信デバイスを有し、第1および第2の接続部を第3の接続部と結合し、第1および第2の接続部を互いに分離する双方向性3ポート結合器の形態で、2つの結合器が、2つの送受信デバイスの2つのアンテナ間に並列に接続され、その結果、各結合器の第1の接続部が第1の送受信デバイスに接続され、各結合器の第2の接続部が第2の送信デバイスまたは受信デバイスに接続され、各結合器の第3の接続部がアンテナのうちの1つに接続されることが、有利である。車両の各送受信デバイスは、車両の各アンテナを介して、互いに独立して送受信し得る。
【0017】
スロット付き導波路がギャップによって互いに分離された2つの区間から構成される場合、車両上のアンテナの間隔は、好ましくは、スロット付き導波路の2つの区間のうちの1つのアンテナの少なくとも1つが送受信の準備ができている位置にあるように、ギャップの幅よりも少なくとも同じかそれよりも大きい。その結果、スロット付き導波路の2つの区間の間のギャップを通過する際に、通信の中断が回避され得る。
【0018】
減衰素子は、アンテナによる放射電力を送信機の規定された電力で所望の値に低減するために、または受信機に供給される前にアンテナによって受信される電力を所望の値に低減するために、固定局および/または車両の送受信デバイスと結合器の対応する接続部との間に、任意選択的に接続できる。実際に互いに分離するように意図されている結合器の接続部間で、望ましくない方法で流れる残留電力も、そのような減衰素子によって低減され得る。
【0019】
異なる伝送チャネルを分離するための好ましい解決策は、異なる周波数帯域へのそれらの割り当てである。異なる伝送チャネルはまた、共にバンドルされた(束ねられた、まとめられた)マルチ・チャネル送受信デバイスの少なくとも2つの伝送チャネルから構成され得る。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】アンテナが突出しているスロット付き導波路の概略断面図である。
図2】本発明による通信システムの第1の実施形態の追加構成要素のブロック図を有する、図1によるスロット付き導波路の概略縦断面図である。
図3】本発明による通信システムの第2の実施形態の追加構成要素のブロック図を有する、図1によるスロット付き導波路の概略縦断面図である。
図4】固定局に配置された本発明による通信システムの第3の実施形態の構成要素のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、所定の移動経路に沿って誘導される車両4と固定局5との間、および/または、いくつかのそのような車両間、で互いに通信するための通信システムにおいて従来技術で使用されるスロット付き導波路1の概略断面図を示す。車両のアンテナ3は、スロット付き導波路1に沿って伝播する電磁波を放射および受信するために、スロット2を通ってスロット付き導波路1内に突出する。車両が所定の移動経路に沿って移動する場合、アンテナ3は、それと共にスロット付き導波路1の長手方向に移動する。車両4は、レールを介して所定の走行経路に沿って誘導され得る。
【0023】
図2に示すように、固定局5のアンテナ6もスロット付き導波路1内に突出している。これは、結合器7、および任意選択の減衰素子8および9を介して、2つの送受信デバイス10および11(以下、トランシーバ10および11と称する)に接続される。固定局5のアンテナ6も、車両4のアンテナ3のようにスロット2を通ってスロット付き導波路1内に突出し得るが、移動不要なため、その必要はない。トランシーバ10および11は、いくつかの車両4を含み得る輸送システム全体を制御する、および/または、ビデオ信号および状況通知によってその動作を監視する、固定局5の制御デバイス12に接続される。制御デバイス8は、制御機能を発揮し得るが、その必要はなく、動作の監視目的を提供するだけであり得る。このため、固定局5の制御デバイス8と車両4の制御デバイス13との間では、伝送路であるスロット付き導波路1を介して、継続的な双方向データ通信が発生する。
【0024】
図2にも示すように、車両4のアンテナ3はまた、結合器14および任意選択の減衰素子15および16を介して、2つの送受信デバイス17および18(以下、トランシーバ17および18と称する)に接続される。トランシーバ17および18は、車両4の移動および他の機能を制御する車両4の制御デバイス13に接続されている。したがって、車両に搭載され配置された本発明による通信システムの部品の構成要素、およびそれらの回路の接続形態は、固定局5に配置された部品に対応する。
【0025】
しかしながら、対応するメッセージ発生端またはメッセージ受信端として固定局5上または車両4上に単一の制御デバイス12または13のみを設ける必要は全くないが、固定局5のトランシーバ10および11ならびに車両4のトランシーバ17および18の両方は、それぞれ、互いに別個の2つのメッセージ発生端またはメッセージ受信端に接続され得、これらは同時に、しかし互いに独立して通信できるように意図されている。単一のスロット付き導波路を介した少なくとも2対のメッセージ発生端とメッセージ受信端との間のそのような同時かつ独立した通信は、本発明によって容易に許可される。特に、この構成では、メッセージ、例えば、固定局5のトランシーバ10から車両4のトランシーバ17への一方のメッセージ、および、車両4のトランシーバ18から固定局5のトランシーバ11への他方のメッセージが、反対方向に同時に送信され得る。
【0026】
固定局5のトランシーバ10および11は、異なるチャネル、すなわちスロット付き導波路1が伝送路として適している周波数帯域の周波数領域、で動作する。同じことが、車両のトランシーバ17および18、トランシーバ10および17、ならびにトランシーバ11および18の各々が、同じチャネル上で動作することにも当てはまる。固定局5と搭載車両4の両方で異なるチャネルで動作する2つのトランシーバを同時に使用することにより、単一のトランシーバのみを使用する場合と比較して、2倍の最大送信可能データ転送速度が得られる。
【0027】
固定局5および搭載車両4の両方で、信号を放射および受信するために、単一のアンテナ6または3のみが必要となるように、1つの結合器7または14が、各々設けられる。固定局の結合器7は、3つの接続部を有する。その一方には、固定局5のアンテナ6が接続されている。トランシーバ10および11の一方は、2つの他の接続部の各々に接続され、その場合、1つの減衰素子8または9は、任意選択的に、結合器7とトランシーバ10および11との間に接続され得る。結合器7は、方向選択的であり、すなわち、トランシーバ10および11が接続される接続部の各々を、アンテナ6が接続される接続部と対称的に結合し、トランシーバ10および11が接続される2つの接続部を分離する。したがって、それは、受信信号のための分割器として機能し、すなわち、アンテナから受信された信号電力を2つのトランシーバ10および11にほぼ等しく分配し、トランシーバ10および11の送信信号のための合成器として機能し、すなわち、それらを一緒に単一のアンテナ6に供給する。アンテナ3およびトランシーバ17,18に対する車両4の結合器14の機能についても同様である。
【0028】
結合器7または14の適切な設計は、ウィルキンソン型分配器の設計である。ウィルキンソン型分配器は、アンテナ接続部と2つの他の接続部の各々との間で伝送される周波数帯域の中心周波数の4分の1波長をそれぞれ有する2つの線と、2つの他の接続部の間の吸収抵抗器とから、本質的に構成される。結合器7または14のこの設計は、プリント回路基板またはハイブリッド技術を使用して、コスト効率よく、実施され得る。
【0029】
ここでは、固定局5の制御デバイス12がトランシーバ10,11の両方に接続され、車両4の制御デバイス13が、トランシーバ17,18の両方に接続されている。したがって、制御デバイス12および13は、それらの通信に利用可能な2つのチャネルを有し、全体としてはるかに大きい帯域幅を有する。これにより、対応したより高いデータ転送速度が可能になるだけでなく、それにより、より広い帯域幅の単一のトランシーバの使用に比べて、異なるカテゴリのメッセージの交換も、簡略化される。例えば、メッセージは、2つの異なるチャネルへ、コンテンツおよび/または優先度にしたがって、配信され得るので、メッセージの処理が単純化される。必要に応じて、異なるチャネル上の異なるカテゴリのデータのこの種類の分布によって、チャネル帯域幅は異なり得る。例えば、ビデオ信号は40MHzの帯域幅を有するチャネルで送信され、制御データは20MHzの帯域幅を有するチャネルで送信され得る。
【0030】
さらに、2つのトランシーバ10および11または17および18、ならびに、任意選択的に2つの接続された減衰素子8および9または15および16によって、ハードウェアの部分的冗長性が作成される。トランシーバおよび/または減衰素子が故障した場合、すべての通信は、通信システムのまだ機能している部分を介して行われ得るので、通信システムの全体的な故障が回避され、その信頼性が向上する。これは、アンテナ3および6、結合器7および14、ならびに減衰素子8、9、15および16のような受動部品よりも故障の確率が高いため、能動部品としてのトランシーバ10および11または17および18にとって、特に重要である。しかしながら、送信の信頼性を高めるために、両方のトランシーバ10および11または17および18を介して、単一のメッセージが同時に送信され得る。
【0031】
すでに述べたように、ただ1つの制御デバイス12または13の代わりに、トランシーバ10および11または17および18のうちの一方に接続され、トランシーバ10および11または17および18によって送信または受信されるメッセージの発生端または受信端として機能する、2つの独立したユニットが、固定局5および搭載車両4の両方に存在し得る。
【0032】
図3は、本発明による通信システムの第2の実施形態を示す。この実施形態は、より長い輸送システムのために提供され、そこでは、固定局105は、十分な通信範囲を達成するために、一端ではなく、輸送経路の中心方向に、またはその中心で直接、オフセットして配置され、スロット付き導波路101A、101Bは、長さの熱変化のための膨張ギャップとして機能するギャップ(隙間、空間)119によって互いに分離された、少なくとも2つの異なる区間101Aおよび101Bから構成される。2つの別個のアンテナ106Aおよび106Bが設けられ、その各々は、スロット付き導波路101A、101Bの異なる区間101Aまたは101Bの一方に割り当てられ、固定局105の共通の制御デバイス112に接続される。結合器107および120は、この目的のために2つ設けられ、結合器107の設計は、第1の実施形態の結合器7の設計と同じである。第1の結合器107の最初の二つの接続部は、第一の実施形態の結合器7のトランシーバ10および11への対応する接続部と同様に、任意選択の減衰素子108および109を介して、トランシーバ110および111に接続される。
【0033】
第2の結合器120は、その接続部のうちの二つの分離に関して同じ要件が存在しないため、結合器107のように、異なる設計であり得る。対照的に、第2の結合器120は、両方のアンテナ106Aおよび106Bを第1の結合器107と結合するだけでなく、スロット付き導波路101の2つの区間101Aまたは101Bのうちの一方の車両104から送信された信号を、他方の区間101Bまたは101Aに位置する別の車両104に受信可能にし、それによって異なる車両104の送信信号間の衝突を回避するために、その接続の3つすべての接続部間で可能な限り最小の減衰を有することが望ましい場合さえある。この目的に適した種類の結合器は、タップである。
【0034】
しかしながら、単一のアンテナは、結合器107の第3の接続部に接続されておらず、第2の結合器120の第3の接続部に接続されている。アンテナ106Aおよび106Bは、第2の結合器120の最初の二つの接続部に接続されている。これらは、第2の結合器120によって互いに分離され、各々が第3の接続部と結合される。この回路を通じて、アンテナ106Aおよび106Bの両方からの受信信号は、最初に第2の結合器120によって合成され、次いで、合成信号は、その電力の均一な分割によって第1の結合器107で、2つのトランシーバ110および111に供給される。2つのトランシーバ110および111によって反対方向に放射された送信信号は、最初に第1の結合器107によって合成され、次いで合成信号は、その電力の均一な分配で放射するために、第2の結合器120によって2つのアンテナ106Aおよび106Bに供給される。
【0035】
このようにして、トランシーバ110および111の両方の送信信号は、スロット付き導波路101A、101Bの両方の区間101Aおよび101Bで均一に放射され、アンテナ106Aおよび106Bによってスロット付き導波路101A、101Bの両方の区間101Aおよび101Bからの受信信号は、両トランシーバ110および111の両方に供給される。スロット付き導波路101A、101Bの区間101Aと区間101Bとの間のギャップ119は、好ましくは輸送システムの走行経路の中心に位置し、通信の最大範囲が、単一のスロット付き導波路の一端にある単一アンテナの配置と比較して倍になるように、アンテナ106Aおよび106Bは、ギャップ119の近くに配置される。
【0036】
スロット付き導波路101A、101Bの2つの区間101Aおよび101Bの間のギャップ119で、アンテナ103Aが、スロット付き導波路101A、101Bの一方の区間101A内に延在し、他方のアンテナ103Bが、スロット付き導波路101A、101Bの他方の区間101B内に延在するように、車両104の2つのアンテナ103Aおよび103Bは、その進行方向において互いに対してオフセットされている。したがって、車両104がスロット付き導波路101A、101Bの2つの異なる区間101Aと101Bとの間のギャップ119上を移動する場合、特に、アンテナ101Aおよび101Bが、ギャップ119の領域に位置し、したがって信号がアンテナ101Aまたは101Bを介してもはや送信され得ない場合に、通信の中断が回避される。
【0037】
2つのトランシーバ117および118は、車両104に搭載されており、これらは固定局のトランシーバ110および111と同じチャネルで動作し、その結果、車両104のトランシーバ117または118は、固定局の各トランシーバ110および111に割り当てられる。トランシーバ117および118はそれぞれ、一つのアンテナに通じる信号経路のための二つの接続部を有する。これらの接続部の一方から第1のアンテナ103Aに信号経路が通じ、これらの接続部の他方から第2のアンテナ103Bに信号経路が通じ、その結果、各トランシーバ117、118が、アンテナ103A、103Bにそれぞれ接続される。
【0038】
これを実施するために、アンテナ103Aおよび103Bは各々、固定局105の結合器107と同じ設計の結合器114Aまたは114Bの第3の接続部に接続される。これらの結合器114Aおよび114Bの各々の第1の接続部は、任意選択の減衰素子115Aまたは115Bを介して、第1のトランシーバ117の接続部に接続される。これらの結合器114Aおよび114Bの各々の第2の接続部は、任意選択の減衰素子116Aまたは116Bを介して、第2のトランシーバ118の接続部に接続される。結合器114Aおよび114Bはそれぞれ、それらの第1および第2の接続部を、それらの第3の接続部と結合し、それらの第1および第2の接続部を互いに分離する。したがって、特に車両104がスロット付き導波路区間101Aと101Bとの間のギャップ119上を移動し、車両104の2つのアンテナ103Aまたは103Bのうちの一方がギャップ119の領域に位置する場合、固定局105の各トランシーバ110および111と、車両104に対応して割り当てられたトランシーバ117および118との間に、どんな場合でも、連続的な信号経路が存在する。
【0039】
通信範囲は、単一のアンテナ6および単一の結合器7のみを有する図2の第1の実施形態による固定局5の回路配置で十分であるが、膨張ギャップとして機能するギャップ119を有する2つの別個の区間101Aおよび101Bから構成されるスロット付き導波路101A、101Bが、長さの熱膨張を等しくするために必要とされる場合でも、可能である。この場合、フレキシブル導体片で接続されたアンテナが、ギャップ119において、スロット付き導波路101A,101Bの異なる区間101A,101Bの対向する端部上に、配置される。この受動素子の配置により、スロット付き導波路101A、101Bの異なる区間101A、101B間で信号伝送が行われる。しかしながら、ギャップ119が存在するため、ギャップ119を通過する際に中断のない通信が保証される必要がある場合、図3の第2の実施形態に対応する車両側の通信システムの一部と共に、2つのアンテナ103Aおよび103Bが、搭載車両104で、長手方向に前後に必要とされる。
【0040】
図4は、固定局205内またはその上に配置された、本発明による通信システムの第3の実施形態の一部のブロック図を示す。この実施形態は、固定局205の制御デバイス212が接続される2つのトランシーバ210および211が各々、異なるチャネルに割り当てられるアンテナのための2つの別個の接続部を有するという点で、図2による第1の実施形態とは異なる。2つのアンテナ接続部を有する上記2チャネル・トランシーバ210および211は、それ自体既知である。2つのアンテナ接続部の各々は、最初に第1の結合器221または222を介して、任意選択の減衰素子208または209に接続され、次いで第1の実施形態の結合器7と同じ設計を有する結合器207の第1または第2入力に接続される。結合器207の第3の接続部にはアンテナ206が接続されている。図4による構成は、固定局の側だけでなく、車両の側の鏡像としても使用され得、すなわち、図1に示す車両側の構成を置き換え得る。
【0041】
結合器221および222によるトランシーバ210および211の2つのアンテナ接続部の結合は、個々のトランシーバ210および211の各々の2つのチャネルのバンドリングをもたらして、帯域幅の2倍のチャネルを形成し、したがって、単一チャネルのデータ転送速度を2倍にすることを可能にする。このチャネル・バンドリングは、それ自体既知であり、本発明の目的ではない。この実施形態の例では、共通のスロット付き導波路アンテナを有する異なる送受信デバイスの本発明による結合が、そのような送受信デバイスの既にバンドルされたチャネルにも適用され得ることが、単に説明されている。図1の第1の実施形態と同様に、図4による構成も車両側で使用され得る。
【0042】
図4による構成は、2つのアンテナを有する実施形態にも適用され得る。したがって、図3による第2の実施形態では、制御デバイス112、トランシーバ110および111、減衰素子108および109、ならびに結合器107から構成される通信システムの部分は、アンテナ206を除いて、図4の構成に置き換えられ得る。アンテナ206の代わりに、この場合、結合器120は結合器207に接続され、アンテナ106Aおよび106Bは、その他の2つの接続部に接続される。
【0043】
この場合、各々が4つのアンテナ接続部を有する2つのトランシーバが車両側に必要とされ、これは、4つの任意選択の減衰素子および結合器207に対応する2つの結合器を、結合器221および222に対応する合計4つの結合器を介して、車両の2つのアンテナに接続し、この場合、アンテナ側の結合器と、任意選択の減衰素子およびトランシーバ側の任意選択の減衰素子との間の接続は、2つのアンテナの各々と各トランシーバの2つのアンテナ接続部の各々との間に信号経路を提供するために、図3の構成と同様に、車両側で部分的に交差する。
【0044】
上述の実施形態の例では、2つの単一チャネル・トランシーバ、または、各々がチャネル・バンドリングを有する2つの2チャネル・トランシーバが、提供される。これは、2つのチャネルに対する本発明の制約として理解されるべきではない。代わりに、本発明は、3つ以上のチャネルを有する構成も含む。例えば、3チャネル・システムは、各々がポートのうちの1つを他の3つと結合し、他の3つを互いに分離する双方向性4ポート結合器の形態の結合器と組み合わせて、固定局および車両内の3つのトランシーバを使用することによって、実装され得る。この目的のために、4つの接続部を有するウィルキンソン型結合器が考えられ得る。4つのチャネルを有する通信システムの場合、入力からの信号を4つの出力に分割し、4つの入力からの信号を反対方向の1つの出力に結合するために、本明細書に記載の実施形態の例のように、4つのトランシーバが固定局および車両に設けられ、3つの結合器が、それぞれ3つの接続部を有して、2段でカスケード接続され得る。
図1
図2
図3
図4