(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】PLK1の活性抑制剤を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/525 20060101AFI20230425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230425BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K31/525
A61P35/00
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021530151
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2018014944
(87)【国際公開番号】W WO2020111325
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0149112
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンテ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ビョン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウン スク
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ボン、スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン スク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ウン-ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス-ヒョン
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/071358(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第107468694(CN,A)
【文献】ビタミン,1995年,vol.69, no.12,pp.707-714
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 35/00-35/04
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
前記化学式1または2で、
R
1は、H、アルキル、または-CH
2COOHであり、
R
2は、H、またはアルキルであり、
R
3は、H、ハロゲン、-NH
2、またはアルキルであり、
R
4は、H、アルキル、-COOH、または-CX
3であり、Xは、ハロゲンであり、
ここで、前記化学式1において、R
2~R
4がすべて-CH
3であるとき、R
1はアルキル、または-CH
2COOHであ
って、
前記化学式1または2で表示される化合物は、下記化合物よりなる群から選ばれる:
2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid;
10-methyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-chloro-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
10-methyl-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-1,3-dimethyl-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
4,10-Dihydro-7,8,10-trimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridine-3(2H)-acetic Acid。
【請求項2】
前記癌は、肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記化合物は、PLK1(polo-like kinase 1)のPBD(polo-box domain)に結合することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、癌細胞の成長を阻害することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物は、癌細胞の細胞死(apoptosis)を誘導することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の改善用健康機能食品組成物。
【化2】
前記化学式1または2で、
R
1は、H、アルキル、または-CH
2COOHであり、
R
2は、H、またはアルキルであり、
R
3は、H、ハロゲン、-NH
2、またはアルキルであり、
R
4は、H、アルキル、-COOH、または-CX
3であり、Xは、ハロゲンであり、
ここで、前記化学式1において、R
2~R
4がすべて-CH
3であるとき、R
1はアルキル、または-CH
2COOHであ
って、
前記化学式1または2で表示される化合物は、下記化合物よりなる群から選ばれる:
2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid;
10-methyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-chloro-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
10-methyl-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-1,3-dimethyl-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
4,10-Dihydro-7,8,10-trimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridine-3(2H)-acetic Acid。
【請求項7】
癌治療薬の製造のための、下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む薬学的組成物の使用。
【化3】
前記化学式1または2で、
R
1は、H、アルキル、または-CH
2COOHであり、
R
2は、H、またはアルキルであり、
R
3は、H、ハロゲン、-NH
2、またはアルキルであり、
R
4は、H、アルキル、-COOH、または-CX
3であり、Xは、ハロゲンであり、
ここで、前記化学式1において、R
2~R
4がすべて-CH
3であるとき、R
1はアルキル、または-CH
2COOHであ
って、
前記化学式1または2で表示される化合物は、下記化合物よりなる群から選ばれる:
2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid;
10-methyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-chloro-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
10-methyl-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-1,3-dimethyl-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
4,10-Dihydro-7,8,10-trimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridine-3(2H)-acetic Acid
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLK1(polo-like kinase 1)のPBD(polo-box domain)に結合して前記タンパク質の活性を阻害するPLK1の活性抑制剤およびこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む癌の予防、改善、または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
体細胞分裂(mitosis)は、すべての細胞の構成成分が2つの新規細胞に分離される分裂を意味する。体細胞分裂が始まると、染色体の凝縮、紡錘極体の分離および正極への移動、中央での染色体整列、そして最終的にすべての細胞成分の分離が起こる。細胞が分裂し始まるとき、染色体は、効果的な両方向への分離のために特定構造を形成しなければならないし、このような体細胞分裂の特異的染色体構造は、主に3つの多重タンパク質複合体、2つのコンデンシン(Condensin)およびコヒーシン(Cohesin)複合体に左右される。コヒーシン複合体は、その姉妹染色分体とともに結合されており、コンデンシン複合体は、染色体の内部を厚くて且つ短く作る役割をする。各コンデンシン複合体は、2つのATP酵素(ATPase)サブユニットヘテロ二量体(subunit heterodimer)、染色体構造維持複合体(Structural Maintenance of Chromosomes、SMC2&SMC4)および3つの非SMC調節サブユニット(non-SMC regulatory subunits)からなっている。このような3つの調節成分の固有和が各コンデンシン複合体を定義することになるが、例えばNCAP-D2、NCAP-GおよびNCAP-Hは、コンデンシン複合体Iの、そしてNCAP-D3、NCAP-G2およびNCAP-H2は、コンデンシン複合体IIの構成要素である。SMC2および4ヘテロ二量体は、そのATP酵素活性を利用する体細胞分裂DNA凝縮のための架橋体(crosslinker)である。NCAP-HおよびNCAP-H2は、SMCヘテロ二量体とその他2つの調節サブユニットを連結するクレイシン(kleisin)タンパク質であり、NCAPG、NCAPG2、NCAD2およびNCAPD3は、可変的骨格に該当するHEAT反復ドメインを含む各コンデンシン複合体に対する調節サブユニットである。前記コンデンシン複合体Iは、休止期(interphase)の間にサイトソル(cytosol)内に位置して、核膜崩壊直後、オーロラキナーゼB(aurora kinase B)により染色体内に混入(incorporation)され、細胞質分裂(cytokinesis)過程まで染色体癌(chromosome arm)に留まる。反面、コンデンシン複合体IIは、休止期にも核内に留まって、細胞分裂の間に染色体凝縮を起こし、タンパク質ホスファターゼ2A(protein phosphatase 2A、PP2A)触媒活性非依存的機能によりコンデンシン複合体IIの染色体内混入が行われる。染色体デカテネーション(decatenation)、クロマチンリモデリング(chromatin remodeling)、複合体I凝縮を含むその他の様々な作用が細胞質分裂までの染色体凝縮が維持されるようにする。また、酵母菌種に存在するコンデンシン複合体Iは、真核細胞の染色体凝縮のための古典的コンデンシン複合体である。コンデンシンIIは、染色体硬直(chromosome rigidity)だけでなく、染色体分裂(segregation)、DNA修復(DNA repair)、細胞死(apoptosis)、姉妹染色分体分解(sister chromatid resolution)、遺伝子発現調節およびヒストン調節(histone modulation)等の多様な細胞作用を調節する。興味深く、すべての線虫類コンデンシン複合体II成分のホモ接合性変異体(homozygous mutants)は、非正常的サイズまたは不均質な核分布を示す。ヒト細胞では、コンデンシン複合体IIの任意の成分欠損が染色体整列または分裂での欠陥を引き起こす。染色体分裂作用と関連して、最近の報告では、NCAPD3がPLK1の染色体癌への移動に寄与することが報告されたことがある。
【0003】
染色体分裂(chromosome segregation)は、保全された遺伝情報をそれぞれの娘細胞に伝達するための最も重要な過程といえる。染色体分裂の1番目の段階は、微小管(microtubule)が動原体(kinetochore)と知られた染色体上に付着されることである。動原体は、姉妹染色分体が結合された染色体の中心節(centromere)に対応するタンパク質複合組立体(protein complex assembly)である。微小管-動原体の結合は、正確な両方向への相互作用のために精巧な調節が必要である。このような過程は、オーロラBおよび/またはPP2Aホスファターゼ等のキナーゼ(kinases)およびホスファターゼ(phosphatases)による微細リン酸化勾配を通じてこのようなキナーゼ/ホスファターゼ基質活性化の適正時間および位置化を調節して行われる。
【0004】
このような過程でセリン/スレオニンキナーゼの一種類であるPLK1(polo-like kinase 1)は、染色体分裂および染色体インテグリティ(integrity)に必須であると知られている。PLK1は、微小管の動原体付着過程の初期段階を媒介し、体細胞分裂の間に微小管の移動によって染色体、動原体、および中央体から多様に位置し、中期核板(metaphase plate)での染色体整列が完了するまで前中期(prometaphase)から中期(metaphase)に至るように動原体に位置する。また、各動原体が微小管により十分に付着しない場合には、後期(anaphase)が始まることを待機させるために、動原体に位置するPLK1がBubR1をリン酸化させる。すなわち、PLK1は、体細胞分裂で多様な過程に作用し、DNA損傷機序にも関与するなど細胞増殖に非常に重要な役割をしている。
【0005】
PLK1は、構造的にリン酸化酵素の種類として、他のリン酸化酵素とは異なってリン酸化活性を有するkinase部位と基質を認識するPBD(polo-box domain)で構成されている。前記Kinase部位とPBD部位は、基質が競合しないときには、リン酸化酵素活性が妨害される構造を形成し、基質がPBDに結合すると、構造が開かれて、リン酸化活性を有することになる。したがって、多くの基質は、PBDに結合してリン酸化されることが知られているが、PBDやKDの一方の機能を抑制するmutantを作ったとき、まだ細胞のPLK1機能が残っていると見られて、PBDに結合しても、KD機能に関係ない基質と機能が存在することが知られている。このように細胞分裂過程で多様な役割を行うPLK1は、多くの癌腫で発現が増加していることが報告されており、特にこれらの発現は、癌細胞に致命的なので、PLK1の活性阻害は、細胞に非正常的な単一軸の紡錘糸状態を維持して細胞死を誘発することが知られている。したがって、多様な研究においてPLK1を標的に抗癌剤の開発研究が進行中であるが、初期研究段階で開発されたPLK1抑制剤は、PLK1のリン酸化酵素活性を抑制するATP競争妨害物質として開発され、現在PLK1活性抑制剤として臨床に進入した多くの薬物が、このようなN-terminal ATP結合部位阻害剤である。しかしながら、このような抑制剤がリン酸化活性を抑制するために標的化されるkinase部位は、他のPLK familyまたはその他リン酸化酵素と類似性が非常に高いため、PLK1のみを選択的に標的化するのに困難があり、多様な悪性腫瘍で治療効果を示してはいるが、薬物力動学的問題点で臨床適用に限界点がある。
【0006】
これより、本発明者らは、以前の研究を通じてコンデンシン複合体IIのサブユニットタンパク質であるNCAPG2がPLK1のPBD部位に結合することによって、PLK1の動原体内位置化および基質リン酸化活性に影響を与えることを確認し、実際NCAPG2のPBD結合部位を糾明することによって、これを基にPLK1の活性抑制剤としてペプチドを同定した。しかしながら、ペプチドは、自体的な分解に対する不安定性と細胞内低い浸透率のような限界点が存在するのが現状である。
【0007】
したがって、前記ペプチドとPLK1 PBDの結合構造を利用して分子モデリングを設計し、低分子化合物をスクリーニングして、PLK1と高い結合力を有し、結果的に癌細胞に対する成長阻害能を有する低毒性の有効な低分子化合物の発掘が主要な課題の対象となっており、これに対する研究が行われているが(韓国公開特許10-2016-0045957号公報)、まだ不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するために、本発明者らは、NCAPG2由来ペプチドとPLK1のPBDの結合構造による分子モデリングを設計することによって、PLK1のPBDに高い結合親和性を有し、低毒性を有する低分子化合物を発掘するために、34万種の化合物ライブラリーをスクリーニングし、これにより、有効なPLK1活性抑制剤化合物を同定した。
【0009】
また、前記化合物の細胞水準で多様な癌細胞株の成長を効率的に阻害することを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0010】
これより、本発明は、下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防、改善、または治療用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【0012】
【0013】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1または2で表示される化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
【0016】
【0017】
(前記化学式1または2で、R1は、H、アルキル、または-CnH2nCOOH(nは1~4の整数)であり、R2は、H、アルキル、-CmH2mCN、-CmH2mOR5、または-CpH2p(CH(OH))qR6であり、R5は、1つ以上のC1-3のアルキルで置換されたフェニルであり、R6は、H、アルキルまたは-OPH2O3であり、mは、2~4の整数であり、pは、1~3の整数であり、qは、2~4の整数であり、
R3は、H、ハロゲン、-NH2、アルキル、または-CH=Oであり、R4は、H、アルキル、-COOH、または-CX3であり、Xは、ハロゲンである)
【0018】
また、本発明は、前記化学式1または2で表示される化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、癌の改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0019】
本発明の一具現例において、前記化学式1または2で、
R
1は、H、-CH
3、または-CH
2COOHであり、
R
2は、H、-CH
3、-C
2H
4CN、-CH
2(CH(OH))
3CH
2OH、-CH
2(CH(OH))
3OPH
2O
3または
【化5】
であり、
R
3は、H、Cl、-NH
2、-CH
3、または-CH=Oであり、
R
4は、H、-CH
3、-COOH、または-CF
3でありうる。
【0020】
本発明の他の具現例において、前記化学式1または2で表示される化合物は、下記化合物よりなる群から選ばれ得る。
【0021】
2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid;
10-methyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-chloro-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
10-methyl-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-1,3-dimethyl-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,8,10-trimethyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,10-dimethyl-2,4-dioxo-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-8-carbaldehyde;
4,10-Dihydro-7,8,10-trimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridine-3(2H)-acetic Acid;
3-{7,8-dimethyl-2,4-dioxo-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridin-10-yl}propanenitrile;
10-[2-(3-methylphenoxy)ethyl]-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,8-Dimethyl-10-[(2S,3S,4R)-2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4-dione;および
[(2R,3S,4S)-5-(7,8-dimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridin-10-yl)-2,3,4-trihydroxypentyl]dihydrogen phosphate
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記癌は、肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌よりなる群から選ばれる1種以上でありうる。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、前記化合物は、PLK1(polo-like kinase 1)のPBD(polo-box domain)に結合することができる。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、癌細胞の成長を阻害するものでありうる。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、癌細胞の細胞死(apoptosis)を誘導するものでありうる。
【0026】
また、本発明は、前記化学式1または2で表示される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、前記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む薬学的組成物の、癌の予防または治療用途を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明者らは、PLK1のPBDに高い結合親和性を有しながらも、低毒性を有する低分子化合物を発掘するために、化合物ライブラリースクリーニングを実施した結果、本発明の化学式1または2で表示される有効な化合物を同定し、前記化合物は、低い濃度で効果的にPLK1のPBDに結合し、肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌の細胞の成長を顕著に阻害することを確認した。
【0029】
これより、本発明による前記化合物は、PLK1のPBDに選択的に結合することによって、従来のkinaseドメインを標的とするATP結合部位阻害剤と比較してPLK1に対する高い選択性、結合親和性を有しながらも、低い毒性を有するという利点を有する。
【0030】
したがって、本発明によるPLK1活性抑制剤化合物は、多様な癌細胞の成長を阻害することによって、抗癌剤として有用に用いられ得るものであり、単独投与以外にも、既存に開発された抗癌剤との併用投与を通したシナジー効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施例によるPLK1のPBDに選択的に結合してPLK1の活性を抑制する低分子化合物を発掘するために用いられたFP分析法(Fluorescence polarization competition assay)の原理を示すものである。
【
図2】本発明の一具現例による化合物のFP assay分析結果およびIC
50を示すグラフである。
【
図3】本発明の一具現例による化合物のFP assay分析結果を示すグラフ、およびIC
50を示すものである。
【
図4】本発明の一具現例による化合物のFP assay分析結果を示すグラフ、およびIC
50を示すものである。
【
図5a-5b】本発明の実施例3によって化合物2(M2)の癌細胞の成長阻害能を測定したグラフである。
【
図5c】本発明の実施例3によってJIMT1細胞でM2およびM2変形体の癌細胞成長阻害能を測定したグラフである。
【
図6】本発明の実施例3によって化合物2(M2)、化合物3(M4)、化合物4(M21)、およびsorafenibの肝癌細胞株の成長阻害能を測定したグラフである。
【
図7】本発明の実施例3によって化合物3(M4)の癌細胞の成長阻害能を測定したグラフである。
【
図8】本発明の実施例3によって化合物3(M4)の癌細胞の成長阻害能を測定したグラフである。
【
図9a】本発明の実施例3によって化合物5(M23)、および化合物6(M25)の肝癌細胞株成長阻害能を測定したグラフである。
【
図9b】本発明の実施例3によってHepG2細胞でM2およびM2変形体の癌細胞成長阻害能を測定したグラフである。
【
図9c】本発明の実施例3によってSNU449細胞でM2およびM2変形体の癌細胞成長阻害能を測定したグラフである。
【
図10】本発明の実施例3によって化合物2(M2)単独、および化合物2(M2)とBI2536を混合処理時に肝癌細胞株の成長阻害能を測定したグラフである。
【
図11】本発明の実施例4によって、本発明の一具現例による化合物の処理時に中心体に位置するr-tubulinとPLK1、染色体(DAPI)の相互位置関係を確認したものである。
【
図12】本発明の実施例4によってNCAPG2の染色体腕および動原体での染色程度を示す写真とグラフである。
【
図13】本発明の実施例5によって化合物2(M2)を処理した場合、細胞周期に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図14a】HepG2細胞でM2またはBI2536処理後、相対的細胞面積を示すものである。
【
図14b】M2またはBI2536処理されたHepG2細胞で核染色を通じて観察したイメージを示すものである。
【
図15a】HepG2細胞にM2とBI2536をそれぞれ処理した後、フローサイトメトリーを行った結果である。
【
図15b】HepG2細胞にM2とBI2536をそれぞれ容量を増加させて処理した後、細胞死の結果をグラフで示すものである。
【
図16】本発明の実施例8によって化合物4およびDMSOをそれぞれマウス腹腔注射後、肺、心臓、肝、腎臓、脾臓および皮膚を摘出して組織病理学的に分析した写真である。
【
図17】本発明の実施例8によって腫瘍のサイズとマウス体重の変化を示すグラフである。
【
図18】本発明の実施例8によって摘出された癌生成組織の外観を示す写真である。
【
図19】本発明の実施例8によって摘出された組織でPLK1の発現を比較するためにPLK1に対する免疫組織化学的染色を実施し、PLK1自体の発現差異が顕著でないが、細胞分裂期中の細胞数が減少することを示す写真である。
【
図20a】本発明の実施例9によってマウスにM2処理後、移植された腫瘍の肉眼形態およびMRIイメージを示すものである。
【
図20b】
図20aのMRI映像を利用して移植された腫瘍の体積変化およびM2の腫瘍成長減少効果をグラフで示すものである。
【
図20c】本発明の実施例9によって移植された腫瘍組織で細胞分裂期中の細胞数が減少することを示すものである。
【
図20d】
図20cの組織病理学的観察を利用して各処理群で計算されたMitotic indexを示すグラフである。
【
図21a】本発明の実施例9によってマウスにM2処理後、移植された腫瘍のサイズ変化をMRIイメージを通じて示すものである。
【
図21b】本発明の実施例9によってマウスにM2処理後、移植された腫瘍の最終重さを示すものである。
【
図21c】本発明の実施例9によってマウスにM2処理後、移植された腫瘍の体積変化を示すものである。
【
図22a】本発明の実施例10によって対照群(control)でマウスに移植された腫瘍のMRIイメージを示すものである。
【
図22b】本発明の実施例10によってM2を処理した群でマウスに移植された腫瘍のMRIイメージを示すものである。
【
図22c】本発明の実施例10によってBI2536処理した群でマウスに移植された腫瘍のMRIイメージを示すものである。
【
図22d】本発明の実施例10によってM2またはBI2536を処理した群で腫瘍の体積、腫瘍の重さおよび体重の変化を比較したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。本発明を説明するに際して、関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0033】
本発明は、PLK1活性抑制剤およびその用途に関し、より具体的には、PLK1のPBDに高い結合親和性を有する低毒性の化合物およびこれを有効成分として含む癌の予防、改善、または治療用組成物に関する。以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明者らは、以前の研究を通じてNCAPG2の1010番目に位置するリン酸化したスレオニン(Threonine)を中心とするGVLSpTLIペプチドがPLK1(Serine/threonine-protein kinase 1)の基質結合部位であるPBD(polo-box domain)ドメインに結合し、前記結合がPLK1の細胞分裂期の作用に非常に重要な紡錘糸と染色体の結合部位に位置するようにすることを糾明した。しかしながら、ペプチドは、抗癌剤として開発時に、ペプチド自体の不安定性、低い細胞内侵透性のような限界点を克服しなければならない問題点が存在するので、本発明では、前記ペプチドとPLK1 PBDの結合部位に対する結晶構造を基に前記ペプチドのPBD結合構造をシミュレートし、PBDに競争的に結合できる低分子化合物を発掘しようとした。
【0035】
これより、本発明の一実施例では、in silico assayを通じて34万種の化合物ライブラリーに対して1次スクリーニングを行って、700種の候補化合物を導き出し、前記化合物に対してFP分析法を実施して、前記ペプチドとPLK1の結合を効率的に阻害する有効化合物、すなわちPLK1活性抑制剤を発掘した(実施例1および2参照)。
【0036】
本発明の他の実施例では、前記実施例を通じて最終発掘された化合物が実際に多様な癌細胞株の成長を阻害できるかを調べてみるために、細胞水準で肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌の細胞株に処理した後、細胞数を測定した結果、前記化合物は、処理濃度に比例して肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌の細胞の成長を効果的に阻害することを確認し、相対的に正常細胞の成長阻害効果は相対的に少ないことを確認することができた(実施例3参照)。
【0037】
本発明の他の実施例では、前記化合物が前記癌細胞で正常な細胞分裂過程に関与するPLK1の抑制剤としてリン酸化活性と相異に作用することを確認し、PBD targerting Hit物質は、PLK1自体の細胞内正常な位置を確保しないようにして、その正確なpartnerの位置も不適切になることによって、細胞分裂期の以前段階で細胞の成長進行を抑制する効果を示すことを確認した(実施例4および5参照)。
【0038】
本発明のさらに他の実施例では、HepG2細胞にM2を処理した結果、細胞の抗増殖効果も示されることを確認した(実施例6参照)。
【0039】
本発明のさらに他の実施例では、HepG2細胞にM2を処理した結果、apoptosis集団が増えることを確認した(実施例7参照)。
【0040】
本発明のさらに他の実施例では、前記化合物の毒性テスト、および肝癌xenograft modelでの癌成長阻害能を確認した(実施例8参照)。
【0041】
本発明のさらに他の実施例では、前記化合物の肝癌orthotopic xenograft modelでの癌成長阻害能を確認した(実施例9および実施例10参照)。
【0042】
前記結果を通じて本発明による下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、多様な癌腫、特に肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌の治療剤として有用に用いられ得る。
【0043】
これより、本発明は、下記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0044】
【0045】
【0046】
前記化学式1または2で、
R1は、H、アルキル、または-CnH2nCOOH(nは1~4の整数)であり、
R2は、H、アルキル、-CmH2mCN、-CmH2mOR5、または-CpH2p(CH(OH))qR6であり、R5は、1つ以上のC1-3のアルキルで置換されたフェニルであり、R6は、H、アルキルまたは-OPH2O3であり、mは、2~4の整数であり、pは、1~3の整数であり、qは、2~4の整数であり、
R3は、H、ハロゲン、-NH2、アルキル、または-CH=Oであり、
R4は、H、アルキル-COOH、または-CX3であり、Xは、ハロゲンである。
【0047】
好ましくは、前記化学式1または2で、
R
1は、H、-CH
3、または-CH
2COOHであり、
R
2は、H、-CH
3、-C
2H
4CN、-CH
2(CH(OH))
3CH
2OH、-CH
2(CH(OH))
3OPH
2O
3または
【化8】
であり、
R
3は、H、Cl、-NH
2、-CH
3、または-CH=Oであり、
R
4は、H、-CH
3、-COOH、または-CF
3でありうる。
【0048】
また、より好ましくは、前記化学式1または2で表示される化合物は、下記化合物よりなる群から選ばれ得る。
【0049】
2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid;
10-methyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-chloro-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
10-methyl-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-1,3-dimethyl-1H,2H,3H,4H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
8-amino-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,8,10-trimethyl-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,10-dimethyl-2,4-dioxo-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-8-carbaldehyde;
4,10-Dihydro-7,8,10-trimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridine-3(2H)-acetic Acid;
3-{7,8-dimethyl-2,4-dioxo-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridin-10-yl}propanenitrile;
10-[2-(3-methylphenoxy)ethyl]-7-(trifluoromethyl)-2H,3H,4H,10H-benzo[g]pteridine-2,4-dione;
7,8-Dimethyl-10-[(2S,3S,4R)-2,3,4,5-tetrahydroxypentyl]benzo[g]pteridine-2,4-dione;および
[(2R,3S,4S)-5-(7,8-dimethyl-2,4-dioxobenzo[g]pteridin-10-yl)-2,3,4-trihydroxypentyl]dihydrogen phosphate
【0050】
以下、本発明の実施例1および2によって発掘された化合物である2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acid、およびその誘導体を整理した。
【0051】
【0052】
本発明の組成物による予防または治療対象疾病である「癌」は、細胞が正常な成長限界を無視し、分裂および成長する攻撃的(aggressive)特性、周囲組織に浸透する浸透的(invasive)特性、および体内の他の部位に広がる転移的(metastatic)特性を有する細胞による疾病を総称する意味である。本発明において、前記癌は、肝癌、乳癌、血液癌、前立腺癌、卵巣癌、すい臓癌、胃癌、大腸癌、脳癌、甲状腺癌、膀胱癌、食道癌、子宮癌、および肺癌よりなる群から選ばれる1種以上であり得、より好ましくは、肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、または前立腺癌でありうるが、これに制限されるものではない。
【0053】
別途言及されない限り、本願に使用されたすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者に通常的に理解されるところと同じ意味を有する。したがって、例えば、用語「アルキル」は、1~8個、好ましくは、1~6個の炭素原子を有する、単一原子を除去することによって、直鎖または側鎖の飽和炭化水素から誘導された1価グループを称する。
【0054】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、ブロムおよびヨードを示す。
【0055】
本発明で使用される用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与により癌を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0056】
本発明で使用される用語「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により癌による症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0057】
本発明において、前記塩は、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸または亜リン酸のような無機酸類と脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエートおよびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩類としては、サルフェート、ピロサルフェート、バイサルフェート、サルファイト、バイサルファイト、ニトレート、ホスフェート、モノヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、スクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マリエート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオエート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β-ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネートまたはマンダラートを含む。
【0058】
本発明による酸付加塩は、通常の方法、例えば、化学式1または2で表示される化合物を過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。また、この混合物で溶媒や過量の酸を蒸発させた後、乾燥させたり、または析出された塩を吸入濾過させて製造することもできる。
【0059】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることもできる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩を濾過し、濾液を蒸発、乾燥させて得る。この際、金属塩としては、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが製薬上適している。これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例えば、硝酸銀)と反応させて得る。
【0060】
本発明による薬学的組成物は、前記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含み、また、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常用いられるものであり、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソーム等を含むが、これに限定されず、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液など他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤等を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液等のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、または錠剤に製剤化することができる。適合した薬学的に許容される担体および製剤化に関しては、レミントンの文献に開示されている方法を利用して各成分によって好適に製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、剤形に特別な制限はないが、注射剤、吸入剤、皮膚外用剤、または経口摂取剤等に製剤化することができる。
【0061】
本発明の薬学的組成物は、目的する方法によって経口投与したり、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚、鼻腔、気道に適用)することができ、投与量は、患者の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および時間によって異なるが、当業者により適切に選ばれ得る。
【0062】
本発明による組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。本発明による組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与され得、単一または多重投与され得る。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定され得る。
【0063】
具体的に、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重によって変わり得、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは、0.01~100mgを毎日または隔日投与したり、1日に1~3回に分けて投与することができる。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢等によって増減することができるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
本発明の他の様態として、本発明は、前記化学式1または2で表示される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む癌の改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0065】
本発明で使用される用語「改善」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0066】
本発明の健康機能食品組成物において有効成分を食品にそのまま添加したり他の食品または食品成分と共に使用され得、通常の方法によって適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適合するように決定され得る。一般的に、食品または飲料の製造時に、本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは、10重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でありうる。
【0067】
本発明の健康機能食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記有効成分を含有することの他に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように、様々な香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖等;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロース等;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリン等のような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリストリトール等の糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えばレバウディオサイドA、グリチルリチン等)および合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定され得る。
【0068】
前記の他に本発明の健康機能食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤等の風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等を含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合も、また、当業者により適切に選ばれ得る。
【0069】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
実施例1.Fluorescence polarization(FP)方法を利用した化合物スクリーニング
本発明者らは、以前の研究を通じてNCAPG2の1010番目に位置するリン酸化したスレオニン(Threonine)を中心とするGVLSpTLIペプチドがPLK1(Serine/threonine-protein kinase 1)の基質結合部位であるPBD(polo-box domain)ドメインに結合し、前記結合がPLK1の細胞分裂期の作用に非常に重要な紡錘糸と染色体の結合部位に位置するようにすることを糾明し、その結晶構造を解析した。このような研究結果を基に前記ペプチドのPBD結合構造をシミュレートし、PBDに競争的に結合できる低分子化合物を発掘しようとした。
【0071】
このために、韓国化学研究院から34万種の化合物ライブラリーに対してin silico assayを通じて1次スクリーニングを行い、これから得られた700種の候補化合物に対して実験を進めた。
【0072】
このために、溶液上で精製したPLK1のPBD部位とFITC蛍光が結合されたペプチド(FITC-labeled 1010pT(GVLSpTLI-NH
2))結合体をスクリーニングしようとする低分子化合物と混合してFluorescence polarization competition assayを実施した。前記分析方法の原理は、
図1に示し、
図1に示されたように、PLK1のPBDドメインに蛍光が接合されたペプチドが結合されている状態で同じ結合部位に競争的に結合できる低分子化合物が結合する場合、前記ペプチドがPLK1から脱離することによって蛍光が減少する程度を測定して、低分子化合物のPLK1に対する結合力を測定する原理である。
【0073】
より具体的に、4μM濃度のPLK1-PBDタンパク質、10nMのペプチド(FITC-labeled 1010pT(GVLSpTLI-NH2))、20μMの候補化合物をそれぞれの濃度で準備し、96ウェルブラックプレートにそれぞれ入れて混合して、常温で30分間反応させた後、Infinte F200 Pro(TECAN Group Ltd,switzerland)を利用して常温で蛍光偏光値(fluorescence polarization(mp))を測定した。本実験は、同じ方法で3回行って平均値を導き出し、Excitation波長は、485nm、Emission波長は、535nmにした。
【0074】
前記方法によって前記候補化合物をスクリーニングした結果、化合物を入れない場合(FITC-labeled 1010pTペプチドとPLK1-PBDタンパク質のみを入れた場合)、蛍光偏光値が約300に測定されたものと比較して、顕著に低い180の値を示す化合物、すなわち2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acidを発掘し、前記化合物をhit compoundに決定し、下記実験を進めた。
【0075】
実施例2.hit compoundおよび誘導体化合物のIC
50
測定
1次および2次化合物のスクリーニングを通じて発掘された化合物およびhit compoundおよびその多様な誘導体に対して前記実施例1に示すFP assayを実施して、化合物のIC50を分析しようとした。このために、GST resinを利用してGST-tagが結合された標的タンパク質を分離し、最後にgel filtrationを行って、GST-tagが結合された純粋な標的タンパク質15mg/mlを得た。reaction bufferで前記標的タンパク質をそれぞれ12uM、3uM、および1.5uMの濃度で希釈して準備し、茶色チューブに保管されたFITCが結合されたペプチド(FITC-labeled 1010pT(GVLS-pT-LI-NH2))は、reaction bufferで希釈して、30nMの濃度で準備した。また、前記100mMの濃度の化合物は、reaction bufferでそれぞれ160.0uM、80.0uM、40.0uM、20.0uM、10.0uM、5.0 uM、2.5uM、1.25uM、0.625uM、0.3125uM、0.15625uM、0.0uMで希釈して準備した。次に、前記標的タンパク質を96ウェルブラックプレートに3つの濃度をそれぞれ12個のウェル、すなわちそれぞれ12ウェルずつ3ラインに分注し、結合ペプチドを標的タンパク質が分注された各ウェルに分注して混合した。その後、標的タンパク質と結合ペプチドが混合された各ウェルに前記化合物を濃度別にそれぞれ分注して常温で30分間反応させた。反応が完了すると、Infinte F200 Pro(TECAN Group Ltd、switzerland)を利用して485nmのExcitation波長および535nmのEmission波長に設定し、G-Factorは、1.077にして、蛍光偏光値を測定した。この際、G-Factorは、ペプチドの特性によって少しずつ差異があるので、実験開始前にペプチドのみをサンプリングして、値を固定させた後、使用した。Binding curvesは、Graphpad Prism(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を利用して分析した。
【0076】
実験結果、前記化合物の濃度によるFP assay分析結果を得て、
図2~
図4に示し、前記結果を基に化合物のIC
50を計算した。その結果、2,4-Dioxo-1,2,3,4-tetrahydrobenzo[g]pteridine-7-carboxylic acidのIC
50値は、~25μMで測定され、
図2~
図4に示されたように、前記化合物の誘導体のIC
50値は、0.45~27μMであると測定された。
【0077】
一方、化合物2(M2)、化合物4(M21)、化合物5(M23)、および化合物6(M25)の場合、FITC-labeled 1010pT(FITC-GVLSpTLI-NH
2)だけでなく、Cdc25cpT(FITC-LLCSpTPN-NH2)およびPBIPペプチド(FITC-LHSpTA-NH
2)に対しでも、IC
50値を測定して
図3に示す。
【0078】
実施例3.hit compoundおよび誘導体化合物の多様な癌細胞の成長阻害能分析
前記実施例1および2を通じて発掘したPLK1のPBDドメインに特異的に結合する化合物が実際に癌細胞の分裂時にPLK1に結合することによって、細胞の分裂を抑制して成長を阻害するかを調べてみようとした。
【0079】
このために、肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌細胞株を利用して実験を進め、mouseの肝癌細胞株であるHEPA 1-6および乳癌細胞株であるMDA-MB-468 10%FBS(Fetal bovine serum)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されたDMEM培地で培養し、残りの細胞株は、同じ添加物が含まれたRPMI1640培地で培養して実験に利用した。
【0080】
前記化合物の乳癌細胞株の成長阻害能を調べてみるために、細胞付着1日および3日後、前記化合物をそれぞれ表示したμM濃度で処理し、対照群は、0.1%の溶媒(DMSO)で処理した。さらに2日後、培養プレートに付着して成長する細胞株は、1xPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)を常温で10分間処理して細胞を固定させた。その後、PBSで細胞を2回洗浄した後、0.5%Triton X-100溶液を固定された細胞に処理して、常温で15分間反応させ、さらにPBSで3回洗浄した後、DAPI試薬を0.5μg/mlで処理し、37℃で10分間反応させて細胞核が染色されるようにした。さらに、追加でPBSで1回洗浄した後、Cytation 3でDAPIで染色された細胞を撮影して、Gen5 software(Biotek、USA)で分析した。一方、培養プレートに付着せずに浮遊して成長する細胞の場合には、4%パラホルムアルデヒド溶液を処理し、常温で10分間反応させて細胞を固定した後、Cytation 3でbright fieldで細胞を撮影してGen5 software(Biotek、USA)で分析した。
【0081】
MDA-MB-468細胞をウェル当たり2×10
3個ずつ、96ウェルプレートに分注し、前記と同じ方法で培養し、化合物2(M2)、化合物3(M4)を処理した後、細胞の成長阻害能を分析した。その結果、
図5a、
図5bおよび
図7に示されたように、化合物の処理濃度に比例して前記細胞数が顕著に減少することを確認した。
【0082】
ひいては、M2変形体で乳癌細胞の反応性を判断するために、JIMT1ヒト乳癌細胞を利用して細胞をウェル当たり2×10
3個ずつ、96ウェルプレートに分注し、前記と同じ方法で培養し、追加で実験を行った結果、
図5cに示されたように、M2、M202およびM203が、いずれも、用量依存的に癌細胞数が顕著に減少することを確認した。
【0083】
また、前記化合物2(M2)および化合物3(M4)の血液癌細胞株に対する成長阻害能を調べてみるために、血液癌細胞株であるHL-60およびU937細胞をウェル当たり1×103個ずつ96ウェルプレートに分注し、前記と同じ方法で実験を進めた。
【0084】
その結果、
図5a、
図5bおよび
図7に示されたように、2つの細胞株の両方で前記化合物による細胞成長阻害能が非常に高く現れた。
【0085】
また、子宮頸癌および前立腺癌細胞株で前記化合物2(M2)および化合物3(M4)の成長阻害能を分析するために、子宮頸癌細胞株であるHeLa、および前立腺癌細胞株であるPC-3細胞を96ウェルプレートに分注し、化合物を前記と同じ多様な濃度で処理した後、細胞数を測定した。
【0086】
その結果、
図5a、
図5bおよび
図7に示されたように、子宮頸癌で前記化合物の処理による細胞成長阻害能を確認し、
図5a、
図5bおよび
図8に示されたように、前立腺癌細胞では、前記化合物の変異体による効果の差異があることを確認した。
【0087】
肝癌細胞株の成長阻害能を分析するために、HEPG2細胞は、ウェル当たり6.6×103個ずつ、Hep3B、SNU-475、およびSNU-449細胞は、ウェルダン1×103個ずつ、SNU-387細胞は、2×103個ずつ96ウェルプレートに分注し、前記と同じ方法で培養し、化合物2(M2)、化合物3(M4)、化合物4(M21)、化合物5(M23)、化合物6(M25)を処理した後、細胞の成長阻害能を分析した。
【0088】
その結果、
図5a、
図5b、
図6、
図8、および
図9aに示されたように、化合物の処理濃度に比例して前記細胞数が顕著に減少することを確認した。
【0089】
反面、
図5aに示されたように、前記化合物を正常細胞株であるHDFに処理した場合、20uMまでは細胞死に影響を大きく与えないことが分かった。
【0090】
分析結果、
図5a~
図9aのように、本発明によるhit化合物の変形体が相異に細胞の生存率に影響を与えることを確認した。このうち、化合物2(M2)の癌細胞抑制能が比較的多様な細胞で効果的に一定に現れることを確認した。
【0091】
また、前記HepG2のような方法で肝癌細胞株の成長阻害能に対してHepG2ヒト肝癌細胞でM2変形体の反応性を実験した結果、
図9bに示されたように、M2とM202の場合には、用量依存的に肝癌細胞の面積が顕著に減少したが、M204、M217の場合、相対的に低い反応性が現れ、SNU449のヒト肝炎細胞でM2変形体の反応性を実験した結果、
図9cに示されたように、M2、M202およびM203の場合、用量依存的に癌細胞数が顕著に減少した反面、M206、M209、M217およびM218の場合は、相対的に顕著な癌細胞減少効果が現れなかった。
【0092】
また、低い濃度の化合物2(M2)とPLK1 kinase inhibitorであるBI2536を混合して処理したとき、
図10に示されたように、化合物2(M2)の反応性と共にBI2536の協力的癌細胞抑制能を観察することができた。
【0093】
実施例4.hit compoundおよび誘導体化合物によるPLK1位置の変化確認、およびNCAPG2の染色体腕および動原体での染色程度比較
前記化合物を処理したとき、細胞内部でのPLK1位置の変化があるかを確認するために、中心体に位置するr-tubulinとPLK1、染色体(DAPI)の相互位置関係を確認した。
【0094】
図11に示されたように、細胞が分裂する中間段階に、PLK1は、鮮明に中心体と染色体の中間kinetochore(動原体)にのみ正しく位置することが分かった(
図11のControl)。しかしながら、化合物2(M2)の処理時には、中心体に位置するr-tubulinも弱く染色され、PLK1も明確な位置を確認しにくい程に正常な所に位置することが難しくなったことを見ることができた(
図11のM2)。
【0095】
これに対し、BI2536処理によっては、PLK1やr-tubulin自体の位置には比較的大きく差異がないよう見えるが、その活性の非正常化により非正常的な染色体分離異常を見ることができた(
図11のBI2536)。
【0096】
また、
図12に示すように、PLK1の動原体でのPBD結合タンパク質であるNCAPG2の染色体腕および動原体での染色程度が、対照群(
図12のControl)に比べて化合物2(M2)を50uMの濃度で24時間の間処理したHEK293細胞株(
図12のM2)で減少することを確認することができた。
【0097】
実施例5.hit compoundおよび誘導体化合物が細胞周期に及ぼす影響確認
前記化合物2(M2)を処理したとき、細胞周期に及ぼす影響を確認するために、フローサイトメトリー装備を利用した。前記化合物2(M2)を肝癌細胞株の1つのSNU-449細胞に1日および3日後、それぞれ20、40、および80μMの濃度で処理し、さらに2日後、harvestした。
【0098】
また、細胞分裂中期に滞っている細胞のみを特異的に染色できるphospho histone H3(Ser10)抗体を利用してより特異的に細胞分裂中期に止まっている細胞群集を染色しようとした。陽性対照群としては、PLK1 kinase inhibitorと知られたBI2536を20nM処理して、細胞分裂中期の細胞およびG2/M期増加を見るために使用した。
【0099】
実験結果、
図13に示すように、前記化合物2(M2)を処理した場合、CTに比べてphospho histone H3陽性である細胞の比率が減少し、これは、BI 2536を処理したとき、その比率が増加することとは相反する結果であった。
【0100】
また、細胞周期も、前記化合物2(M2)を処理した場合、処理したすべての濃度で染色体の数が多倍体である細胞の比率が増えなかった反面、BI 2536を処理した場合、多倍体細胞の比率が顕著に増えたことが分かった(
図13)。これを通じて、前記化合物2(M2)は、BI2536とは異なる方式で細胞の成長および死に影響を及ぼすことが分かり、多倍体である細胞の比率が増加しないことを通じて、細胞分裂周期に入る前に細胞の成長を抑制して、多倍体細胞の比率が増加しないことが分かった。
【0101】
前記結果を通じて、前記実施例1および2を通じて発掘したPLK1のPBDドメインに結合する化合物が実際に肝癌、乳癌、血液癌、子宮頸癌、および前立腺癌細胞の成長を効率的に阻害することを確認し、相対的に正常細胞の成長阻害効果は相対的に少ないことを確認することができた。
【0102】
また、前記化合物が前記癌細胞で正常な細胞分裂過程に関与するPLK1の抑制剤としてリン酸化活性と相異に作用することを確認し、PBD targerting Hit物質は、PLK1自体の細胞内正常な位置を確保しないようにして、その正確なpartnerの位置も不適切になることによって、細胞分裂期以前の段階で細胞の成長進行を抑制する効果を示すことを確認した。
【0103】
実施例6.M2処理後、細胞生存能変化確認
培養培地が添加された96ウェルマイクロタイトプレートで肝細胞癌腫細胞株であるHEPG2細胞は、hit compoundの濃度ごとに4~6コピーでプレーティングされた。DMSOに溶解したhit compoundは、実験設計によって翌日添加し、シーディング(seeding)された細胞数は、細胞対照群で処理したプロトコルの最終日に80%に達した細胞密度により決定された。細胞シーディング24時間後、細胞に多様な濃度のhit compound(M2およびBI2536)を処理し、1次処理48時間後、培地を吸引した後、2次処理した。48時間後、37℃で30分間、2.5μM Hoechst 33342染色を通じて細胞核を視覚化した後、培地を吸引し、新しい培地で洗浄した。CytationTM 3(BioTek、USA)を使用してプレートを読み取りし、細胞生存力を分析し、結果は、対照群処理と比較してhit compound処理後、生存細胞の相対的百分率で表示す。
【0104】
その結果、
図14aおよび
図14bに示されたように、M2およびBI2536を処理した濃度が高いほど相対的に細胞生存率が減少することを確認した。
【0105】
実施例7.M2処理後、apoptosisによる細胞死
M2に露出した細胞死形態を分析するために、肝細胞癌腫細胞株であるHEPG2細胞を20または100μMのM2および20または100nMのBI2536で3日間処理した。細胞死は、annexin V-fluorescein isothiocyanate(annexin V-FITC)と壊死性およびapoptosis細胞のpropidium iodide(PI)染色により検出された。まず、細胞を収穫し、PBSで1回洗浄した。その後、細胞をAnnexin V(BD、51-65874X)およびPI(BD、51-66211E)4μlが含まれた100μlの結合緩衝液に再懸濁した。細胞を暗所で37℃で15分間染色した後、FACSan(BD、San Jose、CA)を使用して細胞を分析した。データは、CELLQuestソフトウェア(BD)を使用して分析した。
【0106】
その結果、
図15aに示されたように、M2およびBI2536処理群の両方でapoptosis細胞が増加し、
図15bに示されたように、細胞死は、M2およびBI2536処理群の両方で用量依存的に増加した。
【0107】
実施例8.hit compound誘導体化合物の肝癌xenograft modelでの癌成長阻害能分析(化合物4毒性テスト)
化合物4(M21)を300μlのPBSに希釈して、それぞれマウス体重当たり1mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kgで週3回腹腔注射し、対照群は、300 μlのPBSにDMSO希釈して3%で腹腔注射した。2週後にマウスを犠牲にして、肺、心臓、肝、腎臓、脾臓および皮膚を摘出してホルマリン溶液に固定した。固定した組織に対する組織病理学的分析で別途の急性毒性による変化は観察されなかった(
図16)。
【0108】
一方、肝細胞癌腫細胞株であるHepG2細胞を免疫不全マウス(Balb/c-nu)の皮下脂肪層に5x106細胞数で注入してxenograftモデルを作った。3週後、化合物4(M21)および化合物2(M2)を300μlのPBSに希釈してそれぞれ5mg/kgおよび10mg/kgで週5回腹腔注射し、対照群は、300μlのPBSにDMSOを希釈して3%で腹腔注射した。
【0109】
腫瘍のサイズとマウス体重を週3回測定してその結果を
図15に示す。物質投与12日後(総投与10回投与)にマウスを犠牲にした。腫瘍を摘出して重さを測定し、ホルマリン溶液に固定および凍結をした。
【0110】
図17および
図18に示されたように、摘出された癌生成組織の重さは、対照群に比べて前記化合物を処理したときに減少することを観察することができた。
【0111】
一方、
図19に示されたように、組織でPLK1自らの発現差異が顕著ではないが、細胞分裂期中の細胞数は減少することが分かった。
【0112】
実施例9.肝癌orthotopic xenograft modelでの癌成長阻害能分析(HepG2細胞株)
肝細胞癌腫細胞株であるHepG2を5×106でBalB/c Nude miceに背中皮膚に注入し、3週程度後、十分に癌組織が形成されると、これを摘出して、1mm3で一定に切って、1cm以内で腹部を切除し、肝の右側内側葉(right median lobe)に移植した。
【0113】
HCC細胞に対する本願の試験管内実験に基づいてM2 9.1mg/kgとBI2536 1mg/kgの服用量を選択した。細胞注入後、7日から投薬が始まり、最も高い濃度の薬物に対するDMSOの同等な量を各実験に対して溶媒対照群として使用した。各薬物は、5回/週を基準として総19回注入された。
【0114】
その結果、
図20aに示されたように、腫瘍細胞成長は、M2およびBI2536により抑制され、
図20bに示されたように、M2およびBI2536が、いずれも、成長阻害指数により計算されたHCC異種移植進行を抑制した。また、
図20cに示されたように、組織学的染色は、M2処理マウスで類似分裂指数が対照群と比較して減少することが示され、
図20dのように減少した類似分裂指数は、M2処理後、細胞周期分析と一貫性を示し、M2が試験管内および生体内でBI2536と異なる作用機序を有することが確認された。
【0115】
同じ肝癌細胞株を実験方法を異にしてもう一度実験した。HepG2を5×106でBalB/c Nude miceに背中に注入し、3週程度後、十分に癌組織が形成されると、これを摘出して1mm3で一定に切って1cm以内で腹部を切除し、肝の右側内側葉(right median lobe)に移植した。
【0116】
前記方法で20匹のBalB/C Nude miceに肝癌組織を移植後、10日程度後にMRI映像に小さい点で確認されて、肝癌がよく保持された鼠類を対象に(約50-60%)3個のグループに分け(
図21a参照)、対照群(control)と5mg/kg、25mg/kgでhit(M2)物質を1.5%未満のDMSOを溶媒(vehicle)として腹腔に2日に1回ずつ注射し、1週間に1回ずつMRI映像で組織が一定に成長する鼠類を選定(follow up)した。そして、早く成長した癌組織が1cm以下である状態でマウスを犠牲にして、癌組織を観察した(3週、10回の処置)。
【0117】
その結果、
図21b~
図21cに示されたように、M2の投与用量が増加するにつれて癌組織の重さと体積が顕著に減少して、M2の優れた抗癌効果を確認することができた。
【0118】
実施例10.ヒト肝癌PDXを利用したorthotopic xenograft modelでの癌成長阻害能分析
ヒト肝癌から分離した癌組織をBalB/C Nude miceの皮膚組織に移植して癌組織に成長して、PDXモデルで確立した組織を利用して1mm
3で一定に切って、1cm以内で腹部を切除し、肝の右側内側葉(right median lobe)に移植した。前記方法で20匹のBalB/C Nude miceに肝癌組織を移植後、10日程度後に、MRI映像に小さい点で確認されて、肝癌がよく保持された鼠類を対象に3つのグループに分け(
図22a、
図22bおよび
図22c参照)、溶媒対照群(control、DMSO)と40mg/kgでhit(M2)物質とBI2536 4mg/kgを1.5%未満のDMSOを溶媒(vehicle)として腹腔に2日に1回ずつ注射し、1週間に1回ずつMRI映像で組織が一定に成長する鼠類を選定(follow up)した。そして、早く成長した癌組織が1cm以下でマウスを犠牲にして、癌組織を観察した(3週、11回の処置)。
【0119】
その結果、
図22b~
図22dに示されたように、M2の投与によって癌組織の重さと体積が顕著に減少して、M2の優れた抗癌効果を確認することができた。
【0120】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の前記化合物は、PLK1のPBDに選択的に結合することによって、従来のkinaseドメインを標的とするATP結合部位阻害剤と比較して高い選択性および結合親和性を有しながらも、低い毒性を有するという利点を有する。したがって、多様な癌細胞の成長を阻害する抗癌剤として有用に用いられ得、単独投与以外にも、既存の抗癌剤との併用投与を通したシナジー効果を期待することができるので、医薬産業分野だけでなく、健康機能性食品産業分野にも広く用いられ得る。