IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 白川 正月の特許一覧 ▶ 日洋サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図1
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図2
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図3
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図4
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図5
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図6
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図7
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図8
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図9
  • 特許-植物の栽培方法及び植物の栽培装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】植物の栽培方法及び植物の栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/10 20180101AFI20230425BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20230425BHJP
【FI】
A01G24/10
A01G31/00 601B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021538584
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030871
(87)【国際公開番号】W WO2021024375
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518194497
【氏名又は名称】白川 正月
(73)【特許権者】
【識別番号】518194501
【氏名又は名称】日洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】白川 正月
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230039(WO,A1)
【文献】特許第2926207(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/013346(WO,A1)
【文献】特許第5470501(JP,B2)
【文献】特開昭50-68821(JP,A)
【文献】特公平3-1937(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/10
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に置かれた帯状のガターにサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターから前記養液循環槽に返送する植物の栽培方法において、前記培地は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有し、
前記濾過布は、少なくとも、前記ガター側から不織布、プラスチックネット、不織布の順に重ね合わされて形成され
前記サンゴ砂礫の直径は0.5~10mmの範囲であり、
前記サンゴ砂礫の長さは1~50mm範囲である
ことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】
前記培地に設置した水分計が示す水分量の低下、もしくはタイマによる指示で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用する
請求項1に記載の植物の栽培方法。
【請求項3】
1日毎に所定回数以下の割合で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用する
請求項2に記載の植物の栽培方法。
【請求項4】
水平に置かれた帯状のガターにサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターの端部から前記養液循環槽に返送する植物の栽培装置であって、
前記濾過布は、少なくとも、前記ガター側から不織布、プラスチックネット、不織布の順に重ね合わされて形成されており、
前記養液循環槽と、液肥調整槽と、第1の原料液を蓄える第1の原料液槽と、第2の原料液を蓄える第2の原料液槽と、液肥混合器と、液肥ポンプと、液肥移送ポンプと、潅水ポンプと、前記養液循環槽内の液肥のレベルを検出するレベルセンサと、電磁弁とで構成された養液装置を備え、
前記培地は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有し、
前記養液装置は、前記養液循環槽内の液肥が一定量消費されたら、前記レベルセンサの指示により、前記液肥調整槽から前記液肥移送ポンプにて、前記養液循環槽に肥液を適正量供給し、前記液肥調整槽の水位が低下したら、前記液肥調整槽に水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽の液肥を適正EC濃度にするため、前記液肥ポンプ及び前記液肥混合器を用いて前記第1の原料液と前記第2の原料液を混合して、前記液肥調整槽に蓄えられた液肥が適正EC濃度になるまで供給する養液制御を行い
前記サンゴ砂礫の直径は0.5~10mmの範囲であり、
前記サンゴ砂礫の長さは1~50mm範囲である
植物の栽培装置。
【請求項5】
前記潅水チューブに流れる液肥の流量を検出する流量センサを更に備え、前記養液装置に設置された制御装置にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽から前記培地に給液される液肥の供給量を前記流量センサの検出結果に基づいて表示する
請求項4に記載の植物の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト等の植物の栽培する植物の栽培方法及び植物の栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トマトの栽培方法には、温床に苗を仕立ててこれを露地に植え付ける土耕から、植物工場的な生産が可能な水耕まであり、例えば水耕として養液栽培方法が提案されている。
【0003】
この養液栽培方法として、特許文献1には、水平断面形状が略D字形に形成される溝を長手方向に2列に配列してなる栽培用トレイの前記各溝に、250ml前後の培地(土、ヤシガラ、ロックウール他)を入れ、トマトの苗を植付けた各培地に潅水養液を供給する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の技術において、従来の培地(土、ヤシガラ、ロックウール他)は、比較的保水性がよいため、潅水養液を植物が必要な潅水量より10~20%多めに潅水して、余剰液は雑菌が繁殖しやすいので廃液として処分するのが一般的であった。また弱酸性土壌の方が植物の生育にはよいとされているため潅水養液は弱酸性のPH調整を行っていた。
【0005】
また、特許文献2には、土壌を用いずに有機肥料によって植物を栽培しうる固形培地として、橄欖岩、サンゴ砂及びケイ砂からなる砂礫混合培地を用いる技術が開示されている。この技術における砂礫混合培地は、サンゴ砂、橄欖岩、ケイ砂の混合比が、サンゴ砂3に対し、橄欖岩が1~3、ケイ砂が1~9となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-306849号公報
【文献】特許第4049370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、潅水養液の余剰液は雑菌が繁殖しやすいので廃液として処分することになり、植物の栽培にかかる費用を低減することが困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、砂礫混合培地はある程度の水を保水できた方がよいという考え方から、保水のためにサンゴ砂だけでなく他の2成分を混合しているが、これら他の2成分が比較的多く配合されるため、サンゴ砂の混合率が60%以下となり、一方で水と有機肥料及び無機成分供給資材から溶け出した成分による液肥のアルカリ性が低かったため、液肥の雑菌の繁殖しやすく、液肥を廃液として処分することになり、植物の栽培にかかる費用を低減することが困難であった。
【0009】
本発明は、植物の栽培にかかる費用を低減することができる植物の栽培方法及び植物の栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点における植物の栽培方法は、容器の内側にサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地を敷き詰め、前記培地に植物を根付かせ、前記培地に液肥を給液する植物の栽培方法において、前記培地は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有するものである。
【0011】
好適には、請求項1に記載の植物の栽培方法は、植物としてトマトを用いる。
請求項2に記載の発明の植物の栽培方法は、水平に置かれた帯状のガターにサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターから前記養液循環槽に返送する植物の栽培方法において、前記培地は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有する。
【0012】
請求項3に記載の発明の植物の栽培方法は、請求項2に記載の植物の栽培方法において、前記培地に設置した水分計が示す水分量の低下、もしくはタイマによる指示で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用する。
【0013】
請求項4に記載の発明の植物の栽培方法は、1日毎に所定回数以下の割合で、前記養液循環槽に返送された液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液することで再利用する。
【0014】
請求項5に記載の発明の植物の栽培装置は、水平に置かれた帯状のガターにサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地を敷き詰め、前記培地に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地の上部に潅水チューブを配置し、養液循環槽に蓄えられた液肥を、前記潅水チューブを介して前記培地に給液し、当該給液により余剰となった液肥を、前記ガターに内貼りされた濾過布を通して前記ガターに形成された排液溝に流し、当該排液溝に流れる液肥を前記ガターの端部から前記養液循環槽に返送する植物の栽培装置であって、前記養液循環槽と、液肥調整槽と、第1の原料液を蓄える第1の原料液槽と、第2の原料液を蓄える第2の原料液槽と、液肥混合器と、液肥ポンプと、液肥移送ポンプと、潅水ポンプと、前記養液循環槽内の液肥のレベルを検出するレベルセンサと、電磁弁とで構成された養液装置を備え、前記培地は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有し、前記養液装置は、前記養液循環槽内の液肥が一定量消費されたら、前記レベルセンサの指示により、前記液肥調整槽から前記液肥移送ポンプにて、前記養液循環槽に肥液を適正量供給し、前記液肥調整槽の水位が低下したら、前記液肥調整槽に水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽の液肥を適正EC濃度にするため、前記液肥ポンプ及び前記液肥混合器を用いて前記第1の原料液と前記第2の原料液を混合して、前記液肥調整槽に蓄えられた液肥が適正EC濃度になるまで供給する養液制御を行う。
【0015】
請求項6に記載の発明の植物の栽培装置は、請求項4に記載の植物の栽培装置において、前記潅水チューブに流れる液肥の流量を検出する流量センサを更に備え、前記養液装置に設置された制御装置にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽から前記培地に給液される液肥の供給量を前記流量センサの検出結果に基づいて表示する。
【発明の効果】
【0016】
本発明における植物の栽培方法及び植物の栽培装置によって植物の栽培にかかる費用を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法の概要を示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法に用いられるサンゴ砂礫を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法に用いられるガター及び濾過布を示す斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置を用いた施設全体を示す説明図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置のブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の養液装置を示す平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の養液装置を示す第1の側面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の養液装置を示す第2の側面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の栽培ベッド及び設置台を示す第1の断面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置の栽培ベッド及び設置台を示す第2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステムの概要を示す説明図である。
図1において、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法では、植物の栽培装置1を構成する容器(ガター2)の内側にサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地3を敷き詰め、前記培地3に植物(トマト10)を根付かせ、前記培地3に液肥4を給液する植物の栽培方法において、前記培地3は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有するものである。
【0019】
さらに詳しく説明すると、図1に示す植物の栽培方法は、水平に置かれた帯状のガター2にサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地3を敷き詰め、前記培地3にトマト10を一定間隔で根付かせ、前記培地3の上部に潅水チューブ5を配置し、養液循環槽6に蓄えられた液肥4を、前記潅水チューブ5を介して、潅水チューブ5に5cm間隔で形成された穴5aから前記培地3に給液し、当該給液により余剰となった液肥4を、前記ガター2に内貼りされた濾過布7を通して前記ガター2に形成された排液溝8に流し、当該排液溝8に流れる液肥4を前記ガター2の端部から排液パイプ9を介して前記養液循環槽6に返送する植物の栽培方法において、前記培地3は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有する。
【0020】
ここで、サンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分の組合せは、サンゴ砂礫と不可避成分との組み合わせが最適であり、サンゴ砂礫以外の成分は不要であるが、一定の砂などは、一定の範囲であれば、悪影響を及ぼさないため、培地3には、サンゴ砂礫以外の成分を30%程度含んでいてもよい。
【0021】
潅水ポンプ11は、タイマ12による指示で、前記養液循環槽6に返送された液肥4を、前記潅水チューブ5を介して前記培地3に給液することで再利用する。
【0022】
本発明の第1の実施形態では、気温が28℃程度の場合、潅水ポンプ11による給液の回数は、1日7回が最大の回数となり、潅水ポンプ11による給液の量は、トマト10の一株当たりの1日の量を500mlに設定します。しかしながら、潅水ポンプ11による給液の回数及び量は、トマト10の品種や目標とする糖度等により、各種調整可能である。
【0023】
従って、本発明の第1の実施形態では、1日毎に所定回数以下の割合で、前記養液循環槽6に返送された液肥を、前記潅水チューブ5を介して前記培地に給液することで再利用することになります。
また、前記培地3及び潅水チューブ5の上側は、トマト10の茎を通過する孔が形成された遮光シート(図9の遮光シート76)によって覆われている。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法に用いられるサンゴ砂礫を示す斜視図であり、図2(a)にサンゴ砂礫の粒の第1の種類、図2(b)にサンゴ砂礫の粒の第2の種類、図2(c)にサンゴ砂礫の粒の第3の種類を示している。
【0025】
図2(a)に示す第1の種類のサンゴ砂礫の粒111は、比較的大きな孔による多孔質のサンゴを砕いたものであり、円柱形状で、表面に多数の比較的大きな孔112が形成されている。粒111の直径はD1、粒111の長さはL1になっている。
【0026】
図2(b)に示す第1の種類のサンゴ砂礫の粒121は、微細な孔による多孔質のサンゴを砕いたものであり、円柱形状で、表面に多数の微細な孔122が形成されている。粒121の直径はD2、粒121の長さはL2になっている。
【0027】
図2(c)に示す第1の種類のサンゴ砂礫の粒131は、表面の微細な孔と中心の空洞による多孔質のサンゴを砕いたものであり、円柱形状で、表面に多数の微細な孔132が形成されているとともに、軸方向に空洞133が形成されている。粒131の直径はD3、粒131の長さはL3になっている。
【0028】
サンゴ砂礫の粒の直径D1、D2、D3は、0.5~10mmの範囲が適用可能で、理想的には1~3mmとなります。
サンゴ砂礫の粒の長さL1、L2、L3は、1~50mmの範囲が適用可能で、理想的には2~10mmとなります。
【0029】
サンゴ砂礫の粒は、細かいと、アルカリになりすぎる、また、保水力が高くなりすぎる、粗いと、保水力が低くなりすぎる等の問題があります。
【0030】
従って、サンゴ砂礫の粒は、いずれも、パウダーの様に細かくしすぎず、枝を折っていく程度の長さにしている。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法に用いられるガター及び濾過布の一部を切欠いて示す斜視図である。
図3において、ガター2は、発泡スチロールを金型によって上面が開放した帯状の容器の形状に形成したものである。
【0032】
ガター2に内貼りされた濾過布7は、下から順に、水耕用黒ポリプラスチックシート21、不織布22、プラスチックネット23及び不織布24を重ね合わせたものである。水耕用黒ポリプラスチックシート21、不織布22及び不織布24は、ガター2の上側全体を覆うように形成されている。プラスチックネット23は、ガター2の内側底面と同じサイズに形成されている。
【0033】
ここで、従来の培地として一般的に用いられるロックウールでは、毎年培地の交換が必要になり、産業廃棄物として費用を要します。
近年の培地として普及してきたヤシガラ培地では、有機質で経年変化を生じるため、1~2年で培地の交換が必要になります。
【0034】
従来の高糖度トマト栽培では、液肥(水)を極力少なくして、果実が吸収する水分を少なくして糖度を上げるため、果実の生産量が少なくなります。
これらの問題に対して、本発明の第1の実施形態で用いられるサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地3では、経年変化しないアルカリ性で雑菌が繁殖しづらい特性を有しているので、交換の必要がありません。
【0035】
また、サンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地3では、雑菌が繁殖しづらい特性により、高糖度トマト栽培において、極端な潅水制限を行う必要がないため、生産性を向上することができます。
【0036】
また、第1の実施形態に係る植物の栽培方法では、液肥4の排液をリサイクル利用するクローズシステムであるとともに、培地3の雑菌が繁殖しづらい特性により、排液用の殺菌を行う設備を必要としません。
【0037】
本発明の第1の実施形態では、培地3におけるサンゴ砂礫以外の成分は、砂等の保水を目的としない成分を用いています。従って、本発明の第1の実施形態では、培地3の保水できない量が9割近くになり、培地3における細菌の繁殖を抑制できます。これにより、従来の養液栽培方法となり、培地培地3を破棄する必要がなくなります。
【0038】
尚、本発明の第1の実施形態では、培地3は、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有することで、培地3の保水できない量が9割近くになり、液肥4の循環が必要になっております。
【0039】
従来の養液栽培方法(その他の通常の水耕栽培)等では、液肥のアルカリ性が低かったため、液肥の雑菌の繁殖が問題となっていいましたが、本発明の第1の実施形態では、培地3におけるサンゴ砂礫により、液肥4のアルカリ性が高くなるので、液肥の雑菌の繁殖を抑制することができます。
【0040】
また、本発明の第1の実施形態で用いられるサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成された培地3では、カルシウムやマグネシウム等の多種類(70種類)の必須ミネラルを豊富に含有しているため、生育時に微量要素としてトマトに吸収されて、非常に糖度が高いトマト(糖度8~12度)が生産されるため、市場でニーズの高い高糖度トマトを高能率で生産できます。
【0041】
従って、本発明の第1の実施形態に係る植物の栽培方法によれば、植物(トマト)の栽培にかかる費用を低減することが可能になります。
【0042】
<第2の実施形態>
図4乃至図10は本発明の第2の実施形態に係り、図4は植物の栽培装置を用いた施設全体を示す説明図、図5は植物の栽培装置のブロック図、図6は植物の栽培装置の養液装置を示す平面図、図7は養液装置を示す第1の側面図、図8は養液装置を示す第2の側面図、図9は植物の栽培装置のガター及び周辺部を示す第1の断面図、図10は植物の栽培装置のガター及び周辺部を示す第2の断面図である。
【0043】
ここで、第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは、植物の栽培装置34、35、37(図4参照)において、前記培地3に設置した水分計(検出センサ71、72、図5参照)が示す水分量の低下で、養液循環槽6(図5参照)に返送された液肥4(図5参照)を、潅水チューブ5(図5参照)を介して培地3(図9参照)に給液することである。
【0044】
図4において、トマトの栽培施設(プラント)30では、三列に並べられた第1乃至第3の栽培棟31、32、33を有している。
【0045】
第1の栽培棟31は、一つの植物の栽培装置34から構成されている。植物の栽培装置34は、一つの養液装置41と、図1に示した複数のガター2、培地3、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9とから構成されている。
【0046】
図4において、第2の栽培棟32は、一つの植物の栽培装置35と、集出荷室36とから構成されている。植物の栽培装置35は、一つの養液装置41と、図1に示した複数のガター2、培地3、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9とから構成されている。
【0047】
図4において、第3の栽培棟33は、一つの植物の栽培装置37から構成されている。植物の栽培装置37は、一つの養液装置41と、図1に示した複数のガター2、培地3、潅水チューブ5、濾過布7及び排液パイプ9とから構成されている。
【0048】
植物の栽培装置34、35、37は、水平に置かれた帯状のガター2にサンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成され、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有する培地3(図9参照)を敷き詰め、前記培地3に植物を一定間隔で根付かせ、前記培地3の上部に潅水チューブ5(図5参照)を配置し、養液循環槽51(図5参照)に蓄えられた液肥4(図5参照)を、前記潅水チューブ5を介して前記培地3に給液し、当該給液により余剰となった液肥4を、前記ガター2に内貼りされた濾過布7(図9参照)を通して前記ガター2に形成された排液溝8(図9参照)に流し、当該排液溝8に流れる液肥4を前記ガター2の端部から前記養液循環槽51(図5参照)に返送する。
【0049】
以下、植物の栽培装置34について詳細に説明する。
図5において、植物の栽培装置34の栽培ベッド42、43は、図1に示したガター2及び濾過布7を組み合わせたものである。
【0050】
図5において、養液装置41は、養液循環槽51と、液肥調整槽52と、A液(第1の原料液)を蓄えるA液槽(第1の原料液槽)53と、B液(第2の原料液)を蓄えるB液槽(第2の原料液槽)54と、液肥混合器55と、液肥ポンプ56と、液肥移送ポンプ57と、撹拌ポンプ58と、潅水ポンプ59、60と、排液ポンプ61と、前記養液循環槽51内の液肥4のレベルを検出するレベルセンサ62と、液肥調整槽52内の液肥4のレベルを検出するレベルセンサ63と、ECセンサ(肥料濃度センサ)64と、前記潅水チューブ5に流れる液肥4の流量を検出する流量センサ65、66と、前記流量センサ65、66の検出結果をそれぞれ表示する表示装置67、68と、電磁弁69と、制御盤70とで構成されている。
【0051】
このCセンサ(肥料濃度センサ)64は液肥調整槽52内の濃度を測定している。
さらに、液肥調整槽52から、液肥循環槽51への流量を測定して、その消費量を測定することが好ましい。これによって、消費量などを測定することが可能になるからである。
【0052】
栽培ベッド42、43には、培地3の水分量を検出する検出センサ71、72がそれぞれ設けられている。
【0053】
図6に示すように、養液装置41において、養液循環槽51と、液肥調整槽52と、A液槽53と、B液槽54は、一つの長四角形の枠50内に区分されて設けられている。A液槽53と、B液槽54の間には、液肥混合器55のダイヤフラムポンプ73が設けられている。
【0054】
図7図6のC方向から見た養液装置を示している。
図7に示すように、制御盤70は、養液循環槽51の上側に取り付けられている。
【0055】
図8図6のD方向から見た養液装置を示している。
図8に示すように、潅水チューブ5には、40メッシュによるディスクフィルタ74と、120メッシュによるディスクフィルタ75が設けられている。
図5において、前記養液装置41は、前記養液循環槽51内の液肥4が一定量消費されたら、前記レベルセンサ62の指示により、前記液肥調整槽52から前記液肥移送ポンプ57にて、前記養液循環槽51に肥液を適正量供給し、前記液肥調整槽52の水位が低下したら、前記液肥調整槽52に水を所定位置まで供給し、前記液肥調整槽52の液肥4を適正EC濃度にするため、前記液肥ポンプ56及び前記液肥混合器55を用いて前記A液(第1の原料液)と前記B液(第2の原料液)を混合して、前記液肥調整槽52に蓄えられた液肥4が適正EC濃度になるまで供給する。
【0056】
植物の栽培装置34は、前記養液装置41に設置された制御装置(制御盤70)にて、前記養液制御を行い、前記養液循環槽51から前記培地3に給液される液肥4の供給量を前記流量センサ65、66の検出結果に基づいて表示する。
【0057】
図9に示すように、植物の栽培装置34の栽培ベッド42は、設置台80に載置されている。
設置台80は、板状の天板81と、天板81を支える複数の脚部82、83から構成されている。
【0058】
脚部82、83は伸縮可能になっている。図9に示す脚部82、83を最も短くした状態(下限ベット高)では、天板81、複数の脚部82、83及び地面84で囲まれる領域Sの高さ及び横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態になり、天板81及び栽培ベッド42が最も低い状態になる。
【0059】
図10に示すように、脚部82、83を最も長くした状態(上限ベット高)では、天板81、脚部82、83及び地面で囲まれる領域Sの横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態を保ち、領域Sの高さが温風ダクト90の直径の約1.5倍となり、領域Sの横幅が温風ダクト90の直径より少し長い状態を保ち、天板81及び栽培ベッド42が最も高い状態になる。
【0060】
このような領域Sの調整を行うことで、栽培ベッド42の温度の最適化を図ることができる。
第2の栽培棟32の栽培装置35は、栽培ベッド42及びその周辺部のサイズが第1の栽培棟31の栽培装置34と異なるだけで、残り構成は栽培装置34と同様になっている。
第3の栽培棟33の栽培装置37は、栽培棟31の栽培装置34と同様になっている。
【0061】
本発明の第2の実施形態に係る植物の栽培装置34、35、37によれば、サンゴ砂礫とサンゴ砂礫以外の成分とで形成され、サンゴ砂礫を70%以上の割合で含有する培地3を用いることで、第1の実施形態と同様の効果が得られ、植物(トマト)の栽培にかかる費用を低減することが可能になる。
【0062】
培地は、主としてサンゴが70%以上の割合で用いられていれば足りる。もっとも、サンゴが多い方が好適ではあると現在のところ考えている。
他の成分としては、砂、軽石、礫等があり得る。
この他の成分は、アルカリ性質のものがより好適である。
その他の成分としては、貝殻(ホタテ等)であってもよい。場合によっては、貝殻のみであってもよい。さらにいうと、液肥4を化学的にアルカリ性にすることも可能であると考えている。
【0063】
ガター2を流れる液肥4はガター2の端部から抜く実施形態を記載していたが、途中から順次排出する排出口を設けて排出することも可能である。その場合、傾斜をつけない、傾斜が緩くてもいいという利点がある。特に、ガター2が長くなる場合には、効果的である。
また、潅水ポンプ59、60の流量を観測して、どの程度使用量があるか計測すると好適である。
同様に、液肥移送ポンプ57の流量を観測すると好適である。
【0064】
本発明の、構造、システム、プログラム、材料、各部材の連結、科学物質、などは、本発明の要旨を変更しない範囲で、様々に変更可能である。
材質も、金属、プラスチック、FRP、木材、コンクリート等を自由に選択することが可能である。
【0065】
例えば、2つ以上の部材を1つにすることも可能であるし、逆に、1つの部材を2つ以上の別の部材から構成して接続することも可能である。
【0066】
また、上記第1及び第2の実施形態は、あくまでも、現在のところの最良またはそれに近い形態の2つにすぎない。
また、制御などは、より上位の制御部分によって制御されても良いし、より末端の制御部分によって制御されても良い。
また、制御の順序なども、所定の効果を有するのであれば、適宜変更可能である。
【0067】
<定義等>
本発明における栽培する植物としては、トマト以外にも、マンゴー、バナナ、メロン、パプリカ、ナス、キュウリ、イチゴ等、各種の野菜・果物に適用可能である。また、トマトの品種として、ミニトマト以外にも、フルーツルビー、シシリアンルージュ、桃太郎等に適用可能である。また、野菜、果物以外にも、穀物等の糖度が高い方がよい植物に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…植物の栽培装置
2…ガター
3…培地
4…液肥
5…潅水チューブ
6…養液循環槽
7…濾過布
10…トマト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10