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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ワーク搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021545071
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036093
(87)【国際公開番号】W WO2021049003
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】合津 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】森 雅彦
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012685(WO,A1)
【文献】特開2003-236786(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145576(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持したワークを移動させる駆動機構を備えた搬送ロボット本体と、
前記搬送ロボット本体に組み付けられ、油圧チャックによってワークを把持および解放するロボットハンドと、
前記油圧チャックに対する作動油の供給および排出を行う油圧機構と、
前記油圧機構の流路に設けられた油圧センサと、
前記搬送ロボット本体、前記ロボットハンドおよび前記油圧機構などの各駆動部を制御するものであり、前記油圧センサによって検出された前記作動油の油圧変化時間を基に前記油圧チャックの作動状態を判定するチャック判定部を備えた制御装置と、
を有し、
前記チャック判定部は、前記油圧チャックの作動時に変化する油圧が任意に設定された第1設定値から第2設定値に達するまでの時間を前記油圧変化時間として測定するものであるワーク搬送ロボット。
【請求項2】
前記チャック判定部は、前記油圧チャックがワークのない空クランプの作動時に、前記第1設定値から前記第2設定値に達するまでの前記油圧変化時間を基準時間として測定し、その基準時間を基にワークの把持判断を行うための閾値を算出する請求項1に記載のワーク搬送ロボット。
【請求項3】
前記チャック判定部は、前記基準時間の測定および前記閾値の算出をワークの把持毎に行う請求項2に記載のワーク搬送ロボット。
【請求項4】
前記ロボットハンドは、ワークを表裏両面で把持する第1油圧チャックと第2油圧チャックとを備え、前記第1油圧チャックと前記第2油圧チャックとが対称的な位置となる回転軸を介して前記搬送ロボット本体に軸支された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のワーク搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧チャックを備えたワーク搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク搬送ロボットは、各分野で使用され様々な構造のものが存在する。例えば下記特許文献1には、オートローダを構成するワーク搬送ロボットが開示されている。そのワーク搬送ロボットは、加工機械ラインを構成する各種作業機の間を行き来できるように、走行台の上に搭載された多関節ロボットアームであり、移動した先の相手側作業機とワークの受渡しを行うものである。同文献の多関節ロボットアームは、前腕部材と上腕部材とが関節機構を介して連結され、先端部にはロボットハンドが組み付けられている。前腕部材と上腕部材との屈伸によってロボットハンドの位置を調整することができ、そのロボットハンドは油圧チャックによってワークの把持および解放が可能になっている。
【0003】
こうしたワーク搬送ロボットは、ロボットハンドによるワークの掴み損ねや、掴んだワークを落下させてしまうことなどがある。そのような事態が生じた場合には、ワーク搬送ロボットの駆動を停止させ、作業者がワークの取り除きなどの作業を行わなければならない。そこで、ワーク搬送ロボットには、ワーククランプやアンクランプが適切に行われているか、ロボットハンドにおける把持状態の検出が求められる。下記特許文献2には、近接スイッチがハンド部に設けられ、ワークがクランプ又はアンクランプされたか否かを検出するための構成が開示されている。また、同文献には、クランプ機構を作動させるための油圧を検出する油圧センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2015/145576号公報
【文献】特開2014-226756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワーク搬送ロボットは、旋盤など工作機械の加工室内部に入り込んでワークの受渡しを行う。そのため、ロボットハンドに取り付けた近接スイッチは、ワークの加工によって発生した切屑や、加工時に噴射されたクーラントなどの影響を受け、誤検出を引き起こしてしまう可能性がある。従って、ロボットハンドに近接スイッチを取り付けるような構成は、チャックの正確な判定ができなくなることが懸念され、実際の使用は困難であった。こうしたことは近接スイッチに限らず、光電スイッチなど他の検出手段についても同じように起こり得る問題である。一方、油圧チャックを作動させる作動油の流量を測定した検出は、ロボットハンドの軸受部から油漏れが生じるため、正確なストローク確認ができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、油圧チャックにおけるワーク把持の判定を行うワーク搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様におけるワーク搬送ロボットは、把持したワークを移動させる駆動機構を備えた搬送ロボット本体と、前記搬送ロボット本体に組み付けられ、油圧チャックによってワークを把持および解放するロボットハンドと、前記油圧チャックに対する作動油の供給および排出を行う油圧機構と、前記油圧機構の流路に設けられた油圧センサと、前記搬送ロボット本体、前記ロボットハンドおよび前記油圧機構などの各駆動部を制御するものであり、前記油圧センサによって検出された前記作動油の油圧変化時間を基に前記油圧チャックの作動状態を判定するチャック判定部を備えた制御装置と、を有し、前記チャック判定部は、前記油圧チャックの作動時に変化する油圧が任意に設定された第1設定値から第2設定値に達するまでの時間を前記油圧変化時間として測定するものである

【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、チャック判定部が、油圧センサによって検出された作動油の油圧変化時間を基に油圧チャックの作動状態を判定するようにしたため、油圧チャックにおけるワーク把持の判定が可能なワーク搬送ロボットを、油圧センサを追加した改良によってコストを抑えて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ワーク搬送ロボットを示した斜視図である。
図2】ロボットハンドを備えた前腕部材を示した図である。
図3】ワーク搬送ロボットの制御システムを表すブロック図である。
図4】第1および第2油圧チャックの油圧回路を示した回路図である。
図5】ワークを把持する低温時の圧力変化を示したグラフである。
図6】ワークを把持する高温時の圧力変化を示したグラフである。
図7】チャック判定プログラムの流れを示したフローチャート図である。
図8】ワークの搬送時に実行されるチャック判定プログラムの流れを示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るワーク搬送ロボットの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、ワーク搬送ロボットを示した斜視図である。本実施形態のワーク搬送ロボットは、図示するワーク自動搬送機1を構成する多関節ロボットアーム2である。このワーク自動搬送機1は、加工機械ラインに組み込まれ、複数台ある工作機械など作業機の間を多関節ロボットアーム2が移動し、ワークの受渡しを行うものである。ワーク自動搬送機1は、その多関節ロボットアーム2が複数の相手側装置の間を行き来するための走行装置3に搭載されている。
【0011】
走行装置3は、不図示の工作機械を搭載したベース4の前面部に組み付けられている。ベース4の前面部に支持板11が固定され、その支持板11にラック12や2本のレール13が固定されている。走行台14にはレール13を掴んで摺動する走行スライドが固定され、ラック12に噛合したピニオン16を回転させる走行用モータ17が設けられている。そして、走行台14には旋回用モータ19が固定され、旋回テーブル18が水平面上を180°旋回するよう構成されている。
【0012】
多関節ロボットアーム2は、支持台21が旋回テーブル18上に固定され、その支持台21に対して上腕部22および前腕部23がサーボモータを備えた関節機構を介して連結されている。こうした多関節ロボットアーム2は、関節機構の駆動によって上腕部22と前腕部23とが折りたたまれて起立した走行状態と、図示するように上腕部22と前腕部23とが広がって伸びる作業状態とに形態が変化する。そして、前腕部23の先端にはロボットハンド25が設けられ、チャック爪の開閉動作によってワークの把持及び解放が可能になっている。
【0013】
図2は、ロボットハンド25を備えた前腕部23を示した図である。前腕部23は、左右一対の平行な前腕プレート31が横梁部材32,33によって平行に連結されたものであり、その前腕プレート31の間にロボットハンド25が組み付けられている。ロボットハンド25は、左右の回転支持部35によって前腕プレート31に回転自在に取り付けられ、一方の回転軸に設けられたプーリと、ハンド用モータ36に固定されたプーリとの間にベルト37が掛け渡されている。従って、ハンド用モータ36の駆動制御により、ロボットハンド25が回転して角度調整が行われる。
【0014】
ロボットハンド25は、図示する第1油圧チャック251と、その裏側に同じ構造の第2油圧チャック252(図1参照)が設けられている。第1および第2油圧チャック251,252は、ワークを掴むための3本のチャック爪41が等間隔で放射状に配置され、径方向にスライドするように装置本体42に組み付けられている。装置本体42の内部には、クランプ用ギヤにラックピストンを噛合させたチャック爪41の開閉機構が構成されている。そのため、供給および排出される作動油の油圧によってラックピストンが加圧方向に変位し、それに伴ってクランプ用ギヤが所定量回転することにより、3本のチャック爪41に対して同期した径方向の直線運動が与えられる。第1および第2油圧チャック251,252は、そうした3本のチャック爪41の開閉動作によってワークの把持および解放が行われる。
【0015】
図3は、ワーク自動搬送機1の制御システムを表すブロック図である。制御装置5は、CPU51のほかにROM52やRAM53、不揮発性メモリ54といった記憶装置などを備えたコンピュータを主体とするものであり、I/055を介して多関節ロボットアーム2や走行装置3、後述する油圧回路を構成する油圧機器60などの各駆動部に接続されている。また、制御装置5には作業者によるデータ入力および、操作画面や検出データなどの表示が可能なタッチパネル式の操作表示装置7が接続されている。
【0016】
制御装置5は、各種加工に関する加工プログラムやワークの種類、工具や治具に関するワーク加工情報などが記憶部に格納されている。特に、本実施形態は、第1および第2油圧チャック251,252に関する判定を行うチャック判定プログラム541が不揮発性メモリ54に格納されている。チャック判定プログラム541は、ロボットハンド25におけるワークの把持や解放の確認を行うためのものである。
【0017】
次に、図4は、第1および第2油圧チャック251,252の油圧回路を示した回路図である。ロボットハンド25は、工作機械に対してワークを供給する第1油圧チャック251と、その工作機械から加工後のワークを取り出す第2油圧チャック252とを有し、油圧シリンダ61,62に対する油圧回路が設けられている。油圧シリンダ61,62は、ラックピストンを挟んだ一対の加圧室に対し、作動油を供給および排出するクランプ側流路631,641とアンクランプ側流路632,642とが接続されている。クランプ側流路631,641とアンクランプ側流路632,642には、それぞれパイロットチェック弁65が接続されている。
【0018】
クランプ側流路631とアンクランプ側流路632には方向制御弁67が接続され、クランプ側流路641とアンクランプ側流路642には方向制御弁68が接続されている。方向制御弁67,68は、2ポジションの4ポート電磁弁であり、タンク71に接続された供給流路73や排出流路74と、クランプ側流路631,641またはアンクランプ側流路632,642との接続を切り換えるものである。そして、供給流路73にはタンク71内の作動油を送り出す油圧ポンプ72が接続され、その二次側には供給流路73と排出流路74を接続する戻り流路にリリーフ弁75が接続されている。また、クランプ側流路631,641に油圧センサ77,78が接続され、各流路内を流れる作動油の設定圧に従った検出信号が制御装置5へと送信されるようになっている。
【0019】
続いて、ワーク自動搬送機1は、走行用モータ17の駆動により走行台14がレール13に沿って移動し、対象となる工作機械前に多関節ロボットアーム2が位置決めされる。その多関節ロボットアーム2は、上腕部22および前腕部23が折りたたまれた状態で走行し、停止位置では図1に示すように形態を変化させ、先端部のロボットハンド25の位置や角度を調整し、工作機械の主軸チャックとの間でワークの受け渡しが行われる。具体的には、工作機械内に進入したロボットハンド25は、アンローダーチャックである第2油圧チャック252が主軸チャックから加工済みワークを受け取り、次にローダチャックである第1油圧チャック251が主軸チャックへと新たなワークを受け渡しする。
【0020】
そのときのロボットハンド25は、油圧ポンプ72の駆動によってタンク71内の作動油が供給流路73へと送られる。第1油圧チャック251(以下、第2油圧チャック252側も同じ)は、方向制御弁67の切り換えによって作動し、図示するように供給流路73がアンクランプ側流路632に接続された状態ではワークの解放が行われる。一方、方向制御弁67のポジションが切り換えられると、供給流路73がクランプ側流路631に接続され、油圧シリンダ61内のラックピストンが油圧を受けて変位し、3本のチャック爪41によってワークが把持される。
【0021】
第1油圧チャック251がワークを把持および解放する場合、チャック爪41の変位に伴って油圧シリンダ61に対する作動油の圧力が変化する。図5および図6は、ワークを把持する場合の圧力変化を示したグラフであり、図5には低温時の変化が、図6には高温時の変化がそれぞれ示されている。第1油圧チャック251は、チャック爪41の最大ストローク(空クランプ時の移動量)が12.5mmであり、図5に示すグラフC1が空クランプ時の圧力変化である。そして、グラフA1が1mmストローク時の圧力変化であり、グラフB1が7mmストローク時の圧力変化である。
【0022】
図から分かるように、作動油の圧力に関する油圧変化時間は、チャック爪41が作動開始から停止するまでのストロークの違いに対応している。本実施形態では、その油圧変化時間を基にワークの把持あるいは解放を判定するための構成が採られている。そして、方向制御弁67の切り換え動作に影響受けることなく油圧変化時間を正確に得るため、本実施形態では最小圧力と最大圧力との間に第1設定値P1と第2設定値P2とが任意に設定される。こうした第1設定値P1と第2設定値P2とは油圧センサ77によって検出され、その検出信号を受信する制御装置5では、例えば図5に示す各々の油圧変化時間t1a,t1b,t1cが計測される。
【0023】
チャック判定プログラム541は、第1油圧チャック251に対して供給される作動油の油圧変化時間tn(nは任意)を基に、ワーククランプと空クランプとを判定するものである。例えば、空クランプである12.5mmのストロークの際に第1設定値P1から第2設定値P2に達する時間と、ワークを把持する3~5mm程度のストロークの際に第1設定値P1から第2設定値P2に達する時間は、100~200msec程度の差が生じる。この時間差を基に、両ストロークを区別するための閾値が求められる。
【0024】
ところで、第1および第2油圧チャック251,252の作動油は、工場内温度や機内温度によって粘度が変化し、それが油圧変化時間tnに影響する。室温8℃の図5に対し、図6に示す室温33℃の場合には、同様のストロークの圧力変化がグラフA2,B2,C2となり、第1設定値P1から第2設定値P2までの油圧変化時間がt2a,t2b,t2cと短くなっている。油圧変化時間tnは、粘度が高い高温時に比べ、粘度が低くなる低温時の方が長くなってしまうことが分かる。そこで、作動油が季節や天候、稼働継続時間などによる温度変化に影響を受けるため、ワーククランプと空クランプとを判断する油圧変化時間の閾値は、油温の変化に対応させた適切な値を求めることが必要である。
【0025】
この点、本実施形態のチャック判定プログラム541では、ワークを把持する前に一旦ワークの無い状態で第1油圧チャック251に空クランプを行わせ、その時の油圧変化時間を基準時間tsとして閾値を算出するようにしている。具体的には、空クランプとワーククランプとを区別する閾値を、基準時間tsに対するパーセンテージを閾値決定パラメータとして算出するように構成されている。そして、その閾値決定パラメータの決定は、実験によってバラツキを含めた油温とストロークとの関係確認を基に行われる。
【0026】
例えば、本実施形態の閾値決定パラメータは75%である。そして、図5および図6の場合は、油圧変化時間t1c,t2cが基準時間tsに相当する。そのため、閾値は(ts×0.75)によって算出され、作動油の圧力が第1設定値P1に達してから(ts×0.75)時間までに第2設定値P2に達しない場合は、ワーククランプに失敗した空クランプと判断されるようになっている。
【0027】
ストロークの違いによる油圧変化時間の差は、把持したワークを解放するアンクランプでも同じように生じる。図7は、ワークを解放する場合の圧力変化を示したグラフであり、低温時(A)と高温時(B)とが表されている。ワーク解放のアンクランプでは、アンクランプ側流路632から油圧シリンダ61へ作動油が供給され、クランプ側流路631からは排出される。そのため、油圧センサ77によって検出される圧力は図示するように低下する。圧力の下降変化は、圧力上昇時と同様に、ストロークの違いが油圧変化時間に反映され、且つ、油圧変化時間は作動油の温度に影響を受けている。
【0028】
そこで、把持判定プログラム541では、ワークを把持および解放する際の油圧変化時間を基に、第1油圧チャック251におけるワークの把持および解放状況が判定される。図8は、ワーク搬送時に実行されるチャック判定プログラム541の流れを示したフローチャート図である。先ず、第1油圧チャック251がワークを工作機械へと搬送する場合、ストッカに用意されたワークを把持する直前で空クランプ時間の測定が行われる(S101)。例えば、空クランプ時間が図5に示す油圧変化時間t1cであるとしたならば、この値を基準時間tsとして閾値決定パラメータを乗算した値(ts×0.75)が、当該ワークを把持する際の閾値として一時記憶される(S102)。
【0029】
その後、第1油圧チャック251がワークの位置まで移動して把持が行われるが(S103)、第1油圧チャック251に対するワーククランプ指示に従い、クランプ側流路631内の油圧変化と、油圧変化時間の測定が開始される(S104)。そして、所定時間内に作動油の圧力が第1設定値P1に達したか否かの確認が行われる(S105)。第1設定値P1に達しない場合は(S105:NO)、方向制御弁67に作動不良などが生じているため、ワーク自動搬送機1の駆動を停止し、操作表示装置7に圧力未上昇を表示するなどのクランプ異常警報が実行され(S106)、本処理が終了する。
【0030】
一方、作動油の圧力が第1設定値P1に達した場合は(S105:YES)、次にワーククランプが行われた時間が閾値より短いか否かの確認が行われる(S107)。ワーククランプ時間は第2設定値P2に達するまでの時間で判断され、その時間が閾値として記憶された時間より長くなってしまった場合は(S107:NO)、ワーク把持に失敗した空クランプとして、ワーク自動搬送機1の駆動停止および、操作表示装置7にクランプ異常警報の表示などが行われ(S108)、本処理が終了する。一方、ワーククランプ時間が閾値より短い場合は(S107:YES)、ワークが正確に把持されたと判断され、ワークを把持した多関節ロボットアーム2における搬送が行われる(S109)。
【0031】
多関節ロボットアーム2は、例えば工作機械の主軸チャックとの間でワークの受け渡しが行われる。そこで、受け渡し位置へとワークが運ばれる間、クランプ側流路631内の油圧が第2設定値P2より大きい値を維持できているか否かについて確認が行われる(S110)。油圧が第2設定値P2を下回ってしまった場合は(S110:NO)、把持力低下によって第1油圧チャック251からワークが外れていると判断できるからである。その場合は、ワーク自動搬送機1の駆動停止および、操作表示装置7にクランプ異常警報の表示などが行われ(S111)、本処理が終了する。一方、油圧が第2設定値P2より大きければ(S110)、その値が維持できているか、ワークが受け渡し位置に到達するまで当該油圧確認が繰り返される(S110:YES,S112:NO)。
【0032】
次に、ワークが受け渡し位置に到達したところで(S112:YES)、アンクランプ指示により主軸チャックなどとのワーク受け渡しが行われる(S113)。このとき、アンクランプ指示に従い、クランプ側流路631内の油圧が所定時間内に、第2設定値P2を下回ったか否かの確認が行われる(S114)。油圧が下がらない場合は(S114:NO)、方向制御弁67に作動不良などが生じているため、ワーク自動搬送機1の駆動停止および、操作表示装置7にアンクランプ異常警報の表示などが行われ(S115)、本処理が終了する。一方、油圧が下がった場合は(S114:YES)、そのまま本処理が終了する。以上のようなワークの把持判定は、把持判定プログラム541に従い、第2油圧チャック252が主軸チャックから加工済みワークを受け取り、次の工程へ受け渡す場合にも、油圧センサ77の検出によって同じようにして実行される。
【0033】
よって、本実施形態では、油圧変化時間の閾値に基づいたワーク把持判定などを実行するようにしたため、油圧センサ77,78を追加した改良によってコストを抑えることができる。チャック判定プログラム541は、第1油圧チャック251,252の作動油について、その油圧変化時間に閾値を設定するようにしたため、ワーククランプと空クランプとの判定を正確に行うことができる。また、ロボットハンド25に近接スイッチを取り付けるような構成とは異なり、切屑やクーラントなどの影響を受けることなく、ロボットハンド25が同一方向に常に回転する駆動の妨げにもならない。
【0034】
また、本実施形態では、第1および第2油圧チャック251,252の作動状態を判定する場合、作動油の温度変化に影響を受けるので、ワークを把持する前に一旦空クランプを行わせている。そのため、油圧変化時間について基準時間tsを得ることができ、その値に基づいて適切な閾値を算出することができ、ワーククランプと空クランプとの正しい判断を行うことができる。
【0035】
前記実施形態では、ワーク解放時の判定が圧力低下の有無(図8に示すステップ(S114))だけであるが、圧力上昇時と同様に閾値を設定してワークを解放したことの判定を行うことも可能である。そのためには図8に示すステップ(S101)で第1油圧チャック251(第2油圧チャック252の場合も同じ)が空クランプする際、クランプ時だけではなく、反対方向のアンクランプ時でも第2設定値P2から第1設定値P1までの油圧変化時間(基準時間)を測定し、所定の閾値決定パラメータを乗算して閾値を算出する。そして、ワークを解放する際は、この閾値と実際の油圧変化時間とから、ワークを解放したアンクランプとワークを把持したままのホールド状態との判定が行われるようにする。
【0036】
ワーク解放時の判定は、アンクランプ側流路632,642にそれぞれ取り付けた油圧センサからの信号に基づいて行うようにしてもよい。また、ワークを解放する場合でも所定圧にまで下降する油圧変化時間を測定することにより、ワークを正しく解放しているか否かの判定を行うようにすることも可能である。そのほか、ワークを把持する場合には、例えば第2設定値P2までの油圧変化時間を更に区切って判定することにより、ワークを正しく把持しているか否かの確認も可能である。つまり、異物を噛んでしまっている場合、ワークを傾けて把持しているような場合は、チャック爪41の本来のストロークと異なるため、それぞれの油圧変化時間に応じた閾値を決定する。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ワーク自動搬送機1におけるワーク搬送ロボットを挙げて説明したが、ガントリーローダを構成するワーク搬送ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…ワーク自動搬送機 2…多関節ロボットアーム 3…走行装置 5…制御装置 25…ロボットハンド 77,78…油圧センサ 251…第1油圧チャック 252…第2油圧チャック 541…チャック判定プログラム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8