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特許7268176シールアセンブリおよびシールアセンブリを監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】シールアセンブリおよびシールアセンブリを監視する方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3296 20160101AFI20230425BHJP
【FI】
F16J15/3296
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021546478
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2020050387
(87)【国際公開番号】W WO2020148151
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102019101173.6
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ ナールヴォルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ズィンドリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ボリス トラーバー
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ クラウス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クラーマー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ラウアー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー クライゼルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】グイド ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ナウマン
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0009550(US,A1)
【文献】特開2018-071786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールエレメント(1)およびシールすべき構成部材(2)を有するシールアセンブリ(10)であって、前記シールエレメント(1)は、該シールエレメント(1)と前記構成部材(2)との間で接触応力が生じているように前記構成部材(2)に収容されており、前記シールエレメント(1)が、接触面(3)を有しており、該接触面(3)で、前記シールエレメント(1)が前記構成部材(2)に当て付けられており、前記シールエレメント(1)の劣化を監視する測定アセンブリ(4)をさらに有している、シールアセンブリ(10)において、
前記シールエレメント(1)および前記構成部材(2)に、前記測定アセンブリ(4)の少なくとも1つの測定構成要素(4.1,4.2)がそれぞれ統合されており、前記シールエレメント(1)の前記接触面(3)が、凹設部(5.1)を備えた表面幾何学形状を有しており、
前記測定アセンブリ(4)は、前記シールエレメント(1)の測定構成要素(4.1)と前記構成部材(2)の測定構成要素(4.2)との間の間隔(a)を、前記シールエレメント(1)に応力が負荷されている状態と、前記応力が除去された状態とで検出し、前記間隔の差異(Δa)を算出し、さらに、前記シールエレメント(1)が、前記シールエレメント(1)に応力が負荷されている状態から、前記応力が除去された状態に戻るまでの時間(t)を検出し、前記差異(Δa)と前記時間(t)に基づいて前記シールエレメント(1)の劣化を監視することを特徴とする、シールアセンブリ(10)。
【請求項2】
前記構成部材(2)の測定構成要素(4.2)が、前記シールエレメント(1)の前記接触面(3)に隣接して前記構成部材(2)に統合されている、請求項1記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記シールエレメント(1)の測定構成要素(4.1)が、前記シールエレメント(1)の材料内に統合された構造体として構成されている、請求項1または2記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記統合された構造体が、導電性または磁性である、請求項記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記統合された構造体が、添加物を添加した前記シールエレメント(1)の材料から形成される、請求項3または4記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記統合された構造体と、前記シールエレメント(1)の前記接触面(3)との間に、絶縁性の層、特に前記シールエレメント(1)の材料から成る絶縁性の層が位置している、請求項3から5までのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記統合された構造体が、前記表面幾何学形状(5)の前記凹設部(5.1)内に導入されている、請求項3から6までのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記凹設部(5.1)を備えた前記表面幾何学形状(5)が、複数の突起、ハニカム体、パターン、溝または刻み目を形成している、請求項1からまでのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
前記シールアセンブリ(10)の運転時に測定された、前記間隔(a)および/または前記差異(Δa)および/または前記時間(t)の値を、前記測定アセンブリ(4)のデータメモリに保存する、請求項1からまでのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記間隔(a)および/または前記差異(Δa)および/または前記時間(t)の、実際に測定された値を、保存された前記値と比較する、請求項記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
閾値を超える偏差の存在時に信号を送信する、請求項1から10までのいずれか1項記載のシールアセンブリ。
【請求項12】
フラップ弁におけるフラップシールとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載のシールアセンブリの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式のシールアセンブリと、請求項10に記載のシールアセンブリを監視する方法と、請求項16に記載のシールアセンブリの使用とに関する。
【0002】
先行技術
先行技術からは、プラスチックおよびエラストマ材料から成る種々異なるシールが知られている。たとえば、フラットガスケット、Oリング、フラップシールまたは別の成形シールにより静的なシールが形成される。
【0003】
独国特許出願公開第102010042340号明細書には、ディスク弁とも呼ぶことができるフラップ弁のためのフラップシールが記載されている。シールアセンブリの状態を確認するか、もしくはシールの故障を阻止するために、シールアセンブリの状態を監視することが追求されている。このためには、先行技術に基づいて種々異なる測定法が知られている。特に、このために必要となる測定アセンブリをシールアセンブリに統合することが追求されている。なぜならば、これによって特にコンパクトな構造および廉価な製造が可能となるからである。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0119448号明細書は、統合された測定アセンブリを備えたOリングを記載している。測定アセンブリによって、摩耗、熱変化、物理的な損傷およびシールの構造的な破壊を監視することができることが望ましい。このためには、シールエレメント内に、導電性の2つの層が統合されており、測定された容量の評価を行うことができる。
【0005】
このような測定アセンブリにおいて困難であるのは、導電性の層の間の最小限の間隔変化のみに基づいて、容量の最小限の変化のみが測定可能であることである。これにより、測定アセンブリの極めて高い精度が必要とされ、このことは、ずれによる測定精度のリスクを伴う。
【0006】
課題設定
本発明の課題は、簡単な構造を有しており、製造技術的に簡単かつ廉価に製造可能であり、シールアセンブリの小さな変化さえ検出することができるシールアセンブリを提供することである。
別の課題は、劣化挙動および特にシールエレメントの固化挙動に関する信頼性のよい情報を可能にする、シールアセンブリを監視する方法を記載することである。
【0007】
技術的な解決手段
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えたシールアセンブリにより解決される。
【0008】
本発明によれば、シールエレメントの接触応力を間接的に、すなわちシールエレメントとシールすべき構成部材との間の間隔測定により測定すると、有利であることが判った。このためには、シールアセンブリは、特別な構造を有している。
【0009】
本発明に係るシールアセンブリは、シールエレメントおよびシールすべき構成部材を有している。シールエレメントとは、たとえばシールリングであってよい。シールエレメントは、特にエラストマから製造されていてよい。シールすべき構成部材は、たとえばケーシングまたは機械エレメントであってよい。シールエレメントは、このシールエレメントと構成部材との間で接触応力が発生するように、構成部材に収容されており、シールエレメントは、接触面を有しており、この接触面で、シールエレメントは構成部材に当て付けられる。シールアセンブリは、シールエレメントの劣化を監視する測定アセンブリをさらに有している。劣化は、特にシールエレメントの固化挙動を含むが、摩滅による摩耗も含んでいてよい。
有利な形式で、シールエレメントおよび構成部材は、測定アセンブリの少なくとも1つの測定構成要素がそれぞれ統合されている。これにより、測定アセンブリの簡単、コンパクトかつ鈍感な構造が実現される。シールエレメントの接触面は、有利な形式で、凹設部を備えた表面幾何学形状を有している。シールエレメントの測定エレメントは、この凹設部自体内に位置しているか、またはより深くシールエレメントに統合されていてもよいので、シールエレメントの別の層が測定エレメントと接触面との間に位置している。接触面は、特に好適には、シールエレメントとシールすべき構成部材との間の高い接触応力の領域内に位置している、つまり高い押圧力が存在している場所に位置している。したがって、接触面は、押圧力の力経路内に直接に位置している。好適には、接触面は、主な力結合部内に位置している。代替的には、接触面は、二次的な力結合部内に位置している。押圧力がシールエレメントに加えられる押圧面は、シールエレメントの、接触面とは反対に位置する面に位置している。
【0010】
本発明に係るシールアセンブリの有利な改良形では、構成部材の測定構成要素は、シールエレメントの接触面に隣接して構成部材に統合されている。測定構成要素は、たとえば導電性の表面であるか、またはホールセンサであってよい。構成部材がケーシングである場合、このケーシングも、導電性の材料から製造されていてよく、ケーシング全体が測定構成要素を形成することができる。間隔測定が容量式の測定により実現される場合、容量は、ケーシングの質量に対して測定することができ、このことは、測定チェーンの構造を有利な形式で簡略化する。
【0011】
シールアセンブリの有利な改良形では、シールエレメントの測定構成要素が、シールエレメントの体積内、即ち材料内に統合された構造体として構成されている。構造体は、特に面として、格子として、ラインまたはベルトとして、あるいはボディとして構成されていてよい。統合された構造体は、導電性または磁性であってよい。統合された構造体が導電性である場合、容量式の測定が可能にされる。統合された構造体が磁性である場合、測定は、ホールセンサによりホール効果を使用しながら可能にされる。
【0012】
本発明に係るシールアセンブリの特に有利、かつしたがって好適な改良形では、統合された構造体が、添加物を添加したシールエレメントの材料から形成される。換言すると、導電性または磁性の構造体は、局所的に限定して、たとえば導電性もしくは磁性または磁化された粒子を添加されることにより、シール材料から形成される。
【0013】
本発明に係るシールアセンブリでは、統合された構造体と、シールエレメントの接触面との間に、特にシールエレメントの材料、つまりシール材料から成る絶縁性の層が位置している。
【0014】
代替的な実施形態では、表面幾何学形状の凹設部内に、シール材料から成るウェブ、つまり隆起部が位置しており、ウェブの端面上に、統合された構造体が被着されていてよい。このような構成により、統合された構造体が、間隔測定のために構成部材の測定構成要素の近傍に位置していることが達成され、これにより高い測定精度およびノイズのない測定信号を伴う信号品質を達成することができる。
【0015】
シールアセンブリの特別な1つの実施形態では、統合された構造体が、表面幾何学形状の凹設部内に導入されている。このようなシールアセンブリは、製造技術的に特に有利である。なぜならば、第1の製造ステップにおいてシールアセンブリをシール材料から製造することができ、第2の製造ステップにおいて、構造体をシールアセンブリの凹設部内にコーティング、吹付けまたは印刷により被着させることができるからである。
【0016】
上述のシールアセンブリでは、凹設部を備えた表面幾何学形状が、複数の突起、ハニカム体、パターン、溝または刻み目を形成することができる。凹設部は、特に0.5~2mmのサイズオーダにあってよい。
【0017】
本発明は、特に上述のようなシールアセンブリを監視する方法にも関し、この場合、シールエレメントの測定構成要素と、構成部材の測定構成要素との間の間隔を測定する。測定された間隔により、シールエレメントの劣化および特に固化挙動および摩滅を推測することができる。測定法として、たとえば容量測定またはホールセンサ内の電流変化を使用することができる。
【0018】
シールアセンブリを監視する本発明に係る方法では、間隔を間接的に種々異なる負荷状態において、特に互いに異なる2つの負荷状態において検出し、これらの間隔の差異を算出する。間接的な測定は、容量測定により、またはホールセンサを使用しながら行うことができる。シールアセンブリが、弁シールとして構成されている場合、負荷状態は、「弁開放」および「弁閉鎖」であってよい。フラップ弁のフラップシールとしての構成時には、負荷状態は、「弁フラップ開放」および「弁フラップ閉鎖」である。意想外にも、間隔の絶対値の測定とは異なり、間隔の差異の評価は、シールアセンブリの状態に関するより良好な情報を可能にすることが判った。間隔の絶対値は時間の経過中に僅かにしか変化せず、これによりほとんど評価可能ではない一方で、間隔の差異は、より大きく、ひいてはより改善されて評価可能な値を形成する。換言すると、静的な状態にあるシールエレメントの応力緩和、即ち弛緩による幾何学的な変化は極めて小さい。したがって、2つの負荷事例の間のより大きな差異を利用する。応力緩和(弛緩)とは、本明細書では、シールエレメントから応力が除去され、そのプレスされていない状態に戻ることであると理解される、もしくは時間に応じたプラスチックまたはエラストマ体の、作用する力に対する応答挙動であると理解される。これは、作用する力が取り除かれるや否や、時間に依存した応答をもたらし、最終値もしくは絶対値に到達する。この最終値はシールエレメントの劣化により変化する。
【0019】
シールアセンブリを監視する本発明に係る方法の改良形では、さらに、付加的に、種々異なる負荷状態の間で応力緩和するためにシールエレメントが必要とする時間を検出することができる。たとえば、2つの負荷状態「弁閉鎖」または「弁開放」が使用される場合、弁の開放後にシールエレメントの応力緩和のために必要とする時間を検出することができる。つまり、弁が開放され、これにより弁フラップによる押圧力がもはやシールエレメントに加えられなくなった後に、シールエレメントが応力を取り除かれる時間が検出される。
【0020】
シールアセンブリの運転時に測定される、間隔および/または差異および/または時間の値を、測定アセンブリのデータメモリ内に保存すると特に有利である。つまり、劣化現象を有しない新しい損傷のないシールアセンブリのために有効である初期値が保存される。後続の時点で間隔および/または差異および/または時間が検出されると、この実際の値を保存された初期値と比較することができる。したがって負荷状態「弁閉鎖」における間隔の値を、弁フラップとシールエレメントとの間のシール面の摩滅もしくは摩耗を検出するために、付加的に参照することができる。なぜならば、摩滅が増大するにつれて間隔の値も増大するからである。摩耗は、シールエレメントのより小さな寸法をもたらし、このことは、同様に弁フラップが閉じられている場合により小さく作用する力をもたらす。
【0021】
シールアセンブリを監視する方法の改良形では、定義されかつ保存された閾値を上回る偏差の存在時に、または間隔および/または差異および/または時間の値の著しく増大するドリフト時にも信号が送信される。信号は、たとえば警告信号またはシールエレメントの交換の要求または自動的な代替部分オーダ等であってよい。
【0022】
本発明は、フラップ弁におけるフラップシールとしての上述に記載したようなシールアセンブリの使用にも関する。弁フラップもしくは弁ディスクは、旋回可能にシールリング内に配置されており、シールリングは、その内径部にシール面を有しており、外径部においてケーシング内に収容されている。接触面は、シールリングの外径部とケーシングとの間に位置しているので、この箇所には凹設部を備えた特別な表面幾何学形状が存在しており、測定アセンブリが位置決めされている。
【0023】
記載された本発明および本発明の記載された有利な改良形は、技術的に有意である限り互いに組み合わせても本発明の有利な変化形を成す。
【0024】
別の利点および本発明の有利な構成の構造的かつ機能的な観点における別の利点に関しては、従属請求項ならびに添付の図面を参照した実施例の説明が参照される。
【0025】
実施例
フラップシールの例において、本発明が詳しく説明される。フラップシールは、接触応力が減少し、この接触応力が、加えられている媒体圧力の押圧力以下に低下すると、密封できなくなる。したがって、見込み警告(予測メンテナンス)の意図で、シールがいつ密封できなくなるかを予測することが有利であり、これにより、顧客は、漏れが発生する前に、適時にシールを交換することができる。したがって問題は、接触応力の損失をどのようにしてできるだけ連続的に検出することができるか?である。本発明の根底を成す考えは、長さ変化として測定可能である幾何学的な変化を測定することである。
【0026】
測定技術的に検出可能である十分な大きさの長さ変化を達成するために、凹設部によるシールアセンブリの構造化が使用される。凹設部は意想外の改良をもたらす。
シミュレーションは、静的な状態における物理的な応力緩和による幾何学的な変化が極めて小さいことを示した。この負荷事例のみにおける幾何学的な差の測定は、ここでは分析することが困難である。著しく大きな差は、開いた弁フラップの負荷事例と閉じた弁フラップの負荷事例との間の差異を観察した場合に、見いだされる。劣化の影響がないと、この差はつねに同一のままである。
凹設部が大きな場合、フラップの開閉時に発生する長さ変化も大きくなる。
【0027】
劣化、つまり材料の応力緩和性(つまり戻り力)の低減により、弁フラップの開放時にシール材料は緩慢に復元する。この場合、このことは緩慢な伸長変化(時間単位tあたりのΔa)において測定される。Δaの絶対値も、劣化したシール材料ではますます小さくなる。なぜならば物理的かつ科学的な劣化により、戻り力が失われるからである。
【0028】
伸長変化が、弁フラップの開放状態において(Δaの絶対値として)測定されるか、または弁フラップの開放時に、時間に関係した曲線として測定されると有利であることが判った。つまり、シール本体が負荷を取り除かれた後にどの位迅速に無負荷状態の形状に戻るかという測定が有利であることが判った。
【0029】
本発明を添付の図面につきさらに詳しく説明する。互いに対応するエレメントおよび構成部材は、図面において同一の参照符号を備えている。より見やすくするために、図面は正しい縮尺では示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】シールアセンブリの概略的な断面図である。
図2】シールエレメントの接触面の表面幾何学形状の種々異なる構成可能性を示す概略図である。
図3】a~bは、シールアセンブリを互いに異なる2つの測定アセンブリと共に示す概略図である。
図4】a~eは、シールアセンブリの測定構成要素の統合された構造体を構成するための可能なバリエーションを示す概略図である。
図5】シールエレメントの圧縮、応力緩和および劣化を示す概略図である。
図6】シールエレメントの時間に関する応力緩和挙動を概略的に示すグラフである。
【0031】
図1は、シールエレメント1、すなわちフラップシールのシールリングの断面図を示している。上側および下側の両貫通開口8は、図1には示されていない弁フラップ9の回転軸のために設けられている。つまり弁フラップ9は、シールエレメント1内に位置していて、シールエレメント1は、その内径部において、弁フラップ9の密閉を引き起こすシール面を有している。シールエレメント1は、その外径部において構成部材2において収容されており、たとえばケーシングの溝内に統合されている。ケーシング2は、図1には図示されておらず、単にその位置のみが示唆されている。シールエレメント1は、その外径部に接触面3を有している。この接触面3でシールエレメント1が構成部材2に当て付けられる。この接触面3の領域において、シールエレメント1と構成部材2との間で高い接触応力が存在する。シールエレメント1の、矢印により示唆された箇所における部分断面が、図4a~図4eに詳細に図示されている。
【0032】
図2は、シールエレメント1の接触面3の表面幾何学形状5の種々異なる形態を示している。凹設部5.1は、たとえば円形、ハニカム形または正方形の隆起部の間に位置していてよい。代替的には、凹設部5.1は、線形の溝により形成される。
【0033】
図3a~図3は、シールアセンブリ10を互いに異なる2つの測定アセンブリ若しくは測定手段4と共に示している。
図3aは、本発明による表面幾何学形状5を備えたシールアセンブリ10を横断面で示しており、シールエレメント1の測定構成要素4.1には、統合された構造体として、表面幾何学形状5に沿った導電性の層が使用されている。さらに、この実施形態では、コンデンサの図形が記入されている。このことは、測定アセンブリ4として容量測定器が使用されることを明確にする。構成部材2の測定構成要素4.2に対する電気的な層4.1の相対運動は、容量の測定可能な変化を引き起こす。この容量変化に基づいて、測定構成要素4.1,4.2の間隔変化を推測することができる。
図3bは、同様にシールアセンブリ10を示している。この図3bには、ホールセンサの図形が記入されており、このことは、測定アセンブリ4としてホールセンサが使用されることを明確にする。測定構成要素4.1として、導電性の層の代わりに、磁気的な層が使用される。ホールセンサの磁場に対する磁気的な層の相対運動は、測定可能な電流変化を引き起こす。この電流変化に基づいて、測定構成要素4.1,4.2の間隔変化を推測することができる。
【0034】
図4a~図4は、統合された構造体として、シールエレメント1の測定構成要素(4.1)を具体的に構成するための可能なバリエーションを示している。
図4aでは、統合された構造体4.1は、面状の層として平坦に表面幾何学形状5の背後に配置されている。これにより、製造プロセスが簡略化されている。
図4bは、図4aとは異なり、極めて小さな凹設部5.1しか設けられていない。
図4cは、統合された構造体4.1が、ライン、つまり線状部材として後から表面幾何学形状5の凹設部5.1内、つまり溝内に導入されたアセンブリを示している。これらのラインは、たとえばコーティングにより、または印刷により形成することができる。
図4dは、シールアセンブリ10を横断面で示している。このシールアセンブリ10では、凹設部5.1内に隆起したウェブ若しくは突条6が設けられている。つまり、ウェブ6は、凹設部5.1に対して高められているが、その端面において、まだ、構成部材2に対して間隔を有している。ウェブ6の端面上に、統合された構造体4.1が取り付けられている。この統合された構造体4.1は、ケーシング2に接触せず、したがって接触応力を受けない。弁フラップ9の開閉時の変形に基づいて、ケーシング2に対する統合された構造体4.1の間隔aが変化する。ウェブ6上の統合された構造体4.1とケーシング2との間の絶縁部として、構造体4.1とケーシング2との間にある空気が存在する。シールアセンブリ10のこのような構造は、測定アセンブリ4の構成が測定構成要素4.1,4.2間で小さな間隔しか許容されない場合に、使用される。
図4eは、シールアセンブリ(10)の代替的な構成を示している。シールエレメント1の本体自体が、シールエレメント1の測定構成要素4.1として使用される。容量式の測定法のためには、シールエレメント1が導電性のシール材料から成る。ホールセンサの使用時には、シールエレメント1が磁性のシール材料から成る。接触面3において、シールエレメント1は、絶縁性のコーティング7を備えている。シールエレメント1の測定構成要素4.1のために導電性の材料を使用するか、磁性の材料を使用するかは、使用すべき測定法に依存する。容量式の測定法のためには、導電性の材料が使用され、ホールセンサの使用時には、磁性の材料が使用される。
シールエレメントの測定構成要素が統合された構造体として形成されている場合、測定構成要素は、同様にシールエレメント1のシール材料から成っているが、導電性の材料または磁性の材料を添加されたものである。
【0035】
図5には、シールエレメント1の圧縮、応力緩和および劣化、すなわちケーシング2の表面に対する間隔(a)の変化、もしくはより詳細にはシールエレメント1の測定構成要素4.1と構成部材2の測定構成要素4.2との間の間隔(a)の変化が示される。これらは、フラップ弁のフラップシールの例において図示される。
一番上の図では、弁が開いていて、シールエレメント1はプレスされるのではなく、応力を除去された状態にある。最初の組込み時または最初の組込みの直後の新しいシールアセンブリ10における状態が図示されている。
真ん中の図では、弁が閉じられていて、シールエレメント1が、加えられた押圧力Fによりプレスされる。これにより、比較的小さな間隔a1が生じる。
一番下の図では、弁が同様に開いているが、ある程度の使用期間後に接触応力が減少していて、シールエレメント1はもはや再び出発状態には戻らず、間隔a2は、当初の間隔aよりも小さくなっている。
【0036】
図6は、シールエレメント1の時間的な弾性的弛緩(復元)挙動を示している。上側の曲線は、新しいシールアセンブリ10における挙動を示している。下側の曲線は、ある程度の使用時間の経過後のシールアセンブリ10における挙動を示している。シールエレメント1の弾性的弛緩中の、つまり弁の開放が行われた後の、シールエレメント1の測定構成要素4.1と構成部材2の測定構成要素4.2の間で測定された間隔aの時間的変化が2つの曲線によって示されている。上側の曲線では、シールエレメント1が弁の開放の直後に良好かつ迅速に復元することを確認することができる。下側の曲線は、復元挙動が著しく劣化した場合のシールエレメント1の挙動を示している。その復元挙動は著しく緩慢であり、シールエレメント1はもはや良好に復元することはできない。
つまり、グラフの評価により以下のことが判る:劣化、つまりシールエレメントの材料の復元能力およびその戻り力の損失により、弁フラップの開放時にシール材料が緩慢に弾性復帰し、この場合にこのことは、より緩慢な伸長変化(時間単位tあたりのΔa)として測定される。Δaの絶対値は、劣化したシール材料ではますます低下する。なぜならば、物理的かつ化学的な劣化により戻り力が失われるからである。
【符号の説明】
【0037】
1 シールエレメント
2 シールすべき構成部材
3 接触面
4 測定アセンブリ
4.1 測定構成要素 シールエレメント(たとえば統合された構造体)
4.2 測定構成要素 構成部材
5 表面幾何学形状
5.1 凹設部
6 ウェブ
7 コーティング
8 貫通開口
9 弁フラップの位置
10 シールアセンブリ
a 間隔
F 押圧力
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
図6