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特許7268184キーデバイスの別体の内部空間検出部および外部空間検出部を有する車両のロッキングシステムを動作させる方法およびロッキングシステム
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  • 特許-キーデバイスの別体の内部空間検出部および外部空間検出部を有する車両のロッキングシステムを動作させる方法およびロッキングシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】キーデバイスの別体の内部空間検出部および外部空間検出部を有する車両のロッキングシステムを動作させる方法およびロッキングシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20230425BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20230425BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20230425BHJP
   G01S 13/74 20060101ALI20230425BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
G01S5/14
G01S13/74
G01S13/87
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021552680
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020052694
(87)【国際公開番号】W WO2020177962
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102019203029.7
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ペーター ブリュックナー
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177132(JP,A)
【文献】国際公開第2018/137923(WO,A1)
【文献】特開2006-104859(JP,A)
【文献】特開2008-309555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/24、25/25
G01S 5/00-5/14
G01S 13/74-13/84
G01S 13/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のロッキングシステム(2)を動作させる方法であって、
前記車両(1)の内部空間(5)に配置されている少なくとも1つの内部空間トランシーバ(9)と、前記内部空間(5)の外部に配置されている少なくとも1つの外部空間トランシーバ(6)と、により、それぞれToF測定を実行し、前記ToF測定に基づき、前記車両(1)に対するキーデバイス(3)の相対位置を特定し、前記車両(1)に対する前記キーデバイス(3)の特定された前記相対位置に応じて、前記車両(1)のロック、前記車両(1)のロック解除および/または前記車両(1)の駆動原動機の始動である、前記ロッキングシステム(2)の操作機能を実行する方法において、
少なくとも1つの内部空間トランシーバ(9)による前記ToF測定だけに基づいて、前記車両(1)に対する前記キーデバイス(3)の相対位置を特定する内部空間位置特定と、少なくとも1つの外部空間トランシーバ(6)による前記ToF測定だけに基づいて、前記相対位置を特定する外部空間位置特定と、を別々に実行し、前記操作機能に応じて、前記内部空間位置特定および/または前記外部空間位置特定中に特定された前記相対位置を選択し、前記内部空間位置特定中に実行された前記ToF測定および/または前記外部空間位置特定中に実行された前記ToF測定を妥当性検査し、前記妥当性検査の際には、前記ToF測定中に少なくとも1つの前記内部空間トランシーバ(9)および/または少なくとも1つの前記外部空間トランシーバ(6)の信号が反射されたか否かをチェックし、
前記内部空間位置特定および前記外部空間位置特定を連続または並列して実行する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記操作機能が前記車両(1)の前記ロックである場合、前記内部空間位置特定中に特定された前記相対位置だけに応じて前記ロックを実行することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記操作機能が前記車両(1)の前記ロック解除である場合、前記外部空間位置特定中に特定された前記相対位置だけに応じて前記ロック解除を実行することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記操作機能が前記車両(1)の前記駆動原動機の前記始動である場合、前記キーデバイス(3)が前記内部空間(5)にある場合のみ駆動原動機の前記始動を実行することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記操作機能に応じて、前記内部空間位置特定および/または前記外部空間位置特定中に特定された前記相対位置の優先順位付けを実行することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
特定されたそれぞれの前記相対位置を記憶することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
制御装置(10)と、少なくとも1つの内部空間トランシーバ(9)と、少なくとも1つの外部空間トランシーバ(6)と、キーデバイス(3)と、を含む、車両(1)用のロッキングシステム(2)であって、
前記ロッキングシステム(2)は、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実行するように設計されている、
ロッキングシステム(2)。
【請求項8】
請求項7記載のロッキングシステム(2)を備えた車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のロッキングシステムを動作させる方法に関し、この方法では、車両の内部空間に配置されている少なくとも1つの内部空間トランシーバと、車両の内部空間の外部に配置されている少なくとも1つの外部空間トランシーバと、により、それぞれToF(Time of Flight)測定を実行し、ToF測定に基づき、車両に対するキーデバイスの相対位置を特定し、車両に対するキーデバイスの特定された相対位置に応じて、車両のロック、車両のロック解除および/または車両の駆動原動機の始動である、ロッキングシステムの操作機能を実行する。本発明はさらに、ロッキングシステムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、車両用の複数のロッキングシステムが公知である。これらのロッキングシステムには、例えば、無線キーとして、またはモバイルデバイスとして構成可能なキーデバイスが含まれている。ロッキングシステムにより、車両もしくは車両のドアをロックおよびロック解除可能である。ロッキングシステムは、車両の駆動原動機を始動させるためにも使用される。さらに、従来技術からは、キーデバイスを位置特定することができるロッキングシステムが公知である。この際には、自動車の外部領域には、キーデバイスを位置特定するために外部空間トランシーバが組み込まれる。車両の内部空間にはさらに、内部空間におけるキーデバイスの位置を特定できるようにするために別の内部空間トランシーバが組み込まれる。ここではキーデバイスと、車両にもしくは車両内に組み込まれているすべてのトランシーバと、の間でそれぞれToFが測定される。次に、それぞれのToFから、キーデバイスの位置もしくはキーデバイスと車両との間の相対位置が特定される。
【0003】
位置特定の際に出発点とされるのは、それぞれのToFが、キーデバイスとトランシーバとの間の間隔もしくは最短の接続を表することである。車両の内部空間内のキーデバイスの特定の位置では、キーデバイスとトランシーバとの間に直接的なレーダー区間は存在しない。というのは、例えば、外部空間トランシーバでは、無線信号は、車両のボディーにより、また内部空間トランシーバでは、無線信号は、シートの背もたれまたは車両内の人間によって遮断されるからである。このことは、信号の反射に結び付き得る。この場合には、車両の周囲環境に応じて、対象体から反射されかつ長い信号ToFを有する信号が利用される場合、誤った距離測定値が計算されてしまうことがある。
【0004】
従来技術によれば、キーデバイスを可能な限りに正確に位置特定できるようにするために、キーデバイスの位置特定に対し、すべての内部空間トランシーバおよびすべての外部空間トランシーバのToFが、評価方法ないしは対応する最適化アルゴリズムに組み入れられる。しかしながら複数のテストによって判明したのは、反射性の車両周囲環境では、例えば、狭いパーキングビルまたはガレージでは、内部空間における位置特定の際、外部空間トランシーバの誤った距離測定値は、キーデバイスが実際には内部空間にあるにもかかわらず、このキーデバイスが車両の外部にあると位置特定の結果が表してしまうという事態に結び付いてしまい得ることである。このことは、いわゆるパッシブエントリーシステムでは、キーデバイスもしくは車両キーが、意図に反して車両の内部空間に閉じ込められてしまうか、または車両を始動できないことに結び付き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、どのようにすればキーデバイスの位置特定を改善することができ、ひいてはロッキングシステムの動作を確実に実行することができるかということについての解決手段を示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、独立請求項に記載された特徴的構成を有する方法、ロッキングシステムおよび車両によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に示されている。
【0007】
本発明による方法は、車両のロッキングシステムを動作させるために使用される。この方法では、車両の内部空間に配置されている少なくとも1つの内部空間トランシーバと、車両の内部空間の外部に配置されている少なくとも1つの外部空間トランシーバと、により、それぞれToF測定を実行する。ToF測定に基づき、車両に対するキーデバイスの相対位置を特定する。さらに、車両に対するキーデバイスの特定された相対位置に依存して、車両のロック、車両のロック解除および/または車両の駆動原動機の始動である、ロッキングシステムの操作機能を実行する。ここでは、少なくとも1つの内部空間トランシーバによるToF測定だけに基づいて、車両に対するキーデバイスの相対位置を特定する内部空間位置特定と、少なくとも1つの外部空間トランシーバによるToF測定だけに基づいて、この相対位置を特定する外部空間位置特定と、を別々に実行するように構成される。さらに、操作機能に応じて、内部空間位置特定および/または外部空間位置特定中に特定された相対位置を選択する。
【0008】
この方法を用いて、車両のロッキングシステムを動作させる。このロッキングシステムは、車両のドアおよび/またはトランクルームのロックおよびロック解除に使用される。さらに、ロッキングシステムは、車両の駆動原動機を始動および/または停止するために使用される。ロッキングシステムには、無線キーとして構成されていてよいキーデバイスが含まれる。モバイルデバイス、例えばスマートフォンなどによってキーデバイスが提供されるように構成されることも可能である。キーデバイスは、車両の利用者または運転者によって携帯可能である。キーデバイスはさらに、対応する操作要素を有していてよいかまたはこれを提供することができる。これらの操作要素を操作することにより、ロッキングシステムの操作機能、特にロックおよびロック解除が要求可能である。
【0009】
さらに、ロッキングシステムには、車両の内部空間に配置されている少なくとも1つの内部空間トランシーバが含まれる。用語の内部空間とは、ここでは車両の乗員室のことと理解され、またトランクルームもしくは収容空間とも理解される。車両の内部空間には複数の内部空間トランシーバを配置することも可能である。外部空間トランシーバは、内部空間の外部に配置可能である。例えば、外部空間トランシーバは、車両の外部ケーシングに配置可能である。外部空間トランシーバは、ボディーおよび/または外部構造部材に配置可能である。特に、外部空間トランシーバは、車両のバンパーに、またはバンパーの後ろに隠されて配置されていてよい。ここでは好ましくは、ロッキングシステムが、複数の外部空間トランシーバを有するように構成される。これらの外部空間トランシーバは、例えば、車両のそれぞれの外側のコーナに配置されていてよい。
【0010】
それぞれのトランシーバ、すなわち内部空間トランシーバおよび外部空間トランシーバとキーデバイスとの間では、無線で、もしくは無線通信を介して信号が交換可能である。トランシーバは、レーダートランシーバと称することも可能である。この際にはキーデバイスとトランシーバとの間で信号を伝送するのに要するそれぞれのToF(Time of Fright)を特定する。例えば、信号の伝送には超広帯域技術が利用可能である。この場合には、信号の既知の伝搬速度に基づいて、キーデバイスとそれぞれのトランシーバとの間の間隔を導き出すことができる。それぞれのToFもしくは間隔は、ロッキングシステムの制御装置または計算装置によって特定可能である。この場合には、複数のトランシーバのそれぞれの間隔および既知の取り付け位置に基づき、キーデバイスと車両もしくは車両の基準点との間の相対位置を特定可能である。ロッキングシステムのそれぞれの操作機能の実行は、キーデバイスと車両との間の相対位置に応じて特定される。ロッキングシステムの操作機能が要求されるケースがあってよい。これは、利用者もしくは運転者の対応する操作入力によって行われてよい。この操作入力は、キーデバイスの操作要素において、または車両の内部空間内の操作要素において実行可能である。操作機能が自動で要求されるように構成されていてもよい。操作機能が要求された後、この操作機能が、キーデバイスと車両との間の相対位置に応じて実行可能であるか否かを制御装置によってチェックすることができる。例えば、ドアのロックは、キーデバイスが車両の外部にある場合のみ実行可能である。車両内に別の複数のキーデバイスが同時にある場合、これらを停止させる必要がある。さらに、駆動原動機の始動は、キーが車両の内部空間にある場合にのみ実行可能である。
【0011】
本発明の実質的な一態様によれば、キーデバイスの位置特定のために内部空間位置特定と外部空間位置特定とを別々に実行するように構成される。内部空間位置特定の際、車両とキーデバイスとの間の相対位置の特定のために、内部空間トランシーバのToF測定だけを考慮する。外部空間位置特定の際、車両とキーデバイスとの間の相対位置の特定のために、外部空間トランシーバのToF測定だけを考慮する。すなわち、1つの測定サイクルにおいて、一方では、内部空間トランシーバによって相対位置を特定し、他方では、これとは無関係に外部空間トランシーバによって相対位置を特定する。したがって従来技術とは異なり、特に、相対位置を特定するために、設けられているすべてのトランシーバによるToF測定が同時に考慮されるようには構成されていない。次に、要求される操作機能に応じて、内部空間位置特定のデータおよび/または外部空間位置特定のデータが、相対位置の特定のために考慮されるか否かが決定される。それぞれの操作機能、すなわち、ロック、ロック解除、原動機の始動および原動機の停止についての内部空間位置特定のデータおよび/または外部空間位置特定のデータの選択は、対応付けルールまたはテーブルに格納可能である。操作機能に応じて、内部空間位置特定および/または外部空間位置特定の結果を異なって評価するように構成されることも可能である。
【0012】
特に、キーデバイスの位置特定が、すべてのトランシーバによって連続して実行されるように構成される。評価は、特に、操作機能が要求された場合にのみ行われるのではない。トランシーバによるそれぞれのToF測定は、並列または準並列に実行可能でありかつ相応に評価可能である。すなわち、異なる操作機能について、好ましくは並列に評価を実行する。したがって、位置特定結果は、保持可能であり、要求された操作機能を実施してよいか否かを決定するために直ちに利用可能である。特に、必要なトランシーバだけが、評価に加えられるように構成される。
【0013】
本発明は、キーデバイスの位置に応じて、特定のトランシーバでは測定誤りが発生し得るという知識に基づいている。これは、例えば、キーデバイスが車両の内部空間にある場合、外部空間トランシーバでは、反射によって測定誤りが生じてしまうケースがあり得る。要求された操作機能に依存して必要であるのは、内部空間においてまたは車両の外部においてキーデバイスの位置を確実に識別することである。この際に考慮されるのは、どのトランシーバによれば、この操作機能について、キーデバイスの位置を最も確実に識別できるかである。内部空間位置特定および外部空間位置特定に基づき、相対位置が特定可能なあらかじめ定められた評価アルゴリズムが実行可能である。すなわち、位置特定領域(車両の内部空間または外部)に応じて、異なる評価方法を実行可能である。これにより、全体としてキーデバイスの改善された位置特定、ひいてはロッキングシステムの確実な動作が可能になる。
【0014】
一実施形態では、操作機能が、車両のロックである場合、内部空間位置特定中に特定された相対位置にだけ応じてロックを実行する。車両のロックは、キーデバイスが車両の内部空間にないことを保証することができる場合にのみ行ってよい。この場合、距離測定のために内部空間トランシーバだけを考慮することができる。この際には、車両の内部空間におけるキーデバイスの閉じ込めを防止するために、車両の内部空間に狙いを定めてキーデバイスを探索する。この場合、外部空間トランシーバでは反射によって測定誤りが生じ得るため、外部空間位置特定を使用しない。これにより、例えば、キーデバイスの位置が、車両の外部であると誤って識別されてしまうことを防止可能である。これは、例えば、キーデバイスが上着のポケットにあり、ロックの前に、この上着が、利用者または運転者によって内部空間に脱ぎ捨てられた場合があり得る。
【0015】
別の一実施形態では、操作機能が、車両のロック解除である場合、外部空間位置特定中に特定された相対位置だけに応じてロック解除を実行する。極めて一般的にいえるのは、車両の外部でキーデバイスの位置を特定しようとする場合、外部空間位置特定のデータだけを考慮することである。キーデバイスが車両の外部にある場合、測定誤りは、内部空間トランシーバにおいて発生し得る。この測定誤りは、内部空間トランシーバの信号の反射および/または遮断によって引き起こされ得る。これにより、キーデバイスの位置は、車両の外部で正確に特定可能である。
【0016】
別の一実施形態では、操作機能が、車両の駆動原動機の始動である場合、外部空間位置特定中に特定された相対位置に基づき、内部空間位置特定中に特定された相対位置をチェックする。車両の駆動原動機を始動しようとするか、もしくは駆動原動機の始動をイネーブルしようとする場合、必要でありかつ法的に定められているのは、運転者もしくは利用者が、キーデバイスと共に車両の内部空間にいなければならないことである。ここでは、キーデバイスが車両内にあるか否かをチェックするため、まず内部空間位置特定のデータだけを利用する。さらに、外部空間位置特定もしくは外部空間トランシーバの測定に基づいてチェックもしくは確認できるのは、キーデバイスが実際に内部空間にあることである。これは、内部空間監視と並行して行われてよいか、または付加的な評価アルゴリズムにおいてチェック可能である。この2段階のチェックにより、安全性を保証しかつ法的な要求を満たすことができる。これにより、例えば、意図に反して駆動原動機が始動されてしまう状況を排除することが可能である。これは、例えば、利用者または運転者が、車両の外部ではあるが車両の近くにいて、車両内にいる利用者または運転者の子供が、始動ボタンを操作してしまう場合があり得る。ここではキーデバイスの位置もしくは相対位置が、誤って内部空間にあるものとして識別されてしまうと、これは、最悪の場合、原動機が始動されて車両が動いてしまうことになり得る。
【0017】
異なる操作機能について、それぞれのトランシーバのToF測定を評価するそれぞれの評価アルゴリズムが構成されていてよい。上で説明したように、ロックの操作機能では、内部空間位置特定だけが利用可能である。この場合には、内部空間トランシーバのToF測定だけが使用可能である。ここでは特に、内部空間トランシーバによって車両の内部空間だけを監視するように構成される。さらに原動機始動の操作機能では、ここでも同様にキーデバイスの有無について車両の内部空間を監視するように構成されることが可能である。さらにこの操作機能では、車両の内部空間を監視するために、外部空間トランシーバのToF測定を使用するように構成されることが可能である。さらに原動機始動の操作機能では、車両の外部の、もしくは車両の周囲のあらかじめ定められた領域を監視するように構成されていてよい。この領域は、車両から出発して、車両の外部ケーシングに対してあらかじめ定められた間隔、例えば20cmまで延在していてよい。内部空間またはこの領域内にキーデバイスが識別される場合、駆動原動機の始動がイネーブル可能である。
【0018】
さらに、内部空間位置特定中に実行されたToF測定および/または外部空間位置特定中に実行されたToF測定を妥当性検査すると有利である。言い換えると、内部空間位置特定の際にも外部空間位置特定の際にも妥当性検査を実行可能である。特に、個々の距離測定値が評価アルゴリズムに取り入れられるもしくは排除される前に、トランシーバのこれらの個々の距離測定値を妥当性検査することができる。例えば、まず妥当性検査を実行し、その後、妥当な値だけに基づいて、評価アルゴリズムもしくは位置特定アルゴリズムを実行することができる。評価アルゴリズムは、AIに基づいていてもよい。ここでは、それぞれのトランシーバについて、ToF測定もしくは距離測定の妥当性検査が実行可能である。このために、トランシーバの既知の組み込み位置を考慮することができる。特に、車両に組み込まれたトランシーバ間の既知の間隔が、妥当性検査に利用可能である。キーデバイスが、例えば、2つのトランシーバによって検出される場合、これらのトランシーバによってそれぞれ特定された間隔の合計が、これらのトランシーバ間の間隔に基づいて特定される境界値よりも大きいか否かをチェックすることができる。キーデバイスがこれらのトランシーバの間にあるような場合であってかつ測定される間隔の合計が境界値よりも大きい場合、結果もしくは測定は、誤りと評価可能である。さらに、位置もしくは相対位置を表す結果が、互いに異なるか否かをチェックすることができる。さらに、妥当性検査に三角測量計算が使用されるように構成可能である。特に、少なくとも2つのトランシーバ、特に2つの外部空間トランシーバによってキーデバイスが検出される場合、三角測量が利用可能である。したがって、全体としてキーデバイスの位置の特定は確実に実行可能である。
【0019】
特に、妥当性検査の際には、ToF測定中に少なくとも1つの内部空間トランシーバおよび/または少なくとも1つの外部空間トランシーバの信号が反射されたか否かをチェックする。すでに説明したように、それぞれの内部空間トランシーバおよび外部空間トランシーバの組み込み位置は既知である。既知の組み込み位置もしくはそれぞれのトランシーバ相互の間隔に基づき、また幾何学的な関係に応じて、場合によっては信号が反射されたか否かをチェックすることができる。信号が反射されている場合、格段に長い信号ToFが発生するが、これは妥当ではない。測定結果の妥当性検査により、キーデバイスの位置特定を確実に実行することができる。
【0020】
さらに、操作機能に応じて、内部空間位置特定および/または外部空間位置特定中に特定された相対位置の優先順位付けを実行すると有利である。優先順位付けの際には、内部空間位置特定および/または外部空間位置特定の結果を相応に重み付けすることができる。これにより、内部空間位置特定中かつ/または外部空間特定中に特定された測定結果に重み付けを行うことができる。操作機能として、例えば、車両もしくは車両のドアのロックを実行しようとする場合、キーデバイスが内部空間にあるという結果を優先するかもしくは大きく重み付けすることができる。これによって達成可能であるのは、車両が、相応にロックされ、これにより、運転者もしくは利用者にとっての快適性が向上することである。しかしながら、操作機能として駆動原動機を始動させるようとする場合、キーデバイスが車両の外部にあることを優先することができる。これにより、相反する測定結果の場合であっても、意図に反して駆動原動機が始動されてしまわないことを保証することができる。
【0021】
別の一実施形態では、内部空間位置特定および外部空間位置特定を連続して実行し、この際に特定されたそれぞれの相対位置を記憶する。言い換えると、キーデバイスの位置もしくは相対位置の履歴を追跡することができる。これにより、時間に応じたキーデバイスの移動を表すいわば軌跡が特定可能である。これにより、車両の外部領域から内部領域にキーデバイスが移動された時点も識別可能である。同様に、内部空間から外部にキーデバイスが移動された時点も識別可能である。車両の内部空間および外部領域もしくは周囲環境に、対応する移行領域が、定義されるように構成されることも可能である。定義されたこの移行領域では、例えば、内部空間位置特定の結果も外部空間位置特定の結果も共に利用可能である。これは、キーが車両の内部空間にあるかまたはキーが車両の外部にあるという安定した評価が行われるまで実行可能である。こうすることによってもキーデバイスの位置特定が改善可能である。
【0022】
別の一実施形態では、内部空間位置特定および外部空間位置特定を並列に実行する。内部空間位置特定と外部空間位置特定とが並列に実行される場合、キーデバイスの位置特定の際の時間遅延が回避可能である。この際には、特に、制御装置もしくは計算装置がマルチコアプロセッサを有するように構成される。例えば、1つのコアを外部空間位置特定に利用しかつ別の1つのコアを内部空間位置特定に利用することができる。この場合には、それぞれのプロセッサコアにより、互いに無関係に評価方法もしくは評価アルゴリズムが計算可能である。これにより、キーデバイスの位置特定は、短い計算時間内に実行可能である。
【0023】
別の一実施形態によれば、少なくとも1つの外部空間トランシーバによる測定に基づき、かつ参照測定に基づいて車両の周囲環境を特徴付ける。特に、この測定に複数の外部空間トランシーバを使用するように構成される。この際にはそれぞれの外部空間トランシーバによって信号を送出し、かつ/または車両の周囲環境において反射された信号を同じトランシーバで受信することができる。さらに、特に、どの外部空間トランシーバから信号が送出されたかを示す情報をそれぞれ送出された信号が含むように構成される。これにより、例えば、信号が車両の周囲環境において反射されるか否かが特定可能である。ここでこれらの測定は、外部空間トランシーバだけに基づいて実行され、この場合にキーデバイスもしくはキーデバイスの位置は検出されない。さらに、車両の周囲環境を特徴付けるために、前もって実行された参照測定が利用可能である。参照測定は、例えば、参照・周囲環境状況において実行可能である。このような参照・周囲環境状況は、例えば、ガレージ、パーキングビルまたは車両の周囲環境における空いている面を表していてよい。測定と、あらかじめ特定された参照測定と、を比較することにより、車両の周囲環境を特徴付けることができる。周囲環境のこの特徴付けは、測定結果を、対応して評価するために利用可能である。さらに、特徴付けは、外部空間位置特定の結果だけを利用するか、または内部空間位置特定の結果だけを利用するために役立てることが可能である。周囲環境の特徴付けの結果は、評価もしくは評価アルゴリズムにおいて、また上で説明された妥当性検査においても取り入れ可能である。
【0024】
車両用の本発明によるロッキングシステムには、制御装置と、少なくとも1つの内部空間トランシーバと、少なくとも1つの外部空間トランシーバと、キーデバイスと、が含まれている。ロッキングシステムは、本発明による方法およびその有利な実施形態を実行するように設計されている。特に、ロッキングシステムが、複数の内部空間トランシーバおよび複数の外部空間トランシーバを有するように構成される。
【0025】
本発明による車両には、本発明によるロッキングシステムが含まれている。車両は、特に、乗用車として構成されていてよい。車両が、商用車として構成されているようにすることも可能である。
【0026】
本発明によるコンピュータプログラム製品には、プログラムが制御装置によって実行される場合に、本発明による方法およびその有利な実施形態を制御装置に実行させる命令が含まれている。本発明によるコンピュータ読み出し可能記憶媒体には、制御装置によって実行される場合に、本発明による方法およびその有利な実施形態を制御装置に実行させる命令が含まれている。
【0027】
本発明による方法に関連して示された好ましい複数の実施形態およびそれらの利点は、本発明によるロッキングシステム、本発明による車両、本発明によるコンピュータプログラム製品および本発明によるコンピュータ読み出し可能媒体にも相応に当てはまる。
【0028】
本発明の別の特徴は、特許請求の範囲と図面と図面の説明とから明らかになる。本明細書において上で言及された特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図面の説明において以下で言及され、かつ/または図面だけにおいて示される特徴および特徴の組み合わせは、本発明の枠を逸脱することなく、それぞれ示された組み合わせだけではなく、別の組み合わせでも使用可能である。好ましい実施例に基づき、また添付の図面を参照して本発明を詳しく説明する。ただ1つの図は、ロッキングシステムを有する車両の概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ロッキングシステムを有する車両の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には車両1の平面図が示されており、車両1は、ここでは乗用車として構成されている。この車両1には、ロッキングシステム2が含まれている。ロッキングシステム2は、車両1をロックし、またロック解除するために使用される。ロッキングシステム2はさらに、車両1の駆動原動機を始動し、場合によってこれを停止するために使用される。ロッキングシステム2には、車両1の利用者4もしくは運転者によって携帯されていてよいキーデバイス3が含まれている。このキーデバイス3は、無線キーとして構成されていてよい。この実施例では、キーデバイス3は、モバイルデバイスもしくはスマートフォンとして構成されている。キーデバイス3により、利用者4が操作可能な対応する操作要素が提供される。これにより、例えば、車両1をロックおよび/またはロック解除する命令がロッキングシステム2に伝送可能である。キーデバイス3を用いて、駆動原動機の始動をイネーブルする、もしくはイモビライザーを停止する命令を出力できるようにも構成可能である。これとは択一的に、対応する操作要素を車両1の内部空間5に設けることも可能である。
【0031】
さらに、キーデバイス3の実際位置もしくはキーデバイス3と車両1との間の相対位置が連続的に特定されるように構成される。このためにロッキングシステム2には、少なくとも1つの外部空間トランシーバ6が含まれている。この実施例では、ロッキングシステム2には、車両1の内部空間5の外部に配置されている4つの外部空間トランシーバ6が含まれている。この実施例では、車両1の前面領域7に2つの外部空間トランシーバ6と、後尾領域8に2つの外部空間トランシーバ6と、が配置されている。外部空間トランシーバ6は、車両1のそれぞれ外側のコーナにおいてバンパーにまたはバンパーの後に配置されている。さらに、ロッキングシステム2には、少なくとも1つの内部空間トランシーバ9が含まれている。この実施例では、ロッキングシステム2には、車両の内部空間5に配置されている2つの内部空間トランシーバ9が含まれている。それぞれのトランシーバ6、9は、無線データ伝送のためにキーデバイス3に接続されている。このことが意味するのは、それぞれのトランシーバ6、9とキーデバイス3との間で無線信号を交換できることである。この場合、それぞれの無線信号のToFに基づいて、それぞれのトランシーバ6、9とキーデバイス3との間の間隔が特定可能である。
【0032】
この場合にはそれぞれの間隔に基づき、キーデバイス3と、車両1もしくは車両1の基準点と、の間の相対位置が特定可能である。キーデバイス3と車両1との間の相対位置の特定は、車両1の制御装置10を用いて実行可能である。トランシーバ6、9は、データ伝送のために制御装置10に接続されている。対応するデータ線路またはデータバスは、ここでは、わかり易くするために図示されていない。制御装置10により、車両1のドアをロックするためにまたはロック解除するために、対応する制御命令を送出することができる。さらに、駆動原動機を始動するかもしくは始動をイネーブルするために制御命令が送出可能である。すでに説明したように、利用者4の対応する操作入力により、ロッキングシステム2の複数の操作機能が要求可能である。これらの操作機能は、車両1のロック、車両1のロック解除、駆動原動機の始動および/または駆動原動機の停止であってよい。ロッキングシステム2もしくは制御装置10を用い、キーデバイス3の実際位置に応じて、この操作機能が実行されるか否かが決定可能である。例えば、車両1のロックは、キーデバイス3が車両1の内部空間5の外部にある場合にのみ実行される。駆動原動機の始動は、キーデバイス3が車両1の内部空間5にある場合にのみ実行される。
【0033】
制御装置10により、それぞれ特定されたToFもしくは間隔に基づき、対応する評価アルゴリズムが実行される。次にこの評価アルゴリズムにより、キーデバイス3が内部空間5にあるかまたは内部空間5の外部にあるかが特定可能である。従来技術によれば、このために、すべてのトランシーバ6、9の結果が使用されるように構成される。車両1の周囲環境11に反射性の対象体がある場合、このことは測定誤りに結び付くことがある。この実施例では、車両1の周囲環境11にある壁12が略示されている。この壁12では、例えば、外部空間トランシーバ6の信号が反射されることがあり、これにより、測定結果に悪影響が及ぼされてしまう。これにより、キーデバイス3が、車両1の内部空間5にあるかまたは外部にあるかを確実に特定することができない。
【0034】
キーデバイス3の位置特定を改善するために、内部空間位置特定と外部空間位置特定とが別々に実行されるように構成される。内部空間位置特定の際には、内部空間トランシーバ9のToF測定だけを使用する。外部空間位置特定の際には、外部空間トランシーバ6の測定結果もしくはToF測定だけを使用する。この際にはさらに、要求される操作機能に応じて、内部空間位置特定および/または外部空間位置特定の結果をキーデバイス3の位置の特定に考慮する否かを決定するように構成される。さらに、操作機能に応じて、ToF測定を評価する1つまたは複数の評価アルゴリズムを選択可能である。
【0035】
例えば、操作命令として車両1のロックが要求される場合、内部空間位置特定の結果だけを使用する。この際には内部空間トランシーバ9により、キーデバイス3が内部空間5にあるか否かが確実に検出可能である。この場合、反射性の対象体によって影響を受けている可能性のある、外部空間トランシーバ6の結果は考慮されない。これにより、例えば、キーデバイス3が内部空間5にあることを確実に排除することができる。このことを保証できる場合、車両1のロックが実行可能である。キーデバイス3の位置が車両1の外部に検出される場合、例えば、外部空間位置特定の結果だけが利用可能である。
【0036】
操作機能として駆動原動機の始動もしくは原動機始動のためのイネーブルが要求される場合、キーデバイス3が車両1の内部空間5にあるか否かをチェックするために、まず内部空間位置特定の結果が利用可能である。これに並行して、外部空間位置特定に基づくチェックが実行可能である。この際には、キーデバイス3が車両1の外部にないことがチェック可能である。外部にないことがチェックされてはじめて、駆動原動機の始動が実行可能である。原動機始動が要求される際、内部空間トランシーバ9の測定も外部空間トランシーバの測定も共に使用されるように構成されていてもよい。
【0037】
さらに、内部空間位置測定および/または外部空間位置特定の結果が相応に妥当性検査されるように構成されていてよい。このために、既知の組み込み位置もしくはそれぞれのトランシーバ6、9の相互の間隔を考慮することができる。さらに、測定結果を妥当性検査するために三角測量法が利用可能である。さらに、キーデバイスの実際位置が連続して特定され、この位置が記憶されるように構成されていてよい。これにより、キーデバイスの位置の履歴をたどり、キーデバイス3が、車両1から離れるかもしくは外部から車両1に移動される場合、評価方法を内部空間位置特定から外部空間位置特定に、または外部空間位置特定から内部空間位置特定に切り替えることができる。内部空間5と周囲環境11との間の移行領域では、内部空間位置特定も外部空間位置特定も共に利用可能である。
【0038】
したがって全部として、反射信号のマイナスの影響を除去し、キーデバイス3の位置特定を確実に実行することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
2 ロッキングシステム
3 キーデバイス
4 利用者
5 内部空間
6 外部空間トランシーバ
7 前面領域
8 後尾領域
9 内部空間トランシーバ
10 制御装置
11 周囲環境
12 壁
図1