(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20230425BHJP
H02K 11/20 20160101ALI20230425BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K11/20
H02K7/14 B
(21)【出願番号】P 2021555074
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2020056029
(87)【国際公開番号】W WO2020182662
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-08
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521412629
【氏名又は名称】メレクス イー・ダブリュ・エス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】MELECS EWS GmbH
【住所又は居所原語表記】GZO-Technologiestrasse 1, 7011 Siegendorf (Bgld.), Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ドップラー
(72)【発明者】
【氏名】レオポルト ヘリンガー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヨハン マイアー
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-536582(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192280(WO,A1)
【文献】特開2019-002404(JP,A)
【文献】特開2006-083760(JP,A)
【文献】特開2000-073962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
H02K 11/20
H02K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開ループまたは閉ループ制御ユニットと流体アクチュエータとを備えた電気機械であって、前記開ループまたは閉ループ制御ユニットが、前記アクチュエータの開ループまたは閉ループ制御用に設けられている電気機械において、
前記開ループまたは閉ループ制御ユニットが、熱伝導性の注型材料(2)によって鋳包まれた支持プレート(3)を有し、前記開ループまたは閉ループ制御ユニットが、前記注型材料(2)の領域において、流体が充填された、前記アクチュエータ(1)のチャンバ(4)に接触して
おり、
前記アクチュエータ(1)の第2ケーシング(9)に接している前記注型材料(2)が、前記開ループまたは閉ループ制御ユニットの第1ケーシング(8)に注入されている、ことを特徴とする、電気機械。
【請求項2】
前記注型材料(2)が、48~53の範囲のショアA硬度を有するポリウレタンで構成されている、ことを特徴とする、請求項1記載の電気機械。
【請求項3】
前記注型材料(2)が、45~55の範囲のショアA硬度を有するシリコーンで実施されている、ことを特徴とする、請求項1記載の電気機械。
【請求項4】
前記支持プレート(3)は、両面実装型である、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項5】
前記開ループまたは閉ループ制御ユニットは、制御器(5)として構成されており、前記支持プレート(3)に配置されたセンサを有する、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項6】
前記アクチュエータ(1)は、ハイドロリックアクチュエータとして構成されている、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項7】
前記アクチュエータ(1)は、圧縮空気式アクチュエータとして構成されている、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項8】
前記開ループまたは閉ループ制御ユニットは、少なくとも1つの電気コンタクトを介して前記アクチュエータ(1)に接続されている、ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項9】
前記注型材料(2)は、0.97W/mKの熱伝導率を有する、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの開ループまたは閉ループ制御用に設けられた開ループまたは閉ループ制御ユニットと、流体アクチュエータとを備えた電気機械に関する。
【0002】
特に、車両用電子装置では多くの場合に、限定された組み込みスペースを可能な限りに良好に利用しかつ導線経路を短く維持するために、モータ、変速機、ポンプまたはシャーシコンポーネントなどに、制御電子装置を備えた装置を組み込む必要がある。例えば、トランジスタが取り付けられた支持プレートによって放出される熱は、装置の損傷および寿命の短縮を回避するために、効果的に排出されなければならない。
【0003】
従来技術からは、電気装置用の冷却装置が記載された欧州特許出願公開第2429273号明細書が公知である。支持プレートには、電子回路が配置されている。ここでは、円筒形の押圧ドームが、損失出力を発生する素子に機械的および熱的に接触している。押圧ドームは、ケーシング内壁部と、損失出力を発生する素子との間に設けられており、冷却体として実施されたケーシングカバーの内側に支持プレートを押し付ける。このケーシングカバーを介して、損失出力を発生する素子からの熱が周囲に排出される。
【0004】
さらに、国際公開第2018/114349号には、電気機械用のケーシングが示されており、このケーシングには、冷却装置が周囲を取り囲むように上に配置された支持プレートが設けられている。
【0005】
これらのアプローチは、その公知の形態において、電気装置および電気機械用に、もしくは電子構成部材の冷却のために、専用の冷却装置が使用されており、これらの冷却装置用に、対応する設置スペースを設けなければならないという欠点を有する。
【0006】
本発明の根底にある課題は、従来技術に対してさらに発展させたコンパクトな電気機械であって、効果的でありながら付加装置なしに冷却される電子コンポーネントを備えた電気機械を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明により、冒頭に述べられた形態の電気機械であって、開ループまたは閉ループ制御ユニットが、熱伝導性の注型材料(Vergussmasse)によって鋳包まれた(umgossen)支持プレートを有し、開ループまたは閉ループ制御ユニットが、注型材料の領域において、流体が充填された、アクチュエータのチャンバに接触している電気機械によって解決される。
【0008】
支持プレートが注型材料によって取り囲まれることにより、損失出力を発生する、支持プレートの実装素子から注型材料に直接に熱伝達が行われる。開ループまたは閉ループ制御ユニットは、注型材料の領域において、流体が充填された、アクチュエータのチャンバに接触しているため、注型材料に伝達された熱は流体に放出される。したがって、支持プレートの実装素子、または開ループまたは閉ループ制御ユニットが効果的に冷却される。 例えば、支持プレートに配置される専用の冷却装置を省略することができ、これにより、設置スペースが節約され、構成部材のサイズを小さくすることができる。さらに、注型材料により、支持プレートおよびその実装素子が、周囲の影響から(例えば、侵入する物質から)および負荷から(例えば衝突から)有利に保護される。
【0009】
注型材料が、48~53の範囲のショアA硬度を有するポリウレタンで構成されていると有利である。
【0010】
この手段により、支持プレートおよびその実装素子は、特に密に注型材料によって取り囲まれ、すなわち、特に効果的に周囲の影響から保護される。さらに、ポリウレタンの使用により、構成部材のサイズが小さくなる。
【0011】
有利な一実施形態が得られるのは、一方の側がプレートによって閉じられている、開ループまたは閉ループ制御ユニットの第1ケーシングに注型材料が注入されている場合であり、プレートは、アクチュエータの第2ケーシングに接している。
【0012】
この手段により、機械がコンパクトに実施される。開ループまたは閉ループ制御ユニットと、アクチュエータとの間のケーブルの敷設を省略することができる。
【0013】
有利な一解決手段が得られるのは、アクチュエータの第2ケーシングに接している注型材料が、開ループまたは閉ループ制御ユニットの第1ケーシングに注入されている場合である。
【0014】
このような手段により、特に効果的な開ループまたは閉ループ制御ユニットの冷却が行われる。というのは、注型材料からの熱は、第2ケーシング、もしくは流体が充填された、アクチュエータのチャンバに直接に放出されるからである。
【0015】
以下では、実施例に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【0017】
図1には、本発明による電気機械の例示的な一実施形態が断面図で示されている。
【0018】
電子制御器5として構成された開ループまたは閉ループ制御ユニットは、支持プレート3を有し、支持プレート3は、ポリウレタン製の熱伝導性注型材料2によって完全に鋳包まれておりかつガラス繊維で強化されたポリアミドによって構成された第1ケーシング8内に配置されている。
【0019】
支持プレート3には、圧力センサとして構成された第1実装素子11と、第2実装素子12と、第3実装素子13と、第4実装素子14とが設けられており、これらは注型材料2によって覆われている。第1実装素子11は、支持プレート3の下面15に、また第2実装素子12と、第3実装素子13と、第4実装素子14とは支持プレート3の上面16に配置されている。したがって支持プレート3は、両面実装型である。
【0020】
第1ケーシング8および支持プレート3は、円筒形に実施されている。第1ケーシング8は、はめ込み式のプレート10により、端面が閉じられている。プレート10は、第1ケーシング8によって締め付けられている。
【0021】
注型材料2は、第1ケーシング8とプレート10とによって形成されるケーシング内部空間を完全に埋めている。注型材料2のポリウレタンは、48~53の範囲のショアA硬度、0.97W/mKの熱伝導率および約-60℃のガラス温度を有する。したがって電気機械は、広い温度範囲において使用可能である。
【0022】
ポリウレタンで注型材料2を実施することは、好適な解決手段である。しかしながら本発明によれば、45~55の範囲のショアA硬度を有するシリコーンで注型材料2を構成することも考えられ、これにより、ポリウレタンでの実施に匹敵する注型材料2の特性が達成される
【0023】
支持プレート3の上面16の領域では、第1銀製コンタクトピンとして構成された第1コンタクト6が、支持プレート3に接続されており、かつ第1ケーシング8から突き出ている。この第1コンタクト6と、同様に銀製コンタクトピンとして実施されており、上面16の領域において支持プレート3に接続されておりかつ第1ケーシング8から突き出ている、
図1では見えない別のコンタクトとを介して、支持プレート3は、図示されていない電源に接続されている。
【0024】
支持プレート3の下面15の領域では、第2銀製コンタクトピンとして実施された第2コンタクト7と、別の銀製コンタクトピンとして構成された、
図1では見えない別のコンタクトとが支持プレート3に接続されている。
【0025】
第2コンタクト7と、支持プレート3の下面15の領域に配置された別のコンタクトとを介して、制御器5は、ハイドロリックアクチュエータとして構成された流体アクチュエータ1のモータ17に接続されている。
【0026】
制御器5は、締め付け接合によってアクチュエータ1に接合されている。しかしながら本発明によれば、制御器5とアクチュエータ1との間のねじ接合を設けることも考えられる。
【0027】
第1コンタクト6、第2コンタクト7および別のコンタクトは、部分的に注型材料2によって覆われている。第2コンタクト7とモータ17との間には第1導通経路18が設けられており、支持プレート3の下面15の領域に設けられている別のコンタクト間には、見えない別の導通経路が設けられている。
【0028】
第1導通経路18および別の導通経路は、アクチュエータ1内に、アクチュエータ1の円環状部19に配置されている。制御器5とアクチュエータ1との間の延在するケーブルは、不要である。
【0029】
アクチュエータ1もしくはその円環状部19は、開ループまたは閉ループ制御ユニットに面一に接合されているかもしくは第1ケーシング8に面一に終端している。
【0030】
モータ17は、円環状のステータ20およびロータ21を備えたブラシレス直流電動モータとして構成されている。ステータ20は、アクチュエータ1の円環状部19に設けられている。ステータ20、もしくは制御器5とのその接続を介して、回転可能であるがスライド不能にアクチュエータ1に軸支されているロータ21が駆動される。
【0031】
ロータ21の回転運動は、ピストンロッド22のスピンドル状の部分に伝達され、これにより、ピストンロッド22と、これに接続されたピストン23とが、長手方向軸線24の方向に並進運動する。
【0032】
ピストンロッド22およびピストン23は、円環状部19によって覆われている、アクチュエータ1のシリンダ25内に設けられている。ピストンロッド22は、図示されていない支持部を介してシリンダ25に軸支されて案内され、これにより、回転運動および並進運動を行うことができる。
【0033】
ピストンロッド22とシリンダ25との間には、水分および粒子などがシリンダ25に侵入することを阻止するために、同様に図示されていない第1シールが設けられている。
【0034】
可動のピストン23とシリンダ25によって形成されているチャンバ4には、作動流体が充填されている。したがってシリンダ25は、この作動流体についての第2ケーシング9として機能する。
【0035】
チャンバ4もしくは第2ケーシング9は、制御器5のプレート10に直接に接している。開ループまたは閉ループ制御ユニットは、注型材料2の領域においてチャンバ4に接触している。
【0036】
これにより、支持プレート3もしくは第1実装素子11、第2実装素子12、第3実装素子13および/または第4実装素子14から注型材料2に伝達される熱は、注型材料2からプレート10を介してチャンバ4に、すなわち作動流体に排出される。
【0037】
本発明によれば、プレート10を省略することも可能であり、これにより、注型材料2は、チャンバ4に直接に接する。
【0038】
チャンバ4は、第1ハイドロリック管路26を介して、図示されていない液体容器に接続されており、すなわち、この液体容器を介して作動流体が供給される。
【0039】
チャンバ4は、第2ハイドロリック管路27を介して、同様に図示されていない自動車のハイドロリックテレスコープ式ショックアブソーバに接続されている。ピストン23もしくは作動流体の圧力により、テレスコープ式ショックアブソーバの減衰作用が設定される。このために、測定プローブがチャンバ4に突き出ている圧力センサもしくは第1実装素子11により、チャンバ4における圧力が連続して測定される。
【0040】
第1実装素子11とシリンダ25との間には、作動流体による注型材料2の濡れを阻止するために、図示されていない第2シールが設けられている。
【0041】
制御器5により、測定される圧力と、定められた目標圧力との調整が連続して行われる。測定される圧力と目標圧力との間の差分に基づき、モータ17は、ステータ20に加わる対応する電圧設定値を介して制御器5によって閉ループ制御され、すなわち、対応するピストン位置および運動を用いて、作動流体における、もしくはテレスコープ式ショックアブソーバにおける目標圧力を達成もしくは維持するために、モータ17はオンまたはオフされるか、またはロータ21の回転数が設定される。
【0042】
アクチュエータ1をハイドロリックアクチュエータとして実施することは、有利な解決手段である。しかしながら本発明によれば、例えば圧縮空気式アクチュエータ(Pneumatikaktuator)としてアクチュエータ1を構成して、鉄道車両の台車ブレーキにおける制動シリンダ圧を設定するためにこれを使用することも考えられる。
【0043】
さらに、開ループまたは閉ループ制御ユニットを制御器5として使用するのではなく、開ループ制御ユニットとして、すなわち、センサによって制御対象の量を測定することなく、もしくはこの量を制御変数にフィードバックすることなく使用することが考えられる。例えば、開ループ制御ユニットは、ハイドロリッククランプ装置に使用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 アクチュエータ
2 注型材料
3 支持プレート
4 チャンバ
5 制御器
6 第1コンタクト
7 第2コンタクト
8 第1ケーシング
9 第2ケーシング
10 プレート
11 第1実装素子
12 第2実装素子
13 第3実装素子
14 第4実装素子
15 下面
16 上面
17 モータ
18 第1導通経路
19 円環状部
20 ステータ
21 ロータ
22 ピストンロッド
23 ピストン
24 長手方向軸線
25 シリンダ
26 第1ハイドロリック管路
27 第2ハイドロリック管路