IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シュヴァン コスメティクス インターナツィオナル ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】粘性の物質を塗布するための装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/01 20060101AFI20230425BHJP
   B43K 8/04 20060101ALI20230425BHJP
   A45D 34/04 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
B05C17/01
B43K8/04 100
A45D34/04 525B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021566226
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020065281
(87)【国際公開番号】W WO2020245150
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】202019002457.3
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521485896
【氏名又は名称】シュヴァン コスメティクス インターナツィオナル ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Schwan Cosmetics International GmbH
【住所又は居所原語表記】Schwanweg 1, 90562 Heroldsberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】モニカ シュロフト
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート ブレンデル
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ハインライン
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06200055(US,B1)
【文献】特開2017-189416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00-21/00
B43K 1/00- 1/12
5/00- 8/24
A45D33/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に化粧、筆記、塗装、描画および/またはマーキングの目的で、粘性の物質を塗布するための装置(1)であって、
前記物質用のタンク(40)と、
アプリケータ(2)と、
前記物質を前記タンク(40)から前記アプリケータ(2)に搬送するように設計されたコンベヤ(3)と、
を有する装置(1)において、
前記コンベヤ(3)が、シリンダ(10)と、前記シリンダ(10)内に軸線方向に変位可能に配置された第1の閉鎖装置(80)および第2の閉鎖装置(30)と、前記閉鎖装置(80,30)を軸線方向に変位させるためのポンプタペット(20)と、前記シリンダ(10)と前記タンク(40)との間の第1の接続通路(41)と、前記シリンダ(10)と前記アプリケータ(2)との間の第2の接続通路(21)と、を有し、
前記第1の閉鎖装置(80)が、前記シリンダ(10)に対する前記第1の閉鎖装置(80)の位置に応じて前記第1の接続通路(41)を開閉し、
前記第2の閉鎖装置(30)が、前記ポンプタペット(20)に対して調整可能であり、前記ポンプタペット(20)に対する位置に応じて前記第2の接続通路(21)を開閉し、前記シリンダ(10)と協働して、ピストンとして機能するポンプを形成し、
前記第2の閉鎖装置(30)が、前記シリンダ(10)に対する圧力行程で前記ポンプタペット(20)の第1の停止部(24a)に当接し、前記シリンダ(10)に対する吸引行程で前記ポンプタペット(20)の第2の停止部(24b)に当接することを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記第2の閉鎖装置(30)が、前記ポンプタペット(20)に設けられた第1の停止部(24a)と第2の停止部(24b)との間で調整可能であり、前記第1の停止部(24a)に当接したときに前記第2の接続通路(21)を開放し、前記第2の停止部(24b)に当接したときに前記第2の接続通路(21)を閉鎖することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1の閉鎖装置(80)が、前記シリンダ(10)に対する圧力行程で前記第1の接続通路(41)を閉鎖し、前記シリンダ(10)に対する吸引行程の少なくとも一部の区間で前記第1の接続通路(41)を開放することを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記第2の接続通路(21)が、少なくとも部分的に前記ポンプタペット(20)内に配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記第2の閉鎖装置(30)が、前記ポンプタペット(20)をリング状またはスリーブ状に取り囲んでいることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記第2の閉鎖装置(30)が、Oリングとして設計されていることを特徴とする、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記シリンダ(10)が、前記タンク(40)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記第1の閉鎖装置(80)が、前記ポンプタペット(20)と一体に形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記第1の閉鎖装置(80)が、前記ポンプタペット(20)と一体に形成されていないことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
互いに相対的に回転可能な2つの部品(50a,50b)と、前記2つの部品(50a,50b)の互いに相対的な回転を前記ポンプタペット(20)の軸線方向の移動に変換するトランスミッション(23,71)と、を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記トランスミッション(23,71)が、ガイド曲線(23)によってガイドされるカム(51a)を有し、前記ガイド曲線(23)が、閉路に沿って延在していることを特徴とする、請求項10記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に化粧、筆記、塗装、描画および/またはマーキングの目的で、粘性の物質を塗布するための装置であって、物質用のタンクと、アプリケータと、タンクからアプリケータに物質を搬送するように設計されたコンベヤと、を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプの装置は、例えば、独国特許発明第10327589号明細書から既知である。ポンプを備える容器は、独国特許発明第19742559号明細書からも既知である。既知の装置では、コンベヤは複数の個別の部品で構成され、高度な設置作業が必要である。さらに、既知の装置は、例えば、化粧用物質に関連して問題となる材料を使用している。例としては、鋼製の戻しばねおよび鋼製の弁体がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、部品点数を削減するように上記のタイプの装置を開発するという目的に基づいている。さらに、塗布される物質に関しては、問題となる材料を避ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、上記目的は、コンベヤが、シリンダと、シリンダ内に軸線方向に変位可能に配置された第1の閉鎖装置および第2の閉鎖装置と、閉鎖装置を軸線方向に変位させるためのポンプタペットと、シリンダとタンクとの間の第1の接続通路と、シリンダとアプリケータとの間の第2の接続通路とを有し、第1の閉鎖装置が、シリンダに対する第1の閉鎖装置の位置に応じて第1の接続通路を開閉し、第2の閉鎖装置が、ポンプタペットに対して調整可能であり、ポンプタペットに対する第2の閉鎖装置の位置に応じて第2の接続通路を開閉し、シリンダと協働して、ピストンとして機能するかまたはピストンに相当するポンプを形成していることによって解決される。
【0005】
本発明によれば、上記の記述によれば、ポンプタペットは、二重の機能、すなわち、一方では2つの閉鎖装置の軸線方向の変位機能と、他方では第2の閉鎖装置に対する位置を変更することによる第2の接続通路の開閉機能とを有している。最初に、これにより、必要なコンポーネントの数が削減される。例として、(追加の)弁を設ける必要がない。例えば、通常鋼製である弁体としての球体も節約されるため、塗布される物質に関連して問題となる物質も回避される。第2の閉鎖装置は、ポンプの一部の閉鎖および形成という二重の機能を有している。
【0006】
本発明に基づいて設計された塗布装置の動作モードは、例えば、ポンプタペットによって制御される2つの閉鎖装置の適切な移動によって、塗布される物質がタンクからシリンダに搬送され、そこからアプリケータに搬送されるようになっている。
【0007】
本発明と同等の塗布装置は、2018年4月24日に出願された独国特許出願公開第102018003323号明細書から既知である。比較すると、本発明によるアプリケータは、各々の行程動作におけるより短いアイドル行程のために、より精確な応答挙動を実現している。さらに、ポンプタペットの外面にある2つの接続開口部の1つが省略されているため、摩擦の影響が少なくなる。設けられる可能性のあるポンプケージをタンクに統合することで、よりシンプルで安価な射出成形ツールを使用することができる。最後に、安全な漏れ防止が実現される。安定したインクで作業することさえ可能である。
【0008】
本発明によれば、第2の閉鎖装置は、シリンダに対する圧力行程でポンプタペットの第1の停止部に対して静止し、シリンダに対する吸引行程でポンプタペットの第2の停止部に対して静止することが好ましい。
【0009】
換言すれば、2つの停止部が設けられることによって、第2の閉鎖装置の移動は、ポンプタペットによって制御することができる。
【0010】
本発明によれば、第2の閉鎖装置は、ポンプタペットに設けられた第1の停止部と第2の停止部との間で調整可能であり、第1の停止部に当接したときに第2の接続通路を開放し、第2の停止部に当接したときに第2の接続通路を閉鎖することがさらに好ましい。2つの停止部は、好ましくは、第2の閉鎖装置が圧力行程または吸引行程で当接する2つの停止部と同一である。このようにして、第2の接続通路を、シリンダに対する圧力行程で第2の閉鎖装置により自動的に開放し、吸引行程で自動的に閉鎖することを実現することができる。このようにして、吸引行程と、それに続く圧力行程とを使用して、物質をシリンダからアプリケータに搬送することができる。
【0011】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、第1の閉鎖装置は、シリンダに対する圧力行程で第1の接続通路を閉鎖し、シリンダに対する吸引行程の少なくとも一部の区間で第1の接続通路を開放する。
【0012】
次に、第1の接続通路の自動開閉により、吸引行程によって物質がタンクからシリンダに確実に搬送される。
【0013】
したがって、本発明によれば、連続する圧力行程および吸引行程により、好ましくは、塗布される物質が、最初にタンクからシリンダに搬送され、次にシリンダから塗布要素にさらに搬送され、この目的のために必要な第1の接続通路および第2の接続通路の開閉は、各々の場合に自動的に、そして各々の場合に2つの閉鎖装置を適切に使用することによってのみ行われる。
【0014】
本発明によれば、第2の接続通路が、少なくとも部分的にポンプタペット内にあることがさらに好ましい。これにより、コンベヤひいては塗布装置全体が特にコンパクトになる。
【0015】
さらに好ましくは、第2の閉鎖装置は、ポンプタペットをリング状またはスリーブ状に取り囲んでいる。したがって、本発明の特に好ましい実施形態によれば、第2の閉鎖装置はOリングとして設計することができる。これらの設計は、更なるコンパクトさを実現する働きをする。
【0016】
本発明によれば、シリンダは、好ましくは、タンクと一体に形成することができる。このようにして、部品点数が削減される。
【0017】
さらに好ましくは、第1の閉鎖装置は、ポンプタペットと一体に設計することができる。これも部品点数を削減する働きをする。しかしながら、同様に、第1の閉鎖装置をポンプタペットと一体に設計しないこともできる。それらを別々に製造することはほとんど問題を引き起こさず、実質的にコストを増加させない。
【0018】
2つの閉鎖装置を制御するためのポンプタペットの移動は、本発明によれば、任意の方法で実行することができる。しかしながら、アプリケータは、互いに回転可能な2つの部品と、2つの部品の互いの回転をポンプタペットの軸線方向の移動に変換するトランスミッションとを有することが好ましい。互いに回転可能な2つの部品は、例えば、装置シャフトの2つの部品であってよい。この設計では、圧力行程または吸引行程を生成するために、前述した部品を相互に回転させるだけで十分である。
【0019】
本発明によれば、トランスミッションはまた、好ましくは、ガイド曲線によってガイドされるカムを有し、ガイド曲線は、閉路に沿って延在している。例えば、この設計では、互いに回転可能な2つの部品が常に互いに同じ方向に回転するときに、圧力行程の後に吸引行程も発生する。これは、ガイド曲線で表される閉路により、ポンプタペット上のカムが、2つの回転可能な部品が互いに回転する方向に関係なく、常に2つの閉鎖装置を前後に移動させるからである。
【0020】
すべての部品はプラスチック、特にABSまたはPPから製造することができる。
【0021】
以下では、添付の図面を参照しながら好ましい例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明によるアプリケータの第1の例示的な実施形態の縦断面図である。
図2a】一方は、図1と同じ図であるが、縮尺が小さく、他方は、その拡大部分図である。
図2b図2aと同じ図であるが、動作条件が異なっている。
図2c図2aと同じ図であるが、動作条件が異なっている。
図2d図2aと同じ図であるが、動作条件が異なっている。
図2e図2aと同じ図であるが、動作条件が異なっている。
図3図1による、アプリケータのシリンダ、タンク、およびドラグピストンの図である。
図4a図1による、異なる回転位置にあるアプリケータのポンプタペットの図である。
図4b図1による、異なる回転位置にあるアプリケータのポンプタペットの図である。
図5】カートリッジの形態の図1によるアプリケータの第1の回転可能な部品の図である。
図6a図1によるアプリケータの駆動リングの図である。
図6b図1によるアプリケータの駆動リングの図である。
図7】プラグの形態の図1によるアプリケータの第1の閉鎖装置の図である。
図8】Oリングの形態の図1によるアプリケータの第2の閉鎖装置の図である。
図9図1と同じ図であるが、異なる例示的な実施形態の図である。
図10a図2a~2eと同じ図であるが、第2の例示的な実施形態の図である。
図10b図2a~2eと同じ図であるが、第2の例示的な実施形態の図である。
図10c図2a~2eと同じ図であるが、第2の例示的な実施形態の図である。
図10d図2a~2eと同じ図であるが、第2の例示的な実施形態の図である。
図10e図2a~2eと同じ図であるが、第2の例示的な実施形態の図である。
図11a図4aおよび図4bと同じ図であるが、やはり第2の例示的な実施形態の図である。
図11b図4aおよび図4bと同じ図であるが、やはり第2の例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、粘性の物質を塗布するための本発明による装置1(以下、塗布装置1という)の第1の実施形態の断面図である。塗布装置1は、Z軸方向に対して平行な長手方向軸線Lに沿って延びている。
【0024】
X軸方向およびY軸方向は、図1がY-Z平面の断面図となるように定義されている。塗布装置1は、例えば化粧、筆記、塗装、描画および/またはマーキングの目的で、粘性の物質を塗布するためのアプリケータ2を有している。さらに、塗布装置1は、アプリケータ2に接続されたカートリッジ50aと、カートリッジ50aに接続されたシャフト50bとを有している。カートリッジ50aとシャフト50bとは、長手方向軸線Lの周りで互いに回転することができる。このため、カートリッジ50aは第1の回転可能な部品とも呼ばれ、シャフト50bは第2の回転可能な部品とも呼ばれる。
【0025】
シャフト50bは、粘性の物質を収容するためのタンク40として設計された中空の内部を有している。ポンプケージ42がタンク40内に形成されており、このポンプケージは、第1の接続通路41を介してタンク40に接続されており(図2a)、第1の接続通路41は、第1の投与開口部とも呼ばれる。第1の接続通路41を介して、粘性の物質は、タンク40からポンプケージ42へ通過することができる。ドラグピストン60はタンク40内に配置されており、粘性の物質がタンク40から排出されると、アプリケータ2に向かって移動する。このようにして、タンク40内で一定の圧力が維持される。ドラグピストン60の代わりに、閉鎖質量を使用することもできる。
【0026】
コンベヤ3は、粘性の物質をタンク40からポンプケージ42を介してアプリケータ2に搬送する働きをする。この目的のために、コンベヤ3は、図1に示される例示的な実施形態では、ポンプケージ42と一体に形成されるシリンダ10を有している。さらに、コンベヤ3は、シリンダ10内に軸線方向に変位可能に配置されたOリング30と、Oリング30の軸線方向の変位のためのポンプタペット20とを有している。Oリング30はポンプタペット20に押し付けられる。ポンプタペット20は、アプリケータ2に接続された前端部27aと、ポンプケージ42内に延びる後端部27bとを有している。タペット孔26は、ポンプタペット20の前端部27aからポンプタペット20を通ってポンプタペット20の後端部27bまで延びている。ポンプタペット20の後端部27bに、第2の接続通路21が形成されており、これは、ポンプケージ42とタペット孔26との間の接続を表し、第2の投与開口部とも呼ばれる。
【0027】
カートリッジ50aをシャフト50bに対して長手方向軸線Lの周りで回転させることにより、ポンプタペット20は、シリンダ10内で長手方向軸線L(Z軸)に沿って移動する。この目的のために、塗布装置1は、トランスミッション23,70を備えて設計されている。トランスミッション23,70は、2つのカム71と、リンク23とを有している。カム71は、ポンプタペット20に形成されたリンク23と係合している。図4aおよび図4bにおいて観察できるように、リンク23は正弦波形の通路として設計されている。しかしながら、リンク23は、この形状に限定されるものではない。2つの回転可能な部品、すなわちカートリッジ50aとシャフト50bとが互いに回転する場合、カム71がリンク23に係合すると、回転運動が、長手方向軸線Lに沿ったポンプタペット20の軸線方向の移動に変換される。図4aおよび図4bにおいてさらに観察できるように、リンク23は閉路に沿って延在している。カートリッジ50aとシャフト50bとが互いに回転する場合、カム71は、リンク23の閉路のために、回転方向に関係なく、ポンプタペット20を繰り返し上下に移動させる。タンク40上の第1の回転防止装置43およびポンプタペット20上の第2の回転防止装置22は、ポンプタペット20をタンク40に回転可能に結合する働きをする。同様に、駆動リング70上の第3の回転防止装置72およびカートリッジ50a上の第4の回転防止装置52は、駆動リング70をカートリッジ50aに回転可能に結合する働きをする。
【0028】
カートリッジ50aとシャフト50bとを互いに回転させることによってポンプタペット20を図1に示す位置から下向きに移動させると、第1の停止部24aがOリング30に当接する。したがって、Oリング30は下向きに押圧される。次に、ポンプタペット20を上方に移動させると、ポンプタペット20の第2の停止部24bがOリング30と接触する。次に、ピストン30は、ポンプタペット20によって上方に移動させられる。したがって、カートリッジ50aとシャフト50bとが互いに回転すると、カートリッジ50aとシャフト50bとが互いに回転する方向に関わらず、Oリング30は、シリンダ10に対してだけでなく、ポンプタペット20に対しても、繰り返し上下方向に移動する。
【0029】
図4aおよび4bは、正弦波形のリンク23を有する本発明によるコンベヤ3のポンプタペット20を示している。図4aに示されるポンプタペット20は、図4bでは長手方向軸線L(Z軸)を中心に90°回転している。ポンプタペット20の後端部27bにおいて、第2の接続通路21は、図4aで観察することができる。さらに、第2の回転防止装置22は、図4bで観察することができ、これは第1の回転防止装置43と係合する。
【0030】
以下では、図2a~2eを参照して、図1による実施形態における塗布装置1の機能を例として説明する。
【0031】
図2aは、図1と同様に、開始位置にある塗布装置1を示している。開始位置では、ポンプタペット20およびOリング30は、Oリング30がポンプタペット20の第2の接続通路21を閉鎖するように、シリンダ10内に配置されている。タンク40およびポンプケージ42は、第1の接続通路41を介して互いに接続されている。ポンプケージ42は、この開始位置において粘性の物質で充填されている。
【0032】
ここで、カートリッジ50aとシャフト50bとは、長手方向軸線Lの周りで互いに回転する。したがって、任意の方向に回転を行うことができる。リンク23とカム71との相互作用により、ポンプタペット20は、上で説明したように、タンク40の方向に長手方向軸線Lに沿って移動する。したがって、カートリッジ50aの回転は、ポンプタペット20のリンク23内を走行しているカム71を介して、また、シャフト50bの第1の回転防止装置43にガイドされるポンプタペット20の第2の回転防止装置22を介して、長手方向軸線Lに沿ったポンプタペット20の移動に変換される。ポンプタペット20の軸線方向の移動により、ポンプタペット20の第1の停止部24は、Oリング30と接触する。次に、Oリング30は、ポンプタペット20と共にタンク40の方向に移動する。
【0033】
図2bは、ポンプタペット20がタンク40の方向に移動した状態を示している。ポンプタペット20の移動とポンプケージ42への粘性の物質の充填とにより、プラグ80もタンク40の方向に移動し、次に、図2aによる位置ではまだ開放していた、タンク40とポンプケージ42との間の第1の接続通路41を閉鎖する。すでに述べたように、圧力は、ポンプケージ42内のポンプタペット20の移動によってポンプケージ42内の粘性の物質に加えられるので、タンク40の方向へのOリング30のこの移動は、圧力行程とも呼ばれる。圧力行程でポンプタペット20によって実行されるこの移動は、図2のポンプタペットに対して左方へのOリング30の変位をもたらし、それにより、第2の接続通路21が開放される。このようにして、ポンプケージ42に蓄積された圧力は、粘性の物質を第2の接続通路21を通ってタペット孔26を介してアプリケータ2に搬送することによって減圧される。
【0034】
図2cは、ポンプタペット20がポンプケージ42内に可能な限り押し付けられた状態を示している。長手方向軸線Lの方向へのポンプタペット20の最大移動量は、軸線方向行程と呼ばれ、リンク23の曲線形状によって決定される。図4aおよび4bに示すように、例えば正弦波形のリンク23の設計により、カートリッジ50aを回転方向にさらに回転させると、ポンプタペット20の移動方向が変化し、アプリケータ2の方向に移動する。Oリング30とシリンダ10との間の静止摩擦により、Oリング30は、第2の停止部24bがOリング30と接触したときにのみ、アプリケータ2の方向に移動する。結果として、第2の接続通路21は、ポンプタペット20を取り囲むOリング30によって閉鎖される。したがって、それ以上の粘性の物質はタペット孔26に入ることができない(図2dを参照)。
【0035】
カートリッジ50aをさらに回転させると、図2eに示す状態が実現される。シリンダ10内のOリング30のアプリケータ2に向かっての移動は、吸引を生じさせ、ひいては、ポンプケージ42内に真空を生じさせる。この真空は、同じくアプリケータ2の方向にプラグ80の移動を引き起こす。これにより、第1の接続通路41が開放され、粘性の物質をタンク40からポンプケージ42に吸引することによって真空は相殺される。したがって、この移動は吸引行程とも呼ばれる。したがって、ポンプケージ42は、次のポンプサイクルのためにタンク40からの新鮮な物質で充填される。さらに、ドラグピストン60が、真空を通して引きずられる。ここで、カートリッジ50aが長手方向軸線Lの周りでさらに回転すると、塗布装置は、再び図2aによる動作状態に達し、ポンプサイクルが再び開始する。
【0036】
図9~11bに示す本発明の第2の例示的な実施形態は、第1の例示的な実施形態で別個に指定されたプラグ80(第1の閉鎖装置)が、第2の例示的な実施形態ではポンプタペット20と一体に設計されているという事実を除いて、第1の例示的な実施形態に対応している。したがって、部品点数はそれに応じて削減される。
【0037】
しかしながら、機能は実質的に同一であり、図10dによる動作状態では、2つの接続通路41および21が両方とも同時に閉鎖され、その結果、真空のみが発生する。最後の瞬間、すなわち図10eによる動作状態でのみ、タンク40への接続が再び開放され、真空により物質が補充される。これとは対照的に、第1の実施形態では、搬送される物質における機構は、プラグ80を図2dによる状態にすでに移動させているが、これが、物質が図2dによる状態から図2eによる状態へと常に搬送される理由である。
【0038】
上記の説明、特許請求の範囲および図面に開示された本発明の特徴は、個別におよび任意の組み合わせの両方で、その様々な実施形態における本発明の実施に不可欠である。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図11a
図11b