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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】RF増幅器の定利得および自己較正技法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/30 20060101AFI20230425BHJP
   H03F 3/20 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H03F1/30
H03F3/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021569260
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020017362
(87)【国際公開番号】W WO2020163821
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】62/802,344
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521353388
【氏名又は名称】チュービス テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tubis Technology Inc.
【住所又は居所原語表記】8611 Balboa Avenue,San Diego,CA 92123,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ケニー
(72)【発明者】
【氏名】リン,ユーミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジェームズ
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-074121(JP,A)
【文献】特開2013-093733(JP,A)
【文献】特開2012-216896(JP,A)
【文献】特開2005-123860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00- 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数集積回路(Radio Frequency Integrated Circuit:RFIC)の定増幅器利得を維持する方法であって、
電流ミラーと、第1のトランジスタ(M1)と、第2のトランジスタ(M2)を含むバイアスジェネレータによってバイアス電流またはバイアス電圧を生成し、前記M2のサイズは前記M1のK倍であり、前記Kは正整数であり、前記M1のゲートと前記M2のゲートとは高精度および温度安定オフチップ外部抵抗により接続され
較正回路および前記RFIC内のN個のトランジスタを使用して前記バイアスジェネレータを較正し、記Nは(K+1)より大きい正整数であり、前記較正は、前記較正回路を使用して前記N個のトランジスタのI-V特性曲線を取得し、当該N個のトランジスタから(K+1)個の全く同じトランジスタを選択し、そのうちの1個をM1とし、残りのK個をM2とすることで前記M1と前記M2のサイズ比を高精度にKとすることを含み、
前記較正されたバイアスジェネレータを使用して、前記RFICの前記定増幅器利得を維持すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記RFICの相互コンダクタンスGmは、トランジスタM1とトランジスタM2との前記サイズ比Kによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記較正回路は、対応するトランジスタのゲート電圧に対するドレイン電流を測定することによって前記N個のトランジスタごとに、前記I-V特性曲線を取得する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記較正回路は、前記対応するI-V特性曲線における所望のGmに近いトランジスタに対する同じ動作ポイントを取得する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記較正回路は、前記I-V特性曲線に基づいて、前記N個のトランジスタから、最良の整合比Kを有する前記(K+1)個のトランジスタを選択する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記N個のトランジスタは、較正エンジンによって制御される複数のスイッチによって前記較正回路または前記バイアスジェネレータに接続され、前記複数のスイッチは第1のスイッチと第2のスイッチを含み、前記第1のスイッチは前記N個の各トランジスタと前記較正回路を接続し、前記第2のスイッチは前記N個の各トランジスタと前記バイアスジェネレータとを接続する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記バイアスジェネレータは、前記電流ミラーをさらに調整し、前記比Kの整合誤差を補償する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記I-V特性曲線の前記Gmの補間誤差は、2個の直列抵抗を使用して電圧バイアスにより補償され
前記2個の直列抵抗は前記M1及びM2に接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無線周波数集積回路(RFIC)であって、
バイアスジェネレータと、較正回路と、N個のトランジスタとを備え、
前記バイアスジェネレータは、電流ミラーと、第1のトランジスタ(M1)と、第2のトランジスタ(M2)と、高精度および温度安定オフチップ外部抵抗とを含み、前記M2のサイズは前記M1のK倍であり、前記Kは正整数であり、前記M1のゲートと前記M2のゲートとは前記高精度および温度安定オフチップ外部抵抗により接続され、
前記バイアスジェネレータは、バイアス電流またはバイアス電圧を生成し、
前記較正回路および前記N個のトランジスタを使用して前記バイアスジェネレータを較正し、前記Nは(K+1)より大きい正整数であり、前記較正は、前記較正回路を使用して前記N個のトランジスタのI-V特性曲線を取得し、当該N個のトランジスタから(K+1)個の全く同じトランジスタを選択し、そのうちの1個をM1とし、残りのK個をM2とすることで前記M1と前記M2のサイズ比を高精度にKとし、
前記較正されたバイアスジェネレータを使用して、前記RFICの定増幅器利得を維持する、無線周波数集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月7日に出願の米国仮出願第62/802,344号、表題「RF増幅器の利得の安定化および自己較正技法」に対する米国特許法第119条に基づく優先権を主張し、その主題は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
開示する実施形態は、概して、ワイヤレスネットワーク通信に関し、より詳細には、フェーズドアレイアンテナにおける高精度の増幅器利得を有する無線周波数(Radio Frequency:RF)増幅器に関する。
【背景技術】
【0003】
アンテナ理論において、フェーズドアンテナアレイは、通常、電波のビームを発生させるアンテナのアレイを意味し、アンテナを移動させることなく異なる方向に該ビームを向けるように電気的に操作され得るものである。ビームフォーミングは、特定の方向に無線信号を伝送するようにアンテナのアレイを操作することができる技法である。各信号の位相および振幅は、狭ビームまたはローブにエネルギーを集約させるように、建設的かつ破壊的に加えられる。サイドローブとは、メインローブではない、アンテナのファーフィールド放射パターンである。高密度エリアにおいて動作する複数のアレイアンテナの場合、各アレイアンテナは、特定のユーザ(方向)に向けたそれ自体固有のビームを有する。あるアンテナのアンテナサイドローブによる放射は、隣接するアンテナからユーザが受信する信号への干渉の原因となる。複数のビームアレイアンテナの場合、各アンテナビームは、特定の方向に向いている。あるアンテナビームのアンテナサイドローブによる放射は、隣接するアンテナビームからユーザが受信する信号への干渉の原因となる。
【0004】
典型的なフェーズドアレイアンテナ構成では、複数の無線周波数集積回路(Radio Frequency Integrated Circuit:RFIC)、例えばビームフォーミングRFICが使用される。アンテナ素子の各信号経路は、可変利得増幅器および移相器を含んでいる。各アンテナ素子からの信号は、アンテナサイドローブを制御するために、異なる量で増幅および位相シフトされる(振幅および位相テーパリング)。例えば、チェビシェフまたはテイラーテーパリングが、アンテナサイドローブを弱めるために通常用いられる。したがって、精密な振幅テーパリングを実現するためにRFICにおける増幅器利得の較正(一貫した利得の提供)が重要である。低サイドローブを実現するために、振幅テーパリングに対する必要な典型的な精度は0.375dB以下であり、移相器については6または7ビットの精度が必要とされる。動的移相器設計(直交変調器のような)では、位相精度は、同位相増幅器および直交位相増幅器における高精度振幅利得制御によって実現されることに留意されたい。
【0005】
モバイルキャリアによってますます生じる帯域幅不足により、次世代5G広帯域セルラー通信ネットワークに対して、24Gおよび300GHz周辺の未利用のミリメートル波(ミリ波)周波数帯が探索されている。ミリ波ネットワークにおける狭ビームを用いる指向性通信をサポートするために、5G基地局は、典型的には、フェーズドアレイアンテナによる複数のビームをサポートしている。あるビームのサイドローブが、別のビームのメインビームに干渉する。複数のビームのそれぞれで全帯域幅を使用することを可能にする256QAMなどの高次変調信号に対する信号対混信比要件を達成するために、ピークサイドローブレベルを、-40dB以下から-45dB以下に制御することが望ましい。振幅および位相テーパリング(照度の均一化)なしでは、ピークアンテナサイドローブは、メインローブから下-13dBに制限される。
【0006】
RFIC内のRF増幅器は、1)PVT変動(ウェハプロセス、電源電圧および温度の変動)(補償されない場合、数dBの変動となる)、および2)トランジスタまたは受動素子サイズ変動によるランダム変動(この要件は、通常、RFIC内部で使用されるトランジスタ、コンデンサ、抵抗を最小サイズに制限することによって満たされる)、の影響を受ける。アンテナアレイ全体にわたる振幅テーパリングに対する高精度要件(0.375dBのような)を満たすために、アンテナアレイ全体にわたってRFICおよび増幅器を較正することが必要である。製造の複雑性および製造後のアンテナ較正コストを低減するために、RFICを、様々な製造の設計によって自己較正するか、異なる温度の全範囲の追跡を可能にするか、または自動試験装置によって製造プロセス中に較正することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高精度のRF増幅器利得を必要とするRF増幅器のための較正方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例えばCMOS、CaAs、SiGeまたは他のシリコンプロセスで実装されるRFICを伴う無線周波数(RF)増幅器設計は、ウェハプロセスの変動、温度変化、および電源電圧変化に起因する利得変動、ならびにランダムな変動の影響を受ける。オンチップウェハ較正または自己較正のどちらかを通じて、定増幅器利得を実現する4つの方法を提案する。提案する方法は、増幅器バイアス電流の自動調整を通じてプロセスの間の増幅器利得、温度、電源電圧変動を一定に維持する。提案する方法1によって、利得精度を向上させた定相互コンダクタンスGmは、ウェハ較正によって維持される。提案する方法2によって、定相互コンダクタンスGmは、異なるトランジスタによる時間領域平均化によって維持される。提案する方法3によって、定Gm*RまたはRF利得は、RF増幅器の整合ネットワークのインピーダンスを考慮に入れることで維持される。提案する方法4によって、トランジスタは、公差を低減するために方法1を使用してまずは較正(選択)され、次いで、方法3が適用される。
【0009】
他の実施形態および利点については、後述の発明を実施するための形態にて説明する。本要約は、発明を定義することを目的としていない。本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態によるバイアスジェネレータを使用する複数のフェーズドアレイアンテナの簡略ブロック図である。
図2図2は、RFIC内の無線周波数増幅器で使用される定gmバイアスをサポートするバイアスジェネレータの簡略回路図である。
図3図3は、較正回路を使用してバイアスジェネレータに精密なトランジスタサイズ比を提供する第1の方法を示す図である。
図4図4は、トランジスタサイズの較正誤差による最大誤差に対する第1の方法の改良を示す図である。
図5図5は、実施形態による無線周波数集積回路(RFIC)の定相互コンダクタンス(Gm)バイアスを維持する第1の方法のフロー図である。
図6図6は、バイアスジェネレータに定Gmを提供するために、動作中の時間領域平均化を用いる第2の方法を示す図である。
図7図7は、I-V特性曲線の非線形性によるGmの補間誤差を低減することによる定Gmバイアスジェネレータの改良を示す図である。
図8図8は、一実施形態による無線周波数集積回路(RFIC)の定相互コンダクタンス(Gm)バイアスを維持する第2の方法のフロー図である。
図9図9は、一実施形態によるRF増幅器に定Gm*Requivalentまたは定利得を提供する第3の方法を示す図である。
図10図10は、第3の方法による定gm*Rまたは定利得をサポートするバイアスジェネレータの簡略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例が、添付の図面に示されている。
【0012】
図1は、一実施形態によるバイアスジェネレータを使用する複数のフェーズドアレイアンテナの簡略ブロック図である。ビームフォーミングセルラーモバイル通信ネットワーク100は、基地局BS101ならびにUE102およびUE103などの複数のユーザ端末を含む。セルラーモバイル通信ネットワークは、狭ビームを用いる指向性通信を使用し、マルチギガビットデータレートをサポートすることがある。このようなセルラーネットワークの一例としては、ミリ波周波数帯を利用するミリメートル波(ミリ波)ネットワークがある。このようなミリ波ネットワークでは、指向性通信は、ビームフォーミングによって実現されるが、ここで、複数のアンテナ素子を有するフェーズドアンテナアレイは、複数のビームパターンを形成するために、ビームフォーミング重み(位相偏移値)の複数のセットが適用される。このことは、ミリ波ネットワークにおける高経路損失を克服し、かつUE102およびUE103にモビリティサポートを提供するために必要とされる。
【0013】
図1の例では、BS101は、結合器分配器ネットワーク120に接続された複数のフェーズドアレイアンテナ110を含む。高密度エリアにおいて動作する複数のアレイアンテナでは、各アレイアンテナは、特定のUE(方向)に向けたそれ自体固有のビームを有する。あるアンテナのアンテナサイドローブによる放射は、隣接するアンテナからUEが受信する信号への干渉の原因となる。複数のビームアレイアンテナの場合、各アンテナビームは、所定の時刻に特定のUE方向に向いている。あるアンテナビームのアンテナサイドローブによる放射は、異なるUEに向けた隣接するアンテナビームからUEが受信する信号への干渉の原因となる。
【0014】
典型的なフェーズドアレイアンテナ構成では、複数の無線周波数集積回路(RFIC)、例えばビームフォーミングRFICが使用される。アンテナ素子の各信号経路は、可変利得増幅器および移相器を含んでいる。各アンテナ素子からの信号は、アンテナサイドローブを制御するために、異なる量で増幅および位相シフトされる(振幅および位相テーパリング)。例えば、チェビシェフまたはテイラーテーパリングが、アンテナサイドローブを弱めるために通常用いられる。したがって、精密な振幅テーパリングを実現するためにRFICにおける増幅器利得の較正(一貫した利得の提供)が重要である。低サイドローブを実現するために、振幅テーパリングに対する必要な典型的な精度は0.375dB以下であり、移相器については6または7ビットの精度が必要とされる。
【0015】
RFIC内のRF増幅器は、1)PVT変動(ウェハプロセス、電源電圧および温度の変動)(補償されない場合、数dBの変動となる)、および2)トランジスタまたは受動素子サイズ変動によるランダム変動(この要件は、通常、RFIC内部で使用されるトランジスタ、コンデンサ、抵抗を最小サイズに制限することによって満たされる)、の影響を受ける。アンテナアレイ全体にわたる振幅テーパリングに対する高精度要件(0.375dBのような)を満たすために、アンテナアレイ全体にわたってRFICおよび増幅器を較正することが必要である。製造の複雑性および製造後のアンテナ較正コストを低減するために、RFICを、様々な製造の設計によって自己較正するか、異なる温度の全範囲の追跡を可能にするか、または自動試験装置によって製造プロセス中に較正することが望ましい。
【0016】
一実施形態によれば、自己較正を用いる定相互コンダクタンス(Gm)バイアスジェネレータが、フェーズドアレイアンテナ内の全RFICにわたるRF増幅器の相互コンダクタンス利得を維持するために使用される。図1の例では、定Gmバイアスジェネレータ1、2、3などの複数のセットが、フェーズドアレイアンテナ110内のRFICにバイアス電流を提供するために使用される。定Gmバイアス回路は、計測装置増幅器、電力検出器動力増幅器、および電力増幅器の信号バックオフ制御などを含む多くのRF増幅器用途で広範に使用される。定Gmは、バンドギャップ基準によって提供される電圧を使用することによって固定電流に変換される。Gmおよび基準電圧が、PVTに左右されない場合、これらのパラメータを使用して生成された固定電流もPVTに左右されないため、大型RFICの主要バイアス電流として使用され得る。バイアスジェネレータのトランジスタサイズは、Gmの良好な追跡を維持するために、RF増幅器で使用されるトランジスタサイズを複製する必要があることに留意されたい。その結果、様々なトランジスタサイズの定Gmバイアスジェネレータの複数のセットが、フェーズドアレイアンテナ110内の全RFICにわたって異なるトランジスタサイズを有するRF増幅器のために必要とされる。
【0017】
定Gmバイアスジェネレータごとに、高精度および温度安定オフチップ外部抵抗が、基準として使用され、トランジスタサイズ比Kが、高精度Gmを得るために使用される。サイズ比Kは、Gmの正確な値を得るために厳密なものであることに留意されたい。第1の方法では、複数のトランジスタがRFIC内に含まれ、Gmと密接に整合した(K+1)個のトランジスタが選択され、最良の整合比Kを提供するために(K+1)個のトランジスタから1つが選択される。第2の方法では、高精度クロックを使用して(K+1)個のトランジスタのうち1つがラウンドロビンによって選択され、平均化回路を使用して(K+1)回のサイクルにわたる電流または電圧バイアスが平均化される。第3の方法では、整合ネットワークのインピーダンスを考慮に入れることにより、より正確に、Gm*Requivalentを制御するか、またはRF増幅器の定利得を提供する。
【0018】
図2は、RFIC内のRF増幅器のために使用される定Gmバイアスをサポートするバイアスジェネレータ201の簡略回路図である。バイアスジェネレータ201は、トランジスタM1とM2とのペアを含み、M1のゲートとM2のゲートとは、外部抵抗REXTによって接続されている。トランジスタM1はW/Lのサイズを有し、またトランジスタM2はK*(W/L)のサイズを有する。250で表すように、定Gバイアスは、REXTとトランジスタサイズKのみによって、すなわちg=2/REXT*(1-1/√K)によって決定されるが、ここで、REXTは、零温度係数を有する高精度抵抗である。したがって、Gmおよび基準電圧が、PVTに左右されず、それによりこれらのパラメータを使用して生成された固定電流もPVTに左右されないため、大型RFICの主要バイアス電流として使用され得る。図2では、Iref1とIref2とは、異なるRF増幅器のために使用される異なるバイアス電流ミラーである。
【0019】
トランジスタM1とトランジスタM2とのサイズ比Kは、Gmの正確な値を得るために厳密なものであることに留意されたい。さらに、トランジスタM1は、Gmの良好な追跡を維持するために、RF増幅器で使用されるトランジスタを複製する必要がある。このように、同じタイプのトランジスタおよびサイズを使用することが重要である。その結果、トランジスタM2は、同じサイズ(W/L)を有するK個の全く同じトランジスタM1を複製して形成される。さらに、トランジスタの電流密度は、RF増幅器の電流密度と同じである必要がある。したがって、トランジスタサイズを大きくすることで、サイズ比Kの精度を向上させることができるが、低電力消費および小型のRFICを実現するためには、大きなサイズのM1およびM2トランジスタを有することは望ましくない。
【0020】
上述の考慮事項に基づいて、自己較正を用いる定Gmバイアスジェネレータにより、フェーズドアレイアンテナ内の全RFICにわたるRF増幅器の相互コンダクタンス利得の維持を実現する4つの異なる方法を提案する。第1の方法(210)では、複数のトランジスタがRFIC内に含まれ、最良の整合Kを有する(K+1)個のトランジスタが選択される。第2の方法(220)では、高精度クロックを使用して(K+1)個のトランジスタのうち1つがラウンドロビンによって選択され、平均化回路を使用して(K+1)回のサイクルにわたる電流または電圧バイアスが平均化される。第3の方法(230)では、整合ネットワークのインピーダンスを考慮に入れることにより、より正確に、Gm*Requivalentを制御するか、またはRFIC全体にわたるRF増幅器の定利得を提供する。第4の方法(240)では、定Gm較正手順(例えば、方法1または方法2)と、定利得閉ループ回路(例えば、方法3)との組み合わせが、RF増幅器向けに設計され得る。
【0021】
図3は、較正回路301を使用してバイアスジェネレータに精密なトランジスタサイズ比Kを提供する第1の方法を示す図である。図3の実施形態では、較正回路301を使用してRFIC内のN個のトランジスタから、(K+1)個の全く同じトランジスタが選択される(この際、N>(K+1)である)。各RFICは、サイズ(W/L)を有するN個の全く同じトランジスタを含み、各トランジスタは、較正回路301を使用してテストされる。テストおよび選択のステップを以下に示す。ステップ1)ゲート電圧Vmに対する、N個のトランジスタのそれぞれを通じたサイクル、および正確な高精度抵抗Rm全体にわたる電圧降下によるドレイン電流を測定。2)トランジスタごとに、Vmを変化させて、対応するドレイン電流を測定することによってそのI-V特性曲線の複数のポイントを取得。ステップ3)N個のトランジスタのI-V特性曲線から、I-V特性曲線における所望のGmに近い全てのトランジスタに対する同じ動作ポイントを取得。ステップ4)I-V特性曲線における密接に整合するGmを持つ(K+1)個のトランジスタを選択。ステップ5)図2の定Gmバイアスジェネレータ201でM1およびM2として使用される、最良の整合Kを有する1個およびK個のトランジスタを選択。一例では、N個のトランジスタからの(K+1)個のトランジスタの選択は、ABS
【数1】

の値を最小化することを伴う。この際、Vjは、K個のトランジスタおよび1:Kのトランジスタサイズ比の最良整合を選択するために、j番目に選択されたトランジスタから検出されたドレイン電圧である。スイッチS1およびS2は、例えば、バイアスジェネレータの較正エンジンの制御下で、N個のトランジスタのそれぞれを、測定および較正のために較正回路に接続させるか、または選択後にバイアスジェネレータに接続させるかを切り替えるために使用されることに留意されたい。
【0022】
図4は、バイアスジェネレータ401のトランジスタサイズの較正誤差による最大誤差に対する第1の方法の改良を示す。第1の方法では、1)N個のトランジスタから(K+1)個のトランジスタを選択した後の、トランジスタサイズ比K(すなわちΔ)、2)トランジスタの閾値電圧Vthにおける誤差、ε、の最大誤差が存在する。例えば、M2の較正されたトランジスタサイズは、(K+Δ)*(W/L)である場合がある。その場合、電流ミラーのトランジスタサイズを調整して、サイズ比KのΔによって生じる誤差を修正することによってさらなる改良を得ることができる。Δとεの両方は、I-V測定から得ることができる。図4では、定Gmバイアスジェネレータ401内の複数の小型トランジスタおよびスイッチを含む回路410を使用して、電流ミラーサイズを調整して不整合Δを補償することができる。
【0023】
図5は、実施形態による無線周波数集積回路(RFIC)の定相互コンダクタンス(Gm)バイアスを維持する第1の方法のフロー図である。ステップ501で、バイアスジェネレータは、バイアス電流または電圧を生成する。バイアスジェネレータは、第1のトランジスタ(M1)および第2のトランジスタ(M2)を含む。M2は、サイズ比Kに基づいて同じM1を複製することによって形成される。この際、Kは正整数である。ステップ502で、バイアスジェネレータは、較正回路およびRFIC内のN個のトランジスタを使用して較正される。Nは、(K+1)より大きい正整数であり、較正は、M1として使用される1個のトランジスタを選択することと、M2として使用されるK個のトランジスタを選択することと、を含む。ステップ503で、較正されたバイアスジェネレータは、RFICの定Gmバイアスを維持する。
【0024】
図6は、バイアスジェネレータ601に定Gmを提供するために、動作中の時間領域平均化を使用する第2の方法を示す。バイアスジェネレータ601は、バイアスジェネレータの左側または右側に配置された(K+1)個のトランジスタを含む。第2の方法によって、例えば、クロックサイクル(例えば、1ミリ秒)ごとに、(K+1)個のトランジスタのうち1つ(M)が、バイアスジェネレータ601の左側で作動するように選択され、残りのK個のトランジスタが、バイアスジェネレータ601の右側で作動するように選択されるといったように、高精度クロックを使用してラウンドロビン方式による選択が行われる。例えば、クロックサイクル1では、Mが左側であり、クロックサイクル2では、Mが左側であり、同様に、クロックサイクルK+1では、MK+1が左側である。次いで、平均化回路610を使用して(K+1)回のクロックサイクル全体のゲート電圧(Vref)が平均化される。Vrefaverageは、定Gmバイアスを平均化した結果の基準電圧である。スイッチS1からS4は、例えば、バイアスジェネレータの較正エンジンの制御下で、(K+1)個のトランジスタのそれぞれをバイアスジェネレータの左側または右側で作動するように配置するために使用されることに留意されたい。第2の方法は、時間領域平均化によるスイッチングノイズを発生させる可能性がある。
【0025】
図7は、I-V特性曲線の非線形性によるGmの補間誤差を低減することによる定Gmバイアスジェネレータの改良を示す。増幅器トランジスタのI-V特性曲線710によって描かれているように、所望のGm値の動作ポイントは、ポイントP1とポイントP2との間にある。上述の方法1および方法2では、全てのトランジスタに対して同じ動作ポイント(同じVmおよびIo)が仮定されており、最良の整合比を有する(K+1)個のトランジスタが選択されるか、または時間領域平均化が行われる。トランジスタM1のサイズ(W/L)は、増幅器トランジスタのサイズに等しく、またトランジスタM2のサイズは、K*(W/L)である。それゆえ定Gm回路は、結果として補間誤差となる異なるM1およびM2トランジスタサイズに基づいて、Gmの近似値を得る。一実施形態によれば、抵抗Rextにある特定のタップを入れて、2つのトランジスタM1とM2との間でオフセットゲート電圧を生成して、異なるバイアス電圧ポイントによるI-V特性曲線の非線形性を補償するために、Vbias電圧が用いられる。図7の例では、Vbiasは、抵抗Rextを2つの直列に接続された抵抗に変換するために使用され、2つの直列に接続された抵抗の比は、増幅器トランジスタのI-V特性曲線の非線形性を補償するために最適な値を有する。
【0026】
図8は、一実施形態による無線周波数集積回路(RFIC)の定相互コンダクタンス(Gm)バイアスを維持する第2の方法のフロー図である。ステップ801で、バイアスジェネレータは、バイアス電流または電圧を生成する。バイアスジェネレータは、第1のトランジスタ(M1)および第2のトランジスタ(M2)を含み、M2は、サイズ比Kに基づいて同じM1を複製することによって形成される。この際、Kは正整数である。ステップ802で、高精度クロックを使用してクロックサイクルごとに、(K+1)個のトランジスタから、M1として使用される1個のトランジスタ、およびM2として使用される残りのK個のトランジスタが選択される。ステップ803で、定Gmバイアスを維持するために、平均化回路を使用して(K+1)回のクロックサイクルにわたるバイアスジェネレータのバイアス電流または電圧が平均化される。
【0027】
図9は、一実施形態によるRF増幅器に定Gm*Requivalentまたは定利得を提供する第3の方法を示す。RF増幅器は、整合ネットワークに接続されている。RF増幅器利得は、Gmと、整合ネットワークのインピーダンスおよびRF増幅器内の2つのトランジスタの出力インピーダンスの並列接続との積によって決定されることに留意されたい。図9では、RF増幅器910の一部である整合ネットワーク901が描かれており、またVrefは、定利得バイアスジェネレータによって供給される。増幅器周波数応答の中心周波数で、整合ネットワークのリアクタンス素子は、互いに相殺し、それにより等価負荷抵抗Rzが整合ネットワークに残る。その結果、等価抵抗Requivalent=整合ネットワークの等価負荷抵抗(Rz)//トランジスタ出力Rout//その他のR(例えば、入力から次の段への)、となる。簡潔さのために、我々はその他のRはゼロと仮定したが、実際の実装形態では、RoutおよびRzと類似の方式で考慮される必要がある。したがって、増幅器周波数応答の中心周波数での増幅器利得は、Gm*Requivalentである。一実施形態では、RF増幅器のGmの制御と比べると、RF増幅器のGm*Requivalentの制御はより正確である。
【0028】
図10は、第3の方法による定利得バイアスジェネレータ1001の簡略ブロック図を示す。一例では、定利得バイアスジェネレータ1001は、RF増幅器910に定利得を提供し、ドレイン電圧を維持しながら、増幅器利得が事前設定値に等しくなるまで、バイアス電流および対応するゲート電圧を調整しようとするものである。バイアスジェネレータ1001は、RF増幅器910のドレイン負荷、例えば、図9のL-C整合ネットワーク901の実数部抵抗(Rz)と全く同じドレイン負荷を利用する必要がある。RF増幅器利得は、増幅器トランジスタの出力インピーダンスZoutと、出力整合ネットワークのインピーダンスとで構成されるドレイン負荷によって決定される。理想的には、ドレイン負荷の虚数部(出力整合ネットワークインピーダンスと、トランジスタ出力インピーダンスとで構成される)は、RF増幅器調整周波数で0に等しい必要があり、整合ネットワークの実数部(すなわち、Rz)およびトランジスタ出力インピーダンスの実数部(すなわち、Rout)のみが、RFトランジスタに認識される。
【0029】
閉ループフィードバックを用いる、以下の2つの誤差増幅器が使用される。1)上部のものは、所望の差動モードのドレイン電圧差(差動利得)を生成するためのものである。2)下部のものは、適切な同相モードのドレイン電圧を発生させるためのものである。下部の同相モードのフィードバックループは、同相モードゲートバイアス電圧(すなわち、Vi+、Vi-の同相モード)を調整して、出力ノードVo+、Vo-の同相モード電圧を、VDDに等しくさせる。上部の差動モードのフィードバックループは、バイアス電流を差動出力電圧(Vo+、Vo-)が2*Iref*Routに等しくなるまで調整する。安定性のために、上部の差動ループの時定数は、下部のループの時定数より10倍遅くする必要がある。
【0030】
差動入力(Vi+、Vi-)は、2*Iref*Rinの電圧に等しい。上部の差異誤差増幅器は、(Vo+、Vo-)を2*Iref*Routと比較して、PMOS電流を調整することによってそれらを等しくしようとする。平衡時は、差動トランジスタペアM1およびM2は、(Vo+ - Vo-)/(Vi+ - Vi-)=(2*Iref*Rout)/(2*Iref*Rin)=Rout/Rinに等しい差動利得を有する。M1およびM2からの同じバイアス電流が、同じトランジスタサイズ、つまりM1およびM2と同じZoを有するRF差動増幅器に供給され、出力整合ネットワークの実数部に等しいRzと全く同じドレイン負荷と同じRF利得が提供される。M1およびM2からのバイアス電流は、RF利得を一定に維持することに留意されたい。
【0031】
増幅器利得は、Rout対Rinの比のみによって定義される。抵抗比は、ウェハプロセス、電源電圧および温度に対して鋭敏ではない。閉ループ動作中の増幅器追跡誤差を低減するために、より大きな差動電圧(Vi+、Vi-)を使用することが望ましいが、(Vo+、Vo-)の大きな信号歪みが動作に影響を与え始めるような大きすぎる差動電圧は避けるべきである。Iref、RinおよびRoutの絶対値および温度係数は、定利得バイアスの精度に影響を与えず、Rout対Rinの比のみが、増幅器利得に影響する。このバイアスは、非常に精密な利得追跡性能を提供するが、いずれの高精度要素も必要とせず、Rout対Rinの整合のみが必要である。
【0032】
Rz(増幅器出力整合ネットワークの実数部に等しい)は、典型的には、プロセス、電源電圧および温度の中でほとんど変動しない。加えて、Rzは、Routより大幅に大きくすることができ、したがって、Requivalentにそれほど関与しない。そのため、外部の高精度抵抗が定利得バイアスジェネレータに使用される場合、プロセス変動、電源電圧、および温度変化に対して、対応するRF増幅器利得はほとんど変化しないことが予想できる。Rzは高精度外部抵抗あるいはオンチップポリ抵抗に実装可能であり、またポリシート抵抗変動および整合ネットワーク変動を補償するために、ウェハ較正中に微調整され得る。特定のロットに対する最適なRz微調整設定は、金属シート抵抗(金属厚を意味する)、ポリシート抵抗、測定されるキャパシタンス偏差、および測定されるインダクタンス偏差などの、ウェハテストデータを使用して、計算またはシミュレートすることができる。
【0033】
第4の方法によって、定Gm較正手順と、定利得の閉ループ回路とが組み合わされ、例えば、より多くのスイッチを加えることによって定Gm較正回路と定利得回路とが併合され得る。第4の実装形態は、N個のトランジスタの母集団から良好で着実な整合特性を有する(K+1)個のトランジスタを選択する方法1などのトランジスタ選択方法をまず使用することと、次にRF増幅器の定利得を維持する方法3を使用することとの組み合わせである。選択方法は、精度を上げるために、バイアスジェネレータで使用されるRzおよびRoutなどの他の素子にも適用することができる。
【0034】
本発明について、説明の目的である特定の実施形態と共に記載したが、本発明はこれらの説明に制限されない。したがって、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、記載した実施形態の様々な特徴の種々の変形、適合および組み合わせが実施され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10