(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ及び超音波トランスデューサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
H04R17/00 330A
(21)【出願番号】P 2021571551
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2020065069
(87)【国際公開番号】W WO2020245064
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】102019115032.9
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲプハルト, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クロイツビヒラー, マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ヘディリ, アミラ
(72)【発明者】
【氏名】ルカン, ペーター
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-246251(JP,A)
【文献】特開2012-198106(JP,A)
【文献】特開2005-124652(JP,A)
【文献】特開2007-147319(JP,A)
【文献】特開2015-230201(JP,A)
【文献】中国実用新案第206292395(CN,U)
【文献】特表2019-500733(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017123403(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0017807(US,A1)
【文献】特開2012-007975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を有する超音波トランスデューサ(1):
・開口部と、底部(3)と、壁(4)と、を備える容器(2);
・前記容器(2)の内部で前記底部(3)の上に配置された圧電ディスク(5);
・前記容器(2)を閉鎖するカバー(6);
・前記カバー(6)に一体化されており、前記圧電ディスク(5)と電気的に接触すると共に、前記圧電ディスク(5)を制御し読み出すように構成されている電子機器(7)。
【請求項2】
前記底部(3)と前記カバー(6)との間に減衰要素(8)が配置されていると共に、前記減衰要素(8)は前記容器(2)を満たす、請求項1に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項3】
前記カバー(6)は、再閉鎖可能な固定機構によって固定される、請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項4】
前記カバー(6)は前記容器(2)の前記開口部から隔てられて前記容器(2)内に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項5】
前記カバー(6)は少なくとも2つの凹部(15)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項6】
前記凹部(15)のうち少なくとも1つにはワイヤ(14)のための通路(16)が形成されており、前記圧電ディスク(5)は前記電子機器(7)と前記ワイヤ(14)によって電気的に接続されている、請求項5に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項7】
前記容器(2)は壁(5)の前記開口部に沿って段差を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項8】
前記電子機器(7)は、前記カバー(6)の外面上にデジタルI/Oインターフェース(9)を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項9】
前記電子機器(7)は、前記カバー(6)の外面上にピン(21)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項10】
前記底部(3)は1mmより薄い、請求項1~9のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項11】
前記壁の厚さは、前記底部(3)の前記厚さの少なくとも1.5倍である、請求項1~10のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項12】
前記容器(2)は導電性の材料から成る、請求項1~11のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項13】
前記容器(2)の内表面は、部分的に粗くされ及び/又は滑らかにされている、請求項1~12のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項14】
前記容器(2)は陽極酸化されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項15】
前記容器(2)の内表面は陽極酸化されており、外表面は処理されていない、
又は、前記容器(2)の内表面及び前記容器(2)の外表面は陽極酸化されている、
又は、前記容器(2)の外表面は陽極酸化されており、内表面は処理されていない、
請求項1~14のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項16】
前記容器(2)の内表面は陽極酸化層を有し、前記陽極酸化層は途絶部を有する、請求項15に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項17】
前記途絶部を介して、前記圧電ディスク(5)及び/又は前記電子機器(7)の基準電位との電気的な接触が形成される、請求項16に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項18】
前記容器(2)の内表面は導電層を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項19】
前記底部(3)の一部は、前記圧電ディスク(5)に隣接する底面と比較して厚い壁厚を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項20】
前記底部(3)に対して平行に延びると共に前記底部(3)と重ならない前記容器(2)の面は、前記圧電ディスク(5)に隣接する底面と比較して厚い壁厚を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項21】
前記容器(2)は、より厚い壁厚を有する前記面の外表面上に、接着剤(10)を有する、請求項20に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項22】
前記容器(2)の外表面上に振動減衰要素(11)が配置されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項23】
前記カバー(6)は回路基板(12)である、請求項1~22のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項24】
前記回路基板(12)は可撓性である、請求項23に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項25】
前記回路基板(12)はプラスチック塊内に鋳込まれている、請求項23又は24に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項26】
前記回路基板(12)は電気部品を有し、前記電気部品は、前記回路基板(12)のうち前記圧電ディスク(5)を向く面の上に配置されている、請求項23~25のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項27】
前記回路基板(12)は、電荷ポンプを備える集積回路(17)を有する、請求項23~26のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項28】
前記回路基板(12)は、アナログ接地線(18)及びデジタル接地線(19)を有し、前記アナログ接地線(18)及び前記デジタル接地線(19)は、前記デジタル接地線(19)と前記アナログ接地線(18)との間の電磁的な相互作用が抑制されるように構成されている、
請求項27に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項29】
前記アナログ接地線(18)及び前記デジタル接地線(19)は、前記集積回路(17)の反対側に配置されている、請求項28に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項30】
前記圧電ディスク(5)は温度センサ(20)として使用される、請求項1~29のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項31】
温度センサ(20)を有する、請求項1~30のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項32】
前記温度センサ(20)は、NTCセンサ又はPTCセンサである、請求項31に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項33】
前記温度センサ(20)は、前記容器(2)の内部に配置されている、請求項31又は32に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項34】
測定された距離の温度依存性を、
音速の温度依存性を根拠として、前記温度センサ(20)の測定値に基づいて補正するように構成されている、請求項30~33のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項35】
前記容器(2)は押出成形プロセスで製造されている、請求項1~34のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)。
【請求項36】
請求項1~
35のいずれか1項に記載の超音波トランスデューサ(1)を有する装置であって、前記装置は、前記超音波トランスデューサ(1)によって決定された信号のうちの1つに基づいて、前記装置の物体までの距離を測定するように構成されている、装置。
【請求項37】
超音波トランスデューサ(1)の製造方法であって、以下のステップを含む:
・開口部と、底部(3)と、壁(4)とを有する容器(2)
を製造するステップ;
・前記容器の前記底部(3)の上に圧電ディスク(5)を固定するステップ;
・一体化された電子機器(7)を有するカバー(6)で前記容器(2)を閉鎖するステップであって、前記電子機器(7)は、前記圧電ディスク(5)と電気的に接触すると共に、前記圧電ディスク(5)を制御し読み出すように構成されている、ステップ。
【請求項38】
前記容器(2)は押出成形プロセスで製造される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記容器(2)の前記閉鎖の前に、第1のシリコーンリング(22)が、前記容器(2)のうち前記底部(3)から離れる方を向く支持面の上に配置されると共に硬化され、前記容器(2)の前記閉鎖の前記ステップの際に、前記カバー(6)が前記第1のシリコーンリング(22)の上に配置される、請求項
37又は38に記載の方法。
【請求項40】
第2のシリコーンリング(22)が、前記カバー(6)のうち前記底部(3)から離れる方を向く面の上に配置され、前記カバー(6)は、前記第1及び第2のシリコーンリング(22)の間に固定される、請求項
39に記載の方法。
【請求項41】
前記電子機器(7)は、前記圧電ディスク(5)と、前記電子機器(7)に半田付けされたワイヤ(14)を介して電気的に接触している、請求項
39又は
40に記載の方法。
【請求項42】
前記カバー(6)は、その中に前記ワイヤ(14)配置される少なくとも1つの凹部(15)を有し、前記容器(2)の前記閉鎖の前記ステップでは、前記カバー(6)が並進運動によって前記容器(2)に押し付けられ、次いで、前記ワイヤ(14)が前記電子機器(7)に半田付けされる、請求項
41に記載の方法。
【請求項43】
液状の充填材が、前記カバー(6)と前記底部(3)との間の空隙内に満たされ、前記液状の充填材は硬化され
て減衰要素(8)となる、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサ及び超音波トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサは、実に様々な分野で、しばしば距離測定のために使用される。送信動作において、距離測定の際には、超音波信号がバーストとして超音波トランスデューサから放射され、当該超音信号は、物体又は他の障害物に衝突した後、部分的に再び後方へ反射される。受信動作において、この後方へ反射されたパルスが検出され、それにより、移動時間を決定することができる。超音波は、空気中でも水中でも既知の音速で伝播するので、移動時間の助けを借りて、反射物体までの距離を計算することができる。
【0003】
この技術は、航海において、かなり前から、例えばソナー又は音響測深器として知られてきた。主に水平方向の、例えば他の船までの距離測定は、ソナーと呼ばれ、主に垂直方向の、例えば水深又は海底地形の測定のための距離測定は、音響測深器と呼ばれる。比較的新しい自動車は、例えば駐車支援システムにおいて、超音波による距離測定を使用しており、当該システムは、近くの物体までの距離が短いときに運転者に警告信号を伝える。超音波トランスデューサは、大抵の場合、バンパー内に収納されており、当該バンパーは、ハウジング及び必要な電子機器と共に超音波トランスデューサを組み込むための、比較的多くのスペースを提供する。
【0004】
例えばドローン、掃除機ロボット、芝刈り機ロボット及び自律ロボットのような新しい技術開発及び用途は、一般に、距離測定に適した超音波トランスデューサに新しい課題を提起する。
【0005】
したがって、よりコンパクトでより堅牢な超音波トランスデューサが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、よりコンパクトでより堅牢な超音波トランスデューサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、請求項1に記載の超音波トランスデューサによって解決される。更なる有利な実施形態及び考えられる構成は、更なる請求項から見て取ることができる。
【0008】
開口部と、底部と、壁とを備える容器を有する超音波トランスデューサが記述される。
【0009】
圧電ディスクが、容器の内部で、膜としても作用する底部の上に配置されている。
【0010】
更に、超音波トランスデューサは、容器を閉鎖するカバーを有する。カバーには電子機器が一体化されており、当該電子機器は、圧電ディスクと電気的に接触すると共に、圧電ディスクを制御し読み出すように構成されている。
【0011】
電子機器をカバーに一体化することにより、超音波トランスデューサは極めてコンパクトになり、その結果、当該超音波トランスデューサのために僅かなスペースしか提供されない用途において、使用することができる。ドローン、掃除機ロボット、芝刈り機ロボット、又は、例えば物流若しくは工業生産で使用されるロボットのような、ますます小さくなるロボットは、個々の部品のために僅かなスペースしか提供せず、そのため、より小さく、よりコンパクトなセンサ、特に超音波トランスデューサに対する大きな需要が存在する。電子機器をカバーに一体化することにより、通常の超音波トランスデューサとは対照的に、その内部に電子機器が組み込まれる外部ハウジング内に、超音波トランスデューサを組み込む必要はない。音波発生容器の機能をセンサハウジングの機能と統合することにより、本発明の超音波トランスデューサは、音波発生容器がセンサハウジングに組み込まれる通常の超音波トランスデューサとは対照的に、はるかにコンパクトに実施することができる。更に、製造コストを節約することができる。なぜなら、付加的な電気的及び機械的インターフェースが必要とされず、超音波トランスデューサとハウジングの組み立てを省略することができるからである。
【0012】
送信動作において、圧電ディスクは、電子機器により印加される交流電圧によって、約50kHz~100kHzの周波数及び所定の数の周期を有するパルス状の振動へと励起され得る。周期は、例えば8つであり得る。圧電ディスクは底部に固定することができるので、底部は膜として共振し、超音波コーンを放射することができる。超音波コーンが物体又は他の障害物に衝突すると、それは部分的に再び後方へ反射され得る。反射された音響パルスは、再び底部又は膜に衝突することができ、底部及び圧電ディスクの両方において、放射された音響パルスと同一の周波数を有する機械的な撓みを誘導することができる。圧電ディスクの機械的な撓みは、印加された電極に電圧変化を生じさせることができ、当該電圧変化は、再び電子機器によって読み出すことができる。決定された超音波パルスの移動時間及び既知の音速から、反射物体までの距離を計算することができる。
【0013】
その上に圧電ディスクが配置された底部とカバーとの間に、容器全体を満たす減衰要素を配置することができる。減衰要素は、第一に、圧電ディスクからカバーの方向への超音波振動を減衰させる作用を果たし得るが、更に容器を安定させることもできる。減衰要素のための最も重要な材料特性は減衰定数であり、当該減衰定数は、50kHz~100kHzの典型的な超音波周波数において、可能な限り大きくなければならない。適した材料は、ゴム又は発泡材料である。特に、気孔を有する例えばシリコーンのようなプラスチックから成る発泡材料が、減衰要素に適している。これらは、例えば液体の状態で容器に入れることができ、そこでシリコーンは硬化し、容器を形状接続的に満たす。
【0014】
減衰要素とカバーとの間に、シリコーンから成ることもできる弾性リングを配置することは、容器からカバーへの起こり得る振動の伝達を阻止するのに役立ち得る。更に、弾性リングは、カバーと容器との間を密封する作用を果たすことができ、その結果、湿気又は塵埃が容器内に達する可能性はない。
【0015】
カバーは、再閉鎖可能な固定機構によって、容器内に固定することができる。したがって、例えば電気部品又は接点を点検又は修理するために、いつでもカバーの下面にアクセスすることが可能である。カバーが容器の断面と比較して僅かに小さく設計される場合、カバーを開く際に僅かなスペースを得るために、弾性リングをカバーの下に配置することが有利であり得る。固定機構は、明確に、カバーを少なくとも1つの位置に取り外し可能に固定することができるスナップイン機構であることができる。
【0016】
容器は、底部から離れる方を向く開口部を有する。カバーは、開口部の縁部と面一に終端しないよう、この開口部内に配置することができる。カバーは、容器の壁の段差に配置することができ、当該段差は、載置されるカバーが開口部の縁部と面一に終端しないような寸法にすることができる。したがって、カバーは、開口部から隔てられることができる。カバーは、スペーサによって開口部から後退させることができる。スペーサは、例えばシリコーンリングであることができる。このようにして、カバーに一体化された電子機器は、衝撃及び他の機械的な負荷から保護される。カバーと開口部の縁部との間の空間は、例えばラッカーのようなグラウト材で封止することができる。容器が更に導電性材料から成るか又は導電性材料を含む場合、容器はファラデーケージとして作用し、それにより、カバー内の電子機器は、当該電子機器に悪影響を及ぼし、したがって誤った測定結果をもたらす可能性のある電磁放射から、保護される。
【0017】
更に、カバーは、少なくとも2つの凹部を有することができる。これらは、例えばカバーの反対側に配置することができる。容器は、閉鎖された状態においても、すなわち容器がカバーによって閉鎖されているときにも、凹部を通じて、液状の充填材で充填されることができる。このようにして、充填材とカバーとの間に形状接続を形成することができ、それらの間の空気の混入を回避することができる。なぜなら、液状の充填材は、容器を完全に満たすからである。第2の凹部は、充填プロセスの際、容器内の恒常的な均圧化を促進する。このようにして、さもなければ空気の混入により充填プロセスの際に容易に生じる可能性のある気泡が回避され、均一な形状接続する充填剤が容器内に形成される。
【0018】
凹部のうちの少なくとも1つには、ワイヤのための通路を形成することができ、圧電ディスクは、当該ワイヤによって、電子機器と電気的に接続され得る。通路によって、ワイヤを機械的に安定化させることができ、堅牢な電気的接続を確立することができる。更に、充填材は、通路及びワイヤと電子機器との間の接点を覆い、硬化後であっても外部の影響から電気的な接続を保護するように、容器内に充填することができる。
【0019】
更に、容器は、壁の開口部に沿って段差を有することができる。この段差は、カバーの支持面として機能し、その結果、カバーは、容器内へ滑り落ちる危険なしに、容易に容器内に配置することができる。カバーを強固にかつ減衰された態様で容器と接続するために、カバーと容器との間にシリコーン又は発泡材料の層を配置することが有利であり得る。
【0020】
電子機器は、カバーの外面上にデジタルI/Oインターフェースを有することができる。好ましい実施形態において、デジタルI/Oインターフェースは、超音波トランスデューサの電気供給を行うこともできる。接続部をカバーの上に直接的に配置することにより、超音波トランスデューサをコンパクトに保つことができる。更に、超音波トランスデューサは、そのようにして直ちに接触させることができ、更なる電気接続部を必要としない。デジタルI/Oインターフェースは、例えば測定信号又は警告信号を外部へ送出するための通信に特に適している。なぜなら、アナログインターフェースとは対照的により高い耐干渉性を有し、したがって、干渉信号が負荷された環境においてもエラーなしに機能するからである。
【0021】
電子機器は、カバーの外面上にピンを有することができる。これは、例えば、カバーを起点として底部に向かう方向とは逆に容器から突出する3つの真っ直ぐな導電体であることができる。特に、ピンは、同時に電子接続部として及び超音波トランスデューサの機械的な固定のために機能するよう、設計することができる。その結果、超音波トランスデューサの組み込みを簡略化することができる。なぜなら、超音波トランスデューサは、別の工具又は別の固定機構を必要とすることなく、プラグシステムによってその使用位置に、ピンによってロックすることができるからである。更に、ピンは、他のタイプの固定に対して補助的にのみ使用することもできる。
【0022】
更に、底部は、1mmより薄くすることができる。膜としても機能する底部は、一方では、圧電ディスクの撓み運動に追従するのに十分な弾性を有していなければならず、他方では、例えば洗浄のためのウォータージェットのような外部の影響に耐えるのに十分な安定性を有していなければならない。0.2mmを超え1mm未満の底部の厚さが有利であると判明している。また、底部の厚さは、直径と共に、共振周波数を本質的に決定することもでき、当該共振周波数においては、部品を、超音波を放射及び受信するために有利に動作させることができる。
【0023】
壁の厚さは、底部の厚さの1.5倍より大きくすることができ、好ましくは底部の厚さの3倍より厚い。そのような壁厚は、例えばカバー、又は、超音波トランスデューサを保持するために使用することができる容器の突出部のような、底部に対して平行に延びる平面への、底部又は膜の振動の伝達を抑制するのに適していることが、判明した。そして、ブラケットを介して適用対象に属する隣接するアタッチメントに伝達される振動は、次いで反射され、超音波トランスデューサにおいてファントム信号として、誤って測定信号として捕捉される可能性がある。壁厚が膜の厚さの少なくとも1.5倍であるように選択される場合、底部から容器の他の部分への振動の伝達を阻止することができる。底部は、固有振動数で振動し、とりわけ底部の厚さによって決定される、特定の固有モードを有する。壁が、底部の厚さの少なくとも1.5倍であることができることにより、容器の他の領域への振動モードの伝達を阻止することができる。しかしながら、壁厚は、底部の厚さの20倍以下、好ましくは10倍以下でなければならない。なぜなら、さもなければ、部品が重くなりすぎる可能性があり、部品の小さな実施の実現がより困難になるからである。
【0024】
更に、容器は、音響伝播方向の平面を優先するように設計することができる。伝播する音響コーンを狭めることによって、距離測定の精度を高めることができる。なぜなら、1つの空間方向における音波の伝播を排除することができるからである。最も単純な場合には、容器はこのために楕円形に設計される。容器の他の形状も、1つの平面内での音の伝播を優先するように設計することができる。
【0025】
容器は、導電性の材料から成ることができる。センサの電気アースと接続された導電性材料から成る容器は、電磁適合性を向上させ、それにより、超音波トランスデューサは、周囲の他の電気装置によって意図せず妨害されることがない。有利な実施例において、容器の接地は、任意選択のデジタルI/O接続部を介して実現することができる。特に、例えばドローン又は自律ロボットのような比較的小型の移動用途では、例えば電磁干渉信号を放射する可能性のある多くの電気モータが組み込まれている可能性がある。容器が導電性材料から製造される場合、圧電ディスク及び容器の内部に配置された電子機器は、外部の干渉信号に対して、遮蔽されることができる。
【0026】
適切な材料は、Al、Cu、Sn、Fe、鋼のような金属であってもよいが、合金であってもよい。容器の底部は膜としても作用するので、比較的高い柔軟性を有する材料を使用することが有利である。したがって、Al又はSnのような低い弾性係数を有する金属が特に好ましい。
【0027】
更に、容器の内表面は、部分的に粗くされ及び/又は滑らかにされることができる。容器の内部の表面を粗くすることは、材料がこの表面により良好に付着するという結果をもたらすが、その代わりに、超音波もこの表面でより強く散乱される。表面を滑らかにすると、当該表面への付着は低下するが、超音波を散乱させることはない。この理由から、例えば、圧電ディスクに隣接する底部の表面を粗くし、それにより当該圧電ディスクを正にそこでより良好に付着させることが、有利であり得る。容器の内部の底部の面の残部は、例えば、この部位での減衰要素の付着を低下させ、それにより、圧電ディスクの撓みの妨害をより少なくするために、滑らかにすることができる。付加的に、容器の内表面は、音がこの表面でより強く散乱されるよう、粗くすることもできる。粗くするためには、例えばサンドブラスト又はエッチングプロセスを、滑らかにするためには、研削又はコーティングプロセスを、使用することができる。
【0028】
容器は、陽極酸化されていてもよい。陽極酸化は、容器を腐食から保護し、容器を環境の影響に対してより抵抗力のあるものにする。容器の内表面が陽極酸化され、外表面は未処理であるか、又は、容器の内表面及び容器の外表面が陽極酸化されることができる。また、容器の外表面を陽極酸化し、内表面を未処理のままにしておくことも可能である。容器の内表面の陽極酸化は、とりわけ、充填材、使用される溶剤又は化学反応による損傷から容器を保護するために実行することができる。容器の外表面上において、陽極酸化は特に有利である。なぜなら、外表面は環境に晒されており、陽極酸化は容器を腐食から保護するからである。容器を最も良好に保護するために、陽極酸化は、容器の内表面上及び外表面上の両方において推奨され得る。
【0029】
容器の内表面は陽極酸化層を有することができ、当該陽極酸化層は途絶部(Durchbrechung)を有することができる。例えば、このために、容器の陽極酸化された内表面は、導電性ではない陽極酸化層を介した容器の電気的な接触を可能にするために、1つの部位で狙いを定めて途絶させることができる。
【0030】
更に、途絶部を介して、圧電ディスク、並びに、付加的に又は代替的に電子機器の、基準電位との電気的な接続を形成することができる。これは、例えば、途絶部上の半田付けによって実現することができる。
【0031】
付加的に、容器の内表面は、導電層を有することができる。容器が導電性ではない材料から成る場合、導電性の層によってファラデーケージが形成され、当該ファラデーケージは、容器の内部に配置された電子部品を外部の影響から保護し、したがって測定の安定性及び測定の精度に寄与する。容器の内表面も陽極酸化され又は他の保護層が設けられている場合、内表面上の導電性の層により、組み込まれた電子部品のための導電性の層を介した接地を実現する可能性が開かれる。
【0032】
底部の一部は、膜として使用される圧電ディスクに隣接する底面よりも厚い厚さを有することができる。厚くされた面は容器を安定させ、用途においてアタッチメント、トラス又は支持物の支持面として使用されるのに適している。
【0033】
有利な実施形態において、底部に対して平行に延びると共に底部と重ならない容器の面は、圧電ディスクに隣接する底面と比較して厚い壁厚を有することができる。この実施形態においても、厚くされた面は、容器を安定化させ、支持表面として機能するのに役立つ。厚くされた面を底部に対して横方向に配置することにより、容器の底部が圧電ディスクと共に孔内に配置され、厚くされた面が孔の縁部上に載るように、容器を孔内に配置することができる。このようにして、孔内に配置された超音波トランスデューサは、孔を通じて距離測定を実行することができる。
【0034】
厚くされた面は、外表面上に接着剤を有することができる。これにより、超音波トランスデューサを問題なく適用対象に組み込むことが保証される。超音波トランスデューサは、そのために、接着剤がアタッチメントに付着するよう、意図された部位に配置されさえすればよい。接着剤が、超音波トランスデューサからアタッチメントへの振動を減衰させる、気孔を有する泡状の軟質材料から成ることが望ましい。
【0035】
容器の外表面上に、音響減衰要素を配置することができる。音響減衰要素は、望ましくない伝播方向に関して超音波及び振動を減衰させる。好ましくは、音響減衰要素は、泡状材料から成る。導電性材料としての実施は、超音波トランスデューサの電磁適合性を低下させないために望ましいが、逆に、超音波トランスデューサの電磁適合性を高めるために望ましい。
【0036】
一実施形態において、カバーは回路基板である。このようにして、電子機器をカバーに容易に一体化することができ、必要とされる全ての電気部品を容易に電気的に接触させることができる。更に、導電路を変調することができるので、導電路上の電気部品の配置を変更し、その結果、電気部品を、スペースを節約して又は幾何学的に有利に、配置することができる。
【0037】
回路基板がカバーとして使用される場合、当該回路基板は可撓性であり得る。これにより、圧電ディスクからカバーに伝播する超音波を減衰させることができ、ファントム信号及び振動の伝達の両方を抑制することができる。更に、カバーとして可撓性の回路基板を組み込むことは、剛な回路基板と比較して、より容易に実施可能であり得る。
【0038】
回路基板は、外面上に、接地された電気接地面を有することができる。これにより、超音波トランスデューサの電磁適合性を高めることができる。同時に、回路基板上に配置された電気部品及び回路基板自体を、危険な電圧ピークから保護することができる。
【0039】
更に、カバーとして使用される回路基板は、プラスチック塊内に鋳込むことができる。好ましくは、プラスチック塊は、振動を減衰させるために、硬化後においても可撓性である。プラスチック塊は、回路基板の既存の亀裂又は孔、並びに、回路基板と容器との間の間隙を充填する。これにより、容器を気密に封止し、この方向への超音波の伝播を抑制することができる。更に、そのような気密な閉鎖は、容器の壁との接触点を有さないカバーによって実現することができる。これにより、カバーと壁との間の振動の伝達が抑制される。プラスチック塊としては、例えばシリコーン又は軟質樹脂を用いることができる。
【0040】
回路基板は電気部品を有することができ、当該電気部品は、回路基板のうち圧電ディスクを指す面の上に配置されている。したがって、電気部品は、機械的な又は化学的な環境の影響による起こり得る損傷から、並びに、外部の電磁干渉信号から、保護されている。更に、電気部品によって生み出されるカバーの平坦でない表面は、超音波を散乱させることができ、超音波の望ましくない伝播を低減することができる。
【0041】
回路基板は、電荷ポンプを備える集積回路を有することができる。圧電ディスクは、動作のために、大抵の場合、しばしば設定される5~12Vの供給電圧よりも高い電圧を必要とする。この場合、低い電源電圧から、圧電ディスク用の高い値の動作電圧を発生させることが必要である。変圧器は大きな構造を有するので、集積回路に含まれる電荷ポンプの助けを借りて、低い供給電圧から、圧電ディスクのためのより高い動作電圧を生成することが、有利である。
【0042】
更に、回路基板は、アナログ接地線及びデジタル接地線を有することができ、アナログ接地線及びデジタル接地線は、デジタル接地線とアナログ接地線との間の電磁相互作用を抑制することができるように構成することができる。このようにして、例えば、集積回路の高速スイッチング時間に起因してデジタル接地線上に形成され得る高速振動が、アナログ接地線上に寄生的に広がり、距離測定に干渉することを回避することができる。電荷ポンプは、特に、接地線上に低いオフセット電圧を生成する傾向がある。互いに影響しないようにデジタル及びアナログ接地線を設計することによって、距離測定の妨害は抑制される。
【0043】
アナログ接地線及びデジタル接地線は、集積回路の反対側に配置することができる。したがって、デジタル及びアナログ接地線間の空間的な距離は既に予め定められており、その結果、接地線間の電磁的な相互作用は回避され、望ましくない干渉は発生しない。
【0044】
更に、超音波トランスデューサは、温度センサを有することができる。媒体中の音速は、常に温度依存性であり、それにより、超音波トランスデューサの距離測定も、周囲温度に依存する。空気中の音速の線形補正式は、cair=(331.3+0.606*ν)m/sとなる。ここで、νは空気温度(℃)である。正確な距離測定を可能にするために、空気温度の測定により、この補正項を測定された距離に適用することができる。超音波トランスデューサに温度センサを一体化することは、広い温度範囲内で正確な距離測定を実現するのに役立つことができる。
【0045】
温度センサは、例えばNTCセンサ又はPTCセンサであることができる。これらは、高い測定精度及びロバスト性を有し、同時に低エネルギー消費である。更に、NTC及びPTCセンサは、電気回路に容易に組み入れることができ、それにより、本発明による超音波センサでの使用に極めて適したものになる。
【0046】
温度センサを容器の内部に配置することが、有利であり得る。容器の内部において、温度センサは、外部の危険から保護されている。容器の内表面上に直接配置することにより、温度センサは、周囲との良好な熱的接触を有することとなる。なぜなら、容器の壁厚は薄く、当該容器が金属から成る場合、容器も優れた熱伝導性を有するからである。特に好ましい構成において、温度センサは、容器の底部の上に載置することができる。この部位において、壁厚は特に小さく、したがって、温度センサから周囲への特に良好な熱的接触がもたらされる。更に、カバーに一体化された電子機器は、必然的に熱を生成し、当該熱は温度測定の品質を低下させる可能性がある。したがって、温度測定の品質が低下する可能性があるため、センサチップをカバーに一体化することは不利である可能性がある。温度センサが、底部の上に配置されているためにカバーから可能な限り大きな距離を有することにより、より正確な温度測定が可能になる。
【0047】
一実施形態において、圧電ディスクは、温度センサとして使用することができる。圧電ディスクは、2つの電極の間に配置され、したがってキャパシタンスを形成する圧電材料から成る。周囲温度に応じて、圧電材料は膨張又は収縮し、それにより、電極間の距離、したがって圧電ディスクのキャパシタンスも、変化する。圧電ディスクのキャパシタンスが、カバーに一体化された電子機器の助けを借りて測定されることにより、キャパシタンスから温度を推量すると共に、超音波トランスデューサの距離測定を周囲温度に基づいて補正することができる。
【0048】
超音波トランスデューサは、測定された距離の温度依存性を、音速の温度依存性を根拠として、温度センサの測定値に基づいて補正するよう、構成することができる。周囲温度に依存する項によって測定された距離を補正することにより、超音波トランスデューサは、例えば-40~85℃の範囲に亘り得る広い温度範囲において、正確な測定結果を提供することができる。
【0049】
本発明による超音波トランスデューサは、関連する用途のためのアタッチメントを有する構成に一体化することができ、超音波センサは、更なるハウジングなしに、アタッチメントに直接的に配置することができる。そのような構成は、超音波トランスデューサのための更なるハウジングを必要とせず、その結果、スペースが節約され、超音波トランスデューサは、密集した環境においても使用することができる。これにより、例えば小型ドローン又は自律ロボットのような、依然として通常の超音波トランスデューサを使用できない用途において、超音波トランスデューサの使用が可能となる。
【0050】
装置は、本発明による超音波トランスデューサを有することができ、当該装置は、超音波トランスデューサによって決定された信号に基づいて、物体までの距離を測定するように構成することができる。装置は、例えば、倉庫物流若しくは工業生産における自走ロボット、掃除機ロボット、芝刈り機ロボット又はドローンのような自律飛行物体のような、自律ロボットであることができる。しかしながら、超音波トランスデューサは、電気移動における自動車、充電ステーション、又は、操作者へのインターフェースとしてのモニタを有するラップトップ及び制御装置のような装置においても、使用することができる。
【0051】
更なる態様は、超音波トランスデューサの製造方法に関する。それは、例えば上述した超音波トランスデューサに関わる。
【0052】
超音波トランスデューサの製造方法は、以下のステップを含む:
・開口部と底部と壁とを有する容器を、押出成形プロセスで製造するステップ;
・容器の底部の上に圧電ディスクを固定するステップ;
・一体化された電子機器を有するカバーで容器を閉鎖するステップ、
その際、電子機器は、圧電ディスクと電気的に接触すると共に、圧電ディスクを制御し読み出すように構成されている。
【0053】
カバーは、特に回路基板であることができる。
【0054】
容器を閉鎖する前に、第1のシリコーンリングが、容器のうち底部から離れる方を向く支持面上に配置され、硬化されることができ、容器を閉鎖するステップにおいて、カバーが第1のシリコーンリングの上に配置される。第1のシリコーンリングに代えて、発泡材料層を使用することができる。
【0055】
第2のシリコーンリングが、カバーのうち底部から離れる方を向く面の上に配置され、カバーは、第1及び第2のシリコーンリングの間に固定される。
【0056】
電子機器は、圧電ディスクと、電子機器と半田付けされたワイヤを介して電気的に接触することができる。好ましくは、電子機器は、2つのワイヤを介して圧電ディスクと接触することができ、2つのワイヤの各々は、電子機器に半田付けされている。
【0057】
カバーは、ワイヤが配置される少なくとも1つの凹部を有することができ、容器を閉鎖するステップにおいては、カバーが並進運動によって容器に押し付けられ、次いで、ワイヤが電子機器に半田付けされる。カバーは、各ワイヤのための凹部を有することができる。
【0058】
液状の充填材が、カバーと底部との間の空隙内に充填され、当該液状の充填材は、硬化されて減衰要素となることができる。カバーは更なる凹部を有することができ、当該凹部を通じて液状の充填材が充填される。その際、内部にワイヤが配置された凹部から飛び出すほど多くの液状の充填材を、充填することができる。飛び出す充填材は、その硬化の後、それぞれのワイヤのカバーとの接触部位を覆い保護する。
【0059】
超音波トランスデューサの色又は特性を顧客の希望に適合させるために、容器は、特にカバーから離れる方を向く底部の外表面において、例えばコーティング、陽極酸化又は塗装のような適切な処理を施すことができる。更に、カバーは、保護層で被覆されてもよく、又は、フィルム若しくは別のカバーで封入されてもよい。
【0060】
以下において、本発明が、概略的な図示に基づいて、詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図3】組み立てられた超音波トランスデューサの断面を示す。
【
図4】内部に温度センサが配置された、容器の代替的な実施形態を示す。
【
図5】超音波トランスデューサの更なる実施形態の分解図を示す。
【
図6】組み立てられた超音波トランスデューサの更なる実施形態の断面を示す。
【
図7】組み立てられた超音波トランスデューサの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1には、本発明による超音波トランスデューサ1の分解図が示される。開口部と、底部3と、円形の壁とを有する容器2は、2つの円筒状の部分、すなわち下側部分及び上側部分から構成されている。下側部分は、上側部分よりも小さい半径を有し、下部の円形の底面で、膜としても作用する底部3によって閉じられている。上へ向かって下側部分は開いている。容器2全体は一体であり、したがって上側部分は、底部3に対して平行に延びる接続面を介して、下側部分と接続されている。上側部分は、同様に上へ向かって開いている。
【0063】
容器2の内部には、圧電ディスク5が、接着層13又は接着ディスクによって底部3に固定される。その上には、容器2の形状に適合すると共にこれを完全に満たす減衰要素8が、配置されている。ワイヤ14を介して、圧電ディスク5は、電子機器7と接続されている。当該電子機器は、カバー6のうち内側を向く側に配置されている。カバー6自体は回路基板12であり、外側を向く側にデジタルI/Oインターフェース9を有する。
【0064】
デジタルI/Oインターフェース9を介して、外部への通信が実現されるだけでなく、電子機器7及び圧電ディスク5に電気が供給される。カバー6の上にデジタルI/Oインターフェース9を配置することにより、超音波トランスデューサ1のコンパクトなデザイン及び容易な接触が可能となる。なぜなら、更なる接続を考慮する必要がないからである。アナログインターフェースとは対照的に、デジタルI/Oインターフェース9は、例えば近くにある電気モータに由来する可能性のある干渉信号に関して、高い許容度を有する。例えば、インターフェースは、FFCコネクタによっても実現することができる。これは、その8つの接点を介して、多数の読み出しオプションを提供するデバッグ・インターフェースの使用を可能とし、これは、特に開発者にとって、及び、より労力のかかる用途において、有利であり得る。特に簡易な代替手段として、2線式又は3線式インターフェースが、インターフェースとして使用され得る。これらは、上述した代替的なインターフェースと比較して、最も低コストである。2~8本のピンを有する簡易なピンヘッダも、超音波トランスデューサ1用のインターフェースとして可能である。
【0065】
カバー6は、外側に接地面を有し、内側に電気部品の形態の電子機器7を有する、回路基板12である。好ましくは、カバー6は、容器2の壁に触れないように形成されている。回路基板12上の導電路は、例えばスペースを節約して又は容器2の形状に関して幾何学的に有利に、電気部品を配置するように適合され得る。
【0066】
電子機器7をカバー6の内側に配置することによって、電気部品は、容器2が導電性材料から成る場合、外部の電磁干渉信号から保護される。
【0067】
更に、電気部品によって生み出された平坦でない表面は、圧電ディスク5からカバー6に、したがって逆方向に伝播する超音波の散乱を促進する。電子機器7をカバー6の内側に配置することの更なる利点は、電子機器7が、環境の影響から生じ得る機械的な又は化学的な損傷から保護されることである。
【0068】
回路基板12が可撓性であり及び/又はプラスチック塊内に鋳込まれていることにより、圧電ディスク5からカバー6に伝播する超音波は減衰され、それにより振動及びそれに伴うファントム信号の更なる拡散が抑制され得る。カバー6としての可撓性の回路基板12の組み込みは、剛なカバー6と比較して、容易に行うことができる。プラスチック塊は、回路基板12のあり得る亀裂及び孔、並びに、カバー6と容器2との間のあり得る隙間を満たすために使用される。これにより、容器2は封止され、超音波の伝播はより良好に抑制され得る。容器2よりも小さいカバー6が使用される場合、それにもかかわらずプラスチック塊によって気密な閉鎖が実現され得る。そして、当該閉鎖は、更にカバー6と壁4との間の振動の伝達を低減しさえする。プラスチック塊としては、例えばシリコーン又は軟質樹脂を使用することができる。
【0069】
カバー6は、再閉鎖可能な固定機構によって、容器2内に固定することができる。固定機構は、例えば、カバー6を1つの位置に取り外し可能に固定するスナップイン機構であることができる。それにより、カバー6を開くことができ、カバー6の内面上の電子機器7の電気部品又は接点を検査することができる。カバー6の断面が容器2の内側断面に対応する場合には、例えばシリコーンから成ることができる弾性リング22をカバー6の下に配置することが有利である。このようにして、カバー6の開放の際、開放を容易とする僅かなスペースを利用可能とすることができる。
【0070】
図2には、カバー6の外側亀裂形状、及び、導電路のレイアウトの実施例が示される。カバー6は、導線、電子機器7及び接点を、湿気、腐食及び起こり得る短絡から保護するために、その外面及び内面上の電子機器7と共に、保護層で覆われることができる。保護層は、例えばラッカー又はグラウトであり得る。
【0071】
カバー6は、縁部に3つの凹部15を有し、3つの凹部15のうちの2つは、カバー6の反対側にある。反対側の凹部15は、容器2内へ挿入する際、カバー6をより容易に取り扱い得ることを可能にする。したがって、外側と内側との間の電気的な接続を有することもできるカバー6の凹部15は、ワイヤ14と電子機器7との間のより容易な接触を可能にする。例えば、凹部15によって、カバー6を並進運動によってワイヤ14に向かって押しやることを可能にすることができる。カバー6は、ワイヤ14によるカバー6の接触のためのいくらかの間隙を作り出すために、例えば半田付けプロセスによって実現される容易な接触のための凹部15によって、まだ幾らか移動させることができる。これに代えて、ワイヤ14はカバーの小さな孔を通されなければならず、これにより、超音波トランスデューサの組み立てがより困難になる。
【0072】
カバー6の有利な組み立ては、以下で明らかになる。まず、容器2のカバーの支持面及び隣接する側面を、例えばシリコーンのような制振材で覆い、これを必要に応じて硬化させる。次に、カバー6が容器2内に配置され、圧電ディスク5と電子機器7との間の電気的な接触が、ワイヤ14を介して確立される。カバー6は、電気的に接触された後、その最終位置に押しやられる。そして、例えばシリコーンのような制振材の更なる層が、カバー6の外周に沿って接着され、当該層が、カバー6を所定の位置に固定する。次に、液状の制振材を容器内に充填することができる。
【0073】
更に、容器2には、閉じられた状態においても、凹部15を通じて液状の充填材を充填することができる。これにより、減衰要素8とカバー6及び電子機器7との間に、形状接続を形成することができることになる。なぜなら、液状の充填材は容器2を完全に満たすため、カバー6と減衰要素8との間の空気の混入が回避されるからである。これにより、カバー6上の電子機器7は、形状接続する減衰要素8によって更に良好に保護され、カバー6は、振動に対して減衰されることになる。特に、容器2からカバー6への振動の伝達は、減衰要素8によるカバー6の減衰によって抑制することができ、その結果、距離測定の品質を低下させ得る音響サイドローブが形成される可能性はない。カバー6に2つ以上の凹部15を導入することにより、充填プロセスの際、恒常的で一様な均圧化が生じ得る。これにより、さもなければ充填プロセスの際に容易に生じる可能性のある気泡及び空気の混入が、防止される。その代わりに、巨視的な気泡のない均質な形状接続する減衰要素8が、容器2内に形成される。
【0074】
3つの凹部15のうちの2つに、ワイヤ14のための通路16を形成することができる。これにより、圧電ディスク5を、カバー6内の電子機器7と電気的に接続することができる。ワイヤ14と電子機器7との間の電気的な接続は、通路16によって安定となる。一実施形態において、液状の充填材は、凹部15したがって通路16と、ワイヤ14と電子機器7との間の接点とを覆うように、容器2内に充填することができる。引き続き乾燥する液状の充填材から成る被覆により、ワイヤ14と電子機器7の接触は、外部の影響から保護される。更に、超音波トランスデューサ1及び電子機器7を環境から保護するために、カバー6は、組み立ての後、外面を保護層で被覆すると共に、フィルム又はキャップで封止することができる。
【0075】
図2に示される導電路のレイアウトでは、集積回路17が中央に配置されている。集積回路17は電荷ポンプを有し、当該電荷ポンプを用いて、圧電ディスク5によって必要とされる動作電圧を生成することができるが、当該動作電圧は、5~12Vの回路の供給電圧よりも高い。代替的に、より高い電圧を生成するために、変圧器を使用することもできはするが、これにより構造は大きくなる。電荷ポンプは、接地線上に低いオフセット電圧を生成する傾向がある。例えば、集積回路17の高速なスイッチングタイムに起因してデジタル接地線19上に形成される可能性のある、接地線上の高速振動は、アナログ接地線18上に寄生的に拡散し、したがって信号処理及び距離測定を妨害する可能性がある。デジタル及びアナログ接地線18,19を相互に影響しないように設計することにより、距離測定の妨害は抑制される。これは、
図2に示されるレイアウトで達成された。
【0076】
第一に、アナログ接地線18及びデジタル接地線19が集積回路17の反対側に配置されていることにより、デジタル接地線19の電磁的デカップリングが達成される。
図2のレイアウトでは、デジタル接地線19は、集積回路17の右下隅に配置され、そこで接地面を形成するのに対し、アナログ接地線18は、集積回路17の左上隅に短い導電路によってのみ形成されている。したがって、デジタル及びアナログ接地線18,19間の空間的な距離は予め定められており、その結果、接地線間の電磁的な相互作用は回避され、望ましくない干渉は発生しない。
【0077】
カバー6と底部3との間に配置され、容器2全体を満たす減衰要素8は、第一に、圧電ディスク5に由来する超音波及び振動を減衰させる機能を果たす。したがって、減衰要素8の最も重要な特性は、特に50kHz~100kHzの典型的な超音波周波数に対する減衰定数であり、当該減衰定数は、可能な限り大きくなければならない。ゴム又は発泡材料は、適切な減衰特性を示す。気孔を有する例えばシリコーンのようなプラスチックから成る発泡材料は、明確に、減衰要素8の材料として適している。これらは、容器2内に固体として配置することができ、又は、液体として容器2内に流し込むことができ、そこで、例えば2成分シリコーンのような液状の成分は硬化し、容器2を形状接続的に満たす。超音波の減衰に加えて、減衰要素8は、容器2を機械的にも安定化させ、その結果、容器2は、より大きな外圧に耐える。
【0078】
容器2の上側及び下側部分の間の接続面の外表面上には、接着剤10が配置されている。好ましくは、接着剤10は、振動を減衰させる泡状の軟質材料から成る。接着剤10を使用することにより、超音波トランスデューサ1の組み込みが簡略化される。なぜなら、超音波トランスデューサ1は、接着剤10がアタッチメントに付着するよう、目標位置に配置されさえすればよいからである。泡状の材料は、超音波トランスデューサ1からアタッチメントへの振動の伝達を低減する。これは、例えば、泡状のコアを有する両面接着テープであってもよい。この粘着テープは、その一方の面で意図された面に既に取り付けることができ、粘着テープの第2の粘着面は、超音波トランスデューサ1の適用対象への最終的な取り付けまで、保護フィルムで覆われたままにすることができる。
【0079】
容器2の下側部分の壁5の外面に沿って、振動減衰要素11が配置されている。振動減衰要素11は、底部3に対して垂直な望ましくない伝播方向に関して、超音波及び振動を減衰させる。振動減衰要素11は、好ましくは、超音波トランスデューサの電磁適合性を高めるために、好ましくは導電性でもある泡状材料から成る。しかしながら、例えばシリコーンのような非導電性材料を使用することも可能である。
【0080】
図3には、組み立てられた超音波トランスデューサ1の断面が示される。容器2の下側部分の壁4は、外側から振動減衰要素11で覆われており、容器2の下側及び上側部分の間の接続面には、外側から接着剤10が設けられている。容器2の内部の底部3の上には圧電ディスク5配置されており、当該圧電ディスクは、容器2全体を満たす減衰要素8を介して、ワイヤ14によって電子機器7と電気的に接触している。
【0081】
容器2の上側及び下側部分の間の接続面は、容器2の残りの部分よりも厚い。これらの厚くされた接続面は、適用対象においてアタッチメント、トラス又は支持物上の支持面として使用されるように、設計されている。膜としても使用される底部3は、1mmより薄い。一方の側において、底部3は、圧電ディスク5の撓み運動を著しく妨げないよう、十分な弾性を有していなければならない。他方の側において、底部3は、例えば洗浄のために水を当てる際のように外力が作用した場合に損傷を受けないよう、ある程度の安定性を有していなければならない。有利な妥協点が、底部3の厚さが0.2mmを超え1mm未満である場合に、見出された。壁は、底部3の少なくとも1.5倍の厚さであるが、可能な限り、底部3の厚さの3倍よりも厚くなければならない。そのような厚い壁厚は、底部3又は膜の振動の、容器2の上側及び下側部分の間の接続面への伝達を、減少させるのに適している。接続面は、超音波トランスデューサ1のアタッチメントへの支持面である可能性があるので、まさにこれらの接続面において、振動及び撓みは回避されるべきである。さもなければ、振動は、適用対象に属する隣接するアタッチメントに伝達され得る。伝達された振動は、再び反射され、したがって、超音波トランスデューサ1において、ファントム信号として、誤って測定信号として捕捉される可能性がある。膜の厚さの少なくとも1.5倍である壁厚は、底部3から容器2の他の部分への振動の伝達を減少させ、したがって問題を防止する。
【0082】
図4に示される容器2の更なる実施形態において、容器2は壁4の開口部に沿って段差を有する。この段差は、カバー6のための支持面として使用され、その結果、カバー6を容器2内に容易に配置することができる。シリコーン又は発泡材料の層をカバー6と容器2との間で複合材料として使用することにより、カバー6を、強固にかつ振動が減衰された態様で、容器2と接続することができる。超音波トランスデューサ1をより一層耐水性とするために、埋め込まれたカバー6と容器2との間の縁部の上及びその内部に、シリコーン又は発泡材料の更なる層を設けることができる。
【0083】
容器2の全ての角は、小さい半径で丸み付けされている。これは、押出成形プロセスで製造することができる容器2の製造プロセスによるものである。ここでは、アルミニウムスラグを、内側パンチと外側ダイとの間でプレスして容器2を形成する。容器2を型押し具から容易に取り外すために、鋭い縁部及び角部を避け、代わりに、隅部に丸み付けを導入することが有利である。
【0084】
図4は更に、容器2の内面上の底部3の上に配置された、温度センサ20を示す。媒体中の音速は温度に依存するので、音響パルスの移動時間に基づく超音波トランスデューサ1の距離測定も、周囲温度に依存する。空気中の音速の線形補正式は、c
air=(331.3+0.606*ν)*m/sと書くことができる。ここで、νは空気温度(℃)である。超音波トランスデューサ1の正確な距離測定を可能にするために、この補正項は、距離測定の際に考慮される。これにより、-40~85℃の範囲で正確な距離測定が実現可能である。
【0085】
容器2の内部に温度センサ20を配置することにより、温度センサは、外部の危険から保護されている。容器2と直接接触していることにより、温度センサ20は、環境との良好な熱接触を有する。なぜなら、容器2の壁厚は小さいからである。金属から成る容器2は、温度センサ20との組み合わせにおいて、特に有利であり得る。なぜなら、金属は優れた熱伝導性を有するからである。更に、カバー6に一体化された電子機器7により廃熱が発生し、それにより、カバー6の近傍における温度測定の品質が低下する可能性がある。したがって、容器2の底部3上の温度センサ20の配置は、特に有用である。なぜなら、底部3での容器2の壁厚は特に小さく、電子機器7と温度センサ20との間に可能な限り大きな距離がもたらされるからである。このようにして、正確な温度測定が可能になる。なぜなら、底部の温度センサ20は環境との良好な熱接触を有し、熱測定が電子機器7の発熱により変化しないからである。
【0086】
温度センサ20としては、例えばNTCセンサ又はPTCセンサが考慮の対象となる。両方のタイプのセンサは、高い測定精度及びロバスト性を有し、同時に低エネルギー消費である。両方のタイプの温度センサ20は、問題なく電気回路に組み込むことができ、したがって、超音波トランスデューサでの使用に適している。特に有利な実施形態において、圧電ディスク5は、温度センサ20として使用される。圧電ディスク5は、2つの電極間に配置された圧電材料から成るので、電極間にキャパシタンスを形成する。このキャパシタンスは、周囲温度に応じて変化する。なぜなら、圧電材料は、正の温度変化の場合に膨張し、負の温度変化の場合に収縮するからである。これを前提として、電極間の距離、したがって圧電ディスク5のキャパシタンスも、周囲温度に依存して変化する。カバー6に一体化された電子機器7の助けを借りて圧電ディスク5のキャパシタンスを読み出すことにより、周囲温度を推論することができ、したがって、超音波トランスデューサの距離測定を、周囲温度に基づいて補正することができる。
【0087】
理想的には、容器2は、導電性の材料から製造されている。なぜなら、それにより超音波トランスデューサ1の電磁適合性が高められるからである。特に、圧電ディスク5及びカバー6の内面上に配置された電子機器7は、容器2に導電性の材料を使用することにより、外部の電磁干渉信号から遮蔽することができる。例えばドローン又は自律ロボットのような小型で狭い適用対象では、しばしば、超音波トランスデューサに損傷を与える可能性のある多数の電気モータが、組み込まれている。Al、Cu、Sn、Fe、鋼のような金属だけでなく合金も、容器2に適した導電性の材料である。底部3の膜としての機能は、比較的高い可撓性を必要とする。このため、Al及びSnのような低い弾性係数を有する導電性の材料が、非常に適している。
【0088】
容器2は更に、内表面が部分的に粗くされ及び/又は滑らかにされることにより、最適化され得る。表面を粗くすると、材料はより強くそれに付着するようになる。しかしながら、超音波も、粗く平滑でない表面で、より強く散乱される。表面を滑らかにすると、当該表面への付着は減少するが、衝突する超音波の散乱は少なくなる。したがって、圧電ディスク5が接着層13を介してより良好に保持されるよう、当該圧電ディスク5に隣接する底部3の表面を粗くすることが有利である。更に、容器2の内部の底部3の残りの面は、減衰要素8がこれらの面に付着せず、圧電ディスク5の撓みが減衰要素8によって過度に妨げられないよう、滑らかにされている。任意選択的に、容器2の内表面は、この表面で超音波をより強く散乱させるために、粗くすることもできる。粗面化のための適切な方法は、例えば、サンドブラスト又はエッチングプロセス、並びに、表面を滑らかにするための研磨又はコーティングプロセスである。
【0089】
更に、底部3の外表面は、コーティング、陽極酸化又は塗装することができる。一方では、それにより、距離測定を妨害する可能性のある表面上の起こり得る不規則性が、排除される。他方では、その面は、可能な適用対象に適合させることができる。というのは、超音波トランスデューサ1が目立たないよう、色又は表面材料は、周囲に適合するように設計することができるからである。容器2の外表面全体を陽極酸化することも可能である。容器2の外表面は、例えば道路交通における塩水噴霧のような環境の影響に、特に強く晒されている。外表面を陽極酸化することにより、容器2は腐食から保護される。
【0090】
容器2の内表面の陽極酸化も、例えば減衰要素8内の溶剤又は接着層13内の接着剤による化学反応から容器2を遮蔽するために、望ましい可能性がある。最適な保護のために、容器2は、外表面上及び内表面上の両方で陽極酸化することができる。
【0091】
容器2の内表面を陽極酸化することの欠点は、容器2を、もはや電気的に接触可能に、したがって、例えば接地などの基準電位への電気的な接続のために、もはや容易に使用することができないことである。したがって、容器2の内表面上に付加的に導電層を塗布することが有利である。
【0092】
これに代えて又はこれに加えて、容器2の陽極酸化された内表面は、少なくとも1つの部位に、狙いを定めた陽極酸化の途絶部を有することができる。換言すれば、狙いを定めて、内表面の非導電性の陽極酸化層の途絶部を設けることができる。これらの途絶部は、容器2の導電性の接触を可能にすることができる。例えば、容器2は、少なくとも1つの途絶部を介して、付加的に塗布された導電性の層と電気的に接触することができる。代替的に、容器2は、途絶部に設けられた半田接点を介して、電気的に接触することができる。
【0093】
付加的な導電層、狙いを定めた陽極酸化の途絶部又はこれらの組み合わせを介して、例えば圧電ディスク5、温度センサ20又は電子機器7のような組み込まれた電子部品の基準電位との電気的な接続を行うことができ、また、超音波トランスデューサ1の電磁適合性又は容器2内の電子機器7の電磁遮蔽は、内表面が陽極酸化されていない容器2の場合のように、同様に又は同等に良好に達成することができる。
【0094】
図5には、
図1に示された分解図と同様の、超音波トランスデューサ1の更なる実施形態の分解図が示されている。
図1とは対照的に、カバー6は、この実施形態では、2つのシリコーンリング22の間に配置されている。シリコーンリング22は、主として、カバー6を容器2から機械的に切り離すために用いられるが、例えば、グラウト材を容器2の内部に侵入させないためのシールとしても用いられる。減衰要素8は、カバー6に面する表面上に凹部を有し、当該凹部内に、カバー6から突出する電子機器7を収容することができる。超音波トランスデューサのための電気的な接続部として、この実施形態では、3つのピン21が設けられる。
【0095】
図6は、
図5に示された超音波トランスデューサ1の実施形態の断面を示しており、図示は、
図3のものと同様である。容器2の形状は、
図4の容器2の形状に対応する。カバー6は、容器2の開口部から隔てられて、したがって容器2内に配置されている。このようにして、カバー6内の電子機器7は、機械的及び電磁的な負荷から保護される。カバー6と容器2の開口部及び壁との間の空間には、カバー6を振動減衰して固定し保護を提供するグラウト材を注入することができる。カバー6と減衰要素8との間のシリコーンリング22により、グラウト材は減衰要素8との直接的な接触を有さない。
【0096】
図7には、
図5及び
図6に示された超音波トランスデューサ1の実施形態の斜視図が示されている。3つのピン21は、連結片23によって互いに堅固に連結されている。ピン21は、それぞれ、カバー6の上に載置される一端で曲げられ、三脚として安定した起立状態を有するように配置されている。3つのピン21の各々は、カバー6内の電子機器7の一部と見なし得る導電性の接触面24の上に立っている。3つのピン21は、それぞれ、供給電圧のための接続部として、基準電位との接続部として、又は、I/O接続部9として、使用することができる。カバー6は容器2の開口部から隔てられているので、カバー6上に塗布されたグラウト材は、ピン21をカバー6上に固定するために使用することができる。3つのピン21は、同時に超音波トランスデューサの電子的な接続部として及び機械的な固定のために、使用することができるように設計されている。
【符号の説明】
【0097】
1 超音波トランスデューサ
2 容器
3 底部
4 壁
5 圧電ディスク
6 カバー
7 電子機器
8 減衰要素
9 デジタルI/Oインターフェース
10 接着剤
11 振動減衰要素
12 回路基板
13 接着層
14 ワイヤ
15 凹部
16 通路
17 集積回路
18 アナログ接地線
19 デジタル接地線
20 温度センサ
21 ピン
22 弾性リング/シリコーンリング
23 連結片