(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】ウェハ用の基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230425BHJP
F16B 47/00 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01L21/68 B
F16B47/00 S
(21)【出願番号】P 2021576984
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071516
(87)【国際公開番号】W WO2021019018
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-31
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518264310
【氏名又は名称】セムシスコ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SEMSYSCO GmbH
【住所又は居所原語表記】Karolingerstrasse 7C 5020 Salzburg Republic of Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス グライスナー
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル アイブル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト ウッツリンガー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157221(JP,A)
【文献】特開2017-200712(JP,A)
【文献】特開平06-029370(JP,A)
【文献】特開平10-156780(JP,A)
【文献】特開2012-199282(JP,A)
【文献】米国特許第06517130(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0101808(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
F16B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドエフェクタ(11)と、
矯正リング(12)と、
吸盤(13)と、を備え、
前記吸盤(13)は、前記矯正リング(12)内に配置され、
前記吸盤(13)の第1部分は真空供給部に接続可能であり、前記吸盤(13)の第2部分は、前記真空供給部によって提供される減圧により、基板に取り付け可能であり、
前記第1部分は、前記エンドエフェクタ(11)が設けられている側に位置し、前記エンドエフェクタ(11)の真空排気口(15)を介して、前記真空供給部に接続され、
前記第2部分は、前記矯正リング(12)が設けられている側に位置し、前記真空供給部の作動中に前記基板と接触して前記基板を吸引し、
前記吸盤(13)は、常圧状態で、矯正リング(12)から突出し、
前記吸盤(13)は、減圧状態で、前記矯正リング(12)と同じ高さに存在し、前記基板は、前記矯正リング(12)が前記基板に接触するように、前記吸盤(13)により保持され、
前記矯正リング(12)は、前記エンドエフェクタ(11)から取り外し可能に取り付けられ、前記吸盤(13)もまた、前記エンドエフェクタ(11)から取り外し可能に取り付けられる、
ウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項2】
前記矯正リング(12)は、前記吸盤(13)を囲み、前記吸盤(13)の半径方向の変形を制限する、
請求項1に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項3】
前記吸盤(13)は、減圧状態で、地面に対して、実質的に水平位置または垂直位置において、前記基板を保持する、
請求項1または2に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項4】
前記矯正リング(12)は、前記基板に接触し、
前記基板が非平面となる場合、非平面の前記基板を、少なくとも部分的に矯正する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項5】
前記吸盤(13)は、常圧状態で、前記矯正リング(12)から距離d突出し、
前記基板のサイズsに対する距離dの比は、30:1から800:1までの範囲である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項6】
前記矯正リング(12)の外周は、前記吸盤(13)の外周より大きい、
請求項1から5のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項7】
前記吸盤(13)の基板接触面(14)は、常圧状態で、前記矯正リング(12)から突出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項8】
前記矯正リング(12)は、前記吸盤(13)のカップ材料より、剛性が高い材料で形成される、
請求項1から7のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項9】
複数の吸盤(13)、好ましくは3つの吸盤(13)をさらに備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項10】
複数の矯正リング(12)、好ましくは3つの矯正リング(12)をさらに備え、
該矯正リング(12)は、前記吸盤(13)のそれぞれを取り囲む、
請求項9に記載のウェハ用の基板処理装置(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のウェハ用の基板処理装置(10)と、
前記基板処理装置(10)の吸盤(13)の第1部分と接続される前記真空供給部と、
を備える、ウェハ用の基板処理システム。
【請求項12】
基板処理装置(10)の矯正リング(12)を交換するための少なくとも1つの交換用矯正リングをさらに備える、
請求項11に記載のウェハ用の基板処理システム。
【請求項13】
矯正リング(12)内に配置された吸盤(13)を準備するステップと、
前記吸盤(13)の第2部分と基板との間の接触を提供するステップと、
前記基板が前記吸盤(13)により保持されるように、真空供給部によって、減圧状態を提供するステップと、を含み、
前記矯正リング(12)は、エンドエフェクタ(11)から取り外し可能に取り付けられており、
前記吸盤(13)の第1部分は、真空供給部に接続されており、前記吸盤(13)は、常圧状態で、前記矯正リング(12)から突出しており、
前記第1部分は、前記エンドエフェクタ(11)が設けられている側に位置し、前記エンドエフェクタ(11)の真空排気口(15)を介して、前記真空供給部に接続され、
前記第2部分は、前記矯正リング(12)が設けられている側に位置し、前記真空供給部の作動中に前記基板と接触して前記基板を吸引し、
前記吸盤(13)は、減圧状態で、前記矯正リング(12)と同じ高さに存在し、前記矯正リング(12)は、前記基板に接触し、
前記吸盤(13)もまた、前記エンドエフェクタ(11)から取り外し可能に取り付けられる、
基板処理方法。
【請求項14】
前記矯正リング(12)は、
前記基板に接触し、前記基板が非平面となる場合、減圧状態で、非平面の前記基板を、少なくとも部分的に矯正する、
請求項13に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ用の基板処理装置、ウェハ用の基板処理システム、および基板処理方法に関する。本発明は、特に、薄い基板用の単一のウェハ処理に関する。薄い基板は、数百μm未満~百μm未満の基板を意味する。
【背景技術】
【0002】
半導体および半導体に関連する産業(パッケージング、ソーラーパネルなど)におけるウェハ処理、および一般的な基板処理では、薄い基板に対する信頼性の高い処理が頻繁に必要とされる。信頼性とは、基板に傷を付けたり、壊したり、強く曲げたり、ひびを入れたりすることなく、ストレージカセットまたは処理ツールで動くロボットから、垂直位置または水平位置で、基板をピックアップし、配置し、交換することを意味する。薄い基板とは、数百μmから百μmをはるかに下回る厚さの基板を意味する。
【0003】
このような薄い基板は、非常に壊れやすく、すでに曲がっている場合がある。このため、支持構造なしで保持されるときに、平面基板を形成せず、平面基板に見えない。材料の応力または単なる重力によって引き起こされる基板の曲がりというこのような自然現象は、薄いウェハを処理しようとするときに、大きな懸念事項となる。特に、基板の1箇所または複数箇所に一定量の真空が加えられることにより、基板を所定の位置に保持するため、処理ツールを使用して、薄い基板を処理しようとするときに、大きな懸念事項となる。
【0004】
移動する処理装置から基板が落下しないように、十分な強さの真空が基板に加えられる場合、現存するシステムでは、既存の変形に加えて、真空の吸引力によって基板が変形するという現象が発生する。このような、付随する変形は、多くの場合、真空の吸引力を失わせて、基板を処理装置から脱落させる、あるいは、場合によっては、真空の吸引力が加えられる箇所において、付随する変形により、亀裂および破損を生じさせてしまう。
【0005】
例えば、特許文献1には、ウェハ処理エンドエフェクタを含み、および/または、ウェハ処理エンドエフェクタとともに利用されるウェハ処理エンドエフェクタおよび半導体製造装置が開示されている。エンドエフェクタは、エンドエフェクタ本体、およびエンドエフェクタ本体によって支持されて、少なくともウェハと部分的に対面接触するように構成された複数のウェハ接触面を含む。エンドエフェクタは、さらに、エンドエフェクタ本体の近接端部と複数のウェハ接触面との間に延びる真空分配連結管を含む。エンドエフェクタは、また、複数のウェハ接触面内に規定され、複数のウェハ接触面と真空分配連結管との間に延びる複数の真空開口部を含む。エンドエフェクタは、さらに、それぞれが、複数のウェハ接触面のそれぞれに関連付けられる複数のシーリング構造を含む。
【0006】
薄くて、すでに曲がっている基板が、例えば、特許文献1に開示されているエンドエフェクタに接触すると、ガスケットが基板の所定の曲げ状態に合わせて変形を調整しているため、基板は、曲がった状態を維持するか、あるいは、さらに曲がる。このような変形は、真空の吸引力を失わせて、基板を処理装置から脱落させる、および/または、基板に亀裂を生じさせてしまう。
【0007】
さらに、真空がオフとなるとき、このような真空保持システムからウェハを取り外すために、著しい遅延が生じる。基板は、真空供給部と一体化するウェハ接触面と密接に接触しているため、ウェハを取り外せるように、真空が十分に弱くなるまでに、数百マイクロ秒から数秒かかる。このようにウェハを取り外すまでにかかる遅延は、毎日、数十万枚のウェハを処理する大規模な製造作業において、処理および製造の大幅な遅延につながってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に、薄い基板のより良い処理を可能にする、改良された基板処理装置を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の問題は、独立請求項の主題によって解決され、さらに、一実施形態が従属請求項に組み込まれる。以下に記載される本発明の態様は、ウェハ用の基板処理装置、ウェハ用の基板処理システム、および基板処理方法にも適用されることに留意されたい。
【0011】
本発明によれば、ウェハ用の基板処理装置が開示される。ウェハ用の基板処理装置は、以下の構成を備える。エンドエフェクタと、矯正リングと、吸盤と、を備える。前記吸盤は、前記矯正リング内に配置される。前記吸盤の第1部分は真空供給部に接続可能であり、前記吸盤の第2部分は、前記真空供給部によって提供される減圧により、基板に取り付け可能である。前記吸盤は、常圧状態で、矯正リングから突出する。前記吸盤は、減圧状態で、前記矯正リングと同じ高さに存在し、前記基板は、前記矯正リングが前記基板に接触するように、前記吸盤により保持される。
【0012】
基板処理装置は、基板を処理するように構成される。処理される基板は、ウェハであってよい。基板は、薄いものであっても、超薄いものであってもよい。基板の厚さは、数百μm未満から百μm未満、10μmから750μmであることが好ましく、20μmから100μmであることがより好ましい。このような厚さの基板は、非常に壊れやすく、重力、材料内の応力などが原因で、最初からすでに曲がっている場合がある。薄い基板が、支持なしで保持された場合、平面を持たない、あるいは、平面が形成されないことが多いことを意味する。
【0013】
吸盤は、矯正リング内に配置される。吸盤は、矯正リングの中央に配置されてよい。矯正リングは、吸盤を囲んでよい。これにより、矯正リングは、吸盤を制限する。矯正リングは、吸盤の(放射状の)変形を制限または防止し、吸盤が基板の所定の曲げ状態に従って変形することを防ぐ。結果として、薄くて、しばしば非平面となる基板の場合にも、真空の吸引力を失わせることはなく、このような基板は、ひび割れも破損も無い。
【0014】
矯正リングは、エンドエフェクタに取り外し可能に取り付けられてよい。矯正リングは、エンドエフェクタに接続して、取り外し可能または交換可能であってよい。言い換えれば、矯正リングは、エンドエフェクタと部分的に一体化されていてもよいし、エンドエフェクタと別体であってもよい。矯正リングは、エンドエフェクタに、固定的または恒久的に接続されず、新しい、または、他の特性、形状若しくはサイズを有する別の矯正リングと、交換可能であり、または、置き換えることができる。加えて、または、代わりに、吸盤は、エンドエフェクタに取り外し可能に取り付けられてよい。
【0015】
一実施形態では、矯正リングは、エンドエフェクタと矯正リングとの間に配置された支持要素を介して、直接または間接的にエンドエフェクタに接続されてよい。矯正リングは、エンドエフェクタまたは支持要素に取り付けられたときに、嵌まる形となってよく、力が適切となってよく、または、ねじで固定された接続を提供してよい。つまり、矯正リングは、簡単に外したり、交換されたり、または、置き換えられてよい。
【0016】
一実施形態では、吸盤は、エンドエフェクタと矯正リングとの間に配置された支持要素を介して、直接または間接的にエンドエフェクタに接続されてよい。吸盤は、矯正リングとは独立してエンドエフェクタに接続されてよい。したがって、矯正リングの分解は、吸盤に影響を及ぼさなくてよい。吸盤は、エンドエフェクタまたは支持要素に取り付けられたときに、嵌まる形となってよく、力が適切となってよく、または、ねじで固定された接続を提供してよい。つまり、吸盤は、簡単に外したり、交換されたり、または、置き換えられてよい。
【0017】
基板処理装置の動作中、吸盤の第1部分は真空供給部に接続され、吸盤の第2部分は基板またはウェハを吸引する。
【0018】
常圧状態または大気圧状態において、吸盤は、矯正リングから突出している。特に、吸盤の基板接触面は、矯正リングから突出していてよい。言い換えれば、吸盤の外縁は、当初、矯正リングと比較して、エンドエフェクタ本体から一定の距離だけ延びていてよい。
【0019】
吸盤は、真空供給部によって提供される減圧状態において、矯正リングと同じ高さに存在する。言い換えれば、吸盤の外縁は、矯正リングと同じ高さに達していてよい。矯正リングは、減圧状態において、減圧または真空が基板表面に加えられることで、基板に接触してよく、吸盤は、基板を所定の位置に保持してよい。矯正リングは、基板との特定の接触領域(特定の面積プロファイル)を提供し、それによって、屈曲、および/または、他の方法で変形した基板も矯正するための手段を提供する。結果として、減圧または真空によって誘発される基板の曲率を、さらに該当する場合には、基板の初期曲率または既存曲率も、大幅に低減させることができる。
【0020】
これにより、本発明に係るウェハ用の基板処理装置は、薄い基板のより良い処理を可能にする。壊れやすい基板処理のパフォーマンスおよび機能を、大幅に向上させる。円盤状の矯正リングは、真空吸引ガスケットとして機能する吸盤の周りに配置される。これにより、矯正リングは、吸盤の(半径方向の)変形を制限または防止し、基板の所定の曲げ状態に従って吸盤が変形することを防ぐ。結果として、薄くて、しばしば非平面となる基板の場合にも、真空の吸引力を失わせることなく、このような基板は、ひび割れも破損もしない。これにより、(輸送カセット、または、特定の処理チャンバもしくは装置などのような)基板の厚さに近い寸法を有する非常に小さなギャップに、薄い基板、および/または、曲げ基板を、出し入れする際、安全に移動させることが可能になる。言い換えれば、薄く、さらには反り、曲がり、たわみ、および/または、そうでなければ、非平面のウェハ/基板を、処理し、保持し、転写し、および/または、同様の処理を施すことができる。このような基板は、処理中に、真っ直ぐになり、あるいは、平らになることが可能であるため、必要とされるスペースが少なくても移動が可能になる。
【0021】
一実施形態では、制御された手順で基板を吸盤から取り外すために、矯正リングから吸盤が突出する速度、または、矯正リングから吸盤を取り外す速度は、吸盤に加えられる圧力または真空が調整されることで制御されてよい。したがって、減圧または真空は、徐々にオフにさせてもよいし、徐々に低下させてもよい。結果として、基板は、所定の時点で、取り外されてよい。吸盤の取り外し、および、それに伴う矯正リングからの基板の取り外しは、即時から比較的遅い速度まで、全ての速度で行われることが可能である。素早く取り外されることもできるし、注意深くスムーズに行われることも可能である。一例では、主な利点として、基板を取り外す際の制御できない遅延をゼロにできることである。基板を取り外すのに十分な程度、減圧または真空が意図的に弱められる前に、基板を取り外す際におけるマイクロ秒から数秒くらいの意図的な遅延を生じさせてもよい。基板が再び取り外されると、減圧または真空は、オフにさせてもよいし、徐々に低下させてもよい。結果として、吸盤は、上昇し、移動し、元の位置まで拡がり、再び、エンドエフェクタ本体から、矯正リングと比較して、さらに離れた距離まで拡張する。その結果、基板は、矯正リングから押し出され、何らかの不具合または取り外しの遅延が生じることなく、所定の瞬間に、吸盤から取り外される。言い換えれば、基板の取り外しは、必要に応じて決定された瞬間に、瞬間的に行われる。これにより、基板処理、および基板処理時間が、大幅に改善され、基板の取り外しの遅延によるウェハの破損のリスクが大幅に除外される。
【0022】
一実施形態では、矯正リングが基板に接触し、基板が非平面である場合、矯正リングは、非平面の基板を少なくとも部分的に矯正する。矯正リングは、基板に接触するだけでなく、すでに最初から曲げられた、または、湾曲した基板を、慎重に矯正する。矯正は、真空の強さ、および/または、矯正リングのサイズおよび/または形状に依存してよい。言い換えれば、曲がった基板に対する矯正効果は、加えられた真空または減圧の強さ、および/または、矯正リングのサイズおよび/または形状によって調整することが可能である。一実施形態では、吸盤は、加えられた真空または減圧の強さに伴って、引っ込められてよい。したがって、曲がった基板を平らにすることは、(超)薄い基板に損傷を与えることなく、容易に行われてよい。
【0023】
基板は、導体プレート、半導体基板、フィルム基板、実質的に板状の金属または金属化されたワークピースなどを含んでよい。真空または減圧は、吸盤を介して、基板に、好ましくは基板の裏側に供給されてよい。基板の裏側は、該当する場合には、例えば、電子部品などのような構造が形成されていない、または、略形成されていない、基板の側を意味する。しかしながら、(より多くの)構造または電子部品が形成されている基板の表側もまた、接触可能である。構造または電子部品は、例えば、構造または電子部品の上に堆積された保護層によって、接触による損傷から保護されてよい。真空排気口は、矯正リングの下に配置されてよく、矯正リングから距離を取って配置されることがより好ましい。
【0024】
エンドエフェクタは、複数の基板接触面を含んでよく、真空または減圧を利用して、基板またはウェハをエンドエフェクタ上に保持してよい。供給された真空または減圧の強さは、さまざまな基板の必要条件、およびそれらの曲げプロファイルに合わせて調整できる。また、矯正リングの形状、寸法、および材料は、さまざまな基板の必要条件、およびそれらの曲げプロファイルに合わせて調整できる。同じことが吸盤にも当てはまる。
【0025】
吸盤は、弾力性があり、柔らかく、および/または、可撓性があってよい。吸盤は、弾力性があり、柔らかく、および/または、可撓性がある材料で構成されてよい。吸盤は、基板を汚染しない材料で構成されてよい。吸盤は、シリコーンで構成されてよい。
【0026】
矯正リングまたはディスクは、リング形状または非リング形状で運ばれる。矯正リングまたはディスクは、円形、楕円形、正方形、または、有益な効果をもたらす可能性のある他の形状であってよい。矯正リングは、固く、硬く、および/または、剛性であってよい。一実施形態では、矯正リングは、吸盤の材料よりも剛性の高い材料で構成されてよい。例えば、SiC(シリコンカーバイド)などのようなセラミック、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)などのようなプラスチックで構成されてよい。
【0027】
一実施形態では、基板処理装置は、複数の吸盤をさらに含む。基板処理装置は、2個から20個の吸盤を含むことが好ましく、2個、3個、または、4個の吸盤を含むことがより好ましい。
【0028】
一実施形態では、基板処理装置は、吸盤の1つをそれぞれ取り囲む複数の矯正リングをさらに備える。基板処理装置は、吸盤の1つをそれぞれ取り囲む複数の矯正リングの個数が、2個から20個であることが好ましく、2個、3個、または、4個であることがより好ましい。基板処理装置は、同量の吸盤および矯正リングを含むことが好ましい。
【0029】
一実施形態では、吸盤は、全ての位置で、または、いくつかの選択された位置で、または、地面に対して任意の位置で、基板を減圧状態に保持することができる。基板処理装置および吸盤は、好ましくは、実質的に水平位置または垂直位置で、基板を減圧状態に保持することができる。基板および基板処理装置が水平に延びる方向に配置される場合、基板は、基板処理装置の吸盤の上に、配置され、または、水平に置かれてよい。基板処理装置が逆さまにされて、基板が前に配置されていた箇所から持ち上げられたとき、基板は、吸盤の下に取り付けられてもよい。例えば、ストレージまたは輸送カセットの内部で、基板および基板処理装置が垂直に延びる方向に配置される場合、基板は、吸盤の隣に、平行および垂直に延びるように、取り付けられ、または、配置されてよい。吸盤は、減圧または真空により、水平位置または垂直位置で、基板に取り付けられてよく、基板が矯正リングに接触するまで、基板に引き寄せられてよい。
【0030】
一実施形態では、矯正リングの外周は、吸盤の外周よりも大きい。これは、矯正リングが吸盤の上に放射状に延びてよいということから理解することができる。
【0031】
一実施形態では、吸盤は、常圧状態で、矯正リングから所定の距離、突出している。基板のサイズに対する距離の比は、30:1から800:1の範囲であってよく、100:1から600:1の範囲であることがより好ましい。言い換えれば、吸盤は、常圧状態で、矯正リングを越えて軸方向に延びていてよい。対照的に、吸盤は、減圧状態で、矯正リングと同じ高さに存在してよい。
【0032】
本発明によれば、ウェハ用の基板処理システムも開示される。基板処理システムは、本明細書に記載の基板処理装置と、真空供給部と、を備える。真空供給部は、基板処理装置における吸盤の第1部分に接続される。
【0033】
一実施形態では、基板処理システムは、基板処理装置の矯正リングを交換するための少なくとも1つの交換用の矯正リングをさらに備える。
【0034】
本発明によれば、ウェハ用の基板処理方法も開示される。ウェハ用の基板処理方法は、必ずしもこの順序である必要はないが、以下のステップを含む。
(a) 矯正リング内に配置された吸盤を準備するステップを含む。
少なくとも、前記矯正リングは、エンドエフェクタから取り外し可能に取り付けられる。前記吸盤の第1部分は、前記エンドエフェクタを介して、真空供給部に接続される。前記前記吸盤は、常圧状態で、前記矯正リングから突出する。
(b) 前記吸盤の第2部分と基板との間の接触を提供するステップを含む。
(c) 前記基板が前記吸盤により保持されるように、真空供給部によって、減圧状態を提供するステップを含む。
前記吸盤は、減圧状態で、前記矯正リングと同じ高さに存在し、前記矯正リングは、前記基板に接触する。
【0035】
矯正リングは、減圧状態で、基板に接触し、基板が非平面となる場合、少なくとも部分的に基板をまっすぐにしてよい。
【0036】
装置、システム、および方法は、特に、構造化された半導体基板、導体プレート、およびフィルム基板の処理に適しているが、平面金属の全表面処理および金属化基板の処理にも適している。デバイス、システム、および方法は、太陽エネルギー生成のための大きい表面を有する光電パネルの製造、または、大規模モニターパネルの製造のためにも、本発明に従って使用されてよい。
【0037】
独立請求項によるウェハ用の基板処理装置、ウェハ用の基板処理システム、および基板処理方法は、特に、従属請求項で定義されているように、類似および/または同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。さらに、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項とを任意に組み合わせることができることを理解されたい。
【0038】
本発明に係る種々の態様および他の態様は、以下に記載される一実施形態を参照して、明らかになり、明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の例示的な一実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【
図1】本発明に係るウェハ用の基板処理装置の一実施形態を概略的かつ例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、本発明に係るウェハ用の基板処理装置10の位置実施形態を概略的かつ例示的に示している。基板処理装置10は、約20μmから約500μmの厚さを有する薄いまたは超薄い基板またはウェハ(図示せず)を処理するために構成される。このような厚さを有する基板は、しばしば、非常に壊れやすく、すでに最初に曲がっていて、平面を持たない。
【0041】
基板処理装置10は、エンドエフェクタ11と、矯正リング12と、吸盤13と、を備える。
【0042】
エンドエフェクタ11は、複数の吸盤13(
図1では、1つのみが示されている)を含み、複数の吸盤13は、基板に接触し、吸盤13またはエンドエフェクタ11上に基板を保持するために、真空または減圧を利用する。
【0043】
矯正リング12は、吸盤13より剛性が高い。吸盤13は、矯正リング12より柔らかく、且つ、伸縮性が高い。矯正リング12は、エンドエフェクタ11から取り外し可能に取り付けられる。矯正リング12の外周は、吸盤13の外周より大きい。これは、矯正リング12が吸盤13上に放射状に延びることから理解できる。
【0044】
吸盤13は、矯正リング12内に配置され、矯正リング12の中央に配置される。矯正リング12は、吸盤13を取り囲み、それにより、吸盤13を制限する。矯正リング12は、吸盤13の半径方向の変形を制限または防止する。そして、矯正リング12は、ガスケットとしての吸盤13が、薄い基板の所定の曲げ状態に従って変形することを防ぐ。結果として、薄く、しばしば非平面となる基板の場合にも、真空の吸引力を失わせることなく、このような基板は、ひび割れも破損もしない。
【0045】
吸盤13の第1部分は、エンドエフェクタ11の真空排気口15を介して、真空供給部に接続され、吸盤13の第2部分は、真空供給部によって提供される減圧により、基板に取り付け可能である。基板処理装置10の動作中、真空供給部が作動し、吸盤13の第2部分は、基板を吸引する。
図1において、基板は、吸盤13の上に水平に延びる方向に配置される。
【0046】
図1に示されるように、吸盤13は、常圧状態で、矯正リング12から突出している。特に、基板接触面14または吸盤13の外縁は、矯正リング12から軸方向に突出している。吸盤13は、矯正リング12と比較して、エンドエフェクタ本体から一定の距離だけ延びている。吸盤13は、減圧状態で(図示せず)、矯正リング12と同じ高さに存在し、矯正リング12が基板に接触し、その結果、基板は、吸盤13により保持される。吸盤13の外縁は、矯正リング12と同じ高さに達し、これにより、潜在的に曲がる基板が矯正される。
【0047】
基板を取り外す必要があるときに、減圧または真空は、徐々にオフにさせる、あるいは、徐々に低下させる。結果として、吸盤13は、初期位置に戻り、再び、エンドエフェクタ本体および矯正リング12から、さらに離れるように延びる。結果として、基板は、矯正リング12から押しのけられ、次いで、所定の瞬間に、吸盤13から取り外される。
【0048】
矯正リング12および吸盤13は、エンドエフェクタ11に取り付けられて、取り外し可能、移動可能、および交換可能である。矯正リング12および吸盤13は、別の矯正リング12または吸盤13、すなわち、より新しいもの、または、他の特性、形状、もしくはサイズを有するものに、交換または置き換えることが可能である。
【0049】
本発明に係る実施形態は、異なる主題を参照して説明されていることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態は、方法に係る特許請求の範囲を参照して説明されているが、他の実施形態は、装置に係る特許請求の範囲を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、他に通知されない限り、上述した説明、および以下の説明から収集され得る。1つの型の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる型の主題に関連する特徴間の任意の組み合わせもまた、本出願で開示されると見なされる。ただし、すべての特徴を組み合わせることで、特徴の単純な合計以上の相乗効果を提供することができる。
【0050】
本発明は、図面および前述の説明において、詳細に例示および説明されてきたが、このような例示および説明は、理解を助けるものであり、または、例示的であり、限定的ではないと見なされる。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、および従属請求項の見解から、特許請求の範囲に開示された発明を実施する当業者によって理解され、実施され得る。
【0051】
請求項において、「含む」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットは、特許請求の範囲に記載されているいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が、相互に異なる従属請求項で引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。請求項内の参照記号は、範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0052】
10 基板処理装置
11 エンドエフェクタ
12 矯正リング
13 吸盤