(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-24
(45)【発行日】2023-05-02
(54)【発明の名称】肌保湿のための白ローゼル抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20230425BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20230425BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230425BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230425BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K36/185 ZNA
A61P17/16
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/105
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022012399
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520325072
【氏名又は名称】大江生医股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 詠 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲らい▼ 柏 穎
(72)【発明者】
【氏名】蘇 尹 帝
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129252(JP,A)
【文献】特開2010-043008(JP,A)
【文献】特開2004-067552(JP,A)
【文献】Applied Sciences,2020年,Vol.10, No.560,pp.1-13
【文献】Pakistan Journal of Nutrition,2011年,Vol.10, No.7,pp.680-683
【文献】Food Measure,2017年,Vol.11,pp.1559-1568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00-36/9068
A61P 17/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 19/00-19/10
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷結晶で白ローゼル萼の細胞壁を溶解した後、溶解した該白ローゼル萼を
水で抽出して得られた白ローゼル(Hibiscus sabdariffa
cv.)抽出物の、肌保湿向上用組成物の製造のための使用。
【請求項2】
該白ローゼル抽出物が、皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子の発現量を増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
該白ローゼル抽出物が、アクアポリンを増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
該白ローゼル抽出物が、アクアポリン遺伝子発現量を増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
該白ローゼル抽出物が、セラミドを増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
該白ローゼル抽出物が、セラミド生成関連遺伝子の発現量を増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
該白ローゼル抽出物が、ヒアルロン酸の分泌を増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
該白ローゼル抽出物が、ヒアルロン酸合成関連遺伝子の発現量を増加させることで該肌保湿向上効果を達成する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
該白ローゼル抽出物の有効用量が1.5mg/日である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
該組成物が医薬組成物、食品組成物、化粧品組成物、又はケア製品組成物である、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白ローゼル抽出物に関し、特に、肌保湿用組成物を製造するための白ローゼル抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オーガニックやナチュラルといった飲食概念が盛んになるにつれて、バイオテクノロジー企業や食品業者は天然植物関連製品の開発に積極的に取り組むようになる。植物関連製品の健康効果を科学的検証するように、植物の活性成分分析及び効果評価は製品開発の重点となっている。
【0003】
白ローゼル(Hibiscus sabdariffa cv.)は、水晶ローゼル、白ハイビスカス、白玉ハイビスカス、又は白ロゼリ草とも呼ばれ、アオイ科フヨウ属の一種である。白ローゼルは、熱帯・亜熱帯地域に生息する一年生草本又は多年生低木植物であり、草丈が約1~2メートルである。白ローゼルは、暑さや熱の解消、気力向上と疲れ取り、血液脂質調節、及び血圧とコレステロールの降下に有用である。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施例において、氷結晶で白ローゼル萼の細胞壁を溶解した後、溶解した白ローゼル萼を溶媒で抽出して得られた白ローゼル(Hibiscus sabdariffa cv.)抽出物の、肌保湿向上用組成物の製造のための使用を提供する。
【0005】
従って、いずれかの実施例の白ローゼル抽出物により、肌保湿向上用組成物を製造することができる。換言すれば、前記組成物は、肌保湿向上機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】細胞実験における皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子の相対発現量の結果図である。
【
図2】細胞実験におけるアクアポリン遺伝子の相対発現量の結果図である。
【
図3】細胞実験におけるセラミド生成関連遺伝子の相対発現量の結果図である。
【
図4】細胞実験におけるヒアルロン酸合成関連遺伝子の相対発現量の結果図である。
【
図5】細胞実験におけるヒアルロン酸の相対分泌量の結果図である。
【
図6】人体実験において、第0週、第2週及び第4週で肌保湿度を検出した結果図である。
【
図7】人体実験において、第0週、第2週及び第4週で経皮水分蒸散量を検出した結果図である。
【
図8】人体実験において、第0週、第2週及び第4週で肌弾力性を検出した結果図である。
【
図9】人体実験において、第0週、第2週及び第4週で皺の程度を検出した結果図である。
【
図10】人体実験において、第0週、第2週及び第4週でコラーゲン密度を検出した結果図である。
【
図11】人体実験において、第0週、第2週及び第4週での肌状況アンケート調査による自己評価の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本願の一部の具体的な実施形態を説明する。本願は、本願の精神を逸脱することなく、形態の異なる様々な態様で実施でき、保護範囲を明細書に具体的に記載された条件に限定すべきではない。
【0008】
いくつかの実施例において、白ローゼル(Hibiscus sabdariffa cv.)の萼から得られた白ローゼル抽出物は、肌保湿向上能力を有し得る。従って、白ローゼル抽出物は、肌保湿向上能力を有する組成物の製造に有用である。白ローゼル抽出物は、氷結晶で白ローゼル萼の細胞壁を溶解した後、溶解した白ローゼル萼を溶媒で抽出して得られたものである。
【0009】
いくつかの実施例において、抽出手順で、白ローゼルの萼を-20±5℃で凍結し、氷結晶で白ローゼル萼の細胞壁を溶解した後、溶解した白ローゼル萼を水で85±5℃にて60分~90分抽出して、粗抽出原液を得る。例えば、白ローゼル萼を85±5℃の5倍の水に60分~90分浸漬する。
【0010】
抽出される白ローゼル萼は、完全な萼であってもよいし、又は物理的前処理によって断片、顆粒又は粉末等の形態に分離された萼であってもよい。使用される物理的前処理は、粗砕、細断、せん断破砕、解砕、及び研磨のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施例において、白ローゼルの萼を-20±5℃で24時間以上凍結し、萼に含まれる水分は急速凍結により氷結晶を形成する。形成した氷結晶は萼の細胞壁を破壊することができ、細胞壁が破壊された後、より多くの有効物質を放出させることができる。
【0012】
いくつかの実施例において、抽出手順で、粗抽出原液をさらに濾過することで不純物を除去して、濾液を得てもよい。いくつかの実施例において、抽出手順で、濾液をさらに濃縮して濃縮液を得てもよい。いくつかの実施例において、抽出手順で、濃縮液をさらに濾過して濃縮濾過液を得てもよい。
【0013】
いくつかの実施例において、濃縮工程の処理温度は60±5℃である。
【0014】
つまり、実際のニーズに応じて、抽出手順で得られた粗抽出原液、濾液、濃縮液又は濃縮濾過液を白ローゼル抽出物とすることができる。
【0015】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子の発現量を増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0016】
いくつかの実施例において、皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子は、トランスグルタミナーゼ1(transglutaminase 1、TGM1)遺伝子及びケラチン(keratin、KRT)遺伝子を含む。ケラチン遺伝子は、KRT1遺伝子、KRT10遺伝子、及びKRT14遺伝子のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0017】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、アクアポリンを増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0018】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、アクアポリン遺伝子の発現量を増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0019】
いくつかの実施例において、アクアポリン遺伝子は、アクアポリン3(aquaporin 3、AQP3)遺伝子であってもよい。
【0020】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、セラミドを増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0021】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、セラミド生成関連遺伝子の発現量を増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0022】
いくつかの実施例において、セラミド生成関連遺伝子は、グルコシルセラミダーゼ(glucosylceramidase、GBA)遺伝子及びスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1(sphingomyelin phosphodiesterase 1、SMPD1)遺伝子を含む。
【0023】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、ヒアルロン酸の分泌を増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0024】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物は、ヒアルロン酸合成関連遺伝子の発現量を増加させることで肌保湿向上効果を達成する。
【0025】
いくつかの実施例において、ヒアルロン酸合成関連遺伝子は、ヒアルロン酸合成酵素(hyaluronan synthase、HAS)遺伝子であってもよい。ヒアルロン酸合成酵素遺伝子は、HAS2遺伝子及びHAS3遺伝子を含む。
【0026】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物の有効用量は1.5mg/日である。
【0027】
いくつかの実施例において、白ローゼル(Hibiscus sabdariffa)抽出物は、肌保湿向上用組成物の製造に用いることができ、製造された組成物は、医薬組成物、食品組成物、化粧品組成物、又はケア製品組成物であってもよい。
【0028】
いくつかの実施例において、前記組成物が医薬組成物である場合、この医薬組成物は、有効量の白ローゼル抽出物を含む。この医薬組成物は、当業者によく知られている技術で経腸、非経腸(parenterally)、経口、又は局所(topically)投与に適する剤形に製造され得る。
【0029】
いくつかの実施例において、経腸又は経口投与の剤形は、タブレット(tablet)、トローチ(troche)、ロゼンジ(lozenge)、丸薬(pill)、カプセル(capsule)、分散性粉末(dispersible powder)又は顆粒剤(granule)、溶液、懸濁液(suspension)、乳剤(emulsion)、シロップ剤(syrup)、エリキシル剤(elixir)、スラリー(slurry)、又は類似物であってもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、非経腸又は局所投与の剤形は、注射剤(injection)、無菌粉末(sterile powder)、外用剤(external preparation)、又は類似物であってもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、注射剤の投与方法は、皮下注射(subcutaneous injection)、表皮内注射(intraepidermal injection)、皮内注射(intradermal injection)、又は病巣内注射(intralesional injection)であってもよい。
【0030】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する医薬組成物は、医薬製造技術に広く使用されている薬学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、薬学的に許容可能な担体は、溶媒(solvent)、緩衝液(buffer)、乳化剤(emulsifier)、懸濁剤(suspending agent)、分解剤(decomposer)、崩壊剤(disintegrating agent)、分散剤(dispersing agent)、接着剤(binding agent)、賦形剤、安定剤(stabilizing agent)、キレート剤(chelating agent)、希釈剤(diluent)、ゲル化剤(gelling agent)、防腐剤(preservative)、湿潤剤(wetting agent)、潤滑剤(lubricant)、吸収遅延剤(absorption delaying agent)、リポソーム剤(liposome)、及び類似物の1つ又は複数であってもよい。選択される担体の種類及び量は、当業者の専門知識及び通常の技術範囲内にある。薬学的に許容可能な担体である溶媒は、水、生理食塩水(normal saline)、リン酸塩緩衝液(phosphate buffered saline、PBS)、又はアルコール含有水性溶液(alcohol containing aqueous solution)であってもよい。
【0031】
いくつかの実施例において、前記組成物が食品組成物である場合、この食品組成物は、特定の含有量の白ローゼル抽出物を含む。食品組成物の形態は、粉末、顆粒、溶液、コロイド又はペーストであってもよい。
【0032】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する食品組成物は、食品製品又は食品添加物(food additive)であってもよい。
【0033】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する食品製品は、飲料(beverages)、発酵食品(fermented foods)、ベーカリー製品(bakery products)、健康食品(health foods)、又は栄養補助食品(dietary supplements)等であってもよい。いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する食品製品は、アジュバントをさらに含んでもよい。アジュバントは、例えば、マルトデキストリン(Maltodextrin)、リンゴ酸、スクラロース、クエン酸、果実フレーバー、蜂蜜フレーバー、ステビオシド又はそれらの組合せ等であってもよい。選択される担体の種類及び量は、当業者の専門知識及び通常の技術範囲内にある。
【0034】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する食品添加物は、調味料、甘味料、フレーバー、pH調整剤、乳化剤、着色料、又は安定剤等であってもよい。
【0035】
いくつかの実施例において、前記組成物は、化粧品又はケア製品組成物である。換言すれば、化粧品又はケア製品組成物は、特定の含有量の白ローゼル抽出物を含む。
【0036】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する化粧品又はケア製品組成物の形態は、化粧水、ゲル、ゼリー状パック、ペースト状パック、エマルジョン、クリーム、リップスティック、ファンデーション、コンパクトパウダー、白粉、メイク落としオイル、メイク落としクリーム、洗顔料、ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、サンスクリーンクリーム、ハンドクリーム、マニキュア、香水、エッセンス、及びパックのいずれか1つであってもよい。
【0037】
いくつかの実施例において、白ローゼル抽出物を含有する化粧品又はケア製品組成物は、必要に応じて医薬部外品に許容される成分をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、医薬部外品に許容される成分は、例えば、乳化剤、浸透促進剤、軟化剤、溶媒、賦形剤、抗酸化剤、又はそれらの組合せであってもよい。
【0038】
以下の例における実験手順は、特に説明がない限り、室温(25±5℃)、常圧(1atm)で実施される。
【0039】
例1:白ローゼル抽出物及びローゼル抽出物の製造
原料は以下のとおりである。
【0040】
1.産地が台湾屏東であり、現地の農家葉俊宏から購入された白ローゼル(学名:Hibiscus sabdariffa cv.)の萼。
【0041】
2.産地が台湾屏東であり、現地の農家葉俊宏から購入されたローゼル(学名:Hibiscus sabdariffa Linn.Sp.Pl.)の萼。
【0042】
3.RO水又は二次蒸留水とも呼ばれる二次水。
【0043】
製造手順は以下のとおりである。
【0044】
1.白ローゼルの萼を冷凍庫に移して24時間置き、氷結晶で白ローゼル萼の細胞壁を溶解する。冷凍庫の温度を-20±5℃に設定する。
【0045】
2.溶解した白ローゼルの萼を粉砕機(機種:10 Speed Blender、メーカー名:Osterizer)で粗砕し、40メッシュ(mesh)の篩にかけて白ローゼル粗砕物を得る。
【0046】
3.二次水を85±5℃に加熱した後、白ローゼル粗砕物を投入する。白ローゼル粗砕物を、85±5℃で、二次水に対する白ローゼル粗砕物の重量比が1:5となるように、60分抽出して粗抽出原液を得る。
【0047】
4.粗抽出原液を400メッシュ(mesh)のストレーナで濾過して濾液を得る。
【0048】
5.減圧濃縮機(機種:Rotavapor R-100、メーカー名:BUCHI)の温度を60℃に設定した場合に、濾液を減圧濃縮して濃縮液を得る。
【0049】
6.濃縮液を400メッシュ(mesh)のストレーナで濾過して濃縮濾過液を得る。濃縮濾過液を後の実験に使用される白ローゼル抽出物とする。濃縮濾過液の糖度はBrix 8.0±0.3である。
【0050】
7.上記製造工程1~6に従って、ローゼルの萼からローゼル抽出物を製造する。
【0051】
8.製造された白ローゼル抽出物及びローゼル抽出物を、後の試験のために冷凍庫に保存する。
【0052】
例2:皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子の発現量試験
材料及び機器は以下のとおりである。
【0053】
1.細胞株
ATCCから購入された、細胞番号PCS-200-011のヒト初代皮膚角質細胞(Human primary epidermal keratinocytes)を使用し、以下、HPEK-50細胞と略称する。
【0054】
2.培地
Thermoから購入された、製品番号17005042の角質細胞専用の無血清培地(Keratinocyte-SFM)を使用する。
【0055】
3.TANBead社から購入された、製品番号6K206のRNA抽出試薬キット。
【0056】
4.Invitrogene社から購入された、製品番号18080-044のSuperScript(登録商標) III逆転写酵素。
【0057】
5.Thermo Fisher Scientific社から購入されたABI StepOnePlusTM Real-Time PCR system。
【0058】
6.KAPA Biosystems社から購入された、製品番号KK4600のKAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit。
【0059】
試験手順は以下のとおりである。
【0060】
1.HPEK-50細胞を、1ウェル当たり1×105個の密度で、1ウェル当たり培地2mLを含有する6ウェルプレート内に播種し、37℃で24時間培養する。
【0061】
2.培養した後、HPEK-50細胞をブランク、実験群Aと実験群Bの3群に分ける。ブランクの培養液は、いかなる抽出物も含有しない。実験群Aの培養液は、例1で製造された白ローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。実験群Bの培養液は、例1で製造されたローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。各群は3回繰り返し、37℃で24時間培養する。
【0062】
3.培養後のブランク、実験群A及び実験群Bの培養液を除去し、PBSでリンスする。
【0063】
4.リンス後、RNA抽出試薬キットの細胞溶解液で各群のHPEK-50細胞の細胞膜を破壊して、細胞溶液を形成する。
【0064】
5.RNA抽出試薬キットを使用して各群の細胞溶液内のRNAをそれぞれ抽出する。
【0065】
6.各群は抽出されたRNAを2000ナノグラム(ng)取ってテンプレートとし、抽出されたRNAをSuperScript(登録商標) III逆転写酵素によって対応するcDNAに逆転写する。
【0066】
7.ABI StepOnePlusTM Real-Time PCR systemを使用し、cDNAに対して、KAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit及び表1の複合プライマーで定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction)をそれぞれ実施し、ブランク、実験群A及び実験群BのHPEK-50細胞における様々な標的遺伝子の発現量及びその融解曲線(melting curve)を観察する。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の機器設定条件としては、95℃で20秒反応し、95℃で3秒反応し、60℃で30秒反応し、40サイクル繰り返すこととする。
【0067】
8.2-ΔΔCt方法で標的遺伝子の相対発現量を測定する。相対発現量とは、ブランクの同一遺伝子のRNA発現量に対する実験群の標的遺伝子のRNA発現量の倍数変化と定義する。2-ΔΔCt方法では、TBP遺伝子のサイクル閾値を内部対照の参照遺伝子のサイクル閾値(Ct)とし、以下の式で倍数変化を計算する。
【0068】
【0069】
【0070】
9.スチューデントt検定(student t-test)による統計分析で、ブランクと実験群の測定結果間の統計的有意差を得る。(図中の「*」は、ブランクとの比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、ブランクとの比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、ブランクとの比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す)。
【0071】
試験結果は以下のとおりである。
【0072】
図1を参照する。ブランクのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物又はローゼル抽出物により処理されていない場合、つまり、正常な生理学的代謝の場合に、その遺伝子の発現量を1倍と設定する。ブランクに対し、実験群A(白ローゼル抽出物)のTGM1遺伝子の発現量は27.73倍、実験群B(ローゼル抽出物)のTGM1遺伝子の発現量は0.44倍であり、実験群A(白ローゼル抽出物)のKRT1遺伝子の発現量は6.90倍、実験群B(ローゼル抽出物)のKRT1遺伝子の発現量は0.81倍であり、実験群A(白ローゼル抽出物)のKRT10遺伝子の発現量は11.07倍、実験群B(ローゼル抽出物)のKRT10遺伝子の発現量は1.36倍であり、実験群A(白ローゼル抽出物)のKRT14遺伝子の発現量は30.38倍、実験群B(ローゼル抽出物)のKRT14遺伝子の発現量は1.56倍である。
【0073】
このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、ローゼル抽出物とは異なり、TGM1遺伝子及びKRT1遺伝子の発現量を顕著に増加させることができるが、ローゼル抽出物は、TGM1遺伝子及びKRT1遺伝子の発現量を減少させる。また、白ローゼル抽出物は、KRT10遺伝子及びKRT14遺伝子の発現量を顕著に増加させることができ、増加効果はローゼル抽出物よりもさらに優れている。
【0074】
例3:アクアポリン遺伝子の発現量試験
材料及び機器は以下のとおりである。
【0075】
1.細胞株
ATCCから購入された、細胞番号PCS-200-011のヒト初代皮膚角質細胞(Human primary epidermal keratinocytes)を使用し、以下、HPEK-50細胞と略称する。
【0076】
2.培地
Thermoから購入された、製品番号17005042の角質細胞専用の無血清培地(Keratinocyte-SFM)を使用する。
【0077】
3.TANBead社から購入された、製品番号6K206のRNA抽出試薬キット。
【0078】
4.Invitrogene社から購入された、製品番号18080-044のSuperScript(登録商標) III逆転写酵素。
【0079】
5.Thermo Fisher Scientific社から購入されたABI StepOnePlusTM Real-Time PCR system。
【0080】
6.KAPA Biosystems社から購入された、製品番号KK4600のKAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit。
【0081】
試験手順は以下のとおりである。
【0082】
1.HPEK-50細胞を、1ウェル当たり1×105個の密度で、1ウェル当たり培地2mLを含有する6ウェルプレート内に播種し、37℃で24時間培養する。
【0083】
2.培養した後、HPEK-50細胞をブランク、実験群Aと実験群Bの3群に分ける。ブランクの培養液は、いかなる抽出物も含有しない。実験群Aの培養液は、例1で製造された白ローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。実験群Bの培養液は、例1で製造されたローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。各群は3回繰り返し、37℃で24時間培養する。
【0084】
3.培養後のブランク、実験群A及び実験群Bの培養液を除去し、PBSでリンスする。
【0085】
4.リンス後、RNA抽出試薬キットの細胞溶解液で各群のHPEK-50細胞の細胞膜を破壊して、細胞溶液を形成する。
【0086】
5.RNA抽出試薬キットを使用して各群の細胞溶液内のRNAをそれぞれ抽出する。
【0087】
6.各群は抽出されたRNAを2000ナノグラム(ng)取ってテンプレートとし、抽出されたRNAをSuperScript(登録商標) III逆転写酵素によって対応するcDNAに逆転写する。
【0088】
7.ABI StepOnePlusTM Real-Time PCR systemを使用し、cDNAに対し、KAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit及び表2の複合プライマーで定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction)をそれぞれ実施し、ブランク、実験群A及び実験群BのHPEK-50細胞における様々な標的遺伝子の発現量及びその融解曲線(melting curve)を観察する。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の機器設定条件としては、95℃で20秒反応し、95℃で3秒反応し、60℃で30秒反応し、40サイクル繰り返すこととする。
【0089】
8.2-ΔΔCt方法で標的遺伝子の相対発現量を測定する。相対発現量とは、ブランクの同一遺伝子のRNA発現量に対する実験群の標的遺伝子のRNA発現量の倍数変化と定義する。2-ΔΔCt方法では、TBP遺伝子のサイクル閾値を内部対照の参照遺伝子のサイクル閾値(Ct)とし、以下の式で倍数変化を計算する。
【0090】
【0091】
【0092】
9.スチューデントt検定(student t-test)による統計分析で、ブランクと実験群の測定結果間の統計的有意差を得る。(図中の「*」は、ブランクとの比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、ブランクとの比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、ブランクとの比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す)。
【0093】
試験結果は以下のとおりである。
【0094】
図2を参照する。ブランクのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物又はローゼル抽出物により処理されていない場合、つまり、正常な生理学的代謝の場合に、その遺伝子の発現量を1倍と設定する。ブランクに対し、実験群A(白ローゼル抽出物)のAQP3遺伝子の発現量は15.36倍、実験群B(ローゼル抽出物)のAQP3遺伝子の発現量は1.03倍である。
【0095】
このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、AQP3遺伝子の発現量を顕著に増加させることができ、増加効果はローゼル抽出物より優れている。
【0096】
例4:セラミド生成関連遺伝子の発現量試験
材料及び機器は以下のとおりである。
【0097】
1.細胞株
ATCCから購入された、細胞番号PCS-200-011のヒト初代皮膚角質細胞(Human primary epidermal keratinocytes)を使用し、以下、HPEK-50細胞と略称する。
【0098】
2.培地
Thermoから購入された、製品番号17005042の角質細胞専用の無血清培地(Keratinocyte-SFM)を使用する。
【0099】
3.TANBead社から購入された、製品番号6K206のRNA抽出試薬キット。
【0100】
4.Invitrogene社から購入された、製品番号18080-044のSuperScript(登録商標) III逆転写酵素。
【0101】
5.Thermo Fisher Scientific社から購入されたABI StepOnePlusTM Real-Time PCR system。
【0102】
6.KAPA Biosystems社から購入された、製品番号KK4600のKAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit。
【0103】
試験手順は以下のとおりである。
【0104】
1.HPEK-50細胞を、1ウェル当たり1×105個の密度で、1ウェル当たり培地2mLを含有する6ウェルプレート内に播種し、37℃で24時間培養する。
【0105】
2.培養した後、HPEK-50細胞をブランク、実験群Aと実験群Bの3群に分ける。ブランクの培養液は、いかなる抽出物も含有しない。実験群Aの培養液は、例1で製造された白ローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。実験群Bの培養液は、例1で製造されたローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。各群は3回繰り返し、37℃で24時間培養する。
【0106】
3.培養後のブランク、実験群A及び実験群Bの培養液を除去し、PBSでリンスする。
【0107】
4.リンス後、RNA抽出試薬キットの細胞溶解液で各群のHPEK-50細胞の細胞膜を破壊して、細胞溶液を形成する。
【0108】
5.RNA抽出試薬キットを使用して各群の細胞溶液内のRNAをそれぞれ抽出する。
【0109】
6.各群は抽出されたRNAを2000ナノグラム(ng)取ってテンプレートとし、抽出されたRNAをSuperScript(登録商標) III逆転写酵素によって対応するcDNAに逆転写する。
【0110】
7.ABI StepOnePlusTM Real-Time PCR systemを使用し、cDNAに対し、KAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit及び表3の複合プライマーで定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction)をそれぞれ実施し、ブランク、実験群A及び実験群BのHPEK-50細胞における様々な標的遺伝子の発現量及びその融解曲線(melting curve)を観察する。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の機器設定条件としては、95℃で20秒反応し、95℃で3秒反応し、60℃で30秒反応し、40サイクル繰り返すこととする。
【0111】
8.2-ΔΔCt方法で標的遺伝子の相対発現量を測定する。相対発現量とは、ブランクの同一遺伝子のRNA発現量に対する実験群の標的遺伝子のRNA発現量の倍数変化と定義する。2-ΔΔCt方法では、TBP遺伝子のサイクル閾値を内部対照の参照遺伝子のサイクル閾値(Ct)とし、以下の式で倍数変化を計算する。
【0112】
【0113】
【0114】
9.スチューデントt検定(student t-test)による統計分析で、ブランクと実験群の測定結果間の統計的有意差を得る。(図中の「*」は、ブランクとの比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、ブランクとの比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、ブランクとの比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す)。
【0115】
試験結果は以下のとおりである。
【0116】
図3を参照する。ブランクのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物又はローゼル抽出物により処理されていない場合、つまり、正常な生理学的代謝の場合に、その遺伝子の発現量を1倍と設定する。ブランクに対し、実験群A(白ローゼル抽出物)のSMPD1遺伝子の発現量は17.22倍、実験群B(ローゼル抽出物)のSMPD1遺伝子の発現量は1.83倍であり、実験群A(白ローゼル抽出物)のGBA遺伝子の発現量は35.54倍、実験群B(ローゼル抽出物)のGBA遺伝子の発現量は1.40倍である。
【0117】
このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、SMPD1遺伝子及びGBA遺伝子の発現量を顕著に増加させることができ、増加効果はローゼル抽出物より優れている。
【0118】
例5:ヒアルロン酸合成関連遺伝子の発現量試験
材料及び機器は以下のとおりである。
【0119】
1.細胞株
ATCCから購入された、細胞番号PCS-200-011のヒト初代皮膚角質細胞(Human primary epidermal keratinocytes)を使用し、以下、HPEK-50細胞と略称する。
【0120】
2.培地
Thermoから購入された、製品番号17005042の角質細胞専用の無血清培地(Keratinocyte-SFM)を使用する。
【0121】
3.TANBead社から購入された、製品番号6K206のRNA抽出試薬キット。
【0122】
4.Invitrogene社から購入された、製品番号18080-044のSuperScript(登録商標) III逆転写酵素。
【0123】
5.Thermo Fisher Scientific社から購入されたABI StepOnePlusTM Real-Time PCR system。
【0124】
6.KAPA Biosystems社から購入された、製品番号KK4600のKAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit。
【0125】
試験手順は以下のとおりである。
【0126】
1.HPEK-50細胞を、1ウェル当たり1×105個の密度で、1ウェル当たり培地2mLを含有する6ウェルプレート内に播種し、37℃で24時間培養する。
【0127】
2.培養した後、HPEK-50細胞をブランク、実験群Aと実験群Bの3群に分ける。ブランクの培養液は、いかなる抽出物も含有しない。実験群Aの培養液は、例1で製造された白ローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。実験群Bの培養液は、例1で製造されたローゼル抽出物を0.25%(v/v)で含有する。各群は3回繰り返し、37℃で24時間培養する。
【0128】
3.培養後のブランク、実験群A及び実験群Bの培養液を除去し、PBSでリンスする。
【0129】
4.リンス後、RNA抽出試薬キットの細胞溶解液で各群のHPEK-50細胞の細胞膜を破壊して、細胞溶液を形成する。
【0130】
5.RNA抽出試薬キットを使用して各群の細胞溶液内のRNAをそれぞれ抽出する。
【0131】
6.各群は抽出されたRNAを2000ナノグラム(ng)取ってテンプレートとし、抽出されたRNAをSuperScript(登録商標) III逆転写酵素によって対応するcDNAに逆転写する。
【0132】
7.ABI StepOnePlusTM Real-Time PCR systemを使用し、cDNAに対し、KAPA SYBR FAST qPCR Master Mix (2X) Kit及び表4の複合プライマーで定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction)をそれぞれ実施し、ブランク、実験群A及び実験群BのHPEK-50細胞における様々な標的遺伝子の発現量及びその融解曲線(melting curve)を観察する。定量的リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の機器設定条件としては、95℃で20秒反応し、95℃で3秒反応し、60℃で30秒反応し、40サイクル繰り返すこととする。
【0133】
8.2-ΔΔCt方法で標的遺伝子の相対発現量を測定する。相対発現量とは、ブランクの同一遺伝子のRNA発現量に対する実験群の標的遺伝子のRNA発現量の倍数変化と定義する。2-ΔΔCt方法では、TBP遺伝子のサイクル閾値を内部対照の参照遺伝子のサイクル閾値(Ct)とし、以下の式で倍数変化を計算する。
【0134】
【0135】
【0136】
9.スチューデントt検定(student t-test)による統計分析で、ブランクと実験群の測定結果間の統計的有意差を得る。(図中の「*」は、ブランクとの比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、ブランクとの比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、ブランクとの比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す)。
【0137】
試験結果は以下のとおりである。
【0138】
図4を参照する。ブランクのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物又はローゼル抽出物により処理されていない場合、つまり、正常な生理学的代謝の場合に、その遺伝子の発現量を1倍と設定する。ブランクに対し、実験群A(白ローゼル抽出物)のHAS2遺伝子の発現量は2.77倍、実験群B(ローゼル抽出物)のHAS2遺伝子の発現量は0.37倍であり、実験群A(白ローゼル抽出物)のHAS3遺伝子の発現量は14.10倍、実験群B(ローゼル抽出物)のHAS3遺伝子の発現量は0.59倍である。
【0139】
このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、ローゼル抽出物とは異なり、HAS2遺伝子及びHAS3遺伝子の発現量を顕著に増加させることができるが、ローゼル抽出物は、HAS2遺伝子及びHAS3遺伝子の発現量を減少させる。
【0140】
例6:ヒアルロン酸の分泌量試験
材料及び機器は以下のとおりである。
【0141】
1.細胞株
ATCCから購入されたヒト初代皮膚角質細胞(Human primary epidermal keratinocytes)を使用し、以下、HPEK-50細胞と略称する。
【0142】
2.培地
Thermoから購入された、製品番号17005042の角質細胞専用の無血清培地(Keratinocyte-SFM)を使用する。
【0143】
3.Cusabio Biotechから購入されたヒトヒアルロン酸検出キット(Human Hyaluronic acid、HA ELISA Kit)。
【0144】
4.BioTek社(アメリカ)から購入された酵素免疫分析機(ELISA reader)。
【0145】
5.白ローゼル抽出物及びローゼル抽出物は、本願例1の製造方法で製造される。
【0146】
試験手順は以下のとおりである。
【0147】
1.HPEK-50細胞を、1ウェル当たり1×104個の密度で、1ウェル当たり培地100μLを含有する96ウェルプレート内に播種し、HPEK-50細胞をブランク、実験群Aと実験群Bの3群に分ける。ブランクの培養液は、いかなる抽出物も含有しない。実験群Aの培養液は、例1で製造された白ローゼル抽出物を0.0625%(v/v)で含有する。実験群Bの培養液は、例1で製造されたローゼル抽出物を0.0625%(v/v)で含有する。各群は3回繰り返し、37℃で24時間培養する。
【0148】
3.1ウェル当たり培養液100μLを取り、プレコートされた(pre-coated)ELISAプレートに加え、37℃で2時間培養する。
【0149】
4.各ウェル中の培養液を除去し、洗浄しない。
【0150】
5.1ウェル当たりビオチン抗体(Biotin-antibody)を100μL添加し、37℃で1時間培養する。
【0151】
6.反応終了後、各ウェル中の培養液を除去し、200μLの洗浄緩衝液(Wash Buffer)で洗浄し、1回の洗浄ごとに2分間静置し、この工程を3回繰り返す。最後の洗浄が完了した後、残りの洗浄緩衝液を全て吸引によって除去する。
【0152】
7.1ウェル当たりHRP-アビジン(HRP-avidin)を100μL添加し、37℃で1時間培養する。
【0153】
8.反応終了後、各ウェル中の培養液を除去し、200μLの洗浄緩衝液(Wash Buffer)で洗浄し、1回の洗浄ごとに2分間静置し、この工程を5回繰り返す。最後の洗浄が完了した後、残りの洗浄緩衝液を全て吸引によって除去する。
【0154】
9.1ウェル当たりTMB基質(TMB Substrate)を遮光下で90μL添加し、37℃にて30分遮光下で反応させる。
【0155】
10.1ウェル当たり停止液(Stop Solution)を50μL添加し、十分な混合を保証するように、プレートを軽く叩く。
【0156】
11.酵素免疫分析機を用いて5分以内で各ウェルの450nmにおける吸光度を測定する。
【0157】
12.スチューデントt検定(student t-test)による統計分析で、ブランクと実験群の測定結果間の統計的有意差を得る。(図中の「*」は、ブランクとの比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、ブランクとの比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、ブランクとの比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す)。
【0158】
試験結果は以下のとおりである。
【0159】
図5を参照する。ブランクのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物又はローゼル抽出物により処理されていない場合、つまり、正常な生理学的代謝の場合に、産生できるヒアルロン酸量を100%と設定する。実験群AのHPEK-50細胞は、白ローゼル抽出物により処理された後、産生するヒアルロン酸量はブランクに対して120.9%となる。実験群BのHPEK-50細胞は、ローゼル抽出物により処理された後、産生するヒアルロン酸量はブランクに対して114.4%となる。換言すれば、ブランクに比べて、実験群A及び実験群Bのヒアルロン酸相対分泌率はいずれも向上する。実験群A(白ローゼル抽出物)のヒアルロン酸相対分泌量は、ブランクに比べて20.9%向上し、実験群B(ローゼル抽出物)のヒアルロン酸相対分泌量は、ブランクに比べて14.4%向上する。このことから分かるように、白ローゼル抽出物及びローゼル抽出物は、いずれもHPEK-50細胞からのヒアルロン酸の産生を顕著に促進することができ、また、白ローゼル抽出物のヒアルロン酸分泌向上能力は、ローゼル抽出物よりも優れている。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、ヒアルロン酸の分泌を促進する効果を有し、さらに皮膚コラーゲンを保持し、皮膚水分含有量を増加させ、そして皮膚に弾力性と柔軟性を与えるのに役立つ。
【0160】
ヒアルロン酸は、皮膚の自然老化を防ぎ、太陽紫外線、タバコの煙や空気中の汚染物質から皮膚を保護することができる。ヒアルロン酸は、皮膚水分の増加に寄与し、肌構造を引き締めて潤し、皮膚小皺及び皺の発生を減少させる効果も有する。また、ヒアルロン酸は、創傷治癒においても肝心な役割を果たす。皮膚細胞が修復を必要とする場合又は損傷した場合には、ヒアルロン酸の濃度も増加する。皮膚創傷に適用されると、創傷の大きさを小さくして痛みを軽減できるとともに、創傷細胞感染リスクの低減にも役立つことが証明されている。
【0161】
また、ヒアルロン酸は、骨関節炎にも寄与する。ヒアルロン酸を少なくとも2ヶ月間で毎日80~200mg摂取すると、骨関節炎患者における膝関節痛を顕著に軽減できるとともに、胃酸逆流症状の緩和にも役立つことが実験により確認された。また、ヒアルロン酸は、優れた保湿性を有し、ドライアイの治療、骨粗鬆症の緩和及び有痛性膀胱症候群の軽減等といった多くの効果がある。
【0162】
例7:人体試験-肌状況改善試験
25~55歳の健康成人被験者9名に、白ローゼル抽出物飲料(例1で製造された白ローゼル抽出物を1.5g含有する)を1日1本(50g)、4週間(即ち28日)連続で飲用させる。
【0163】
被験者を対象とし、飲用開始前(洗顔済み、第0週)、14日間の飲用後(洗顔済み、第2週)、及び28日間の飲用後(洗顔済み、第4週)に、肌検出及び肌状況のアンケート調査を実施する。肌検出では、異なる検出項目に応じて、対応する機器及び測定方法を使用して顔肌の数値を記録し、飲用前及び飲用後の写真を撮影する(飲用前及び飲用後の検出時、外部環境の温度や湿度等の要因が肌に与える影響を減少させるように、被験者がいる試験領域の温度及び湿度を一致させる)。
【0164】
肌に対して以下の検出項目をそれぞれ検出する。
【0165】
1.肌保湿効能(skin moisturizing efficacy)
ドイツのCourage+Khazaka electronic社から購入された、肌水分量検出プローブCorneometer(登録商標) CM825 (C+K Multi Probe Adapter System、Germany)を使用して、白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者の顔肌を検出する。該検出プローブは、電気容量の原理に基づいて測定を行う。水分含有量が変化すると、肌の電気容量値も変化するため、肌の電気容量値を測定することで、肌表面の水分含有量を分析することができる。
【0166】
2.経皮水分蒸散量(transepidermal water loss、TEWL)
ドイツのCourage+Khazaka electronic社から購入された、肌水分蒸散検出プローブTewameter(登録商標) TM 300(C+K Multi Probe Adapter System、Germany)を使用して、白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者の顔肌を検出する。該検出プローブは、両端が開放された円筒状キャビティを使用して皮膚表面に比較的安定した測定環境を形成し、異なる2点における水蒸気圧勾配を測定することで、経皮蒸散水分量を算出し、皮膚表面の水分喪失状況を評価する。
【0167】
3.肌弾力性(skin elasticity)
イタリアのCallegari 1930社から購入された、ソフト皮膚生理検出機Soft Plusを使用して、白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者の顔肌を検出する。該検出機は、吸引力及び引張原理に基づき、皮膚表面に負圧を形成して皮膚を検出プローブ内に吸引し、皮膚がプローブ内に吸引される深さを光学テストシステムによって検出し、ソフトウェアで皮膚弾力性を分析して計算する。
【0168】
4.肌の皺(skin wrinkle)
アメリカのCanfield scientific社から購入された、VISIA高次デジタル肌質検出機(VISIA Complexion Analysis System)を使用して、白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者の顔肌を検出する。該検出機は、顔肌を高解像度のカメラレンズによって撮影し、標準白色光照射により皮膚陰影の変化を検出することで、テクスチャー位置を検出して、皮膚の滑らかさを表すことができる数値を得る。
【0169】
5.コラーゲン密度(collagen density)
デンマークのCortex Technology社から購入された高周波超音波検出プローブ(High Freq. Ultrasound Module) (DermaLab(登録商標) USB皮膚測定機、Denmark)を使用して、白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者の顔肌を検出する。該検出プローブは、音響パルスを皮膚に流すことで、異なる強度の反射信号を異なるカラーパッチに変換するものであり、色が薄く又は明るくなるほど、皮膚のコラーゲン含有量が多くなることを表す。
【0170】
6.肌状況のアンケート調査
白ローゼル抽出物飲料の飲用前、14日間の飲用後及び28日間の飲用後に、同一の被験者を対象に肌状況のアンケート調査を行う。肌状況のアンケート調査は、皮膚の乾燥とかゆみ、皮膚の弛み、並びに皮膚弾力性の欠如といった項目について自己評価を行うものである。
【0171】
試験結果は以下のとおりである。
【0172】
特に説明すべきこととして、student t-testによる統計分析で、それぞれ第0週と第2週及び第4週の測定結果との間の統計的有意差を得る。図中の「*」は、第0週との比較でp値が0.05より小さいことを表し、「**」は、第0週との比較でp値が0.01より小さいことを表し、「***」は、第0週との比較でp値が0.001より小さいことを表す。「*」が多いほど、統計的差異が顕著になることを示す。
【0173】
1.被験者の「肌保湿効能」の検出結果は、
図6に示す。白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、肌水分量検出プローブCorneometer(登録商標) CM825により検出された被験者9名の肌保湿度の平均値を100%とする。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌保湿度の平均値は、それぞれ110.4%、117.7%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌保湿度は10.4%向上可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌保湿度は17.7%向上可能である。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、肌保湿度改善能力を確実に有する。
【0174】
2.被験者の「経皮水分蒸散量」の検出結果は、
図7に示す。白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、肌水分蒸散検出プローブTewameter(登録商標) TM 300により検出された被験者9名の肌経皮水分蒸散量の平均値を100%とする。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌経皮水分蒸散量の平均値は、それぞれ102.0%、87.1%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌経皮水分蒸散量は12.9%減少可能である。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、経皮水分蒸散率を確実に減少させることができるので、肌の保湿能力を向上させるとともに、TEWL値が異常な関連皮膚疾患を改善する潜在能力を持つ。
【0175】
3.被験者の「肌弾力性」の検出結果は、
図8に示す。白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、ソフト皮膚生理検出機Soft Plusにより検出された被験者9名の肌弾力性の平均値を100%とする。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌弾力性の平均値は、それぞれ101.9%、109.5%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弾力性は1.9%向上可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弾力性は9.5%向上可能である。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、肌弾力性を確実に促進して改善することができる。
【0176】
4.被験者の「肌の皺」の検出結果は、
図9に示す。白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、VISIA高次デジタル肌質検出機により検出された被験者9名の肌の皺程度の平均値を100%とする。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌の皺程度の平均値はそれぞれ、82.7%、70.3%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌の皺程度は17.3%減少可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌の皺程度は29.7%減少可能である。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、確実に肌の皺を減少させ、被験者の肌状況を改善することができ、つまり、白ローゼル抽出物は、小皺を平滑にする効果を有する。
【0177】
5.被験者の「コラーゲン密度」の検出結果は、
図10に示す。白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、高周波超音波検出プローブにより検出された被験者9名の肌コラーゲン密度の平均値を100%とする。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌コラーゲン密度の平均値は、それぞれ104.9%、106.6%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌コラーゲン密度は4.9%向上可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌コラーゲン密度は6.6%向上可能である。このことから分かるように、白ローゼル抽出物は、肌のコラーゲンを確実に増加させることができる。
【0178】
6.「肌状況のアンケート調査」による被験者の自己評価結果は、
図11に示す。被験者9名が白ローゼル抽出物飲料を飲用する前(第0週)に、自己評価した肌状況を100%とする。肌状況は、肌乾燥とかゆみ、肌弛み、及び肌弾力性の欠如を含む。被験者が2週間、4週間連続で飲用した後、その肌乾燥とかゆみの重症度は80.0%、80.0%となり、肌弛みの重症度は72.2%、67.1%となり、肌弾力性欠如の重症度は77.1%、71.3%となる。換言すれば、白ローゼル抽出物飲料の飲用前(第0週)に比べて、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌乾燥とかゆみの状況は20.0%減少可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌乾燥とかゆみの状況は20.0%減少可能である。白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弛みの状況は27.8%減少可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弛みの状況は32.9%減少可能である。白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を2週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弾力性欠如の状況は22.9%減少可能であり、白ローゼル抽出物を1.5mL含有する飲料を4週間連続で飲用した後、これらの被験者の肌弾力性欠如の状況は28.7%減少可能である。換言すれば、皮膚乾燥、かゆみ、弛み及び弾力性が悪いという各症状で被験者の感じる重症度は軽減される。
【0179】
以上より、いずれかの実施例の白ローゼル抽出物により、肌保湿向上用組成物を製造することができる。換言すれば、前記組成物は、肌保湿向上機能を有する。いくつかの実施例において、換言すれば、白ローゼル抽出物から製造された組成物は、皮膚角質細胞構造の維持に関与する遺伝子の発現量の増加、アクアポリンの増加、アクアポリン遺伝子の発現量の増加、セラミドの増加、セラミド生成関連遺伝子の発現量の増加、ヒアルロン酸分泌の増加、及びヒアルロン酸合成関連遺伝子の発現量の増加、のうちの1つ又は複数の機能をさらに有する。
【配列表】