IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人慶應義塾の特許一覧

特許7268264ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤
<>
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図1A
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図1B
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図1C
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図2
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図3
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図4
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図5
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図6
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図7
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図8A
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図8B
  • 特許-ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤 図8C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ピロロピリミジン化合物を有効成分とする炎症性疾患の予防及び/又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230426BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020518355
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018710
(87)【国際公開番号】W WO2019216409
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2018092068
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、難治性疾患実用化研究事業、「新規BAFF受容体阻害剤を用いたシェーグレン症候群の革新的治療薬の開発」に係る委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100175075
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 桂子
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116777(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053270(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/034245(WO,A1)
【文献】CAS Registry No.1381203-32-2,REGISTRY [online], US: American Chemical Society [retrieved on 2019.6.17], Retrieved from STN,2012年07月04日
【文献】CAS Registry No.1381191-40-7,REGISTRY [online], US: American Chemical Society [retrieved on 2019.6.17], Retrieved from STN,2012年07月04日
【文献】CAS Registry No.1381208-73-6,REGISTRY [online], US: American Chemical Society [retrieved on 2019.6.17], Retrieved from STN,2012年07月04日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(1):
【化1】
[式中、環Aは次の式(A):
【化2】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項2】
式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、請求項1に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項3】
式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、請求項1又は2に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項4】
式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【化3】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
式(1)の化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
【請求項6】
炎症性疾患が自己免疫疾患である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項7】
自己免疫疾患がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスである、請求項6に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項8】
自己免疫疾患がシェーグレン症候群である、請求項6又は7に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項9】
経口投与剤である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項10】
非経口投与剤である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項11】
非経口投与剤が注射剤である、請求項10に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項12】
非経口投与剤が点眼剤又は点鼻剤である、請求項10に記載の予防及び/又は治療剤。
【請求項13】
非経口投与剤が軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤又はスプレー剤である、請求項10に記載の予防及び/又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロピリミジン化合物を有効成分とする、シェーグレン症候群などの炎症性疾患に対する予防又は治療のための医薬に関する。より具体的には、本発明は、BAFF(B cell activating factor belonging to TNF superfamily)によるIL-6産生促進効果を阻害するピロロピリミジン化合物を有効成分として含有する、シェーグレン症候群などの炎症性疾患に対する予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シェーグレン症候群(SS、またはSjSと略称される。以下では「SS」と言うことがある。)は我が国が指定する指定難病の一つであり、慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎とを主徴とする炎症性疾患である。また、SSは多彩な自己抗体の出現(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗核抗体、リウマトイド因子など)や高ガンマグロブリン血症を呈し、涙腺や唾液腺を標的とする臓器特異的な自己免疫疾患であると同時に、全身性の臓器病変を伴う全身性の自己免疫疾患でもある。臓器特異的な症状としては、目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥、鼻腔の乾燥、唾液腺の腫れと痛みなどが代表的なものとして挙げられる。また、全身症状としては、疲労感、記憶力低下、頭痛が特に多く、他にめまい、集中力の低下、気分が移ろいやすい、うつ傾向などが挙げられる。
【0003】
SSは膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病)に合併する二次性シェーグレン症候群と、これらの合併のない原発性シェーグレン症候群(pSS)とに分類することができる。さらに、pSSは、病変が涙腺、唾液腺に限局する腺型と病変が全身諸臓器に及ぶ腺外型とに分けることができる。
【0004】
SSは、1999年に改訂された厚生労働省の診断基準に基づいて、以下の4項目のうち2項目を満たすことにより診断される。
【0005】
1.生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)口唇腺組織でリンパ球浸潤が4mm当たり1 focus以上
B)涙腺組織でリンパ球浸潤が4mm当たり1 focus以上
【0006】
2.口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)唾液腺造影でstage I(直径1mm以下の小点状陰影)以上の異常所見
B)唾液分泌量低下(ガムテスト10分間で10mL以下、又はサクソンテスト2分間2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見
【0007】
3.眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)シルマー試験で5mm/5min以下で、かつローズベンガルテストで陽性
B)シルマー試験で5mm/5min以下で、かつ蛍光色素(フルオレセイン)試験で陽性
【0008】
4.血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること
A)抗SS-A抗体陽性
B)抗SS-B抗体陽性
【0009】
SSは中年女性に好発し、患者の年齢層は50歳台にピークがあるが、子どもから80歳台の老人まで発症例が認められている。男女比は1:14で患者は女性の方が多い。厚生労働省研究班のデータでは、患者数は約66,300人とされている。しかし、医療機関で受療していない潜在的な患者を含めると、我が国のSS患者数は10~30万人にのぼると推定されている。
【0010】
患者数が多く存在することや、目の乾燥、口の乾燥等の症状が酷くなると著しくQOLを障害することなどから、SSの治療には高いニーズがあると言える。しかしながら、現状では自己免疫反応を引き起こす原因が解明されておらず、根本的にSSを治癒させる方法も見出されていない。したがって、臨床的な治療としては、乾燥症状を軽快させることと疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことが目標とされている。
【0011】
BAFF(B-cell-activating factor of the TNF familyの略称であり、BLyS、TALL-1、THANK、zTNF4、TNFSF13B、又はKayリガンドとも呼ばれることがある。)は、B細胞の生存及び成熟因子として発見されたサイトカインの一種である。炎症性サイトカインであるTNF-αのスーパーファミリーのメンバーとして位置づけられている。BAFFは単球や樹状細胞で主に産生され、ほかにT細胞でも産生されることが知られている。
【0012】
BAFFの受容体としてはBCMA(B Cell Maturation Antigen、別名TNFRSF17)、TACI(Transmembrane Activator and CAML-Interactor、別名TNFRSF13B)、及びBR3(BLys Receptor-3、別名BAFF-R、TNFRSF13C)の3種類の膜貫通型タンパクが報告され、これら受容体はリガンドと同様にTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。
【0013】
BAFFのc末端側の可溶性フラグメント(sBAFF)は細胞から分泌され、BAFF受容体と結合することにより様々な経路のシグナル伝達を惹起すると考えられている。
BAFFのB細胞に対する主な作用として、アポトーシスに拮抗的に作用するBcl-2を誘導して、B細胞の生存延長や、免疫グロブリンであるIgM、IgG産生亢進などといったB細胞の活性化を誘導して自己抗体の過剰産生を亢進することが報告されている。
【0014】
リンパ系細胞でBAFFを過剰発現するトランスジェニックマウスがpSS様の病態を示すこと、pSS患者や全身性エリテマトーデス(SLE)患者の血清中にBAFFが高濃度に認められることなどからも、BAFFにより惹起された細胞機能の亢進が自己免疫疾患と関連することが示唆されている。
【0015】
本発明者らは、BAFFとBAFF受容体との結合作用を阻害するピロロピリミジン化合物を見出しており、それらの化合物が、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性強皮症、多発性硬化症、分類不能型免疫不全症等)、後天性免疫不全症候群及び非ホジキンリンパ腫(前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、慢性Bリンパ球性白血病、前駆細胞性白血病、小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、免疫細胞腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞腫、形質細胞性骨髄腫、びまん性大細胞型リンパ腫、バーキットリンパ腫等)の予防及び/又は治療剤として有用であることを報告している(特許文献1、2)。しかしながら、当該ピロロピリミジン化合物の構造と機能との関係は十分に解明されておらず、どのような構造の化合物がSSやSLEをはじめとする自己免疫疾患や炎症性疾患の予防及び/又は治療に有効であるのかは未だ明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2012-116777号公報
【文献】WO 2015/053270 A1
【非特許文献】
【0017】
【文献】Yoshimoto K et al., Arthritis Res. Ther. (2011) 13:R170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、BAFFにより惹起される細胞応答を阻害できるピロロピロリジン化合物を有効成分として含有し、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、炎症性疾患に対する予防又は治療のために有用な医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、pSS患者の単球において、BAFF及びIL-6の両サイトカインの生産調整メカニズムが障害されいることを見いだしてきた(非特許文献1)。IL-6はB細胞の分化促進を通じて自己抗体の産生に重要な役割を果たし、そしてpSSの発症につながると考えられる。そこで、本発明者は、BAFF刺激存在下の単球の応答に注目し、IL-6産生促進に対する阻害効果を指標として化合物スクリーニングを行うことで、これまで炎症性疾患への作用が知られていないピロロピロリジン化合物を新たに見いだした。代表的な化合物として本発明者は、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを新たに見いだした。また一つの代表的な化合物として、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルが見いだされた。そして、本発明者は、当該ピロロピリミジン化合物がBAFF刺激下のIgG産生促進についても効果的な阻害作用を示すことを見いだした。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0020】
より詳細には、本発明は、以下の(1)~(72)に関する。
(1)次の式(1):
【0021】
【化1】
【0022】
[式中、環Aは次の式(A):
【0023】
【化2】
【0024】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(2)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(1)に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(3)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(1)又は(2)に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(4)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0025】
【化3】
【0026】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(5)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(1)乃至(4)のいずれか一に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(6)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(1)乃至(4)のいずれか一に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(7)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0027】
【化4】
【0028】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(8)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(1)又は(7)に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(9)炎症性疾患が自己免疫疾患である、前記(1)乃至(8)のいずれか一に記載の予防及び/又は治療剤。
(10)自己免疫疾患がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスである、前記(9)に記載の予防及び/又は治療剤。
(11)自己免疫疾患がシェーグレン症候群である、前記(9)又は(10)に記載の予防及び/又は治療剤。
(12)シェーグレン症候群が原発性シェーグレン症候群である、前記(9)乃至(11)のいずれか一に記載の予防及び/又は治療剤。
(13)経口投与剤である、前記(1)乃至(12)のいずれか一に記載の予防及び/又は治療剤。
(14)非経口投与剤である、前記(1)乃至(12)のいずれか一に記載の予防及び/又は治療剤。
(15)非経口投与剤が注射剤である、前記(14)に記載の予防及び/又は治療剤。
(16)非経口投与剤が点眼剤又は点鼻剤である、前記(14)に記載の予防及び/又は治療剤。
(17)非経口投与剤が軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤又はスプレー剤である、前記(14)に記載の予防及び/又は治療剤。
【0029】
(18)次の式(1):
【0030】
【化1】
【0031】
[式中、環Aは次の式(A):
【0032】
【化2】
【0033】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を投与する工程を含む、炎症性サイトカインの産生抑制方法。
(19)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(18)に記載の方法。
(20)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(18)又は(19)に記載の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤。
(21)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0034】
【化3】
【0035】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(18)乃至(20)のいずれか一に記載の方法。
(22)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(18)乃至(21)のいずれか一に記載の方法。
(23)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(18)乃至(21)のいずれか一に記載の方法。
(24)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0036】
【化4】
【0037】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(18)に記載の方法。
(25)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(18)又は(24)に記載の方法。
(26)炎症性サイトカインがIL-6である、前記(18)乃至(25)のいずれか一に記載の方法。
(27)in vitroで行われる、前記(18)乃至(26)のいずれか一に記載の方法。
【0038】
(28)次の式(1):
【0039】
【化1】
【0040】
[式中、環Aは次の式(A):
【0041】
【化2】
【0042】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を投与する工程を含む、活性化B細胞によるIgG抗体産生の抑制方法。
(29)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(28)に記載の方法。
(30)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(28)又は(29)に記載の方法。
(31)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0043】
【化3】
【0044】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(28)乃至(30)のいずれか一に記載の方法。
(32)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(28)乃至(31)のいずれか一に記載の方法。
(33)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(28)乃至(31)のいずれか一に記載の方法。
(34)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0045】
【化4】
【0046】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(28)に記載の方法。
(35)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(28)又は(34)に記載の方法。
(36)活性化B細胞は、BAFF刺激末梢血単球によって刺激されたB細胞である、前記(28)乃至(35)のいずれか一に記載の方法。
(37)in vitroで行われる、前記(28)乃至(36)のいずれか一に記載の方法。
【0047】
(38)炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の製造のための、次の式(1):
【0048】
【化1】
【0049】
[式中、環Aは次の式(A):
【0050】
【化2】
【0051】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物の使用。
(39)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(38)に記載の使用。
(40)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(38)又は(39)に記載の使用。
(41)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0052】
【化3】
【0053】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(38)乃至(40)のいずれか一に記載の使用。
(42)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(38)乃至(41)のいずれか一に記載の使用。
(43)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(38)乃至(41)のいずれか一に記載の使用。
(44)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0054】
【化4】
【0055】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(38)に記載の使用。
(45)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(38)又は(44)に記載の使用。
(46)炎症性疾患が自己免疫疾患である、前記(38)乃至(45)のいずれか一に記載の使用。
(47)自己免疫疾患がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスである、前記(46)に記載の使用。
(48)自己免疫疾患がシェーグレン症候群である、前記(46)又は(47)に記載の使用。
【0056】
(49)炎症性疾患の予防及び/又は治療方法における使用のための、次の式(1):
【0057】
【化1】
【0058】
[式中、環Aは次の式(A):
【0059】
【化2】
【0060】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物。
(50)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(49)に記載の化合物。
(51)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(49)又は(50)に記載の化合物。
(52)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0061】
【化3】
【0062】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(49)乃至(51)のいずれか一に記載の化合物。
(53)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(49)乃至(52)のいずれか一に記載の化合物。
(54)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(49)乃至(52)のいずれか一に記載の化合物。
(55)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0063】
【化4】
【0064】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(49)に記載の化合物。
(56)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(49)又は(55)に記載の化合物。
(57)炎症性疾患が自己免疫疾患である、前記(49)乃至(56)のいずれか一に記載の化合物。
(58)自己免疫疾患がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスである、前記(57)に記載の化合物。
(59)自己免疫疾患がシェーグレン症候群である、前記(57)又は(58)に記載の化合物。
【0065】
(60)有効量のピロロピロリジン化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、炎症性疾患の予防及び/又は治療方法であって、前記ピロロピロリジン化合物が次の式(1):
【0066】
【化1】
【0067】
[式中、環Aは次の式(A):
【0068】
【化2】
【0069】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物である、方法。
(61)式(1)において、Rは((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基であり、Lは式-CHC(O)-であり、oは2であり、mは0である、前記(60)に記載の方法。
(62)式(1)において、Rは(シクロプロピル(C1-3アルキル))アミノ基である、前記(60)又は(61)に記載の方法。
(63)式(1)で表される化合物が、次の式(1’):
【0070】
【化3】
【0071】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(60)乃至(62)のいずれか一に記載の方法。
(64)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(60)乃至(63)のいずれか一に記載の方法。
(65)式(1)で表される化合物が、2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドである、前記(60)乃至(63)のいずれか一に記載の方法。
(66)式(1)で表される化合物が、次の式(1”):
【0072】
【化4】
【0073】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
で表される化合物である、前記(60)に記載の方法。
(67)式(1)で表される化合物が、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルである、前記(60)又は(66)に記載の方法。
(68)炎症性疾患が自己免疫疾患である、前記(60)乃至(67)のいずれか一に記載の方法。
(69)自己免疫疾患がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスである、前記(68)記載の方法。
(70)対象が炎症性疾患を有する患者である、前記(60)乃至(67)のいずれか一に記載の方法。
(71)対象が自己免疫疾患を有する患者である、前記(68)記載の方法。
(72)対象がシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデスの患者である、前記(69)記載の方法。
【発明の効果】
【0074】
本発明のピロロピリミジン化合物、代表的には、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを有効成分として含む炎症性疾患の予防及び/又は治療剤により、炎症性疾患の予防又は治療を効果的に行うことができる。炎症性疾患としては、全身性の、又は臓器特異的な炎症反応に基づく疾患であれば特に限定されないが、自己抗体の産生を特徴とする自己免疫疾患、及び/又はBAFFにより惹起された細胞機能の亢進や炎症性サイトカインであるIL-6の産生増大を伴う疾患を例として挙げることができる。特には、本発明のピロロピリミジン化合物は、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスの予防又は治療をすることができる。シェーグレン症候群の一例として、原発性シェーグレン症候群が挙げられる。また、本発明のピロロピリミジン化合物、代表的には、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを投与する工程を含む方法によれば、BAFF刺激に応答した細胞による炎症性サイトカインIL-6の産生促進の抑制をすることや、BAFF刺激に応答したB細胞によるIgG抗体産生促進の抑制をすることができる。また、本発明のピロロピリミジン化合物、代表的には、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを投与する工程を含む方法によれば、生体中の自己抗体(具体的な例としては、抗dsDNA抗体)の産生抑制や、生体組織の炎症性反応(具体的な例としては、組織へのリンパ球の浸潤)の抑制を行うことができる。また、本発明で2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを選抜した単球系細胞株を用いたIL-6産生量を指標とするスクリーニング系は、BAFFによる促進効果を一部乃至完全にキャンセル作用を有する化合物を見いだすものであるから、当該スクリーニング系はシェーグレン症候群のみならず、全身性エリテマトーデスなどBAFFの作用が関与する様々な炎症性疾患に対する医薬化合物の選抜系としても有用である。それと同時に、言うまでもなく、本発明のスクリーニング系で見いだされた化合物である2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを代表とする、前記式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、BAFFが関与する様々な炎症性疾患の予防や治療に広く使用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1A図1Aは、ヒト単球系細胞株THP-1を200ng/mL IFNγ存在下で4日間前培養し、その後2μg/mL ヒトBAFF存在下で培養する培養系において、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミド(以下、「化合物A」と言うことがある。)をヒトBAFFと共に添加した場合(0.04μM、0.2μM又は1μM)、又は添加しなかった場合(control)における、培養3日目のIL-6産生量を測定した実験結果を示す図である。IL-6の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IL-6産生量に関して、定量値からIFNγ刺激後BAFFを添加しなかった場合のIL-6産生量の定量値をそれぞれの場合について差し引いた上で、controlの場合の差分値を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIL-6生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、***は化合物A無添加(control)の場合と比して、化合物A添加の場合に有意なIL-6生産量の低下が認められたことを示す(p<0.001)。
【0076】
図1B図1Bは、ヒト単球系細胞株THP-1を200ng/mL IFNγ存在下で4日間前培養し、その後2μg/mL ヒトBAFF存在下で培養する培養系において、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリル(以下、「化合物B」と言うことがある。)をヒトBAFFと共に添加した場合(0.04μM、0.2μM又は1μM)、又は添加しなかった場合(control)における、培養3日目のIL-6産生量を測定した実験結果を示す図である。IL-6の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IL-6産生量に関して、定量値からIFNγ刺激後BAFFを添加しなかった場合のIL-6産生量の定量値をそれぞれの場合について差し引いた上で、controlの場合の差分値を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIL-6生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、***は化合物B無添加(control)の場合と比して、化合物B添加の場合に有意なIL-6生産量の低下が認められたことを示す(p<0.001)。
【0077】
図1C図1Cは、ヒト単球系細胞株THP-1を200ng/mL IFNγ存在下で4日間前培養し、その後2μg/mL ヒトBAFF存在下で培養する図1Aと同じ培養系において、1-(2-[4-{7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-2-オキソエチル)ピロリジン-2-オン(以下、「BIK-13」と言うことがある。)をヒトBAFFと共に添加した場合(1.2μM、6μM又は30μM)、又は添加しなかった場合(control)における、培養3日目のIL-6産生量を測定した実験結果を示す図である。IL-6の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IL-6産生量に関して、定量値からIFNγ刺激後BAFFを添加しなかった場合のIL-6産生量の定量値をそれぞれの場合について差し引いた上で、controlの場合の差分値を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIL-6生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、***はBIK-13無添加(control)の場合と比して、BIK-13添加の場合に有意なIL-6生産量の低下が認められたことを示す(p<0.001)。
【0078】
図2図2は、ヒト健常人から採取した末梢血単球を2μg/mL ヒトBAFF存在下で培養する培養系において、化合物AをヒトBAFFと共に添加した場合(2μM、又は10μM)、BIK-13をヒトBAFFと共に添加した場合(2μM、又は10μM)、又はそれらをいずれも添加しなかった場合(control)における、培養4日目のIL-6産生量を測定した実験結果を示す図である。IL-6の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IL-6産生量に関して、controlの場合を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIL-6生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、***はcontrolの場合と比して、化合物A添加の場合に有意なIL-6生産量の低下が認められたことを示す(p<0.001)。また、*はcontrolの場合と比して、BIK-13添加の場合に有意なIL-6生産量の低下が認められたことを示す(p<0.05)。
【0079】
図3図3は、シェーグレン症候群患者由来の末梢血から単離したヒト末梢血単球とB細胞とをトランスウェル(登録商標)プレート中で膜を介して別々に播種し培養する共培養系において、BAFFも化合物も無添加の場合(B+mono)、2μg/mL ヒトBAFFを添加した場合(B+mono+BAFF)、化合物A(1μM、又は10μM)をヒトBAFFと共に添加した場合(1又は10)、又はBIK-13(1μM、又は10μM)をヒトBAFFと共に添加した場合(1又は10)における、培養4日目のIgG抗体産生量を測定した実験結果を示す図である。IgG抗体の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IgG抗体産生量に関して、BAFF存在下/化合物非存在下(B+mono+BAFF)の場合を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIgG抗体生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、**は(B+mono+BAFF)の場合と比して、化合物A 1μM添加の場合、及びBIK-13 10μM添加の場合に有意なIgG抗体生産量の低下が認められたことを示す(p<0.01)。また、***は(B+mono+BAFF)の場合と比して、化合物A 10μM添加の場合に有意なIgG抗体生産量の低下が認められたことを示す(p<0.001)。
【0080】
図4図4は、ヒト健常人の末梢血から単離した末梢血単核球を培養する培養系において、刺激を与えず化合物も無添加の場合(none)、刺激(5μg/mL 抗ヒトIgM抗体、1μg/mL 抗ヒトCD40抗体、30ng/mL ヒトIL-21、及び30ng/mL ヒトBAFF)を与えるが化合物Aを添加しない場合(control)、前記刺激と共に化合物A(0.4μM、2μM、又は10μM)を添加した場合(0.4μM、2μM、又は10μM)における、培養7日目のIgG抗体産生量を測定した実験結果を示す図である。IgG抗体の産生量は、培養上清を用いてELISA法で定量した。解析において、IgG抗体産生量に関して、前記刺激有り/化合物A非存在下(control)の場合を100%とした相対値を算出した。バーの高さでIgG抗体生産量(相対値)の平均値(%)を示し、併せて標準偏差も示す。図中、*、**及び***は、それぞれ(control)の場合と比して、化合物A添加の場合に有意なIgG抗体生産量の低下(p<0.05、p<0.01、又はp<0.001)が認められたことを示す。
【0081】
図5図5は、腎炎、血管炎、関節炎等の炎症性疾患を高率で発症し、自己免疫現象が多発的に生じる疾患モデル(膠原病モデル、又は全身性エリテマトーデスモデルとも言われる)であるMRL/lprマウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.04mg/kg,0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、血中の抗dsDNA抗体価を示す図である。投与は9週齢から開始し(0w)、週5回の投与を16週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。血中の抗dsDNA抗体価を測定は、経時的(0w、4w、8w、12w及び16w)採取した血液を用いてELISA法により行った。横軸は投与開始からの経過時間を示し、縦軸は血中の抗dsDNA抗体価に対応する吸光度の測定値(ユニット数)を示す。図中、*は、16wの化合物A投与(0.2mg/kg、又は1mg/kg)の場合に、生理食塩水投与の場合と比して有意な抗dsDNA抗体価の低下(p<0.05)が認められたことを示す。
【0082】
図6図6は、加齢と共に抗dsDNA抗体が出現し、糸球体腎炎を自然発症する疾患モデル(全身性エリテマトーデスモデルとも言われる)であるNZBWF1マウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、血中の抗dsDNA抗体価を示す図である。投与は20週齢から開始し(0w)、週5回の投与を20週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。血中の抗dsDNA抗体価を測定は、経時的(0w、4w、8w、12w及び16w)採取した血液を用いてELISA法により行った。横軸は投与開始からの経過時間を示し、縦軸は血中の抗dsDNA抗体価に対応する吸光度の測定値(ユニット数)を示す。図中、*は、12w及び16wの化合物A投与(1mg/kg)の場合に、生理食塩水投与の場合と比して有意な抗dsDNA抗体価の低下(p<0.05)が認められたことを示す。
【0083】
図7図7は、NZBWF1マウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、尿中のタンパク質含有量を示す図である。投与は20週齢から開始し(0w)、週5回の投与を20週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。尿中のタンパク質含有量の評価は、経時的(0w、4w、7w、12w、16w及び18w)採取した尿と尿タンパク質試験紙とを用い、試験紙に示された反応を数値化することにより行った。横軸は投与開始からの経過時間を示し、縦軸は尿中のタンパク質含有量の評価値を示す。図中、*は、12w(1mg/kg)及び18w(0.2mg/kg、又は1mg/kg)の化合物A投与の場合に、生理食塩水投与の場合と比して有意な尿中タンパク質含有量の低下(p<0.05)が認められたことを示す。
【0084】
図8A図8Aは、MRL/lprマウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.04mg/kg,0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、ヘマトキシリン・エオジン染色による涙腺組織の顕微鏡観察像を示す図である。投与は9週齢から開始し、週5回の投与を16週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。組織サンプルは、16週目の投与後、25週齢のマウスを解剖することにより採取された。各パネルにおいて、バーは1mmを示す。
【0085】
図8B図8Bは、MRL/lprマウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.04mg/kg,0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、ヘマトキシリン・エオジン染色による顎下腺組織の顕微鏡観察像を示す図である。投与は9週齢から開始し、週5回の投与を16週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。組織サンプルは、16週目の投与後、25週齢のマウスを解剖することにより採取された。各パネルにおいて、バーは1mmを示す。
【0086】
図8C図8Cは、MRL/lprマウス(雌性)において、生理食塩水を投与した(化合物Aを投与しない)場合(saline)、又は化合物Aを投与した(0.04mg/kg,0.2mg/kg、又は1mg/kg)場合における、ヘマトキシリン・エオジン染色による腎臓組織の顕微鏡観察像を示す図である。投与は9週齢から開始し、週5回の投与を16週間行った。投与は静脈注射(i.p.)で行った。組織サンプルは、16週目の投与後、25週齢のマウスを解剖することにより採取された。各パネルにおいて、バーは1mmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
本発明の炎症性疾患の予防及び/又は治療剤は、組成物において所定量の式(1)で表される化合物、又はその塩、若しくはそれらの溶媒和物を有効成分として配合することによって、医薬組成物として調製されたものである。本発明の代表的な炎症性疾患の予防及び/又は治療剤は、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミド(化合物A)を有効成分として配合することによって、医薬組成物として調製されたものである。式(1)の化合物は、次のように定義される。
【0088】
【化1】
【0089】
[式中、環Aは次の式(A):
【0090】
【化2】
【0091】
に示される基(ここで、Rは、((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基、又はニトリル基を示し、Lは、式-(CH-、-CHC(O)-、又は-C(O)CH-を示し、nは、0~3の整数を示し、oは、1~3の自然数を示す。)を示し、
、Rは、互いに同一又は異なっていてもよく、水素原子、又はC1-6アルキル基を示し、
は、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、
mは、0~2の整数を示す。]
【0092】
本明細書中で使用するとき、「C1-6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、好ましくは飽和鎖状炭化水素基を意味する。「C1-6アルキル基」としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。なお、本明細書中、「(C1-6アルキル)アミノ基」及び「(C6-10アリール)C1-6アルキル基」でも「C1-6アルキル」なる定義が使用されているが、これらも上記「C1-6アルキル」と同義である。
【0093】
本明細書中で使用するとき、「(C1-3アルキル)アミノ基」としては、C1-3アルキル基でモノ又はジ置換されたアミノ基が挙げられる。例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基等の炭素数1~3個の直鎖又は分枝状のアルキルアミノ基が挙げられる。
【0094】
本明細書中で使用するとき、「C3-6シクロアルキル」は、炭素数3~6の飽和の環状炭化水素基を示す。「C3-6シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等が挙げられる。
【0095】
本明細書中、「((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基」としては、「((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))」基でモノ置換されたアミノ基が挙げられる。「((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基」としては、例えば、(シクロプロピルメチル)アミノ基、(シクロプロピルエチル)アミノ基、(シクロプロピルプロピル)アミノ基、(シクロブチルメチル)アミノ基、(シクロペンチルメチル)アミノ基、(シクロヘキシルメチル)アミノ基等の((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基が挙げられる。
【0096】
本明細書中で使用するとき、「C6-10アリール基」は、炭素数6~10の芳香族炭化水素基を示す。「C6-10アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基等が挙げられる。なお、本明細書中、「ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基」及び「(C6-10アリール)C1-6アルキル基」でも「C6-10アリール」なる定義が使用されているが、これらの定義中の「C6-10アリール」も前記したものと同意義である。また、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0097】
本明細書中で使用するとき、「(C6-10アリール)C1-6アルキル基」としては、1個以上の前記した「C6-10アリール基」で置換されたC1-6アルキル基が挙げられる。「(C6-10アリール)C1-6アルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、アズレニルメチル基、アズレニルエチル基、アズレニルプロピル基、アズレニルブチル基等が挙げられる。
【0098】
「ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基」としては、1個以上のハロゲン原子で置換されたC6-10アリール基が挙げられる。1個以上のハロゲン原子で置換されたC6-10アリール基としては、例えば、ハロゲン置換フェニル基、ハロゲン置換ナフチル基、ハロゲン置換アズレニル基等が挙げられ、より好ましくは、4位がハロゲン原子で置換されたフェニル基等が挙げられる。
【0099】
式(1)中、R、Rにおける「C1-6アルキル基」としては、C1-4アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0100】
式(1)中、Rにおける「C3-6シクロアルキル基」としては、C5-6シクロアルキル基が好ましく、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。特に、シクロペンチル基が好ましい。
【0101】
式(1)中、Rにおける「ハロゲン原子で置換してもよいC6-10アリール基」としては、フェニル基、4-フルオロフェニル基が好ましい。
【0102】
式(1)中、Rにおける「(C6-10アリール)C1-6アルキル基」としては、フェニル置換C1-6アルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0103】
式(1)中、Rにおける「((C3-6シクロアルキル)(C1-3アルキル))アミノ基」としては、((C3-4シクロアルキル)メチル)アミノ基又は((C3-4シクロアルキル)エチル)アミノ基が好ましく、(シクロプロピルメチル)アミノ基又は(シクロプロピルエチル)アミノ基がより好ましい。(シクロプロピルメチル)アミノ基が特に好ましい。
【0104】
式(1)で表される化合物の好ましい例として、次の式(1’)で表される化合物を挙げることができる。
【0105】
【化3】
【0106】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
【0107】
式(1’)で表される化合物の代表的なものとして、2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミド、及び2-[4-{(7-シクロヘキシル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミドを挙げることができる。
【0108】
式(1)で表される化合物の別の好ましい例として、次の式(1”)で表される化合物を挙げることができる。
【0109】
【化4】
【0110】
[式中、R、R及びRは、それぞれ式(1)における定義と同じである。]
【0111】
式(1”)で表される化合物の代表的なものとして、3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリルを挙げることができる。
【0112】
本発明の式(1)で表されるピロロピリミジン化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物としては、本発明のピロロピリミジン化合物のみならず、その医薬として許容される塩、それらの各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形を有する物質、及びこれらの物質のプロドラッグとなる物質を包含している。また、不斉炭素原子を有する場合には、ラセミ体のみならず、光学活性体と包含される。
【0113】
本発明の式(1)で表されるピロロピリミジン化合物として許容される塩としては、具体的には、化合物を塩基性化合物として扱う場合は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)や有機酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等)との酸付加塩等が挙げられる。一方、化合物を酸性化合物として扱う場合には、無機塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等が挙げられる。
【0114】
本発明の式(1)で表されるピロロピリミジン化合物やその医薬として許容される塩の溶媒和物としては、水和物や各種の溶媒和物(例えば、エタノールなどのアルコールとの溶媒和物)が挙げられる。
【0115】
本発明の式(1)で表されるピロロピリミジン化合物は、特開平8-53454号公報、Heterocycles, 39(1), 345-356 (1994)等に記載の公知の方法を参考にして製造することができる。例えば、下記反応工程図に示す方法、あるいはこれに準じた方法により製造することができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて官能基を保護して各反応を行ってもよい。保護、脱保護条件としては一般に用いられる方法(Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.)を参考にして行うことができる。
【0116】
(方法A)化合物1aは、下記方法により製造することができる。
[反応工程図1
【0117】
【化5】
【0118】
[式中、R、R、R、L、m、及びoは前記定義と同意義を示し、Rは、C3-6シクロアルキル基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、Pは、アミノ基の保護基(ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基等)を示し、X、及びXはハロゲン原子等の脱離基を示し、Lは、-(CH-を示し、pは、0~2の整数を示す。]
【0119】
[工程1]化合物(2)と化合物(3)とを、溶媒中、塩基の存在下で反応させることにより、化合物(4)を製造することができる。本工程において、化合物(3)の量は特に限定されないが、例えば、化合物(2)に対して1.0~1.5当量を反応に用いることができる。塩基の量は特に限定されないが、例えば、化合物(2)に対して1.0~1.5当量を反応に用いることができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクテン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、又はトリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウム等の無機塩基類を使用することができる。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、-20~100℃であり、反応時間は、通常、10分~2日間である。
【0120】
[工程2]化合物(4)と化合物(5)とを、溶媒中、塩基の存在下で反応させることにより、化合物(6)を製造することができる。本工程において、化合物(5)の量は特に限定されないが、例えば、化合物(4)に対して1.2~1.8当量を反応に用いることができる。塩基の量は特に限定されないが、例えば、化合物(4)に対して1.2~1.8当量を反応に用いることができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクテン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、又はトリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウム等の無機塩基類を使用することができる。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、0~100℃であり、反応時間は、通常、30分~24時間である。
【0121】
[工程3]化合物(6)の保護基Pを脱保護することにより、化合物(7)を製造することができる。脱保護の方法及び条件は保護基Pの種類によって異なる。例えばベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基は接触水素付加により、tert-ブトキシカルボニル基は酸により脱保護できるが、その方法は有機化学で一般に用いられる方法(Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.)を参考にして行うことができる。
【0122】
[工程4]化合物(7)とアルデヒド化合物(8)とを、溶媒中、還元剤の存在下で還元的アミノ化反応させることにより、化合物(1a)を製造することができる。本工程において、化合物(8)の量は特に限定されないが、例えば、化合物(7)に対して1.0~1.5当量を反応に用いることができる。還元剤の量は特に限定されないが、例えば、化合物(7)に対して2.0~4.0当量を反応に用いることができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、又はトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。また、イミンの形成を促進させ反応を加速する目的で酢酸等の有機酸をpH調節のために用いてもよい。さらに、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、又はトリメチルアミン等の有機塩基類を反応に共存させてもよい。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、-20~100℃であり、反応時間は、通常、10分~2日間である。
【0123】
化合物(7)とカルボン酸化合物(9)とを、溶媒中、縮合剤を用いて反応させることにより、化合物(1a)を製造することができる。なお、本工程では反応を加速させる目的で、縮合剤の他に塩基や縮合促進剤を共存させてもよい。本工程において、化合物(9)の量は特に限定されないが、例えば、化合物(7)に対して1.0~1.5当量を反応に用いることができる。縮合剤の量は特に限定されないが、例えば、化合物(7)に対して1.0~1.5当量を反応に用いることができる。塩基の量は特に限定されないが、例えば、化合物(7)に対して2.0~2.5当量を反応に用いることができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、又は酢酸エチル等の酢酸エステル類等が挙げられる。縮合剤としては特に制限はないが、N,N’-ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSCI)、又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)等が挙げられる。塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクテン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、又はトリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウム等の無機塩基類を使用することができる。縮合促進剤としては特に制限はないが、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール(HOAt)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアゾール(HODhbt)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、ペンタフルオロフェノール(HOPfp)、N-ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、又はN-ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)等が挙げられる。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、0~100℃であり、反応時間は、通常、30分~24時間である。
【0124】
(方法B)製造中間体(4)は、下記反応工程図2に示す方法によっても製造することができる。
[反応工程図2
【0125】
【化6】
【0126】
[式中、R、R、及びRは、前記定義と同意義を示し、Rは、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC6-10アリール基、又は(C6-10アリール)C1-6アルキル基を示し、Rは、C1-6アルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子等の脱離基を示す。]
【0127】
[工程5]化合物(10)と化合物(11)とを、溶媒中、塩基の存在下反応させることにより、化合物(12)を製造することができる。本工程で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類;ジクロロメタン、又は1,2-ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、;メタノール、又はエタノールのようなアルコール類等が挙げられる。塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、コリジン、ルチジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクテン(DABCO)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、又はトリメチルアミン等の有機塩基類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カリウム等の無機塩基類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、又はカリウムエトキシド等の金属アルコラート類を使用することができる。本工程における反応温度は、使用する原料、溶媒によって異なるが、通常、0~120℃であり、反応時間は、通常、30分~24時間である。
【0128】
前記の各反応で得られた中間体及び目的物は、有機合成化学で常用されている精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して必要に応じて単離、精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次反応に供することもできる。
【0129】
さらに、各種の異性体は異性体間の物理化学的性質の差を利用した常法を適用して単離できる。例えば、ラセミ混合物は、例えば、酒石酸等の一般的な光学活性酸とのジアステレオマー塩に導き光学分割する方法、又は、光学活性カラムクロマトグラフィーを用いた方法等の一般的ラセミ分割法により、光学的に純粋な異性体に導くことができる。また、ジアステレオマー混合物は、例えば、分別結晶化又は各種クロマトグラフィー等により分割できる。また、光学活性な化合物は適当な光学活性な原料を用いることにより製造することもできる。
【0130】
(1)化合物の入手、調製
化合物A(2-[4-{(7-benzyl-5,6-dimethyl-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)oxy}piperidin-1-yl]-N(cyclopropylmethyl)acetamide)は、分子式C2633で示される分子量447.57の公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Asinex Japan Inc.社やから販売される製品(ADM 12880492)を購入することで入手できる。Aurora Fine Chemicals社から購入(K11.321.100)することもできる。また、前駆体化合物2-[4-{(7-benzyl-5,6-dimethyl-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)oxy}piperidin-1-yl]acetate (Asinex Japan Inc.社;ADM12880482、Aurora Fine Chemicals社;K11.321.097として購入することも可能)と1-cyclopropylmethanamineから合成するなど、当業者に周知の手法で調製することもできる。化合物Aは構造式で次のように示されるものである。
【0131】
【化7】
【0132】
化合物Aに代えて、式(1)又は式(1’)に示される類似化合物を調製し、使用することもできる。化合物Aの代表的な類似化合物として、化合物A’を挙げることができる。化合物A’(2-[4-{(7-cyclohexyl-5,6-dimethyl-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)oxy}piperidin-1-yl]-N(cyclopropylmethyl)acetamide)は、分子式C2540で示される分子量439.6の公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Aurora Fine Chemicals社から購入(K11.321.120)することができる。化合物A’は構造式で次のように示されるものである。
【0133】
【化8】
【0134】
化合物B(3-[4-{(7-cyclopentyl-5,6-dimethyl-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)oxy}piperidin-1-yl]propanenitrile)は、分子式C2129Oで示される分子量367.49の公知物質であり、適宜入手可能な物質である。例えば、Asinex Japan Inc.社やから販売される製品(ADM 12880696)を購入することで入手できる。Aurora Fine Chemicals社から購入(K11.321.154)することもできる。また、当業者に周知の手法で調製することもできる。化合物Bは構造式で次のように示されるものである。
【0135】
【化9】
【0136】
(2)炎症性サイトカインの産生抑制効果の確認
本発明の予防及び/又は治療剤による効果は、例えば炎症性サイトカインであるIL-6の産生抑制を指標として、インビトロ、又はインビボの実験により確認することができる。より具体的には、例えば後記実施例2に示すTHP-1細胞からのBAFFによるIL-6産生に対する抑制効果として確認することができる。別の例としては、後記実施例3に示す末梢血単球からのBAFFによるIL-6産生に対する抑制効果として確認することができる。また、炎症性疾患モデルの動物等を用いたインビボの実験でも適宜確認できる。
【0137】
(3)自己抗体の産生抑制効果の確認
本発明の予防及び/又は治療剤による効果は、例えばB細胞によるIgG抗体産生の抑制を指標として、インビトロ、又はインビボの実験により確認することができる。より具体的には、例えば後記実施例4に示すBAFF刺激末梢血単球とB細胞との共培養によるB細胞からのIgG抗体産生に対する抑制効果として確認することができる。別の例としては、後記実施例5に示す末梢血単核球を用いたB細胞刺激培養によるIgG産生に対する抑制効果として確認することができる。また別の例としては、後記実施例6及び実施例7に示す全身性エリテマトーデスモデルマウスにおける血中抗dsDNA抗体の産生抑制効果として確認することができる。これらの効果から、化合物Aに代表される本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は炎症性腸疾患及び血管炎(動脈炎等)等のB細胞からの過剰なIgG産生により増悪する疾患の予防及び/又は治療剤として好ましく使用できると理解できる。また、B細胞からの自発的なIgG抗体の産生が抑制されること(詳細は後記実施例4及び5を参照)、及び抗dsDNA抗体の産生が抑制されること(詳細は後記実施例6及び7を参照)から、化合物Aに代表される本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物が自己抗体産生を特徴とし、BAFFが関与する様々な自己免疫疾患の予防や治療に使用できることが合理的に理解できる。さらに、自己免疫疾患への治療効果は自己免疫疾患モデルの動物等を用いたインビボの実験でも適宜確認することができる。
【0138】
(4)腎炎の抑制効果の確認
本発明の予防及び/又は治療剤による効果は、尿中のタンパク質含有量の抑制や腎臓組織へのリンパ球浸潤の抑制を指標として、インビボの実験により確認することができる。より具体的には、後記実施例8に示す、糸球体腎炎を自然発症する疾患モデルマウス(全身性エリテマトーデスモデルマウス)における尿中のタンパク質含有量の抑制効果として確認することができる。また、後記実施例9に示す、腎炎等の炎症性疾患を自然発症する疾患モデルマウス(全身性エリテマトーデスモデルマウス)における腎臓組織へのリンパ球浸潤の縮小効果として確認することができる。これらの効果から、化合物Aに代表される本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は炎症性腎疾患やループス腎炎等により増悪する腎機能障害の予防及び/又は治療剤として好ましく使用できると理解できる。
【0139】
(5)腺組織の炎症抑制効果の確認
本発明の予防及び/又は治療剤による効果は、涙腺や顎下腺といった腺組織におけるリンパ球浸潤の縮小を指標として、インビボの実験により確認することができる。より具体的には、後記実施例9に示す、腎炎等の炎症性疾患を自然発症し、自己免疫現象が多発的に生じる疾患モデル(全身性エリテマトーデスモデル)マウスの涙腺及び顎下腺組織におけるリンパ球浸潤の縮小によって、抗炎症効果の存在を確認することができる。これらの効果から、化合物Aに代表される本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は涙腺や顎下腺などに発症する炎症性疾患の予防及び/又は治療剤として好ましく使用できると理解できる。
【0140】
(6)化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の調製
本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤において、有効成分である化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は、ピロロピリミジン化合物それ自体はもちろんのこと、その塩若しくは溶媒和物の形態の化合物を用いることもできる。塩及び溶媒和物形態の化合物は常法により製造することができる。本明細書において単に化合物A又は本発明のピロロピリミジン化合物と記載される場合であっても、化合物A又は本発明のピロロピリミジン化合物の塩や溶媒和物の化合物形態を使用する場合の発明が同等に含まれるものと解される。
【0141】
前記の塩としては、薬学的に許容できるものであれば特に制限はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
前記の溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、エタノール和物)等が挙げられる。
【0142】
本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の投与経路は特に限定されず、経口投与剤であっても、非経口投与剤であってもよい。
たとえば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、シロップ等の経口投与剤の剤型とすることができる。また、注射剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤、スプレー剤などの非経口投与剤の剤型とすることもできる。これらの製剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、経口投与用製剤とする場合には、トラガントガム、アラビアガム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、オリーブ油、大豆油、PEG400等の溶解剤;澱粉、マンニトール、乳糖等の賦形剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。また、注射用の製剤とする場合は、例えば、無菌的に保存した化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の乾燥物又は保存溶液を、静脈注射用の生理食塩水又は緩衝液によって溶解又は希釈して調製することができる。化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の溶解度を高めたい場合は、溶媒を変更したり、化合物Aを超微細粒子化したり、シクロデキストリン類に包接させるなど、公知の手法が適宜利用可能である。化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物とともにpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法を利用して、皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。pH調製剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA(エデト酸ナトリウム)、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。また、軟膏、クリーム、ローションのような外用剤として調製する場合には、親油性、水溶性又はエマルジョンタイプの基剤に化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を溶解又は分散させることにより調製できる。軟膏として調製する場合には、軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものの中より選択されるが、例えば、高級脂肪酸またはそれらのエステル類(例:アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ラウリル酸ヘキシル、イソオクタン酸エチル等)、ロウ類(例:鯨ロウ、ミツロウ、セルシン等)、界面活性剤(例:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、高級アルコール(例:セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例:ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、グリコールメチルポリシロキサン、シリコーングリコールポリマー等)、炭化水素類(例:親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、水、保湿剤(例:グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール等)、かぶれ防止剤、その他の添加物から選択されることが好ましい。これらの基剤に本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を適宜配合処方することによって、経皮用、口腔粘膜等の粘膜用の製剤にすることができる。口腔粘膜用には、よく付着し唾液などで流されにくい性質が求められるため、疎水性の基剤にセルロース類やパラフィンなどを加えて粘着性を高めることが望ましい。また、ローションは、軟膏と同様に適宜調製されるが、水分量を高めて粘性が低い液体製剤として調製される。クリームに使用する基剤は、公知あるいは通常使用される各種基剤から選択されるが、例えば、高級脂肪酸エステル類(例:ミリスチン酸ジエステル、パルミチン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、ラウリル酸ヘキシル、イソオクタン酸セチル等)、低級アルコール(例:エタノール、イソプロパノール等)、炭化水素類(例:流動パラフィン、スクワレン等)、多価アルコール(例:プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、高級アルコール(例:2-ヘキシルデカノール、セタノール、2-オクチルデカノール等)、乳化剤(例:ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等)、防腐剤(例:パラオキシ安息香酸エステル)、かぶれ防止剤、その他の添加物が挙げられる。以上の各基剤に本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を加え、更に紫外線吸収剤、または必要に応じ抗酸化剤を適宜配合することによりクリーム剤を得ることができる。点眼剤を調製する場合は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤、眼軟膏等のいずれでもよい。このような製剤は、投与形態に適した組成物として、必要に応じて薬学的に許容される担体、特に点眼薬に許容される担体、例えば等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等を配合し、当業者に公知の(製剤)方法により製造できる。点眼剤を調製する場合、例えば、化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を滅菌精製水、生理食塩水等の水性溶剤、又は綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解又は懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。点眼剤用の水性基剤としては、等張化剤、緩衝剤および保存剤のような通常使用される添加剤等が適宜配合される。例えば、等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール、糖類等が、緩衝剤としては、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が、保存剤としては、塩酸ベンゼトニウム、塩酸ベンザルコニウム、クロロブタノール等が挙げられる。その他、グリセリンまたはポリソリベート80等の安定剤およびpH調整剤等が必要に応じて配合される。なお、眼軟膏剤を調製する場合は、前記各種の成分の他に、軟膏基剤を含むことができる。前記軟膏基剤としては、特に限定されないが、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン等の油性基剤;油相と水相とを界面活性剤等により乳化させた乳剤性基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等からなる水溶性基剤等が好ましく挙げられる。ゲル剤を調製する場合、ゲル基剤は公知あるいは通常使用される各種基剤から選択されるが、例えば、低級アルコール(例:エタノール、イソプロピルアルコール、水、ゲル化剤(例:カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アルギン酸ポリプロピレングリコールエステル等)、中和剤(例:トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム等)、界面活性剤(例:セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、かぶれ防止剤、その他の添加物が挙げられる。これらの基剤に本発明の化合物Aを適宜配合処方することによって、経皮用、口腔粘膜等の粘膜用の製剤にすることができる。点鼻剤及びスプレー剤は、化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を含む液状製剤として調製される。点鼻剤は、鼻腔内に適用(滴下)することに適した形状の容器に入れることが望ましい。スプレー剤は、液状製剤と共に噴射剤を含むスプレー容器に収納した形で調製される。噴射剤には炭酸ガス等の気体が使用される。スプレー剤は、表皮のみならず、鼻腔内や口腔内に対して使用しても良く、調製にあたっては使用態様に適した形状のスプレー容器が適宜選択し、使用される。
【0143】
(7)化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の用途
化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤において、本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は、後記実施例に示されるように、ヒト末梢細胞(B細胞、単球)におけるBAFFにより誘導される生物学的作用(IgG産生、IL-6産生)を抑制する作用を有する。また、本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は、後記実施例に示されるように、生体中の自己抗体(具体的な例としては、抗dsDNA抗体)の産生抑制や、生体組織の炎症性反応(具体的な例としては、組織へのリンパ球の浸潤)の抑制作用を有する。かかる薬理作用は、本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物が、炎症性疾患、特に自己抗体の産生を特徴とする自己免疫疾患、とりわけシェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスの予防や治療に有用であることを示す。また、炎症性腸疾患及び血管炎(動脈炎等)等のB細胞からの過剰なIgG産生により増悪する疾患の予防及び/又は治療剤として好ましく使用される。その他、活性化したB細胞が関連する免疫機能の亢進又は異常を示す疾患も、本発明が予防又は治療の対象として意図される。それらの疾患は、次のように例示することができる。皮膚筋炎、多発性筋炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、気管支喘息、強皮症、IgG4関連疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、円板状エリテマトーデス、モルフィア、混合性結合組織病、急速進行性糸球体腎炎、天疱瘡、類天疱瘡、重症筋無力症、特発性血小板減少性紫斑病、甲状腺機能亢進症、慢性甲状腺炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性胃炎、グッドパスチャー症候群、悪性貧血、及び自己免疫性溶血性貧血。
【0144】
(8)化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の投与形態
本発明炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分となる化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の有効投与量は、患者の状態、症状など諸事情により適宜変更される。経口投与する場合における化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の1日分の投与量は、これを1日1回投与するか、又は数回に分けて投与することができる。逆に数日分の用量を1回に投与することにより2日以上毎に1度の投与ペースとすることもできる。注射剤として全身投与する場合における化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の投与量も、1日1回投与するか、又は1日分を数回に分けて投与することができる。逆に数日分の用量を1回に注射することにより2日以上毎の投与ペースとすることもできる。また、点滴等により継続的に投与することでも良い。点眼剤、点鼻剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル剤、スプレー剤などの非経口投与剤を局所投与をする場合も、外用薬としての医薬組成物中の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の配合量、局所投与の頻度、及び塗布範囲などは適宜調整できる。いずれの場合も、投与は必ずしも継続的又は定期的に行う必要はなく、症状の変化などに応じて適宜間隔を空けて行うことが可能である。仮に単回の投与で治癒又は寛解すれば、複数回投与を行う必要はない。症状が再発乃至増悪した場合に投与を再開することでも良い。
本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤の投与方法としては、特に限定されるものではないが、治療対象として代表的に例示されるSSの場合は目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥、鼻腔の乾燥症状が顕著であり、他にも皮膚や膣の乾燥症状も知られるから、局所投与を目的とした点眼剤、点鼻剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤などの非経口投与製剤のいずれもが好適に用いられる。鼻腔や口腔内への投与を目的として特に調製されたスプレー剤を使用しても良い。
投与期間は、患者の病状に応じて適宜調整できる。投与期間中の投与用量は適宜調整できるが、継続的に一定量を投与するか、又は投与当初のみ比較的高用量で投与した後により少ない維持量の一定投与に移行する投与形態とすることが例示される。
【0145】
(9)化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の用途[1]
化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は、後記実施例2及び3に示すように、BAFFにより刺激された単球において誘導される炎症性サイトカインIL-6の産生を抑制する。それゆえ、化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を投与する工程を含む、炎症性サイトカインの産生抑制方法に使用することができる。ここで炎症性サイトカインとは代表的にIL-6であり、IL-6の産生は抗IL-6抗体を用いたELISA法などにより定量的に確認することができる。また、このIL-6の産生量の抑制に注目することにより、化合物Aをひとつのポジティブコントロールとして炎症性疾患の予防や治療に有効な化合物のスクリーニングを行うこともできる。
【0146】
(10)化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物の用途[2]
化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物は、後記実施例4及び5に示すように、BAFFにより刺激されたB細胞において誘導されるIgG抗体の産生を抑制する。それゆえ、化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を投与する工程を含む、活性化B細胞によるIgG抗体産生の抑制方法に使用することができる。ここでIgG抗体の産生は抗IgG抗体を用いたELISA法などにより定量的に確認することができる。また、このIgG抗体の産生量の抑制に注目することにより、化合物Aをひとつのポジティブコントロールとして自己免疫疾患や過剰なIgG産生により増悪する疾患の予防や治療に有効な化合物のスクリーニングを行うこともできる。
【実施例
【0147】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0148】
実施例1 化合物のスクリーニング
材料と方法:
ヒト単球白血病細胞株THP-1細胞(生物資源バンク;Japanese Collection of Research Bioresourceより入手)を10%胎児ウシ血清(JRH Biosciences社製)を含むRPMI-1640培地(ATCC社製)で24穴プレート(コーニング社製)に1ウェル当たり5×10個播種した。IFNγ(インターフェロンγ;BD Pharmingen社製)を終濃度200ng/mLとなるように添加して、5%CO環境下で37℃にて培養した。培養4日後、各ウェルの培養液を除去し、細胞を当該培地で2回洗浄後、終濃度2μg/mLの組換えヒト可溶型BAFF(Chemicon社製)を含む当該培地を加え、試験化合物を終濃度20μMまたは2μMとなるように添加し、同条件下で培養を継続した。3日間培養後、培養上清を回収し、上清中のIL-6量をELISA法によって定量した。ELISA法にはマウス抗ヒトIL-6抗体(BD Pharmingen社製)、ビオチン標識抗ヒトIL-6抗体(BD Pharmingen社製)及びHRP標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen社製)を用いた。試験化合物群はAsinex社から購入して使用した。試験系において、ポジティブコントロール(単球系細胞のIL-6産生に対して抑制作用を有する化合物)として、特許文献1の化合物27(BIK-13)を使用した。BIK-13はAsinex Japan Inc. 社のADM 12880656の化合物と同じものである。
結果:
各試験化合物についてIL-6産生に対する抑制効果を指標として評価を行った結果、下記の(13)の構造を有する2-[4-{(7-ベンジル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]-N-(シクロプロピルメチル)アセトアミド(化合物A)、及び下記の(15)の構造を有する3-[4-{(7-シクロペンチル-5,6-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)オキシ}ピペリジン-1-イル]プロパンニトリル(化合物B)が見いだされた。
【0149】
【化7】
【0150】
【化9】
【0151】
実施例2 BAFFによるIL-6産生に対する抑制効果
材料と方法:
ヒト単球系細胞株THP-1(実施例1と同じ)5x10個をヒトリコンビナントIFNγ(実施例1と同じ)200ng/mL存在下(培養規模は全体で2mL/ウェル 24ウェル培養プレート)で10%FBS/RPMI1640培地を用いて5%CO環境下で37℃にて4日間(96時間)培養した。4日後、上清を取り除き、新しいメディウムを加え、インキュベータ内で静置、上清を取り除く作業を2回繰り返した。上清を取り除いた後、ヒトリコンビナントBAFF(2μg/mL)と化合物A(ADM 12880492;Asinex Japan Inc.社)又は化合物B(ADM 12880696;Asinex Japan Inc.社)をメディウムに解いて培養ウェルに加え、3日間培養した。3日後、培養上清を回収し、培養上清中のIL-6量をIL-6特異的ELISA法を用いて定量した。対照には、化合物A又は化合物Bに代えてBIK-13を用いた。
結果:
結果を図1A(化合物Aを用いた場合)、図1B(化合物Bを用いた場合)、及び図1C(BIK-13を用いた場合)に示した。
ヒトBAFFと共に化合物A又は化合物Bを添加した場合(0.04μM、0.2μM又は1μM)、いずれの濃度においても、対照と比して有意(p<0.001)なIL-6産生抑制効果が認められた(図1A及び図1B)。
一方、BIK-13を添加した場合(1.2μM、6μM又は30μM)、6μM又は30μM添加時には化合物無添加(ヒトBAFFのみ添加)の場合と比して有意(p<0.001)なIL-6産生抑制効果が認められたが、1.2μM添加時には化合物無添加(ヒトBAFFのみ添加)の場合と比して有意差が認められなかった(図1C)。
化合物Aは最も低濃度の0.04μM添加であっても相対産生量50%を大きく下回る(25±1.42%)IL-6産生量にまで抑制効果が示されたのに対し、BIK-13の場合は最も高濃度の30μM添加の場合でさえ相対産生量50%までは抑制されなかった(52.8±2.2%)(図1A及び図1C)。この結果から、ヒト単球系細胞株を用いた実施例2の系においては、化合物AがBIK-13よりも少なくとも750倍以上強力にIL-6の産生抑制効果を示したと言える。また、化合物Bは30μM添加時に相対産生量50%を回るIL-6産生量にまで抑制効果が示されたのに対し、BIK-13の場合は30μM添加の場合でさえ相対産生量50%までは抑制されなかった(図1B及び図1C)。この結果から、ヒト単球系細胞株を用いた実施例2の系においては、化合物BがBIK-13よりも強力にIL-6の産生抑制効果を示したと言える。
【0152】
実施例3 ヒト末梢血単球からのBAFFによるIL-6産生に対する抑制効果
材料と方法:
健常人末梢血よりCD14-マイクロビーズを用いて単球を単離した。単離した単球5x10個をヒトリコンビナントBAFF(実施例2と同じ)2μg/mLと化合物A(2μM又は10μM)存在下(培養規模は全体で2mL/ウェル 24ウェル培養プレート)で10%FBS/RPMI1640培地を用いて5%CO環境下で37℃にて4日間培養した。4日後、上清を取り除き、培養上清中のIL-6量をIL-6特異的ELISA法を用いて定量した。比較のために、化合物Aに代えてBIK-13を用いた実験も行った。
結果:
結果を図2に示した。
ヒトBAFFと共に化合物Aを添加した場合(2μM又は10μM)、いずれの濃度においても、化合物無添加(ヒトBAFFのみ添加)の対照と比して有意(p<0.001)なIL-6産生抑制効果が認められた(図2中央)。
一方、BIK-13を添加した場合、10μM添加した場合は対照と比して有意(p<0.05)なIL-6産生抑制効果が認められたが、2μM添加時には有意差が認められなかった(図2右側)。
また、化合物A 2μM添加時の相対産生量が66.4±0.283%であるのに対し、BIK-13 10μM添加時の相対産生量が80.2±14.5%であるから、前者の場合の方が後者よりも強力な抑制が起こったものと理解できる。
これらの結果から、ヒト健常人の末梢血単球を用いた実施例3の系において、化合物AがBIK-13よりも少なくとも5倍以上強力にIL-6の産生抑制効果を示したと言える。
【0153】
実施例4 BAFF刺激末梢血単球と共培養によるB細胞からのIgG産生に対する抑制効果
材料と方法:
シェーグレン症候群患者末梢血よりCD14マイクロビーズを用いて単球を単離し、同末梢血よりCD19マイクロビーズを用いてB細胞を単離した。トランスウェル(登録商標)培養プレートの上段に1ウェル当たり2x10個の単球を、下段に1x10個のB細胞をそれぞれ播種し、ヒトリコンビナントBAFF(実施例2と同じ)2μg/mLと化合物A(1μM、又は10μM)存在下で10%FBS/RPMI1640培地を用いて5%CO環境下で37℃にて4日間培養(膜を介した末梢血単球とB細胞との共培養)を行った。4日後、上清を取り除き、培養上清を採取し、培養上清中のIgG量をELISA法を用いて定量した。また、対照として化合物Aを添加しない場合、及び化合物AだけでなくBAFFも添加しない場合の実験も行った。さらに、化合物Aとの効果の比較のために、化合物Aに代えてBIK-13を用いた実験も行った。
結果:
結果を図3に示した。
ヒトBAFFと共に化合物Aを添加した場合(1μM又は10μM)、いずれの濃度においても、化合物A無添加(図3のB+mono+BAFF)の対照と比して有意(p<0.01又はp<0.001)なIgG抗体産生抑制効果が認められた(図3左側)。化合物A 10μM添加時のIgG抗体産生レベルは無添加(化合物AもBAFFも無添加。図3のnone)の場合よりも低いレベルにあった。これは、BAFFによるIgG抗体産生促進の効果が完全にキャンセルされ、さらにべーサルレベルを下回るほどにIgG抗体産生が抑制されたものと理解できる。
一方、BIK-13を添加した場合、10μM添加した場合は対照と比して有意(p<0.01)なIL-6産生抑制効果が認められたが、1μM添加時には有意差が認められなかった(図3右側)。BIK-13の10μM添加時においては、有意な抑制こそ認められたものの、10μM化合物A添加の場合と異なり、BAFFによるIgG抗体産生促進の効果が完全にはキャンセルされていないことが見て取れる(図3右側)。
この結果から、BAFF刺激末梢血単球とB細胞との共培養を用いた実施例4の系において、化合物AがBIK-13よりも10倍程度強力にIgG抗体産生に対する抑制効果を示したと言える。
【0154】
実施例5 末梢血単核球(PBMC)を用いたB細胞刺激培養によるIgG産生に対する抑制効果
材料と方法:
健常人末梢血よりフィコールを用いた比重遠心法で末梢血単核球を単離した。2x10個の末梢血単核球を、5μg/mL 抗ヒトIgM抗体、1μg/mL 抗ヒトCD40抗体、30ng/mL ヒトリコンビナントIL-21、及び30ng/mL ヒトリコンビナントBAFF、並びに化合物A(0.4μM、2μM、又は10μM)存在下で10%FBS/RPMI1640培地を用いて5%CO環境下で37℃にて7日間培養した。培養は、96ウェル丸底培養プレートで、1ウェル当たり200μLのスケールで行った。7日後、上清を取り除き、培養上清を採取し、培養上清中のIgG量をELISA法を用いて定量した。また、対照として化合物Aを添加しない場合、及び化合物AだけでなくBAFFも添加しない場合の実験も行った。さらに、化合物Aとの効果の比較のために、化合物Aに代えてBIK-13を用いた実験も行った。
結果:
結果を図4に示した。
ヒトBAFFと共に化合物Aを添加した場合(0.4μM、2μM、又は10μM)、いずれの濃度においても、化合物A無添加(図4のcontrol)の対照と比して有意(それぞれ、p<0.05、p<0.01又はp<0.001)なIgG抗体産生抑制効果が認められた(図4)。化合物A10μM添加時のIgG抗体産生レベルは無添加(化合物AもBAFFも無添加。図4のnone)の場合と同レベルであり、BAFFによるIgG抗体産生促進の効果はほぼ完全にキャンセルされたものと理解できる。
一方、BIK-13を添加した場合、10μM添加した場合は対照と比して有意(p<0.01)なIL-6産生抑制効果が認められたが、0.4μM、又は2μM添加時には有意差が認められなかった(BIK-13を用いた実験の結果は図示せず)。
この結果から、PBMCを用いたB細胞刺激培養を行う実施例5の系において、化合物AがBIK-13よりも25倍程度強力にIgG抗体産生に対する抑制効果を示したと言える。
【0155】
実施例6:自己免疫現象が生じる炎症性疾患モデルマウスを用いた血中抗dsDNA抗体の産生抑制効果(1)
材料と方法:
炎症性疾患を高率で発症し、自己免疫現象が多発的に生じる疾患モデル(膠原病モデル、又は全身性エリテマトーデス(SLE)モデル、とも言われる。)マウスとしてMRL/lprマウス(日本チャールス・リバー株式会社から購入)を用いた。MRL/lprマウスは、4~5ヶ月月齢で約80%以上に全身性に血管炎を発症する。これに加えて、血管炎のみならず、糸球体腎炎、関節炎、唾液腺炎などが同一個体に自然発症することも知られている(J. Jpn. Coll. Angiol., 2009, 49 11-16.)。
実験は下記のようにして行った。
グループ1:生理食塩水のみ投与(saline)
グループ2:化合物A 0.04mg/kg投与
グループ3:化合物A 0.2mg/kg投与
グループ4:化合物A 1mg/kg投与
9週齢のMRL/lprマウス(雌性)を上記の4グループに群分け(各群5個体)し、各グループの個体に対して所定の投与を開始(0w)した。投与は週5回、16週間、静脈注射により行った。
経時的(0w、4w、8w、12w及び16w)に血液を採取し、血中の抗dsDNA抗体価を測定した。抗dsDNA抗体は抗核抗体の一種であり、SLE患者血清中に高頻度・特異的に検出されることが知られている。
血中抗dsDNA抗体価は「レビス(商標) 抗dsDNA-マウス ELISA KIT」(AKRDO-061:富士フイルム社製)で測定した。具体的な手順は以下の通りである。
1)キット中の抗原固相化96ウェルプレートをキット添付の洗浄液で3回洗浄
2)希釈検体MRL又は標準抗マウスdsDNA抗体溶液を100μL/ウェル添加し、室温で2時間静置
3)洗浄液で3回プレートを洗浄後、標識抗体(ペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体)を100μL/ウェル添加し、室温で2時間静置
4)洗浄液でプレートを3回洗浄後、発色液(TMB溶液)を100μL/ウェル添加し、室温で20分静置し、発色
5)反応停止液(1M HSO)を100μL/ウェル添加して反応を停止し、OD450nmを測定
結果:
結果を図5に示す。
化合物Aを投与した場合(0.04mg/kg、0.2mg/kg、又は1mg/kg)、8w又はそれ以降、いずれの用量においても、化合物A無添加(図5のsaline)の対照と比して血中抗dsDNA抗体価が低下する傾向が認められた。16週目では、0.2mg/kg、又は1mg/kgの化合物Aを投与した場合、対照と比して有意(それぞれ、p<0.05)な抗dsDNA抗体価抑制効果が認められた(図5)。
【0156】
実施例7:自己免疫現象が生じる炎症性疾患モデルマウスを用いた血中抗dsDNA抗体の産生抑制効果(2)
材料と方法:
加齢と共に抗dsDNA抗体が出現し、糸球体腎炎を自然発症する疾患モデル(全身性エリテマトーデス(SLE)モデル、とも言われる)マウスとしてNZBWF1マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を用いた。下記に示す事項を除き、材料及び方法は前記実施例6と同じ材料及び方法によって本実施例は行われた。
実験は下記のようにして行った。
グループ1:生理食塩水のみ投与(saline)
グループ2:化合物A 0.2mg/kg投与
グループ3:化合物A 1mg/kg投与
20週齢のNZBWF1マウス(雌性)を上記の3グループに群分け(各群5個体)し、各グループの個体に対して所定の投与を開始(0w)した。投与は週5回、20週間、静脈注射により行った。
結果:
結果を図6に示す。
化合物Aを投与した場合(0.2mg/kg、又は1mg/kg)、12w又はそれ以降、いずれの用量においても、化合物A無添加(図6のsaline)の対照と比して血中抗dsDNA抗体価が低下する傾向が認められた。12週及び16週目では、1mg/kgの化合物Aを投与した場合、対照と比して有意(それぞれ、p<0.05)な抗dsDNA抗体価抑制効果が認められた(図6)。
実施例6及び実施例7で示された血中抗dsDNA抗体の産生抑制の結果から、化合物Aが、炎症性疾患、特には自己免疫疾患の予防・治療用途において、インビボでも優れた薬理作用を示すことが確認された。
【0157】
実施例8:自己免疫現象が生じる炎症性疾患モデルマウスを用いた尿タンパク質抑制効果
材料と方法:
本実施例は、実施例7と同時進行で、NZBWF1マウスを用いて行われた。下記に示す事項を除き、材料及び方法は前記実施例7と同じ材料及び方法によって本実施例は行われた。
実験は下記のようにして行った。
経時的(0w、4w、7w、12w、16w及び18w)に尿を採取し、血中のタンパク質含有量を尿タンパク質試験紙を用いて評価した。SLE患者はループス腎炎を発症しやすく、発症した患者の尿には健常者の尿よりタンパク質が高濃度で包含されることが知られている。
マウス尿タンパク質含有量のレベルは、尿タンパク質試験紙であるアルブスティック(エームス尿タンパク試験紙;シーメンスヘルスケア株式会社製)を用いて、下記を基準に数値化した。
マイナス:0
± :0.5
+ :1
2+ :2
3+ :3
結果:
結果を図7に示す。
化合物Aを投与した場合(0.2mg/kg、又は1mg/kg)、12w又はそれ以降、いずれの用量においても、化合物A無添加(図7のsaline)の対照と比して尿中タンパク質含有量が低下する傾向が認められた。12週(1mg/kg)及び18週目(0.2mg/kg、又は1mg/kg)では、化合物Aを投与した場合、対照と比して有意(それぞれ、p<0.05)な尿中タンパク質含有量抑制効果が認められた(図7)。
この結果から、化合物Aが、炎症性疾患、特には自己免疫疾患による腎炎の予防・治療用途において、インビボでも優れた薬理作用を示すことが確認された。
【0158】
実施例9:自己免疫現象が生じる炎症性疾患モデルマウスを用いた組織病変の抑制効果
材料と方法:
本実施例は、実施例6と同時進行で、MRL/lprマウスを用いて行われた。下記に示す事項を除き、材料及び方法は前記実施例6と同じ材料及び方法によって本実施例は行われた。
16週目の投与終了後、25週齢のマウスを解剖し、組織(涙腺、顎下腺、及び腎臓)を摘出した。O.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン株式会社)を用いて摘出組織を急速冷凍包埋した後、凍結組織をクライオスタット(LEICA CM 1920)にて薄切切片化し、これをスライドガラスに塗布した。スライドガラス上の切片を乾燥させた後、ヘマトキシリン・エオジン染色によって組織を染色し、顕微鏡観察を行った。ヘマトキシリン・エオジン染色の手順は次のとおりである。
1)エタノール・ホルマリン・酢酸固定液による固定、洗浄
2)Newヘマトキシリン液TypeG(武藤化学)を添加し、その後洗浄
3)Newエオシン液TypeA(武藤化学)を添加
4)80%エタノールを添加
5)キシレンを添加
6)マリノール(武藤化学)により封入、観察
結果:
結果を、図8A(涙腺)、図8B(顎下腺)及び図8C(腎臓)にそれぞれ示す。各図とも、左から順に、生理食塩水投与(化合物Aを投与しない)、0.04mg/kg化合物Aを投与、0.2mg/kg化合物Aを投与、及び1mg/kg化合物Aを投与の場合の組織染色切片の観察結果を示す。
化合物A投与マウス涙腺組織において、リンパ球浸潤範囲が対照群マウス(生理食塩水投与マウス)涙腺組織と比較して明らかに縮小されていた(図8A)。同様に顎下腺組織(図8B)および腎臓組織(図8C)においても対照群マウス組織と比較して、化合物A投与群組織におけるリンパ球浸潤範囲が縮小されていることが明らかとなった。
上記の結果のとおり、涙腺組織、顎下腺組織及び腎臓組織におけるリンパ球浸潤の縮小が観察されたことから、化合物Aが、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患で多く認められる組織の炎症性病変の予防、進展の抑制、及び/又は改善に有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の化合物A等の本発明の式(1)のピロロピリミジン化合物を有効成分として含有してなる、炎症性疾患の予防及び/又は治療剤は、シェーグレン症候群や全身性エリテマトーデスなどの炎症性疾患、自己免疫疾患の予防や治療に使用できるから、産業上利用可能性を有している。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C