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特許7268277粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230426BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20230426BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230426BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230426BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J11/08
C09J7/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019203417
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021075633
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕也
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224227(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190441(WO,A1)
【文献】特開2014-28906(JP,A)
【文献】特開2019-94476(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して2質量%以上9質量%以下の範囲で含み、かつ、前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、400以上1500以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以上50質量部以下の範囲である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】


式(1)及び式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、1万以上40万以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
架橋剤を更に含み、かつ、前記(メタ)アクリル系重合体(A)が、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記架橋性官能基が、水酸基である請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
剥離フィルムと、
前記剥離フィルム上に設けられ、かつ、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
【請求項7】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着シート、及び光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種ディスプレイ装置に用いられる粘着剤組成物に対しては、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、かつ、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層を形成できることが求められる。このような要求に対し、種々の粘着剤組成物が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上15000g/mol未満の範囲であるオルガノシロキサン骨格を有するモノマー、及び、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーをモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満の範囲である共重合体(B)0.1質量部~20質量部と、を含む粘着剤組成物が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上4600g/mol以下の範囲であるオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)、及び、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)をモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満の範囲である共重合体(B)0.1質量部~20質量部と、を含み、共重合体(B)が、モノマー(B1)を10質量%~20質量%、及び、モノマー(B2)を30質量%~50質量%含む共重合体である粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/163115号
【文献】特開2017-203164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学部材に用いられる粘着シートは、一般に、剥離処理剤で易剥離処理されたフィルム(所謂、剥離フィルム)の剥離処理面上に、粘着剤層が積層された態様で用いられる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤が多用されている。
しかし、粘着剤層がシリコーン成分を含む粘着シートでは、粘着剤層に含まれるシリコーン成分が剥離フィルムに移行することで、剥離フィルムに対する粘着剤層の粘着力が経時で上昇しやすい。特に、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルムの場合、シリコーン成分を含む粘着剤層と剥離フィルムとの間で相互作用が起こり、剥離フィルムに対する粘着剤層の経時での粘着力の上昇がより顕著になりやすい。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離されるものであるため、粘着剤層には、剥離フィルムに対する剥離性が良好であることのみならず、良好な剥離性が経時で損なわれ難いことが求められる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、剥離フィルムに対する良好な剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、上記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート及び光学部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)と、
オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して2質量%以上9質量%以下の範囲で含み、かつ、上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、400以上1500以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
を含み、
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以上50質量部以下の範囲である粘着剤組成物。
【0008】
<2> 上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体が、下記の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である<1>に記載の粘着剤組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式(1)及び式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、1価の有機基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
【0011】
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、1万以上40万以下の範囲である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 架橋剤を更に含み、かつ、上記(メタ)アクリル系重合体(A)が、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<5> 上記架橋性官能基が、水酸基である<4>に記載の粘着剤組成物。
【0012】
<6> 剥離フィルムと、
上記剥離フィルム上に設けられ、かつ、<1>~<5>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える粘着シート。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える光学部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、剥離フィルムに対する良好な剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物、並びに、上記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える粘着シート及び光学部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系重合体の全構成単位〕の50質量%以上である重合体を意味し、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0017】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0018】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0019】
本発明において、「加熱後」とは、例えば、50℃以上の温度を加えた後を意味する。なお、温度の上限としては、例えば、300℃が挙げられる。
【0020】
本明細書では、特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を「特定(メタ)アクリル系重合体」と総称する。
【0021】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)〔以下、「特定(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。〕と、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して2質量%以上9質量%以下の範囲で含み、かつ、上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、400以上1500以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体(B)」ともいう。〕と、を含み、上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以上50質量部以下の範囲である。
本発明の粘着剤組成物によれば、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、剥離フィルムに対する良好な剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0022】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体は、その構造に由来する極性の低さによって、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を、粘着剤層の接着面に偏在させる傾向がある。「粘着剤層の接着面」としては、例えば、粘着剤層と剥離フィルムとの界面、及び、粘着剤層と被着体との界面が挙げられる。本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率及びオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、いずれも比較的低いため、形成される粘着剤層では、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が粘着剤層の接着面に偏在するものの、過度には偏在しないと考えられる。また、本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が比較的低いため、形成される粘着剤層では、粘着剤層の接着面に偏在するオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位部分が、粘着剤層の接着面の全体に適度に分散して存在すると考えられる。このように分散することで、例えば、剥離フィルムと粘着剤層との間で起こり得る既述の相互作用をより抑制できる。さらに、本発明の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が比較的多いため、形成される粘着剤層では、粘着剤層の接着面に占める特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の偏在部分の割合は比較的多くなると考えられる。
以上のように、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が粘着剤層の接着面に適度に偏在するため、被着体に対しては、貼り合わせ初期に軽剥離性を示し、剥離フィルムに対しては、良好な剥離性が経時で損なわれ難いと推測される。
【0023】
その一方で、本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度(Tg)が低い特定(メタ)アクリル系重合体(A)を含むため、形成される粘着剤層は、被着体に対して適度な濡れ性を示すと考えられる。このため、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、被着体に対して、加熱後は高い粘着力を示すと推測される。
【0024】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献1(国際公開第2015/163115号)に記載の粘着剤組成物、及び、特許文献2(特開2017-203164号公報)に記載の粘着剤組成物は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して10質量%以上含む共重合体(B)を含み、かつ、共重合体(B)の含有量が、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のポリマー(A)100質量部に対して、0.1質量部~20質量部である。特許文献1に記載の粘着剤組成物及び特許文献2に記載の粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成すると、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を多く含む共重合体(B)が粘着剤層の接着面に偏在するが、粘着剤層中の共重合体(B)の含有量が比較的少ないため、粘着剤層の接着面に占める共重合体(B)の偏在部分の割合は、比較的少なくなる。このため、特許文献1に記載の粘着剤組成物及び特許文献2に記載の粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層は、剥離フィルムに対して良好な剥離性を示さない(例えば、後述の比較例7参照)。
【0025】
〔特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕
本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体(A)〕を含む。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、1種の単量体を重合して得られる単独重合体であってもよく、2種以上の単量体を重合して得られる共重合体であってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、ガラス転移温度(Tg)を所望の値に調整しやすいという観点から、共重合体であることが好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)に含まれる構成単位は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、以下に示す構成単位を含むことが好ましい。
【0026】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
【0027】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、含まれない。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1~18の範囲であることが好ましく、1~12の範囲であることがより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である(メタ)アクリル系重合体を製造しやすいという観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA)、メチルアクリレート(MA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(即ち、割合)は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上100質量%以下の範囲であることが更に好ましく、70質量%以上100質量%以下の範囲であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下の範囲であることが更に好ましく、80質量%以上95質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0032】
<架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
本明細書において、「架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位」とは、架橋性官能基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、後述の架橋剤を含み、かつ、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本発明の粘着剤組成物が架橋剤を含み、かつ、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、粘着剤層の凝集力が適度に高くなり、被着体に対する粘着剤層の、貼り合わせ初期の粘着力がより適度に低くなる傾向がある。
ところで、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体を含む粘着剤層と、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルムと、を積層すると、粘着剤層と剥離フィルムとの間で相互作用が起こり、剥離フィルムに対する粘着剤層の粘着力が経時で顕著に上昇し、粘着剤層からの剥離フィルムの剥離性が損なわれる場合がある。これに対し、本発明の粘着剤組成物が架橋剤を含み、かつ、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含むと、上記相互作用による粘着剤層の剥離フィルムに対する粘着力の経時での上昇が抑制され、剥離フィルムに対する粘着剤層の良好な剥離性がより損なわれ難くなる傾向がある。
【0034】
架橋性官能基は、特に制限されない。
架橋性官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。ここで、アミノ基は、一級アミノ基又は二級アミノ基を指す。
架橋性官能基としては、水酸基又はカルボキシ基が好ましい。
架橋性官能基が水酸基であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力がより適度に高くなる傾向がある。
ところで、架橋性官能基がカルボキシ基であると、粘着剤層を被着体から剥離する際にジッピング(所謂、滑らかに剥離せずに微小な振動が生じる現象)が起こる場合がある。
このような観点からも、架橋性官能基としては、水酸基がより好ましい。
【0035】
水酸基を有する単量体の種類としては、特に制限はない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、既述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との共重合性が良好である点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、既述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との相溶性が良好である点、及び、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)を含む場合に架橋剤との反応性が良好である点から、炭素数が1~5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0036】
カルボキシ基を有する単量体の種類としては、特に制限はない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート)、コハク酸エステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、架橋剤(特に、イソシアネート系架橋剤)を含む場合に架橋剤との反応性が良好であるという観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0037】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体(A)における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、5質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下の範囲であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)における架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の全構成単位に対して、上記範囲内であると、粘着剤層の凝集力が適度に高くなり、被着体に対する粘着剤層の、貼り合わせ初期の粘着力がより適度に低くなる傾向がある。また、剥離フィルムに対する粘着剤層の粘着力の経時での上昇が抑制され、剥離フィルムに対する粘着剤層の良好な剥離性がより損なわれ難くなる傾向がある。
【0039】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の任意の構成単位、即ち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0040】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0041】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃未満であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下であることがより好ましく、-30℃以下であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃未満であると、形成される粘着剤層は、被着体に対する濡れ性が適度となり、加熱後の粘着力が高くなる傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の下限は、特に制限されず、例えば、被着体に対する粘着力の観点から、-70℃以上であることが好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-70℃以上0℃未満の範囲であってもよく、-70℃以上-10℃以下の範囲であってもよく、-70℃以上-20℃以下の範囲であってもよく、-70℃以上-30℃以下の範囲であってもよい。
【0042】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0043】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度(Tg)をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0044】
本明細書において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度(Tg)」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度(Tg)をいう。
単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度(Tg)としたものである。
【0045】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度(Tg)」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、アクリル酸(AA)が163℃、イソオクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0046】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0047】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されず、例えば、40万以上200万以下の範囲であることが好ましく、50万以上200万以下の範囲であることがより好ましく、50万以上150万以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が40万以上であると、貼り合わせ初期における被着体に対する粘着剤層の軽剥離性がより損なわれ難い傾向がある。
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が200万以下であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力がより高くなる傾向がある。
【0048】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0049】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0050】
特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0051】
<<特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率は、特に制限されず、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、67質量%以上83質量%以下の範囲であることが好ましく、69質量%以上80質量%以下の範囲であることがより好ましく、71質量%以上80質量%以下の範囲であることが更に好ましく、74質量%以上80質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して67質量%以上であると、粘着剤層が被着体に貼り付いた状態を十分に保持できる高さの粘着力を発現する傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体(A)の含有率が、粘着剤組成物中の全固形分量に対して83質量%以下であると、貼り合わせ初期における被着体に対する粘着剤層の軽剥離性がより損なわれ難い傾向がある。
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
【0052】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して2質量%以上9質量%以下の範囲で含み、かつ、上記オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、400以上1500以下の範囲である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕を含む。
また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以上50質量部以下の範囲である。
【0053】
<オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を含む。
本明細書において、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位」とは、オルガノシロキサン骨格を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0054】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、400以上1500以下の範囲であり、500以上1200以下の範囲であることが好ましく、700以上1100以下の範囲であることがより好ましい。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、例えば、入手容易性の観点から、400以上である。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が1500以下であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力が高くなる傾向がある。
【0055】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量(Mn)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)及び(2)に従って測定する。
(1)オルガノシロキサン骨格を有する単量体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占めるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の質量割合を意味する。
(2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量(Mn)を測定する。
【0056】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0057】
なお、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、数平均分子量が異なる2種以上のオルガノシロキサン骨格を有する単量体を含む場合、その数平均分子量は、算術平均した値を意味する。
本明細書において、(メタ)アクリル系共重合体が、数平均分子量が異なる2種以上のオルガノシロキサン骨格を有する単量体を含む場合の、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量」は、下記の式により計算する。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量 = 〔単量体1の数平均分子量×単量体1の配合量+単量体2の数平均分子量×単量体2の配合量+・・・+単量体nの数平均分子量×単量体nの配合量〕/〔単量体1の配合量+単量体2の配合量+・・・+単量体nの配合量〕
【0058】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体としては、オルガノシロキサン骨格を有し、かつ、数平均分子量が400以上1500以下の範囲である単量体であれば、その種類は特に制限されない。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の具体例としては、下記の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0059】
【化2】

【0060】
式(1)及び式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
式(1)及び式(2)中、Rは、1価の有機基を表す。
で表される1価の有機基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよい。1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
がアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
がアルケニル基を表す場合のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-プロペニル基等が挙げられ、ビニル基が好ましい。
がアルキニル基を表す場合のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、プロパ-2-イン-1-イル基等が挙げられ、エチニル基が好ましい。
がアリール基を表す場合のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ピリジル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
m及びnは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。mは、1~10の整数であることが好ましく、1~6の整数であることがより好ましい。nは、1~250の整数であることが好ましく、5~200の整数であることがより好ましい。
【0061】
オルガノシロキサン骨格を有する単量体としては、市販品を使用できる。
オルガノシロキサン骨格を有する単量体の市販品の例としては、X-22-2404〔商品名、数平均分子量:420、信越化学工業(株)〕、サイラプレーンTM-0701T〔商品名、数平均分子量:423、JNC(株)〕、X-22-174ASX〔商品名、数平均分子量:1100、信越化学工業(株)〕、サイラプレーンFM-711〔商品名、数平均分子量:1200、JNC(株)〕等が挙げられる。
以上の市販品は、いずれも式(2)で表される化合物に該当する。
【0062】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0063】
なお、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、数平均分子量が2000以上のオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが好ましい。
【0064】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、2質量%以上9質量%以下の範囲であり、3質量%以上9質量%以下の範囲であることが好ましく、3質量%以上8質量%以下の範囲であることがより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して2質量%以上であると、貼り合わせ初期における被着体に対する粘着剤層の軽剥離性が損なわれ難い傾向がある。また、剥離フィルムに対する粘着剤層の剥離性が良好となり、かつ、良好な剥離性が経時で損なわれ難い傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して9質量%以下であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力が高くなる傾向がある。
【0065】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
【0066】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、粘着力の観点から、1~18の範囲であることが好ましく、1~12の範囲であることがより好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、既述のとおりであるため、ここでは、説明を省略する。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体(A)との相溶性の観点から、メチルメタクリレート(MMA)、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、エチルアクリレート(EA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0068】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上であることが好ましく、50質量%以上98質量%以下の範囲であることがより好ましく、60質量%以上97質量%以下の範囲であることが更に好ましく、70質量%以上97質量%以下の範囲であることが更に好ましく、75質量%以上97質量%以下の範囲であることが更に好ましく、80質量%以上97質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0070】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、本発明の効果が発揮される範囲内において、既述の構成単位、即ち、必須の構成単位であるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位、及び、任意の構成単位である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0071】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
また、その他の構成単位を構成する単量体の具体例としては、架橋性官能基を有する単量体も挙げられる。架橋性官能基の具体例は、既述のとおりであるため、ここでは、説明を省略する。但し、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、例えば、界面への偏在の観点から、架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが好ましい。
【0072】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず、例えば、40℃以上65℃以下の範囲であることが好ましく、40℃以上60℃以下の範囲であることがより好ましく、40℃以上55℃以下の範囲であることが更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内であると、被着体に対する粘着剤層の初期及び加熱後の粘着力がより適度となる傾向がある。また、常温で粘着剤層が硬くなり過ぎず、被着体に対してより適度な濡れ性を示す傾向がある。
【0073】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算される値である。
【0074】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0075】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されず、例えば、0.5万以上50万以下の範囲であることが好ましく、0.8万以上45万以下の範囲であることがより好ましく、1万以上40万以下の範囲であることが更に好ましく、1.2万以上35万以下の範囲であることが更に好ましく、1.5万以上30万以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が0.5万以上であると、貼り合わせ初期における被着体に対する粘着剤層の軽剥離性がより損なわれ難い傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が50万以下であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力がより高くなる傾向がある。
【0076】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定される値である。
【0077】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0078】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、21質量部以上50質量部以下の範囲であり、25質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましく、25質量部以上45質量部以下の範囲であることがより好ましく、25質量部以上40質量部以下の範囲であることが更に好ましく、25質量部以上35質量部以下の範囲であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して21質量部以上であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力が高くなる傾向がある。また、剥離フィルムに対する粘着剤層の剥離性が良好となり、かつ、良好な剥離性が経時で損なわれ難い傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して50質量部以下であると、粘着剤層が被着体に貼り付いた状態を十分に保持できる高さの粘着力を発現し得る。
【0079】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕の製造方法は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合して製造できる。
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0080】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0081】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0082】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等の使用が好ましい。
【0083】
重合反応時には、有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0084】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0085】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0086】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0087】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0088】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0089】
重合温度は、特に制限されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0090】
〔架橋剤〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。
架橋剤の種類は、特に制限されない。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。また、架橋剤としては、金属キレート系架橋剤を用いることもできる。
【0091】
本明細書において、「イソシアネート系架橋剤」とは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する化合物(所謂、ポリイソシアネート化合物)を指す。また、「エポキシ系架橋剤」とは、分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物(所謂、2官能以上のエポキシ化合物)を指す。また、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物(以下、単に「金属キレート化合物」ともいう。)を指す。
【0092】
ポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物の2量体、3量体、又は5量体、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記ポリイソシアネート化合物のビウレット体なども挙げられる。
【0093】
イソシアネート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
イソシアネート系架橋剤の市販品の例としては、「コロネート(登録商標) HX」、「コロネート(登録商標) HL-S」、「コロネート(登録商標) L」、「コロネート(登録商標) L-45E」、「コロネート(登録商標) 2031」、「コロネート(登録商標) 2030」、「コロネート(登録商標) 2234」、「コロネート(登録商標) 2785」、「アクアネート(登録商標) 200」、及び「アクアネート(登録商標) 210」〔以上、東ソー(株)〕、「スミジュール(登録商標) N3300」、「デスモジュール(登録商標) N3400」、及び「スミジュール(登録商標) N-75」〔以上、住化コベストロウレタン(株)〕、「デュラネート(登録商標) E-405-80T」、「デュラネート(登録商標) AE700-100」、「デュラネート(登録商標) 24A-100」、及び「デュラネート(登録商標) TSE-100」〔以上、旭化成(株)〕、並びに、「タケネート(登録商標) D-110N」、「タケネート(登録商標) D-120N」、「タケネート(登録商標) M-631N」、「MT-オレスター(登録商標) NP1200」、及び「スタビオ(登録商標) XD-340N」〔以上、三井化学(株)〕が挙げられる。
【0094】
2官能以上のエポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)等が挙げられる。
【0095】
エポキシ系架橋剤としては、市販品を使用できる。
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」及び「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)〕が挙げられる。
【0096】
金属キレート化合物としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
【0097】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、「アルミキレートA」、「アルミキレートD」、及び「ALCH-TR」〔以上、川研ファインケミカル(株)〕が挙げられる。
【0098】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含む場合、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に制限されず、例えば、架橋剤の種類に応じて、適宜設定できる。
例えば、本発明の粘着剤組成物が架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含む場合、粘着剤組成物におけるイソシアネート系架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下の範囲であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
【0100】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、例えば、塗布性向上の観点から、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0101】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0102】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0103】
〔他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、粘着付与剤、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、剥離調整剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0104】
本発明の粘着剤組成物がこれらの他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲内において、適宜設定できる。
【0105】
<架橋後のゲル分率>
本発明の粘着剤組成物が架橋剤を含み、かつ、特定(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋性官能基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、粘着剤組成物の架橋後のゲル分率(所謂、粘着剤層のゲル分率)は、40質量%以上であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下の範囲であることがより好ましく、40質量%以上85質量%以下の範囲であることが更に好ましい。
粘着剤組成物の架橋後のゲル分率が40質量%以上であると、被着体に対する粘着剤層の加熱後の粘着力がより高くなる傾向がある。
【0106】
本明細書において、「粘着剤組成物の架橋後のゲル分率」は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される溶媒不溶分の割合である。粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、具体的には、下記(1)~(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、架橋後の粘着剤組成物(即ち、粘着剤層)を約0.15g貼付し、ゲル分が漏れないように、貼付した粘着剤層を内側にして、金網を5回折り畳み、試料とする。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mLに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(単位:質量%)=(Z-X)/(Y-X)×100
但し、Xは金網の質量(単位:g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(単位:g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(単位:g)である。
【0107】
<用途>
本発明の粘着剤組成物の用途は、特に制限されない。
本発明の粘着剤組成物は、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示す粘着剤層であって、剥離フィルムに対する良好な剥離性が経時で損なわれ難い粘着剤層を形成できるため、例えば、ディスプレイと光学部材とを貼り合わせる用途に好適である。
【0108】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、剥離フィルムと、上記剥離フィルム上に設けられ、かつ、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。
本発明の粘着シートは、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示す。特に、本発明の粘着シートは、被着体に対して、貼り合わせ初期に軽剥離性を示す粘着剤層を備えるため、例えば、厚さが10μm程度の薄い被着体に貼り付けた場合であっても、問題なく剥離できるという利点を有する。
また、本発明の粘着シートは、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、粘着シートの製造後、粘着剤層から剥離フィルムを剥離するまで時間を要した場合でも、粘着剤層から剥離フィルムを良好に剥離できる。
【0109】
本発明の粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の少なくとも片面に粘着剤層を備える有基材タイプの粘着シートでもよい。
本発明の粘着シートが無基材タイプの粘着シートである場合、露出した粘着剤層の少なくとも一方の面が剥離フィルムによって保護されている態様となる。
本発明の粘着シートが有基材タイプの粘着シートである場合、露出した粘着剤層が剥離フィルムによって保護されている態様となる。
【0110】
剥離フィルムとしては、特に制限されず、例えば、少なくとも片面に剥離処理剤による易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤(例えば、シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例えば、パラフィンワックス)、フッ素系剥離処理剤(例えば、フッ素系樹脂)等が挙げられる。
剥離フィルムの厚さは、特に制限されず、一般には、20μm以上150μm以下の範囲である。
【0111】
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0112】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、一般には1μm以上100μm以下の範囲であり、5μm以上50μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上30μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0113】
本発明の粘着シートが基材を備える場合、基材は、特に制限されない。
基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。
【0114】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0115】
基材の厚さは、特に制限されず、目的に応じて、適宜設定できる。
基材の厚さは、一般には500μm以下であり、30μm以上300μm以下の範囲であることが好ましく、50μm以上200μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0116】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートの製造方法は、特に制限されない。
本発明の粘着シートは、例えば、以下の方法により製造できる。
無基材タイプの粘着シートの場合、まず、剥離フィルムの面上に、本発明の粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥する。乾燥後の塗布膜の、剥離フィルムと接しない露出した面に、別の剥離フィルムの面が接するように重ねた後、養生することにより、剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、無基材タイプの粘着シートを製造できる。
【0117】
有基材タイプの粘着シートの場合、まず、基材の面上に、本発明の粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥する。乾燥後の塗布膜の、基材と接しない露出した面に、剥離フィルムの面が接するように重ねた後、養生することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを製造できる。
【0118】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
剥離フィルムの面上に、本発明の粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させて、粘着剤付きフィルムを作製する。次いで、基材を粘着剤付きフィルムの粘着面に貼り合わせ、養生することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、有基材タイプの粘着シートを製造できる。
【0119】
基材又は剥離フィルムの面上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材又は剥離フィルムの面上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚みに応じて、適宜設定できる。
【0120】
基材又は剥離フィルムの面上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
基材又は剥離フィルムの面上に形成した塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定できる。
【0121】
養生は、例えば、20℃~35℃の環境下で、4日間~7日間行う。
粘着剤組成物が架橋剤を含む態様では、養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0122】
[光学部材]
本発明の光学部材は、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
光学部材としては、特に制限はなく、例えば、画像表示装置、入力装置等の機器(所謂、光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられる。
光学部材の具体例としては、偏光板、AG(Anti-Glare)偏光板、波長板、1/2、1/4等の波長板を含む位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ITO(Indium-Tin Oxide)フィルム等の透明導電フィルム、プリズムシート、レンズシート、拡散板などが挙げられる。
光学部材の材質としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【実施例
【0123】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0124】
[(メタ)アクリル系重合体Aの製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル(重合用有機溶媒)116.0質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、n-ブチルアクリレート(n-BA)70.0質量部、メチルアクリレート(MA)25.0質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)5.0質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物のうちの20質量%を反応装置に仕込み、加熱して、還流温度で10分間還流を行った。次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残りの80質量%と、酢酸エチル(重合用有機溶媒)50.0質量部と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて逐次滴下し、滴下終了後に30分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、酢酸エチルを用いて固形分濃度が32質量%となるように希釈し、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0125】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める、(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。以下の(メタ)アクリル系重合体A-2~A-8の各溶液についても同様である。
【0126】
〔製造例A-2~A-8〕
製造例A-2~A-8では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を、表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が32質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2~A-8の各溶液を得た。
【0127】
上記にて得られた(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8は、いずれも本発明における特定(メタ)アクリル系重合体(A)に相当する。
【0128】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8のガラス転移温度(Tg、単位:℃)、及び(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-8の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「n-BA」:n-ブチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「MA」:メチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート(架橋性官能基を有する単量体、架橋性官能基:水酸基)
「AA」:アクリル酸(架橋性官能基を有する単量体、架橋性官能基:カルボキシ基)
【0131】
表1中、「-」は、該当する欄の単量体を使用していないことを意味する。
表1では、「ガラス転移温度(Tg)」を単に「Tg」と表記し、「重量平均分子量(Mw)」を単に「Mw」と表記した。
【0132】
[(メタ)アクリル系共重合体Bの製造]
〔製造例B-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、酢酸エチル(重合用有機溶媒)60質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に、メチルメタクリレート(MMA)45.0質量部、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)25.0質量部、2-エチルへキシルメタクリレート(2-EHMA)25.0質量部、オルガノシロキサン骨格を有する単量体〔商品名:X-22-174ASX、数平均分子量:1100、信越化学工業(株)〕5.0質量部、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル〔重合開始剤〕1.7質量部、及び酢酸エチル(重合用有機溶媒)40.0質量部を入れて混合した溶液を準備した。この準備した溶液を、還流温度条件下で、180分間かけて逐次滴下し、滴下終了後に180分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、酢酸エチルを用いて固形分が48質量%になるように希釈し、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液を得た。
【0133】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液に占める、(メタ)アクリル系共重合体B-1の質量割合を意味する。以下の(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-17の各溶液についても同様である。
【0134】
〔製造例B-2、B-3、B-6~B-11、及びB-14~B-17〕
製造例B-2、B-3、B-6~B-11、及びB-14~B-17では、(メタ)アクリル系共重合体の単量体組成を、表2に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が48質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-2、B-3、B-6~B-11、及びB-14~B-17の各溶液を得た。
【0135】
〔製造例B-4、B-5、B-12、及びB-13〕
製造例B-4、B-5、B-12、及びB-13では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に変更したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が48質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-4、B-5、B-12、及びB-13の各溶液を得た。
【0136】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17のうち、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-9、B-12、及びB-13は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)に相当する。
【0137】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17の単量体組成(単位:質量%)、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量、及び(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量の計算方法と同様の方法により計算した。
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-17の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
【0138】
【表2】
【0139】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「MMA」:メチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「2EHMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「EA」:エチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
【0140】
「X-22-174ASX」〔商品名、数平均分子量:1100、信越化学工業(株)〕:オルガノシロキサン骨格を有する単量体、式(2)で表される化合物
「X-22-2404」〔商品名、数平均分子量:420、信越化学工業(株)〕:オルガノシロキサン骨格を有する単量体、式(2)で表される化合物
「X-22-174DX」〔商品名、数平均分子量:5400、信越化学工業(株)〕:オルガノシロキサン骨格を有する単量体、式(2)で表される化合物
「FM-0711」〔商品名:サイラプレーンFM-0711、数平均分子量:1200、JNC(株)〕:オルガノシロキサン骨格を有する単量体、式(2)で表される化合物
【0141】
表2中、「-」は、該当する欄の単量体を使用していないことを意味する。
表2では、「オルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量」を単に「Mn」と表記した。また、表2では、「重量平均分子量(Mw)」を単に「Mw」と表記した。
【0142】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液100質量部(固形分換算値)と、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液40質量部(固形分換算値)と、架橋剤〔商品名:タケネート(登録商標) D-110N、イソシアネート系架橋剤、固形分:75質量%、三井化学(株)〕0.5質量部(固形分換算値)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0143】
〔実施例2~20〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~20の各粘着剤組成物を得た。
【0144】
〔比較例1~9〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~9の各粘着剤組成物を得た。
【0145】
[測定及び評価]
1.被着体に対する粘着力
(評価用粘着シートの作製)
上記にて調製した粘着剤組成物を、易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム、型番:G2P2、厚み:50μm、帝人フィルムソリューション(株)〕の易接着処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、1分間の乾燥条件で乾燥させ、PETフィルム上に粘着膜を形成した。
次いで、粘着膜が露出した面を、別途準備したシリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株)〕の剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置して架橋反応を進行させ、評価用粘着シートを得た。
なお、架橋剤を含まない実施例10の粘着剤組成物についても、同様の手順で粘着シートを作製した。但し、実施例10の粘着剤組成物では、架橋反応は進行しなかった。
作製した評価用粘着シートは、PETフィルム/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有している。
【0146】
(1)初期の粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。
準備した評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ステンレス板〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック〕(以下、適宜「SUS」と称する。)の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、試験片X-1を作製した。
【0147】
試験片X-1を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。
静置後の試験片X-1について、SUSから評価用粘着シート片を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイのシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、被着体に対する初期の粘着力を評価した。
なお、ジッピングが生じた場合には、測定された粘着力の最大値を採用した。
結果を表3及び表4に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0148】
-評価基準-
A:粘着力が0.01N/25mm以上0.2N/25mm未満である。
B:粘着力が0.2N/25mm以上1N/25mm未満である。
C:粘着力が1N/25mm以上である。
【0149】
(2)加熱後の粘着力
上記にて作製した評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。
準備した評価用粘着シート片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、ステンレス板〔商品名:SUS304(BA)、(株)パルテック〕(以下、適宜「SUS」と称する。)の面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを2往復させて圧着し、試験片X-2を作製した。
【0150】
試験片X-2を、50℃の温度に設定した乾燥機内に20分間静置した後、乾燥機内から取り出し、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に30分間静置した。
静置後の試験片X-2について、SUSから評価用粘着シート片を長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として(株)エー・アンド・デイのシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、被着体に対する加熱後の粘着力を評価した。
結果を表3及び表4に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
なお、比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、初期の粘着力の評価試験において、被着体であるSUSからの剥がれが確認されたため、加熱後の粘着力の評価試験を行わなかった。
【0151】
-評価基準-
A:粘着力が10N/25mm以上である。
B:粘着力が5N/25mm以上10N/25mm未満である。
C:粘着力が5N/25mm未満である。
【0152】
2.剥離フィルムに対する粘着力
(評価用粘着シートの作製)
上記にて調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株)〕の剥離処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、塗布膜を形成した。次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃、1分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成し、剥離フィルム/粘着膜の積層構造を有する積層体を得た。
次いで、得られた積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に4日間静置して架橋反応を進行させ、評価用粘着シートを得た。
なお、架橋剤を含まない実施例10の粘着剤組成物についても、同様の手順で粘着シートを作製した。但し、実施例10の粘着剤組成物では、架橋反応は進行しなかった。
作製した評価用粘着シートは、剥離フィルム/粘着剤層の積層構造を有している。
【0153】
(1)初期の粘着力
初期の粘着力の評価試験には、作製直後の評価用粘着シートを用いた。ここで、「作製直後の評価用粘着シート」とは、作製が終了してからの経過時間が24時間以内である評価用粘着シートを意味する。
評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。
準備した評価用粘着シート片の剥離フィルムの面を、両面テープを用いて、ガラス板〔商品名:FLOAT GLASS、TAIWAN GLASS IND.CORP.〕(以下、適宜「ガラス」と称する。)に貼り付け、試験片Y-1を作製した。
【0154】
試験片Y-1について、粘着剤層から剥離フィルムを長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置としてテスター産業(株)の高速剥離試験機(型番:TE-702)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度10m/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、剥離フィルムに対する初期の粘着力を評価した。
結果を表3及び表4に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0155】
-評価基準-
A:粘着力が0.05N/25mm以下である。
B:粘着力が0.05N/25mmを超えて0.1N/25mm未満である。
C:粘着力が0.1N/25mm以上である。
【0156】
(2)経時後の粘着力
経時後の粘着力の評価試験には、作製が終了してから2ヶ月経過後の評価用粘着シートを用いた。
評価用粘着シートを25mm×150mmの大きさに切断し、評価用粘着シート片を準備した。
準備した評価用粘着シート片の剥離フィルムの面を、両面テープを用いて、ガラス板〔商品名:FLOAT GLASS、TAIWAN GLASS IND.CORP.〕(以下、適宜「ガラス」と称する。)に貼り付け、試験片Y-2を作製した。
【0157】
試験片Y-2について、粘着剤層から剥離フィルムを長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置としてテスター産業(株)の高速剥離試験機(型番:TE-702)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度10m/分の条件で測定した。そして、上記「2.剥離フィルムに対する粘着力」の「(1)初期の粘着力」における「評価基準」と同じ評価基準に従って、剥離フィルムに対する経時後の粘着力を評価した。
結果を表3及び表4に示す。
評価結果が「A」又は「B」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
表3中、「粘着剤組成物の組成」の欄における「-」は、該当する成分を配合していないことを意味する。
表3における「zip」とは、ジッピングが生じたことを意味する。
表4中、「測定及び評価」の欄における「-」は、該当する測定及び評価を行っていないことを意味する。
表4における「剥がれ」とは、粘着力を測定する時点で、粘着剤層が被着体であるSUSから剥がれていたことを意味する。
【0161】
表3に示すように、実施例1~20の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも被着体に対して、貼り合わせ初期には軽剥離性を示し、加熱後は高い粘着力を示すことが確認された。また、実施例1~20の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、いずれも剥離フィルムに対する良好な剥離性が経時で損なわれ難いことが確認された。
【0162】
一方、表4に示すように、(メタ)アクリル系共重合体Bが、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して9質量%超えて含み、(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、1500を超える比較例1及び比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、加熱後に高い粘着力を示さないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量は、400以上1500以下の範囲であるが、(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して9質量%超である比較例2及び比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層も同様に、被着体に対して、加熱後に高い粘着力を示さないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して2質量%未満である比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対する貼り合わせ初期の粘着力が高く、被着体に対して、軽剥離性を示さないことが確認された。また、比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、剥離フィルムに対する剥離性が良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bの含有量が、(メタ)アクリル系重合体A 100質量部に対して21質量部未満である比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、加熱後に高い粘着力を示さないことが確認された。また、比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、剥離フィルムに対する剥離性が良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bの含有量が、(メタ)アクリル系重合体A 100質量部に対して50質量部を超える比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対する粘着力が非常に低く、被着体から剥がれ易いことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bが、オルガノシロキサン骨格を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して9質量%超えて含み、(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、1500を超え、(メタ)アクリル系共重合体Bの含有量が、(メタ)アクリル系重合体A 100質量部に対して21質量部未満である比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、加熱後に高い粘着力を示さないことが確認された。また、比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、剥離フィルムに対する剥離性が良好ではないことが確認された。
(メタ)アクリル系共重合体Bにおけるオルガノシロキサン骨格を有する単量体の数平均分子量が、1500を超える比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して、加熱後に高い粘着力を示さないことが確認された。