(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】カップ取付装置
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20230426BHJP
B24B 9/14 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G02C13/00
B24B9/14 B
(21)【出願番号】P 2018164813
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】松井 孝哲
(72)【発明者】
【氏名】柴田 良二
(72)【発明者】
【氏名】夏目 勝弘
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-275998(JP,A)
【文献】実開昭60-172650(JP,U)
【文献】特開2013-212573(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103492123(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0368813(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズに加工治具であるカップを取り付けるカップ取付装置において、
前記眼鏡レンズの前面と、前記カップの取付面と、を平行に保つことで、前記カップを取り付ける基準面を前記眼鏡レンズの前面とし、前記眼鏡レンズを支持する第1レンズ支持手段と、
前記眼鏡レンズの後面と、前記カップの取付面と、を平行に保つことで、前記カップを取り付ける基準面を前記眼鏡レンズの後面とし、前記眼鏡レンズを支持する第2レンズ支持手段と、
前記カップ取付装置において、前記第1レンズ支持手段と前記第2レンズ支持手段とを切り換える切換手段と、
前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるカップ取付手段と、
を備えることを特徴とするカップ取付装置。
【請求項2】
請求項1のカップ取付装置において、
前記切換手段は、前記第1レンズ支持手段及び前記第2レンズ支持手段をカップ取付装置に装着可能とする第1着脱手段を有し、前記第1着脱手段を用いて前記第1レンズ支持手段または前記第2レンズ支持手段のいずれか一方を取り付けることによって、前記第1レンズ支持手段と前記第2レンズ支持手段とを切り換えることを特徴とするカップ取付装置。
【請求項3】
請求項1または2のカップ取付装置において、
前記第1レンズ支持手段は、前記カップの取付面に対して
傾斜自在な第1支持ピンを有し、
前記第1支持ピンに載置された前記眼鏡レンズの前面と、前記カップの取付面とを平行に保つことで、前記眼鏡レンズの前面を前記基準面とすることを特徴とするカップ取付装置。
【請求項4】
請求項3のカップ取付装置において、
前記第1レンズ支持手段は、さらに、前記眼鏡レンズの前面を押さえるレンズ押さえ手段を有し、
前記第1支持ピンに載置されるとともに前記レンズ押さえ手段に押さえられた前記眼鏡レンズの前面と、前記レンズ押さえ手段と、の当接面を平行に保つことで、前記眼鏡レンズの前面と前記カップの取付面とを平行に保ち、前記眼鏡レンズの前面を前記基準面とすることを特徴とするカップ取付装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかのカップ取付装置において、
前記第2レンズ支持手段は、前記眼鏡レンズを載置する固定配置された第2支持ピンを有し、
前記第2支持ピンと、前記第2支持ピンに載置された前記眼鏡レンズの後面と、の当接面を平行に保つことで、前記眼鏡レンズの後面と前記カップの取付面とを平行に保ち、前記眼鏡レンズの後面を前記基準面とすることを特徴とするカップ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの周縁を加工する際に用いる加工治具であるカップを、未加工の眼鏡レンズに対して取り付けるカップ取付装置が知られている。例えば、特許文献1では、眼鏡レンズを支持ピンで支持し、眼鏡レンズの適切な位置にカップを取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のカップ取付装置において、眼鏡レンズの前面と後面の曲率の差が大きな眼鏡レンズを支持ピンに載置するとき、眼鏡レンズの中心位置をずらして偏心させた状態で支持ピンに載置するとき、等には、眼鏡レンズの支持が不安定になり、精度よくカップを取り付けられない場合があった。これに対して、支持ピンを自在に回転させることで眼鏡レンズの支持を安定にし、カップを取り付けることも考えられるが、眼鏡レンズを支持ピンに容易に載置できなくなり、また、カップ取付装置が複雑な構成になる。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡レンズにカップを適切に取り付けることができるカップ取付装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 本開示の第1態様に係るカップ取付装置は、眼鏡レンズに加工治具であるカップを取り付けるカップ取付装置において、前記眼鏡レンズの前面と、前記カップの取付面と、を平行に保つことで、前記カップを取り付ける基準面を前記眼鏡レンズの前面とし、前記眼鏡レンズを支持する第1レンズ支持手段と、前記眼鏡レンズの後面と、前記カップの取付面と、を平行に保つことで、前記カップを取り付ける基準面を前記眼鏡レンズの後面とし、前記眼鏡レンズを支持する第2レンズ支持手段と、前記カップ取付装置において、前記第1レンズ支持手段と前記第2レンズ支持手段とを切り換える切換手段と、前記眼鏡レンズに前記カップを取り付けるカップ取付手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】曲率の差が大きなハイカーブレンズを各レンズ支持部に載置した状態を示す図である。
【
図7】曲率の差が小さなレンズを各レンズ支持部に載置した状態を示す図である。
【
図10】レンズ押さえ機構が取り外された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示の実施形態に係るカップ取付装置の概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0010】
<レンズ支持手段>
例えば、本実施例におけるカップ取付装置(例えば、カップ取付装置1)は、レンズ支持手段(例えば、レンズ支持機構10)を備える。レンズ支持手段は、眼鏡レンズを載置して眼鏡レンズを支持する。レンズ支持手段は、第1レンズ支持手段(例えば、第1レンズ支持部15a)と、第2レンズ支持部15bと、を有していてもよい。本実施例では、第1レンズ支持手段によって眼鏡レンズの前面が基準面とされ、第2レンズ支持手段によって眼鏡レンズの後面が基準面とされる。基準面は、眼鏡レンズにカップを取り付ける際の基準となる面であり、カップの取付面と平行な面であってもよい。なお、この場合の平行とは、眼鏡レンズにカップを取り付ける際の基準軸(カップの取付面に直交する軸)と、眼鏡レンズのレンズ面(前面または後面)の交点における法線と、が一致する状態であってもよい。また、基準面は、眼鏡レンズの前面及び後面の形状(例えば、カーブ値、等)に応じて、前面または後面のいずれかに設けられてもよい。
【0011】
<第1レンズ支持手段>
第1レンズ支持手段は、眼鏡レンズの前面(表面)とカップの取付面とを平行に保つことで、カップを取り付ける基準面を眼鏡レンズの前面とし、眼鏡レンズを支持してもよい。例えば、第1レンズ支持手段は、第1支持ピン(例えば、支持ピン21)を有していてもよい。第1支持ピンは、複数のピン(例えば、3本のピン、等)で構成されてもよい。第1支持ピンは、第1支持ピンと、第1支持ピンに載置される眼鏡レンズの後面と、の当接面を、カップの取付面に対して傾斜させるための支持ピンであってもよい。この場合、第1支持ピンと眼鏡レンズの後面との当接面は、カップの取付面に対していずれの経線方向(すなわち、0度~360度)に傾斜されてもよい。
【0012】
例えば、本実施例において、第1レンズ支持手段は、カップの取付面に対して回転自在な第1支持ピンを有してもよい。第1支持ピンが回転自在であることによって、カップの取付面に対して任意の経線方向に傾斜され、その傾斜角度に応じて、カップ取付装置の接地面から各ピンまでの高さが変化する。
【0013】
例えば、第1レンズ支持手段は、このような回転自在な第1支持ピンを有し、第1支持ピンに載置された眼鏡レンズの前面と、カップの取付面とを平行に保つことで、眼鏡レンズの前面を基準面としてもよい。第1支持ピンが回転自在であることによって、眼鏡レンズの前面と後面の曲率の差が大きな眼鏡レンズ(例えば、ハイカーブレンズ、等)に対しても、その前面に基準面を設けることができるようになる。
【0014】
例えば、第1レンズ支持手段は、さらに、レンズ押さえ手段(例えば、レンズ押さえ機構40)を有していてもよい。レンズ押さえ手段は、眼鏡レンズの前面を押さえる。例えば、本実施例では、第1レンズ支持手段が備える第1支持ピンに対して、レンズ押さえ手段が垂直方向に移動することによって、第1支持ピンに載置された眼鏡レンズの前面をレンズ押さえ手段が垂直方向から押さえる。つまり、レンズ押さえ手段を用いて眼鏡レンズの前面が押さえられつつ、第1支持ピンを用いて眼鏡レンズの後面が押さえられる。これによって、第1支持ピンに載置されるとともにレンズ押さえ手段に押さえられた眼鏡レンズの前面と、レンズ押さえ手段と、の当接面は平行に保たれる。例えば、第1レンズ支持手段は、このように第1支持ピンに載置されるとともにレンズ押さえ手段に押さえられた眼鏡レンズの前面と、レンズ押さえ手段と、の当接面を平行に保つことで、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの前面を基準面としてもよい。第1レンズ支持手段がレンズ押さえ手段を備えることによって、眼鏡レンズの前面と後面の曲率の差が大きな眼鏡レンズ(例えば、ハイカーブレンズ、等)を挟持し、より安定に支持することができる。
【0015】
なお、本実施例において、第1レンズ支持手段が備えるレンズ押さえ手段は、カップ取付装置から着脱可能であってもよい。この場合、レンズ押さえ手段を全体的にカップ取付装置から着脱可能とする構成であってもよい。また、この場合、レンズ押さえ手段を部分的にカップ取付装置から着脱可能とする構成であってもよい。一例としては、レンズ押さえ手段が備えるアームのみがカップ取付装置から着脱可能とされてもよい。
【0016】
また、本実施例において、第1レンズ支持手段が備えるレンズ押さえ手段は、眼鏡レンズを押さえる使用位置と、使用位置から退避させた退避位置と、に切り換え可能であってもよい。例えば、本実施例において、レンズ押さえ手段の使用位置は、レンズ押さえ手段が第1支持ピン上に配置される位置であってもよい。より詳細には、例えば、レンズ押さえ手段が備える押さえピン(例えば、レンズ押さえピン44)の水平方向における位置が、第1支持ピンの水平方向における位置と一致する位置であってもよい。レンズ支持手段として第1レンズ支持手段を用いる際には、レンズ押さえ手段を使用位置に切り換えて使用してもよい。レンズ支持手段として第2レンズ支持手段を用いる際には、レンズ押さえ手段を退避位置に切り換えて使用してもよい。眼鏡レンズの種類に応じて第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段のいずれかに変更した際には、レンズ押さえ手段の使用と不使用を容易に切り換えることができ、操作性が向上される。
【0017】
なお、第1レンズ支持手段は、眼鏡レンズの前面を基準面とすることが可能な構成を備えていればよく、カップの取付面に対して回転自在な第1支持ピンを有する構成に限定されない。例えば、各ピンの高さをそれぞれ調節することが可能な第1支持ピンを有することで、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保つようにしてもよい。この場合、第1レンズ支持手段は、さらにレンズ押さえ手段を有し、ピンに載置された眼鏡レンズとレンズ押さえ手段との当接面を平行に保つようにしてもよい。これによっても、眼鏡レンズの前面を基準面とすることができる。もちろん、第1支持ピンを用いることなく、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保つようにしてもよい。一例としては、円筒状のレンズ支持部を有し、眼鏡レンズの前面をレンズ支持部に載置することで、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの前面を基準面としてもよい。なお、この場合には、第1レンズ支持手段が眼鏡レンズの後面を押さえるレンズ押さえ手段を有し、眼鏡レンズを挟持するようにしてもよい。
【0018】
<第2レンズ支持手段>
第2レンズ支持手段は、眼鏡レンズの後面(裏面)とカップの取付面とを平行に保つことで、カップを取り付ける基準面を眼鏡レンズの後面とし、眼鏡レンズを支持してもよい。例えば、第2レンズ支持手段は、第2支持ピン(例えば、支持ピン26)を有していてもよい。第2支持ピンは、複数のピン(例えば、3本のピン、等)で構成されてもよい。第2支持ピンは、眼鏡レンズを載置する固定配置されたピンであってもよい。例えば、本実施例における第2支持ピンは、各ピンが同一の高さに固定配置されたピンであってもよい。
【0019】
例えば、第2レンズ支持手段は、このような固定配置された第2支持ピンを有し、第2支持ピンと、第2支持ピンに載置された眼鏡レンズの後面と、の当接面を平行に保つことで、眼鏡レンズの後面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの後面を基準面としてもよい。第2支持ピンが固定配置されていることで、レンズ押さえ手段等を用いることなく眼鏡レンズの後面に基準面を設けることができ、操作が容易である。
【0020】
なお、本実施例において、第2レンズ支持手段は、さらに、レンズ押さえ手段を有していてもよい。この場合には、眼鏡レンズを第2支持ピンとレンズ押さえ手段とにより挟持し、眼鏡レンズをより安定に支持することができる。
【0021】
なお、第2レンズ支持手段は、眼鏡レンズの後面を基準面とすることが可能な構成を備えていればよく、本実施例に限定されない。例えば、各ピン間の距離や間隔を調整できる高さが同一な可動ピンを有し、眼鏡レンズを支持する領域の大きさを変更できるようにしてもよい。また、例えば、第2支持ピンに加えて、着脱可能なピンを有する構成であってもよい。これらの場合であっても、各ピンと眼鏡レンズの後面との当接面を平行に保つとともに、眼鏡レンズの後面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの後面を基準面とすることができる。
【0022】
<切換手段>
例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、切換手段を備える。切換手段は、カップ取付装置において、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換える。例えば、切換手段は、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とのいずれか一方を、眼鏡レンズにカップを取り付けるための使用位置に配置し、他方を使用位置から退避させた退避位置に配置することで、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えてもよい。切換手段を備えることで、眼鏡レンズの種類毎に基準面を容易に変更し、適切にカップを取り付けることができる。
【0023】
本実施例において、切換手段は、第1着脱手段(例えば、挿込ピン11)を有していてもよい。第1着脱手段は、第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段をカップ取付装置に装着可能とする。なお、第1着脱手段は、第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段をカップ取付装置に装着可能な構成であればよく、本実施例に限定されない。例えば、凸部と凹部を嵌合させる構成であってもよい。この場合には、カップ取付装置に第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段を嵌合させるための嵌合部を設けるとともに、第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段に嵌合部を嵌め込むための窪みを設けてもよい。また、例えば、磁石等を用いて第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段を取り付ける構成であってもよい。これらのような場合、切換手段は、第1着脱手段を用いて第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段のいずれか一方を取り付けることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えるようにしてもよい。眼鏡レンズの種類に応じて適切なレンズ支持手段を取り付け、基準面を容易に変更することができるので、精度よくカップを取り付けることができる。
【0024】
また、本実施例において、切換手段は、第2着脱手段(例えば、凹部7)を有していてもよい。第2着脱手段は、レンズ押さえ手段をカップ取付装置に装着可能とする。なお、第2着脱手段は、第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段をカップ取付装置に装着可能な構成であればよく、本実施例に限定されない。例えば、凸部と凹部を嵌合させる構成、磁石等を用いて取り付ける構成、等であってもよい。切換手段は、第2着脱手段を用いてレンズ押さえ手段を取り付けることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えるようにしてもよい。これによって、眼鏡レンズの種類に合わせてレンズ押さえ手段を着脱し、必要に応じて眼鏡レンズを挟持させ、眼鏡レンズを安定に支持することができる。
【0025】
なお、本実施例において、切換手段は、駆動部を有していてもよい。駆動部は、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを移動させる。切換手段は、駆動部を駆動させることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えるようにしてもよい。この場合、駆動部はモータ等を備え、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを自動的に切り換える構成としてもよい。また、この場合、駆動部はレバー等を備え、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを手動的に切り換える構成としてもよい。このような駆動部によって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とのいずれか一方が、眼鏡レンズにカップを取り付けるための使用位置に配置され、他方が使用位置から退避される退避位置に配置されるようにしてもよい。一例としては、駆動部が、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とをスライド移動させるスライド機構等を備え、スライド機構を用いて第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを移動させることで、その使用位置と退避位置が切り換えられてもよい。例えば、このような切換手段によって、眼鏡レンズの種類に応じて適切なレンズ支持手段に切り換え、基準面を容易に変更し、精度よくカップを取り付けることができる。
【0026】
また、本実施例において、切換手段は、ロック機構を有していてもよい。ロック機構は、カップの取付面に対する回転(傾斜)を抑制する。切換手段は、ロック機構によるロックとその解除によって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えるようにしてもよい。すなわち、切換手段によって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とが兼用されてもよい。一例として、第1レンズ支持手段をロックすることで、第1レンズ支持手段の回転を抑制し、第1レンズ支持手段を第2レンズ支持手段として用いてもよい。例えば、このような切換手段によっても、眼鏡レンズの種類に応じて適切なレンズ支持手段に切り換え、基準面を容易に変更し、精度よくカップを取り付けることができる。
【0027】
<カップ取付装置>
例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、カップ取付手段(例えば、カップ取付機構50)を備える。カップ取付手段は、レンズにカップを取り付ける。カップ取付手段は、レンズの前面と後面の少なくともいずれかにカップを取り付ける構成であってもよい。例えば、カップ取付手段は、第1レンズ支持手段に支持された状態の眼鏡レンズ、または、第2レンズ支持手段に支持された状態の眼鏡レンズ、にカップを取り付ける。
【0028】
例えば、レンズ支持手段として第1レンズ支持手段を用いる場合、カップ取付手段は、第1レンズ支持手段に支持された眼鏡レンズに対してカップを取り付ける。このとき、カップ取付手段は、第1レンズ支持手段に支持され、操作者に保持された状態のレンズに対して、カップを取り付けてもよい。また、この場合、カップ取付手段は、第1レンズ支持手段に支持され、さらに、レンズ押さえ手段に押さえられた状態の眼鏡レンズに対して、カップを取り付けてもよい。
【0029】
例えば、レンズ支持手段として第2レンズ支持手段を用いる場合、カップ取付手段は、第2レンズ支持手段に支持されたレンズに対してカップを取り付ける。この場合、カップ取付手段は、第2レンズ支持手段に支持され、操作者に保持された状態のレンズに対して、カップを取り付けてもよい。また、この場合、カップ取付手段は、第2レンズ支持手段に支持され、さらに、レンズ押さえ手段に押さえられた状態の眼鏡レンズに対して、カップを取り付けてもよい。例えば、本実施例では、第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段によって、眼鏡レンズの基準面が平行に維持されるため、このようなカップ取付手段を用いることで、カップを精度よく取り付けることができる。
【0030】
なお、本実施例において、カップ取付手段は、眼鏡レンズを搬送するための搬送手段(例えば、眼鏡レンズを吸着して搬送するための搬送ユニット、等)を備えていてもよい。例えば、この場合には、レンズ支持手段により支持された眼鏡レンズが搬送手段によってカップ取付手段まで搬送され、カップ取付手段が搬送された眼鏡レンズに対してカップを取り付ける構成としてもよい。
【0031】
<実施例>
以下、本実施形態に係る一実施例を図面に基づいて説明する。
図1はカップ取付装置1の外観図である。例えば、カップ取付装置1は、ディスプレイ3、収納部4、筺体5、テーブル8、レンズ支持機構10、レンズ測定機構30、レンズ押さえ機構40、カップ取付機構50、等を備える。
【0032】
本実施例において、ディスプレイ3にはタッチパネル機能が付加され、ディスプレイ3が操作部(コントローラ)として機能する。なお、ディスプレイ3と操作部とは別に設ける構成であってもよく、この場合には、マウス、ジョイスティック、キーボード、携帯端末、等の少なくともいずれかを操作部として用いてもよい。また、本実施例において、ディスプレイ3にはLCD(Liquid Crystal Display)が用いられる。もちろん、LCDに限定されず、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、等を用いる構成であってもよい。
【0033】
ディスプレイ3には、操作画面(加工条件の入力画面、レイアウトデータの入力画面、軸打ち画面、等)、レンズ測定機構30により撮像された眼鏡レンズ(以下、レンズ)LEのレンズ像、レンズ情報、等が表示される。レンズ情報は、例えば、レンズLEの外形、印点、隠しマーク、プリントマーク、等であってもよい。
【0034】
収納部4は、テーブル8及び後述するレンズ支持部15を収納する。収納部4は、テーブル8の厚みやレンズ支持部15の厚み(本実施例では、プレート16の厚み)よりも大きな幅を有している。収納部4を用いることで、テーブル8やレンズ支持部15を立てた状態で収納することができる。本実施例において、収納部4は筐体5の側面に設けられる。この場合、収納部4は、筐体5の右側面及び左側面に設けられてもよいし、いずれかの側面に設けられてもよい。もちろん、筐体5の側面に限らず、上面や背面に設けられてもよい。
【0035】
筺体5は略コの字状の側面形状である。筺体5の前面には、テーブル8を挿し込むための挿込口9(
図3参照)が設けられる。筺体5の内部には、後述するレンズ測定機構30が備えられる。筺体5は、前側に突出する張出部5aと台座5bとを有する。張出部5aには、後述するカップ取付機構50が設けられる。台座5bには、後述するレンズ支持機構10とレンズ押さえ機構40が設けられる。レンズ押さえ機構40は、台座5bに設けられた凹部7に嵌め込まれている。
【0036】
テーブル8は、デモレンズまたは型板を撮像する際に用いる。テーブル8は、カップ取付装置1からの着脱が可能である。操作者は、テーブル8を挿込口9に挿し込むことで、テーブル8にデモレンズまたは型板を載置し、デモレンズまたは型板の外形を撮像することができる。また、操作者は、テーブル8を挿込口9から取り外すことで、レンズ支持機構10を用いて、レンズLEに加工治具であるカップCu(
図5参照)を取り付ける(軸打ちする)ことができる。
【0037】
<レンズ支持機構>
レンズ支持機構10はレンズLEを載置してレンズLEを支持する。例えば、レンズ支持機構10は、挿込ピン11、保護カバー12、レンズ支持部15、レンズ押さえ機構40、等を備える。挿込ピン11は、保護カバー12から突出するように固定される。レンズ支持部15は、保護カバー12上に載置される。
【0038】
<レンズ支持部>
レンズ支持部15は、カップCuを取り付ける基準面をレンズLEの前面とする第1レンズ支持部15aと、カップCuを取り付ける基準面をレンズLEの後面する第2レンズ支持部15bと、を有する。なお、基準面については後述する。
【0039】
図2はレンズ支持部15を示す図である。
図2(a)は第1レンズ支持部15aを示し、
図2(b)は第2レンズ支持部15bを示す。第1レンズ支持部15aと第2レンズ支持部15bは、ともにプレート16を有する。プレート16には穴17が設けられている。穴17は、挿込ピン11と嵌合するようになっている。穴17に挿込ピン11が刺さるようにプレート16を配置することで、第1レンズ支持部15aまたは第2レンズ支持部15bを一定の向きで保護カバー12上に載置することができる。これによって、本実施例では、第1レンズ支持部15aを保護カバー12上に載置した場合に、第1レンズ支持部15aが有する支持ピン21(後述)の中心点P1と、カップ取り付けの基準軸となるレンズ測定機構30の光軸L2と、が一致する。また、これによって、本実施例では、第2レンズ支持部15bを保護カバー12上に載置した場合に、第2レンズ支持部15bが有する支持ピン26(後述)の中心点P2と、光軸L2と、が一致する。なお、本実施例では、支持ピン21及び支持ピン26の中心点(つまり、中心点P1及び中心点P2)が、プレート16の中央に設けられてもよい。例えば、支持ピン21及び支持ピン26の中心点は、各支持ピンを通る外接円の外心であってもよい。
【0040】
第1レンズ支持部15aは、プレート16の他、支持ピン21、三角板22、円筒部材23、固定部材24、等を備える。本実施例において、支持ピン21は3本で構成される。支持ピン21は、レンズの前面の形状に対する後面の形状の変化が大きなレンズ(例えば、レンズの前面の曲率と後面の曲率との差が大きなハイカーブレンズ、等)を載置する際に用いられてもよい。支持ピン21は、光軸L1に対して等距離かつ等角度(すなわち、120度)で、三角板22に固定配置される。支持ピン21は、レンズLEの後面に当接することで、レンズLEを支持する。三角板22は、回転自在なボール25(
図4参照)を介して、円筒部材23に取り付けられる。三角板22の上面(つまり、支持ピン21が固定される面)には、再帰性反射部材が貼り付けられていてもよい。円筒部材23は、固定部材24に連結される。固定部材24は、プレート16に固定される。これによって、支持ピン21は回転自在となる。
【0041】
第2レンズ支持部15bは、プレート16の他、支持ピン26、等を備える。本実施例において、支持ピン26は3本で構成される。支持ピン21は、レンズの前面の形状に対する後面の形状の変化が小さなレンズ(例えば、レンズの前面の曲率と後面の曲率との差が小さなレンズ、等)を載置する際に用いられてもよい。支持ピン26は、光軸L1に対して等距離かつ等角度(すなわち、120度)で、プレート16に固定配置される。支持ピン26は、レンズLEの後面に当接することで、レンズLEを支持する。
【0042】
<レンズ押さえ機構>
レンズ押さえ機構40は、レンズLEの前面を押さえる。レンズ押さえ機構40は、後述する円筒部材46が、台座5bに設けられた凹部7に嵌め込まれることで、カップ取付装置1に取り付けられている。なお、本実施例において、レンズ押さえ機構40は、カップ取付装置1からの着脱が可能である。また、本実施例において、レンズ押さえ機構40は、レンズ押さえ機構40が使用可能な使用位置と、レンズ押さえ機構40が使用位置から退避された退避位置と、に切り換え可能である。より詳細には、例えば、後述するアーム42が水平方向に回転されることで、使用位置と退避位置とに切り換え可能である。
【0043】
図3はレンズ押さえ機構40を示す図である。
図3(a)はレンズ押さえ機構40が使用可能な使用位置にある状態である。
図3(b)はレンズ押さえ機構40が使用位置から退避位置に移動された状態である。例えば、レンズ押さえ機構40は、シャフト41、アーム42、レンズ押さえピン44、レバー45、円筒部材46、等を備える。
【0044】
シャフト41は、その下端が円筒部材46に固定され、その上端が張出部5aに設けられた図示なき溝に嵌め込まれる。シャフト41には、アーム42が上下方向へ移動可能に取り付けられる。アーム42は、可視光を透過する透明な部材により形成されてもよい。アーム42の先端には、後述するカップ装着部55に取り付けられたカップCuを通過させるための空間43が形成される。アーム42は、図示なきバネにより下方向に付勢され、第1レンズ支持部15aにおける支持ピン21の上端と、レンズ押さえピン44の下端と、が同一(略同一)の高さとなるように配置される。レンズ押さえピン44は、空間43を囲むように設けられ、下方向に突出する。本実施例において、レンズ押さえピン44は3本で構成される。レバー45は、アーム42に固定され、アーム42を移動させるために用いる。なお、本実施例において、アーム42とレバー45とは一体的に形成されてもよい。
【0045】
操作者は、レバー45を上方向に移動させて支持ピン21とレンズ押さえピン44との間を空けることで、支持ピン21とレンズ押さえピン44との間にレンズLEを挿入することができる。操作者がレバー45から手を離すと、アーム42が図示なきバネの付勢力により下方向に移動し、支持ピン21とレンズ押さえピン44にレンズLEが挟まれ、レンズLEが支持される。
【0046】
<レンズ測定機構>
図4はレンズ測定機構30を示す図である。レンズ測定機構30は、照明光学系310、撮像光学系320、等を備える。
【0047】
照明光学系310は、レンズLEの前面側から照明光を投光する。照明光学系310は、光源311、ハーフミラー312、凹面ミラー313、再帰性反射部材314、等を備える。光源311は、レンズLEに測定光束を照射する。光源311は、例えば、LED(Light Emitting Diode)であってもよい。光源311から出射した測定光束は、ハーフミラー312に反射されて、光軸L1に一致する。凹面ミラー313は、測定光束を光軸L1から光軸L2の方向へ反射させるとともに、測定光束を光軸L2上に配置されたレンズLEよりも大きな径の平行光束(略平行光束)に整形する。再帰性反射部材314は、測定光束を入射方向と略同一方向に反射する。再帰性反射部材314は、反射ムラを均一にするために、図示なきモータ等によって、光軸L2を中心とした軸回りに高速で回転されてもよい。
【0048】
再帰性反射部材314は、微細なガラス小球と、このガラス小球の下に配置された反射膜と、をもつ。再帰性反射部材314に入射した入射光束は、ガラス小球に屈折されて、ガラス小球の球面付近の1点で焦点を結び、反射膜に反射されて、反射光束となる。反射光束は、ガラス小球に再度屈折され、入射光束と略平行となって、元の方向に反射される。これによって、レンズ支持部15に支持されたレンズLEが後面側から照明される。
【0049】
撮像光学系320は、レンズLEを前面側から撮像する。撮像光学系320は、凹面ミラー313、絞り321、撮像レンズ322、撮像素子323、等を備える。撮像光学系320の凹面ミラー313は、照明光学系310の凹面ミラー313と共用される。また、撮像光学系320の撮像倍率は、撮像素子323によってレンズLEの全体が撮像される倍率となっている。絞り321は、凹面ミラー313の焦点位置(略焦点位置)に配置される。絞り321は、光源311と共役(略共役)な位置関係である。撮像素子323は、光源311から出射され、再帰性反射部材314に反射された反射光束を撮像する。撮像素子323は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、等であってもよい。撮像素子323の焦点位置は、レンズLEの表面付近に合わされている。これによって、レンズLEの表面に付された印点、レンズに形成された隠しマーク、等をほぼ焦点の合った状態で撮像することができる。
【0050】
<カップ取付機構>
図5はカップ取付機構50を示す図である。カップ取付機構50は、レンズLEにカップを取り付ける。本実施例では、第1レンズ支持部15aあるいは第2レンズ支持部15bに支持されたレンズLEの前面にカップを取り付ける。カップ取付機構50は、移動支基51、支持アーム52、移動アーム53、シャフト54、カップ装着部55、等を備える。
【0051】
張出部5aの内部に設けられたブロック57には、支柱56が固定される。支柱56には、移動支基51が上下方向に移動可能に取り付けられる。移動支基51には、移動支基51を常時上方向に付勢するための図示なきバネが配置される。移動アーム53は、移動支基51に取り付けられる。なお、本実施例において、移動アーム53と移動支基51とは一体的に形成されてもよい。移動アーム53には、シャフト54が固定される。シャフト54には、カップ装着部55が下方向から前方向を向くように付勢力を与える図示なきコイルバネが設けられる。シャフト54の軸N1は、光軸L1に対して左右の直交方向に延びる。移動アーム53は、シャフト54(すなわち、軸N1)を中心として、カップ装着部55が前側(操作者側)を向く方向と、下側に向く方向と、に回転可能なように、支持アーム52を保持する。支持アーム52には、支持アーム52を回転させるためのレバー58が固定される。支持アーム52には、カップ装着部55が設けられる。カップ装着部55にはカップCuが装着される。
【0052】
<レンズの基準面>
ここで、レンズLEの基準面について説明する。レンズLEの基準面は、レンズLEにカップCuを取り付ける際の基準となる面である。レンズLEの基準面は、レンズLEの前面及び後面の形状(例えば、カーブ値)に応じて、前面または後面のいずれかに設けてもよい。例えば、本実施例では、レンズ支持部15aを用いることで、レンズLEの前面を基準面として、カップCuを取り付けることができる。また、例えば、本実施例では、レンズ支持部15bを用いることで、レンズLEの後面を基準として、カップCuを取り付けることができる。
【0053】
まず、レンズの前面の曲率と後面の曲率との差が大きなレンズ(以下、ハイカーブレンズLEh)へのカップCuの取り付けを例に挙げて、レンズLEの前面を基準面とする場合を説明する。例えば、ハイカーブフレーム(反り角の大きなフレーム)には、ハイカーブレンズLEhを枠入れすることがある。通常、レンズの前面の曲率と後面の曲率との差が小さなレンズ(以下、レンズLEl)に対しては、眼鏡装用者の瞳孔位置(アイポイント位置)と、レンズLElの中心位置(例えば、光学中心位置OC)と、玉型の幾何学中心と、を一致させ、レンズLElのレンズ径内に玉型がおさまるように、レンズLElに対する玉型の位置が設定される。このとき、カップCuは、レンズLElの中心位置に対して取り付けられる。しかし、ハイカーブフレームの形状に沿った玉型であると、上述のように玉型の位置を設定したときに、ハイカーブレンズLEhのレンズ径内に玉型がおさまらないことがある。このような場合は、ハイカーブレンズLEhの中心位置を予め偏心させることで玉型の位置を設定し、玉型をレンズ径内におさめることがある。このとき、カップCuは、ハイカーブレンズLEhの中心位置を偏心させた偏心位置Q(
図6参照)に対して取り付けられる。
【0054】
図6はハイカーブレンズLEhを各レンズ支持部に載置した状態を示す図である。
図6(a)と
図6(b)は、ハイカーブレンズLEhをレンズ支持部15aに載置した状態である。なお、
図6(a)は支持ピン21をカップCuの取付面APに対して回転させていない場合であり、
図6(b)は支持ピン21をカップCuの取付面APに対して回転させた場合である。
図6(c)はハイカーブレンズLEhをレンズ支持部15bに載置した状態である。ハイカーブレンズLEhの中心位置を偏心させた状態では、カップ取り付けの基準軸となる光軸L2と、偏心位置Qと、が一致するようにハイカーブレンズLEhを支持し、カップCuを取り付ける。ハイカーブレンズLEhの前面とカップCuの取付面APがともに平行となるようにハイカーブレンズLEhを支持することで、カップCuを正確に取り付けることができる。
【0055】
例えば、
図6(a)のようにレンズ支持部15aの支持ピン21を回転(傾斜)させない場合は、ハイカーブレンズLEhの前面(言い換えると、偏心位置Qに対する垂線)FPをカップの取付面APと平行にすると、ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン21が当接しないことがある。この状態では、ハイカーブレンズLEhが安定に支持されない。ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン21を当接させると、光軸L2と偏心位置Qとが一致していても、ハイカーブレンズLEhの前面FPがカップの取付面APと平行にならず、カップCuを正確に取り付けることができない。
【0056】
しかし、例えば、
図6(b)のようにレンズ支持部15aの支持ピン21を回転(傾斜)させる場合は、ハイカーブレンズLEhの前面FPをカップの取付面APと平行にするとともに、ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン21を当接させることが可能である。例えば、本実施例においては、ハイカーブレンズLEhを支持ピン21へ載置した後に三角板22を動かし、支持ピン21に載置したハイカーブレンズLEhを任意の方向へ傾けることで、レンズ支持部15aの接地面から各支持ピン21までの高さを変化させて、ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン21を当接させることができる。これによって、ハイカーブレンズLEhの前面FPをカップの取付面APに対して平行に維持し、光軸L2に偏心位置Qを一致させるとともに、ハイカーブレンズLEhを安定に支持することができる。例えば、このような状態においては、ハイカーブレンズLEhの前面FPが、カップCuを取り付ける際の基準となる基準面とされる。
【0057】
なお、本実施例においては、さらに、レンズ押さえ機構40を用いて、ハイカーブレンズLEhをより安定に支持してもよい。レンズ押さえ機構40におけるアーム42は下方向に付勢されるため、ハイカーブレンズLEhの前面にレンズ押さえピン44が当接する。つまり、ハイカーブレンズLEhは、支持ピン21及びレンズ押さえピン44により挟持された状態となる。支持ピン21に載置されたハイカーブレンズLEhの前面とレンズ押さえピン44との当接面を平行に保つとともに、ハイカーブレンズLEhの前面とカップCuの取付面APとを平行に保つことで、ハイカーブレンズLEhの前面FPを基準面としてもよい。
【0058】
例えば、
図6(c)のようにレンズ支持部15bの支持ピン26を用いた場合には、
図6(a)のようにレンズ支持部15aの支持ピン21を回転(傾斜)させない場合と同様になる。支持ピン26の高さが固定されているので、ハイカーブレンズLEhの前面FPをカップの取付面APと平行にすると、ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン26が当接しないことがある。また、ハイカーブレンズLEhの後面と支持ピン26を当接させると、ハイカーブレンズLEhの前面FPがカップの取付面APと平行にならず、カップCuを正確に取り付けることができない。
【0059】
例えば、このように、ハイカーブレンズLEhにカップCuを取り付けたい場合は、レンズ支持部15aを用いて、ハイカーブレンズLEhの前面FPに基準面を設けることが好ましい。なお、ハイカーブレンズLEhに限らず、レンズの中心位置を偏心させる場合等には同様の問題が生じるので、レンズ支持部15aを用いてレンズの前面を基準面とすることが好ましい。
【0060】
次に、レンズLElへのカップCuの取り付けを例に挙げて、レンズLEの後面を基準面とする場合を説明する。
図7はレンズLElを各レンズ支持部に載置した状態を示す図である。
図7(a)はレンズLElをレンズ支持部15aに載置した状態である。
図7(b)はレンズLElをレンズ支持部15bに載置した状態である。例えば、レンズLElに対しては、レンズLElの中心位置を偏心させなくても、玉型がレンズ径内におさまることが多い。このため、カップ取り付けの基準軸となる光軸L2と、レンズLElの中心位置(光学中心位置OC)と、が一致するようにレンズLElを支持し、カップCuを取り付けてもよい。
【0061】
例えば、
図7(b)のようにレンズLElをレンズ支持部15bに載置した場合は、支持ピン26の中心点P2と、レンズLElの中心位置(本実施例では、光学中心位置OC)と、を一致させるようにレンズLElを支持ピン26へ載置することで、光軸L2とレンズLElの中心位置とを一致させ、レンズLElを安定に支持することができる。このとき、支持ピン26と、支持ピン26に載置されたレンズLElの後面と、の当接面は平行に保たれ、カップの取付面APと、レンズLElの後面(言い換えると、レンズLElの後面に対する垂線)BPと、が平行になる。例えば、このような状態においては、レンズLElの後面BPが、カップCuを取り付ける際の基準となる基準面とされる。なお、レンズLElの前面と後面における曲率の差は小さいため、カップの取付面APとレンズLElの後面BPが平行になるとともに、カップの取付面APとレンズLElの前面FPも平行になる。このため、レンズLElにカップCuを正確に取り付けることができる。レンズLElを支持ピン26に載置するだけでよく、操作は容易である。
【0062】
例えば、
図7(a)のようにレンズLElをレンズ支持部15aに載置した場合は、支持ピン21を回転(傾斜)させず、支持ピン21の中心点P1と、レンズLElの中心位置と、を一致させるようにレンズLElを支持ピン21へ載置することで、光軸L2とレンズLElの中心位置とを一致させ、レンズLElを安定に支持することができる。
【0063】
なお、支持ピン21は回転自在であるため、レンズ押さえ機構40を用いることで、レンズLElをより安定に支持してもよい。すなわち、支持ピン21とレンズ押さえピン44とでレンズLElを挟持してもよい。これによっても、レンズLElの前面FP及び後面BPをカップの取付面APと平行に保ち、レンズLEにカップCuを正確に取り付けることができる。
【0064】
例えば、レンズLElにカップCuを取り付けたい場合は、操作が容易であるため、レンズ支持部15bを用いて、レンズLElの後面BPに基準面を設けてもよい。なお、ハイカーブレンズLEhであっても、支持ピン26で安定に支持されるのであれば、レンズ支持部15bを用いて、レンズの後面を基準面としてもよい。
【0065】
<制御系>
図8はカップ取付装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部60は、一般的なCPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等で実現される。CPUは、カップ取付装置1における各部の駆動を制御してもよい。RAMは、各種の情報を一時的に記憶してもよい。ROMには、CPUが実行する各種プログラムが記憶されてもよい。例えば、制御部60には、ディスプレイ3、光源311、撮像素子323、不揮発性メモリ(以下、メモリ65)、再帰性反射部材314を回転させるための図示なきモータ、等が電気的に接続される。
【0066】
メモリ65は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ65としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、SDカード、等を使用することができる。メモリ65は、レンズ測定機構30により測定されたレンズの外形、等を記憶してもよい。
【0067】
<動作>
上記のような構成を備えるカップ取付装置1の動作を説明する。
【0068】
<玉型の取得>
まず、レンズLEの玉型が取得される。例えば、本実施例では、レンズ測定機構30及びテーブル8を用いて、フレームに枠入れされていたデモレンズまたは型板から玉型が取得される。例えば、本実施例においては、テーブル8が第3レンズ支持部としてレンズLEを支持してもよい。テーブル8は、第1レンズ支持部15a及び第2レンズ支持部15bを取り外した状態にて使用されてもよい。これにより、支持ピン21あるいは支持ピン26の像が写り込むことなく、テーブル8が支持したレンズLEを撮像することが可能である。
【0069】
操作者は、テーブル8を挿込口9に挿し込み、テーブル8にデモレンズまたは型板を載置する。また、操作者は、玉型の取得を開始するための図示なきボタンを操作する。制御部60は、入力された操作信号に応じて、光源311を点灯させて光束を照射するとともに、再帰性反射部材314を回転させる。再帰性反射部材314に反射され、デモレンズまたは型板を後面側から照明する光束が、撮像素子323に撮像される。これにより、デモレンズの全体を撮像したデモレンズ像、または、型板の全体を撮像した型板像、が取得される。制御部60は、デモレンズ像または型板像を画像処理(例えば、エッジ検出、等)することで、デモレンズまたは型板の外形を検出し、これを玉型としてメモリ65に記憶させる。玉型を取得した後、操作者はテーブル8を挿込口9から取り外す。
【0070】
なお、レンズLEの玉型は、デモレンズまたは型板の外形、フレームのリムの内形、等から取得されてもよい。本実施例では、カップ取付装置1を用いて玉型を取得したが、カップ取付装置1に別の装置を用いて測定した玉型を読み込ませることで玉型を取得してもよい。
【0071】
<加工条件とレイアウトの設定>
続いて、レンズLEの加工条件とレイアウトが設定される。レンズLEの加工条件は、レンズLEの種類(例えば、単焦点レンズ、二重焦点レンズ、累進レンズ、等)、レンズLEの材質、フレームの材質、加工モード(例えば、鏡面加工、面取り加工、溝掘り加工、等の有無)、レンズLEに対するカップCuの取り付け位置(例えば、レンズLEの光学中心位置、玉型の幾何学中心位置、等)、等の少なくともいずれかであってもよい。レンズLEのレイアウトは、眼鏡装用者の瞳孔間距離、フレーム中心間距離、等の少なくともいずれかであってもよい。操作者は、ディスプレイ3に表示される設定画面を操作することで、これらの条件とレイアウトを設定する。
【0072】
<レンズ支持部の設置>
ここで、操作者は、レンズ支持機構10におけるレンズ支持部15を台座5bに載置する。本実施例では、レンズ支持部15aまたはレンズ支持部15bのいずれかが台座5bに配置される。レンズ支持部15aまたはレンズ支持部15bのいずれかは、レンズLEの前面及び後面の形状に合わせて選択されてもよい。
【0073】
例えば、本実施例では、ハイカーブレンズLEhに対してカップCuを取り付けるためにレンズ支持部15aを選択した場合と、レンズLElに対してカップCuを取り付けるためにレンズ支持部15bを選択した場合と、について順に説明する。
【0074】
<レンズ支持部15aを設置する場合>
図10はカップ取付装置1からレンズ押さえ機構40が取り外された状態を示す図である。操作者は、レンズ支持機構10におけるレンズ支持部15aを台座5bに載置する。本実施例では、レンズ支持部15aが備える穴17に、保護カバー12から突出して固定された挿込ピン11が挿さるように、レンズ支持部15aが台座5bに載置される。また、操作者は、レンズ押さえ機構40を台座5bに取り付ける(すなわち、
図10に示す状態から
図3に示す状態になる)。本実施例では、レンズ押さえ機構40の円筒部材46が、台座5bの凹部7に嵌め込まれることで、レンズ押さえ機構40が台座5bに取り付けられる。また、操作者は、レンズ押さえ機構40のアーム42を使用位置に配置する(すなわち、
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示す状態になる)。アーム42が使用位置に配置されることによって、支持ピン21の上部にレンズ押さえピン44が配置される。操作者は、レバー45を操作して、支持ピン21とレンズ押さえピン44の間にハイカーブレンズLEhを挟持させる。これによって、支持ピン21に載置されたハイカーブレンズLEhの前面と、レンズ押さえピン44と、の当接面が平行に保たれるとともに、ハイカーブレンズLEhの前面とカップCuの取付面APとが平行に保たれ、ハイカーブレンズLEhの前面がカップ取り付けの基準面とされる。
【0075】
<レンズ支持部15bを設置する場合>
操作者は、レンズ支持機構10におけるレンズ支持部15bを台座5bに載置する。本実施例では、レンズ支持部15bが備える穴17に、保護カバー12から突出して固定された挿込ピン11が挿さるように、レンズ支持部15bが台座5bに載置される。なお、レンズ支持部15bを用いる際には、必ずしもレンズ押さえ機構40を台座5bに取り付けなくてもよい。このため、レンズ押さえ機構40は、
図10に示すように台座5bの凹部7から取り外されてもよい。なお、レンズ押さえ機構40が予め取り付けられていた場合には、レンズ押さえ機構40のアーム42を退避位置に配置して、レンズLElを支持ピン26の上に載置してもよい。これによって、支持ピン26と、支持ピン26に載置されたレンズLElの後面と、の当接面が平行に保たれるとともに、レンズLElの後面とカップCuの取付面APとが平行に保たれ、レンズLElの後面がカップ取り付けの基準面とされる。
【0076】
<レンズのアライメント>
操作者は、支持ピン21または支持ピン26にレンズLEを載置すると、カップ取り付けの基準軸である光軸L2と、レンズLEの中心位置(あるいは、偏心位置Q)と、を一致させるようにアライメントを行う。
【0077】
例えば、操作者は、アライメントを行うための図示なきボタンを操作する。制御部60は、入力された操作信号に応じて、光源311を点灯させて光束を照射するとともに、再帰性反射部材314を回転させる。再帰性反射部材314に反射され、レンズLEを後面側から照明する光束が、撮像素子323に撮像される。これにより、レンズLEの全体を撮像したレンズ像が取得される。ディスプレイ3には、レンズLEにカップCuを取り付けるための軸打ち画面70が表示される。
【0078】
図9は軸打ち画面70の一例である。ここでは、支持ピン21にハイカーブレンズLEhを載置した状態での軸打ち画面を例に挙げる。軸打ち画面70には、アーム42の像であるアーム像42s、支持ピン21の像である支持ピン像21s、ハイカーブレンズLEhのレンズ像LEhs、アライメントの目標位置を表すマークM、等が表示される。レンズ像LEhsには、予め中心位置(あるいは、偏心位置)に付された印点の像である印点像Rsが現れる。操作者は、軸打ち画面70を確認しながら、印点像RsとマークMとが一致するように、支持ピン21上のハイカーブレンズLEhを移動させる。これによって、カップ取り付けの基準軸である光軸L2と、ハイカーブレンズLEhの中心位置(あるいは、偏心位置Q)と、が一致し、アライメントが完了する。
【0079】
なお、支持ピン26にレンズLElを載置した状態での軸打ち画面には、アーム像42sが表示されない。操作者は、ハイカーブレンズLEhのアライメントと同様に、軸打ち画面70を確認しながら、印点像RsとマークMとが一致するように、支持ピン26上のレンズLElを移動させ、アライメントを完了させる。
【0080】
<カップの取り付け>
操作者は、アライメントが完了すると、レンズLEにカップCuを取り付ける。操作者は、カップ取付機構50のカップ装着部55にカップCuを装着する。また、操作者は、レバー58を操作して支持アーム52を回転させるとともに、支持アーム52を下方向に移動させる。これによって、レンズLEの前面にカップCuが取り付けられる。
【0081】
以上説明したように、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保つことで、カップを取り付ける基準面を眼鏡レンズの前面とし、眼鏡レンズを支持する第1レンズ支持手段と、眼鏡レンズの後面とカップの取付面とを平行に保つことで、カップを取り付ける基準面を眼鏡レンズの後面とし、眼鏡レンズを支持する第2レンズ支持手段と、カップ取付装置において、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換える切換手段と、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付手段と、を備える。従来は、眼鏡レンズの前面を基準面とするか、または後面を基準面とするか、を選択することができず、眼鏡レンズの種類によっては、精度よくカップを取り付けることが難しい場合があった。しかし、カップ取付装置が本実施例のような構成を備えることで、眼鏡レンズの種類毎に基準面を容易に変更し、適切にカップを取り付けることができる。
【0082】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、切換手段は、第1レンズ支持手段及び第2レンズ支持手段をカップ取付装置に装着可能とする第1着脱手段を有し、第1着脱手段を用いて第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段のいずれか一方を取り付けることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換える。これによって、眼鏡レンズの種類に応じて適切なレンズ支持手段を取り付け、基準面を容易に変更することができるので、精度よくカップを取り付けることができる。
【0083】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、第1レンズ支持手段は、カップの取付面に対して回転自在な第1支持ピンを有し、第1支持ピンに載置された眼鏡レンズの前面と、カップの取付面とを平行に保つことで、眼鏡レンズの前面を基準面とする。第1支持ピンが回転自在であることによって、眼鏡レンズの前面と後面の曲率の差が大きな眼鏡レンズ(例えば、ハイカーブレンズ、等)に対しても、その前面に基準面を設けることができるようになる。
【0084】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、第1レンズ支持手段は、さらに、眼鏡レンズの前面を押さえるレンズ押さえ手段を有し、第1支持ピンに載置されるとともにレンズ押さえ手段に押さえられた眼鏡レンズの前面と、レンズ押さえ手段と、の当接面を平行に保つことで、眼鏡レンズの前面と、カップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの前面を基準面とする。レンズ押さえ手段を備えることによって、眼鏡レンズの前面と後面の曲率の差が大きな眼鏡レンズ(例えば、ハイカーブレンズ、等)を挟持し、より安定に支持することができる。
【0085】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、第1レンズ支持手段が備えるレンズ押さえ手段は着脱可能であって、切換手段は、レンズ押さえ手段を着脱する第2着脱手段を有し、第2着脱手段を用いてレンズ押さえ手段を取り付けることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換える。これによって、眼鏡レンズの種類に合わせてレンズ押さえ手段を着脱し、必要に応じて眼鏡レンズを挟持させ、眼鏡レンズを安定に支持することができる。
【0086】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置において、第1レンズ支持手段が備えるレンズ押さえ手段は、眼鏡レンズを押さえる使用位置と、使用位置から退避させた退避位置と、に切り換え可能であって、第1レンズ支持手段を用いる際には、レンズ押さえ手段を使用位置に切り換えて使用し、第2レンズ支持手段を用いる際には、レンズ押さえ手段を退避位置に切り換えて使用する。例えば、本実施例においては、眼鏡レンズの前面を基準面とする場合にはレンズ押さえ手段を用いてもよく、眼鏡レンズの後面を基準面とする場合にはレンズ押さえ手段を用いなくてもよい。眼鏡レンズの種類に応じて第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段のいずれかに変更した際には、レンズ押さえ手段の使用と不使用を容易に切り換えることができ、操作性が向上される。
【0087】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズを載置する固定配置された第2支持ピンを有し、第2支持ピンと、第2支持ピンに載置された眼鏡レンズの後面と、の当接面を平行に保つことで、眼鏡レンズの後面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの後面を基準面とする。支持ピンが固定配置されていることで、レンズ押さえ手段等を用いることなく眼鏡レンズの後面に基準面を設けることができ、操作が容易である。
【0088】
また、例えば、本実施例におけるカップ取付装置は、眼鏡レンズにカップを取り付けるカップ取付手段を備え、第1レンズ支持手段に支持された状態の眼鏡レンズ、または、第2レンズ支持手段に支持された状態の眼鏡レンズ、にカップを取り付ける。本実施例では、第1レンズ支持手段または第2レンズ支持手段によって、眼鏡レンズの基準面が平行に維持される。このため、カップ取付手段を用いて、レンズ支持手段に支持されたレンズに対してカップを精度よく取り付けることができる。
【0089】
<変容例>
なお、本実施例では、レンズ測定機構30によって、光源311がレンズLEの前面を照明し、再帰性反射部材314に反射された光束が撮像素子323で撮像される構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、レンズ測定機構30は、光源によってレンズLEの後面を照明し、光束をスクリーンに投影する構成であってもよい。この場合、ディスプレイ3は必ずしも必要ではない。例えば、スクリーンに予めアライメントの目標位置を表すマークMを印しておき、スクリーンに投影されたレンズ像に現れる印点像Rsと、スクリーン上のマークMと、を一致させるようにアライメントを行ってもよい。例えば、このようなディスプレイ3を備えていないカップ取付装置に対しても、第1レンズ支持手段15aと第2レンズ支持手段15bとを切り換えて使用する構成としてもよい。
【0090】
なお、本実施例では、レンズ支持部15のプレート16に穴17が設けられ、プレート16が挿込ピン11に刺さるように、レンズ支持部15を保護カバー12上に配置する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、本実施例において、プレート16及び保護カバー12は正円形状であり、正円の中央に支持ピン21の中心点P1または支持ピン26の中心点P2が一致するように設計されている。このため、穴17や挿込ピン11を用いなくても、レンズ支持部15を保護カバー12上に載置すれば、各ピンの中心点と光軸L2とを一致させることができる。しかし、本実施例において、プレート16の中央からずれた位置に各ピンの中心点を配置するように設計されてもよい。この場合、レンズ支持部15を保護カバー12上に載置する向きによっては、各ピンの中心点と光軸L2とが一致しなくなる。このような構成とする際には、穴17や挿込ピン11等をより効果的に用いることができる。
【0091】
なお、本実施例では、レンズ支持機構10がレンズ支持部15a及びレンズ支持部15bを有し、これらを付け換えることによって、レンズLEの基準面を変更する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、レンズ支持機構10が、レンズ支持部15a及びレンズ支持部15bを有し、これらを移動させることによって、レンズLEの基準面を変更する構成としてもよい。この場合には、レンズ支持部15a及びレンズ支持部15b移動させる駆動部を備えていてもよい。例えば、駆動部は、レンズ支持部15aとレンズ支持部15bをスライド移動させるためのスライド機構、等であってもよい。駆動部はモータ等を備え、レンズ支持部15aとレンズ支持部15bを自動的に切り換える構成としてもよい。この場合には、例えば、制御部60が駆動部の駆動を制御することによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とが自動的に切り換えられてもよい。また、駆動部はレバー等を備え、レンズ支持部15aとレンズ支持部15bを手動的に切り換える構成としてもよい。この場合には、例えば、操作者がレバーを操作することで、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを手動的に切り換えてもよい。
【0092】
例えば、本実施例におけるカップ取付装置においては、このように、切換手段が、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを移動させる駆動部を有し、駆動部を駆動させることによって、第1レンズ支持手段と第2レンズ支持手段とを切り換えてもよい。これによって、眼鏡レンズの種類に応じて適切なレンズ支持手段に切り換え、基準面を容易に変更することができるので、精度よくカップを取り付けることができる。
【0093】
なお、本実施例では、レンズ支持機構10がレンズ支持部15aとレンズ支持部15bを有し、これらを付け換えることによって、レンズLEの基準面を変更する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。レンズ支持機構10は、レンズ支持部15aとレンズ支持部15bとを兼用する構成としてもよい。例えば、この場合には、レンズ支持機構10にロック機構が設けられてもよい。ロック機構は、レンズ支持部15a(またはレンズ支持部15b)におけるカップCuの取付面に対する回転(傾斜)を抑制してもよい。一例として、レンズ支持部15aの回転をロック機構によりロックし、支持ピン21の高さが一律となるように固定することで、レンズLEの後面を基準面としてもよい。また、ロック機構を解除することで、支持ピン21を回転自在とし、レンズLEの前面を基準面としてもよい。例えば、本実施例においては、このように、レンズ支持機構10にロック機構を設け、ロック機構の使用と不使用を切り換えることによって、レンズLEの基準面を切り換えることが可能な構成としてもよい。
【0094】
なお、本実施例では、レンズ支持部15aが回転自在な支持ピン21を備える構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。レンズ支持部15aは、レンズLEの前面を基準面とするための構成を有していればよい。例えば、レンズ支持部15aの支持ピン21は、各ピンの高さをそれぞれ調節することが可能な第1支持ピンを有することで、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保ち、レンズLEの前面を基準面としてもよい。ちろん、支持ピン21を用いることなく、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保つようにしてもよい。一例としては、円筒状のレンズ支持部を有し、眼鏡レンズの前面をレンズ支持部に載置することで、眼鏡レンズの前面とカップの取付面とを平行に保ち、眼鏡レンズの前面を基準面としてもよい。
【0095】
また、本実施例では、レンズ支持部15bが固定配置された支持ピン26を備える構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。レンズ支持部15bは、レンズLEの後面を基準面とするための構成を有していればよい。例えば、レンズ支持部15bの支持ピンは高さが同一な可動ピンであってもよく、中心点P2から各ピン間までの距離、及び、各ピン同士の間隔、等を調整して、レンズLEを支持する領域の大きさを変更するような構成を有していてもよい。
【0096】
なお、本実施例では、レンズ測定機構30が、レンズLEの外形、印点、隠しマーク、プリントマーク、等のレンズ情報を取得するための光学系を備える構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、レンズ測定機構30は、レンズLEの光学特性(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、プリズム量、等)をレンズ情報として取得するための光学系を備えていてもよい。一例として、このような光学系は、多数の開口(光束の通過口)を所定のパターンにて形成した指標板、等を有し、レンズLEを介して撮像されたパターン像の変化量に基づいて、レンズLEの光学特性を演算するようにしてもよい。例えば、レンズLEのレンズLEの外形、印点、隠しマーク、プリントマーク、等を取得するための光学系と、レンズLEの光学特性を取得するための光学系と、はその少なくとも一部を兼用する構成としてもよいし、別に設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 カップ取付装置
10 レンズ支持機構
30 レンズ測定機構
40 レンズ押さえ機構
50 カップ取付機構
60 制御部
65 メモリ