(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】光成形用キット及び成形部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/40 20060101AFI20230426BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20230426BHJP
B29C 35/08 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B29C33/40
B29C33/42
B29C35/08
(21)【出願番号】P 2018235266
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神村 浩之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-202837(JP,A)
【文献】国際公開第2014/003173(WO,A1)
【文献】特開2000-108137(JP,A)
【文献】国際公開第01/007938(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0038890(US,A1)
【文献】特開2011-116969(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078042(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00
B29C35/00
B29C39/00
B29C43/00
B29C53/00
B29C57/00
B29C59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製成形用型及び光成形用光硬化型組成物を含む光成形用キットであって、
前記光成形用光硬化型組成物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含み、さらに当該オリゴマーとしてウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと前記光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値が5.0mN/m以上であり、
厚さ1mmの前記樹脂製成形用型の405nm透過率が50%以上である、
光成形用キット。
【請求項2】
前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーが30~60mN/mである、請求項1に記載の光成形用キット。
【請求項3】
前記樹脂製成形用型の材質が、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる材質である、請求項1又は請求項2に記載の光成形用キット。
【請求項4】
前記光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーが35~65mN/mである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光成形用キット。
【請求項5】
前記オリゴマーの含有割合が、前記光成形用光硬化型組成物中の硬化性成分100質量%に対して、40質量%~95質量%である、請求項
1~請求項
4のいずれか1項に記載の光成形用キット。
【請求項6】
ディスプレイ関連部材に適用される、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の光成形用キット。
【請求項7】
建材関連部材に適用される、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の光成形用キット。
【請求項8】
自動車関連部材に適用される、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の光成形用キット。
【請求項9】
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の光成形用キットを用いる成形部材の製造方法であって、
凹部が形成された樹脂製成形用型の凹部に、光成形用光硬化型組成物を充填する工程と、
前記の充填された組成物と基材が密着するように前記成形用型を配置する工程と、
前記成形用型側から、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより前記組成物を硬化させる工程と、
前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程とを含む、
成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光成形用キット及び成形部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凹凸形状を表面に有する部材の製造方法として、透明基材上に、「金型転写」により活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物からなる凹凸形状を形成する方法が広く知られている(例えば、特許文献1~2)。ここで、金型転写とは、目的とする部材の凹凸形状に対応する反転構造が形成された金型(ニッケル製スタンパなど)に組成物を塗布し、透明基材と貼合するか、又は、透明基材に組成物を塗布し、同金型と貼合した後に、透明基材側から活性エネルギー線を照射し硬化させた後、金型を離型することをいう。
【0003】
一方、凹凸形状を表面に有する部材の製造方法として、高価な金型を用いる転写ではなく、より安価な樹脂製成形用型(樹脂モールドともいう。)を用いる転写が検討されている。
【0004】
特許文献3には、紫外線硬化型樹脂から形成された凹凸形状を有するPETフィルムを樹脂製成形用型として用いた具体例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216748号
【文献】国際公開第2013/151119号
【文献】特開2011-228674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の方法において、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物と樹脂製成形用型の表面自由エネルギーの差が適切でない場合、当該硬化物が樹脂製成形用型に付着することが問題となることがある。本発明者らの検討によれば、前記付着によって、樹脂製成形用型の繰返し使用に伴い、硬化物が堆積する結果、硬化物の離型性が徐々に悪化することが判明した。この場合、一定頻度で、樹脂製成形用型を新品に交換する必要があるため生産性が劣るという問題ばかりでなく、コスト的にも大きな問題であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂製成形用型の繰返し利用性を向上できる、光成形用キットを提供することである。また、前記の光成形用キットを用いた成形部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値を特定の値以上とすることで、樹脂製成形用型の繰返し利用性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
前記樹脂製成形用型側から、紫外線及び/又は可視光線を照射する場合に、特に有効である。
【0008】
本発明は以下の通りである。
〔1〕樹脂製成形用型及び光成形用光硬化型組成物を含む光成形用キットであって、
前記光成形用光硬化型組成物が、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含み、さらに当該オリゴマーとしてウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと前記光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値が5.0mN/m以上であり、
厚さ1mmの前記樹脂製成形用型の405nm透過率が50%以上である、
光成形用キット。
〔2〕前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーが30~60mN/mである、〔1〕に記載の光成形用キット。
〔3〕前記樹脂製成形用型の材質が、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれる材質である、〔1〕又は〔2〕に記載の光成形用キット。
〔4〕前記光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーが35~65mN/mである、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の光成形用キット。
〔5〕前記オリゴマーの含有割合が、前記光成形用光硬化型組成物中の硬化性成分100質量%に対して、40質量%~95質量%である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光成形用キット。
〔6〕ディスプレイ関連部材に適用される、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の光成形用キット。
〔7〕建材関連部材に適用される、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の光成形用キット。
〔8〕自動車関連部材に適用される、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の光成形用キット。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれか一に記載の光成形用キットを用いる成形部材の製造方法であって、
凹部が形成された樹脂製成形用型の凹部に、光成形用光硬化型組成物を充填する工程と、
前記の充填された組成物と基材が密着するように前記成形用型を配置する工程と、
前記成形用型側から、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより前記組成物を硬化させる工程と、
前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を成形用型から離型する工程とを含む、
成形部材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光成形用キットによれば、樹脂製成形用型の繰返し利用性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書に開示される技術の各種実施形態を詳しく説明する。尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0011】
本発明は、樹脂製成形用型及び光成形用光硬化型組成物を含む光成形用キットであって、前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと前記光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値が5.0mN/m以上である、光成形用キット、並びに、成型部材の製造法に関する。
【0012】
本発明において、樹脂製成形用型の表面自由エネルギー、及び、光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーは、公知の接触角測定装置を用いて水及びジヨードメタンの接触角を測定することで、Wuの理論式により求める事ができる。
【0013】
ここで、Wuの理論式では、固体の表面自由エネルギーの分散成分をγSd、固体の表面自由エネルギーの極性成分をγSp、、液体の表面自由エネルギーの分散成分をγLd、液体の表面自由エネルギーの極性成分をγLp、液体の表面自由エネルギーをγL(=γLd+γLpとすると、
(γSdγLd/(γSd+γLd))+(γSpγLp/(γSp+γLp)=γL(1+cosθ)/4・・・(1)
と表され、固体の表面自由エネルギーの各成分γSd及びγSpは、表面自由エネルギーの異なる2種の液体による接触角を測定することにより求めることができる。
【0014】
具体的には、まず、樹脂製成形用型の水及びジヨードメタンそれぞれの接触角θを測定する。
次に、前記で得られたθ、水及びジヨードメタンそれぞれの分散成分γLd、極性成分γLp、表面自由エネルギーγL(=γLd+γLp)を、式(1)に代入し、その連立方程式から、樹脂製成形用型の表面自由エネルギーの分散成分γSdと極性成分γSpを求める。
・水のγLd:22.6mN/m、γLp:50.20mN/m、γL:72.8mN/m
・ジヨードメタンのγLd:49.0mN/m、γLp:1.8mN/m、γL:50.8mN/m
そして、このγSdとγSpの和(γSd+γSd)が、樹脂製成形用型の表面自由エネルギーγSである。
また、光成形用光硬化型組成物の硬化物の表面自由エネルギーについても、同様の方法で求めることができる。
【0015】
以下、樹脂製成形用型、光成形用光硬化型組成物及びその製造方法、並びに、成形部材及びその製造方法について、詳細に説明する
【0016】
1.樹脂製成形用型
本発明に係る樹脂製成形用型の表面自由エネルギーは、成形用型の繰返し利用性の点から、30~60mN/mであることが好ましく、30~50mN/mであることがより好ましく、30~40mN/mであることがさらに好ましい。
樹脂製成形用型としては、凹部を有する型枠の凹部を所望のサイズに調整するだけで、容易に種々のサイズ、形状に合った硬化物を作製することができる。
【0017】
本発明に係る樹脂製成形用型の材質として、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0018】
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする樹脂であり、その具体例としては、ホルムアルデヒド若しくははトリオキサンを主原料として重合反応により得られるホモポリマー、オキシメチレン単位とオキシメチレン単位以外の構成単位からなるコポリマー等が挙げられる。
フッ素系樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン共重合樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、フッ化処理エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
ポリメチルメタクリレート系樹脂としては、メチルメタクリレートの単独重合体、又は、メチルメタクリレート成分を50質量%以上含む共重合体をいい、メチルメタクリレート成分と共重合可能な成分としては、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイミド類、(メタ)アクリル酸、スチレン類等などが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族系ポリカーボネート樹脂、脂肪族系ポリカーボネート樹脂が挙げられ、その具体例としては、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族系ポリアミド系樹脂、芳香族系ポリアミド系樹脂が挙げられ、その具体例としては、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、コポリパラフェニレン・3.4'オキシジフェニレン・テレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の奏する効果が特に大きい点で、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂及びポリオレフィン系樹脂が、特に好ましい。
【0019】
樹脂製成形用型としては、その表面が未処理の型を使用する事ができ、その表面が離型処理された型を用いても良い。前記の離型処理の具体例としては、シリコーン処理、長鎖アルキル処理又はフッ素処理等の表面処理が挙げられる。
樹脂製成形用型の形態としては、フィルム状、シート状及び板状等が挙げられる。
【0020】
2.光成形用光硬化型組成物
本発明に係る光成形用光硬化型組成物は、樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと当該組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値が5.0mN/m以上となる組成物である。
当該組成物の硬化物の表面自由エネルギーは、成形用型の繰返し利用性の点から、35~65mN/mであることが好ましく、35~60mN/mであることがより好ましく、35~55mN/mであることがさらに好ましい。
【0021】
本発明に係る光成形用光硬化型組成物の粘度としては、成形部材の製造工程で使用可能な塗布性、即ち平滑性に優れた塗布面を得るために適宜設定すれば良く、技術常識に基づいて当業者であれば容易に設定することができる。
【0022】
本発明に係る光成形用光硬化型組成物は、エチレン性不飽和基含有化合物を含むことが好ましく、光重合開始剤を含むことがさらに好ましく、目的に応じて、種々のその他成分を配合することができる。
【0023】
前記エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基及び(メタ)アリル基等が挙げられ、光硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0024】
エチレン性不飽和基含有化合物としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「多官能(メタ)アクリレート」という。)、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「単官能(メタ)アクリレート」という。)等が挙げられる。
【0025】
多官能(メタ)アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、及び、当該オリゴマー以外の2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「その他多官能(メタ)アクリレート」という。)等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、硬化物の靱性等を向上できる点で、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含むことが好ましく、当該オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0026】
以下、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、その他多官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤及びその他成分について、以下に説明する。
【0027】
2-1.ポリエステル(メタ)アクリレート
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
【0028】
ここで、ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。
ポリオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
カルボン酸又はその無水物の具体例としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。
これら以外のポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、文献「UV・EB硬化材料」の74~76頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
ここで、硬化性成分とは、光照射により硬化する成分であり、エチレン性不飽和基含有化合物を意味する。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、デンドリマー型の(メタ)アクリレートであっても良い。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレートの市販品としては、アロニックス(登録商標)M-6100、M-6200、M-6250、M-6500、M-7100、M-7300K,M-8030、M-8060、M-8100、M-8530、M-8560、9050(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0030】
ポリエステル(メタ)アクリレートの含有割合は、硬化性成分を100質量部としたとき、硬化物の靱性等を向上できる点で、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましく、また、100質量部以下が好ましく、97質量部以下がより好ましく、95質量部以下が特に好ましい
【0031】
2-2.エポキシ(メタ)アクリレート
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレートとは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、前記文献「UV・EB硬化材料」[(株)シーエムシー、1992年発行]の74~75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0032】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o-フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
【0033】
前記脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX-310[ナガセ化成(株)]等が挙げられる。
【0035】
エポキシ(メタ)アクリレートの市販品としては、リポキシSP-1507、SP-1509、SP-4010、VR-60、VR-90(以上、昭和電工(株)製)、デナコールアクリレートDA111、DA212、DA721(以上、ナガセケムテックス(株)製)、エポキシエステル40EM、70PA、80MFA、200PA、3000A(以上、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
【0036】
エポキシ(メタ)アクリレートの含有割合は、硬化性成分を100質量部としたとき、
硬化物の靱性等を向上できる点で、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましく、また、100質量部以下が好ましく、97質量部以下がより好ましく、95質量部以下が特に好ましい。
【0037】
2-3.ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物、並びに、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物(以下、「ウレタンアダクト」という。)を挙げることができる。
【0038】
前記多価アルコールの具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、前記多価アルコールと前記多塩基酸とε-カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンポリオール、及びポリカーボネートポリオール(例えば、1,6-ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートポリオール等)等が挙げられる。
【0039】
前記有機多価イソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート及びジシクロペンタニルジイソシアネート等のジイソシアネート;
並びにヘキサメチレンジイソシアネート3量体及びイソホロンジイソシアネート3量体等の3個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートが挙げられる。
【0040】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノ(メタ)アクリレート;
並びにトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートは、前記化合物を使用して常法により得られたものが使用できる。
【0042】
多価アルコール、有機多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の反応物の製造方法としては、具体的には、ジブチルスズジラウレート等の付加触媒存在下、使用する有機イソシアネートとポリオール成分を加熱撹拌し付加反応せしめ、さらにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを添加し、加熱撹拌し付加反応せしめることにより得られる。
【0043】
ウレタンアダクトの製造方法としては、ジブチルスズジラウレート等の付加触媒存在下、使用する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを加熱撹拌し付加反応せしめることにより得られる。
【0044】
これら以外のウレタンポリ(メタ)アクリレートの例としては、前記文献「UV・EB硬化材料」の70~74頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、RX8-3-6、RX43-21(以上、亜細亜工業(株)製)紫光UV-3000B、UV-3200B(以上、日本合成化学工業(株)製)、UN-7600、9200(以上、根上工業(株)製)、アロニックス(登録商標)M-1100、M-1200(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、硬化性成分を100質量部としたとき、
硬化物の靱性等を向上できる点で20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましく、また、100質量部以下が好ましく、97質量部以下がより好ましく、95質量部以下が特に好ましい。
【0047】
2-4.その他多官能(メタ)アクリレート
本発明に係る光成形用光硬化型組成物は、硬化性や塗布性を向上させる目的で、その他多官能(メタ)アクリレートを含んでも良い。
【0048】
その他多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等の脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸と(メタ)アクリル酸のエステル化反応生成物;
ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール系化合物のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;
水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等の水素添加ビスフェノール系化合物のジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールアルキレンオキサイド付加物のペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0049】
また、その他多官能(メタ)アクリレートとしては、その他多官能(メタ)アクリレートと1級及び/又は2級アミン化合物のマイケル付加物である3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート(いわゆる、アミン変性(メタ)アクリレート)を含んでも良い。
【0050】
その他多官能(メタ)アクリレートの含有割合は、本発明に係る光成形用光硬化型組成物の塗布性の観点から、当該組成物の粘度を考慮して適宜設定することができ、硬化性成分を100質量部としたとき、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、また、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0051】
2-5.単官能(メタ)アクリレート
単官能(メタ)アクリレートとは、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。本発明に係る光成形用光硬化型組成物は、塗布性を向上させる目的で、単官能(メタ)アクリレートを含んでも良い。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族アルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート及びノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド及びN-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等のイミド基含有(メタ)アクリレート;
3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン及び3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0052】
単官能(メタ)アクリレートの含有割合は、本発明に係る光成形用光硬化型組成物の塗布性の観点から、当該組成物の粘度を考慮して適宜設定することができ、硬化性成分を100質量部としたとき、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、また、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0053】
2-6.光重合開始剤
光重合開始剤の具体例としては、開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤が挙げられる。
前記の開裂型光重合開始剤としては、α-フェニルグリオキシル酸エステル系化合物(以下、「(a1)成分」という。)、α-アミノアルキルフェノン系化合物(以下、「(a2)成分」という。)、アシルホスフィンオキサイド系化合物(以下、「(a3)成分」という。)、オキシム系化合物(以下、「(a4)成分」という。)、ゲルマニム系化合物(以下、「(a5)成分」という。)等が挙げられる。
【0054】
(a1)成分の具体例としては、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、及び、オキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、ベンゾイル蟻酸メチル等が挙げられる。
【0055】
(a2)成分の具体例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0056】
(a3)成分の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(、LAMBSON製SPEEDCURE XKMなどのその他アシルホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0057】
(a4)成分の具体例としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-(Oーベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)―9H-カルバゾール-3-イル]―,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0058】
(a5)成分の具体例としては、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウム等が挙げられる。なお、主な開裂物は、ベンゾイルラジカル及びゲルミルラジカルであると推測される。
【0059】
前記の水素引抜型光重合開始剤としては、チオキサントン系化合物(以下、「(a6)成分」という。)、及び、(a6)以外の光重合開始剤(以下、「(a7)成分」という。)が挙げられる。
【0060】
(a6)成分の具体例としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントンなどのその他チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0061】
(a7)成分の具体例としては、4-フェニルベンゾフェノン、1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、4-ベンゾイル 4'-メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0062】
光重合開始剤としては、光硬化性及び樹脂製成形用型の繰返し利用性に優れる点で、開裂型光重合開始剤が好ましく、これらの中でも、(a2)成分、(a3)成分、(a4)成分、(a5)成分がより好ましく、(a2)成分、(a3)成分、(a5)成分がさらに好ましい。
【0063】
又、硬化物の膜厚を厚くする必要がある場合、例えば50μm以上とする必要がある時は、硬化物内部の硬化性を向上させる目的で、又、紫外線吸収剤や顔料を併用する場合は、組成物の硬化性を向上させる目的で、(a2)成分、(a3)成分及び(a6)成分から選ばれる複数種の化合物を併用することが好ましい。
【0064】
光重合開始剤の含有割合は、組成物の塗布厚さによって、適宜設定することができ、硬化性成分合計量100質量部に対して0.05質量部以上10質量部未満が好ましく、0.05質量部以上9質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上8質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以上7質量部以下一層好ましく、0.05質量部以上6質量部以下がより一層好ましく、0.05質量部以上5質量部以下が特に好ましい。光重合開始剤の割合を0.05質量部以上にすることで、組成物の光硬化性を良好にし、密着性に優れるものとすることができ、10質量部未満とすることで、硬化物の内部硬化性が良好にすることができ、基材との密着性を良好にすることができる。
【0065】
2-7.その他成分
その他成分としては、本発明の効果を損なわない限り、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、非反応性ポリマー、フィラー、金属微粒子、金属酸化物微粒子、イオントラップ剤、消泡剤、レベリング剤、色素及び顔料等が挙げられる。
【0066】
以下、その他成分のうち、熱重合開始剤について説明する。
本発明に係る光成形用光硬化型組成物には、光硬化させた後に、さらに反応率を向上させる目的で、熱重合開始剤を配合しても良い。
熱重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。
有機過酸化物の具体例としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジーメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾジ-t-オクタン、アゾジ-t-ブタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。
【0067】
熱重合開始剤の配合割合としては、硬化性成分合計量100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。
【0068】
3.光成形用光硬化型組成物の製造方法
本発明に係る光成形用光硬化型組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、前記硬化性成分、並びに、必要に応じてさらに光重合開始剤及びその他成分を、常法に従い攪拌・混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱又は加温することができる。
【0069】
4.成形部材及びその製造方法
本発明に係る成形部材は、基材、及び、本発明に係る光成形用光硬化型組成物の硬化物から構成される成形部材である。
本発明の成形部材の製造方法としては、常法に従えば良く、目的に応じて種々の使用方法を採用することができる。具体的には、以下の態様が挙げられる。
【0070】
<態様1>
凹部が形成された樹脂製成形用型の凹部に、本発明に係る光成形用光硬化型組成物を充填する工程と、前記の充填された組成物と基材が密着するように前記成形用型を配置する工程と、前記成形用型側から、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより前記組成物を硬化させる工程と、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を前記成形用型から離型する工程を含む、成形部材の製造方法。
【0071】
<態様2>
基材に、本発明に係る光成形用光硬化型組成物を塗布する工程と、前記の塗布された組成物と凹部が形成された樹脂製成形用型の凹部が密着するように前記成形用型を配置する工程と、前記成形用型側から、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより記組成物を硬化させる工程と、前記組成物を硬化させる工程で得られる硬化物を前記成形用型から離型する工程を含む、成形部材の製造方法。
【0072】
基材としては、樹脂製成形用型以外のプラスチック、ガラス及び紙等が挙げられる。
樹脂製成形用型以外のプラスチックの具体例としては、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂等が挙げられる。
ガラスの具体例としては、ソーダガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。
紙の具体例としては、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、合成紙及び濾紙等が挙げられる。
基材の形態としては、フィルム状、シート状及び板状等が挙げられ、濾過エレメント用途の場合、菊花状の円筒形であっても良い。
なお、基材が難接着性の材質である場合、本発明に係る光成形用光硬化型組成物を塗布する前に、基材の表面に活性化処理を行うことができる。表面活性化処理としてはプラズマ処理、コロナ放電処理、薬液処理、粗面化処理及びエッチング処理、火炎処理等が挙げられ、これらを併用しても良い。
【0073】
本発明に係る光成形用光硬化型組成物の基材に対する塗布は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディスペンサー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、コンマコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ダイコーター等の種々の方法が挙げられる。
【0074】
又、本発明に係る光成形用光硬化型組成物の塗布厚さは、使用する基材及び用途に応じて選択すれば良いが、10μm~2mmが好ましく、20μm~2mmがより好ましく、30μm~2mmがさらに好ましく、40μm~2mmが一層好ましく、50μm~2mmがより一層好ましく、100μm~2mmがさらに一層好ましく、200μm~2mmが特に好ましい。
【0075】
本発明に係る光成形用光硬化型組成物を硬化させる場合の光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯、LED光源(発光波長としては、405、395、385、365nm等)などが挙げられる。前記光源を一種のみ使用しても、二種以上併用しても良く、電子線照射装置等のその他の活性エネルギー線照射装置を併用しても良い。
照射量としては、塗膜の厚みや照度等により異なるが、光源の発光波長や配合組成に応じて適宜設定すれば良い。
【0076】
得られた成形部材の用途としては、レンズシート等のディスプレイ関連部材、熱線反射フィルム等の建材関連部材、及び、濾過エレメント等の自動車関連部材などが挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0078】
<製造例1~6>
1.光硬化型組成物の製造
下記表1に示す化合物を表1に示す割合で撹拌・混合し、光硬化型組成物を製造した。
得られた表1の光硬化型組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0079】
尚、表1の硬化性成分及び光重合開始剤における数字は質量部を意味する。
又、表1における略号は下記を意味する。
【0080】
(硬化性成分)
◆2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー
・M8100:多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、東亞合成(株)製アロニックス(登録商標)M-8100(但し、残存トルエン6質量%を減圧留去して使用)
・SP1509:2官能エポキシ(メタ)アクリレート(主鎖:ビスフェノールA)、昭和電工(株)製リポキシSP-1509
・RX43:2官能ウレタン(メタ)アクリレート(主鎖:ポリエステル系)、亜細亜工業(株)製RX43-21
【0081】
◆その他多官能(メタ)アクリレート
・V230:1,6-ヘキサンジオールアクリレート、大阪有機化学工業(株)製ビスコート#230
【0082】
(光重合開始剤)
・I369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、BASFジャパン(株)製IRGACURE369
【0083】
2.樹脂製成形用型の繰返し利用性の評価
<実施例1~28、比較例1~8>
本評価では、以下の材質からなる樹脂製成形用型(型サイズ:12.5mm×15mm×厚さ1mm、溝:幅8mm×深さ0.5mmの角状、表面未処理)をそれぞれ用いた。なお、厚さ1mmの各樹脂製成形用型の405nm透過率をT405で表した。
【0084】
◆樹脂製成形用型の材質
・POM:ポリアセタール(T405=62%)
・PFA:パーフルオロアルコキシアルカン(T405=84%)
・PP:ポリプロピレン(T405=70%)
・PMMA:ポリメチルメタクリレート(T405=71%)
・PC:ポリカーボネート(T405=87%)
・NY:6,6-ナイロン(T405=45%)
【0085】
1.で得られた光硬化型組成物を、粘度に応じて適宜加温した上で、前記の樹脂製成形用型に充填し、100μm厚の易接着PETフィルム〔東洋紡(株)製コスモシャインA4300、サイズ:縦100mm×横100mm〕に硬化型組成物が接触するように押し当て、25℃の状態とした。
次いで、アイグラフィックス製紫外線照射装置(光源:メタルハライドランプ、成形用型越しの405nmにおけるピーク強度:700mW/cm2(ウシオ製UIT―250 UVD-C405)を用いて、前記成形用型側から、成形用型越しの値として照射エネルギー:800mJ/cm2(ウシオ製UIT―250 UVD-C405)の紫外線照射を行い、硬化物を得た。
前記硬化物を成形用型から離型できなかった場合、「×」と評価した。
一方、前記硬化物を成形用型から離型できた場合、離型後の成形用型を用いて、前記と同様の条件で硬化を行った後、硬化物を離型することができた(すなわち、成形用型を再利用できた)時は、「成形用型の繰返し利用性」を1回とカウントし、後記の3.において、当該硬化物の表面自由エネルギーを測定した。
さらに、続けて同様の実験を繰返し、硬化物を離型できなくなるまで、「成形用型の繰返し利用性」をカウントした。「成形用型の繰返し利用性」が1~9回となった場合は、「△」と評価し、「成形用型の繰返し利用性」が10回となった場合は、「〇」と評価し、「成形用型の繰返し利用性」が20回となった場合は、さらなる硬化実験を行うことなく「◎」と評価した。それらの結果を表1に示す。
【0086】
3.光硬化型組成物の硬化物及び光成形用型の表面自由エネルギー測定
まず、前記2.の実施例1、6、11、16、21、25で得られた光硬化型組成物(それぞれ製造例1~6に対応)の硬化物、及び、樹脂製成形用型(POM、PFA、PP、PMMA、PC、NY)の水接触角及びジヨードメタン接触角を、接触角測定装置(英弘精機(株)製 SCA20)を用いて、室温23℃、50%RH環境下、滴下量5マイクロリットルで30秒静置後、測定した。
次いで、前記で得られた水接触角及びジヨードメタン接触角を用い、段落[0011] ~[0013]に記載のWuの理論式を用いた方法により、光硬化型組成物の硬化物及び樹脂製成形用型の表面自由エネルギーを算出した。それらの結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
4.評価結果
実施例1~28の結果から明らかなように、本発明の光成形用キットを用いた場合、樹脂製成形用型の繰返し利用性が実用レベルであった。
これに対して、前記樹脂製成形用型の表面自由エネルギーと前記組成物の硬化物の表面自由エネルギーの差の絶対値が5.0mN/m未満である比較例1~8は、樹脂製成形用型の繰返し利用性が悪く、実用レベルにはほど遠かった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の光成形用キットは、樹脂製成形用型の繰返し利用性に優れる。このため、ディスプレイ関連部材、建材関連部材、及び、自動車関連部材等の種々の用途に適用することが可能である。