(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/19 20060101AFI20230426BHJP
B62D 1/18 20060101ALI20230426BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
B62D1/19
B62D1/18
F16F7/00 L
(21)【出願番号】P 2019001843
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 恒平
(72)【発明者】
【氏名】神谷 康憲
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 秀典
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202636(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/011378(JP,A1)
【文献】特開平11-078654(JP,A)
【文献】再公表特許第2014/125998(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/19
B62D 1/18
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールと共に回転するステアリングシャフトが挿通される円筒状のインナコラムと、
前記インナコラムの長手方向の一部を収容する円筒状のコラム本体、及び前記コラム本体の周方向に所定の間隔を有して前記コラム本体の外周面に接続された第1挟持板及び第2挟持板を有するアウタコラムと、
前記第1挟持板及び第2挟持板を挟む一対の側板、及び車体側への取付部を有するブラケットと、
前記一対の側板を前記第1挟持板及び第2挟持板に向かって締め付けるクランプ機構とを備え、
前記コラム本体には、前記第1挟持板との接続部位と前記第2挟持板との接続部位との間の中間領域を軸方向に横断する軸方向スリットと、前記中間領域の領域外で前記軸方向スリットに連通して前記軸方向スリットから前記第1挟持板側に延びる周方向スリットとが形成されており、
前記周方向スリットは、前記中間領域の領域外における前記コラム本体の軸方向中央寄りの位置で前記軸方向スリットに連通しており、
前記軸方向スリットは、前記中間領域において、前記周方向スリット側ほど前記コラム本体の周方向の幅が広くなっており、
前記コラム本体の周方向において、前記コラム本体の前記第1挟持板との接続部位と、前記軸方向スリットとの間隔が、前記周方向スリット側ほど狭くなっている、
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記軸方向スリットは、前記周方向スリットとは反対側の端部が前記コラム本体の軸方向端面に開放されている、
請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトを支持する車両用のステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトを支持するステアリングコラム装置は、ステアリングホイールの上下方向の位置を調整するチルト調整、及びステアリングホイールの車両前後方向の位置を調整するテレスコピック調整が可能である。テレスコピック調整は、ステアリングシャフトが挿通された筒状のインナコラムに対し、インナコラムの長手方向の一部を収容するアウタコラムを軸方向に相対移動させることで行われる。車両の運転者がテレスコピック調整を行う際には、ロックレバーを操作してインナコラムに対するアウタコラムのロック状態を解除し、ステアリングホイールの位置を調整した後に再度ロックレバーを操作してアウタコラムをロック状態とする。
【0003】
また、ステアリングコラム装置は、車両衝突時における二次衝突の衝撃を緩和すべく、インナコラムとアウタコラムとの軸方向の相対移動によりEA荷重(エネルギ吸収荷重)を発生させて衝撃のエネルギを吸収し、運転者を衝撃から保護する。
【0004】
特許文献1に記載のステアリングコラム装置では、アウタコラム(後部チューブ)に軸方向に延びるスリットが設けられており、ロックレバーが締付方向に操作されると、このスリットの幅が狭くなるようにアウタコラムが縮径し、インナコラム(前部チューブ)を締め付ける。スリットは、アウタコラムの最下部において、アウタコラムの車両前方側の端部からステアリングホイール側に向かって延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-264799号公報(明細書段落[0019],[0024]、
図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように構成されたステアリングコラム装置において、スリットをアウタコラムの軸方向全体にわたって設けると、アウタコラムの剛性が低くなり過ぎるので、スリットを車両前方側の一部のみに設けることが考えられる。この場合、アウタコラムの車両前方側の端部付近ではスリットが縮径しやすく、ロックレバーを締付方向に操作した際にアウタコラムが弾性変形してインナコラムを十分に締め付けるのに対し、スリットの終端部(ステアリングホイール側の端部)に近い部位では、アウタコラムの剛性が車両前方側の端部付近に比較して高くなるので、インナコラムを締め付ける力が弱くなってしまう。また、スリットの終端部付近においても適切にインナコラムを締め付けようとすれば、ロックレバーを締付方向に操作する際に大きな操作力が必要となる。
【0007】
ロックレバーの操作負担を軽減しながらも二次衝突時に適切なEA荷重を発生させるためには、スリットの終端部付近においてもアウタコラムを弾性変形しやすくし、締め付け時におけるアウタコラムの変形量(撓み量)をアウタコラムの長手方向に均一化することが望ましい。
【0008】
本発明は、この課題点に着目してなされたものであり、その目的は、アウタコラムを締め付けた際の変形量をアウタコラムの長手方向に均一化し、以ってロックレバーの操作負担を軽減しながらも二次衝突時に適切なEA荷重を発生させることが可能なステアリングコラム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するため、ステアリングホイールと共に回転するステアリングシャフトが挿通される円筒状のインナコラムと、前記インナコラムの長手方向の一部を収容する円筒状のコラム本体、及び前記コラム本体の周方向に所定の間隔を有して前記コラム本体の外周面に接続された第1挟持板及び第2挟持板を有するアウタコラムと、前記第1挟持板及び第2挟持板を挟む一対の側板、及び車体側への取付部を有するブラケットと、前記一対の側板を前記第1挟持板及び第2挟持板に向かって締め付けるクランプ機構とを備え、前記コラム本体には、前記第1挟持板との接続部位と前記第2挟持板との接続部位との間の中間領域を軸方向に横断する軸方向スリットと、前記中間領域の領域外で前記軸方向スリットに連通して前記軸方向スリットから前記第1挟持板側に延びる周方向スリットとが形成されており、前記周方向スリットは、前記中間領域の領域外における前記コラム本体の軸方向中央寄りの位置で前記軸方向スリットに連通しており、前記軸方向スリットは、前記中間領域において、前記周方向スリット側ほど前記コラム本体の周方向の幅が広くなっており、前記コラム本体の周方向において、前記コラム本体の前記第1挟持板との接続部位と、前記軸方向スリットとの間隔が、前記周方向スリット側ほど狭くなっている、ステアリングコラム装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステアリングコラム装置によれば、本発明は、アウタコラムを締め付けた際の変形量をアウタコラムの長手方向に均一化し、以ってロックレバーの操作負担を軽減しながらも二次衝突時に適切なEA荷重を発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るステアリングコラム装置を示す全体図である。
【
図2】ステアリングコラム装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】ステアリングコラム装置を軸方向に対して垂直な断面で示す断面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、ステアリングコラム装置のインナシャフト及びアウタコラムを車両上下方向の下側から見た側面図である。
【
図5】(a)はアウタコラムの全体を示す斜視図、(b)はアウタコラムのコラム本体を示す斜視図、(c)は第1の挟持板及び第2の挟持板を示す斜視図である。
【
図6】
図5(b)とは異なる方向から見たコラム本体の車両前方側の端部を示す斜視図である。
【
図7】比較例に係るコラム本体を
図6と同方向から見た斜視図である。
【
図8】実施の形態に係るコラム本体及び比較例に係るコラム本体について、応力の上側極大部及び下側極大部における大きさを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るステアリングコラム装置を示す全体図である。
図2は、ステアリングコラム装置の構成例を示す断面図である。
図3は、ステアリングコラム装置を軸方向に対して垂直な断面で示す断面図である。
図4(a)及び(b)は、ステアリングコラム装置のインナシャフト及びアウタコラムを車両上下方向の下側から見た側面図である。
図5(a)はアウタコラムの全体を示す斜視図である。
図5(b)はアウタコラムのコラム本体を示す斜視図であり、
図5(c)は第1の挟持板及び第2の挟持板を示す斜視図である。以下、「上」及び「下」とは、ステアリングコラム装置が車両に搭載された状態における車両上下方向の「上」及び「下」をいうものとする。
【0014】
ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール10(
図2参照)と共に回転するステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2が挿通された筒状のインナコラム3と、インナコラム3の外側に配置されたアウタコラム4と、車体側に取り付けられるブラケット5と、運転者が操作するロックレバー6と、ロックレバー6の回動によって作動するクランプ機構7と、ステアリングシャフト2に操舵補助トルクを付与する操舵補助装置8とを備えている。
【0015】
ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール10が一端部に取り付けられた筒状のアウタシャフト21と、アウタシャフト21にスプライン嵌合されたインナシャフト22とを有している。また、ステアリングシャフト2は、アウタシャフト21がインナシャフト22よりも上方となるように、水平方向に対して傾斜して配置される。アウタシャフト21及びインナシャフト22は、ステアリングホイール10と共に一体になって回転軸線Oを中心として回転する。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
【0016】
アウタシャフト21は、玉軸受20によってアウタコラム4に回転可能に支持されている。インナシャフト22は、ステアリングホイール10側の軸方向一端部の外周面に外周スプライン嵌合部221が設けられており、この外周スプライン嵌合部221がアウタシャフト21の内周スプライン嵌合部211に内嵌されている。アウタシャフト21は、この嵌合状態を保ちながら、インナシャフト22に対して軸方向の所定範囲で相対移動可能である。インナシャフト22の軸方向他端部には、操舵補助装置8の入力軸81が固定されている。
【0017】
操舵補助装置8は、入力軸81及び出力軸82と、入力軸81と出力軸82との間に配置されたトーションバー(捩れ軸)83と、トーションバー83の捩れ量に応じて操舵トルクを検出するトルクセンサ84と、トルクセンサ84によって検出された操舵トルクに応じたモータ電流が図略の制御装置から供給される電動モータ85と、電動モータ85の回転を減速して出力軸82に伝達するウォームギヤ機構と、ウォームギヤ機構等を収容するハウジング80とを備えている。
図2では、ウォームギヤ機構のウォームホイール86を図示しており、このウォームホイール86がハウジング80内で電動モータ85のシャフトに取り付けられたウォームに噛み合わされている。
【0018】
トルクセンサ84は、入力軸81と一体に回転する永久磁石841と、出力軸82と一体に回転するヨーク842との相対的な位置関係の変化を磁気的に検出し、トーションバー83の捩れ量に応じた検出信号を制御装置に出力する。ハウジング80から車両前方側に突出した出力軸82は、自在継手を介してインタミディエイトシャフトの一端部に連結され、インタミディエイトシャフトの他端部は自在継手を介してピニオンシャフトに連結されている。ピニオンシャフトは、車幅方向に進退移動するラックシャフトのラック歯に噛み合わされ、ラックシャフトの進退移動によって転舵輪である前輪が転舵される。
図1及び
図2では、出力軸82とインタミディエイトシャフトとを接続する自在継手の出力軸82側のソケット11を図示している。
【0019】
ハウジング80には、車両前方側の端部に一対のアーム部801が設けられており、
図1では、このうち一方のアーム部801を図示している。一対のアーム部801には、それぞれ貫通孔800が形成されており、この貫通孔800に車体側の支持部材であるステアリングメンバに取り付けられた支持軸(図示せず)が挿通される。ハウジング80は、この支持軸に支持されており、ステアリングホイール10の上下方向の位置を調整するチルト調整時には、ハウジング80が支持軸を中心として揺動する。
【0020】
インナコラム3は、インナシャフト22を収容すると共に、車両前方側の端部がハウジング80の筒部802に嵌合固定されている。アウタコラム4は、インナコラム3の長手方向の一部を収容する筒状のコラム本体41、及びコラム本体41の周方向に所定の間隔を有してコラム本体41の外周面41aに接続された第1挟持板42及び第2挟持板43(
図5参照)を有している。本実施の形態では、コラム本体41と第1挟持板42及び第2挟持板43とがそれぞれ別体であり、第1挟持板42及び第2挟持板43をコラム本体41に溶接してこれらが一体化されているが、コラム本体41と第1挟持板42及び第2挟持板43とを例えばダイキャスト成形により一体に成形してもよい。アウタコラム4のより詳細な構成については後述する。
【0021】
ブラケット5は、車体側への取付部511,512を車幅方向両端部に有する取付ステー51と、アウタコラム4の第1挟持板42及び第2挟持板43を車幅方向に挟む一対の側板521,522及び天板部523を有するホルダ52とを備え、ホルダ52の天板部523が取付ステー51の中央部に溶接により固定されている。取付部511,512には、取付ステー51に対して着脱可能なカプセル501,502がそれぞれ取り付けられており、これらのカプセル501,502が車体側の支持部材に例えばボルトにより固定される。
【0022】
カプセル501,502は、取付部511,512の上面に当接する上板部501a,502aと、取付部511,512の下面に当接する下板部501b,502bと、上板部501a,502aと下板部501b,502bとを接続する接続部501c,502cとを有している。カプセル501,502は、ステアリングホイール10側から取付部511,512に装着されており、ブラケット5は、二次衝突時にカプセル501,502に対して車両前方に離脱可能である。
【0023】
クランプ機構7は、ロックレバー6と共に回動する第1カム部材71及びブラケット5の側板521に対して回転規制された第2カム部材72を有するカム機構70と、第1カム部材71及び第2カム部材72を車幅方向に貫通してロックレバー6と共に回動するチルトボルト73と、チルトボルト73の回動を円滑にするスラストベアリング74と、スラストベアリング74から突出したチルトボルト73の雄ねじ部731に螺合したナット75と、チルトボルト73の頭部732に係合してロックレバー6に対するチルトボルト73の回転を規制する座金76とを有して構成されている。なお、本実施の形態では、チルトボルト73がコラム本体41の下側に配置されているが、チルトボルト73をコラム本体41の上側に配置してもよい。
【0024】
チルトボルト73は、ブラケット5の一対の側板521,522にそれぞれ設けられた長穴521a,522a、及びアウタコラム4の第1挟持板42及び第2挟持板43にそれぞれ設けられた長穴42a,43aに挿通されている。一対の側板521,522の長穴521a,522aは、上下方向に長く形成され、第1挟持板42及び第2挟持板43の長穴42a,43aは、車両前後方向に長く形成されている。
【0025】
ロックレバー6が締付方向に操作されると、第1カム部材71が第2カム部材72に対して回動し、第2カム部材72がチルトボルト73に沿ってナット75側に移動する。クランプ機構7は、このカム機構70の作動により、ブラケット5の一対の側板521,522をアウタコラム4の第1挟持板42及び第2挟持板43に向かって締め付ける。そして、第1挟持板42及び第2挟持板43が一対の側板521,522に締め付けられて挟持されることにより、アウタコラム4がブラケット5に対して固定される。
【0026】
一方、ロックレバー6が緩み方向に操作されると、一対の側板521,522の締め付けが解除され、アウタコラム4がブラケット5に対して車両前後方向及び上下方向に移動可能となる。チルト調整及びテレスコピック調整は、この状態で行われる。チルト調整時には、チルトボルト73が一対の側板521,522の長穴521a,522aを上下方向に移動する。テレスコピック調整時には、チルトボルト73が第1挟持板42及び第2挟持板43の長穴42a,43aを車両前後方向に移動する。
【0027】
アウタコラム4のコラム本体41には、外周面41aにおける第1挟持板42との接続部位41bと第2挟持板43との接続部位41cとの間の中間領域4a(
図4(b)に示す)を軸方向に横断する軸方向スリット411と、中間領域4aの領域外で軸方向スリット411に連通してコラム本体41の周方向に延びる周方向スリット412とが形成されている。軸方向スリット411は、周方向スリット412とは反対側の端部がコラム本体41の車両前方側の軸方向端面41dに開放されている。すなわち、軸方向スリット411は、コラム本体41の軸方向端面41dから車両後方側に向かって、コラム本体41の長手方向の一部に形成されている。
【0028】
本実施の形態では、周方向スリット412が、軸方向スリット411からコラム本体41の周方向における第1挟持板42側のみに延びるように形成されている。ただし、周方向スリット412を軸方向スリット411からコラム本体41の周方向における第1挟持板42側及び第2挟持板43側の双方向に延びるように形成してもよい。
【0029】
軸方向スリット411と周方向スリット412とは、連通部410において連通しており、本実施の形態ではこの連通部410が軸方向スリット411の最奥部(ステアリングホイール10側の端部)に設けられている。なお、本実施の形態では、周方向スリット412が軸方向に対して直角をなすように延在しているが、周方向スリット412が軸方向に対して傾斜していてもよい。
【0030】
図4では、中間領域4aをクロスハッチングで図示している。
図5(b)では、第1挟持板42との接続部位41bを破線で囲って示している。また、
図5(a)及び(b)では、第2挟持板43との接続部位41cの裏側(コラム本体41の内周面41e側)にあたる部位を一点鎖線で囲って示している。接続部位41b,41cは、コラム本体41の軸方向に沿って互いに平行に延在する線状の区域である。
【0031】
周方向スリット412は、コラム本体41の周方向において、第1挟持板42との接続部位41bよりも軸方向スリット411から遠い位置まで延在している。換言すれば、第1挟持板42との接続部位41bは、コラム本体41を周方向に見た場合に、周方向スリット412の終端部(連通部410から最も離れた部分)412aと軸方向スリット411との間に位置している。
【0032】
第1挟持板42は、長穴42aが形成された平板部421と、平板部421の上端からコラム本体41の外周面41aに向かって傾斜して設けられた傾斜部422と、平板部421の下端から第2挟持板43側に向かって延出された延出部423と、延出部423よりもコラム本体41側かつ平板部421よりも第2挟持板43側に設けられた一対の舌片部424,425とを有している。第2挟持板43は、長穴43aが形成された平板部431と、平板部431の上端からコラム本体41の外周面41aに沿って湾曲して形成された湾曲部432と、平板部431から第1挟持板42側に突出して設けられた一対の舌片部433,434とを有している。第1挟持板42及び第2挟持板43は、鋼板のプレス成形により各部が一体に形成されている。
【0033】
第1挟持板42は、傾斜部422の先端面422aがコラム本体41の接続部位41bに溶接されている。第2挟持板43は、湾曲部432における湾曲方向内側の内面432aがコラム本体41の接続部位41cに溶接されている。なお、本実施の形態では、第1挟持板42の舌片部424,425がコラム本体41に溶接されておらず、第2挟持板43の一対の舌片部433,434もコラム本体41に溶接されていないが、これらの舌片部424,425,433,434をコラム本体41に溶接してもよい。また、舌片部424,425,433,434の一部又は全部を省略してもよい。
【0034】
コラム本体41の周方向における第1挟持板42との接続部位41bと軸方向スリット411との間隔D(
図4(a)参照)は、周方向スリット412側(車両後方側)ほど狭くなっている。より詳細には、軸方向スリット411の両端面411a,411bのうち、第1挟持板42側の端面411aが軸方向に対して傾斜した直線状であり、この端面411aと接続部位41bとの間隔Dが周方向スリット412側ほど狭くなっている。この軸方向スリット411の形状により、中間領域4aにおけるコラム本体41の剛性が、周方向スリット412側(車両後方側)で弱められている。
【0035】
また、本実施の形態では、軸方向スリット411の両端面411a,411bのうち、第2挟持板43側の端面411bが、第1挟持板42側の端面411aとは軸方向に対して反対側に傾斜した直線状である。すなわち、コラム本体41を下方から径方向に見た軸方向スリット411の形状がテーパ形状(二等辺三角形状とも表現し得る)であり、軸方向スリット411は、中間領域4aにおいて周方向スリット412側ほどコラム本体41の周方向の幅が広くなっている。
図4に示すように、コラム本体41の周方向における軸方向スリット411の最大幅W
1は、最小幅W
2の2倍以上であることが望ましく、本実施の形態では最大幅W
1が最小幅W
2の約3倍である。
【0036】
ロックレバー6が締付方向に操作され、ブラケット5の一対の側板521,522がアウタコラム4の第1挟持板42及び第2挟持板43に締め付けられると、軸方向スリット411の両端面411a,411bの間隔が狭くなるようにコラム本体41が弾性変形し、コラム本体41がインナコラム3を締め付ける。この状態では、アウタコラム4のインナコラム3に対する軸方向移動が規制されると共に、二次衝突時に大きな荷重がステアリングホイール10からアウタコラム4に作用すると、インナコラム3との間でEA荷重を発生させながらアウタコラム4がアウタシャフト21と共に車両前方に移動する。
【0037】
また、ロックレバー6が緩み方向に操作されて一対の側板521,522の締め付けが解除されると、軸方向スリット411の両端面411a,411bの間隔が広くなってコラム本体41が拡径し、アウタコラム4のインナコラム3に対する軸方向移動が自在に可能となる。
図3及び
図4では、この状態を図示している。
【0038】
図6は、
図5(b)とは異なる方向から見たコラム本体41の車両前方側の端部を示す斜視図である。
図6では、コラム本体41の外周面41aにおける第2挟持板43との接続部位41cを破線で囲って示している。
【0039】
図7は、比較例に係るコラム本体41Aを
図6と同方向から見た斜視図である。コラム本体41Aには、実施の形態に係るコラム本体41と同様に、軸方向スリット411及び周方向スリット412が形成されているが、コラム本体41Aでは、軸方向スリット411がその全体にわたって均一な幅(最小幅W
2)で形成されている。
【0040】
図6及び
図7では、アウタコラム4をクランプ機構7により締め付けた際に、周方向スリット412の周辺部において最も応力が大きくなる上側極大部41f、及びコラム本体41の車両前方側の開口端部付近において最も応力が大きくなる下側極大部41gをそれぞれ破線で示している。上側極大部41fは、周方向スリット412の終端部412a付近にあり、下側極大部41gは、第1挟持板42との接続部位41bの内周面41e側にあたる部位の付近にある。
【0041】
図8は、本実施の形態に係るコラム本体41及び比較例に係るコラム本体41Aについて、上側極大部41f及び下側極大部41gにおける応力の大きさを示すグラフである。
図8に示すように、下側極大部41gにおける応力の大きさは、コラム本体41Aに比較してコラム本体41で僅かに小さくなっている。一方、上側極大部41fにおける応力の大きさは、コラム本体41Aに比較してコラム本体41で大きく増大している。このことは、実施の形態に係るコラム本体41では、周方向スリット412の終端部412a付近において大きな変形が発生していることを示している。
【0042】
つまり、本実施の形態では、軸方向スリット411の形状によって中間領域4aにおけるコラム本体41の剛性が周方向スリット412側で弱められていることにより、コラム本体41が変形しやすくなっており、比較例に係るコラム本体41Aに比較して、締め付け時の変形量がコラム本体41の長手方向に均一化されている。これにより、ロックレバー6の操作負担を軽減しながらも二次衝突時に適切なEA荷重を発生させることが可能となっている。また、軸方向スリット411の幅が車両後方側ほど広くなっていることにより、比較例に係るコラム本体41Aに比較してコラム本体41が軽量化されている。
【0043】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0044】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明を、操舵補助装置8を備えたステアリングコラム装置1に適用した場合について説明したが、操舵補助装置を有しないステアリングコラム装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…ステアリングコラム装置 10…ステアリングホイール
3…インナコラム 4…アウタコラム
4a…中間領域 41…コラム本体
410…連通部 411…軸方向スリット
412…周方向スリット 41b,41c…接続部位
41d…軸方向端面 42…第1挟持板
43…第2挟持板 5…ブラケット
511,512…取付部 521,522…側板
7…クランプ機構