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  • 特許-抗菌フィルムおよび包装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】抗菌フィルムおよび包装材
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20230426BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20230426BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20230426BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20230426BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230426BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A01N37/02
A01N35/02
A01N25/00 102
A01N25/34 A
A01P3/00
B32B27/18 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019022496
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020128362
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐樹
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044153(JP,A)
【文献】特開平10-217381(JP,A)
【文献】特開平11-245343(JP,A)
【文献】特表平10-505067(JP,A)
【文献】特開2015-217549(JP,A)
【文献】特開2013-202856(JP,A)
【文献】日本微生物資源学会誌,2015年,Vol.31,No.2,P.175-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 37/
A01N 35/
A01N 25/
A01P 3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、抗菌性薬剤を含む接着層、および熱融着樹脂層を含む抗菌フィルムであって、前記抗菌性薬剤が、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステル、またはイソベレラール、または1-フェニル-3-ペンタノンであり、前記接着層の膜厚が2μm以上7μm以下であり、前記抗菌フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌性薬剤の揮発量が0.01g/m以上1.5g/m以下であることを特徴とする抗菌フィルム。
【請求項2】
前記基材がポリエステルまたはポリプロピレンを含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌フィルム。
【請求項3】
前記基材が10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の抗菌フィルム。
【請求項4】
前記熱融着樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の抗菌フィルム。
【請求項5】
前記熱融着樹脂層が、10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の抗菌フィルム。
【請求項6】
前記熱融着樹脂層が、20μm以上40μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の抗菌フィルム。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の抗菌フィルムを用いて成ることを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌フィルムおよびそれを用いて形成される包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間殺菌を可能とする包装材を形成するために、アリルイソチオシアネートを表面吸着させた抗菌フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、殺菌剤として用いるアリルイソチオシアネートは、カラシ、ワサビなどの辛み成分であり、強い刺激臭を有する。そのため、例えば食品用に用いる場合、包装材中で保存すべき食品の風味を損なう恐れがある。
【0004】
そこで、アリルイソチオシアネートを使わずに空間殺菌を可能とする包装材を形成するために、精油成分を利用した食品包装用シートが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、この方法に記載されている精油成分も、刺激臭ではないが特有の臭いを有しているため、やはり食品の風味を損なう恐れがある。ところが、臭いの低減策については、何ら開示していない。
【0006】
また、臭いが少なく揮発性のある抗菌成分が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながらこの文献では、農薬や抗菌剤として様々な形態での利用について提案されているが、抗菌フィルムあるいは包装材への応用については何ら開示されていない。
【0008】
以上のように、殆ど無臭で匂い移りがなく、揮発性で空間抗菌性を有する抗菌性フィルムを提供する技術は今までに提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平3-151972号公報
【文献】特許第6372158号
【文献】特許第6304817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の課題は、接触する物品の特性(食品の風味など)を損なうことなく、十分な空間抗菌効果を発揮することができる抗菌フィルムおよびそれを用いた包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では以下のような構成を提案する。
まず第一の発明は、基材と、抗菌性薬剤を含む接着層、および熱融着樹脂層を含む抗菌フィルムであって、前記抗菌性薬剤が、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステル、またはイソベレラール、または1-フェニル-3-ペンタノンであり、前記抗菌フィルムを20分間にわたって150℃に加熱した際の前記抗菌性薬剤の揮発量が0.01g/m以上1.5g/m以下であることを特徴とする抗菌フィルムである。
【0012】
また、第二の発明は、前記基材がポリエステルまたはポリプロピレンを含む材料で構成されていることを特徴とする抗菌フィルムである。
【0013】
第三の発明は、前記基材が10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする抗菌フィルムである。
【0014】
第四の発明は、前記熱融着樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする抗菌フィルムである。
【0015】
第五の発明は、前記熱融着樹脂層が、10μm以上50μm以下の厚みを有することを特徴とする抗菌フィルムである。
【0016】
第六の発明は、前記熱融着樹脂層が、20μm以上40μm以下の厚みを有することを特徴とする抗菌フィルムである。
【0017】
第七の発明は、前記接着層が、1μm以上10μm以下の厚みを有することを特徴とする抗菌フィルムである。
【0018】
第八の発明は、前記いずれかの抗菌フィルムを用いて成ることを特徴とする包装材である。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成を採用することにより、本発明の抗菌フィルムおよび包装材は、接触する物品の特性(食品の風味など)を損なうことなく、長期間にわたって十分な空間抗菌効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の抗菌フィルムの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態としての抗菌フィルムは、基材、接着層、および熱融着樹脂層を少なくとも積層して成る。図1に、本実施形態の抗菌フィルムの概略断面図を示す。
【0022】
図1の抗菌フィルム100は、基材10、接着層20および熱融着樹脂層30を含む。接着層20には、接着剤と揮発性を有する抗菌性薬剤が含まれている。
以下、本実施形態の抗菌フィルムの各層について詳述する。
【0023】
(基材)
基材10は、フィルム用の基材として優れた機械的強度および優れた耐熱性を有することが望ましい。また、基材10は、用いる抗菌性薬剤の透過性が低い材料で形成することが望ましいため、好ましくはポリエステルおよびポリプロピレンを含む材料を用いる。
【0024】
基材10は、単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。また基材10は、10μm以上50μm以下の膜厚を有することが好ましい。この範囲内の膜厚を有することにより、良好な加工性および取り扱い性を得ることができる。
基材10の膜厚が10μm未満だと、抗菌性薬剤の透過性が高くなり、長時間効果を持続させられない場合がある。さらに、加工性及び取り扱い性が低下するおそれもある。また、50μmを超えても、それ以上の効果の増大は見込めない。
【0025】
さらに必要に応じて、基材10は、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0026】
(熱融着樹脂層)
熱融着樹脂層30は、包装材として用いる場合にはヒートシール性、即ち加熱時に被着材に対する優れた接着性を必要とするため、ポリオレフィン系樹脂を用いる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、および、環状オレフィンコポリマー(COC)からなる群から選択される樹脂を含む。
【0027】
熱融着樹脂層30は、単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。さらに、熱融着樹脂層30は、10μm以上50μm以下の膜厚を有していることが好ましい。
この範囲内の膜厚を有することにより、後述する接着層20に含まれる抗菌性薬剤の徐放性や、良好な加工性、取り扱い性、開封性、熱接着性を得ることができる。熱融着樹脂層30の膜厚が10μm未満だと、熱接着性(以下、ヒートシール強度)が不十分となる。また50μmを超えると、抗菌性薬剤の透過性が悪くなり、十分な抗菌効果を得ることが出来ない場合がある。
【0028】
より好ましくは、熱融着樹脂層30は20μm以上40μm以下の膜厚を有する。この範囲内の膜厚を有することにより、抗菌性薬剤の徐放性と熱接着性がさらに優れたものとなる。熱融着樹脂層30は必要に応じて、接着促進剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤、防曇剤、スリップ剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0029】
(接着層)
接着層20は、抗菌性薬剤と接着剤とを含む。これらの成分を適切に含むことによって、接着層20は、抗菌性薬剤の貯蔵および放出する機能と、基材10と熱融着樹脂層30とを接着させる機能とを有する。抗菌性薬剤の揮発性成分は、この接着層20から、熱融着樹脂層30を透過して放出される。
【0030】
接着層20に含まれる接着剤の非制限的な例としては、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、およびゴム系接着剤を含む群から任意に選択できる。
【0031】
接着層20に含まれる抗菌性薬剤は、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステル、またはイソベレラール、または1-フェニル-3-ペンタノンである。これらの抗菌性薬剤は、いずれもきのこから得られる抽出物に含まれており、それぞれブナシメジ、Russula属きのこ、ブナハリタケから得ることができる。これらの抗菌性薬剤は揮発性であるにもかかわらず臭いが弱いため、接触する物品の特性を損ねることがない抗菌フィルム、および包装材を提供することができる。
【0032】
接着層20は、好ましくは1μm~10μmの膜厚を有する。この範囲内の膜厚を有することにより、基材10と熱融着樹脂層30との接着強度(以下、「ラミネート強度」と称する場合がある)を十分に高くして、使用時または流通時の基材10および熱融着樹脂層30の剥離(デラミネーション)を防止することができる。同時に、接着層20を形成する際の加工性が向上する。
【0033】
より好ましくは、接着層20は、2μm~7μmの膜厚を有する。この範囲内の膜厚を有することにより、ラミネート強度をさらに増大させることができ、かつ、接着層20形成時の乾燥時間短縮および乾燥不良の防止が可能となる。
【0034】
必要に応じて、接着層20は、着色剤、充填材、紫外線吸収剤、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
【0035】
本発明の抗菌フィルムにおいて、所望される空間抗菌効果は、抗菌性薬剤の揮発量に依存する。本発明の抗菌フィルムは、20分間にわたって150℃に加熱した際に、0.01g/m以上1.5g/m以下の量で抗菌性薬剤を揮発することにより、所望される空間抗菌効果を達成することができる。揮発量が0.01g/m未満であると、十分な空間抗菌効果を発現することが困難になる。また、揮発量が1.5g/mを超えると、ラミネート強度が不十分となり、デラミネーションの原因となる。
【0036】
本発明の抗菌フィルムは、基材10の上に、接着剤および抗菌性薬剤を含む組成物を塗布して接着層20を形成し、さらに接着層20の上に熱融着樹脂層30を形成することで製造することができる。また熱融着樹脂層30の形成は、熱融着樹脂の押出ラミネート、熱融着フィルムのドライラミネートなどの当該技術において知られている任意の技術によって実施することができる。
【0037】
また、本発明の抗菌フィルムは、基材10の接着層20と反対側の面上、あるいは基材10と接着層20との間、接着層20と熱融着樹脂層30との間、または熱融着樹脂層30の接着剤層2と反対側の面上に、追加の層を含んでもよい。追加の層の非制限的な例としては、着色層、遮光層、ガスバリア層、水蒸気透過層、UV吸収層、保香層、遮熱層などを含む。これらの追加層は、抗菌フィルムとしての機能の発現を阻害しない限りにおいて、適宜利用目的に応じて選択してよい。
【0038】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態である包装材は、第1の実施形態の抗菌フィルムを用いて成ることを特徴とする。
本実施形態の包装材の非制限的な例としては、袋(MA包材、チャックつき袋など)、蓋材(トップ材)、シート、カバーフィルム、内装段ボールを含む。
【0039】
袋形状の包装材は、第1の実施形態の抗菌フィルムと、第2のフィルム(図示せず)とを、熱融着樹脂層30が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成することができる。なお第2のフィルムは、加熱した熱融着樹脂層30による接着が可能であることを条件として、PE、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP、PA(ポリアミド)などの当該技術において知られている任意の樹脂材料を用いて形成することができる。
【0040】
あるいはまた、袋形状の包装材は、2枚の第1の実施形態の抗菌フィルムを、熱融着樹脂層が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成してもよい。
さらに、貼り合わせを行う周縁部に第3のフィルム(図示せず)を介在させて、いわゆる「マチ」付きの袋を形成してもよい。袋形状の包装材は、矩形、円形、三角形を含む任意の形状を有してもよい。また、チャック付き袋は、機械加工によって、袋形状の包装材の開口部に開閉自在の嵌合部を設けたものである。なお第3のフィルムは、特に制限はないが、前述の第2のフィルムと同様のものを用いてもよく、適宜利用目的に応じて選択してよい。
【0041】
本実施形態の包装材を用いて包装される物品の非制限的な例は、食品の他にも、靴、衣類、文化財、布団、電子機器、皮革製品、木製品、紙製品(本など)、医療器具、および化粧品を含む。
【実施例
【0042】
以下に、上記実施形態の抗菌フィルムおよび包装材における実施例を示す。
【0043】
(実施例1)
最初に、接着剤としてウレタン接着剤、および抗菌性薬剤として2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルを含む塗布組成物を調製した。得られた塗布組成物を、12μmの膜厚を有するPET(東洋紡株式会社製E5100)製の基材10に塗布し、80℃の温度で乾燥させて接着層20を形成した。最後に、接着層20の上に、20μmの膜厚を有するPEフィルム(フタムラ化学株式会社製LL-XMTD)を貼り合わせて熱融着樹脂層30を形成し、抗菌フィルムを得た。
【0044】
続いて、得られた抗菌フィルムから、2cmの面積を有するサンプルを切り出した。サンプルを20mLバイアル瓶に導入し、20分間にわたって150℃に加熱した。バイアル瓶内の気体1mLを採取し、ガスクロマトグラフにて分析して、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの揮発量を求めた。本実施例の抗菌フィルムの2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの揮発量は、0.5g/mであった。
【0045】
次に、作製した抗菌フィルムから2枚のフィルムを切り出し、熱融着樹脂層30同士が対向するように貼り合わせて、JIS Z 0238:1998に準拠して、熱融着樹脂層30同士のT字剥離試験を行い、ヒートシール強度を測定した。
【0046】
得られた結果を、本実施例の抗菌フィルムの、熱融着樹脂層におけるヒートシール強度とした。20N以上のヒートシール強度を「○」、10N以上20N未満のヒートシール強度を「△」、10N未満のヒートシール強度を「×」と評価した。
【0047】
次に、作製した抗菌フィルムから、15mmの幅および10cmの長さを有するサンプルを切り出した。引張速度を300mm/minに変更したことを除いてJIS K6854-3:1999に準拠して、基材10と熱融着樹脂層30とのT字剥離試験を行い、剥離接着強さを測定した。
得られた剥離接着強さを、本実施例の抗菌フィルムの、基材と熱融着樹脂層の間におけるラミネート強度とした。1N以上のラミネート強度を「○」、0.5N以上1N未満のラミネート強度を「△」、0.5N未満のラミネート強度を「×」と評価した。
【0048】
さらに、得られた抗菌フィルムの臭気を官能評価した。不快臭がない場合を「○」、不快臭がある場合を「×」と評価した。
【0049】
次に、得られた抗菌フィルムから2枚のフィルムを切り出し、熱融着樹脂層30同士が対向するように貼り合わせて、10cm×10cmの内寸を有するパウチを得た。次に、直径5cmの円形の培地に、クロコウジカビ(Aspergillus niger)を1.0×10cfu/mLの生菌数濃度で含む菌液を塗布し、パウチ内に収容した。
【0050】
さらに、パウチ内に収容した培地を、25℃の条件で3日間および30日間にわたって
培養した。培養終了時の培地の状態を、抗カビ持続性として評価した。クロコウジカビ(Aspergillus niger)の生育が視覚的に観察されない場合を「○」、生育が視覚的に培地面積の1/3以下で見られた場合を[△]、生育が視覚的に観察された場合を「×」と評価した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
基材10の膜厚を25μmに変更したこと、および、熱融着樹脂層30の膜厚を40μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
基材10の膜厚を50μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
基材10の膜厚を25μmに変更したこと、および、熱融着樹脂層30の膜厚を10μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例5)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの使用量を変更(実施例1より減量)したこと、および、熱融着樹脂層30の膜厚を30μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、0.01g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0055】
(実施例6)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの使用量を変更(実施例1より増量)したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、1.5g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
熱融着樹脂層30の膜厚を50μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0057】
(実施例8)
熱融着樹脂層30をPPフィルム(三井化学東セロ株式会社製GLC)に変更したこと、および、膜厚を30μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例9)
基材10をPPフィルム(三井化学東セロ株式会社製OP-U1)に変更したこと、および、膜厚を20μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例10)
抗菌フィルムの作成方法を以下のように変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
最初に、ウレタン接着剤および2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒ
ドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルを含む塗布組成物を調製した。得られた塗布組成物を、12μmの膜厚を有するPET(東洋紡株式会社製E5100)製の基材10に塗布し、80℃の温度で乾燥させて接着層20を形成した。最後に、接着層20の上に、EVA樹脂(日本ポリエチレン株式会社製LV113)を押出ラミネート法によって貼り合わせて、熱融着樹脂層30を形成し、抗菌フィルムを得た。
【0060】
(実施例11)
抗菌性薬剤を、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてイソベレラールを含む塗布組成物を調製したこと、および、基材10の膜厚を25μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例12)
抗菌性薬剤を、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてイソベレラールを含む塗布組成物を調製したこと、イソベレラールの使用量を変更(実施例11より減量)したこと、および、熱融着樹脂層30の膜厚を30μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、0.01g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例13)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてイソベレラールを含む塗布組成物を調製したこと、イソベレラールの使用量を変更(実施例11より増量)したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、1.5g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例14)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてイソベレラールを含む塗布組成物を調製したこと、および、熱融着樹脂層30をPPフィルム(三井化学東セロ株式会社製GLC)に変更したこと、および、膜厚を30μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例15)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてイソベレラールを含む塗布組成物を調製したこと、および、基材10をPPフィルム(三井化学東セロ株式会社製OP-U1)に変更したこと、および、膜厚を20μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例16)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えて1-フェニル-3-ペンタノンを含む塗布組成物を調製したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えてアリルイソチオシアネートを含む塗布組成物を調製したことを
除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例2)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルに代えて酢酸オクチルを含む塗布組成物を調製したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例3)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの使用量を変更(実施例1より減量)したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、0.005g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例4)
2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステルの使用量を変更(実施例1より増量)したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた抗菌フィルムは、2.0g/mの揮発量を示した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例5)
熱融着樹脂層30の膜厚を100μmに変更したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。得られた包装袋の各数値および評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1より、実施例1~16の評価は、いずれも良好な結果となった。
これに対して比較例1、2の評価結果は、アリルイソチオシアネートや酢酸オクチルといった化合物を抗菌性薬剤として用いると、臭気が強くなってしまった。
また、比較例3から、接着層からの揮発量が少なすぎると薬剤量が十分でないため抗カビ性が得られないことが分かった。一方、比較例4では、接着層からの揮発量が多すぎると、接着層中の抗菌性薬剤の含有量が多すぎるために接着力が阻害され、ラミネート強度が低下することが分かった。比較例5では、熱融着樹脂層30の膜厚が厚すぎると、抗菌性薬剤の透過量が抑えられ、抗カビ性が得られないことが分かった。
【0073】
以上を総合すると、2-メチルプロパン酸2,2-ジメチル-1-(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)プロピルエステル、またはイソベレラール、または1-フェニル-3-ペンタノンを抗菌性薬剤として用い、揮発量を0.01~1.5g/mに設定すること、さらに、基材10にポリエステルまたはポリプロピレンを用いて膜厚を10μm以上50μm以下にし、熱融着樹脂層30にポリオレフィン系樹脂を用いて膜厚を10~50μmとした抗菌フィルムを用いることにより、不快臭の発生なしに、優れた抗カビ持続性を達成できることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0074】
10・・・基材
20・・・接着層
30・・・熱融着樹脂層
図1