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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】電源回路及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/28 20060101AFI20230426BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20230426BHJP
   G06F 1/30 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G06F1/28
H02M3/00 C
G06F1/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019034646
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020140378
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 達男
(72)【発明者】
【氏名】影山 弘進
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-210272(JP,A)
【文献】特開2009-038247(JP,A)
【文献】特開2009-043686(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080689(WO,A1)
【文献】特開平07-210275(JP,A)
【文献】特開2015-125450(JP,A)
【文献】特開2005-323479(JP,A)
【文献】特開2017-123745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26-1/3296
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続される複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記出力電圧を目標電圧値に調整する調整回路とを備え
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をv、前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記目標電圧値を変更し、前記出力電圧の電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる、電源回路。
【請求項2】
記検出回路は、前記負荷電圧の電圧値が、(v/n)よりも低く設定された閾値に対して低いことを検知することによって、前記負荷電圧の異常低下を検出する、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
記検出回路は、前記負荷電圧の電圧値が、(v/n)よりも高く設定された閾値に対して高いことを検知することによって、前記負荷電圧の異常上昇を検出する、請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数のスイッチを備え、
前記調整回路は、前記複数のスイッチのうち前記異常負荷に並列に接続されるスイッチをオンにする、請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
前記複数の負荷のうち前記負荷電圧の異常上昇が検出された異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記複数の負荷のうち前記負荷電圧の異常上昇が検出された異常負荷に並列に接続されるスイッチをオンにした後、前記異常負荷の前記負荷電圧の異常低下が検出された場合、前記目標電圧値を変更し、前記出力電圧の電圧値(v-(v/n)×m)まで低下させる、請求項4に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数の抵抗素子を備える、請求項4又は5に記載の電源回路。
【請求項7】
前記調整回路は、前記異常負荷の個数に応じて前記目標電圧値を変更する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項8】
前記調整回路は、前記異常負荷の個数に対応する調整量で前記出力電圧の電圧値が調整されるように前記目標電圧値を変更する、請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
直列に接続される複数の負荷と、
前記複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記出力電圧を目標電圧値に調整する調整回路とを備え
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をv、前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記目標電圧値を変更し、前記出力電圧の電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧源に直列に接続されるn個の回路ブロックと、n個の回路ブロックの各々に印加される電圧を検出する電圧検出回路とを備える制御装置が知られている。この制御装置は、直流電圧源の電圧のn分の1よりも低い電圧が検出された回路ブロックのインピーダンスを高くし、直流電圧源の電圧のn分の1よりも高い電圧が検出された回路ブロックのインピーダンスを低くする。このように、各回路ブロックのインピーダンスを検出電圧に応じて調整することによって、各回路ブロックに印加される電圧を、それぞれ、直流電圧源の電圧のn分の1に調整する技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-210275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、回路ブロックの演算機能を低める又は高める制御を行ったり、回路ブロックにカレントリミット素子を接続したりすることによって、回路ブロックのインピーダンスを調整するので、インピーダンスを調整可能な範囲が限られる。そのため、インピーダンスの調整範囲を超える電圧異常(つまり、インピーダンスの調整では対処できない電圧異常)が、直流電源に直列に接続される複数の負荷のいずれかに発生すると、残りの正常な負荷に対して安定した電圧を供給できない場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、直流電源に直列に接続される複数の負荷のいずれかに電圧異常が発生しても、残りの正常な負荷に対して安定した電圧を供給可能な電源回路及び電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
直列に接続される複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記出力電圧を目標電圧値に調整する調整回路とを備え
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をv、前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記目標電圧値を変更し、前記出力電圧の電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる、電源回路を提供する。
【0007】
また、本開示は、
直列に接続される複数の負荷と、
前記複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記出力電圧を目標電圧値に調整する調整回路とを備え
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をv、前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記目標電圧値を変更し、前記出力電圧の電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる、電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、直流電源に直列に接続される複数の負荷のいずれかに電圧異常が発生しても、残りの正常な負荷に対して安定した電圧を供給可能な電源回路及び電子装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における電子装置の構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態における負荷電圧検出回路の一部の構成例を示す図である。
図3】第1の実施形態における電源回路の動作例を示すタイミングチャートである。
図4】第2の実施形態における電子装置の構成例を示す図である。
図5】第2の実施形態における負荷電圧検出回路の一部の構成例を示す図である。
図6】第2の実施形態における電源回路の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態における電子装置の構成例を示す図である。図1に示す電子装置201は、直流電力を生成する電源回路101を備え、電源回路101により生成された直流電力で動作する。電源回路101は、電子装置201に内蔵されてもよいし外付けされてもよい。電子装置201の具体例として、サーバ、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置などが挙げられるが、本実施形態おける電子装置201は、これらの装置に限られない。後述の他の実施形態における電子装置についても同様である。
【0012】
電子装置201は、電源回路101の他に、直列に接続される複数の負荷素子1~nを備える。nは、2以上の整数であり、直列に接続される複数の負荷素子の個数を表す。本開示の技術は、直列に接続される複数の負荷素子の個数が2以上の場合に適用可能である。図1は、直列に接続される10個の負荷素子1~10を例示する。
【0013】
負荷素子1~nは、電源回路101により生成される出力電圧Voによって、電源回路101により直列給電される負荷である。負荷素子1~nは、それぞれ、出力電圧Voを分圧した電圧で動作する。負荷素子1~nは、例えば、互いに定格電圧が同じであり、互いに同一の回路構成を有する。負荷素子1~nは、それぞれ、単一の素子でもよいし、複数の素子を含む回路ブロックでもよい。図1は、直列に接続される10個のCPU(Central Processing Unit)を例示する。
【0014】
電子装置201は、直列に接続される複数の負荷素子1~nとは別に、少なくとも一つの負荷素子11を備えてもよい。負荷素子11は、負荷素子1~nとは直列に接続されていない負荷である。負荷素子11の両端には、電源回路101により生成される出力電圧Voが印加される。負荷素子11は、例えば、HDD(Hard Drive Disk)等の記憶装置を含む。
【0015】
電源回路101は、PSU(Power Supply Unit)20、負荷電圧検出回路30及び調整回路60を備える。調整回路60は、電圧調整指令回路40及び電圧調整回路50を有する。図1は、電圧調整回路50がPSU20の内部に存在する場合を例示するが、電圧調整回路50がPSU20の外部に存在してもよい。
【0016】
次に、電源回路101内のこれらの構成について説明する。
【0017】
PSU20は、直列に接続される複数の負荷素子1~nの両端に直流の出力電圧Voを印加する直流電源の一例である。例えば、PSU20は、外部から入力される入力電圧Vinの交流電力を出力電圧Voの直流電力に変換し、変換後の直流電力を複数の負荷素子1~nに供給する。例えば、PSU20は、AC100~AC240[V(ボルト)]の入力電圧Vinの交流電力を、DC12[V]の出力電圧Voの直流電力に変換する。AC,DCは、それぞれ、“Alternating Current“、”Direct Current“の略語である。なお、PSU20は、外部から入力される直流電力を出力電圧Voの直流電力に変換する回路でもよい。
【0018】
また、PSU20は、負荷電圧検出回路30及び調整回路60に印加する回路電源電圧Vccを生成する。例えば、PSU20は、外部から入力される交流又は直流の入力電圧Vinを直流の回路電源電圧Vccに変換する。
【0019】
負荷電圧検出回路30は、複数の負荷素子1~nの各々の両端に印加される負荷電圧V1~Vnを検出し、検出した負荷電圧V1~Vnの各々の異常を検出する。n個の負荷素子が直列に接続されているので、負荷電圧V1~Vnの異常が検出されていない状態では、負荷電圧V1~Vnの電圧値は、出力電圧Voの電圧値をn等分した値(=Vo/n)となる。この場合、負荷素子1~nは、それぞれ、電圧値(Vo/n)の負荷電圧で動作する。例えば、負荷電圧V1~Vnの異常が検出されていない状態での出力電圧Voの電圧値vが12ボルトのとき、10個の負荷素子1~10の各々の負荷電圧V1~V10の電圧値は、1.2ボルトである。
【0020】
直列に接続される複数の負荷素子の個数をn、負荷電圧V1~Vnの異常が検出されていない状態での出力電圧Voの電圧値をvとする。このとき、負荷電圧検出回路30は、負荷電圧V1~Vnの電圧値が、(v/n)よりも低く設定された閾値VLに対して低いことを検知することによって、負荷電圧V1~Vnの異常低下を検出する。例えば、n=10、v=12[V]のとき、閾値VLは、1.2(=12/10)ボルトよりも低い電圧値に設定される。閾値VLは、その設定値が高すぎると、負荷電圧V1~Vnの異常低下の誤検出を招くので、閾値VLの上限値は、例えば、(v/n)×0.5以下が好ましく、(v/n)×0.4以下がより好ましい。閾値VLの下限値は、零又は負の値でもよい。
負荷電圧V1~Vnの異常低下の典型的な例は、負荷素子1~nの短絡故障に伴う電圧低下である。短絡故障に伴う電圧低下は、異常な電圧低下が検出された負荷が短絡故障に至る途中の電圧低下でもよいし、異常な電圧低下が検出された負荷が短絡故障に至った後の電圧低下状態でもよい。
【0021】
図2は、第1の実施形態における負荷電圧検出回路30の一部の構成例を示す図である。負荷電圧検出回路30は、例えば、複数の負荷素子1~nのうち、対応する負荷素子に並列に接続される複数の電圧検出器を有する。図2は、電圧検出器の一例として、負荷素子1に並列に接続されるコンパレータ31を示す。コンパレータ31は、負荷素子1に印加される負荷電圧V1を検出する。負荷電圧検出回路30は、負荷電圧V1~Vnの各々と閾値VLとをn個のコンパレータ31により比較することによって、負荷電圧V1~Vnの各々の異常低下を検出する。
【0022】
負荷電圧V1に対応するコンパレータ31は、負荷電圧V1の異常低下の検出有無を表す異常検出信号を出力する。コンパレータ31は、負荷電圧V1が閾値VLよりも高いとき、負荷素子1に対応する異常検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常低下が検出されてないことを表す非アクティブレベル(例えば、ローレベル)にする。コンパレータ31は、負荷電圧V1が閾値VLよりも低いとき、負荷素子1に対応する異常検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常低下が検出されたことを表すアクティブレベル(例えば、ハイレベル)にする。他の負荷電圧V2~Vnの各々に対応するコンパレータ31についても同様である。
【0023】
図1において、調整回路60は、複数の負荷素子1~nのうち負荷電圧の異常低下が負荷電圧検出回路30により検出された負荷素子(異常負荷)の個数に応じて、出力電圧Voの電圧値を低下させる。負荷素子1~nのうちいずれかの負荷素子に電圧異常(この場合、異常な電圧低下)が発生すると、残りの正常な負荷素子に印加される各々の負荷電圧は、不安定になる。しかしながら、調整回路60は、異常負荷の個数に応じて出力電圧Voの電圧値を低下させるので、残りの正常な負荷素子に対して安定した電圧を継続的に供給できる。
【0024】
調整回路60は、電圧調整指令回路40及び電圧調整回路50を含む。
【0025】
電圧調整指令回路40は、異常負荷の個数に応じて、出力電圧Voの調整を指示する指令信号を出力する。電圧調整指令回路40は、異常負荷の個数に対応する調整量で出力電圧Voの電圧値を調整するように指令信号を出力する。
【0026】
電圧調整回路50は、出力電圧Voを目標電圧値に調整する。例えば、電圧調整回路50は、出力電圧Voが目標電圧値に収束するように、PSU20内の少なくとも一つのスイッチング素子を制御する。電圧調整回路50は、電圧調整指令回路40からの指令信号に応じて目標電圧値を変更することによって、異常負荷の個数に対応する調整量で出力電圧Voの電圧値を調整する。
【0027】
例えば、直列に接続される複数の負荷素子の個数をn、負荷電圧V1~Vnの異常が検出されていない状態での出力電圧Voの電圧値をv、異常負荷の個数をmとする。このとき、異常が検出されていない状態での各々の負荷電圧V1~Vnの電圧値は、(v/n)である。複数の負荷素子1~nのうちm個の負荷素子が短絡故障したとすると、短絡故障したm個の異常負荷の負荷電圧の電圧値は、0ボルトに低下し、短絡故障していない残りの正常な負荷素子の各々の負荷電圧の電圧値は、(v/(n-m))ボルトに上昇する。電圧調整指令回路40は、出力電圧Voの電圧値を、調整量((v/n)×m)だけ低下させる指令信号を出力する。電圧調整回路50は、当該指令信号に従って、出力電圧Voの電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる。
【0028】
v-(v/n)×mは、
v-(v/n)×m=(1-(m/n))×v
=((n-m)/n)×v
・・・式1
と変形できる。
【0029】
つまり、出力電圧Voの電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させることによって、短絡故障していない残りの正常な負荷素子の各々の負荷電圧の電圧値は、式1を当該正常な負荷素子の個数(n-m)で等分した値(v/n)に上昇する。このように、(n-m)個の正常な負荷素子の負荷電圧の電圧値を、異常発生前の電圧値(v/n)に戻すことができる。
【0030】
図3は、第1の実施形態における電源回路101の動作例を示すフローチャートである。図3は、直列に接続される10個のCPU1~10のうち、CPU1が短絡故障した場合を例示する。
【0031】
10個のCPUが直列に接続されているので、各CPUに印加される負荷電圧は、出力電圧Voの電圧値v(=12[V])を10個等分で割った1.2ボルトとなる。CPU1に内部短絡が発生すると、CPU1の負荷電圧V1の電圧値は、0ボルトに低下し、正常な残りのCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、12ボルトを9等分した値である約1.33ボルトに上昇する。
【0032】
負荷電圧検出回路30は、CPU1の負荷電圧V1の異常低下を検出したことを表す異常検出信号を電圧調整指令回路40に送出する。負荷電圧検出回路30から送出された異常検出信号を受けて、電圧調整指令回路40は、電圧調整回路50に対してCPU1個分の調整量(1.2ボルト)だけ、出力電圧Voの電圧値を低下させる指令信号を出力する。電圧調整回路50は、この指令信号に従って、出力電圧Voの電圧値を、12ボルトから10.8ボルトに低下させる。これにより、正常なCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、1.33ボルトから1.2ボルト(出力電圧Voを低下させた後の電圧値10.8ボルトを9等分した電圧値)に低下する。つまり、正常なCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、異常発生前の元の電圧値1.2ボルトに戻る。
【0033】
このように、第1の実施形態によれば、負荷電圧の異常低下が検出された負荷の個数に応じて出力電圧Voの電圧値を低下させることで、残りの正常な負荷素子に対して安定した電圧を継続的に供給できる。その結果、残りの正常な負荷素子が、各々に印加される電源電圧の低下により停止することなく、継続的な稼働が可能となる。また、電子装置201のシステムダウンを回避でき、信頼性が向上する。
【0034】
図4は、第2の実施形態における電子装置の構成例を示す図である。図4に示す電子装置202は、直流電力を生成する電源回路102を備え、電源回路102により生成された直流電力で動作する。第1の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0035】
電源回路102は、複数の負荷素子1~nと同数の複数のスイッチSW1~SWnと、複数の負荷素子1~nと同数の抵抗素子R1~Rnと、スイッチ駆動回路70とを備える点で、上述の電源回路101と異なる。図4は、10個のスイッチSW1~SW10と、10個の抵抗素子R1~R10を例示する。
【0036】
複数のスイッチSW1~SWnは、複数の負荷素子1~nのうち、対応する負荷素子に並列に接続されている。抵抗素子R1~R10は、複数の負荷素子1~nのうち、対応する負荷素子に並列に接続されている。
【0037】
負荷電圧検出回路35は、複数の負荷素子1~nの各々の両端に印加される負荷電圧V1~Vnを検出し、検出した負荷電圧V1~Vnの各々の異常を検出する。
【0038】
直列に接続される複数の負荷素子の個数をn、負荷電圧V1~Vnの異常が検出されていない状態での出力電圧Voの電圧値をvとする。このとき、負荷電圧検出回路35は、負荷電圧V1~Vnの電圧値が、(v/n)よりも低く設定された閾値VLに対して低いことを検知することによって、負荷電圧V1~Vnの異常低下を検出する。負荷電圧V1~Vnの異常低下の典型的な例は、負荷素子1~nの短絡故障に伴う電圧低下である。
また、負荷電圧検出回路35は、負荷電圧V1~Vnの電圧値が、(v/n)よりも高く設定された閾値VHに対して高いことを検知することによって、負荷電圧V1~Vnの異常上昇を検出する。例えば、n=10、v=12[V]のとき、閾値VHは、1.2(=12/10)ボルトよりも高い電圧値に設定される。閾値VHは、その設定値が低すぎると、負荷電圧V1~Vnの異常上昇の誤検出を招くので、閾値VHの下限値は、例えば、(v/n)×1.02以上が好ましく、(v/n)×1.03以上がより好ましい。また、閾値VHは、その設定値が高すぎると、残りの正常な負荷素子の各々の負荷電圧が過度に低下してしまうため、閾値VHの上限値は、例えば、(v/n)×1.10以下が好ましく、(v/n)×1.08以下がより好ましい。
負荷電圧V1~Vnの異常上昇の典型的な例は、負荷素子1~nのオープン故障に伴う電圧上昇である。オープン故障に伴う電圧上昇は、異常な電圧上昇が検出された負荷がオープン故障に至る途中の電圧上昇でもよいし、異常な電圧上昇が検出された負荷がオープン故障に至った後の電圧上昇状態でもよい。
【0039】
図5は、第2の実施形態における負荷電圧検出回路35の一部の構成例を示す図である。負荷電圧検出回路35は、例えば、複数の負荷素子1~nのうち、対応する負荷素子に並列に接続される複数の電圧検出器を有する。図5は、電圧検出器の一例として、負荷素子1に並列に接続されるコンパレータ31,32を示す。負荷電圧検出回路35は、負荷電圧V1~Vnの各々と閾値VLとをn個のコンパレータ31により比較することによって、負荷電圧V1~Vnの各々の異常低下を検出する。また、負荷電圧検出回路30は、負荷電圧V1~Vnの各々と閾値VHとをn個のコンパレータ32により比較することによって、負荷電圧V1~Vnの各々の異常上昇を検出する。
【0040】
負荷電圧V1に対応するコンパレータ31は、負荷電圧V1の異常低下の検出有無を表す異常低下検出信号を出力する。コンパレータ31は、負荷電圧V1が閾値VLよりも高いとき、負荷素子1に対応する異常低下検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常低下が検出されてないことを表す非アクティブレベル(例えば、ローレベル)にする。コンパレータ31は、負荷電圧V1が閾値VLよりも低いとき、負荷素子1に対応する異常低下検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常低下が検出されたことを表すアクティブレベル(例えば、ハイレベル)にする。他の負荷電圧V2~Vnの各々に対応するコンパレータ31についても同様である。
【0041】
負荷電圧V1に対応するコンパレータ32は、負荷電圧V1の異常上昇の検出有無を表す異常上昇検出信号を出力する。コンパレータ32は、負荷電圧V1が閾値VHよりも低いとき、負荷素子1に対応する異常上昇検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常上昇が検出されていないことを表す非アクティブレベル(例えば、ローレベル)にする。コンパレータ32は、負荷電圧V1が閾値VHよりも高いとき、負荷素子1に対応する異常上昇検出信号のレベルを、負荷電圧V1の異常上昇が検出されたことを表すアクティブレベル(例えば、ハイレベル)にする。他の負荷電圧V2~Vnの各々に対応するコンパレータ32についても同様である。
【0042】
図4において、電圧調整指令回路40は、複数の負荷素子1~nのうち負荷電圧の異常上昇が負荷電圧検出回路30により検出された負荷素子(異常上昇負荷)に対応するスイッチをオンさせるスイッチ制御信号を出力する。また、電圧調整指令回路40は、複数の負荷素子1~nのうち負荷電圧の異常低下が負荷電圧検出回路30により検出された負荷素子(異常低下負荷)の個数に応じて、出力電圧Voの調整を指示する指令信号を出力する。電圧調整指令回路40は、異常低下負荷の個数に対応する調整量で出力電圧Voの電圧値を調整するように指令信号を出力する。
【0043】
スイッチ駆動回路70は、電圧調整指令回路40から出力されるスイッチ制御信号に従って、複数のスイッチSW1~SWnのうち対応するスイッチをオンさせる。ここで、負荷素子がオープン故障となる前に、当該負荷素子に対応するスイッチをオンさせることで、異常上昇負荷のオープン故障によって残りの正常な負荷素子の動作停止を防止できる。
【0044】
異常上昇負荷が完全にオープン故障すると、残りの正常な負荷の各々に印加される電圧が零になってしまう。これを防ぐため、抵抗素子R1~Rnは、複数の負荷素子1~nのうちいずれかの異常上昇負荷がオープン故障に至る途中の電圧上昇を緩和することによって、異常上昇負荷に対応するスイッチがオンする前に異常上昇負荷がオープン故障になることを防止する。
【0045】
図6は、第2の実施形態における電源回路102の動作例を示すフローチャートである。図3は、直列に接続される10個のCPU1~10のうち、CPU1が短絡故障した場合を例示する。
【0046】
10個のCPUが直列に接続されているので、各CPUに印加される負荷電圧は、出力電圧Voの電圧値v(=12[V])を10個等分で割った1.2ボルトとなる。CPU1がオープン故障になる場合、CPU1の負荷電圧の電圧値は、1,2ボルトから上昇し、正常な残りのCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、1.2ボルトから低下する。
【0047】
負荷電圧検出回路30は、CPU1の負荷電圧V1が閾値VH(この場合、1.32(=(12/10)×1.1)に設定)を超えると、CPU1の異常上昇検出信号をアクティブにする。スイッチ駆動回路70は、CPU1の異常上昇検出信号のアクティブを検出することによって、CPU1に並列に接続されるスイッチSW1をオンにする。これにより、CPU1の負荷電圧V1の電圧値は、0ボルトに低下する。
【0048】
負荷電圧検出回路30は、スイッチSW1のオンによる負荷電圧V1の異常低下を検出し、この異常低下を検出したことを表す異常低下検出信号を電圧調整指令回路40に送出する。負荷電圧検出回路30から送出された異常低下検出信号を受けて、電圧調整指令回路40は、電圧調整回路50に対してCPU1個分の調整量(1.2ボルト)だけ、出力電圧Voの電圧値を低下させる指令信号を出力する。電圧調整回路50は、この指令信号に従って、出力電圧Voの電圧値を、12ボルトから10.8ボルトに低下させる。これにより、正常なCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、1.18ボルトから1.2ボルト(出力電圧Voを低下させた後の電圧値10.8ボルトを9等分した電圧値)に低下する。つまり、正常なCPU2~10の各々の負荷電圧の電圧値は、異常発生前の元の電圧値1.2ボルトに戻る。
このように、第2の実施形態によれば、負荷電圧の異常上昇の検出後に異常低下が検出された負荷の個数に応じて出力電圧Voの電圧値を低下させることで、残りの正常な負荷素子に対して安定した電圧を継続的に供給できる。その結果、残りの正常な負荷素子が、各々に印加される電源電圧の低下により停止することなく、継続的な稼働が可能となる。また、電子装置202のシステムダウンを回避でき、信頼性が向上する。
【0049】
以上、電源回路及び電子装置を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0050】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
直列に接続される複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数に応じて、前記出力電圧を低下させる調整回路とを備える、電源回路。
(付記2)
前記異常は、前記負荷電圧の異常低下を含む、付記1に記載の電源回路。
(付記3)
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をvとするとき、
前記検出回路は、前記負荷電圧の電圧値が、(v/n)よりも低く設定された閾値に対して低いことを検知することによって、前記負荷電圧の異常低下を検出する、付記2に記載の電源回路。
(付記4)
前記異常低下は、前記異常負荷の短絡故障に伴う電圧低下である、付記2又は3に記載の電源回路。
(付記5)
前記異常は、前記負荷電圧の異常上昇を含む、付記1から4のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記6)
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をvとするとき、
前記検出回路は、前記負荷電圧の電圧値が、(v/n)よりも高く設定された閾値に対して高いことを検知することによって、前記負荷電圧の異常上昇を検出する、付記5に記載の電源回路。
(付記7)
前記異常は、前記異常負荷のオープン故障に伴う電圧上昇である、付記5又は6に記載の電源回路。
(付記8)
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数のスイッチを備え、
前記調整回路は、前記複数のスイッチのうち前記異常負荷に並列に接続されるスイッチをオンにする、付記5から7のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記9)
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数のスイッチを備え、
前記調整回路は、前記複数のスイッチのうち前記異常負荷に並列に接続されるスイッチを前記異常負荷がオープン故障となる前にオンにする、付記1から6のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記10)
直列に接続される複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記出力電圧を調整する調整回路と、
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数のスイッチとを備え、
前記調整回路は、前記複数の負荷のうち前記負荷電圧の異常上昇が検出された異常負荷に並列に接続されるスイッチをオンにした後、前記異常負荷の前記負荷電圧の異常低下が検出された場合、前記出力電圧を低下させる、電源回路。
(付記11)
前記調整回路は、前記異常負荷に並列に接続されるスイッチを前記異常負荷がオープン故障となる前にオンにした後、前記異常低下が検出された場合、前記出力電圧を低下させる、付記10に記載の電源回路。
(付記12)
前記複数の負荷のうち、対応する負荷に並列に接続される複数の抵抗素子を備える、付記8から11のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記13)
前記複数の負荷の個数をn、前記異常が検出されていない状態での前記出力電圧の電圧値をv、前記異常負荷の個数をmとするとき、
前記調整回路は、前記出力電圧の電圧値を(v-(v/n)×m)まで低下させる、付記1から12のいずれか一項に記載の電源回路。
(付記14)
直列に接続される複数の負荷と、
前記複数の負荷の両端に直流の出力電圧を印加する直流電源と、
前記複数の負荷の各々に印加される負荷電圧の異常を検出する検出回路と、
前記複数の負荷のうち前記異常が検出された異常負荷の個数に応じて、前記出力電圧を低下させる調整回路とを備える、電子装置。
(付記15)
前記複数の負荷は、プロセッサである、付記14に記載の電子装置。
【符号の説明】
【0051】
1~11 負荷素子
20 PSU
30,35 負荷電圧検出回路
40 電圧調整指令回路
50 電圧調整回路
60 調整回路
70 スイッチ駆動回路
101,102 電源回路
201,202 電子装置
SW1~SW10 スイッチ
R1~R10 抵抗素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6