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特許7268440フェライト焼結磁石及びこれを備える回転電気機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】フェライト焼結磁石及びこれを備える回転電気機械
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/10 20060101AFI20230426BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230426BHJP
   C04B 35/26 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H01F1/10
H01F41/02 G
C04B35/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019059935
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020161657
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】村川 喜堂
(72)【発明者】
【氏名】室屋 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】森田 啓之
(72)【発明者】
【氏名】池田 真規
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005004(JP,A)
【文献】特開2017-126719(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216594(WO,A1)
【文献】特開2015-181147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/10
H01F 41/02
C04B 35/26
H01F 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶構造を有するM型Srフェライトを主相として含むフェライト焼結磁石であって、
希土類元素及びCoを実質的に含まず、
Naの含有量が、Na O換算で、0.005質量%以下であり、
Bの含有量が、B換算で、0.005~0.9質量%であり、
Znの含有量が、ZnO換算で、0.01~1.2質量%である、フェライト焼結磁石。
【請求項2】
Siの含有量が、SiO換算で、0.05~1.3質量%である、請求項1に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項3】
Caの含有量が、CaO換算で、0.15~2.0質量%である、請求項1または2に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項4】
Feの原子濃度を[Fe]、Srの原子濃度を[Sr]と表したときに、
11.3≦[Fe]/[Sr]≦13.1を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項5】
B、Ca、及び、Znの合計原子濃度を[B+Ca+Zn]、Siの原子濃度を[Si]と表したときに、
0.92≦[B+Ca+Zn]/[Si]≦11.45を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項6】
Ca、Sr、及び、Baの合計原子濃度を[Ca+Sr+Ba]、
Fe、Mn、Zn、Cr、及び、Alの合計原子濃度を[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]、
Si、及び、Bの合計原子濃度を[Si+B]、及び、
Z=([Ca+Sr+Ba]-[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]/12)/[Si+B]と表したときに、
0.1≦Z≦3.25を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項7】
MnをMnO換算で0.25~1.5質量%含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項8】
CrをCr換算で0.03~0.2質量%含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のフェライト焼結磁石を備える回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト焼結磁石及びそれを備える回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト焼結磁石に用いられる磁性材料として、六方晶系の結晶構造を有するBaフェライト、Srフェライト、及びCaフェライトが知られている。近年、これらの中でも、モータ等の回転電気機械の磁石材料として、主にマグネトプランバイト型(M型)のSrフェライトが注目されている。M型フェライトはAFe1219の一般式で表され、M型Srフェライトは、AサイトにSrを含む。
【0003】
近年では、M型Srフェライトとして、原料コストの低減の観点から希土類元素及びCoを含まないもの、例えば、Naを含むものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2013/125600号公報
【文献】WO2013/125601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、希土類元素及びCoを含まないフェライト焼結磁石において、残留磁束密度(Br)のより一層の向上が求められている。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、希土類元素及びCoを含まず、かつ、残留磁束密度に優れたフェライト焼結磁石及びこれを用いた回転電気機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフェライト焼結磁石は、六方晶構造を有するM型Srフェライトを主相として含むフェライト焼結磁石である。この磁石は、希土類元素及びCoを実質的に含まず、
Bの含有量が、B換算で、0.005~0.9質量%であり、
Znの含有量が、ZnO換算で、0.01~1.2質量%である。
【0007】
ここで、Siの含有量が、SiO換算で、0.05~1.3質量%であることができる。
【0008】
また、Caの含有量が、CaO換算で、0.15~2.0質量%であることができる。
【0009】
また、Feの原子濃度を[Fe]、Srの原子濃度を[Sr]と表したときに、
11.3≦[Fe]/[Sr]≦13.1を満たすことができる。
【0010】
また、B、Ca、及び、Znの合計原子濃度を[B+Ca+Zn]、Siの原子濃度を[Si]と表したときに、0.92≦[B+Ca+Zn]/[Si]≦11.45を満たすことができる。
【0011】
また、Ca、Sr、及び、Baの合計原子濃度を[Ca+Sr+Ba]、
Fe、Mn、Zn、Cr、及び、Alの合計原子濃度を[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]、
Si、及び、Bの合計原子濃度を[Si+B]、及び、
Z=([Ca+Sr+Ba]-[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]/12)/[Si+B]と表したときに、
0.1≦Z≦3.25を満たすことができる。
【0012】
また、MnをMnO換算で0.25~1.5質量%含有することができる。
【0013】
また、CrをCr換算で0.03~0.2質量%含有することができる。
【0014】
本発明に係る回転電気機械は、上述のフェライト焼結磁石を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、希土類元素及びCoを含まず、かつ、残留磁束密度に優れたフェライト焼結磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のフェライト焼結磁石の断面構造の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明のフェライト焼結磁石を有するモータの断面模式図である。
図3図3の(a)は抗折強度試験を行ったフェライト焼結磁石Sの斜視図であり、図3の(b)は抗折強度試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(フェライト焼結磁石)
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石は、Fe、Sr、B、Znを少なくとも含む酸化物である。
フェライト焼結磁石におけるFeの含有量は、Fe換算で、好ましくは80~95質量%であり、より好ましくは87~90質量%である。上記範囲とすることにより良好な磁気特性が得られる。
【0019】
また、フェライト焼結磁石におけるSrの含有量は、SrO換算で、好ましくは9~11質量%であり、より好ましくは9~10質量%である。上記範囲とすることにより良好な磁気特性が得られる。
【0020】
フェライト焼結磁石中のFeの原子濃度を[Fe]、Srの原子濃度を[Sr]と表したときに、11.3≦[Fe]/[Sr]≦13.1を満たすことが好ましい。下限は、11.9であってもよく、12.1であってもよい。上限は、12.9であってもよく、12.7であってもよい。化学量論組成は12であり、その近傍の組成で良好な特性を示す。
【0021】
フェライト焼結磁石におけるBの含有量は、B換算で、0.005~0.9質量%である。
【0022】
フェライト焼結磁石におけるZnの含有量は、ZnO換算で、0.01~1.2質量%である。
【0023】
B及びZnを上述の範囲で含有すると、保磁力(HcJ)を大きく損なうことなく、残留磁束密度(Br)を高くすることができる。角型比(Hk/HcJ)も高くなりやすく、強度も高くなり易い。
【0024】
Znが反平行方向に向いた磁気モーメントを有するFeのサイトを選択的に置換することで、飽和磁化Brが向上するものと考えられる。その反面、Znが置換したことにより結晶磁気異方性が下がるために保磁力が低下するが、Bを含有する粒界相が均質に形成されることにより、結晶粒間の磁気的相互作用を抑制する効果が働き、保磁力の低下を抑制し、保磁力を維持することができると推測される。また、BとZnを含有することで、機械的強度が向上することから、Znの一部はBとともに粒界相を形成していることが推測されるが、必ずしも詳細は明らかではない。
【0025】
フェライト焼結磁石の保磁力及び角型比(Hk/HcJ)をさらに高める観点から、Bの含有量は、B換算で、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であることができる。また、フェライト焼結磁石の残留磁束密度(Br)をさらに高める観点から、Bの含有量は、B換算で、好ましくは0.4質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0026】
フェライト焼結磁石の残留磁束密度(Br)をさらに高める観点から、Znの含有量は、ZnO換算で、好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上であることができる。また、フェライト焼結磁石の保磁力及び角型比(Hk/HcJ)をさらに高める観点から、Znの含有量は、ZnO換算で、好ましくは0.7質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下である。
【0027】
フェライト焼結磁石は、希土類元素及びCo(コバルト)を実質的に含まない。希土類元素とは、Sc,Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、および、Luである。
【0028】
フェライト焼結磁石はNiを含んでもよいが、実質的にNiを含まないことが好適である。Niの濃度は、0.02質量%以下とすることができる。
【0029】
フェライト焼結磁石はCuを含んでもよいが、実質的にCuを含まないことが好適である。Cuの濃度は、0.02質量%以下とすることができる。
【0030】
これらの金属を含まないことで、コストの低減が可能となる。
【0031】
ここで、フェライト焼結磁石が元素Aを実質的に含まないとは、フェライト焼結磁石における元素Aの濃度が酸化物換算で0.005質量%未満であることを言う。当該元素Aの濃度は酸化物換算で0.001質量%未満であることが好ましい。
【0032】
フェライト焼結磁石は、Si(シリコン)を含むことができる。フェライト焼結磁石におけるSiの含有量は、SiO換算で、好ましくは0.05~1.3質量%であり、より好ましくは0.2~0.5質量%、さらに好ましくは0.25~0.36質量%である。SiOが多すぎるとBrが低下し、少なすぎるとHcJが低下する傾向があるため、SiO含有量を上記範囲内とすることで、最適な粒界相を形成して、高い磁気特性を得やすくなる。
【0033】
フェライト焼結磁石は、Ca(カルシウム)を含むことができる。フェライト焼結磁石におけるCaの含有量は、CaO換算で、好ましくは0.15~2.0質量%であり、より好ましくは0.4~1.0質量%、さらに好ましくは0.47~0.62質量%である。Caが多すぎるとHcJが低下し、少ないとBrが低下する傾向があるため、Caの含有量を上記範囲内とすることで、最適な粒界相を形成して、高い磁気特性を得やすくなる。
【0034】
また、フェライト焼結磁石におけるB、Ca、及び、Znの合計原子濃度を[B+Ca+Zn]、Siの原子濃度を[Si]と表したときに、0.92≦[B+Ca+Zn]/[Si]≦11.45を満たすことが好ましい。
【0035】
この式は、粒界相を形成する副成分と考えられるB、Ca、Znの総モルの和を、粒界相を形成する主成分と考えられるSiOのモルで除した式である。上の範囲を満たすことで特に、最適な粒界相を形成し、高いHcJ及びBrを得やすい。
【0036】
また、フェライト焼結磁石は、Ba(バリウム)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、及び、Al(アルミニウム)から選択される一種以上を含むことができる。
【0037】
また、Ca、Sr、及び、Baの合計原子濃度を[Ca+Sr+Ba]、
Fe、Mn、Zn、Cr、及び、Alの合計原子濃度を[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]、
Si、及び、Bの合計原子濃度を[Si+B]、及び、
Z=([Ca+Sr+Ba]-[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]/12)/[Si+B]と表したときに、
0.1≦Z≦3.25を満たすことができる。
【0038】
Zは、粒界相の金属及び半金属の組成比を表し、フェライト格子を置換可能な成分(分子)と、フェライト格子を置換しない成分(分母)との比を表現した式であり、式の範囲を満たすことで特に良好な磁気特性を得ることができる。ここでは、Mn,Zn,Cr及びAlが、Feとともに、一般式(2)に示すSrフェライトのBサイトを構成し、Ba及びCaが、Srとともに一般式(2)に示すSrフェライトのAサイトを構成し、Si及びBが粒界相を構成すると考えている。
【0039】
Zが所定の範囲内の場合には、本焼成時に特にSiとBが中心となって液相が形成され、従来よりも十分な緻密化と粒成長の抑制及び各成分の均一な固溶が可能となる。その結果、フェライト焼結磁石は、優れた磁気特性と高い機械強度を発揮すると考えられる。
【0040】
一方、Zが、小さすぎる場合は、緻密化が不十分となり残留磁束密度(Br)、保磁力、機械強度が低下する傾向がある。そのため、フェライト焼結磁石におけるZは、0.5以上であり、好ましくは0.7以上である。また、Zが大きすぎる場合は十分な粒成長抑制効果を得ることができず、粒子径が不均一となり残留磁束密度(Br)、保磁力、機械強度、角型比(Hk/HcJ)が低下する傾向にある。そのため、フェライト焼結磁石におけるZは、2.0以下であり、好ましくは1.5以下である。
【0041】
フェライト焼結磁石におけるMnの含有量は、MnO換算で、好ましくは0.25~1.5質量%である。上記範囲を満足するMnがFeのサイトを置換することで、磁気特性向上の効果が得られやすくなるほか、Znの固溶を促進する働きなどが推測される。
【0042】
フェライト焼結磁石におけるCrの含有量は、Cr換算で、好ましくは0.03~0.2質量%である。上記範囲を満足するCrがFeのサイトを置換することで、磁気特性向上の効果が得られやすくなるほか、Znの固溶を促進する働きなどが推測される。
【0043】
フェライト焼結磁石はBaを含有する必要は無いが、Baを含んでもよい。Baの含有量は、BaO換算で、好ましくは0~0.2質量%である。上記範囲を満足することにより、磁気特性(特に、残留磁束密度(Br))を良好に保つことができる。
【0044】
また、フェライト焼結磁石は、Alを含有する必要は無いが、Alを含んでもよい。Alの含有量は、Al換算で、0~0.2質量%とすることができる。
【0045】
フェライト焼結磁石は、Naを含有する必要は無く、Naを実質的に含まないことが好適である。Naの含有量は、NaO換算で、0.005質量%以下であることが好適である。さらに、0.001質量%以下であることが好適である。Naの含有量が少ないほうが成形性に優れる。
【0046】
フェライト焼結磁石には、これらの成分の他に、原料に含まれる不純物や製造設備に由来する不可避的な成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えばMg(マグネシウム),Ti(チタン),Mo(モリブデン)及びV(バナジウム)等の各酸化物が挙げられる。これらの含有量は、合計で0.06質量%以下であることが好適である。
【0047】
なお、フェライト焼結磁石の各成分の含有量は、蛍光X線分析及び誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)によって測定することができる。
【0048】
本発明の実施形態に係るフェライト焼結磁石100は、図1に示すように、主成分(主相)として、六方晶構造を有するM型Srフェライトの結晶粒4と、結晶粒4間に存在する粒界相6とを有する。
【0049】
M型Srフェライトの例は、以下の式(2)で表されるフェライトである。
SrFe1219 (2)
上式(2)のM型SrフェライトにおけるAサイトのSr及びBサイトのFeは、他の元素によって、その一部が置換されていてもよい。
【0050】
このような置換型のM型Srフェライトは、例えば以下の一般式(3)で表すことができる。
Sr1-z(Fe12-x19 (3)
【0051】
上式(3)中、xは、例えば0.01~0.5であり、yは、例えば0.7~1.2であり、zは、例えば、0.01~0.49である。
【0052】
上式(3)におけるRは、Ca及び/又はBaであることができる。
【0053】
上式(3)におけるMは、Zn(亜鉛)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)及びCr(クロム)からなる群より選ばれる1種以上の元素であることができる。
【0054】
なお、上式(2)及び(3)におけるAサイト及びBサイトの比率や、酸素(O)の比率は、実際には上記範囲から多少偏った値を示すことから、上記の数値から若干ずれていてもよい。
【0055】
好ましくは、フェライト焼結磁石におけるM型Srフェライトは、上式(3)で表され、Mは少なくともZn(亜鉛)を含む。
【0056】
フェライト焼結磁石における全結晶粒に占めるM型Srフェライト相の質量比率は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。このように、M型Srフェライト相とは異なる結晶相の質量比率を低減することによって、磁気特性を一層高くすることができる。フェライト焼結磁石の全結晶粒におけるM型Srフェライト相の質量比率(%)は、X線回折により、M型Srフェライト相の存在比率(モル%)を求めることで確認することができる。M型Srフェライト相の存在比率は、M型フェライト、オルソフェライト、ヘマタイト、スピネル、W型フェライト、それぞれの粉末試料を所定比率で混合し、それらのX線回折強度から比較算定することにより算出される。
【0057】
フェライト焼結磁石における結晶粒4の平均粒径は、好ましくは2.0μm以下であり、より好ましくは1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.3~1.0μmである。結晶粒の平均粒径が2.0μmを超えると、十分に優れた磁気特性を得ることが困難になる傾向にある。一方、結晶粒の平均粒径が0.3μm未満のフェライト焼結磁石は、製造(量産)することが困難になる傾向にある。
【0058】
また、フェライト焼結磁石に含まれる結晶粒の粒径はばらつきが小さい方が好ましい。具体的には、結晶粒全体に対する該結晶粒の粒径が2.0μm以上である結晶粒の個数基準の割合は、好ましくは2%以下であり、1%以下であることがより好ましい。結晶粒の均一性が向上することにより、高い磁気特性を一層高くしつつ信頼性も向上できる。
【0059】
また、結晶粒のアスペクト比の個数平均値(平均アスペクト比)は、約1.0であることが好ましい。これにより、十分に高い磁気特性を有するフェライト焼結磁石とすることができる。
【0060】
フェライト焼結磁石の結晶粒の粒径は以下の手順で測定することができる。フェライト焼結磁石から切り出した試料を薄片化してTEMによって観察する。または、当該試料の断面を、鏡面研磨してフッ酸等の酸でエッチング処理してSEMなどで観察する。数百個の結晶粒を含むSEM又はTEMの観察画像において、結晶粒の輪郭を明確化したのち、画像処理などを行って、a面の粒径分布を測定する。本明細書における「粒径」は、a面における長径(a軸方向の径)をいう。さらに、重心を通る最大径を長径、重心を通る最少径を短径としたとき、短径に対する長径の比が「アスペクト比」である。なお、酸によるエッチングに代えて、試料を加熱してエッチングする、いわゆるサーマルエッチングを行ってもよい。
【0061】
測定した個数基準の粒径分布から、結晶粒の粒径の個数基準の平均値をD50として算出できる。
【0062】
粒界相6は酸化物を主成分とする。具体的には、酸化物として、B(ホウ素)、Si(ケイ素)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Cr(クロム)、及びAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも一種を有する酸化物並びにこれらの元素の2種以上を有する複合酸化物が挙げられる。このような酸化物としては、例えばSiO、CaO、BaO、Al,ZnO、Fe、MnO、Cr、B等が挙げられる。またケイ酸ガラスを含んでもよい。粒界相は、酸化物を90質量%以上含むことができ、95質量%以上含むことができ、97質量%以上含むことができる。
【0063】
フェライト焼結磁石の断面において、結晶粒4及び粒界相6の合計に占める粒界相6の面積比率は1~5%とすることができる。
【0064】
フェライト焼結磁石の残留磁束密度(Br)は、好ましくは420mT以上であり、より好ましくは440mT以上であり、さらに好ましくは450mT以上である。フェライト焼結磁石の保磁力は、好ましくは260kA/m以上であり、より好ましくは270kA/m以上であり、さらに好ましくは280kA/mである。また、フェライト焼結磁石の角型比(Hk/HcJ)は好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。特に、フェライト焼結磁石は、残留磁束密度(Br)が440mT以上であり、かつ、角型比(Hk/HcJ)が85%以上であることが好ましい。このような優れた磁気特性を有することによって、モータや発電機に一層好適に用いることができる。
【0065】
また、フェライト焼結磁石は十分な機械強度を有していることができる。機械強度の高いフェライト焼結磁石は、取扱いが容易であり、搬送中の割れや欠けを有効に防止できるため製品歩留まりが向上し、コスト削減に資する。さらに、機械強度の高いフェライト焼結磁石は、モータ等の製品に組み込み後も容易に破壊されることがないため、製品の信頼性を向上できる。
【0066】
フェライト焼結磁石の形状に特に限定は無く、たとえば、端面が円弧状となるように湾曲したアークセグメント(C型)形状、平板形状等、種々の形状をとることができる。
【0067】
フェライト焼結磁石は、モータ及び発電機など回転電気機械、スピーカ・ヘッドホン用マグネット、マグネトロン管、MRI用磁場発生装置、CD-ROM用クランパ、ディストリビュータ用センサ、ABS用センサ、燃料・オイルレベルセンサ、マグネトラッチ、又はアイソレータ等の磁場発生部材として用いることができる。また、磁気記録媒体の磁性層を蒸着法又はスパッタ法等で形成する際のターゲット(ペレット)として用いることもできる。
【0068】
(回転電気機械)
続いて、図2に本発明の一実施形態に係るモータを示す。モータ200は、ステータ31と、ロータ32と、を備える。ロータ32は、シャフト36及びロータコア37を有する。本実施形態のモータ200では、ステータ31に永久磁石であるC字型のフェライト焼結磁石100が設けられ、ロータ32のロータコア37に電磁石(コイル)が設けられている。
【0069】
フェライト焼結磁石100は、Brが高いので、厚みを薄くすること可能であることから、ステータ31とロータ32の隙間を十分に小さくすることができる。したがって、モータ200は、その性能を維持しながら小型化することができる。
【0070】
なお、フェライト焼結磁石がロータに設けられ、電磁石(コイル)がステータに設けられたモータでもよい。モータの形態に特段の限定はない。また、回転電気機械の他の一例は、ロータ及びステータを有する発電機である。この場合もフェライト焼結磁石はロータ又はステータに設けられることができる。
【0071】
(製造方法)
次に、フェライト焼結磁石の製造方法の一例を説明する。フェライト焼結磁石の製造方法は、配合工程、仮焼工程、粉砕工程、磁場中成形工程及び焼成工程を有する。以下、各工程の詳細を説明する。
【0072】
配合工程は、仮焼用の混合粉末を調製する工程である。仮焼用の混合粉末は、少なくともFe及びSrを含む。配合工程では、Feを含む粉末及びSrを含む粉末を、アトライタ、又はボールミル等で1~20時間程度混合するとともに粉砕処理を行って混合粉末を得ることが好適である。
【0073】
フェライト焼結磁石がFe,Sr以外の金属元素及び/又は半金属元素(Si,Ca,Zn,及び、B等)を含む場合、当該金属元素及び/又は半金属元素は、Feを含む粉末及び/又はSrを含む粉末にあらかじめ含まれていてもよいが、配合工程に当該金属元素及び/又は半金属元素を含む別の粉末をさらに添加して仮焼用の混合粉末を得てもよい。別の粉末の例は、Siを含む粉末、Caを含む粉末、Znを含む粉末、及び、Bを含む粉末である。
【0074】
各元素を含む粉末の例は、各元素の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、有機金属化合物である。一つの粉末が、Fe、Sr、Si、Ca、Zn、及び、Bからなる群から選択される少なくとも2以上の元素を含んでいてもよいし、一つの粉末が実質的に上記群の一つの元素のみを含有してもよい。
【0075】
Feを含む粉末の例は、Feである。
Srを含む粉末の例は、SrCO、及び、SrOである。
Siを含む粉末の例は、SiOである。
Caを含む粉末の例は、CaCO、及び、CaOである。
Znを含む粉末の例は、ZnOである。
Bを含む粉末の例は、B、及び、HBOである。
【0076】
原料粉末の平均粒径は特に限定されず、例えば0.1~2.0μmである。
なお、最終製品となるフェライト焼結磁石中に含有されてもよいCr、Mn、Al、Baなどの少量添加元素は、上記の粉末中にあらかじめ含まれることができる。上記粉末においてこれらの少量添加元素が足りない場合には、必要に応じて、Crを含む粉末(Cr)、Mnを含む粉末(MnO),Alを含む粉末(Al)、Baを含む粉末(BaO)などを配合工程に添加して、仮焼用の混合粉末を得ることが出来る。
【0077】
混合粉末における金属及び半金属元素の組成はフェライト焼結磁石の最終製品のその組成と概ね一致するが、製造工程中で消失する元素があるため、正確には一致しない。
【0078】
仮焼工程は、配合工程で得られた混合粉末を仮焼する工程である。仮焼は、空気中等の酸化性雰囲気中で行うことができる。仮焼温度は、好ましくは850~1450℃であり、より好ましくは900~1350℃であり、さらに好ましくは1000~1300℃であり、仮焼温度における仮焼時間は、好ましくは1秒間~10時間、より好ましくは1分間~3時間である。仮焼して得られる仮焼物におけるSrフェライトの含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。仮焼物の一次粒子径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは3.0μm以下である。
【0079】
粉砕工程は、仮焼物を粉砕してフェライト磁石の粉末を得る工程である。粉砕工程は、一段階で行ってもよく、粗粉砕工程と微粉砕工程の二段階に分けて行ってもよい。仮焼物は、通常顆粒状又は塊状であるため、まずは粗粉砕工程を行うことが好ましい。粗粉砕工程では、振動ロッドミル等を使用して乾式で粉砕を行って、平均粒径0.5~5.0μmの粉砕粉を調製する。このようにして調製した粉砕粉を、湿式アトライタ、ボールミル、又はジェットミル等を用いて湿式で粉砕して、平均粒径0.08~5.0μm、好ましくは0.1~2.5μm、より好ましくは0.2~2μmの微粉末を得る。
【0080】
微粉末のBET法による比表面積は、好ましくは5~14m/g、より好ましくは7~12m/gである。粉砕時間は、例えば湿式アトライタを用いる場合、30分間~20時間であり、ボールミルを用いる場合、5~50時間である。これらの時間は、粉砕方法によって適宜調整することが好ましい。
【0081】
粉砕工程では、フェライト磁石粉末に対して、金属元素及び/又は半金属元素(Si,Ca,Zn,及び、B等)を含む粉末、及び/又は、Cr、Mn、Al、Baなどの少量添加元素を含む粉末を添加してもよい。
【0082】
フェライト焼結磁石の磁気的配向度を高めるために、上述の成分に加えて、多価アルコールを微粉砕工程で添加することが好ましい。多価アルコールの添加量は、添加対象物に対して0.05~5.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%、より好ましくは0.1~2.0質量%である。なお、添加した多価アルコールは、磁場中成形工程後の焼成工程で熱分解して除去される。
【0083】
磁場中成形工程は、粉砕工程で得られた微粉末を磁場中で成形して成形体を作製する工程である。磁場中成形工程は、乾式成形、又は湿式成形のどちらの方法でも行うことができる。磁気的配向度を高くする観点から、湿式成形が好ましい。湿式成形を行う場合、微粉砕工程を湿式で行って、得られたスラリーを所定の濃度に調整し、湿式成形用スラリーとしてもよい。スラリーの濃縮は、遠心分離やフィルタープレス等によって行うことができる。
【0084】
湿式成形用スラリー中における微粉末の含有量は、好ましくは30~85質量%である。スラリーの分散媒としては水又は非水系溶媒を用いることができる。湿式成形用スラリーには、水に加えて、グルコン酸、グルコン酸塩、又はソルビトール等の界面活性剤を添加してもよい。このような湿式成形用スラリーを用いて磁場中成形を行う。成形圧力は例えば0.1~0.5トン/cmであり、印加磁場は例えば5~15kOeである。
【0085】
焼成工程は、成形体を焼成して焼結体を得る工程である。焼成工程は、通常、大気中等の酸化性雰囲気中で行う。焼成温度は、好ましくは1050~1300℃、より好ましくは1150~1250℃である。焼成温度における焼成時間は、好ましくは0.5~3時間である。以上の工程によって、焼結体、すなわちフェライト焼結磁石を得ることができる。なお、本発明のフェライト焼結磁石の製造方法は、上述の方法に限定されるものではない。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明のフェライト焼結磁石及びモータは、上述のものに限定されない。例えば、フェライト焼結磁石の形状は、図1の形状に限定されず、上述の各用途に適した形状に適宜変更することができる。
【実施例
【0087】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を参照してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(フェライト焼結磁石の作製)
まず、以下の出発原料を準備した。
・Fe粉末(一次粒子径:0.3μm)
・SrCO粉末(一次粒子径:2μm)
・SiO粉末(一次粒子径:0.01μm)
・CaCO粉末
・ZnO粉末
・B粉末
【0089】
[実施例1]
Fe粉末1000g、SrCO粉末161g、CaCO粉末12.1g、SiO粉末4.33g、ZnO粉末3.5g、及び、B粉末1.95gを、湿式アトライタを用いて粉砕しながら混合し、乾燥及び整粒を行った。このようにして得られた粉末を、大気中、1250℃で1時間焼成し、顆粒状の仮焼物を得た。乾式振動ロッドミルを用いて、この仮焼物を粗粉砕して、BET法による比表面積が1m/gの粉末を調製した。
【0090】
粗粉砕した粉末200gに、ソルビトールを所定量添加し、ボールミルを用いて湿式粉砕を24時間行ってスラリーを得た。ソルビトールの添加量は、粗粉砕した粉末の質量を基準として、0.25質量%とした。粉砕後の微粉末の比表面積は8~10m/gであった。
【0091】
その後、スラリーの固形分濃度を調整し、湿式磁場成形機を用いて12kOeの印加磁場中で成形を行って成形体を得た。このような成形体を3個作製した。これらの成形体を、大気中で、それぞれ1180、1195、1210℃で焼成して円柱形状のフェライト焼結磁石(実施例1)を得た。
【0092】
[実施例2~10、比較例1、2]
粉末の添加量を変える以外は実施例1と同様にして、実施例2~10、及び、比較例1、2の磁石を得た。
【0093】
[実施例11~18、比較例3、4]
ZnO粉末の添加量を変える以外は実施例5と同様にして、実施例11~18、及び、比較例3、4の磁石を得た。
【0094】
[実施例21~29]
SiO粉末の添加量を変える以外は実施例5と同様にして、実施例21~29の磁石を得た。
【0095】
[実施例31~38]
CaO粉末の添加量を変える以外は実施例5と同様にして、実施例31~38の磁石を得た。
【0096】
[実施例41~49]
Fe粉末とSrCO粉末との添加比率を変える以外は実施例5と同様にして、実施例41~49の磁石を得た。
【0097】
[実施例51~54]
Cr含有量の少ない原料銘柄を選択することによりCrの添加量を減らす以外は実施例5と同様として、実施例51の磁石を得た。Cr粉末の添加により、Crの添加量を増やす以外は、実施例5と同様として、実施例52の磁石を得た。
Mn含有量の少ない原料銘柄を選択することによりMnの添加量を減らす以外は実施例5と同様として、実施例53の磁石を得た。MnO粉末の添加により、Mnの添加量を増やす以外は、実施例5と同様として、実施例54の磁石を得た。
【0098】
(フェライト焼結磁石の評価)
<組成分析>
作製した各実施例及び各比較例のフェライト焼結磁石の組成を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)によって測定した。フェライト焼結磁石は、Fe,Sr,Si,Ca、Zn、B等の他に、出発原料に含まれる不純物に由来する元素(Ba、Al,Mn,Cr等)が検出された。
【0099】
表1~6に、検出されたFe,Sr,Ba,Al,Si,Ca,Mn,Zn,Cr,Na及びBを、それぞれFe,SrO,BaO,Al,SiO,CaO,MnO,ZnO,Cr,NaO、及び、Bに換算したときの含有量を示す。これらの含有量は、フェライト焼結磁石全体を基準とした値(質量%)である。
【0100】
また、表1~6に、Feの原子濃度を[Fe]、Srの原子濃度を[Sr]と表したときの[Fe]/[Sr];B、Ca、及び、Znの合計原子濃度を[B+Ca+Zn]、Siの原子濃度を[Si]と表したときの[B+Ca+Zn]/[Si];及び、Ca、Sr、及び、Baの合計原子濃度を[Ca+Sr+Ba]、Fe、Mn、Zn、Cr、及び、Alの合計原子濃度を[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]、としたときのZ=([Ca+Sr+Ba]-[Fe+Mn+Zn+Cr+Al]/12)/[Si+B]を示す。
【0101】
<磁気特性の評価>
作製した円柱形状のフェライト焼結磁石の上下面を加工した後、最大印加磁場25kOeのB-Hトレーサを用いて20℃での磁気特性を測定した。測定では、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を求めるとともに、残留磁束密度(Br)の90%になるときの外部磁界強度(Hk)を測定し、これに基づいて角型比(Hk/HcJ)(%)を求めた。各実施例及び比較例において、焼成温度1180℃、1195℃及び1210℃でそれぞれ作製したフェライト焼結磁石のうち、最も残留磁束密度(Br)と角型比(Hk/HcJ)のバランスの良い1195℃で作製したフェライト焼結磁石の磁気特性を表1~6に示す。
【0102】
<機械強度の評価>
以下の条件により、3点曲げ試験によりフェライト焼結磁石の抗折強度(σ)を測定した。まず、上記円柱形状のフェライト焼結磁石とは別に、図3の(a)に示すような弧状のフェライト焼結磁石S(長さLは34mm、幅Wは25.5mm、厚みTは3.7mm、弧を含む円を想定した場合の円の中心から弧の両端部に引いた接線間の角度Rは130度)を準備した。なお、焼成温度は1195℃とした。
次に、図3の(b)に示すように、水平な台70の上に弧状のフェライト焼結磁石Sを置き、治具72により上方より下方に向けて矢印の方向に荷重Fを与えて(速度3mm/min)、フェライト焼結磁石Sが破壊されたときの破壊最大荷重F[N]を測定し、下記式より抗折強度(σ)を求めた。抗折強度(σ)は、サンプル30個の平均値である。
σ[N/mm]=3×L×F/(2×W×T
各表の強度評価の欄において、○は抗折強度が150N/mmよりも大きいことを示し、×は150N/mm以下であることを示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
表1~6に示す通り、実施例のフェライト焼結磁石は、残留磁束密度(Br)が420mT以上であった。また、保磁力(HcJ)も260kA/m以上となり、角型比(Hk/HcJ)も85%以上となった。また、強度も一定以上を示した。すなわち、本発明のフェライト焼結磁石は、B及びZnの含有量が特定の範囲内であることで、優れた磁気特性を発揮することが確認された。
【符号の説明】
【0110】
4…結晶粒、6…粒界相、100…フェライト焼結磁石又はボンド磁石、200…モータ。
図1
図2
図3