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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20230426BHJP
   F15B 11/024 20060101ALI20230426BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20230426BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20230426BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F15B11/02 M
F15B11/024 C
F15B11/042
F15B11/02 E
F15B11/17
E02F9/22 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019121719
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008893
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】永井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄一郎
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-329341(JP,A)
【文献】特開2011-085198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/02
F15B 11/024
F15B 11/042
F15B 11/17
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械の油圧制御装置であって、
油を吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する第2ポンプと、
油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる走行モータと、
油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換えるための切換弁と、
前記作業アタッチメントの速度を検出する作動状態センサと、
コントローラと、
を備え、
前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とし、
前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、
前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するための第1流路と、
前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するための第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である連通流路と、
を備え、
前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アタッチメントの速度に関する速度閾値と、の関係が設定され、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの速度が前記速度閾値以下である場合、前記速度閾値よりも大きい場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断する、
油圧制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の油圧制御装置であって、
前記コントローラは、前記第1ポンプが吐出する油の流量に応じて、前記速度閾値を変化させる、
油圧制御装置。
【請求項3】
走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械の油圧制御装置であって、
油を吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する第2ポンプと、
油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる走行モータと、
油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換えるための切換弁と、
前記作業アクチュエータの推力を検出する作動状態センサと、
コントローラと、
を備え、
前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とし、
前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、
前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するための第1流路と、
前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するための第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である連通流路と、
を備え、
前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アクチュエータの推力に関する推力閾値と、の関係が設定され、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アクチュエータの推力が前記推力閾値以上である場合、前記推力閾値未満である場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断する、
油圧制御装置。
【請求項4】
走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械の油圧制御装置であって、
油を吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する第2ポンプと、
油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる走行モータと、
油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換えるための切換弁と、
前記作業アタッチメントの作動状態を検出する作動状態センサと、
前記作業アクチュエータから吐出された油を、前記作業アクチュエータに供給される油に合流させるための再生弁と、
前記作業アクチュエータから吐出された油をタンクに戻すための再生解除弁と、
コントローラと、
を備え、
前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とし、
前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、
前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するための第1流路と、
前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するための第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である連通流路と、
を備え、
前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アタッチメントの作動状態に関する許容範囲と、の関係が設定され、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記許容範囲に含まれる場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記再生弁を遮断し、前記再生解除弁を開く、
油圧制御装置。
【請求項5】
走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械の油圧制御装置であって、
油を吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する第2ポンプと、
油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる走行モータと、
油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換えるための切換弁と、
前記作業アタッチメントの作動状態を検出する作動状態センサと、
コントローラと、
を備え、
前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とし、
前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、
前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するための第1流路と、
前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するための第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である連通流路と、
を備え、
前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アタッチメントの作動状態に関する許容範囲と、の関係が設定され、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記許容範囲に含まれる場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断
前記コントローラは、前記作業アタッチメントの作動による前記作業機械の移動速度と、前記走行モータの作動による前記作業機械の移動速度と、の差が所定範囲内に収まるように、前記第2ポンプから前記走行モータに供給される油の流量の上限値を設定する、
油圧制御装置。
【請求項6】
請求項に記載の油圧制御装置であって、
前記コントローラは、前記作業アタッチメントの速度が、前記コントローラに設定された閾値以下である場合、前記第2ポンプから前記走行モータに供給される油の流量を、前記上限値にかかわらず前記走行操作に基づいて決定する、
油圧制御装置。
【請求項7】
走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械の油圧制御装置であって、
油を吐出する第1ポンプと、
前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する第2ポンプと、
油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる走行モータと、
油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換えるための切換弁と、
前記作業アタッチメントの作動状態を検出する作動状態センサと、
コントローラと、
を備え、
前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とし、
前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、
前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するための第1流路と、
前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するための第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である連通流路と、
を備え、
前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アタッチメントの作動状態に関する許容範囲と、の関係が設定され、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記許容範囲に含まれる場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断
前記走行モータの容量は可変であり、
前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記走行モータの容量を最大に設定する、
油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の作動を制御する油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の油圧制御装置が記載されている。同文献の図1に記載の装置は、2つのポンプと、2つのポンプの吐出油の流路を切り換える切換弁(同文献では走行直進弁)と、作業アタッチメントを作動させる作業アクチュエータと、走行体を作動させる走行モータと、を備えている。この装置では、走行操作と作業操作とが同時に行われる複合操作時には、作業アクチュエータと走行モータとに、別々のポンプの吐出油が供給される(同文献の請求項1などを参照)。また、複合操作時には、連通流路(同文献では連通路)が、各ポンプのポンプラインを連通させる場合がある(同文献の請求項1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-329341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、複合操作時に、各ポンプのポンプラインが連通流路で連通すると、作業アクチュエータと走行モータとが連通流路で連通する。この場合に、作業アクチュエータに供給すべき油が、連通流路を通って、走行モータに流入する場合がある。すると、作業アクチュエータの作動圧を確保できない問題と、走行モータの作動速度が速くなりすぎる問題と、が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、連通流路を備える構成であっても、作業アクチュエータの作動圧を確保でき、走行モータの作動速度が速くなりすぎることを抑制できる、油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
油圧制御装置は、走行可能な走行体と、作業を行う作業アタッチメントと、を備える作業機械に設けられる。油圧制御装置は、第1ポンプと、第2ポンプと、走行モータと、作業アクチュエータと、切換弁と、作動状態センサと、コントローラと、を備える。前記第1ポンプは、油を吐出する。前記第2ポンプは、前記第1ポンプとは別に設けられ、油を吐出する。前記走行モータは、油が供給されることで駆動し、前記走行体を作動させる。前記作業アクチュエータは、油が供給されることで駆動し、前記作業アタッチメントを作動させる。前記切換弁は、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが吐出した油の流路を切り換える。前記作動状態センサは、前記作業アタッチメントの作動状態を検出する。前記作業アクチュエータを作動させる作業操作と前記走行モータを作動させる走行操作とが同時に行われる操作を複合操作とする。前記複合操作が行われている場合、前記切換弁は、第1流路と、第2流路と、連通流路と、を備える。前記第1流路は、前記第1ポンプにつながれ、前記第1ポンプの吐出油を前記作業アクチュエータに供給するためのものである。第2流路は、前記第2ポンプにつながれ、前記第2ポンプの吐出油を前記走行モータに供給するためのものである。前記連通流路は、前記第1流路と前記第2流路とを連通可能である。前記コントローラには、前記作業操作の操作量と、前記作業アタッチメントの作動状態に関する許容範囲と、の関係が設定される。前記コントローラは、前記複合操作が行われ、かつ、前記作動状態センサに検出された前記作業アタッチメントの作動状態が前記許容範囲に含まれない場合、前記許容範囲に含まれる場合に比べて前記連通流路を絞る、または前記連通流路を遮断する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、連通流路を備える構成であっても、作業アクチュエータの作動圧を確保でき、走行モータの作動速度が速くなりすぎることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業機械1を横から見た図である。
図2図1に示す作業機械1の油圧制御装置20を示す油圧回路図である。
図3】単独操作時の、図2に示す油圧制御装置20の一部を示す図である。
図4】複合操作時の、図2に示す油圧制御装置20の一部を示す図である。
図5図2に示す連通流路73cなどの制御を示すフローチャートである。
図6図2に示す作業アタッチメント15の速度閾値を示す図である。
図7図2に示す作業アタッチメント15の操作量と第1ポンプ21の流量との関係を示すグラフである。
図8図2に示す第1ポンプ21の流量と、第2ポンプ22の流量の上限値と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図8を参照して、油圧制御装置20(図2参照)を備える作業機械1(図1参照)について説明する。
【0010】
作業機械1は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルである。図1に示すように、作業機械1は、下部走行体11(走行体)と、上部旋回体13と、作業アタッチメント15と、操作部17と、油圧制御装置20(図2参照)と、を備える。
【0011】
下部走行体11(走行体)は、走行可能であり、作業機械1を走行させる。下部走行体11は、例えば左右のクローラ11a(片側のみ図示)を備える。上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回可能に、下部走行体11に搭載される。上部旋回体13は、運転室13aを備える。運転室13aは、作業機械1のオペレータが操作を行う部分である。
【0012】
作業アタッチメント15は、上部旋回体13に取り付けられ、作業を行う部分である。作業アタッチメント15は、ブーム15aと、アーム15bと、バケット15cと、を備える。ブーム15aは、上部旋回体13に回転可能(起伏可能)に取り付けられる。アーム15bは、ブーム15aに回転可能(押し引き可能)に取り付けられる。バケット15cは、土砂の掘削および運搬、ならびに地面をならす作業などを行う部分である。バケット15cは、アーム15bに回転可能に取り付けられる。
【0013】
操作部17は、オペレータに操作され、作業機械1を操作するための部分である。操作部17は、運転室13aの内部に配置される。操作部17は、例えばレバー(操作レバー)などである。操作部17は、作業操作部17a(図2参照)と、走行操作部17b(図2参照)と、を備える。
【0014】
作業操作部17a(図2参照)は、作業アタッチメント15の操作(作業操作という)を行うための部分である。作業操作部17aは、ブーム15a、アーム15b、およびバケット15cを操作するための部分である。作業操作は、後述する作業アクチュエータ40を作動させる操作である。
【0015】
走行操作部17b(図2参照)は、下部走行体11の操作(走行操作という)を行うための部分である。走行操作部17b(図2参照)は、左右のクローラ11aを操作するための部分である。走行操作は、後述する走行モータ30(図2参照)を作動させるための操作である。作業操作および走行操作のうちいずれか一方のみが行われる操作を、単独操作とする。作業操作と走行操作とが同時に行われる操作を、複合操作とする。
【0016】
油圧制御装置20(図2参照)は、作業機械1の作動を制御する装置(主に油圧回路)である。図2に示すように、油圧制御装置20は、ポンプ20Pと、アクチュエータ28と、制御弁50と、再生回路60と、走行直進弁70(切換弁)と、センサ80(図3参照)と、コントローラ90(図3参照)と、を備える。
【0017】
ポンプ20Pは、エンジンEに駆動され、油(作動油、圧油)を吐出する。ポンプ20Pは、吐出油をアクチュエータ28に供給する、油圧源である。ポンプ20Pは、第1ポンプ21と、第1ポンプ21とは別に設けられる第2ポンプ22と、を備える。
【0018】
アクチュエータ28は、油が供給されることで駆動する油圧アクチュエータである。アクチュエータ28には、油圧シリンダ(伸縮シリンダ)と、油圧モータとがある。アクチュエータ28は、走行モータ30と、旋回モータ39と、作業アクチュエータ40と、を備える。
【0019】
走行モータ30は、下部走行体11(図1参照)を作動(走行)させる。走行モータ30は、油圧モータである。走行モータ30は、第1走行モータ31と、第2走行モータ32と、を備える。第1走行モータ31は、左右のクローラ11a(図1参照)のうち一方(例えば右)のクローラ11aを作動させる。第1走行モータ31の容量は、可変である(第2走行モータ32も同様)。第2走行モータ32は、第1走行モータ31とは別に設けられる。第2走行モータ32は、左右のクローラ11a(図1参照)のうち、第1走行モータ31が作動させるクローラ11aとは異なる方(例えば左)のクローラ11aを作動させる。
【0020】
旋回モータ39は、下部走行体11(図1参照)に対して上部旋回体13(図1参照)を旋回させる。旋回モータ39は、油圧モータである。旋回モータ39は、下部走行体11に対して上部旋回体13を旋回させる結果、下部走行体11に対して作業アタッチメント15を旋回させる。なお、旋回モータ39は、本実施形態では作業アクチュエータ40に含まれないが、作業アクチュエータ40に含まれてもよい。
【0021】
作業アクチュエータ40は、作業アタッチメント15(図1参照)を作動させる。作業アクチュエータ40は、油圧シリンダである。作業アクチュエータ40は、図1に示すブームシリンダ43と、アームシリンダ45と、バケットシリンダ47と、を備える。
【0022】
ブームシリンダ43は、上部旋回体13に対してブーム15aを回転させる。ブームシリンダ43は、下記のアームシリンダ45と同様の構造(ロッド室45bおよびヘッド室45aを備える構造)を備え、下記のアームシリンダ45の伸縮と同様に伸縮する(バケットシリンダ47についても同様)。
【0023】
アームシリンダ45は、ブーム15aに対してアーム15bを回転させる。図2に示すように、アームシリンダ45は、ヘッド室45aと、ロッド室45bと、ピストン45pと、ロッド45rと、を備える。ピストン45pは、ヘッド室45aとロッド室45bとを隔てる。アームシリンダ45は、ヘッド室45aに油が供給され、ロッド室45bから油が排出されることで、伸長する。アームシリンダ45は、ロッド室45bに油が供給され、ヘッド室45aから油が排出されることで、縮小する。
【0024】
バケットシリンダ47は、アーム15bに対してバケット15cを回転させる。下記の「作業アクチュエータ40」は、アームシリンダ45、ブームシリンダ43、およびバケットシリンダ47の少なくともいずれかである。
【0025】
ここで、図1に示す作業アタッチメント15の構成要素(具体的にはアーム15b、ブーム15a、およびバケット15c)のいずれかを、「特定の作業アタッチメント15」とする。作業アクチュエータ40の構成要素(具体的には、ブームシリンダ43、アームシリンダ45、およびバケットシリンダ47)のうち、特定の作業アタッチメント15を作動させるものを、「特定の作業アクチュエータ40」とする。以下では、主に、特定の作業アタッチメント15がアーム15bであり、特定の作業アクチュエータ40がアームシリンダ45である場合について説明する。以下の「アーム15b」を「特定の作業アタッチメント15」に読み替え、以下の「アームシリンダ45」を「特定の作業アクチュエータ40」に読み替えてもよい。
【0026】
(第1グループG1、第2グループG2)
アクチュエータ28は、第1グループG1と、第2グループG2と、に分けられる。第1グループG1は、アクチュエータ28のうち、単独操作時に、第1ポンプ21から油が供給され得るアクチュエータ28のグループ(アクチュエータ群)である。第1グループG1は、第1走行モータ31を含み、アームシリンダ45を含まない。第2グループG2は、アクチュエータ28のうち、単独操作時に、第2ポンプ22から油が供給され得るアクチュエータ28のグループである。第2グループG2は、第2走行モータ32、およびアームシリンダ45を含む。
【0027】
なお、他のアクチュエータ28(具体的には旋回モータ39、ブームシリンダ43、およびバケットシリンダ47)は、第1グループG1および第2グループG2のいずれかに含まれる。油圧回路の構成は適宜変更されてもよく、例えば図2に示す例では以下のように油圧回路が構成される。ブームシリンダ43およびバケットシリンダ47は第1グループG1に含まれ、旋回モータ39は第2グループG2に含まれる。第1グループG1のうち第1走行モータ31以外のアクチュエータ28(具体的にはブームシリンダ43、およびバケットシリンダ47)は、常に第1ポンプ21の吐出油が供給可能な状態である。第2走行モータ32は、常に第2ポンプ22の吐出油が供給可能な状態である。第2ポンプ22から吐出された油のうち第2走行モータ32に供給されなかった油は、第2グループG2のうち第2走行モータ32以外のアクチュエータ28(具体的には旋回モータ39、およびアームシリンダ45)に供給可能である。
【0028】
制御弁50は、アクチュエータ28の作動を制御する弁である。制御弁50は、ポンプ20Pと、アクチュエータ28と、の間(油路における間)に配置される。制御弁50は、ポンプ20Pからアクチュエータ28に供給される油の方向を切り換え、油の流量を制御してもよい。制御弁50は、第1走行制御弁51と、第2走行制御弁52と、作業制御弁55と、を備える。第1走行制御弁51は、第1走行モータ31に供給される油を制御し、第1走行モータ31の作動を制御する弁である。第2走行制御弁52は、第2走行モータ32に供給される油を制御し、第2走行モータ32の作動を制御する弁である。作業制御弁55は、アームシリンダ45に供給される油を制御し、アームシリンダ45の作動を制御する弁である。なお、第1走行制御弁51、第2走行制御弁52、および作業制御弁55と同様に、旋回モータ39、ブームシリンダ43、およびバケットシリンダ47の作動を制御するための制御弁50も設けられる。また、第1ポンプ21および第2ポンプ22から吐出された油であってアクチュエータ28に供給されない油をタンクTに戻すためのブリード弁(図示なし)が設けられてもよい。
【0029】
再生回路60は、アームシリンダ45の作動速度を向上させるための回路(油圧回路)である。再生回路60は、再生流路61と、再生弁63と、再生解除弁65と、を備える。
【0030】
再生流路61は、ロッド室45bとヘッド室45aとを連通する流路(配管)である。
【0031】
再生弁63は、再生流路61に設けられる。再生弁63は、アームシリンダ45から吐出された油(戻り作動油)を、アームシリンダ45に供給される油(行き作動油)に合流させるための弁である。再生弁63は、アームシリンダ45が伸びるときに、ロッド室45bから吐出された油を、ヘッド室45aに供給される油に合流させるための弁である。再生弁63の開度(再生流路61の開度)は、全開と遮断とのいずれかに切り換え可能でもよく、全開から遮断までの間で連続的に可変でもよい(再生解除弁65も同様)。
【0032】
再生解除弁65は、アームシリンダ45から吐出された油をタンクTに戻すための弁である。再生解除弁65は、アームシリンダ45が伸びるときに、ロッド室45bから吐出された油をタンクTに戻すための弁である。なお、再生弁63と再生解除弁65とは、図3に示すように別々の弁でもよく、図2に示すように一つの弁(例えば切り換え弁、スプール弁など)として設けられてもよい。
【0033】
走行直進弁70(切換弁)は、第1ポンプ21および第2ポンプ22が吐出した油の流路を切り換える弁である。走行直進弁70は、単独操作時と複合操作時とで流路を切り換える。走行直進弁70の切換位置には、中立位置71と、走行直進位置73と、がある。
【0034】
中立位置71は、複合操作が行われていない場合に選択される。中立位置71は、単独操作時に選択される。中立位置71は、操作部17の操作が行われていないときに選択される。図3に示すように、中立位置71が選択されたとき、第1ポンプ21と第2ポンプ22とが遮断される。中立位置71が選択されたとき、第1ポンプ21および第2ポンプ22の吐出油が、第1グループG1と第2グループG2とに独立して供給可能となる。さらに詳しくは、中立位置71が選択されたとき、第1ポンプ21の吐出油が第1グループG1に供給可能となり、第2ポンプ22の吐出油が第2グループG2に供給可能となる。中立位置71が選択されたとき、第1ポンプ21の吐出油が第2グループG2に供給できない状態となってもよく、第2ポンプ22の吐出油が第1グループG1に供給できない状態となってもよい。
【0035】
走行直進位置73(図2参照)は、複合操作時に選択される。走行直進位置73は、下部走行体11(図1参照)が直進しやすいように構成される(詳細は後述)。図4に示すように、走行直進位置73が選択されたとき、第1ポンプ21および第2ポンプ22の吐出油が、走行モータ30とアームシリンダ45とに独立して供給可能となる。さらに詳しくは、走行直進位置73が選択されたとき、第1ポンプ21の吐出油が、走行モータ30以外のアクチュエータ28に供給可能となる。例えば、走行直進位置73が選択されたとき、第1ポンプ21の吐出油が、アームシリンダ45に供給可能となる。走行直進位置73が選択されたとき、第2ポンプ22の吐出油が、走行モータ30(第1走行モータ31および第2走行モータ32)に供給可能となる。走行直進位置73が選択されるとともに後述する連通流路73cが遮断されたとき(「連通流路73cの遮断時」という)は、第1ポンプ21の吐出油が、走行モータ30に供給できない状態となってもよい。連通流路73cの遮断時は、第2ポンプ22の吐出油が、走行モータ30以外のアクチュエータ28に供給できない状態となってもよい。走行直進位置73は(走行直進位置73が選択された走行直進弁70は)、第1流路73aと、第2流路73bと、連通流路73cと、絞り73dと、を備える。
【0036】
第1流路73aは、第1ポンプ21につながれる。第1流路73aは、第1ポンプ21の吐出油をアームシリンダ45に供給するための流路である。第2流路73bは、第2ポンプ22につながれる。第2流路73bは、第2ポンプ22の吐出油を第1走行モータ31に供給するための流路である。
【0037】
連通流路73cおよび絞り73dは、走行操作の単独操作が行われている状態から、複合操作が行われる状態に変化したときに、走行モータ30の急減速を抑制するために設けられる(詳細は後述)。連通流路73cは、第1流路73aと第2流路73bとを連通する。絞り73dは、連通流路73cを絞ることが可能であり、連通流路73cを遮断することが可能である。絞り73dが遮断されていないとき、連通流路73cは、第1ポンプ21と第2ポンプ22とを連通する(詳細は後述)。
【0038】
センサ80は、各種状態を検出する。センサ80は、エンジン回転数センサ81と、操作センサ83と、ポンプ圧力センサ85と、作動状態センサ87と、を備える。
【0039】
エンジン回転数センサ81は、エンジンEの回転数を検出し、その結果、第1ポンプ21および第2ポンプ22の回転数を検出する。なお、エンジン回転数センサ81が設けられずに、第1ポンプ21および第2ポンプ22の回転数を検出するセンサ80が設けられてもよい。
【0040】
操作センサ83は、操作部17(作業操作部17aおよび走行操作部17b)の操作を検出し、作業操作および走行操作を検出する。操作センサ83は、操作部17の操作の有無を検出する。操作センサ83は、操作部17の操作量を検出する。操作部17が操作量に応じてパイロット油圧を出力する場合は、操作センサ83は、パイロット油圧を検出してもよい。操作部17が操作に応じて電気信号を出力する場合は、操作センサ83は、操作部17が出力した電気信号を検出してもよい。操作センサ83は、操作部17のレバーの角度を検出してもよい。
【0041】
ポンプ圧力センサ85は、ポンプ20Pの吐出圧を検出する。図3に示すように、ポンプ圧力センサ85は、単独操作時にアームシリンダ45に油を供給するポンプ20P(具体的には第2ポンプ22)の吐出圧を検出する。ポンプ圧力センサ85(作業アクチュエータ負荷センサ)は、単独操作時に、アームシリンダ45にかかる負荷を検出する。
【0042】
作動状態センサ87は、図1に示すアーム15bの作動状態を検出する。作動状態センサ87(図4参照)に検出される「アーム15bの作動状態」は、アーム15bの速度でもよく、アームシリンダ45(図4参照)の推力でもよい。「アーム15bの作動状態」は、アーム15bの速度およびアームシリンダ45の推力でもよい。図4に示すように、作動状態センサ87は、速度センサ87aと、推力センサ87bと、を備える。
【0043】
速度センサ87aは、アーム15bの速度を検出する。例えば、速度センサ87aは、ブーム15a(図1参照)に対するアーム15bの回転速度を検出してもよく、アームシリンダ45のストロークの速度を検出してもよい。速度センサ87aは、角度センサでもよく、加速度センサなどでもよい。
【0044】
推力センサ87bは、アームシリンダ45の推力(負荷)を検出する。例えば、推力センサ87bは、アームシリンダ45の推力を検出する。推力センサ87bは、ヘッド室45aの圧力を検出するヘッド側圧力センサ87b1と、ロッド室45bの圧力を検出するロッド側圧力センサ87b2と、を備える。通常、圧力センサは速度センサよりも安価である。よって、推力センサ87bを、速度センサ87aよりも安価に構成しやすい。アームシリンダ45の推力は、下記の力Faと力Fbとの差である。力Faは、ヘッド室45aの油圧と、ヘッド室45aにおけるピストン45pの受圧面積と、の積である。力Fbは、ロッド室45bの油圧と、ロッド室45bにおけるピストン45pの受圧面積と、の積である。なお、推力センサ87bは、コントローラ90による演算を利用して推力を検出(算出)してもよい(推力センサ87bにはコントローラ90が含まれてもよい)。
【0045】
コントローラ90は、信号の入出力、演算(判定、算出)、および情報の記憶などを行う。例えば、コントローラ90は、走行直進弁70の切り換え、絞り73dの開度の制御を行う。例えば、コントローラ90は、作業操作および走行操作のそれぞれの操作量に応じて、第1ポンプ21および第2ポンプ22の流量を算出する。
【0046】
(作動)
図2に示す油圧制御装置20は、以下のように作動するように構成される。油圧制御装置20の作動には、単独操作時の作動と、複合操作時の作動と、がある。
【0047】
(単独操作時の作動)
単独操作時には、図3に示す油圧制御装置20は、次のように作動する。走行直進弁70が、中立位置71(図2参照)になる。すると、第1ポンプ21の吐出油が第1グループG1に供給可能となり、第1ポンプ21の吐出油が第2グループG2に供給できない状態となる。第1グループG1のアクチュエータ28を作動させる操作が操作部17で行われた場合は、第1ポンプ21の吐出油が、操作部17の操作に応じて、第1グループG1のアクチュエータ28に供給される。
【0048】
また、走行直進弁70が中立位置71になると、第2ポンプ22の吐出油が第2グループG2に供給可能となり、第2ポンプ22の吐出油が第1グループG1に供給できない状態となる。第2グループG2のアクチュエータ28を作動させる操作が操作部17で行われた場合は、第2ポンプ22の吐出油が、操作部17の操作に応じて、第2グループG2のアクチュエータ28に供給される。具体的には例えば、アームシリンダ45を伸ばす操作(例えば図1に示すアーム15bをブーム15aに近づける側(引き側)に作動させる操作)が行われたとする。このとき、図3に示す第2ポンプ22の吐出油が、ヘッド室45aに供給される。すると、ロッド室45bの油が、ロッド室45bから排出される。すると、アームシリンダ45が伸び、図1に示すアーム15bが作動(例えば引き側に作動)する。
【0049】
(再生動作、再生解除動作)
図3に示すアームシリンダ45が作動するとき、再生回路60による再生動作(アーム再生動作)が行われる場合と、再生回路60による再生動作が行われない(再生解除動作が行われる)場合と、がある。
【0050】
再生解除動作は、再生弁63を遮断し、再生解除弁65を開く(例えば全開にする)動作である。再生解除動作が行われる場合、ロッド室45bから排出された油は、ヘッド室45aに供給されず、タンクTに戻る。
【0051】
再生動作は、再生弁63を開き(全開または絞られた状態とし)、再生解除弁65を全開よりも絞るまたは遮断する動作である。再生動作が行われると、ロッド室45bから排出された油は、再生流路61を通って、ヘッド室45aに供給される(ヘッド室45aに供給される油に合流する)。よって、再生動作が行われる場合は、再生動作が行われない場合に比べ、アーム15bの作動速度が速くなる。一方、再生動作が行われる場合は、再生動作が行われない場合に比べ、ロッド室45bの圧力が上がるので、アームシリンダ45の推力(駆動力)が下がる(詳細は後述)。
【0052】
(作業操作の単独操作時の再生有無の判断)
コントローラ90は、アーム15b(図1参照)の単独操作が行われている場合、再生回路60に再生動作を行わせるか、再生解除動作を行わせるかを(再生有無を)、アームシリンダ45の負荷に基づいて決定する。例えば、コントローラ90は、アーム15bの単独操作が行われている場合、第2ポンプ22の吐出圧に基づいて、再生有無を決定する。例えば、ポンプ圧力センサ85に検出された第2ポンプ22の吐出圧が、コントローラ90に設定された閾値(吐出圧閾値)以下の場合(アームシリンダ45の負荷が小さい場合)、再生動作が行われる。第2ポンプ22の吐出圧が、吐出圧閾値よりも大きい場合(アームシリンダ45の負荷が大きい場合)、再生動作が行われない。
【0053】
(複合操作時の作動)
複合操作時には、図4に示す油圧制御装置20は、次のように作動する。走行直進弁70が、走行直進位置73(図2参照)になる。すると、第1ポンプ21の吐出油が、アームシリンダ45に供給可能となる。このとき、アームシリンダ45を作動させる操作(作業操作部17aの操作)に応じて、第1ポンプ21の吐出油が、アームシリンダ45に供給される。
【0054】
また、走行直進弁70で走行直進位置73が選択されると、第2ポンプ22の吐出油が、走行モータ30に供給可能になる。このとき、走行モータ30(第1走行モータ31および第2走行モータ32の少なくともいずれか)を作動させる操作(走行操作部17bの操作)に応じて、第2ポンプ22の吐出油が、走行モータ30に供給される。このとき、第1走行モータ31および第2走行モータ32が、共通の第1ポンプ21に駆動される。よって、第1走行モータ31の操作量と第2走行モータ32の操作量とが同量であれば、第1走行モータ31と第2走行モータ32とに同量(または略同量)の油が供給される。すると、第1走行モータ31と第2走行モータ32とが同じ(または略同じ)速度で回転する。その結果、下部走行体11が直進しやすい。
【0055】
走行直進弁70の連通流路73cの機能は、次の通りである。走行操作の単独操作が行われているときに、作業操作が追加され、複合操作が行われたとする。このときに、走行直進弁70において、中立位置71が選択された状態から、走行直進位置73であって連通流路73cが遮断した状態に急変するとする。この場合、第1ポンプ21および第2ポンプ22の吐出油が2つの走行モータ30に供給されていた状態から、第2ポンプ22のみの吐出油が2つの走行モータ30に供給される状態に急変する。すると、走行モータ30に供給される油の流量が急減し、走行モータ30が急減速し、作業機械1(図1参照)にショック(揺れ)が生じる。この走行モータ30の急減速を抑制するために、連通流路73cが設けられる。具体的には、連通流路73cが、第1ポンプ21と第2ポンプ22とを連通させる。すると、第2ポンプ22の吐出油だけでなく、第1ポンプ21の吐出油の一部も、走行モータ30に供給される。よって、走行モータ30の急減速を抑制できる。
【0056】
(複合操作時の作業機械1の状態の例)
複合操作時に、図1に示す作業機械1は、次の状態になる場合がある。例えば、下部走行体11が走行しながら、作業アタッチメント15が作業を行う場合がある。具体的には例えば、下部走行体11が走行しながら、作業アタッチメント15で(バケット15cで)地面を均す作業(走行均し)が行われる場合がある。
【0057】
(引上状態)
例えば、登り坂の傾斜が大きい場合や、登り坂の地面が滑りやすい場合などに、クローラ11aが地面に対して空転し、作業機械1が走行できない、または走行困難となる場合がある。このような場合に、作業アタッチメント15で作業機械1を引き上げることで、作業機械1を移動させる場合がある。具体的には例えば、バケット15cが地面に引っ掛けられ、アーム15bが引き側に作動させられ、走行モータ30が前進側に作動させられる(この状態を「引上状態」とする)。この引上状態により、作業機械1を移動させる(引き上げる)ことが図られる。なお、引上状態のときに、さらにブーム15aが作動させられる場合もある。一方で、作業機械1を引上状態にしても、作業機械1が移動できない、または移動困難となる場合がある。
【0058】
(連通流路73cによる課題)
例えば引上状態などのように、図4に示す走行モータ30にかかる負荷に比べ、アームシリンダ45に大きい負荷がかかる場合がある。このときに、連通流路73cが開きすぎると、アームシリンダ45に供給すべき油が、連通流路73cを通り、走行モータ30に供給される。すると、アームシリンダ45の作動圧(作動させるのに必要な油圧)を確保できず、アームシリンダ45が作動できない、または作動しにくい。また、走行モータ30の流量が増え、走行モータ30の回転速度が上がる。すると、クローラ11a(図1参照)が空転するおそれがあり、また、空転状態から脱することが難しくなる。そのため、作業機械1が移動困難となり、立ち往生する場合がある。そこで、油圧制御装置20は、上記の課題を解決するために、以下のように連通流路73cを制御する。なお、上記の課題は一例である。油圧制御装置20は、上記以外の課題を解決できてもよい。
【0059】
(連通流路73cなどの制御の概要)
連通流路73cなどの制御の概要は次の通りである。コントローラ90は、アーム15bの作動状態(以下「アーム15b作動状態」ともいう)に基づいて、連通流路73cの状態(開度)を制御する。アーム15b作動状態が許容範囲に含まれない(例えばアーム15bが作動困難な状態である)場合は、アーム15b作動状態が許容範囲に含まれる場合に比べ、連通流路73cが絞られてもよい。アーム15b作動状態が許容範囲に含まれない場合は、連通流路73cが遮断されてもよい。また、アーム15b作動状態が許容範囲に含まれない場合は、再生回路60の再生動作が解除される。以下、連通流路73cなどの制御の詳細について、図5に示すステップ(処理)の順に説明する。なお、ステップの順は、適宜変更されてもよい。図4に示す連通流路73cなどの制御は、図5に示す判定シーケンスS10と、制御シーケンスS20と、を備える。以下、各ステップについては図5を参照して説明する。
【0060】
(判定シーケンスS10)
図4に示すコントローラ90は、操作部17で複合操作が行われているか否かを判定する(ステップS11)。コントローラ90は、操作センサ83の検出結果に基づいて、この判定を行う。コントローラ90は、走行操作部17bで走行操作が行われ、かつ、作業操作部17aで作業操作が行われているか否かを判定する。複合操作が行われている場合(YESの場合)、フローはステップS13に進む。複合操作が行われていない場合(NOの場合)、コントローラ90は、例えば、ステップS11の処理を繰り返す。
【0061】
コントローラ90は、作動状態センサ87に検出されたアーム15b作動状態(図5では「ATT作動状態」)が、許容範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS13)。
【0062】
(許容範囲)
アーム15b作動状態に関する許容範囲は、次のように設定される。作業操作部17aの操作に応じた(または略応じた(以下同様))速度や推力でアーム15bが作動しているときのアーム15b作動状態は、許容範囲に含まれる。作業操作部17aの操作に応じた速度や推力でアーム15bが作動していないときのアーム15b作動状態は、許容範囲に含まれない。例えば、作業操作部17aの操作が行われているが、アーム15bが停止しているときのアーム15b作動状態は、許容範囲に含まれない。アーム15b作動状態は、アーム15bの速度でもよく、アーム15bの推力でもよい。許容範囲は、作業操作部17aの操作量(アーム15bの操作量、作業操作量)に応じて変えられる。さらに詳しくは、コントローラ90には、作業操作部17aの操作量と、許容範囲と、の関係が設定される。この関係は、作業操作部17aの操作量が小さいほど、許容範囲が広くなるように、設定される。
【0063】
(作動状態が速度の場合)
アーム15b作動状態が、アーム15bの速度である場合の詳細は、次の通りである。コントローラ90は、速度センサ87aに検出されたアーム15bの速度が、速度閾値以上であるか(許容範囲に含まれるか)否かを判定する。速度閾値(マップ閾値)は、コントローラ90に設定される。コントローラ90には、図6に示すように、作業操作部17aの操作量(図6ではATT操作量)と、速度閾値(図6ではATT速度閾値)との関係(マップ)が設定される。このマップでは、作業操作部17aの操作量が小さいほど、速度閾値が小さい。
【0064】
(速度閾値の変更)
図4に示す作業操作部17aの操作量が同じでも、第1ポンプ21の吐出量が少ないほど、アーム15bの速度が小さくなる。そこで、コントローラ90は、第1ポンプ21の吐出油の流量(ポンプ流量、吐出量)に応じて、速度閾値を変化させる(図6参照)。具体的には、コントローラ90は、第1ポンプ21の吐出量が少ないほど、アーム15bの速度閾値を低く設定する。ここで、第1ポンプ21の吐出量(単位時間当たりの吐出量)は、エンジンEの回転数(単位時間当たりの回転数)と、第1ポンプ21の容量と、の積により算出される。そこで、コントローラ90は、エンジン回転数センサ81に検出されたエンジンEの回転数が低いほど、速度閾値を低く設定してもよい。コントローラ90は、第1ポンプ21の容量が少ないほど、速度閾値を低く設定してもよい。図6において破線で示すグラフは、例えば、アーム15bに負荷が掛かっていない場合に得られるアーム15bの速度(ノミナル速度)である。図6において実線で示すグラフは、アーム15bの操作量に応じた、アーム15bの速度閾値である。
【0065】
(作動状態が推力の場合)
アーム15b作動状態が、図4に示すアームシリンダ45の推力である場合の詳細は、次の通りである。コントローラ90は、推力センサ87bに検出されたアームシリンダ45の推力が、推力閾値以下であるか(許容範囲に含まれるか)否かを判定する。推力閾値は、コントローラ90に設定される。コントローラ90には、作業操作部17aの操作量と、アームシリンダ45の推力閾値との関係(マップ)が設定される。なお、図6に記載の「ATT速度」を「アームシリンダ45の推力」に読み替え、ノミナル速度をノミナル推力に読み替えてもよい。
【0066】
図4に示すアームシリンダ45の推力に基づいて、アーム15b作動状態を判別できる理由は、次の通りである。アーム15b作動状態が許容範囲に含まれないとき(例えばアーム15bが停止しているとき)、油がヘッド室45aに供給されても、ロッド45rがピストン45pを押し返し、ピストン45pが作動しない(または略作動しない)。その結果、作業操作部17aの操作に応じてアーム15bが作動する場合(アーム15b作動状態が許容範囲に含まれる場合)に比べ、ヘッド室45aの圧力が高くなる。一方、ロッド室45bの圧力は、例えばタンクTの圧力と略同じ圧力となる。よって、アーム15b作動状態が許容範囲に含まれないときは、許容範囲に含まれるときに比べ、ヘッド室45aとロッド室45bとの差圧が高くなり、アームシリンダ45の推力が高くなる。よって、アームシリンダ45の推力に基づいて、アーム15b作動状態を判別できる。なお、コントローラ90は、アーム15b作動状態を、ヘッド室45aとロッド室45bとの差圧に基づいて判断してもよい。
【0067】
なお、上記のように、アームシリンダ45に供給すべき油が、連通流路73cを通り、走行モータ30に供給される場合がある。この場合でも、作業操作部17aの操作に応じてアーム15bが作動する場合(許容範囲に含まれる場合)に比べ、作業操作部17aの操作に応じて作動しないまたは略作動しない場合(許容範囲に含まれない場合)は、アームシリンダ45の推力が高くなる。よって、アームシリンダ45の推力に基づいて、アーム15b作動状態を判別できる。
【0068】
アーム15b作動状態が許容範囲に含まれない場合(ステップS13でNOの場合)は、フローは、ステップS11に戻る。アーム15b作動状態が許容範囲に含まれる場合は、フローは、制御シーケンスS20のステップS21に進む。なお、複合操作が行われ、かつ、作動状態センサ87に検出されたアーム15b作動状態が許容範囲に含まれない場合(ステップS11およびステップS13でYESの場合)を、「制御実施時」という。
【0069】
(制御シーケンスS20)
コントローラ90は、制御実施時には、再生回路60に再生解除動作を行わせる(ステップS21)。この理由は次の通りである。
【0070】
[理由1]コントローラ90は、アームシリンダ45の推力を確保するために、再生回路60に再生解除動作を行わせる。さらに詳しくは、再生回路60が再生動作を行う場合、ロッド室45bとヘッド室45aとが連通される。すると、ロッド室45bの圧力が高くなり、ロッド室45bからヘッド室45aに向かってピストン45pが押される力が大きくなる。その結果、再生回路60が再生動作を行う場合は、再生回路60が再生動作を行わない場合に比べ、アームシリンダ45の推力が小さくなり、アーム15bが作動しにくくなる。そこで、再生回路60に再生解除動作を行わせる。すると、ロッド室45bの圧力がタンクTと略同じ圧力になる。その結果、アームシリンダ45の推力が上がり、アーム15bが作動しやすくなる。
【0071】
[理由2]コントローラ90は、第1ポンプ21の吐出量がPQ制御によって下がることを抑制するために、再生回路60に再生解除動作を行わせる。さらに詳しくは、PQ制御は、例えば次のような制御である。第1ポンプ21の吐出圧が閾値以下のときは、第1ポンプ21の容量が、第1ポンプ21が取り得る容量の最大値に設定される。第1ポンプ21の吐出圧が閾値を超えるときは、ポンプ20Pの出力がエンジンEの馬力を超えないように、第1ポンプ21の吐出圧が高くなるにしたがって、第1ポンプ21の容量が小さくなるように制御される。ここで、アーム15b作業状態が許容範囲に含まれない場合は、許容範囲に含まれる場合に比べ、アームシリンダ45にかかる負荷(ヘッド室45aの圧力)が高い。この状態で再生回路60が再生動作を行えば、ヘッド室45aの圧力がさらに高くなる。すると、第1ポンプ21の吐出圧が、上記の閾値を越え(PQ制御にかかり)、第1ポンプ21の容量が小さくなる場合がある。すると、第1ポンプ21の吐出量が減り、アームシリンダ45の速度が低下し、作業機械1の作動が遅くなる場合がある。そこで、制御実施時には、再生回路60に再生解除動作を行わせる。すると、第1ポンプ21がPQ制御にかかりにくくなる。その結果、アームシリンダ45の速度が低下することを抑制できる。
【0072】
コントローラ90は、制御実施時には、走行モータ30の容量を最大に設定する(ステップS23)。コントローラ90は、第1走行モータ31および第2走行モータ32のそれぞれの容量を最大に設定する。例えば、第1走行モータ31に、容量が最大の「1速」と、容量が最小の「2速」とがある場合、容量が最大の「1速」に設定される(第2走行モータ32も同様)。走行モータ30の容量が最大に設定されることで、走行モータ30の容量が最大未満である場合に比べ、走行モータ30の回転速度が遅くなる。すると、クローラ11a(図1参照)の作動速度が遅くなる。すると、クローラ11aの空転が抑制され、クローラ11aが地面(登坂土面)を削ることを抑制できる。また、走行モータ30の回転速度が遅くなることで、アーム15bと走行モータ30との速度バランスが崩れることを抑制できる(速度バランスについては後述)。
【0073】
(連通流路73cなどの制御)
コントローラ90は、制御実施時には、連通流路73cを絞る、または連通流路73cを遮断する(ステップS25)。さらに詳しくは、コントローラ90は、制御実施時には、複合操作が行われるとともにアーム15b作動状態が許容範囲に含まれる場合に比べ、連通流路73cを絞る、または連通流路73cを遮断する。コントローラ90は、絞り73dの開度を制御することで、連通流路73cを絞る、または遮断する。
【0074】
連通流路73cが絞られる、または遮断されると、第1ポンプ21から走行モータ30に供給される油の流量が減る、または無くなる。よって、第1ポンプ21からアームシリンダ45に供給される油の流量が確保され、アームシリンダ45の作動圧が確保される。よって、アームシリンダ45が作動しやすくなる。また、第1ポンプ21から走行モータ30に供給される油の流量が減る、または無くなると、走行モータ30の回転速度(作動速度)が低下する。すると、地面に対するクローラ11a(図1参照)の空転が抑制される。このように、アームシリンダ45の作動圧が確保され、かつ、走行モータ30の回転速度が低下する。よって、例えば、上記の引上状態での作業機械1の移動(引き上げ)を容易に行える。
【0075】
コントローラ90は、連通流路73cの開度(絞り73dの開度)を様々に設定してもよい。例えば、コントローラ90は、アーム15b作動状態に基づいて、連通流路73cの開度を設定してもよい。例えば、コントローラ90は、アーム15bの速度が遅いほど(例えば速度閾値からのかい離が大きいほど)、連通流路73cの開度を小さくしてもよい。例えば、コントローラ90は、アームシリンダ45の推力が大きいほど(例えば推力閾値からのかい離が大きいほど)、連通流路73cの開度を小さくしてもよい。コントローラ90は、アーム15bの速度と走行モータ30の速度との速度バランスがとれるように、連通流路73cの開度を設定してもよい(速度バランスについては後述)。
【0076】
(初期動作)
コントローラ90は、走行操作部17bの操作量(走行操作量)に基づいて、第2ポンプ22の吐出量を算出する(ステップS31)。コントローラ90は、走行操作部17bの操作量に応じた作動を走行モータ30にさせるのに必要な、第2ポンプ22の吐出量(必要流量)を算出する。
【0077】
コントローラ90は、アーム15bの速度が、コントローラ90に設定された閾値(初期動作判定閾値)以上であるか否かを判定する(ステップS33)。アーム15bの速度が初期動作判定閾値未満である場合(ステップS33でNOの場合)は、後述する「上限値」にかかわらず、走行操作部17bの操作量に基づいて決定した吐出量となるように第2ポンプ22の吐出量を制御する。アーム15bの速度が初期動作判定閾値以上である場合(ステップS33でYESの場合)、フローはステップS35に進む。
【0078】
(ポンプ20Pの吐出量の設定)
コントローラ90は、アーム15bの速度と走行モータ30の速度との速度バランスがとれるように、制御を行う。コントローラ90は、アーム15bの速度に対して走行モータ30の回転速度が、速すぎる(クローラ11a(図1参照)が空転するような速度になる)ことを抑制できるように、制御を行う。コントローラ90は、アーム15bの作動に関する値(例えば速度や操作量など)に基づいて、ポンプ20Pの吐出量の上限値を設定する(ステップS35)。具体的には、コントローラ90は、次の[条件A]を満たすように、ポンプ20Pの吐出量の上限値を設定する。
【0079】
[条件A]ポンプ20Pの吐出量の上限値は、アーム15bの作動による作業機械1(図1参照。以下の「作業機械1」について同様)の移動速度と、走行モータ30の作動による作業機械1の移動速度と、の差が所定範囲内に収まるように設定される。例えば、ポンプ20Pの吐出量の上限値は、アーム15bの作動による作業機械1の移動速度と、走行モータ30の作動による作業機械1の移動速度と、が等しくなるように設定される。上記「アーム15bの作動による作業機械1の移動速度」は、アーム15bの作動によって得られると想定される作業機械1の移動速度であり、実際の作業機械1の移動速度でなくてもよい。上記「走行モータ30の作動による作業機械1の移動速度」は、走行モータ30の作動によって得られると想定される作業機械1の移動速度であり、実際の作業機械1の移動速度でなくてもよい。
【0080】
例えば、コントローラ90には、アーム15bの作動に関する値と、ポンプ20Pの吐出量と、の関係が設定される。上記「アーム15bの作動に関する値」は、例えば、アーム15bの実際の速度(例えば速度センサ87aに検出された速度)でもよく、作業操作部17aの操作量でもよい。
【0081】
上記「ポンプ20Pの吐出量」は、少なくとも第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量を含む。この「ポンプ20Pの吐出量」は、連通流路73cが遮断されている場合は、第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量である。この「ポンプ20Pの吐出量」は、連通流路73cの状態によっては、第1ポンプ21および第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量でもよい。
【0082】
コントローラ90によるポンプ20Pの吐出量の設定の具体例は、次の通りである。コントローラ90は、作業操作部17aの操作量に基づいて、第1ポンプ21の流量を設定する(図7参照)。コントローラ90には、作業操作部17aの操作量(図7ではATT操作量)と、第1ポンプ21の流量と、の関係が設定される。コントローラ90は、作業操作部17aの操作量が大きくなるほど、第1ポンプ21の流量を大きい値に設定する。次に、コントローラ90は、第1ポンプ21の流量に基づいて、第2ポンプ22の流量の上限値を設定する(図8参照)。具体的には、コントローラ90には、第1ポンプ21の流量と、第2ポンプ22の流量の上限値と、の関係が設定される。コントローラ90は、第1ポンプ21の流量が多いほど(アーム15b(図1参照)の速度が大きくなると想定されるほど)、第2ポンプ22の流量の上限値を大きい値に設定する。
【0083】
コントローラ90は、ポンプ20Pの吐出量の上限値以内で、走行操作部17bの操作に応じて、ポンプ20Pの吐出量を設定(決定)する(ステップS37)。コントローラ90は、ポンプ20Pの吐出量の上限値よりも多い流量に対応する走行操作が行われた場合は、ポンプ20Pの吐出量の上限値に基づいて、ポンプ20Pの吐出量を設定する。コントローラ90は、決定したポンプ20Pの吐出量に基づいて、第1ポンプ21および第2ポンプ22の容量を制御する。
【0084】
ここで、アーム15bが停止または略停止しているときに、上記[条件A]を満たすには、走行モータ30を停止または略停止させる必要がある。すると、作業機械1を走行させることが難しい。そこで、コントローラ90は、アーム15bの速度が初期動作判定閾値以下である場合、ポンプ20Pから走行モータ30に供給される油の流量を、上限値にかかわらず走行操作部17bの操作に基づいて決定する(ステップS31参照)。よって、走行操作部17bの操作に基づいて、走行モータ30を作動させることができ、作業機械1を走行させやすい。
【0085】
(効果)
図4に示す油圧制御装置20による効果は、次の通りである。
【0086】
(第1の発明の効果)
油圧制御装置20は、図1に示す作業機械1に設けられる。作業機械1は、走行可能な下部走行体11(走行体)と、作業を行うアーム15b(作業アタッチメント15)と、を備える。図4に示すように、油圧制御装置20は、第1ポンプ21と、第2ポンプ22と、走行モータ30と、アームシリンダ45(作業アクチュエータ40)と、走行直進弁70(切換弁)と、作動状態センサ87と、コントローラ90と、を備える。第1ポンプ21は、油を吐出する。第2ポンプ22は、第1ポンプ21とは別に設けられ、油を吐出する。走行モータ30は、油が供給されることで駆動し、下部走行体11(図1参照)を作動させる。アームシリンダ45は、油が供給されることで駆動し、アーム15b(図1参照)を作動させる。走行直進弁70は、第1ポンプ21および第2ポンプ22が吐出した油の流路を切り換えるためのものである。作動状態センサ87は、アーム15bの作動状態を検出する。アームシリンダ45を作動させる作業操作と走行モータ30を作動させる走行操作とが同時に行われる操作を、複合操作とする。複合操作が行われている場合、走行直進弁70は、第1流路73aと、第2流路73bと、連通流路73cと、を備える。第1流路73aは、第1ポンプ21につながれ、第1ポンプ21の吐出油をアームシリンダ45に油を供給するためのものである。第2流路73bは、第2ポンプ22につながれ、第2ポンプ22の吐出油を第1走行モータ31(走行モータ30)に供給するためのものである。連通流路73cは、第1流路73aと第2流路73bとを連通可能である。
【0087】
[構成1]コントローラ90には、作業操作の操作量と、アーム15bの作動状態に関する許容範囲と、の関係が設定される(図6参照)。コントローラ90は、複合操作が行われ、かつ、作動状態センサ87に検出されたアーム15bの作動状態が許容範囲に含まれない場合、許容範囲に含まれる場合に比べて連通流路73cを絞る、または連通流路73cを遮断する。
【0088】
上記[構成1]により、次の効果が得られる。複合操作が行われたときに、アームシリンダ45の負荷に比べ、走行モータ30の負荷が小さくなる場合がある(例えば上記引上状態など)。また、複合操作が行われる場合は、走行直進弁70の連通流路73cにより、第1流路73aと第2流路73bとが連通する場合がある。これらの場合、アームシリンダ45に供給すべき油が、連通流路73cを通り、走行モータ30に供給される。すると、アームシリンダ45の作動圧を確保できない場合がある。また、走行モータ30の速度が速くなりすぎる場合があり、例えば、図1に示す下部走行体11(クローラ11a)が地面に対して空転する場合がある。
【0089】
そこで、上記[構成1]では、図4に示すアーム15b作動状態が許容範囲に含まれない場合、許容範囲に含まれる場合に比べて連通流路73cが絞られる、または連通流路73cが遮断される(単に「連通流路73cが絞られる」などという)。すると、第1流路73aから第2流路73bに流れる油の流量が抑制されるので、第1ポンプ21から走行モータ30に供給される油の流量が抑制される。よって、第1ポンプ21からアームシリンダ45に供給される油の流量を確保しやすい。よって、連通流路73cを備える構成であっても、アームシリンダ45の作動圧を確保しやすい。その結果、アームシリンダ45に作動させられるアーム15bを作動させやすい。また、連通流路73cが絞られると、第1流路73aから第2流路73bに流れる油の流量が抑制されるので、第1ポンプ21から走行モータ30に供給される油の流量を抑制できる。よって、連通流路73cを備える構成であっても、走行モータ30の作動速度(回転速度)が速くなりすぎることを抑制できる。その結果、走行モータ30に作動させられる、図1に示す下部走行体11(具体的にはクローラ11a)での、地面に対する空転を抑制できる。その結果、例えば、アーム15bを利用した作業機械1の走行(例えば上記の引上状態など)を容易に行える。
【0090】
(第2の発明の効果)
[構成2]速度センサ87a(作動状態センサ87)は、アーム15bの速度を検出する。コントローラ90には、作業操作の操作量と、アーム15bの速度に関する速度閾値と、の関係が設定される(図6参照)。コントローラ90は、速度センサ87aに検出されたアーム15bの速度が、速度閾値以下である場合、速度閾値よりも大きい場合に比べて連通流路73cを絞る、または連通流路73cを遮断する。
【0091】
上記[構成2]では、上記[構成1]におけるアーム15b作動状態が、アーム15bの速度である。よって、アーム15b作動状態を確実に判断できる。その結果、アーム15bの速度に応じて、連通流路73cの制御を適切に行える。
【0092】
(第3の発明の効果)
[構成3]コントローラ90は、第1ポンプ21が吐出する油の流量に応じて、速度閾値を変化させる(図6参照)。
【0093】
上記[構成3]により、次の効果が得られる。上記[構成2]では、コントローラ90は、アーム15bの速度が速度閾値以下であるか否かを判定する。一方で、アーム15bの速度は、アームシリンダ45に供給される油の流量によって変わる。アームシリンダ45に供給される油の流量は、第1ポンプ21が吐出する油の流量(吐出量)によって変わる。そこで、上記[構成3]では、コントローラ90は、第1ポンプ21が吐出する油の流量に応じて、速度閾値を変化させる(図6参照)。よって、コントローラ90が、アーム15b作動状態を適切に判定できる。
【0094】
(第4の発明の効果)
[構成4]推力センサ87b(作動状態センサ87)は、アームシリンダ45の推力を検出する。コントローラ90には、作業操作の操作量と、アームシリンダ45の推力に関する推力閾値と、の関係が設定される。コントローラ90は、作動状態センサ87に検出されたアームシリンダ45の推力が、推力閾値以上である場合、推力閾値未満である場合に比べて連通流路73cを絞る、または連通流路73cを遮断する。
【0095】
上記[構成4]では、上記[構成1]におけるアーム15b作動状態が、アームシリンダ45の推力である。よって、アーム15b作動状態を確実に判断できる。その結果、アームシリンダ45の推力に応じて、連通流路73cの制御を適切に行える。また、アームシリンダ45の推力は、アームシリンダ45に作用する油圧に基づいて算出できる。よって、作動状態センサ87を、圧力センサを備えるものにできる。よって、作動状態センサ87が速度センサを備える必要がある場合に比べ、作動状態センサ87にかかるコストを抑制できる。
【0096】
(第5の発明の効果)
油圧制御装置20は、再生弁63と、再生解除弁65と、を備える。再生弁63は、アームシリンダ45から吐出された油を、アームシリンダ45に供給される油に合流させるためのものである。再生解除弁65は、アームシリンダ45から吐出された油をタンクTに戻すためのものである。
【0097】
[構成5]コントローラ90は、複合操作が行われ、かつ、作動状態センサ87に検出されたアーム15bの作動状態が許容範囲に含まれない場合、再生弁63を遮断し、再生解除弁65を開く。
【0098】
上記[構成5]により、次の効果が得られる。再生動作が行われる場合、再生動作が行われない場合に比べ、アームシリンダ45から吐出される油の油圧が高くなる。その結果、アームシリンダ45の推力が小さくなり、アーム15bが作動しにくくなる(詳細は上記の通り)。そこで、上記[構成5]のように、複合操作が行われ、かつ、アーム15bの作動状態が許容範囲に含まれない場合、再生弁63が遮断され、再生解除弁65が開かれる(再生解除動作が行われる)。すると、アームシリンダ45から吐出される油の油圧が、タンクTの圧力と略同じ圧力になる。その結果、アームシリンダ45の推力を高くできる。よって、アームシリンダ45をより作動させやすく、その結果、アーム15bをより作動させやすい。
【0099】
(第6の発明の効果)
[構成6-1]コントローラ90は、第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量の上限値を設定する。
【0100】
[構成6-2]コントローラ90は、アーム15bの作動による作業機械1(図1参照)の移動速度と、走行モータ30の作動による作業機械1の移動速度と、の差が所定範囲内に収まるように、上記の設定を行う。
【0101】
上記[構成6-1]および[構成6-2]により、アーム15bの作動による作業機械1(図1参照)の移動速度と、走行モータ30の作動による作業機械1の移動速度と、の差が所定範囲内に収まりやすい(速度バランスを保ちやすい)。その結果、アーム15bおよび走行モータ30が協働して作業機械1(図1参照)を移動させやすい。よって、例えば、アーム15bが作動していない(または略作動していない)にもかかわらず、走行モータ30が作動し、下部走行体11で空転が生じる、などの問題を抑制できる。また、アームシリンダ45および走行モータ30のうち、一方の作動圧が、他方の作動圧に比べて高くなることを抑制できる。よって、アームシリンダ45および走行モータ30の作動圧を低くできる。
【0102】
また、コントローラ90は、上記[構成6-1]では、第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量の「上限値」を設定する。よって、第2ポンプ22の流量が「上限値」よりも小さくなるような走行操作が行われた場合に、走行操作に応じて第2ポンプ22の流量を設定できる(走行操作を有効にできる)。
【0103】
(第7の発明の効果)
[構成7]コントローラ90は、アーム15bの速度が、コントローラ90に設定された閾値(初期動作判定閾値)以下である場合、次の処理を行う。この場合、コントローラ90は、第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量を、上限値(上記[構成6]参照)にかかわらず、走行操作に基づいて決定する。
【0104】
上記[構成7]により、次の効果が得られる。アーム15bの速度がゼロまたは略ゼロの場合、上記[構成6-2]の条件を満たすようにするには、走行モータ30の速度をゼロまたは略ゼロにする必要が生じ得る。すると、作業機械1(図1参照)が移動困難となる場合がある。そこで、上記[構成7]では、アーム15bの速度が初期動作判定閾値以下である場合は、第2ポンプ22から走行モータ30に供給される油の流量が、上限値([構成6]参照)にかかわらず、走行操作に基づいて決定される。その結果、走行操作に基づいて走行モータ30を作動させることができ、作業機械1(図1参照)を移動させやすい。
【0105】
(第8の発明の効果)
[構成8]走行モータ30の容量は可変である。コントローラ90は、複合操作が行われ、かつ、作動状態センサ87に検出されたアーム15bの作動状態が許容範囲に含まれない場合、走行モータ30の容量を最大に設定する。
【0106】
上記[構成8]により、走行モータ30の容量が最大値(走行モータ30が取り得る容量の最大値)よりも小さく設定される場合に比べ、走行モータ30のトルクを増やすことができ、かつ、走行モータ30の速度を抑制できる。その結果、下部走行体11での空転をより抑制できる。
【0107】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、図2図3、および図4に示す回路の接続は変更されてもよい。例えば、図5に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、閾値や範囲などは、一定でもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じて自動的に変えられてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【0108】
例えば、速度閾値は、上記実施形態では作業操作部17aの操作量およびポンプ流量などに基づいて変えられたが、作業操作部17aの操作量のみに基づいて変えられてもよく、一定値(固定値)でもよい。速度閾値は、作業アタッチメント15が作動しているか否かを判定できるような値であればよい。例えば、推力閾値は、速度閾値と同様に、様々な条件に応じて変えられてもよい。
【0109】
例えば、再生弁63および再生解除弁65の位置は、図2などに示す位置でなくてもよい。例えば、再生弁63および再生解除弁65と、アームシリンダ45と、の間(流路における間)に作業制御弁55が配置されるように、再生弁63および再生解除弁65が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 作業機械
11 下部走行体(走行体)
15 作業アタッチメント
20 油圧制御装置
21 第1ポンプ
22 第2ポンプ
30 走行モータ
40 作業アクチュエータ
63 再生弁
65 再生解除弁
70 走行直進弁(切換弁)
73a 第1流路
73b 第2流路
73c 連通流路
84 作動状態センサ
90 コントローラ
T タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8