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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230426BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230426BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230426BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20230426BHJP
   B60L 55/00 20190101ALN20230426BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/18
H02J7/00 Y
B60L55/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019130942
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021016281
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】山中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕輔
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152696(JP,A)
【文献】特開2013-005520(JP,A)
【文献】特開2018-013389(JP,A)
【文献】特開2019-004579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載の駆動用バッテリを充放電可能な外部機器に対し、車載の補機バッテリの電力を供給する給電システムであって、
前記外部機器のコネクタが接続される接続口と、
断接状態を切り替える第一切替部と当該第一切替部の接続中に電圧を印加可能な第一電源と第一抵抗器とが直列配置され、前記補機バッテリ及び前記接続口を接続する第一給電ラインと、
電圧を常時印加可能な第二電源と断接状態を切り替える第二切替部と前記第一抵抗器よりも抵抗値の小さい第二抵抗器とが直列配置され、前記補機バッテリ及び前記接続口を接続するとともに前記第一給電ラインと並列配置された第二給電ラインと、
前記接続口における電圧を検出する接続口電圧検出部と、
前記接続口電圧検出部で検出された前記電圧に基づいて前記接続口及び前記コネクタの接続状態を判定する判定部を含む制御装置と、を備え、
前記第一切替部は、前記制御装置に電源が供給されている状態のときに前記第一給電ラインを接続状態とするとともに前記制御装置に電源が供給されていない状態のときに前記第一給電ラインを切断状態とし、
前記第二切替部は、車両及び前記外部機器の間で前記駆動用バッテリの充放電が実施されていないときに前記第二給電ラインを接続状態とするとともに前記充放電が実施されているときに前記第二給電ラインを切断状態とする
ことを特徴とする、給電システム。
【請求項2】
前記第一抵抗器の抵抗値は、50kΩ以上であり、
前記第一抵抗器及び前記第二抵抗器の合成抵抗は、法規で定められた所定値を中央に挟んだ所定範囲以内の値である
ことを特徴とする、請求項1記載の給電システム。
【請求項3】
前記第二電源と前記第二切替部と前記第二抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第二給電ライン上の前記補機バッテリ及び前記第二電源の間の電圧を検出する第二電圧検出部を備え、
前記判定部は、前記第二電圧検出部で検出された前記電圧に基づいて、前記補機バッテリ及び前記第二電圧検出部の間における前記第二給電ラインの断線の有無を判定する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の給電システム。
【請求項4】
前記第一切替部と前記第一電源と前記第一抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第一給電ライン上の前記第一電源及び前記第一抵抗器の間と、前記第二給電ライン上の前記第二電源及び前記第二切替部の間とを接続する第一接続ラインと、
前記第一接続ライン上に設けられ、前記第一接続ラインの断接状態を切り替える第三切替部と、を備え、
前記第三切替部は、前記判定部により前記第二給電ラインの断線がないと判定された場合に前記第一接続ラインを切断状態とするとともに前記断線があると判定された場合に前記第一接続ラインを接続状態とする
ことを特徴とする、請求項3記載の給電システム。
【請求項5】
前記コネクタをその先端部に有するケーブル内のラインに設けられた機器側抵抗器の抵抗値を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記抵抗値と前記第一抵抗器及び前記第二抵抗器の合成抵抗とに基づいて、正常時における前記接続口の電圧値を算出する算出部と、を備え、
前記判定部は、前記算出部で算出された前記電圧値と前記接続口電圧検出部で検出された前記電圧とを比較することで前記第二切替部のオフ故障の有無を判定する
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記第一切替部と前記第一電源と前記第一抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第一給電ライン上の前記第一電源及び前記第一抵抗器の間と、前記第二電源と前記第二切替部と前記第二抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第二給電ライン上の前記第二切替部及び前記第二抵抗器の間とを接続する第二接続ラインと、
前記第二接続ライン上に設けられ、前記第二接続ラインの断接状態を切り替える第四切替部と、を備え、
前記第四切替部は、前記判定部により前記第二切替部がオフ故障してないと判定された場合に前記第二接続ラインを切断状態とするとともに前記オフ故障していると判定された場合に前記第二接続ラインを接続状態とする
ことを特徴とする、請求項5記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された駆動用バッテリへの充電及び駆動用バッテリからの給電が可能な車両外部機器に対し、車両に搭載された補機バッテリの電力を供給する給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用バッテリを搭載した電動車両と外部機器(例えば、家屋や施設に設置された急速充電装置や電力変換装置等)とを電気的に接続し、駆動用バッテリの高電圧電力と家屋側の家庭用電力とを相互にやり取りできるようにしたV2Hシステム(Vehicle to Home System)が知られている。V2Hシステムは、このV2Hシステムに用いられる外部機器のコネクタが電動車両の接続口に接続されている状態で利用される。このため、電動車両には、外部機器のコネクタが接続口に接続されているか否かを判定する機能が備えられている(例えば特許文献1参照)。また、外部機器にも同様の機能が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6467971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部機器は、電動車両の制御装置に電源が供給されているオン状態(電力供給状態)であれば、電動車両の補機バッテリの電力を使用して上記の接続判定が可能である。しかしながら、外部機器の種類によっては、制御装置に電源が供給されていないオフ状態(電源供給停止状態)であっても、接続口に接続されたコネクタを介して補機バッテリの電力を要求する機器が存在する。このため、電源供給停止状態(オフ状態)でも、補機バッテリの電力を接続口に供給できる給電システムの開発が望まれている。
【0005】
これに対し、従来の電動車両の給電システムを、制御装置がオフ状態であっても接続口に給電可能な回路構成に変更することが考えられる。しかしながら、給電システムに故障が発生した場合に、接続口にコネクタが接続されているか否かを判定することができない回路構成としてしまうと、車両の走行に関する機能が正常であってもフェイルセーフ機能によって走行停止とする場合がある。なお、ここでいう故障には、例えば、電動車両の給電システムにおいて、コネクタ接続判定ラインの地絡や、接続判定を行う制御装置と制御装置の電力源である補機バッテリとの間との給電ラインに断線が生じた場合や、制御装置内のスイッチ(上記特許文献1ではスイッチ108)がオフ故障した場合が挙げられる。
【0006】
本件の給電システムは、このような課題に鑑み案出されたもので、制御装置に電源が供給されていない状態でも補機バッテリの電力を接続口に供給するとともに、故障発生時にもコネクタの接続判定を行うことを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する給電システムは、車載の駆動用バッテリを充放電可能な外部機器に対し、車載の補機バッテリの電力を供給する給電システムであって、前記外部機器のコネクタが接続される接続口と、断接状態を切り替える第一切替部と当該第一切替部の接続中に電圧を印加可能な第一電源と第一抵抗器とが直列配置され、前記補機バッテリ及び前記接続口を接続する第一給電ラインと、電圧を常時印加可能な第二電源と断接状態を切り替える第二切替部と前記第一抵抗器よりも抵抗値の小さい第二抵抗器とが直列配置され、前記補機バッテリ及び前記接続口を接続するとともに前記第一給電ラインと並列配置された第二給電ラインと、前記接続口における電圧を検出する接続口電圧検出部と、前記接続口電圧検出部で検出された前記電圧に基づいて前記接続口及び前記コネクタの接続状態を判定する判定部を含む制御装置と、を備える。
【0008】
前記第一切替部は、前記制御装置に電源が供給されている状態(例えば、パワースイッチオン)のときに前記第一給電ラインを接続状態とするとともに前記制御装置に電源が供給されていない状態(例えば、パワースイッチオフ)のときに前記第一給電ラインを切断状態とする。また、前記第二切替部は、前記駆動用バッテリ及び前記外部機器の間で充放電が実施されていないときに前記第二給電ラインを接続状態とするとともに前記充放電が実施されているときに前記第二給電ラインを切断状態とする。
【0009】
(2)前記第一抵抗器の抵抗値は、50kΩ以上であり、前記第一抵抗器及び前記第二抵抗器の合成抵抗は、法規で定められた所定値を中央に挟んだ所定範囲以内の値であることが好ましい。
(3)前記給電システムは、前記第二電源と前記第二切替部と前記第二抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第二給電ライン上の前記補機バッテリ及び前記第二電源の間の電圧を検出する第二電圧検出部を備えることが好ましい。この場合、前記判定部は、前記第二電圧検出部で検出された前記電圧に基づいて、前記補機バッテリ及び前記第二電圧検出部の間における前記第二給電ラインの断線の有無を判定することが好ましい。
【0010】
(4)上記(3)に記載の前記給電システムにおいて、前記第一切替部と前記第一電源と前記第一抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第一給電ライン上の前記第一電源及び前記第一抵抗器の間と、前記第二給電ライン上の前記第二電源及び前記第二切替部の間とを接続する第一接続ラインと、前記第一接続ライン上に設けられ、前記第一接続ラインの断接状態を切り替える第三切替部と、を備えることが好ましい。この場合、前記第三切替部は、前記判定部により前記第二給電ラインの断線がないと判定された場合に前記第一接続ラインを切断状態とするとともに前記断線があると判定された場合に前記第一接続ラインを接続状態とすることが好ましい。
【0011】
(5)前記給電システムは、前記コネクタをその先端部に有するケーブル内のラインに設けられた機器側抵抗器の抵抗値を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記抵抗値と前記第一抵抗器及び前記第二抵抗器の合成抵抗とに基づいて、正常時における前記接続口の電圧値を算出する算出部と、を備えることが好ましい。この場合、前記判定部は、前記算出部で算出された前記電圧値と前記接続口電圧検出部で検出された前記電圧とを比較することで前記第二切替部のオフ故障の有無を判定することが好ましい。
【0012】
(6)上記(5)に記載の前記給電システムにおいて、前記第一切替部と前記第一電源と前記第一抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第一給電ライン上の前記第一電源及び前記第一抵抗器の間と、前記第二電源と前記第二切替部と前記第二抵抗器とが前記補機バッテリ側からこの順に配置された前記第二給電ライン上の前記第二切替部及び前記第二抵抗器の間とを接続する第二接続ラインと、前記第二接続ライン上に設けられ、前記第二接続ラインの断接状態を切り替える第四切替部と、を備えることが好ましい。この場合、前記第四切替部は、前記判定部により前記第二切替部がオフ故障してないと判定された場合に前記第二接続ラインを切断状態とするとともに前記オフ故障していると判定された場合に前記第二接続ラインを接続状態とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
開示の給電システムによれば、制御装置に対する電源の供給状態にかかわらず、補機バッテリの電力を接続口に供給することができるため、接続口にコネクタが接続されているか否かを判定できる。さらに、断線やオフ故障といった故障(不具合)が生じた場合でも、第一電源及び第二電源の少なくとも一方の電力を用いて、接続口にコネクタが接続されているか否かを判定できる。これにより、車両の走行に関する機能が正常である場合に、コネクタの接続判定ができない故障に起因して走行停止とする事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る給電システムが搭載された車両を例示する模式図である。
図2】実施形態に係る給電システムを例示する回路図及びブロック図である。
図3図2の回路図にフェイルセーフ制御のための要素を追加した回路図及びブロック図である。
図4図1の給電システムで実施される制御手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、実施形態としての給電システムについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0016】
[1.システムの構成]
図1は、本実施形態の給電システムを備えた車両1の模式図である。この車両1は、走行用モータを搭載した電気自動車又はハイブリッド自動車であり、V2Hシステムに適用される。走行用モータは、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池といった駆動用バッテリ2の電力で作動する交流電動発電機である。また、車両1には、車載電装品や車載制御装置等の電力源となる補機バッテリ3(例えば12V)が搭載される。
【0017】
駆動用バッテリ2は、車両1の外部に存在する外部機器50によって充放電が可能な二次電池であり、走行用モータの回生電力や車載ジェネレータの発電電力でも充電が可能とされる。外部機器50は、いわゆるプラグアンドチャージ機能に対応した機器であり、例えばV2H機器や急速充電機器を含む。図1では、外部機器50が家屋60に設けられている場合を例示している。外部機器50には、ケーブル51が設けられており、ケーブル51の先端部には、車両1の接続口4に接続されるコネクタ51aが設けられる。なお、接続口4は、外部機器50のコネクタ51aが接続される部分であり、充電及び放電の一方のみが可能であってもよいし両方が可能であってもよい。
【0018】
車両1において、駆動用バッテリ2と補機バッテリ3とはDCDCコンバータ(図示略)を介して接続されており、駆動用バッテリ2によって補機バッテリ3の充電が可能とされる。また、駆動用バッテリ2は、外部機器50を介して、家屋60側へ給電が可能であるとともに家屋60側からの充電が可能である。外部機器50は、駆動用バッテリ2に蓄えられた直流の高電圧電力(例えばDC300V)を、交流の家庭用電力(例えばAC100V)に変換する機能を持つ。なお、家屋60には、一般家庭だけでなく、ビルや商業施設等が含まれる。
【0019】
本実施形態の給電システムは、後述する制御装置5に対する電源の供給状態,供給停止状態にかかわらず、外部機器50に対して補機バッテリ3の電力を供給するシステムである。つまり、本給電システムでは、制御装置5に対して電源が供給されないオフ状態(電源供給停止状態)の場合でも、外部機器50が車両1の補機バッテリ3の電力により車両1との接続状態を確認し、車両1を起動させることが可能である。このため、外部機器50は、制御装置5に対する電源供給状態にかかわらず、コネクタ51aが車両1の接続口4と接続されているか否かを判定できる。
【0020】
図2は、本実施形態の給電システムを例示する回路図である。図2に示すように、車両1には、補機バッテリ3と、接続口4と、制御装置5と、補機バッテリ3及び接続口4を接続する給電ラインと、図示しない通信ラインとが設けられる。一方、外部機器50には、ケーブル51内に延設された機器側ライン52及び通信ライン(図示略)と、コントローラ(図示略)とが設けられる。機器側ライン52には、所定の抵抗値Rdを持つ機器側抵抗器53が設けられる。機器側抵抗器53は固定抵抗器であり、その抵抗値Rdは規格により例えば200Ωに定められる。
【0021】
本給電システムには、補機バッテリ3及び接続口4を接続するとともに互いに並列配置された二つの給電ライン10,20が含まれる。本実施形態では、第一給電ライン10の接続口4側の端部と第二給電ライン20の接続口4側の端部とが制御装置5内で接続されており、この接続点16と接続口4と間に一本の出力ライン30が設けられている場合を例示する。なお、二つの並列な給電ライン10,20が出力ライン30を介さずに接続口4に接続されていてもよい。すなわち、接続点16が接続口4に位置していてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、第一給電ライン10の補機バッテリ3側(以下「上流側」ともいう)に、制御装置駆動用電源ライン17(以下「電源ライン17」という)が設けられ、第二給電ライン20の上流側に、バックアップライン27が設けられる。電源ライン17は、後述する端子14と補機バッテリ3とを繋ぐラインであり、バックアップライン27は、後述する端子24と補機バッテリ3とを繋ぐラインである。
【0023】
本実施形態の第一給電ライン10には、補機バッテリ3側から順に、第一切替部11と、第一電源12と、第一抵抗器13とが直列配置される。一方、本実施形態の第二給電ライン20には、補機バッテリ3側から順に、第二電源22と、第二切替部21と、第二抵抗器23とが直列配置される。なお、本実施形態の給電システムでは、第一給電ライン10における第一抵抗器13の接続口4側(以下「下流側」ともいう)の部分と第二給電ライン20における第二抵抗器23の下流部分とが接続される。
【0024】
第一切替部11は、第一給電ライン10の断接状態を切り替えるもの(例えば、ノーマリーオープン式のリレー)であり、制御装置5に電源が供給されている状態(例えばパワースイッチがオンのとき)にオン(接続状態)となり、制御装置5に電源が供給されていない状態(例えばパワースイッチがオフのとき)にオフ(切断状態)となる。すなわち、第一切替部11は、制御装置5に電源が供給されるオン状態(電源供給状態)のときに第一給電ライン10を接続状態とするとともに、制御装置5に電源が供給されないオフ状態(電源供給停止状態)のときに第一給電ライン10を切断状態とする。
【0025】
第二切替部21は、第二給電ライン20の断接状態を切り替えるもの(例えば、ノーマリークローズ式のスイッチまたは半導体素子)であり、車両1と外部機器50との間で駆動用バッテリ2の充放電が実施されないときにオン(接続状態)となり、駆動用バッテリ2の充放電が実施されるときにオフ(切断状態)となる。すなわち、第二切替部21は、接続口4に対するコネクタ51aの接続の有無にかかわらず充放電されていないときに第二給電ライン20を接続状態とするとともに、接続口4にコネクタ51aが接続されており、且つ、充放電が実施されているときは第二給電ライン20を切断状態とする。
【0026】
第一電源12は、制御装置5の制御電源であり、第一切替部11がオンのとき(第一給電ライン10の接続中)に電圧を印加可能に構成される。第二電源22は、第一電源12のバックアップ用の電源であり、電圧を常時印加可能に構成される。第一切替部11がオンであって補機バッテリ3と端子14,24との間の給電ライン10,20(すなわち、電源ライン17及びバックアップライン27)に断線が生じていなければ、第一電源12及び第二電源22はいずれも補機バッテリ3と同電圧となる。
【0027】
第一抵抗器13及び第二抵抗器23はいずれも固定抵抗器であり、第一抵抗器13の抵抗値R1の方が第二抵抗値23の抵抗値R2よりも大きく設定される。本実施形態では、第一抵抗器13の抵抗値R1が50kΩ以上に設定され、より好ましくは1MΩ程度に設定される。また、本実施形態の第二抵抗器23の抵抗値R2は1000Ωに設定される。つまり、第一抵抗器13の抵抗値R1は第二抵抗器23の抵抗値R2に比べ大幅に大きく、これにより、互いに並列な二つの給電ライン10,20が何れも通電状態にある場合、外部機器50側から見た制御装置5の抵抗値である合成抵抗Rcは、第二抵抗器23の抵抗値R2に近い1000Ω程度となる。すなわち、二つの抵抗器13,23の合成抵抗Rcは、法規で定められた所定値(例えば1000Ω)を中央に挟んだ所定範囲以内(例えば950Ωから1050Ωの範囲以内)の値となる。なお、ここでいう所定値を中央に挟んだ所定範囲とは、所定範囲を規定する最小値及び最大値の和を2で割った値が所定値と等しくなることを意味する。
【0028】
本実施形態の給電システムでは、第一電源12,第二電源22,第二切替部21,第一抵抗器13及び第二抵抗器23が制御装置5に設けられる。また、制御装置5内のラインと制御装置5の外部のラインとは、三つの端子14,24,34を介して接続される。以下、これらの端子14,24,34を区別する場合には、それぞれ「第一端子14」,「第二端子24」,「第三端子34」という。第一切替部11は、補機バッテリ3と第一端子14との間の電源ライン17上に設けられる。
【0029】
給電システムには、第一給電ライン10上の第一切替部11と第一電源12との間の電圧V1を検出する第一電圧検出部15と、第二給電ライン20上の補機バッテリ3と第二電源22との間の電圧V2を検出する第二電圧検出部25と、接続口4における電圧V3を検出する接続口電圧検出部35が設けられる。これらの検出部15,25,35はいずれも、例えば電圧読取回路として制御装置5に設けられる。
【0030】
以下、三つの検出部15,25,35のそれぞれで検出される電圧V1,V2,V3を区別する場合には、「第一電圧V1」,「第二電圧V2」,「第三電圧V3」という。なお、本実施形態の接続口電圧検出部35は、第三端子34と接続点16との間に接続されているが、接続口4における電圧を検出できる位置に設けられていればよく、第三端子34と接続口4との間であってもよい。
【0031】
制御装置5は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置(コンピュータ)であり、車両1に設けられた車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。本実施形態の制御装置5には、給電ラインの一部が設けられる。また、制御装置5には、制御部5A,判定部5B,取得部5C,算出部5Dが設けられる。これらの要素は、制御装置5で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現してもよいし、ハードウェア(電子回路)で実現してもよい。あるいは、これらの要素をソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0032】
[2.制御構成]
制御部5Aは、第一切替部11及び第二切替部21を制御するものである。上述したように、第一切替部11は、制御装置5に対する電源供給状態に連動して第一給電ライン10の断接状態を切り替える。例えば、第一切替部11は、パワースイッチのオンオフ状態や、他のスイッチまたは他のECU(Electronic Control Unit)のハードワイヤによる起動要求やCAN-Wake UPによる起動要求に連動して断接状態を切り替える。言い換えると、各種起動要求状態であれば第一切替部11をオンできる構成とし、パワースイッチがオフなど停止条件成立であれば、制御部5Aは第一切替部11をオフに制御する。
【0033】
また、第二切替部21は、駆動用バッテリ2の充放電状態に連動して第二給電ライン20の断接状態を切り替える。言い換えると、制御部5Aは、接続口4とコネクタ51aとの接続状態を取得し、コネクタ51aが接続口4に接続されていなければ第二切替部21をオンに制御し、コネクタ51aが接続口4に接続されており、且つ、充放電が実施されていれば第二切替部21をオフに制御する。なお、駆動用バッテリ2の充放電が実施されているか否かは、例えば、図示しない車載充電器(OBC,On Board Charger)と通信ラインを介してオフ要求を取得することで判定可能である。
【0034】
判定部5Bは、接続口電圧検出部35で検出された第三電圧V3に基づき、接続口4とコネクタ51aとの接続状態を判定するものである。すなわち上記の制御部5Aは、判定部5Bでの判定結果を取得して第二切替部21を制御する。判定部5Bによる判定手法は、従来周知のものを採用可能である。例えば、第三電圧V3の値とコネクタ51aの接続状態(接続済,未接続,故障)との関係を予め記憶(設定)しておき、接続口電圧検出部35で検出された電圧V3をこの関係に適用することで判定可能である。
【0035】
本実施形態の判定部5Bは、上記の接続判定に加え、給電システムの故障判定も実施する。ここでは、二種類の故障形態について判定する場合を説明する。一つ目の故障形態は、補機バッテリ3と第二電圧検出部25(本実施形態では、第二端子24)との間における第二給電ライン20(すなわちバックアップライン27)の断線である。二つ目の故障形態は、第二切替部21のオフ故障である。以下、これらの故障について、順に説明する。
【0036】
判定部5Bは、第二電圧検出部25で検出された第二電圧V2に基づいて、補機バッテリ3と第二電圧検出部25との間(本実施形態では、補機バッテリ3と第二端子24との間のバックアップライン27)における第二給電ライン20の断線の有無を判定する。上述したように、この箇所に断線が生じていなければ(正常であれば)、第二電圧V2は補機バッテリ3と同電圧となる。一方、この箇所に断線が生じると、第二電源22の電圧は下がる。このため、第二電圧V2を用いることで、バックアップライン27の断線の有無を簡単に精度よく判定可能である。なお、以下の説明において「断線」というときは、バックアップライン27の断線を意味する。
【0037】
また、判定部5Bは、第二切替部21が正常であるときの接続口4の電圧値Vn(以下「正常電圧値Vn」ともいう)と、接続口電圧検出部35で検出された第三電圧V3とを比較することで、第二切替部21のオフ故障の有無を判定する。本実施形態では、この正常電圧値Vnを求めるために、取得部5C及び算出部5Dが設けられる。なお、正常電圧値Vnは、予め記憶(設定)されていてもよい。
【0038】
取得部5Cは、外部機器50のコントローラと車両1の制御装置5との間で通信ラインを介して通信することで、機器側抵抗器53の抵抗値Rdを取得するものである。一般的に、抵抗値Rdは車載機器50のバージョンごとに定められていることが多いため、取得部5Cは、車載機器50のバージョン情報を取得することで抵抗値Rdを間接的に取得可能である。なお、外部機器50のバージョンによっては機器側抵抗器53を備えていないものが存在するため、取得部5Cが、バージョン情報からバージョンの値を取得してもよい。また、取得部5Cがバージョン情報によらず、抵抗値Rdを直接的に取得してもよい。取得部5Cは、取得した抵抗値Rdを算出部5Dに伝達する。
【0039】
算出部5Dは、取得部5Cで取得された抵抗値Rdと合成抵抗Rcとに基づいて、正常電圧値Vnを算出するものである。第二切替部21が正常に作動する場合、接続口4にコネクタ51aが接続されているときの接続口4(あるいは第三端子34)の電圧は、補機バッテリ3の電圧に対して、合成抵抗Rc及び機器側抵抗器53の抵抗値Rdの分圧比で決まる。算出部5Dは、算出した正常電圧値Vnを判定部5Bに伝達する。
【0040】
判定部5Bは、第三電圧V3と正常電圧値Vnとを比較し、例えば、これらの差ΔVの絶対値が所定の閾値以下である場合に「第二切替部21が正常である」と判定し、これらの差の絶対値が上記の閾値よりも大きい場合に「第二切替部21がオフ故障している」と判定する。第二切替部21がオフ故障しているときは、第一抵抗値R1を合成抵抗Rcとみなせることから、機器側抵抗器53の抵抗値Rdと合成抵抗Rcとの差が非常に大きくなる。このため、第三電圧V3は補機バッテリ3の電圧と略同一となり、正常電圧値Vnとは異なる値となる。上記の判定で用いられる閾値は、これらを考慮した値に予め設定されていることが好ましい。
【0041】
なお、差ΔVの絶対値を閾値と比較する判定手法の代わりに、第三電圧V3が、正常電圧値Vnを中央に挟んだ所定の電圧範囲以内に収まっている場合に正常と判定し、この電圧範囲を下回っている場合にオフ故障であると判定してもよい。また、判定部5Bは、第三電圧V3を用いた判定条件が所定時間継続して成立する場合に、第二切替部21のオフ故障を判定してもよい。
【0042】
判定部5Bは、二つの故障形態の判定をそれぞれ行い、「断線あり」又は「オフ故障あり」と判定した場合に、その判定結果を制御部5Aに伝達する。なお、いずれの故障も生じていない場合には、判定結果が制御部5Aに伝達されなくてよい。
【0043】
本実施形態の制御部5Aは、判定部5Bから故障形態を含む判定結果が伝達された場合に、フェイルセーフ制御を実施する。ここで、図2の回路図に、フェイルセーフ制御のための要素を追加した回路図を図3に示す。図3の回路図は、図2の回路図に対し、第一接続ライン41及び第二接続ライン42と二つの切替部43,44とが追加されている点が異なり、他の要素は同一である。各切替部43,44は、例えばノーマリーオープン式のスイッチやリレーや半導体素子である。
【0044】
第一接続ライン41は、第一給電ライン10上の第一電源12及び第一抵抗器13の間と、第二給電ライン20上の第二電源22及び第二切替部21の間とを接続する。この第一接続ライン41上には、このライン41の断接状態を切り替える切替部43(以下「第三切替部43」という)が設けられる。
【0045】
第三切替部43は、判定部5Bにより第二給電ライン20のバックアップライン27の断線がないと判定された場合に第一接続ライン41を切断状態とするとともに、バックアップライン27の断線があると判定された場合に第一接続ライン41を接続状態とする。言い換えると、制御部5Aは、判定部5Bから「断線あり」という判定結果が伝達された場合にのみ、第三切替部43をオンに制御して第一接続ライン41を接続状態とする。
【0046】
これにより、第二切替部21が正常であれば、第三切替部43の下流側が並列回路となり、バックアップライン27に断線があっても、電源供給状態であれば、第一切替部11がオンとなって補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。また、この状態では、第一抵抗器13及び第二抵抗器23の双方に同一の電圧がかかるため、外部機器50側からみた制御装置5の抵抗値は第一抵抗器13及び第二抵抗器23の合成抵抗Rcとなる。
【0047】
なお、上記のバックアップライン27が断線していると判定された場合には、第三切替部43により第一接続ライン41が接続状態とされることで、上記と同様、第三切替部43の下流側が並列回路となる。これにより、電源供給状態であれば、第一切替部11がオンとなって補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。
【0048】
第二接続ライン42は、第一給電ライン10上の第一電源12及び第一抵抗器13の間と、第二給電ライン20上の第二切替部21及び第二抵抗器23の間とを接続する。この第二接続ライン42上には、このライン42の断接状態を切り替える切替部44(以下「第四切替部44」という)が設けられる。
【0049】
第四切替部44は、判定部5Bにより第二切替部21がオフ故障していない(正常である)と判定された場合に第二接続ライン42を切断状態とするとともにオフ故障していると判定された場合に第二接続ライン42を接続状態とする。言い換えると、制御部5Aは、判定部5Bから「オフ故障している」という判定結果が伝達された場合にのみ、第四切替部44をオンに制御して第二接続ライン42を接続状態とする。
【0050】
これにより、第二切替部21がオフ故障していても、第四切替部44の下流側が並列回路となり、電源供給状態であれば、第一切替部11がオンとなって補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。また、この状態では、第一抵抗器13及び第二抵抗器23の双方に同一の電圧がかかるため、外部機器50側からみた制御装置5の抵抗値は第一抵抗器13及び第二抵抗器23の合成抵抗Rcとなる。
【0051】
なお、上記の第二切替部21がオフ故障していると判定された場合には、第四切替部44により第二接続ライン42が接続状態とされることで、上記と同様、第四切替部44の下流側が並列回路となる。これにより、電源供給状態であれば、第一切替部11がオンとなって補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。なお、制御部5Aは、判定部5Bから「断線あり」又は「オフ故障あり」という判定結果が伝達された場合に、車室内に装備された音声装置や表示装置(図示略)を制御して、給電システムの故障をユーザーに報知,警告してもよい。
【0052】
[3.フローチャート]
図4は、上述した給電システムの制御内容を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、制御装置5に対して電源が供給されている状態で、所定の演算周期で実施される。
【0053】
ステップS1では、接続口電圧検出部35で検出された第三電圧V3が取得され、この第三電圧V3に基づきコネクタ51aの接続判定が行われる(ステップS2)。コネクタ51aが接続口4に接続されているときはステップS3に進み、コネクタ51aが接続口4に接続されていなければフローをリターンする。ステップS3では、外部機器50との通信が行なわれているか否かが判定され、通信が行なわれているときはステップS4に進み、通信が行なわれていないときはこのフローをリターンする。
【0054】
ステップS4では、外部機器50からバージョン情報を取得し、ステップS5では、このバージョンが所定値以上であるか否かが判定される。バージョンが所定値以上であるときはステップS6に進み、バージョンが所定値未満であるときはこのフローをリターンする。なお、この所定値は、機器側抵抗器53を備えていない外部機器50のバージョンを除外できる数値に予め設定される。
【0055】
ステップS6では、電圧情報が取得される。続くステップS7では、第二電圧V2に基づき第二給電ライン20(バックアップライン27)の断線の有無が判定される。ステップS7で「断線あり」と判定されるとステップS8に進み、第三切替部43がオンに制御される。これにより、断線している場合であっても、補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。なお、ステップS7において、第二電圧V2を用いた判定条件が成立している時間をカウントし、カウントした時間が所定時間以上になったら「断線あり」と判定してもよい。この場合、カウントした時間が所定時間に達する前に判定条件が不成立になったら、カウント時間をリセットすることが好ましい。また、ステップS8の処理とともに、断線していることをユーザーに警告する処理を行ってもよい。
【0056】
ステップS7で「断線なし」と判定された場合はステップS9に進み、バージョン情報に含まれる機器側抵抗器53の抵抗値Rdと合成抵抗Rcとに基づいて、正常電圧値Vnが算出される。続くステップS10では、第三電圧V3及び正常電圧値Vnに基づいて、第二切替部21のオフ故障の有無が判定される。
【0057】
ステップS10で「オフ故障あり」と判定されるとステップS11に進み、第四切替部44がオンに制御される。これにより、第二切替部21がオンにならない場合であっても、補機バッテリ3の電力が第三端子34を介して外部機器50に供給される。なお、ステップS10において、第三電圧V3を用いた判定条件が成立している時間をカウントし、カウントした時間が所定時間以上になったら「オフ故障あり」と判定してもよい。この場合、カウントした時間が所定時間に達する前に判定条件が不成立になったら、カウント時間をリセットすることが好ましい。また、ステップS11の処理とともに、断線していることをユーザーに警告する処理を行ってもよい。
【0058】
[4.作用,効果]
(1)上述した給電システムでは、図2に示すように、制御装置5に電源が供給されていない状態では、第一切替部11がオフであるが、第二切替部21がオンであるため、補機バッテリ3の電力が、第二給電ライン20を通じて第三端子34を介して外部機器50に供給される。このとき、外部機器50側からみた制御装置5の抵抗値は、第二抵抗器23の抵抗値R2となる。つまり、制御装置5に対する電源供給停止状態でも、補機バッテリ3の電力を接続口4に供給できる。これにより、外部機器50が補機バッテリ3の電力を使用して、外部機器50と車両1とが接続されているか否かを判定できる。
【0059】
また、制御装置5に電源が供給されている状態では、第一切替部11がオンであり、且つ、第二切替部21がオンであるため、補機バッテリ3の電力が、第一給電ライン10及び第二給電ライン20からなる並列回路を通じて第三端子34を介して外部機器50に供給される。このとき、外部機器50側からみた制御装置5の抵抗値は合成抵抗Rcとなる。つまり、制御装置5に対する電源供給状態でも、補機バッテリ3の電力を接続口4に供給できる。これにより、外部機器50が補機バッテリ3の電力を使用して、外部機器50と車両1とが接続されているか否かを判定できる。なお、制御装置5に電源が供給されている状態では、制御装置5も上記の接続判定を実施できる。
【0060】
また、上述した給電システムでは、断線やオフ故障といった故障(不具合)が生じた場合でも、制御装置5は、第一電源12及び第二電源22の少なくとも一方の電力を用いて、接続口4にコネクタ51aが接続されているか否かを判定できる。これにより、車両1の走行に関する機能が正常である場合に、コネクタ51aの接続判定ができない故障に起因して走行停止とする事態を回避できる。
【0061】
(2)上記の給電システムでは、第一抵抗器13の抵抗値R1が50kΩ以上に設定され、第二抵抗器23の抵抗値R2(1000Ω)に対して大幅に大きな値に設定されている。これにより、第一抵抗器13及び第二抵抗器23の合成抵抗Rcを、法規で定められた所定値(例えば1000Ω)を中央に挟んだ所定範囲以内(例えば950Ωから1050Ωの範囲以内)の値にすることができる。なお、第一抵抗器13の抵抗値R1を第二抵抗器23の抵抗値R2に比して大幅に大きくすることで、合成抵抗Rcを第二抵抗器23の抵抗値R2に略一致させることができる。そのため、第二抵抗器23の抵抗値R2は、法規で定められた値とすることが好ましい。
【0062】
(3)上述した給電システムでは、第二電圧検出部25により第二電圧V2が検出され、この第二電圧V2に基づいて補機バッテリ3及び第二電圧検出部25(本実施形態では第二端子24)間の断線の有無が判定される。断線が生じていれば、第二電源22間の電圧は下がることから、第二電圧V2に基づき判定することで、第二電源22よりも上流側の断線の有無を簡単に精度よく判定できる。
【0063】
(4)また、上述した給電システムでは、断線していると判定された場合には、図3に示すように、第三切替部43がオンになって第一接続ライン41が接続状態となるため、第三切替部43よりも下流側が並列回路になる。これにより、断線が生じていても、合成抵抗Rcを略1000Ωにできるため、外部機器50が車両1と接続されているか否かを判定できる。また、第三切替部43を設けることで、充放電する際の第二切替部21の制御構成を正常時と同様にできる。つまり、充放電する際には、第二切替部21を正常時と同様、オフにすればよい。したがって、制御構成の変更を最小限に留めることができる。
【0064】
(5)上述した給電システムでは、外部機器50の抵抗器53の抵抗値Rdと合成抵抗Rcとから正常電圧値Vnが算出され、この正常電圧値Vnと第三電圧V3とに基づいて第二切替部21のオフ故障の有無が判定される。オフ故障が生じていれば、第三電圧V3が正常電圧値Vnとは異なる値になることから、これらの電圧V3,Vnを比較して判定することで、オフ故障の有無を簡単に精度よく判定できる。
【0065】
(6)また、上述した給電システムでは、オフ故障していると判定された場合には、図3に示すように、第四切替部44がオンになって第二接続ライン42が接続状態となるため、第四切替部44よりも下流側が並列回路になる。これにより、第二切替部21がオフ故障していても、合成抵抗Rcを略1000Ωにできるため、外部機器50が車両1と接続されているか否かを判定できる。また、充放電する際に第四切替部44をオフすることにより、第二切替部21と同様の効果が得られる。
【0066】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上述した実施形態では、給電システムの故障形態として、バックアップライン27の断線及び第二切替部21のオフ故障の二形態を例示したが、いずれか一方の故障形態のみを判定してもよい。この場合、フェイルセーフ制御用の要素は適宜省略可能である。また、故障形態の判定機能を省略した給電システムであってもよい。この場合はフェイルセーフ制御用の要素は不要となる。
【0067】
上述した実施形態では、第一抵抗器13の抵抗値R1が50kΩ以上であり、第二抵抗器23の抵抗値R2が1000Ωであり、合成抵抗Rcが法規で定められた所定値を中央に挟んだ所定範囲以内の値である場合を例示したが、これらの抵抗値R1,R2,Rcは一例であってこれらに限られない。例えば、法規が変更になれば、その変更に伴って合成抵抗Rcを設定し、その合成抵抗Rcに合わせて二つの抵抗値R1,R2を設定すればよい。なお、上記の機器側抵抗器53の抵抗値Rdも一例であり、上述した値でなくてもよい。
【0068】
また、上述した給電システムでは、三つの端子14,24,34が設けられ、制御装置5内のラインと制御装置5の外部のラインとが接続されているが、給電ライン10,20上の各要素(切替部11,21,電源12,22,抵抗器13,23)は制御装置5の内外のどちらに設けられていてもよい。
【0069】
また、断線箇所は上記のバックアップライン27に限られず、補機バッテリ3及び第二電圧検出部25の間における第二給電ライン20の断線の有無を判定してもよい。また、給電ライン10,20上に配置される切替部11,21,電源12,22,抵抗器13,23の順番は、上述したものに限られない。また、第一切替部11が車両電源のオンオフに連動してオンオフしてもよい。少なくとも、第二切替部21が充放電状態に連動してオンオフするものであり、第一切替部11がオンのときに第一電源12が電圧を印加可能であり、第二電源22が電圧を常時印加可能であればよい。
【符号の説明】
【0070】
1 車両
2 駆動用バッテリ
3 補機バッテリ
4 接続口
5 制御装置
5A 制御部
5B 判定部
5C 取得部
10 第一給電ライン
11 第一切替部
12 第一電源
13 第一抵抗器
14 端子,第一端子
15 第一電圧検出部
16 接続点
17 電源ライン
20 第二給電ライン
21 第二切替部
22 第二電源
23 第二抵抗器
24 端子,第二端子
25 第二電圧検出部
27 バックアップライン
30 出力ライン
34 端子,第三端子
35 接続口電圧検出部
41 第一接続ライン
42 第二接続ライン
43 第三切替部
44 第四切替部
50 外部機器
51 ケーブル
51a コネクタ
52 機器側ライン
53 機器側抵抗器
60 家屋
R1 第一抵抗器の抵抗値
R2 第二抵抗器の抵抗値
Rc 合成抵抗
Rd 機器側抵抗器の抵抗値
V1 第一電圧
V2 第二電圧(第二電圧検出部で検出された電圧)
V3 第三電圧(接続口における電圧)
Vn 正常電圧値(正常時における接続口の電圧値)
図1
図2
図3
図4