(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】免震構造体
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230426BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331E
E04H9/02 351
(21)【出願番号】P 2019173783
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】田畑 治
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-002263(JP,A)
【文献】特開2011-117280(JP,A)
【文献】特開2018-145670(JP,A)
【文献】特開2018-112049(JP,A)
【文献】特開2013-167133(JP,A)
【文献】特開2013-044198(JP,A)
【文献】特開平11-148135(JP,A)
【文献】特開2016-166518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
E04B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、
上記基礎に埋設されて上記基礎の上面から突出するアンカー部材と、
厚さ方向に延びる第1挿通孔を有する平板形状であって、当該第1挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記基礎上に載置された基材と、
厚さ方向に延びる第2挿通孔を有する底板、及び当該底板の上方に位置する天板を備えており、当該第2挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記基材上に載置された柱脚支持材と、
厚さ方向に延びる第3挿通孔を有しており、当該第3挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記底板上に載置されたカバー部材と、
上記アンカー部材に嵌合されて、上記第1挿通孔、上記第2挿通孔、及び上記第3挿通孔から上記アンカー部材が抜けないように固定する固定具と、
上記柱脚支持材の天板に支持された柱と、を備えており、
上記第2挿通孔の直径は、上記第1挿通孔の直径及び上記第3挿通孔の直径より大きく、
上記カバー部材は、上記底板が上記アンカー部材に対していずれの相対位置にあっても、上記底板の上面と当接している免震構造体。
【請求項2】
上記カバー部材は、上記第3挿通孔を有する基部から、相互に異なる2方向に沿って4つの突片が延びる十字形状であり、
上記各突片は、上記底板の上面とそれぞれ当接している請求項1に記載の免震構造体。
【請求項3】
上記カバー部材は、上記第3挿通孔を有する基部から、相互に異なる3方向へそれぞれ延びる3つの突片を少なくとも有しており、
上記各突片は、上記底板の上面とそれぞれ当接しており、
上記3方向の内角は、いずれも180度未満である請求項1に記載の免震構造体。
【請求項4】
上記柱脚支持材は、上記底板と上記天板とを連結する複数の支持材を更に有しており、
上記複数の支持材は相互に離間しており、
上記複数の支持材の間に上記カバー部材の一部が位置することができる請求項1から3のいずれかに記載の免震構造体。
【請求項5】
上記底板及び上記天板は矩形の平板であり、
上記支持材は、上記底板の矩形の四隅に位置する請求項4に記載の免震構造体。
【請求項6】
上記基材は、上記基礎の上面に形成された凹部に嵌合されることにより、上記基礎が延びる方向に対して位置決めされている請求項1から5のいずれかに記載の免震構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱脚支持材を有する免震構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木造建築物の免震には、すべり支承やころがり支承、積層ゴム支承等の免震装置が用いられている。例えば、特許文献1は、木造建物の基礎と土台との間に摩擦減震装置が介挿される摩擦減震システムを開示する。摩擦減震システムは、基礎から立設されるアンカーボルトと、アンカーボルトに挿入されて土台および基礎間に介挿される摩擦減震装置と、座彫部内に収容される下から順にアンカーボルトに挿入されるワッシャおよび円錐台形ばね座金と、アンカーボルトに螺合して土台を基礎に締付固定する締付ナットと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基礎上に土台が設けられることなく、基礎のアンカー部材に締結された柱脚支持材に柱が支持される構造がある。このような土台が設けられない建築物においても、免震構造があることが望ましい。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、基礎に締結された柱脚支持材に柱が支持される構造において、簡易な免震手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る免震構造体は、基礎と、上記基礎に埋設されて上記基礎の上面から突出するアンカー部材と、厚さ方向に延びる第1挿通孔を有する平板形状であって、当該第1挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記基礎上に載置された基材と、厚さ方向に延びる第2挿通孔を有する底板、及び当該底板の上方に位置する天板を備えており、当該第2挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記基材上に載置された柱脚支持材と、厚さ方向に延びる第3挿通孔を有しており、当該第3挿通孔に上記アンカー部材が挿通されて上記底板上に載置されたカバー部材と、上記アンカー部材に嵌合されて、上記第1挿通孔、上記第2挿通孔、及び上記第3挿通孔から上記アンカー部材が抜けないように固定する固定具と、上記柱脚支持材の天板に支持された柱と、を備えている。上記第2挿通孔の直径は、上記第1挿通孔の直径及び上記第3挿通孔の直径より大きく、上記カバー部材は、上記底板が上記アンカー部材に対していずれの相対位置にあっても、上記底板の上面と当接している。
【0007】
第2挿通孔の直径が第1挿通孔の直径及び第3挿通孔の直径より大きいため、地震等の揺れが生じたとき、柱脚支持材の底板は基材とカバー部材の間において滑ることができる。これにより、基礎の揺れのエネルギーが当該滑りの摩擦により減らされて柱脚支持材に伝達されることができる。また、基礎上の複数の柱脚支持材毎に当該免震構造体を設けることで、基礎と柱との間に免震層を構成することができる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記カバー部材は、上記第3挿通孔を有する基部から、相互に異なる2方向に沿って4つの突片が延びる十字形状である。上記各突片は、上記底板の上面とそれぞれ当接している。
【0009】
十字形状のカバー部材の各突片が底板の上面とそれぞれ当接しているため、カバー部材が柱脚支持材の底板を押さえる位置の偏りが抑えられ、柱脚支持材の底板の一部が基材から離れることが抑えられる。
【0010】
(3) 好ましくは、上記カバー部材は、上記第3挿通孔を有する基部から、相互に異なる3方向へそれぞれ延びる3つの突片を少なくとも有している。上記各突片は、上記底板の上面とそれぞれ当接している。上記3方向の内角は、いずれも180度未満である。
【0011】
3方向の内角がいずれも180度未満であることにより、カバー部材が柱脚支持材の底板を押さえる位置の偏りが抑えられ、底板の一部が基材から離れることが抑えられる。
【0012】
(4) 好ましくは、上記柱脚支持材は、上記底板と上記天板とを連結する複数の支持材を更に有している。上記複数の支持材は相互に離間している。上記複数の支持材の間に上記カバー部材の一部が位置することができる。
【0013】
複数の支持材の間にカバー部材の一部が位置することとなる柱脚支持材の位置範囲にまで底板が移動することができる。
【0014】
(5) 好ましくは、上記底板及び上記天板は矩形の平板であり、上記支持材は、上記底板の矩形の四隅に位置する。
【0015】
カバー部材の一部が底板の矩形の四隅付近の位置となるまで、底板が移動することができる。
【0016】
(6) 好ましくは、上記基材は、上記基礎の上面に形成された凹部に嵌合されることにより、上記基礎が延びる方向に対して位置決めされている。
【0017】
基材が基礎が延びる方向に対して位置決めされているため、アンカー部材と第1挿通孔との間に隙間を有しても、基材が基礎が延びる方向に滑ることが防がれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基礎に締結された柱脚支持材に柱が支持される構造において、簡易な免震手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る免震構造体10の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る立上り部21及び基材40の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る柱脚支持材50の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る底板51とカバー部材60とが分離された斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るカバー部材60が底板51上に載置された一状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るカバー部材60が底板51上に載置された一状態を示す模式図である。
【
図8】
図8(A)及び
図8(B)は、実施形態に係るカバー部材60と底板51との位置関係の一状態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変形例1に係るカバー部材160が底板51上に載置された一状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、その他の変形例に係る基材440及び立上り部21の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、その他の変形例に係る第2挿通孔51Bの寸法を説明する模式図である。
【
図12】
図12は、その他の変形例に係る免震構造体500の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、免震構造体10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、基礎20が延びる方向であって、上下方向7と直行する方向として長手方向11が定義され、基礎20の厚み方向であって、上下方向7及び長手方向11のいずれとも直交する方向として幅方向12が定義される。
【0021】
本実施形態に係る免震構造体10が
図1及び
図2に示される。免震構造体10は、住宅やマンション等の建築物の一部として用いられる。免震構造体10は、1軒の建築物に対して複数が用いられて免震層を構成することができる。また、免震構造体10は、床下等に設けられるダンパ(不図示)と併用されてもよい。
【0022】
免震構造体10は、基礎20と、アンカーボルト30と、基材40と、柱脚支持材50と、カバー部材60と、ナット70と、柱80と、を備える。
【0023】
[基礎20]
基礎20は、住宅やマンションに用いられる基礎であって、コンクリート製である。基礎20は、少なくとも建築物の外周に沿って形成されており、布基礎であってもベタ基礎であってもよい。各図においては、基礎20の立上り部21の一部のみが示されている。基礎20には、複数の柱脚支持材50が設けられており、各柱脚支持材50毎に免震構造体10が設けられるが、本実施形態では、1つの免震構造体10を例に説明がなされる。
【0024】
立上り部21は、布基礎やベタ基礎において上方へ向かって起立する基礎20の一部である。立上り部21は、水平方向に沿った長手方向11に延びている。立上り部21の上面21Aは、一つの水平面を構成する。上面21Aには、下方へ凹む凹部22(
図3参照)が形成されている。凹部22は、平面視において矩形であり、基材40が嵌め込まれる。凹部22の長手方向11に沿った寸法は、基材40の長手方向11に沿った寸法と概ね同じである。
【0025】
[アンカーボルト30]
図2及び
図3に示されるように、アンカーボルト30は、基礎20に埋設されて凹部22の上面22Aから一部が突出している。アンカーボルト30は、上面22Aから突出する位置は特に限定されないが、長手方向11及び幅方向12の中央から突出することが好ましい。アンカーボルト30は、基礎20に埋設された配筋と結合されている。アンカーボルト30は、アンカー部材の一例である。上面22Aは、基礎20の上面の一例である。
【0026】
アンカーボルト30において、上面22Aから突出した部分に雄ネジが形成されている。
図2に示されるように、アンカーボルト30が上面22Aから突出する寸法は、柱脚支持材50の天板52の下面52Bの位置より下方となるように調整されている。
【0027】
[基材40]
図1及び
図3に示されるように、基材40は、基礎20の凹部22に嵌合されて基礎20上に載置されている。基材40は、凹部22との嵌合によって、長手方向11に対して位置決めされている。基材40は平板形状であって、その表裏面が、長手方向11及び幅方向12に拡がる長方形である。基材40は、上下方向7、長手方向11及び幅方向12に沿った寸法が凹部22の各寸法と同じである。したがって、基材40の上面40Aは、立上り部21の上面21Aと同一平面を構成する。基材40は、好ましくは金属製であるが、樹脂製や木製であってもよい。
【0028】
基材40は、厚さ方向に延びる第1挿通孔40Bを有する。第1挿通孔40Bは、基材40を貫通している。第1挿通孔40Bは、アンカーボルト30の位置に合せて形成されればよく、本実施形態では、基材40の長手方向11及び幅方向12の中央に位置する。第1挿通孔40Bの直径は、アンカーボルト30の直径より若干大きい程度である。基材40は、第1挿通孔40Bにアンカーボルト30が挿通されて基礎20上に載置される。基礎20上に載置された基材40は、柱脚支持材50を支持する。したがって、基材40の上面40Aは、底板51の下面51Aと当接する。
【0029】
[柱脚支持材50]
図1に示されるように、柱脚支持材50は、基材40上に載置される。柱脚支持材50は、柱80を支持するものである。また、柱脚支持材50は、地震等の揺れが生じると、基材40上をスライドするように滑る。
【0030】
図4に示されるように、柱脚支持材50は、底板51と、天板52と、4本の支持材53と、接合部54とを有する。柱脚支持材50は、金属製が好ましいが、樹脂製や木製であってもよい。
【0031】
底板51は、柱脚支持材50が設置された状態(
図1に示される状態)において底となる。設置された状態において、底板51の下面51Aは、基材40の上面40A上と当接しており、地震等の揺れが生じると、基材40の上面40Aをスライドするように滑る。上面40Aと下面51Aとの間に生じる摩擦力は、適宜調整されている。
【0032】
図4に示されるように、底板51は、平板であって、その表裏面が長手方向11及び幅方向12に拡がる正方形である。底板51は、厚さ方向に延びる第2挿通孔51Bを有する。第2挿通孔51Bは、底板51を貫通している。第2挿通孔51Bの位置は、特に限定されないが、底板51の長手方向11及び幅方向12の中央に位置する。底板51は、第2挿通孔51Bにアンカーボルト30が挿通されて基材40上に載置される。
図2に示されるように、第2挿通孔51Bの直径は、第1挿通孔40Bの直径及び下記詳述の第3挿通孔63の直径より大きい。したがって、第2挿通孔51Bにアンカーボルト30が挿通された状態において、底板51は、第2挿通孔51Bの周縁にアンカーボルト30が当接するまで、基材40の上面40A上を長手方向11及び幅方向12へ移動可能である。
【0033】
図4に示されるように、天板52は平板であって、その表裏面が長手方向11及び幅方向12に拡がる正方形である。天板52は、大きさは特に限定されないが、各寸法が底板51と同じである。天板52の上面52Aは、柱80の下面80A(
図2参照)と当接する。
【0034】
支持材53は、底板51と天板52とを連結する。支持材53は、底板51の上面51Cから上方に延びて天板52の下面に連結されている。支持材53は、例えば、金属製の平板が折り曲げられた断面がL字状の部材である。各支持材53は、底板51及び天板52の正方形の四隅において、L字の角が四隅それぞれに合わされて配置されている。底板51と天板52とは同じ形状であるので、上方から視たときに、底板51と天板52とは完全に重複する。
【0035】
図4に示されるように、柱脚支持材50は、底板51、天板52及び支持材53に囲われた内部空間55を有する。内部空間55には、底板51の第2挿通孔51Bに挿入されたアンカーボルト30の先端部が位置する。
【0036】
図1に示されるように、接合部54は、柱80の下端部に挿入されて柱80と連結される部分である。
図4に示されるように、接合部54は、天板52の上面52Aから上方へ突出している。接合部54は、上面52Aの長手方向11及び幅方向12の中央に位置することが好ましい。接合部54は、円筒形状である。接合部54には、幅方向12に貫通する2つの挿通孔54Aが上下に並んでいる。各挿通孔54Aには、ドリフトピン83が挿通される。ドリフトピン83が、柱80の貫通孔82及び挿通孔54Aに挿通されることによって、接合部54と柱80とが連結される。なお、接合部54の形状は円筒形状に限定されず、例えば平板形状などその他の公知の形状が採用され得る。
【0037】
[カバー部材60]
図5に示されるように、カバー部材60は、底板51上に載置される。カバー部材60の下面60Aと底板51の上面51Cとは当接しており、地震等の揺れによって両面が滑るようにして、カバー部材60に対して底板51が移動する。上面51Cと下面60Aとの間に生じる摩擦力は、適宜調整されている。
【0038】
図1及び
図5に示されるように、カバー部材60は、平面視が十字形状の平板である。カバー部材60は、長手方向11及び幅方向12に沿った最大寸法が第2挿通孔51Bの直径より長い。カバー部材60は、基部61と、4つの突片62と、を有する。
【0039】
基部61は、厚さ方向に延びる第3挿通孔63を有する。第3挿通孔63は、基部61を貫通している。第3挿通孔63の直径は、第2挿通孔51Bの直径より小さく、例えば、第1挿通孔40Bと同程度である。
【0040】
各突片62は、基部61から直交する2方向(例えば、長手方向11及び幅方向12)に沿って延びる。同じ方向に沿って延びる2つの突片62は、基部61から相反する向きへ延びている。4つの突片62が基部61から2方向に沿って延出していることによって、カバー部材60が平面視で十字形状となっている。
【0041】
各突片62において、延びる方向と直交する方向に沿った幅は、柱脚支持材50において隣り合う支持材53間の距離より短い。例えば、基部61から長手方向11に沿って延びる突片62における幅方向12に沿った寸法は、幅方向12において隣り合う支持材53間の距離より短い。したがって、各突片62は、隣り合う支持材53の間に進入可能である。
【0042】
図5に示されるように、カバー部材60は、第3挿通孔63にアンカーボルト30が挿通されて底板51上に載置される。基部61と基材40との間には、底板51と同程度の厚みの座金64が位置する。座金64は、アンカーボルト30が挿入可能な環状である。座金64の外径は、第1挿通孔40Bの直径及び第3挿通孔63の直径より大きい。基部61は、柱脚支持材50の内部空間55に位置する。
図2に示されるように、第2挿通孔51Bの内径と座金64の外径との差は、第1挿通孔40Bの内径とアンカーボルト30の外径の差より大きく、また、第3挿通孔63の内径とアンカーボルト30の外径との差より大きい。
【0043】
図6に示されるように、第2挿通孔51Bの中心及び第3挿通孔63の中心が、アンカーボルト30の先端の円柱形状の中心線と一致しており、柱脚支持材50の底板51の各辺が長手方向11又は幅方向12に沿っており、且つカバー部材60の各突片62が長手方向11又は幅方向12に沿って延びている状態において、基材40の長手方向11の端と底板51の長手方向11の端との長手方向11に沿った最短距離D1は、幅方向12に沿って延びる突片62と支持材53との長手方向11に沿った最短距離D2より長い。また、
図6に示される上記状態において、基材40の幅方向12の端と底板51の幅方向12の端との幅方向12に沿った最短距離D3は、長手方向11に沿って延びる突片62と支持材53との幅方向12に沿った最短距離D4より長い。
【0044】
図7に示されるように、第2挿通孔51Bの中心が、アンカーボルト30の先端の円柱形状の中心線と一致しており、アンカーボルト30に対して、カバー部材60及び座金64がそれぞれ長手方向11の一方(
図7では上方)に移動して、アンカーボルト30とカバー部材60の第3挿通孔63とが当接しており、且つアンカーボルト30と座金64とが当接している状態において、座金64と第2挿通孔51Bとの長手方向11に沿った最長距離D5は、幅方向12に沿って延びる突片62と、カバー部材60が移動した向きと異なる向きに位置する支持材53(
図7では下方)と間の長手方向11に沿った距離D6より長い。
【0045】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、各突片62は、底板51がアンカーボルト30に対していずれの相対位置にあっても、カバー部材60の下面62Aと底板51の上面51Cとが当接している。
【0046】
前述したように、最長距離D5が距離D6より長いので、
図8(A)に示されるように、基材40に対して底板51が長手方向11の一方(
図8では上方)に移動していくと、基部61から幅方向12に沿って延びる各突片62が、移動する向きと反対向き(
図8では下方)に位置する支持材53と当接する。この状態において、4つの突片62のいずれもが、底板51の上面51Cと当接している。
【0047】
図示はされていないが、基材40に対して底板51が幅方向12の一方へ移動していくと、基部61から長手方向11に沿って延びる各突片62が、移動する向きと反対向きに位置する支持材53と当接する。なお、座金64は、第2挿通孔51Bの周縁に当接していてもよい。
【0048】
図8(B)に示されるように、基材40に対して底板51が長手方向11及び幅方向12に沿って同じ距離だけ移動していくと、アンカーボルト30が座金64を介して第2挿通孔51Bの周縁に当接する。この状態において、4つの突片62のいずれもが、底板51の上面51Cと当接している。なお、アンカーボルト30が座金64を介して第2挿通孔51Bの周縁に当接せずに、突片62が支持材53と当接してもよい。
【0049】
[ナット70]
図2に示されるように、ナット70は、アンカーボルト30の上端部に螺合されて、基材40との間に、柱脚支持材50の底板51及びカバー部材60を挟み込む。ナット70により、柱脚支持材50の底板51及びカバー部材60からアンカーボルト30が抜けることなく、柱脚支持材50及びカバー部材60が基礎20に固定される。ナット70は、固定具の一例である。
【0050】
[柱80]
柱80は、例えば木製の四角柱であって、住宅やマンション等の建築物における構造部材である。柱80は、柱脚支持材50に支持される。
図2に示されるように、柱80の下面80Aには、上下方向7に沿って延びる挿入孔81が形成されている。柱80の側面80Bの下端部には、2つの貫通孔82が上下方向7に並んで形成されている。2つの貫通孔82は柱80を例えば幅方向12に貫通している。2つの貫通孔82は、挿入孔81の内部空間と連通している。
【0051】
挿入孔81には、接合部54が嵌め込まれる。
図1及び
図2に示されるように、挿入孔81は、下面80Aの長手方向11及び幅方向12の中央に位置する。挿入孔81は、接合部54の外形とほぼ同じ円筒形状である。
【0052】
図1及び
図2に示されるように、貫通孔82には、接合部54に挿入孔81に嵌め込まれた状態で、ドリフトピン83が挿入される。接合部54の挿通孔54Aと貫通孔82とは、挿入孔81に接合部54が嵌め込まれた状態において、1本のドリフトピン83が挿通可能に重なっている。ドリフトピン83が、挿通孔54A及び貫通孔82に挿入されることにより、接合部54と柱80とが連結される。
【0053】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、第2挿通孔51Bの直径が第1挿通孔40Bの直径及び第3挿通孔63の直径より大きいため、地震等の揺れが生じたとき、柱脚支持材50の底板51は基材40とカバー部材60の間において滑ることができる。これにより、基礎20の揺れのエネルギーが当該滑りの摩擦により減らされて柱脚支持材50に伝達されることができる。また、基礎20上の複数の柱脚支持材50毎に当該免震構造体10を設けることで、基礎20と柱80との間に免震層を構成することができる。
【0054】
また、十字形状のカバー部材60の各突片62が底板51の上面51Cとそれぞれ当接しているため、カバー部材60が柱脚支持材50の底板51を押さえる位置の偏りが抑えられ、柱脚支持材50の底板51の一部が基材40から離れることが抑えられる。
【0055】
また、複数の支持材53の間にカバー部材60の一部が位置することとなる柱脚支持材の位置範囲にまで底板が移動することができる。
【0056】
また、カバー部材60の一部が底板51の矩形の四隅付近の位置となるまで、底板51が移動することができる。
【0057】
また、基材40は基礎20が延びる方向に対して位置決めされているため、アンカーボルト30と第1挿通孔40Bとの間に隙間を有しても、基材40が長手方向11に滑ることが防がれる。
【0058】
また、最短距離D1が最短距離D2より長く、最短距離D3が最短距離D4より長いため、柱脚支持材50の底板51は、基材40上から外側へはみ出さない。
【0059】
また、施工時において、第2挿通孔51Bは、挿通されるアンカーボルト30との間に隙間を有し、柱脚支持材50とアンカーボルト30の相互の位置が固定されていないため、各部材の加工誤差による基礎20と柱80の位置ずれがあったとしても、免震構造体10が施工されることができる。
【0060】
また、最長距離D5は、距離D6より長いことから、底板51が長手方向11又は幅方向12に沿って滑るとき、カバー部材60が支持材53に当接し底板51の滑りの勢いを受け止めるから、座金64及びアンカーボルト30が損傷することを抑制できる。
【0061】
また、基材40とカバー部材60の間に底板51だけでなく底板51と同程度の厚みの座金64があることにより、カバー部材60の基部61が基材40側へ撓むことが防がれる。
【0062】
[変形例1]
上記実施形態では、4つの支持材53と、基部61から4つの突片62が相互に異なる2方向に沿って延びる十字形状のカバー部材60と、が用いられる例が示された。しかしながら、カバー部材60は、基部161から3つの突片162が相互に異なる3方向へそれぞれ延びるカバー部材160であってもよい。また、支持材53は、3つであってもよい。変形例1では、カバー部材160が用いられる免震構造体100の例について説明される。
【0063】
図9に示されるように、支持材53は、例えば、3つが配置され、そのうち2つが底板51及び天板52の正方形の相互に隣り合ういずれかの二隅において、L字の角が当該二隅にそれぞれに合わされて配置され、その他の1つが当該二隅を結ぶ辺とは反対側の辺の中央に配置される。
【0064】
カバー部材160は、基部161と、3つの突片162と、を有する。基部161は、厚さ方向に延びる第3挿通孔63を有する。第3挿通孔63は、基部161を貫通している。
【0065】
各突片162は、基部161から相互に異なる3方向に沿って延びる。相互に異なる3方向の内角θはいずれも180度未満であることが好ましく、例えば、いずれも120度である。3つの突片162が基部161から各内角θが120度である3方向に沿って延出していることによって、カバー部材160が平面視でY字形状となっている。
【0066】
各突片162は、底板51がアンカーボルト30に対していずれの相対位置にあっても、カバー部材160の下面と底板51の上面51Cとが当接している。
【0067】
[変形例1の作用効果]
カバー部材160の突片162が延びる3方向の内角がいずれも180度未満であることにより、カバー部材160が柱脚支持材50の底板51を押さえる位置の偏りが抑えられ、柱脚支持材50の底板51の一部が基材40から離れることが抑えられる。
【0068】
[その他の変形例]
最短距離D1が最短距離D2より短く、最短距離D3が最短距離D4より短くともよい。このとき、
図10に示されるように、第2挿通孔51Bの直径は、アンカーボルト30の直径との差D7が基材40の短手方向(幅方向12)に沿った寸法と底板51の幅方向12に沿った寸法との差D8より小さく形成されれば、底板51は、基材40上から外側へはみ出さない。
【0069】
また、カバー部材60は、基部61及び突片62から構成されずともよい。このとき、カバー部材60は、直径が第2挿通孔51Bの直径より大きい円形、対角線の長さが第2挿通孔51Bの直径より大きい矩形或いは第3挿通孔63の中心から縁までの最短距離が第2挿通孔51Bの直径より大きい平板であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、平板形状であって長方形である基材40が用いられたが、基材40に代えて開放側を下方に向けた断面コの字状である基材440が用いられてもよい。
図11に示されるように、基材440は、基部441と、延出部442と、を有する。延出部442は、基部441の幅方向12の両端から下方に延出する。各延出部442は、平板形状であって、その表裏面が、上下方向7及び長手方向11に拡がる長方形である。各延出部442は、内面442Aが立上り部21の側面21Bとそれぞれ当接する。基材440は、各延出部442の内面442Aと立上り部21の側面21Bとの当接によって、幅方向12に対して位置決めされている。これにより、アンカーボルト30と第1挿通孔40Bとの間に隙間を有しても、基材440が長手方向11又は幅方向12に滑ることが防がれる。
【0071】
また、上記実施形態では、基材40、柱脚支持材50の底板51及びカバー部材60を基礎20に固定するためにナット70が用いられたが、ナット70に代えてカバー部材60の上面60B上に拡がる頭部を有するボルト72が用いられてもよい。ボルト72は、
図12に示されるように、上端の内径に雌ネジを有するアンカー部材31の上部31Aと螺合する。なお、ボルト72は、固定具の一例である。
【0072】
また、基材40と底板51並びに底板51とカバー部材60の摩擦力の調整のために、基材40の上面40A、底板51の下面51A、底板51の上面51C及びカバー部材60の下面60Aは、所定の摩擦材が接着されてもよい。
【0073】
また、座金64は、用いられなくともよい。また、カバー部材60は、座金64に代えて、座金64と同様の形状の底部を第3挿通孔63の下面60A側の周りに有していてもよい。
【0074】
本実施形態では、断面L字状の支持材53が用いられたが、支持材53は、円柱、三角柱や四角柱の形状であってもよい。
【0075】
また、底板51及び天板52は、正方形以外の矩形であってもよく、円形であってもよい。底板51及び天板52が円形であるとき、各支持材53は、底板51及び天板52の所定の位置に固定されればよいが、円の縁に等間隔に固定されることが好ましい。また、底板51及び天板52は、三角形や五角形であってもよい。
【0076】
また、突片62は4つが用いられたが、5つ以上用いられてもよい。このとき、支持材53は、5つ以上用いられてもよい。
【0077】
また、突片62は矩形であったが、例えば、基部61から離れるほど延びる方向と直交する方向における寸法が大きくなる扇形状であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10、500・・・免震構造体
20・・・基礎
22A・・・上面
30・・・アンカーボルト(アンカー部材の一例)
31・・・アンカー部材
40、440・・・基材
41B・・・第1挿通孔
50・・・柱脚支持材
51・・・底板
52・・・天板
53、253・・・支持材
51B・・・第2挿通孔
60・・・カバー部材
61・・・基部
62・・・突片
63・・・第3挿通孔
70・・・ナット(固定具の一例)
72・・・ボルト(固定具の一例)
80・・・柱
θ・・・内角