(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230426BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20230426BHJP
G01G 19/10 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 B
G01G19/10 B
(21)【出願番号】P 2019198307
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】植田 登志郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一臣
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049103(JP,A)
【文献】特開2018-188831(JP,A)
【文献】特開2017-166232(JP,A)
【文献】特開2000-064360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
G01G 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業の対象物を保持する保持作業と保持された前記対象物を積込目標の上で解放する解放作業とを行う作業機械であって、
機体と、
前記機体に対して起立方向及び倒伏方向に起伏可能に支持されるブームと前記保持作業において前記対象物を保持することが可能なアタッチメントとを含む作業装置と、
前記作業装置の姿勢を取得する姿勢取得部と、
前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部と、
前記保持作業における前記作業装置の姿勢の中から設定される姿勢を基点姿勢として設定する基点姿勢設定部と、
予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記積込目標の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する予測荷重決定部と、
前記予測荷重決定部により決定される前記予測荷重に関する情報である予測結果を出力する出力部と、を備え、
前記予測荷重決定条件は、前記基点姿勢からの前記作業装置の姿勢の変化の度合いを示す値である姿勢変化量が、前記予測荷重を決定するために予め設定された変化量閾値以上になるという条件が満たされることを含む、作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械であって、
前記姿勢取得部は、前記機体に対する前記ブームの角度であるブーム角度を取得するブーム角度取得部を含み、
前記基点姿勢設定部は、前記保持作業において設定される前記ブーム角度を前記基点姿勢として設定し、
前記姿勢変化量は、前記基点姿勢からの前記起立方向への前記ブーム角度の増加量である、作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械であって、
前記ブームを前記起立方向に作動させるためのブーム上げ操作を受けることが可能なブーム操作装置をさらに備え、
前記基点姿勢設定部は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたときの前記ブーム角度を前記基点姿勢として設定する、作業機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の作業機械であって、
前記予測荷重決定条件は、前記ブーム角度の前記増加量が前記変化量閾値に達するまで前記基点姿勢からの前記ブーム角度の増加が継続するという条件が満たされることをさらに含む、作業機械。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記出力部は
、前記予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記荷重取得部により取得される前記荷重を前記予測荷重として出力する、作業機械。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の作業機械であって、
オペレータが行う入力操作を受けることが可能な入力操作受付部をさらに備え、
前記基点姿勢設定部は、前記入力操作受付部が前記入力操作を受けた時点よりも後の前記作業装置の姿勢を前記基点姿勢として設定する、作業機械。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記予測荷重決定条件は、前記荷重取得部により取得される前記対象物の荷重が予め設定された予測荷重決定閾値以上であるという条件が満たされることをさらに含む、作業機械。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の作業機械であって、
前記基点姿勢設定部は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記基点姿勢を更新するか否かを判定するために予め設定された更新条件が満たされた場合に、その後に行われる前記保持作業における前記作業装置の姿勢の中から設定される姿勢を前記基点姿勢として更新し、
前記予測荷重決定部は、更新された前記基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされているか否かを判定する、作業機械。
【請求項9】
請求項8に記載の作業機械であって、
前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記荷重取得部により取得される前記対象物の荷重が予め設定された更新判定荷重閾値以下になるという条件が満たされることを含む、作業機械。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の作業機械であって、
前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記ブームが前記倒伏方向に動作するという条件が満たされることを含む、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧ショベルなどの作業機械が知られている。前記油圧ショベルは、機体と、この機体に対して相対移動することが可能な作業装置とを備え、この作業装置は、ブーム、アーム及びバケットを含む。前記油圧ショベルは、作業現場において、土砂などの作業の対象物をバケットなどのアタッチメントにより保持する保持作業と、保持された前記対象物を例えばダンプトラックなどの積込目標に積み込むための積込作業とを行う。この積込作業は、保持された前記対象物を前記積込目標の上で解放する解放作業を含む。このような油圧ショベルとして、いわゆるペイロード機能を搭載するものも知られている。このペイロード機能は、前記バケットに保持される前記土砂の荷重を計測する機能である。前記油圧ショベルは、前記積込作業が行われるときにこのペイロード機能を機能させることで、前記積込作業によって前記ダンプトラックに積み込まれる土砂の量を演算することができる。前記油圧ショベルは、例えば、複数回繰り返される前記積込作業ごとに前記土砂の量を演算し、前記ダンプトラックに排土された前記土砂の合計量を演算し、演算された前記土砂の合計量を表示装置などに表示することができる。これにより、オペレータは、前記ダンプトラックに積み込まれた土砂の合計量を把握することができる。
【0003】
ところで、前記油圧ショベルは、前記作業現場において前記積込作業の他にも種々の動作を行う。従って、前記オペレータが前記ダンプトラックに積み込まれる土砂の合計量を正確に把握するためには、前記油圧ショベルは、前記土砂の量を演算するときの当該油圧ショベルの作業が前記積込作業であるか否かを判定する必要がある。
【0004】
特許文献1は、ダンプトラックへの積込作業(積込動作)を精度よく検出することにより、ダンプトラックに積み込まれた掘削物の荷重を正確に把握するための技術を開示している(特許文献1の段落0005)。この特許文献1の油圧ショベルでは、バケットが基準高さを通過したことを条件に、油圧ショベルの作業がダンプトラックに対する掘削物の積込作業であると判定され、積込荷重値決定部によって積込荷重値が決定される(特許文献1の段落0104~段落0107)。前記基準高さは、油圧ショベルのユーザによって設定される(引用文献1の段落0044)。
【0005】
特許文献2は、ブームの角度がブーム境界角度を下から通過した場合に、土砂の入ったバケットをホッパへ移動する作業であると判断する技術を開示している。前記ブーム境界角度は、油圧ショベルの水平位置から上位方向又は下位方向の何れかの方向に設定された所定角度である(特許文献2の段落0033)。前記ブーム境界角度は、前記油圧ショベルのオペレータによって設定される(特許文献2の段落0033,0047)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-188831号公報
【文献】特開2002-021122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記油圧ショベルなどの作業機械が配置される地面の高さ(作業機械配置高さ)と前記ダンプトラックが配置される地面の高さ(トラック配置高さ)との高低差は、作業現場の状況によって異なる。このため、前記積込作業において、前記ダンプトラックに土砂を積み込むために前記バケットを上昇させる高さ、すなわち、前記機体に対する前記バケットの高さは、作業現場の状況に応じて異なる。従って、前記特許文献1の技術では、前記油圧ショベルのオペレータは前記作業現場の状況に応じて前記基準高さの設定を変更するという煩雑な設定作業が必要である。また、前記積込作業において、前記ダンプトラックに土砂を積み込むために前記ブームを起立させるブームの角度、すなわち、前記機体に対する前記ブームの角度は、作業現場の状況に応じて異なる。従って、前記特許文献2の技術では、前記油圧ショベルのオペレータは前記作業現場の状況に応じて前記ブーム境界角度の設定を変更するという煩雑な設定作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作業現場の状況に応じた設定作業に起因するオペレータの負担を軽減しつつ、前記解放作業において前記積込目標の上で解放されると予測される前記対象物の荷重に関する情報を出力することができる作業機械を提供することを目的とする。
【0009】
提供されるのは、作業の対象物を保持する保持作業と保持された前記対象物を積込目標の上で解放する解放作業とを行う作業機械であって、機体と、前記機体に対して起立方向及び倒伏方向に起伏可能に支持されるブームと前記保持作業において前記対象物を保持することが可能なアタッチメントとを含む作業装置と、前記作業装置の姿勢を取得する姿勢取得部と、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部と、前記保持作業における前記作業装置の姿勢の中から設定される姿勢を基点姿勢として設定する基点姿勢設定部と、予め設定された予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記解放作業において前記積込目標の上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する予測荷重決定部と、前記予測荷重決定部により決定される前記予測荷重に関する情報である予測結果を出力する出力部と、を備え、前記予測荷重決定条件は、前記基点姿勢からの前記作業装置の姿勢の変化の度合いを示す値である姿勢変化量が、前記予測荷重を決定するために予め設定された変化量閾値以上になるという条件が満たされることを含む。
【0010】
この作業機械では、上記のような姿勢変化量が予め設定された前記変化量閾値以上になるという条件に基づいて前記予測荷重が決定される。このことは、前記作業現場の状況に応じて前記変化量閾値の設定を変更する設定作業の頻度を従来に比べて減少させること又は前記設定作業を省略することを可能にする。よって、前記作業機械では、作業現場の状況に応じた設定作業に起因するオペレータの負担を軽減しつつ、前記対象物を前記積込目標の上で解放する解放作業により解放されると予測される前記予測荷重に関する情報である予測結果を出力することができる。
【0011】
前記作業機械において、前記姿勢取得部は、前記機体に対する前記ブームの角度であるブーム角度を取得するブーム角度取得部を含み、前記基点姿勢設定部は、前記保持作業において設定される前記ブーム角度を前記基点姿勢として設定し、前記姿勢変化量は、前記基点姿勢からの前記起立方向への前記ブーム角度の増加量であることが好ましい。
【0012】
前記対象物を前記積込目標の上で解放する前記解放作業は、多くの場合、前記対象物を保持する前記アタッチメントが前記積込目標の高さを超える高さまで上昇するように前記ブームを起立方向へ起立させて前記ブーム角度を増加させるブーム上げ動作を含む。この態様では、前記予測荷重が、前記基点姿勢からの前記ブーム角度の増加量に基づいて決定される。このことは、前記作業装置の姿勢を検出して前記アタッチメントの高さを演算することにより前記予測荷重を決定する場合と比べて演算負荷を低減する。
【0013】
前記作業機械は、前記ブームを前記起立方向に作動させるためのブーム上げ操作を受けることが可能なブーム操作装置をさらに備え、前記基点姿勢設定部は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたときの前記ブーム角度を前記基点姿勢として設定することが好ましい。
【0014】
前記アタッチメントが前記対象物を保持する前記保持作業が行われる過程では、多くの場合、前記アタッチメントにより保持した前記対象物を掬い上げるために前記ブーム上げ動作が開始される。この態様では、前記保持作業において前記ブーム上げ動作が開始されるときの前記ブーム角度を前記基点姿勢として設定することができる。前記対象物を前記積込目標の上で解放する前記解放作業が予測される可能性の高い状況である前記ブーム上げ動作の開始時の前記ブーム角度が前記基点姿勢として設定されるため、前記予測荷重の決定を適切に行うことができる。
【0015】
前記作業機械において、前記予測荷重決定条件は、前記ブーム角度の前記増加量が前記変化量閾値に達するまで前記基点姿勢からの前記ブーム角度の増加が継続するという条件が満たされることをさらに含んでいてもよい。
【0016】
前記対象物を積込目標の上で解放する前記解放作業は、多くの場合、前記ブーム角度が連続的に増加するような前記ブーム上げ動作を含む。前記ブーム角度が連続的に増加しない場合は前記アタッチメントの位置を調整する作業などの前記解放作業に相当しない作業が行われることが予測される。従って、この態様では、前記予測荷重の決定がより適切に行われる。
【0017】
前記作業機械において、前記出力部は、前記予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記荷重取得部により取得される前記荷重を前記予測荷重として出力することが好ましい。
【0018】
この態様では、オペレータは、前記解放作業により前記積込目標に解放されると予測される前記対象物の荷重を把握することができる。これにより、前記オペレータによる前記作業現場の作業が効果的に支援される。
【0019】
前記作業機械は、オペレータが行う入力操作を受けることが可能な入力操作受付部をさらに備え、前記基点姿勢設定部は、前記入力操作受付部が前記入力操作を受けた時点よりも後の前記作業装置の姿勢を前記基点姿勢として設定することが好ましい。
【0020】
この態様では、前記基点姿勢設定部による前記基点姿勢の設定が前記オペレータによる前記入力操作の後に限られるので、前記オペレータは、前記予測荷重の決定を行う制御を、必要に応じて有効にすることができる。
【0021】
前記作業機械において、前記予測荷重決定条件は、前記荷重取得部により取得される前記対象物の荷重が予め設定された予測荷重決定閾値以上であるという条件が満たされることをさらに含んでいてもよい。
【0022】
通常、前記対象物を積込目標の上で解放する前記解放作業が行われるときには、前記アタッチメントにはある程度の量の前記対象物が保持されている。一方、前記アタッチメントに対象物が保持されていない場合や対象物が保持されていても微少量である場合には、前記解放作業が行われる可能性が低い。この態様では、前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重が予め設定された予測荷重決定値以上であるという条件を前記予測荷重決定条件が含んでいる。従って、前記予測荷重の決定がより適切に行われる。
【0023】
前記作業機械において、前記基点姿勢設定部は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記基点姿勢を更新するか否かを判定するために予め設定された更新条件が満たされた場合に、その後に行われる前記保持作業における前記作業装置の姿勢の中から設定される姿勢を前記基点姿勢として更新し、前記予測荷重決定部は、更新された前記基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされているか否かを判定することが好ましい。
【0024】
オペレータは、前記保持作業により保持された前記対象物を前記積込目標の上に移動させるための操作を開始した後、前記解放作業を行う前に、当該操作を中断したり、前記保持作業をやり直したりする場合がある。このような場合には、その時点で既に設定されている前記基点姿勢に基づいて前記予測荷重の決定を行うのは不適である。従って、この態様では、前記基点姿勢が一旦設定された後であっても、前記更新条件が満たされた場合には、前記基点姿勢が更新され、更新された当該基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされているか否かが判定される。すなわち、本態様では、前記作業装置の動作状況に応じて適切な基点姿勢を更新することが可能になり、更新された基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされたか否かが適切に判定される。
【0025】
前記作業機械において、前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記荷重取得部により取得される前記対象物の荷重が予め設定された更新判定荷重閾値以下になるという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0026】
前記対象物の荷重が前記更新判定荷重閾値以下になった場合には、例えば、前記保持作業において前記対象物が前記アタッチメントに一旦保持された後、前記予測荷重決定条件が満たされる前に、保持された前記対象物の一部又は全部が前記アタッチメントから解放されるという状況が想定される。この場合、前記保持作業が再度行われる可能性が比較的高い。従って、この態様では、前記対象物の荷重と前記更新判定荷重閾値とを比較することにより、前記基点姿勢の更新の要否を判定することができる。
【0027】
また、前記作業機械において、前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記ブームが前記倒伏方向に動作するという条件が満たされることを含んでいてもよい。
【0028】
前記ブーム上げ動作から前記ブームが前記倒伏方向に動作するブーム下げ動作に転じた場合には、前記保持作業が再度行われるという状況が想定される。従って、この態様では、前記ブームが前記倒伏方向に動作するという条件が満たされるか否かの判定に基づいて、前記基点姿勢の更新の要否を判定することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、作業現場の状況に応じた設定作業に起因するオペレータの負担を軽減しつつ、解放作業により解放されると予測される予測荷重に関する情報である予測結果を出力することができる作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【
図3】前記油圧ショベルに搭載される右側操作レバー及び左側操作レバーを示す斜視図である。
【
図4】油圧ショベルによるダンプトラックの荷台への積込作業が行われる作業現場の一例を示す側面図である。
【
図5】油圧ショベルによるダンプトラックの荷台への積込作業が行われる作業現場の他の例を示す側面図である。
【
図6】前記コントローラにより実行される制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルを示す。
図2は、前記油圧ショベルに搭載されるコントローラ及びこれにより制御される回路の構成を示す図である。
【0033】
図1及び
図2に示すように、油圧ショベル10は、下部走行体11と、前記下部走行体11に旋回可能に搭載される上部旋回体12と、前記上部旋回体12に搭載される作業装置13と、複数の油圧アクチュエータと、少なくとも一つの油圧ポンプ21と、パイロットポンプ22と、複数の操作装置と、複数の制御弁と、複数の圧力センサと、姿勢検出部と、スイッチ80と、コントローラ50と、を備える。
【0034】
前記下部走行体11及び前記上部旋回体12は、前記作業装置13を支持する機体を構成する。前記下部走行体11は、前記油圧ショベル10を走行させるための図略の走行装置を有し、地面Gの上を走行することができる。前記上部旋回体12は、旋回フレーム12Aと、その上に搭載されるエンジンルーム12B及びキャブ12Cとを含む。前記エンジンルーム12Bはエンジンを収容し、前記キャブ12Cには、オペレータが着座する座席、種々の操作レバー、操作ペダルなどが配置されている。
【0035】
前記作業装置13は、土砂を保持する保持作業と、保持された前記土砂をダンプトラックの荷台に積み込むための積込作業とを行うことが可能な複数の可動部を含む。前記複数の可動部は、ブーム14、アーム15及びバケット16を含む。前記土砂は、作業の対象物の一例であり、前記ダンプトラックの荷台は、積込目標の一例であり、前記バケット16は、アタッチメントの一例である。
【0036】
本実施形態では、前記保持作業は、作業現場の地面の土砂を前記バケット16により掘削して当該バケット16に保持するための作業(掘削作業)である。前記積込作業は、前記土砂を保持した前記バケット16を、前記保持作業が行われた前記地面付近から前記ダンプトラックの荷台の真上に移動し、前記ダンプトラックの上で前記土砂を前記バケット16から解放する作業である。前記バケット16から解放された前記土砂は、前記バケット16から落下して前記ダンプトラックの前記荷台に積み込まれる。すなわち、前記積込作業は、前記土砂が保持された前記バケット16を前記地面付近から前記ダンプトラックの荷台の真上に移動する移動作業と、前記バケット16に保持された前記土砂を前記ダンプトラックの上で解放する解放作業と、を含む。
【0037】
前記ブーム14は、
図1の矢印A1に示されるように起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能となるように前記旋回フレーム12Aの前部に支持される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。具体的に、前記ブーム14は、起立方向A11に作動するブーム上げ動作と、倒伏方向A12に作動するブーム下げ動作とを行う。
【0038】
前記アーム15は、
図1の矢印A2に示されるように水平軸回りに回動可能となるように前記ブーム14の先端部に取り付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。前記バケット16は、
図1の矢印A3に示されるように水平軸周りに回動可能となるように前記アーム15の先端部に取り付けられる基端部を有する。
【0039】
前記複数の油圧アクチュエータは、複数の油圧シリンダと、旋回モータ20と、を含む。前記複数の油圧シリンダは、前記ブーム14を動かすための少なくとも一つのブームシリンダ17と、前記アーム15を動かすためのアームシリンダ18と、前記バケット16を動かすためのバケットシリンダ19と、を含む。
図2では、1つの油圧ポンプ21のみが図示されているが、前記油圧ショベル10は、複数の油圧ポンプを備えていてもよい。
【0040】
前記少なくとも一つのブームシリンダ17は、前記上部旋回体12と前記ブーム14との間に介在し、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記ブーム14を前記起立方向A11又は倒伏方向A12に回動させる。前記起立方向A11は、前記ブーム14の前記先端部が前記地面Gから離れる方向であり、前記倒伏方向A12は、前記ブーム14の前記先端部が前記地面Gに近づく方向である。
【0041】
前記アームシリンダ18は、前記ブーム14と前記アーム15との間に介在し、前記作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記アーム15を前記矢印A2で示すアーム引き方向又はアーム押し方向に回動させる。前記アーム引き方向は、前記アーム15の前記先端部が前記ブーム14に近づく方向であり、前記アーム押し方向は、前記アーム15の前記先端部が前記ブーム14から離れる方向である。
【0042】
前記バケットシリンダ19は、前記アーム15と前記バケット16との間に介在し、前記作動油の供給を受けることにより伸長又は収縮し、これにより、前記バケット16を前記矢印A3で示すバケット引き方向又はバケット押し方向に回動させる。前記バケット引き方向は、
図1に示す前記アーム15の長手方向を示す直線15aと、前記バケット16の方向を示す直線16aとのなす角度θ3が小さくなる方向であり、前記バケット押し方向は、前記角度θ3が大きくなる方向である。
【0043】
前記旋回モータ20は、前記作動油の供給を受けることにより前記上部旋回体12を旋回させるように作動する油圧モータである。当該旋回モータ20は、前記作動油の供給を受けて回転する図略の出力軸を有し、当該出力軸は上部旋回体12を左右双方向に旋回させるように上部旋回体12に連結されている。具体的に、前記旋回モータ20は、一対のポートを有し、これらのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転するとともに他方のポートから作動油を排出する。
【0044】
図2に示すように、前記複数の操作装置は、ブーム操作装置61と、アーム操作装置62と、バケット操作装置63と、旋回操作装置64と、を含む。これらの操作装置61~64のそれぞれは、オペレータの操作を受ける操作レバーを有する。具体的に、前記ブーム操作装置61はブーム操作レバー61Aを有し、前記アーム操作装置62はアーム操作レバー62Aを有し、前記バケット操作装置63はバケット操作レバー63Aを有し、前記旋回操作装置64は旋回操作レバー64Aを有する。各操作装置は、油圧式の操作装置により構成されていてもよく、電気式の操作装置により構成されていてもよい。
図2は、前記操作装置61~64が電気式の操作装置により構成される場合の回路構成を示している。
【0045】
前記複数の操作装置の具体例を
図3に示す。
図3は、前記油圧ショベル10に搭載される右側操作レバー65及び左側操作レバー66を示す斜視図である。
図3に示す具体例では、一つの操作レバーが複数の操作レバーの機能を兼ねている。オペレータが着座する座席67の右側に前記右側操作レバー65が設けられ、前記座席67の左側に前記左側操作レバー66が設けられる。前記右側操作レバー65は、前後方向に操作された場合に前記ブーム操作レバー61Aとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に前記バケット操作レバー63Aとして機能する。前記左側操作レバー66は、前後方向に操作された場合に前記アーム操作レバー62Aとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に前記旋回操作レバー64Aとして機能する。前記右側操作レバー65及び前記左側操作レバー66のそれぞれが受け持つ機能(レバーパターン)は、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0046】
前記複数の制御弁は、ブーム制御弁41と、アーム制御弁42と、バケット制御弁43と、旋回制御弁44と、一対のブーム電磁比例弁45と、一対のアーム電磁比例弁46と、一対のバケット電磁比例弁47と、一対の旋回電磁比例弁48と、を含む。
【0047】
例えば、前記ブーム操作レバー61Aが操作されると、前記ブーム操作レバー61Aの操作量及び操作方向に関する情報は電気信号(操作信号)に変換されてコントローラ50に入力される。コントローラ50は、前記操作信号に対応した指令信号(指令電流)を、前記一対のブーム電磁比例弁45のうちの前記ブーム操作レバー61Aの操作方向に対応するブーム電磁比例弁45に入力する。当該ブーム電磁比例弁45は、前記パイロットポンプ22が吐出するパイロット油の圧力を前記指令信号に応じて減圧し、減圧されたパイロット圧を、前記ブーム制御弁41における一対のパイロットポートの一方に導く。これにより、前記ブーム制御弁41は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記ブームシリンダ17のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。なお、他の操作装置62,63,64の操作レバー62A,63A,64Aが操作された場合の動作は、上記と同様であるので説明を省略する。
【0048】
なお、各操作装置が油圧式である場合の油圧回路図は省略するが、その場合、前記油圧ショベル10の油圧回路は次のように動作する。例えば前記ブーム操作レバー61Aが操作されると、前記パイロットポンプ22からのパイロット一次圧が前記ブーム操作装置61のリモコン弁において前記ブーム操作レバー61Aの操作量に応じて減圧され、減圧されたパイロット圧が前記リモコン弁から出力される。出力されたパイロット圧は、前記ブーム制御弁41における一対のパイロットポートの一方に入力される。これにより、前記ブーム制御弁41は、前記パイロット圧が入力される前記パイロットポートに対応する方向に、前記パイロット圧の大きさに対応するストロークで開弁する。その結果、前記油圧ポンプ21から吐出される作動油が、前記ストロークに対応する流量で前記ブームシリンダ17のヘッド側室又はロッド側室に供給されることが許容される。
【0049】
前記複数の圧力センサは、
図2に示すように、前記ブームシリンダ17のヘッド圧を検出するための圧力センサ35と、前記ブームシリンダ17のロッド圧を検出するための圧力センサ36と、を含む。
【0050】
前記姿勢検出部は、前記機体を構成する前記上部旋回体12に対する前記作業装置の姿勢に関する姿勢情報を検出する。前記姿勢検出部は、前記ブーム14の姿勢情報を検出可能なブーム姿勢検出装置31と、前記アーム15の姿勢情報を検出可能なアーム姿勢検出装置32と、前記バケット16の姿勢情報を検出可能なバケット姿勢検出装置33と、を含む。本実施形態では、これらの姿勢検出装置31,32,33のそれぞれは、例えば、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)により構成される。
【0051】
なお、これらの姿勢検出装置31,32,33のそれぞれは、ストロークセンサにより構成されていてもよく、角度センサにより構成されていてもよく、衛星測位システムを利用した位置検出装置により構成されていてもよい。すなわち、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、前記ブームシリンダ17、前記アームシリンダ18、及び前記バケットシリンダ19のストロークを検出する前記ストロークセンサにより得られるストローク値に基づいて演算されてもよい。また、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、前記ブーム14の前記基端部の回動軸、前記アーム15の前記基端部の回動軸、及び前記バケット16の前記基端部の回動軸にそれぞれ設けられた前記角度センサにより得られる角度値に基づいて演算されてもよい。また、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢は、例えば、GNSSセンサのような衛星測位システムを利用した前記位置検出装置により得られる検出値に基づいて演算されてもよい。
【0052】
上記のような姿勢検出部により検出された前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢に関する姿勢情報(姿勢信号)は、コントローラ50に入力される。
【0053】
前記スイッチ80は、オペレータが行う入力操作を受けることが可能な入力操作受付部の一例である。前記スイッチ80は、前記予測荷重の決定を行うための後述の制御をオペレータが開始させるときにオペレータにより押されるボタンを有する。本実施形態では、前記スイッチ80は、
図3に示すように前記左側操作レバー66の上部に設けられている。ただし、前記スイッチ80は、前記キャブ12Cにおいてオペレータが操作可能な位置に設けられていればよいので、前記スイッチ80が設けられる位置は、前記左側操作レバー66に限られない。また、前記スイッチ80の前記ボタンは、例えば表示装置の画面上に表示されたものであってもよい。
【0054】
前記コントローラ50(メカトロコントローラ)は、例えばCPU、メモリなどを備えるコンピュータにより構成され、操作判定部51と、姿勢演算部52と、荷重演算部53と、基点姿勢設定部54と、予測荷重決定部55と、出力部56と、を有する。
【0055】
前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの操作レバーに操作が与えられたか否かを判定する。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが
図2に示すような前記電気式の操作装置である場合、前記操作装置61~64のそれぞれは、対応する操作レバーに与えられる操作量及び操作方向に応じた前記操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたこと、具体的には、前記操作レバーに与えられた前記操作量及び前記操作方向を判定することができる。
【0056】
具体的に、本実施形態では、前記操作判定部51は、前記ブーム操作装置61の前記操作レバー61Aに前記ブームシリンダ17を伸長させるブーム上げ操作又は前記ブームシリンダ17を収縮させるブーム下げ操作が与えられたこと、前記アーム操作装置62の前記操作レバー62Aに前記アームシリンダ18を伸長させるアーム引き操作又は前記アームシリンダ18を収縮させるアーム押し操作が与えられたこと、前記バケット操作装置63の前記操作レバー63Aに前記バケットシリンダ19を伸長させるバケット引き操作及び前記バケットシリンダ19を収縮させるバケット押し操作が与えられたこと、前記旋回操作装置64の前記操作レバー64Aに前記上部旋回体12を旋回させる右旋回操作又は左旋回操作が与えられたこと、をそれぞれ判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記電気式の操作装置である場合、前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0057】
前記操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記油圧ショベル10は、前記複数の操作装置61~64のそれぞれの前記操作レバーに与えられる操作量に応じて前記リモコン弁から出力されるパイロット圧を検出する図略の複数のパイロット圧センサを備える。複数のパイロット圧センサのそれぞれは、検出したパイロット圧に対応する信号である操作信号を前記コントローラ50に入力する。前記操作判定部51は、入力された前記操作信号に基づいて、対応する操作装置の操作レバーに操作が与えられたこと、具体的には、前記操作レバーに与えられた前記操作量及び前記操作方向を判定することができる。前記複数の操作装置61~64のそれぞれが前記油圧式の操作装置である場合、前記複数のパイロット圧センサと前記操作判定部51は、前記複数の操作装置61~64の操作レバー61A~64Aに与えられる操作を検出可能な操作検出部を構成する。
【0058】
前記姿勢演算部52は、前記姿勢検出部から入力される前記姿勢信号に基づいて、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢のそれぞれを演算する。前記姿勢演算部52は、前記ブーム14の姿勢、前記アーム15の姿勢、及び前記バケット16の姿勢として、例えば
図1に示すブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3を、前記姿勢信号に基づいてそれぞれ演算してもよい。
【0059】
前記ブーム角度θ1は、例えば、前記ブーム14の方向を示す直線14aと、前記上部旋回体12の旋回中心軸Cに直交する平面Pとのなす角度であってもよい。この場合、前記直線14aが前記平面Pよりも上方にあるときには、前記ブーム角度θ1は正の値となり、前記直線14aが前記平面Pよりも下方にあるときには、前記ブーム角度θ1は負の値となる。
【0060】
前記アーム角度θ2は、前記アーム15の方向を示す前記直線15aと、前記直線14aとのなす角度であってもよい。前記バケット角度θ3は、前記バケット16の方向を示す前記直線16aと、前記直線15aとのなす角度であってもよい。前記直線14aは、前記ブーム14の前記基端部の回動軸と、前記ブーム14の前記先端部の回動軸(前記アーム15の前記基端部の回動軸)とを結ぶ直線であってもよい。前記直線15aは、前記アーム15の前記基端部の回動軸と前記アーム15の前記先端部の回動軸(前記バケット16の前記基端部の回動軸)とを結ぶ直線であってもよい。前記直線16aは、前記バケット16の前記基端部の回動軸と前記バケット16の先端部16Eとを結ぶ直線であってもよい。
【0061】
本実施形態では、前記姿勢演算部52と前記姿勢検出部は、前記作業装置の姿勢を取得する姿勢取得部を構成する。また、本実施形態では、前記姿勢演算部52と前記ブーム姿勢検出装置31は、前記上部旋回体12に対する前記ブーム14の角度である前記ブーム角度θ1を取得するブーム角度取得部を構成する。
【0062】
具体的に、前記ブーム姿勢検出装置31が前記慣性計測装置により構成される場合、当該慣性計測装置は、例えば水平面に対する前記ブーム14の角度を検出する。前記姿勢演算部52は、前記慣性計測装置により検出される前記水平面に対する前記ブーム14の角度と、図略の傾斜センサにより検出される水平面に対する上部旋回体12の傾斜角度とに基づいて、前記上部旋回体12に対する前記ブーム14の角度(前記ブーム角度θ1)を演算する。前記ブーム姿勢検出装置31が前記ストロークセンサにより構成される場合、前記ブームシリンダ17におけるピストンのストローク位置は前記ブーム角度θ1の変化に対応して変化するので、前記姿勢演算部52は、前記ストロークセンサにより検出される前記ストローク位置に基づいて、前記ブーム角度θ1を演算する。前記ブーム姿勢検出装置31が前記位置検出装置により構成される場合、例えば、前記姿勢演算部52は、当該位置検出装置により検出される前記ブームの位置に関する位置情報と、図略の位置検出装置により検出される前記上部旋回体12の位置に関する位置情報とに基づいて、前記ブーム角度θ1を演算する。なお、前記ブーム姿勢検出装置31が前記角度センサにより構成される場合、当該角度センサは、前記ブーム角度取得部を構成する。
【0063】
前記荷重演算部53は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を例えば以下のようにして算出する。なお、前記対象物の荷重は、以下の演算方法に限られず、他の公知の手段を用いて演算することが可能である。
【0064】
本実施形態では、前記荷重演算部53は、前記バケット16に保持される前記対象物の荷重を次の式(1)に基づいて算出する。
【0065】
M=M1+M2+M3+W×L ・・・(1)
式(1)において、Mは、前記ブームシリンダ17のブームフートピン回りのモーメントである。M1は、前記ブーム14の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M2は、前記アーム15の前記ブームフートピン回りのモーメントである。M3は、前記バケット16の前記ブームフートピン回りのモーメントである。Wは、前記バケット16に保持される土砂等の対象物の荷重である。Lは、前記ブームフートピンから前記バケット16の基端部までの水平方向の距離である。
【0066】
前記モーメントMは、ブームシリンダ17のヘッド圧とロッド圧とから算出される。前記モーメントM1は、前記ブーム14の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記ブーム14の重量との積により算出される。前記モーメントM2は、前記アーム15の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記アーム15の重量との積により算出される。前記モーメントM3は、前記バケット16の重心と前記ブームフートピンとの間の距離と、前記バケットの重量との積により算出される。
【0067】
前記ブーム14の重心の位置、前記アーム15の重心の位置、及び前記バケット16の重心の位置のそれぞれは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。前記ブームシリンダ17の前記ヘッド圧は、圧力センサ35により検出され、前記ブームシリンダ17の前記ロッド圧は、圧力センサ36により検出される。前記水平方向の距離Lは、前記姿勢検出部により検出される前記作業装置13の姿勢に関する情報に基づいて算出される。
【0068】
なお、本実施形態では、前記圧力センサ35,36及び前記荷重演算部53は、前記バケット16により保持される前記対象物の荷重を取得する荷重取得部を構成する。前記アタッチメントにより保持される前記対象物の荷重は、例えば、前記アタッチメントに取り付けられたロードセル等のセンサにより検出された値に基づいて演算されてもよい。この場合、前記荷重取得部は、前記ロードセル等のセンサと、当該センサにより検出された値に基づいて前記対象物の荷重を演算する前記荷重演算部53と、を含む。
【0069】
前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において設定されるブーム角度θ1を基点姿勢として設定する。すなわち、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業における前記ブーム角度のうちの何れかのブーム角度を前記基点姿勢として設定する。具体的な基点姿勢の設定方法については後述する。この基点姿勢は、次に説明する姿勢変化量を演算するときの基点となる姿勢であり、本実施形態では、前記保持作業における前記ブーム角度θ1に設定されるが、この態様に限られない。
【0070】
前記予測荷重決定部55は、前記解放作業において前記ダンプトラックの上で解放されると予測される前記対象物の荷重である予測荷重を決定するために予め設定された予測荷重決定条件が満たされているか否かを判定し、前記予測荷重決定条件が満たされている場合に、前記予測荷重を、前記荷重取得部により取得される前記荷重に基づいて決定する。本実施形態では、前記予測荷重決定条件は、前記基点姿勢からの前記作業装置の姿勢の変化の度合いを示す値である姿勢変化量が、前記予測荷重を決定するために予め設定された変化量閾値以上になるという条件が満たされることを含む。
【0071】
本実施形態では、前記姿勢変化量は、前記基点姿勢からの前記起立方向A11への前記ブーム角度θ1の増加量であり、前記変化量閾値は、前記ブーム角度θ1の増加量に基づいて、前記油圧ショベル10の作業が前記積込作業であることを判定できる値αに予め設定されている。また、前記姿勢変化量がブーム角度θ1の増加量であり、当該ブーム角度θ1の増加量を前記変化量閾値αと比較する制御が行われる本実施形態では、作業装置の姿勢を検出することにより前記姿勢変化量としての前記バケット16の高さの増加量を演算する場合と比べて演算負荷を低減することができる。
【0072】
この変化量閾値αは、例えば、前記油圧ショベル10が過去に行った複数の解放作業を含む前記積込作業を記録したデータに基づいて、前記油圧ショベル10の作業が前記積込作業であることを判定可能な値に設定される。この場合、前記データにおいて保持作業から解放作業に至るまでの作業を特定し、前記保持作業の終了後のブーム上げ量(ブーム角度θ1の増加量)を特定し、特定された前記ブーム角度θ1の増加量を前記変化量閾値αとして採用することが出来る。また、積込目標であるダンプトラックのタイヤの下端から荷台の上端までの上下方向の長さ(荷台高さ)を前記変化量閾値αとして採用してもよい。具体的に、前記ブーム14の前記先端部の高さが前記荷台高さと同程度に変化するときの前記ブーム角度θ1の変化量が、前記変化量閾値αに設定されうる。前記変化量閾値αの設定方法は、上記の具体例に限られず、当該変化量閾値αに基づいて前記解放作業の予測を行うことができるものが設定される。
【0073】
前記出力部56は、前記予測荷重決定部55により決定される前記予測荷重に関する情報である予測結果を出力する。前記出力部56により出力される前記予測結果は、例えば、
図2に示す表示装置70に入力され、当該表示装置70は、当該予測結果を表示する。
【0074】
前記出力部56は、前記予測荷重に関する情報である前記予測結果として、例えば、前記対象物を積込目標の上で解放する解放作業により解放されると予測される前記予測荷重を出力する。また、前記出力部56は、前記保持作業、前記移動作業及び前記解放作業が行われているときに前記バケット16が保持する土砂(対象物)の荷重をリアルタイムで出力してもよい。また、前記出力部56は、前記解放作業において、前記ダンプトラックの荷台に排土された土砂の荷重の累積値、前記ダンプトラックの荷台に排土する土砂の目標積み込み量、前記ダンプトラックの荷台に排土した回数などを出力してもよい。
【0075】
前記表示装置70は、前記油圧ショベル10のキャブ12Cにおいてオペレータが視認可能な位置に配置されていてもよい。前記表示装置70が上記のような各種情報を表示することにより、オペレータは、前記ダンプトラックへの目標積み込み量(積込み目標)に対するその時点での差分(排土可能な対象物の残量)と、その時点でバケット16が保持している土砂(対象物)の荷重と、をリアルタイムで把握することができる。
【0076】
なお、前記表示装置70は、前記油圧ショベル10とは別の場所にあるパーソナルコンピュータやモバイル情報端末などの表示装置を構成するものであってもよい。
【0077】
上記のような構成を備える油圧ショベル10では、前記保持作業における前記作業装置の姿勢である前記基点姿勢からの前記作業装置の姿勢の変化の度合いに基づいて前記積込作業の判定が行われるので、作業現場の状況に応じた設定作業に起因するオペレータの負担を軽減しつつ、前記予測荷重を決定し、出力することができる。
【0078】
図4は、前記油圧ショベル10による前記ダンプトラックの前記荷台への前記移動作業及び前記解放作業を含む前記積込作業が行われる作業現場の一例を示す側面図であり、
図5は、前記油圧ショベル10による前記ダンプトラックの前記荷台への前記移動作業及び前記解放作業を含む前記積込作業が行われる作業現場の他の例を示す側面図である。
図4では、前記油圧ショベル10が配置される地面G1の高さ(作業機械配置高さ)と前記ダンプトラック90が配置される地面G2の高さ(トラック配置高さ)との高低差は、ほぼゼロである。一方、
図5では、前記作業機械配置高さは前記トラック配置高さよりも大きく、前記作業機械配置高さと前記トラック配置高さとの高低差が大きい。
【0079】
図4及び
図5に示すように、通常、作業現場では、前記土砂を積み込むダンプトラック90の荷台91(前記積込目標)は、作業効率の観点で、前記保持作業において保持される土砂(前記対象物)が存在する地面に隣接した地面G2に配置される。従って、前記解放作業が行われる高さまで前記バケット16が移動したときの前記姿勢変化量は、前記地面G2から前記ダンプトラック90の荷台91の上端までの高さに応じて決まる。このため、前記解放作業が行われる高さまで前記バケット16が移動したときの前記姿勢変化量は、作業現場の状況に応じて変わる前記作業機械配置高さと前記トラック配置高さとの高低差の影響をほとんど受けない。
【0080】
前記油圧ショベル10では、上記のような姿勢変化量が、前記予測荷重を決定するために予め設定された前記変化量閾値α以上になるという条件に基づいて前記予測荷重が決定される。このことは、前記作業現場の状況に応じて前記変化量閾値αの設定を変更する設定作業の頻度を従来に比べて減少させること又は前記設定作業を省略することを可能にする。具体的には次の通りである。
【0081】
図4及び
図5に示すように、前記保持作業から前記解放作業までの作業は、前記ブーム14の前記ブーム上げ動作、前記アーム15の前記アーム押し動作などを含む。これにより、前記土砂を保持する前記バケット16が、前記保持作業において前記土砂が保持された地面の高さ(保持高さ)から前記ダンプトラック90の荷台91の高さを超える高さまで上昇する。すなわち、前記保持作業から前記解放作業までの作業では、前記ブーム14の前記ブーム角度θ1が前記保持作業における前記基点姿勢から前記移動作業に伴って増加する。このブーム角度θ1の増加量θ(前記姿勢変化量θ)は、前記ダンプトラック90の荷台91の地面G2からの高さに応じて決まる。
【0082】
従って、
図4及び
図5に示すように、前記作業現場の状況に応じて前記作業機械配置高さと前記トラック配置高さとの高低差が変化しても、ブーム角度θ1の増加量θ(前記姿勢変化量θ)のばらつきは比較的小さく抑えられる。前記油圧ショベル10では、前記姿勢変化量θと前記変化量閾値αとの比較に基づいて前記油圧ショベル10の作業が前記積込作業であるか否かが判定され、その判定結果に基づいて前記予測荷重が決定されるので、従来のように積込作業が前記機体に対する前記アタッチメントの高さ又は前記機体に対する前記ブームの角度に基づいて判定される場合に比べて、前記高低差の変化の影響を受けにくくなる。このことは、前記作業現場の状況に応じて前記変化量閾値の設定を変更する設定作業の頻度を従来に比べて減少させること又は前記設定作業を省略することを可能にする。
【0083】
図6は、前記コントローラ50により実行される制御動作を示すフローチャートである。
図6に示す制御動作では、前記予測荷重決定部55により前記予測荷重決定条件の判定が行われ、前記予測荷重決定条件が満たされていると判定されると、前記出力部56により前記予測荷重に関する予測結果が出力される。具体的には以下の通りである。
【0084】
前記油圧ショベル10のオペレータは、前記予測荷重の決定を行うための制御を開始させるときに、前記左側操作レバー66に設けられた前記スイッチ80を押す入力操作を行う。この入力操作が行われると、当該入力操作が行われたことを示す入力操作信号が前記コントローラ50に入力される(ステップS1)。
【0085】
前記オペレータは、前記入力操作を、例えば、作業現場において前記油圧ショベル10による前記保持作業を開始させるときに行う。具体的には、前記オペレータは、前記作業装置の姿勢が、前記保持作業(掘削作業)が開始されるときの姿勢(保持作業開始姿勢)になるように、前記操作レバー61A~64Aの少なくとも一部を操作する。前記保持作業開始姿勢は、例えば、前記バケット16が掘削対象箇所の真上で且つ当該掘削対象箇所の近傍に配置されるような姿勢である。前記作業装置の姿勢が前記保持作業開始姿勢に調節された後、前記オペレータは、前記スイッチ80を押す前記入力操作を行う。前記スイッチ80により、前記オペレータは、前記積込作業の判定を行う制御(前記予測荷重の決定を行う制御)を、必要に応じて有効にすることができる。
【0086】
次に、前記姿勢演算部52は、前記ブーム角度θ1の演算を開始する(ステップS2)。前記姿勢演算部52は、前記ブーム姿勢検出装置31から前記コントローラ50に入力される前記姿勢信号に基づいて前記ブーム角度θ1を演算する。前記姿勢演算部52による前記ブーム角度θ1の演算は、
図6に示す前記制御動作が行われる間、連続的に行われてもよい。
【0087】
次に、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業における前記ブーム角度θ1を基点姿勢として設定する(ステップS3,S4)。具体的に、前記基点姿勢設定部54は、前記スイッチ80が前記入力操作を受けた時点よりも後の前記ブーム角度θ1を基点姿勢として設定する。
【0088】
具体的に、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたか否かを判定する(ステップS3)。前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始された場合(ステップS3においてYES)、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたときの前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として設定する(ステップS4)。
【0089】
前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたことを、例えば次のように判定することができる。前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業の開始時点を、保持作業の開始時点を示す信号(保持作業開始信号)に基づいて判定し、前記保持作業の終了時点を、保持作業の終了時点を示す信号(保持作業終了信号)に基づいて判定してもよい。こうすることで、前記解放作業が予測される可能性の高い状況である前記ブーム上げ動作の開始時の前記ブーム角度θ1が前記基点姿勢として設定されるため、前記解放作業の判定を適切に行うことができる。
【0090】
前記保持作業開始信号は、前記保持作業の具体的な内容に応じて種々の態様を取り得るため、特に限定されるものではないが、具体例を挙げると次の通りである。
【0091】
すなわち、前記保持作業開始信号としては、例えば、前記スイッチ80が受ける前記入力操作に伴って前記コントローラ50に入力される前記入力操作信号であってもよく、また、前記入力操作信号が入力された後に、前記バケット操作レバー63Aが前記バケット引き操作を受けたことを示すバケット引き操作信号であってもよい。
【0092】
また、前記保持作業終了信号は、前記保持作業の具体的な内容に応じて種々の態様を取り得るため、特に限定されるものではないが、具体例を挙げると次の通りである。
【0093】
すなわち、前記保持作業(掘削作業)が行われるときには、通常、前記上部旋回体12の前記旋回動作は行われない。一方、前記積込作業は、通常、前記ブーム上げ動作と前記旋回動作とを含む。従って、前記基点姿勢設定部54は、前記入力操作信号が前記コントローラ50に入力された後、前記旋回操作レバー64Aが前記旋回操作を受けたことを示す旋回操作信号が前記コントローラ50に入力された時点を、前記保持作業の終了時点として判定できる。この場合、前記保持作業終了信号は、前記旋回操作信号である。そして、前記保持作業の開始時点の後で、且つ、前記保持作業の終了時点の前に、前記ブーム操作レバー61Aが前記ブーム上げ操作を受けたことを示すブーム上げ操作信号が前記コントローラ50に入力されると、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたと判定することができる。
【0094】
また、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業の終了時点を、例えば次のように判定してもよい。前記保持作業(掘削作業)が行われると、前記バケット16は掘削した土砂を保持するので、前記荷重取得部により取得される荷重は、前記保持作業の開始前に比べて大きくなる。従って、前記基点姿勢設定部54は、前記入力操作信号が前記コントローラ50に入力された後、前記荷重取得部により取得される荷重が予め設定された閾値(保持作業終了判定閾値)以上になった時点を、前記保持作業の終了時点として判定できる。
【0095】
次に、前記予測荷重決定部55は、前記予測荷重決定条件が満たされているか否かを判定する(ステップS5,S7)。本実施形態では、前記予測荷重決定条件は、前記基点姿勢からの前記ブーム角度θ1の増加量が前記変化量閾値α以上になるという条件(角度条件)が満たされること、及び、前記バケット16に保持される荷重が予め設定された予測荷重決定閾値以上であるという条件(荷重条件)が満たされることである。
【0096】
従って、まず、前記予測荷重決定部55は、前記基点姿勢からの前記ブーム角度θ1の増加量が前記変化量閾値α以上になったか否かを判定する(ステップS5)。前記ブーム角度θ1の前記増加量が前記変化量閾値α以上である場合(ステップS5においてYES)、前記荷重取得部は、そのときの前記バケット16に保持される前記土砂の荷重を取得する(ステップS6)。
【0097】
次に、前記予測荷重決定部55は、前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記予測荷重決定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS7)。前記予測荷重決定閾値は、例えば、前記バケット16に前記土砂が実質的に保持されているか否かを判定することができる値に設定される。具体的に、通常、前記解放作業が行われる直前には、前記バケット16にはある程度の量の前記土砂が保持されている。一方、前記バケット16に前記土砂が保持されていない場合や保持されていても微少量である場合には、前記解放作業が行われない可能性が高い。この態様では、前記バケット16により保持される前記土砂の荷重が前記予測荷重決定閾値以上であるという条件を予測荷重決定条件が含んでいるので、前記予測荷重の決定がより適切に行われる。
【0098】
前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記予測荷重決定閾値以上である場合(ステップS7においてYES)、前記予測荷重決定部55は、そのときに前記荷重取得部により取得される前記土砂の荷重、すなわち、前記予測荷重決定条件が満たされたときに前記荷重取得部により取得される前記土砂の荷重を前記予測荷重として決定する。
【0099】
前記出力部56は、前記予測荷重決定部55により決定された前記予測荷重を予測結果として出力する(ステップS8)。一方、前記荷重取得部により取得される前記荷重が前記予測荷重決定閾値未満である場合(ステップS7においてNO)、前記出力部56は、その荷重を予測結果として出力しない。
【0100】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0101】
(A)基点姿勢の更新について
オペレータは、前記保持作業により保持された前記対象物を前記積込目標の上に移動させるための操作を開始した後、前記解放作業を行う前に、当該操作を中断したり、前記保持作業をやり直したりする場合がある。このような場合には、その時点で既に設定されている前記基点姿勢に基づいて前記予測荷重の決定を行うのは不適である。従って、このような場合には、前記作業機械において、前記基点姿勢設定部54は、前記基点姿勢が設定された後で予測荷重決定条件が満たされる前に、前記基点姿勢を更新するか否かを判定するために予め設定された更新条件が満たされた場合に、その後に行われる前記保持作業における前記油圧ショベル10の前記ブーム角度の中から設定される前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として更新してもよい。この場合、前記予測荷重決定部55は、更新された前記基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされているか否かを判定する。前記基点姿勢が一旦設定された後であっても、前記更新条件が満たされた場合には、前記基点姿勢が更新され、更新された当該基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされたか否かが判定される。すなわち、本態様では、前記油圧ショベル10の動作状況に応じて適切な基点姿勢を更新することが可能になり、更新された基点姿勢に基づいて前記予測荷重決定条件が満たされたか否かが適切に判定される。
【0102】
前記更新条件は、例えば次のような態様を挙げることができる。
【0103】
前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記荷重取得部により取得される前記土砂の荷重が予め設定された更新判定荷重閾値以下になるという条件が満たされることを含んでいてもよい。例えば、一旦は積込作業が開始されたものの、前記バケット16により保持される前記土砂がオペレータの予想よりも少ない場合には前記積込作業をやり直す場合がある。この場合、前記予測荷重決定条件が満たされる前に、保持された前記対象物の一部又は全部が前記バケット16から解放されるという状況が想定され、その後、前記保持作業が再度行われる可能性が比較的高い。このように前記対象物の荷重と前記更新判定荷重閾値とを比較することにより、前記基点姿勢の更新の要否を適切に判定することができる。なお、前記土砂が前記バケット16から排土されても前記バケット16に付着した土砂が残存することがあるため、この更新判定荷重閾値は、前記バケット16に付着した土砂が残存する場合であっても、前記基点姿勢の更新が行われるようなゼロより大きな値に設定されてもよい。
【0104】
また、前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記ブーム14が前記倒伏方向A12に動作するという条件が満たされることを含んでいてもよい。前記積込作業において前記ブーム操作レバー61Aが前記ブーム上げ操作を受けて前記ブーム14がブーム上げ動作を行うのは前記土砂を掬い上げるためであるが、一方で前記ブーム操作レバー61Aが前記ブーム下げ操作を受けて前記ブーム14がブーム下げ動作を行う場合、前記積込作業がやり直される可能性が高いと予測することが出来る。従って、例えば、前記操作判定部51が前記ブーム操作レバー61Aに前記ブーム下げ操作が与えられたと判定した場合に、前記基点姿勢設定部54は、前記ブーム14が前記倒伏方向A12に動作したと判定することができる。
【0105】
また、前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記倒伏方向A12への前記ブーム角度θ1の減少量が予め設定された減少量閾値以上になるという条件が満たされることを含んでいてもよい。この態様では、前記ブーム上げ動作から前記ブームが前記倒伏方向に動作するブーム下げ動作に転じた場合に前記保持作業が再度行われるという状況を想定することができるので前記基点姿勢の更新の要否がより適切に判定される。
【0106】
また、前記更新条件は、前記基点姿勢が設定された後で前記予測荷重決定条件が満たされる前に、前記バケット16により保持される前記土砂の量を減少させるための予め設定された減少操作が検出されるという条件が満たされることを含んでいてもよい。前記減少操作としては、例えば、前記バケット押し操作、前記アーム押し操作などを例示できる。この態様では、前記基点姿勢の更新の要否がより適切に判定される。
【0107】
(B)作業装置の姿勢について
前記実施形態では、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業における前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として設定し、前記姿勢変化量は、前記基点姿勢からの前記起立方向A11への前記ブーム角度θ1の増加量であるが、このような態様に限られない。
【0108】
例えば、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業における前記アタッチメントの高さ(上下方向の位置)を前記基点姿勢として設定し、前記姿勢変化量は、前記基点姿勢からの前記上方への前記アタッチメントの高さの増加量であってもよい。すなわち、本発明における前記基点姿勢設定部は、前記保持作業における前記作業装置の姿勢のうちの何れかの姿勢を基点姿勢として設定するものであればよい。
【0109】
(C)予測荷重決定条件について
前記実施形態では、前記予測荷重決定条件は、前記基点姿勢からの前記ブーム角度θ1の増加量が前記変化量閾値α以上になるという条件(角度条件)が満たされること、及び、前記バケット16に保持される荷重が予め設定された予測荷重決定閾値以上であるという条件(荷重条件)が満たされることであるが、このような態様に限られない。
【0110】
前記予測荷重決定条件は、少なくとも前記角度条件が含まれていればよいので、前記荷重条件が含まれていなくてもよい。
【0111】
また、前記予測荷重決定条件は、例えば、前記ブーム角度θ1の前記増加量が前記変化量閾値に達するまで前記基点姿勢からの前記ブーム角度θ1の増加が継続するという条件が満たされることをさらに含んでいてよい。前記ブーム角度θ1が連続的に増加しない場合は前記アタッチメントの位置を調整する作業などの前記記解放作業に相当しない作業が行われることが予測される。従ってこの態様では、前記予測荷重の決定がより適切に行われる。
【0112】
(D)基点姿勢設定部について
前記実施形態では、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業において前記ブーム上げ操作が開始されたときの前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として設定するが、このような態様に限られない。
【0113】
前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業が行われている間に前記ブーム角度取得部により取得される複数の前記ブーム角度θ1のうち最小値を前記基点姿勢として設定してもよい。
【0114】
また、前記基点姿勢設定部54は、前記スイッチ80(入力操作受付部の一例)が前記入力操作を受けたときの前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として設定してもよい。
【0115】
また、前記基点姿勢設定部54は、前記保持作業の終了時点における前記ブーム角度θ1を前記基点姿勢として設定してもよい。
【0116】
(E)出力部について
前記実施形態では、出力部56は、前記予測荷重決定部55により前記予測荷重決定条件が満たされた場合に、前記対象物を積込目標の上で解放する解放作業により解放されると予測される前記予測荷重を予測結果として出力するが、このような態様に限られない。前記出力部により出力される前記予測結果は、前記作業機械による作業を支援するものであればよい。このような予測結果としては、例えば、前記予測荷重決定部による判定結果に基づいて前記作業機械の作業において前記解放作業が予測されること又は前記解放作業が予測されないことをオペレータに知らせるための情報を出力であってもよく、当該情報は例えば前記表示装置に表示されてもよい。
【0117】
(F)作業機械について
前記実施形態では、前記作業機械は、油圧ショベル10であるが、これに限られず、例えばホイールローダーなどの他の作業機械であってもよい。
【0118】
(G)アタッチメントについて
前記実施形態では、前記アタッチメントが前記バケット16であるが、これに限られない。前記アタッチメントは、例えば、フォーク、グラップルなどの他のアタッチメントであってもよい。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、作業の対象物を保持することが可能なアタッチメントである。前記フォーク及び前記グラップルのそれぞれは、運搬物、廃材などの作業の対象物を把持するための開閉可能な複数のアームを備える。
【0119】
(H)その他
前記油圧ショベル10において、前記スイッチ80は省略可能である。
【符号の説明】
【0120】
10 油圧ショベル(作業機械の一例)
11 下部走行体(機体の一部を構成する構成要素の一例)
12 上部旋回体(機体の一部を構成する構成要素の一例)
13 作業装置
14 ブーム
15 アーム
16 バケット(アタッチメントの一例)
31 ブーム姿勢検出装置
32 アーム姿勢検出装置
33 バケット姿勢検出装置
35 圧力センサ
36 圧力センサ
50 コントローラ
54 基点姿勢設定部
55 予測荷重決定部
56 出力部
61 ブーム操作装置
80 スイッチ(入力操作受付部の一例)
90 ダンプトラック
91 ダンプトラックの荷台(積込目標の一例)
A11 起立方向
A12 倒伏方向
α 変化量閾値
θ1 ブーム角度