(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】パルス電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/567 20060101AFI20230426BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20230426BHJP
H03K 19/00 20060101ALI20230426BHJP
H03K 19/08 20060101ALI20230426BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
H03K17/567
H03K17/687 A
H03K19/00 108
H03K19/08 210
B06B1/06 A
(21)【出願番号】P 2020063602
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2021-06-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 則一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】村田 香苗
(72)【発明者】
【氏名】神保 智彦
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-80540(JP,A)
【文献】特開2013-135484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N30/20-30/50
H03K17/567
H03K17/687-17/695
H03K19/00
H03K19/08-19/10
H02N2/00-2/18
B06B1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高位電圧を出力する高位電源と基準電圧を出力する基準電圧部位との間に直列接続されている第1高位側スイッチおよび第1低位側スイッチと、
前記第1高位側スイッチと前記第1低位側スイッチとの第1中間ノードに接続されている第1出力端子と、
前記第1低位側スイッチと並列に接続され、アノード端子が前記基準電圧部位に接続され、カソード端子が前記第1中間ノードに接続されている第1ダイオードと、
前記高位電源と前記基準電圧部位との間に直列接続されている第2高位側スイッチおよび第2低位側スイッチと、
前記第2高位側スイッチと前記第2低位側スイッチとの第2中間ノードに接続されている第2出力端子と、
前記第2低位側スイッチと並列に接続され、アノード端子が前記基準電圧部位に接続され、カソード端子が前記第2中間ノードに接続されている第2ダイオードと、
前記第1低位側スイッチの低位側端子と前記第2低位側スイッチの低位側端子との共通接続ノードに接続されている基準端子と、
前記共通接続ノードと前記基準端子との接続経路間に配置されている第1抵抗と、
を備え、
前記第1出力端子と前記基準端子との間に第1の容量性負荷が接続可能であり、
前記第2出力端子と前記基準端子との間に第2の容量性負荷が接続可能であり、
前記第1低位側スイッチおよび前記第2低位側スイッチは、互いに逆位相のパルスで駆動するスイッチであり、
前記第1抵抗の抵抗値は、前記第1低位側スイッチおよび前記第2低位側スイッチのオン抵抗値以上の値である、パルス電圧生成回路。
【請求項2】
前記第1低位側スイッチおよび前記第2低位側スイッチのオン抵抗値が1オーム以下の場合には、前記第1抵抗の抵抗値は3オーム以上の値である、請求項1に記載のパルス電圧生成回路。
【請求項3】
前記第1低位側スイッチおよび前記第2低位側スイッチのオン抵抗値が1オームより大きい場合には、前記第1抵抗の抵抗値を前記第1低位側スイッチおよび前記第2低位側スイッチのオン抵抗値で除した比の値は、3以上の値である、請求項1または2に記載のパルス電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、パルス電圧生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2には、容量性負荷(圧電アクチュエータ素子)を駆動するためのパルス電圧生成回路が開示されている。容量性負荷の一方の入力端子に基準電圧を供給し、他方の入力端子にパルス状の高電圧を供給することで、容量性負荷を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-55102
【文献】特開2013-51343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容量性負荷は、充放電されることで駆動される。容量性負荷の充電時には、パルス電圧振幅の2乗に比例するエネルギが容量性負荷に蓄積されるとともに、電圧源と容量性負荷を接続する回路部(例:スイッチ)においても同量の熱損失が発生する。同様に、容量性負荷の放電時においても、容量性負荷に蓄積されるエネルギと同量の回路部熱損失が発生する。効率が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するパルス電圧生成回路は、高位電圧を出力する高位電源と基準電圧を出力する基準電圧部位との間に直列接続されている第1高位側スイッチおよび第1低位側スイッチを備える。パルス電圧生成回路は、第1高位側スイッチと第1低位側スイッチとの第1中間ノードに接続されている第1出力端子を備える。パルス電圧生成回路は、第1低位側スイッチと並列に接続され、アノード端子が基準電圧部位に接続され、カソード端子が第1中間ノードに接続されている第1ダイオードを備える。パルス電圧生成回路は、高位電源と基準電圧部位との間に直列接続されている第2高位側スイッチおよび第2低位側スイッチを備える。パルス電圧生成回路は、第2高位側スイッチと第2低位側スイッチとの第2中間ノードに接続されている第2出力端子を備える。パルス電圧生成回路は、第2低位側スイッチと並列に接続され、アノード端子が基準電圧部位に接続され、カソード端子が第2中間ノードに接続されている第2ダイオードを備える。パルス電圧生成回路は、第1低位側スイッチの低位側端子と第2低位側スイッチの低位側端子との共通接続ノードに接続されている基準端子を備える。パルス電圧生成回路は、共通接続ノードと基準端子との接続経路間に配置されている第1抵抗を備える。第1出力端子と基準端子との間に第1の容量性負荷が接続可能である。第2出力端子と基準端子との間に第2の容量性負荷が接続可能である。第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチは、互いに逆位相のパルスで駆動するスイッチである。
【0006】
第1および第2低位側スイッチがオフであり、第2の容量性負荷に電荷が蓄積されている状態から、第2低位側スイッチをオンする場合を考える。この場合、第2の容量性負荷に蓄積されている電荷は、第2低位側スイッチ、基準端子、第1ダイオード、第1出力端子を経由して第1の容量性負荷へ移動する。すなわち、第2の容量性負荷に蓄積されていた電荷の半分を、第1の容量性負荷へ転送することができる。同様にして、第1および第2低位側スイッチがオフであり、第1の容量性負荷に電荷が蓄積されている状態から、第1低位側スイッチがオンする場合には、第1の容量性負荷に蓄積されていた電荷の半分を、第2の容量性負荷へ転送することができる。これにより、従来回路では廃棄していた容量性負荷に蓄積された電荷を、次の周期に充電する容量性負荷へ電荷再分配することができる。損失となっていたエネルギの一部を出力エネルギに変換できるため、容量性負荷の駆動効率を改善することが可能となる。
【0007】
第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチが非導通の状態から、第1低位側スイッチが導通状態に遷移した場合に、第1の容量性負荷から放電電流が出力される。第1の容量性負荷から第1出力端子、第1低位側スイッチ、共通接続ノード、第1抵抗を経由して第1の容量性負荷へ至る経路を流れる放電電流を第1電流とする。第1の容量性負荷から第1出力端子、第1低位側スイッチ、共通接続ノード、第2ダイオード、第2出力端子を経由して第2の容量性負荷へ至る経路を流れる放電電流を第2電流とする。第2電流が第1電流よりも大きくなるように、第1抵抗の抵抗値が定められていてもよい。
【0008】
第1抵抗の抵抗値は、第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチのオン抵抗値以上の値であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチのオン抵抗値が1オーム以下の場合には、第1抵抗の抵抗値は3オーム以上の値であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチのオン抵抗値が1オームより大きい場合には、第1抵抗の抵抗値を第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチのオン抵抗値で除した比の値は、3以上の値であってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
第1高位側スイッチおよび第2高位側スイッチは、電流制御型のバイポーラトランジスタであってもよい。第1低位側スイッチおよび第2低位側スイッチは、第1のMOSトランジスタであってもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
パルス電圧生成回路は、第1高位側スイッチのベース端子と基準電圧部位との接続経路上、および、第2高位側スイッチのベース端子と基準電圧部位との接続経路上に直列に配置された第2抵抗および第2のMOSトランジスタをさらに備えていてもよい。第2のMOSトランジスタのゲート端子には、第1高位側スイッチおよび第2高位側スイッチを駆動するパルス信号が入力されていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
第1の容量性負荷は、第1出力端子と基準端子との間に接続された第1の圧電アクチュエータ素子を備えていてもよい。第2の容量性負荷は、第2出力端子と基準端子との間に接続された第2の圧電アクチュエータ素子を備えていてもよい。第1高位側スイッチおよび第1低位側スイッチは、第1高位側スイッチのみが導通している第1充電期間、第1高位側スイッチおよび第1低位側スイッチが非導通である第1の共振電流供給期間、第1低位側スイッチのみが導通している第1放電期間、第1高位側スイッチおよび第1低位側スイッチが非導通である第1の共振電流蓄積期間、を備える1周期の動作を繰り返してもよい。第2高位側スイッチおよび第2低位側スイッチは、第2高位側スイッチのみが導通している第2充電期間、第2高位側スイッチおよび第2低位側スイッチが非導通である第2の共振電流供給期間、第2低位側スイッチのみが導通している第2放電期間、第2高位側スイッチおよび第2低位側スイッチが非導通である第2の共振電流蓄積期間、を備える1周期の動作を繰り返してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0014】
第1充電期間では、第1の圧電アクチュエータ素子内の第1静電容量が充電されてもよい。第1の共振電流供給期間では、第1静電容量に蓄積された電荷エネルギが第1の圧電アクチュエータ素子の共振振動エネルギに変換されてもよい。第1放電期間では、第1静電容量が放電されてもよい。第1の共振電流蓄積期間では、第1の圧電アクチュエータ素子の共振振動エネルギが第1静電容量の電荷エネルギに変換されてもよい。第2充電期間では、第2の圧電アクチュエータ素子内の第2静電容量が充電されてもよい。第2の共振電流供給期間では、第2静電容量に蓄積された電荷エネルギが第2の圧電アクチュエータ素子の共振振動エネルギに変換されてもよい。第2放電期間では、第2静電容量が放電されてもよい。第2の共振電流蓄積期間では、第2の圧電アクチュエータ素子の共振振動エネルギが第2静電容量の電荷エネルギに変換されてもよい。
【0015】
第1の共振電流蓄積期間から第1充電期間への切り替えタイミングの位相を基準とした場合に、第1の共振電流供給期間から第1放電期間への切り替えタイミングは180°固定であってもよい。第2の共振電流蓄積期間から第2充電期間への切り替えタイミングの位相を基準とした場合に、第2の共振電流供給期間から第2放電期間への切り替えタイミングは180°固定であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係る圧電アクチュエータ駆動システム1を示す図である。
【
図2】第1ドライバ21および第2ドライバ22の具体回路構成例である。
【
図3】パルス電圧生成回路2の動作を説明する波形図である。
【
図5】抵抗RGとオン抵抗Ronの関係を示すグラフである。
【
図6】抵抗RGとオン抵抗Ronの関係を示すグラフである。
【
図7】実施例2の高効率駆動方式の動作を説明する波形図である。
【
図8】効率を比較したシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
(圧電アクチュエータ駆動システム1の構成)
図1に、実施例1に係る圧電アクチュエータ駆動システム1を示す。圧電アクチュエータ駆動システム1は、パルス電圧生成回路2、昇圧回路3、制御回路4、圧電アクチュエータ11および12、を備える。
【0018】
昇圧回路3は、入力電圧VIN(例:3V)を昇圧し、高位電圧VH(例:30[V])を出力する回路である。制御回路4は、第1高位側スイッチSU1を制御するクロック信号CKSU1、第1低位側スイッチSD1を制御するクロック信号CKSD1、第2高位側スイッチSU2を制御するクロック信号CKSU2、第2低位側スイッチSD2を制御するクロック信号CKSD2、を出力する回路である。第1低位側スイッチSD1および第2低位側スイッチSD2は、互いに逆位相のパルスで駆動するスイッチである。
【0019】
パルス電圧生成回路2は、第1ドライバ21、第2ドライバ22、抵抗RGを備える。パルス電圧生成回路2は、1つのICチップであってもよい。第1ドライバ21は、第1高位側スイッチSU1、第1低位側スイッチSD1、第1ダイオードD1を備えている。第1高位側スイッチSU1および第1低位側スイッチSD1は、昇圧回路3と基準電圧部位GNDとの間に直列接続されている。基準電圧部位GNDは、基準電圧VSSを出力する部位である。本実施例では、基準電圧VSSは0[V]である。第1ダイオードD1は、第1低位側スイッチSD1と並列に接続されている。第1ダイオードD1のアノード端子は、基準電圧部位GNDに接続されている。第1ダイオードD1のカソード端子は、第1高位側スイッチSU1と第1低位側スイッチSD1との第1中間ノードN1に接続されている。第1中間ノードN1には、第1出力端子T1が接続されている。第1出力端子T1からは出力電圧VO1が出力される。
【0020】
同様にして、第2ドライバ22は、第2高位側スイッチSU2、第2低位側スイッチSD2、第2ダイオードD2を備えている。第2高位側スイッチSU2および第2低位側スイッチSD2は、第2中間ノードN2を介して、昇圧回路3と基準電圧部位GNDとの間に直列接続されている。第2中間ノードN2には、第2出力端子T2が接続されている。第2出力端子T2からは出力電圧VO2が出力される。第2ダイオードD2は、第2低位側スイッチSD2と並列に接続されている。
【0021】
第1低位側スイッチSD1の低位側端子と第2低位側スイッチSD2の低位側端子とは、共通接続ノードNCで接続されている。共通接続ノードNCの電圧を、電圧VGとする。共通接続ノードNCには、基準端子TGが接続されている。抵抗RGは、共通接続ノードNCと基準端子TGとの接続経路間に配置されている。
【0022】
第1出力端子T1と基準端子TGとの間には、圧電アクチュエータ11が接続されている。第2出力端子T2と基準端子TGとの間には、圧電アクチュエータ12が接続されている。圧電アクチュエータ11および12は、容量性素子である。圧電アクチュエータ11および12の一例としては、ピエゾ素子が挙げられる。
【0023】
圧電アクチュエータ11は、LCR直列回路および並列容量として、等価的に理解することができる。そこで本明細書では、圧電アクチュエータ11は、第1のLCR直列回路31および第1並列容量Cp1を備えているものと考えて説明する。なお第1のLCR直列回路31は、機械的な動作を、電気回路記述に書き下したものである。第1のLCR直列回路31は、第1出力端子T1と基準端子TGとの間に直列に接続されている、インダクタ成分L1、抵抗成分R1、容量成分C1を備えている。第1並列容量Cp1は、第1のLCR直列回路31と並列に接続されている。なお、第1のLCR直列回路31は、共振駆動時に電気エネルギが力学的エネルギに変換される項を等価回路で表現したものである。また第1並列容量Cp1は、寄生容量成分を等価回路で表現したものである。
【0024】
同様にして、圧電アクチュエータ12は、第2のLCR直列回路32および第2並列容量Cp2を備えているものと考えて説明する。第2並列容量Cp2は、第2のLCR直列回路32と並列に接続されている。
【0025】
(第1ドライバ21および第2ドライバ22の具体回路構成)
図2を用いて、第1ドライバ21および第2ドライバ22の具体回路構成の例を説明する。第1ドライバ21の第1高位側スイッチSU1は、バイポーラトランジスタBT1、抵抗RU1、MOSトランジスタMT1を備えている。バイポーラトランジスタBT1は、電流制御型の高耐圧用pnpトランジスタである。MOSトランジスタMT1は、高耐圧用のn型MOSFETである。バイポーラトランジスタBT1のエミッタ端子に高位電圧VHが入力され、コレクタ端子が第1中間ノードN1に接続されている。バイポーラトランジスタBT1のベース端子と基準電圧部位GNDとの接続経路上には、抵抗RU1およびMOSトランジスタMT1が直列に配置されている。MOSトランジスタMT1のゲート端子には、クロック信号CK
SU1が入力される。
【0026】
第1低位側スイッチSD1は、高耐圧用のn型MOSFETである。第1ダイオードD1は、第1低位側スイッチSD1に内蔵されている保護用ダイオードである。第1低位側スイッチSD1のゲート端子には、クロック信号CKSD1が入力される。
【0027】
第2ドライバ22の第2高位側スイッチSU2は、バイポーラトランジスタBT2、抵抗RU2、MOSトランジスタMT2を備えている。これらの素子の接続態様は、第1ドライバ21と同様であるため、説明を省略する。
【0028】
(パルス電圧生成回路2の動作)
図3の波形図を用いて、パルス電圧生成回路2の動作を説明する。パルス電圧生成回路2は、圧電アクチュエータ11および12に逆位相のパルスを与える回路である。具体的には、時刻t0で出力電圧VO1を立ち上げ、出力電圧VO2を立ち下げる。また、時刻t4で出力電圧VO1を立ち下げ、出力電圧VO2を立ち上げる。時刻t0~t8までが1周期TTである。またパルス電圧生成回路2は、圧電アクチュエータ11および12の共振周波数fckの付近で、圧電アクチュエータ11および12を駆動する回路である。よって1周期TTの長さは、共振周波数fckの逆数の近傍の値である。
【0029】
時刻t0において、クロック信号CK
SD2をローレベルからハイレベルに切り替えると、第2ドライバ22の第2低位側スイッチSD2がオンする。また時刻t0においてクロック信号CK
SU1をローレベルからハイレベルに切り替えると、時刻t1において第1高位側スイッチSU1がオンする。第1高位側スイッチSU1のオンタイミングが時刻t1まで遅延する理由は、MOSトランジスタMT1(
図2)がオンし、抵抗RU1およびMOSトランジスタMT1を経由したベース電流IB1が流れることで、バイポーラトランジスタBT1がオンする(すなわち第1高位側スイッチSU1がオンする)ためである。詳細な動作は後述する。
【0030】
時刻t0において、第2低位側スイッチSD2のオンと同時に出力電圧VO2は立ち下り、0Vになる(矢印Y1)。このとき、圧電アクチュエータ12内の第2並列容量Cp2に蓄積されていた電荷の半分が、圧電アクチュエータ11内の第1並列容量Cp1に移動する。すなわち、第1並列容量Cp1と第2並列容量Cp2との間で、電荷の再分配が行われる。その結果、共通接続ノードNCの電圧VGは、-VH/2になる(矢印Y2)。この動作の詳細については、後述する。
【0031】
電圧VGが-VH/2に低下すると、抵抗RG経由で電流が流れ込み、電圧VGは上昇し時刻t1で0[V]に戻る(領域A0)。この間、第1高位側スイッチSU1はまだオンしておらず、出力電圧VO1はハイインピーダンス状態であるため、電圧VGの上昇と同時に出力電圧VO1はVH/2まで上昇する(矢印Y3)。
【0032】
なお、電圧VGが0[V]に戻る時定数、および、出力電圧VO1がVH/2まで上昇する時定数は、抵抗RGの抵抗値で調整可能である。抵抗RGの抵抗値が大きくなるほど、時定数が大きくなるため、応答性が低下する。従って、第1ドライバ21および第2ドライバ22の駆動周波数に応じて、抵抗RGの抵抗値を適宜に定めればよい。
【0033】
時刻t1で第1高位側スイッチSU1がオンすると、出力電圧VO1に高位電圧VHから電流が流れ込み、出力電圧VO1の電圧はさらに上昇する。そして時刻t2において、高位電圧VHと等しい電圧となる(矢印Y4)。
【0034】
なお、本実施例では、電圧VGが-VH/2から0[V]に戻る期間(時刻t0~t1までの期間)と、第1高位側スイッチSU1がオンするタイミング(時刻t1)が重複していない例を説明したが、この形態に限られない。電圧VGが-VH/2から0[V]に戻る期間内に、第1高位側スイッチSU1がオンしても、機能的に問題はない。
【0035】
時刻t3において、クロック信号CKSU1およびCKSD2がハイレベルからローレベルへ切り替えられる。これにより、第1高位側スイッチSU1および第2低位側スイッチSD2がオフする。
【0036】
なお、時刻t4~t7までの動作は、前述した時刻t0~t3の動作において、第1ドライバ21の回路と第2ドライバ22の回路が入れ替わった動作と同様である。よって説明を省略する。
【0037】
(電荷再分配の動作の説明)
第1並列容量Cp1と第2並列容量Cp2との間で行われる電荷の再分配について、
図4の等価回路を用いて説明する。
図4の等価回路では、圧電アクチュエータ11および12において、第1並列容量Cp1および第2並列容量Cp2のみを考える。また、第1ドライバ21および第2ドライバ22では、第1高位側スイッチSU1および第2高位側スイッチSU2を省略する。また、第1低位側スイッチSD1および第2低位側スイッチSD2がオフの状態を考える(
図3の時刻t0の直前の状態)。出力電圧VO1が0[V]であり、出力電圧VO2が高位電圧VHであり、第1並列容量Cp1に蓄積されている電荷が0であり、第2並列容量Cp2に電荷Qが蓄積されている場合を考える。また、第1低位側スイッチSD1および第2低位側スイッチSD2が、オン抵抗Ronを有する場合を説明する。
【0038】
比較例として、抵抗RGの抵抗値が、オン抵抗Ronに比して十分に小さい場合を説明する。この場合、第2低位側スイッチSD2がオンすると、第2並列容量Cp2に蓄積されている正電荷は、第2出力端子T2、第2低位側スイッチSD2、共通接続ノードNC、抵抗RG、基準端子TGを経由して第2並列容量Cp2へ移動する。このときの電流を第1電流とし、その経路を第1電流経路IP1とする(点線矢印)。すなわち、第2並列容量Cp2が単に放電され、回路の熱損失が発生する。
【0039】
一方、本明細書の技術では、抵抗RGの抵抗値が、オン抵抗Ronに比して十分に大きい所定範囲に設定されている。所定範囲については後述する。これにより、第2低位側スイッチSD2がオンすると、第2並列容量Cp2に蓄積されている正電荷は、第2出力端子T2、第2低位側スイッチSD2、共通接続ノードNC、基準電圧部位GND、第1ダイオードD1、第1出力端子T1を経由して第1並列容量Cp1へ移動する(実線矢印Y11)。また第2並列容量Cp2に蓄積されている負電荷は、第1並列容量Cp1へ移動する。このときの電流を第2電流とし、その経路を第2電流経路IP2とする(実線矢印)。そして本明細書の技術では、第2電流を第1電流よりも大きくすることができる。これは、抵抗RGの抵抗値がオン抵抗Ronに比して十分に大きいため、また、第1ダイオードD1のオン抵抗が十分に小さいためである。そのため、第1電流経路IP1に比して第2電流経路IP2のインピーダンスを十分に小さくできるためである。
【0040】
なお、本説明例では、第2並列容量Cp2の蓄積電荷をCp1に再分配する場合を説明したが、第1並列容量Cp1の蓄積電荷を第2並列容量Cp2に再分配する場合の動作も、上述した動作の逆を行えばよいため、説明を省略する。
【0041】
効果を説明する。本明細書の技術では、第2並列容量Cp2に蓄積されていた電荷の半分を、次に充電される第1並列容量Cp1へ転送(電荷再分配)することができる。これにより、従来は廃棄していた電荷の約50%を、圧電アクチュエータの振動エネルギに変換することが可能となる。圧電アクチュエータの駆動効率を改善することが可能となる。その結果、圧電アクチュエータ駆動システム1を電池駆動する場合には、電池の軽量化や駆動時間の長時間化を実現することができる。
【0042】
(抵抗RGとオン抵抗Ronの抵抗比の範囲)
次に充電される容量へ電荷を再分配するためには、上述したように、抵抗RGの抵抗値と、第1低位側スイッチSD1および第2低位側スイッチSD2のオン抵抗Ronとの関係が重要である。
図5および
図6のシミュレーション結果を用いて説明する。
図5の横軸は、抵抗RGの抵抗値である。
図5の縦軸は、第1並列容量Cp1および第2並列容量Cp2の一方が100[V]に充電されている場合に、他方へ電荷再分配を行った場合の分配後の電圧である。グラフG1~G4は、それぞれ、オン抵抗Ronが0.1Ω、1Ω、10Ω、100Ωの場合のグラフである。理論上、再分配後の電圧の最大値は50[V]である。従って
図5では、再分配後の電圧が50[V]に近づくほど好ましい。
【0043】
図5から、抵抗RGの抵抗値がRon以上の値であれば、電荷再分配を十分に実行可能であることが分かる。具体的に説明する。オン抵抗Ronが1オーム以下の場合を考える(
図5のG1およびG2)。この場合、抵抗RGの抵抗値が3オーム以上であれば、再分配後のコンデンサ電圧が約25[V]以上となる(
図5、矢印Y21およびY22)。すなわち、再分配後の電圧の理論最大値(50[V])に対して、約50%の効率で再分配が可能となる。
【0044】
また
図6を用いて、オン抵抗Ronが1オームより大きい場合を考える。
図6の横軸は、抵抗RGの抵抗値をRonで除した抵抗比γである。またグラフG11~G14は、それぞれ、オン抵抗Ronが0.1Ω、1Ω、10Ω、100Ωの場合のグラフである。オン抵抗Ronが1オームより大きい場合(
図5のG12~G14)では、抵抗比γが3以上であれば、再分配後のコンデンサ電圧が約25[V]以上となる(
図6、矢印Y23~Y25)。特に、オン抵抗Ronが10オームより大きい場合(
図5のG13およびG14)では、抵抗比γが1以上(すなわちRGの抵抗値がRon以上)であれば、再分配後のコンデンサ電圧は約25[V]以上となる(矢印Y23)。従って、高効率で再分配が可能となる。
【0045】
(第1ドライバ21および第2ドライバ22の動作)
図2の第1ドライバ21および第2ドライバ22の詳細動作を、
図3の動作説明波形を用いて説明する。時刻t0の直前でクロック信号CK
SD1がハイからローに切り替えられると(
図3、領域A1)、第1低位側スイッチSD1がオフする。時刻t0以前では、圧電アクチュエータ11の第1並列容量Cp1の電荷は第1低位側スイッチSD1を経由して放電された状態であるため、出力電圧VO1は0[V]である。その後時刻t0でクロック信号CK
SU1がローからハイに切り替えられると、MOSトランジスタMT1がオンするため、抵抗RU1およびMOSトランジスタMT1を経由して、バイポーラトランジスタBT1のベース電流IB1が流れ始める(時刻t1)。ベース電流IB1が流れると同時にバイポーラトランジスタBT1がオンする。すなわち、時刻t0でクロック信号CK
SU1がハイレベルに遷移すると、遅延した時刻t1において第1高位側スイッチSU1がオンする。これにより、電流IO1が流れ始め、出力電圧VO1が上昇する(領域A2)。時刻t2で出力電圧VO1が高位電圧VHに到達すると、出力電圧VO1は一定値の高位電圧VHを維持する。
【0046】
ここで時刻t1~t2間の動作について詳細説明する。MOSトランジスタMT1オン時のドレイン-ソース間電圧、および、バイポーラトランジスタBT1オン時のベース-エミッタ間電圧が、高位電圧VHに対して小さい場合、抵抗RU1の両端にほぼ高位電圧VHが加わることになる。よってバイポーラトランジスタBT1のベース電流は、高位電圧VHに比例した電流となる。バイポーラトランジスタBT1は電流増幅素子であるため、バイポーラトランジスタBT1のコレクタ電流には、ベース電流の電流増幅率倍された電流が流れる。したがって時刻t1~t2間にバイポーラトランジスタBT1経由で圧電アクチュエータ11に供給される電流IO1も、高位電圧VHに比例した電流となる。負荷容量である圧電アクチュエータ11を定電流で充電する場合の電圧上昇の傾きは、定電流値に比例する。よって、出力電圧VO1の立ち上がりの傾き(領域A2)は、高位電圧VHに比例する。
【0047】
時刻t2~t3までの間はMOSトランジスタMT1、バイポーラトランジスタBT1がオンの状態(すなわち第1高位側スイッチSU1がオンの状態)が継続されるため、出力電圧VO1は一定値(高位電圧VH)を保つ。時刻t3でクロック信号CKSU1がハイからローに切り替えられると(領域A3)、MOSトランジスタMT1およびバイポーラトランジスタBT1がオフする。時刻t4でクロック信号CKSD1がローからハイに切り替えられると、第1低位側スイッチSD1がオンするため、第1低位側スイッチSD1を経由して第1並列容量Cp1の電荷が放電され、出力電圧VO1は0[V]になる。その後時刻t7までの間、第1低位側スイッチSD1がオンの状態を継続されるため、出力電圧VO1は0[V]の一定値を保つ。以後、以上に説明した動作が周期的に繰り返される。
【0048】
効果を説明する。例えば、高位電圧VHを30[V]から150[V]に5倍変化させた場合を考える。この場合、VO1の立ち上がりの傾きはVHに比例するため、VO1の傾きも5倍になる。よって、VHまで立上る時間は変化しない。これにより、昇圧回路3から出力される高位電圧VHを変えて出力電力を制御する場合に、パルスの電圧振幅を変えても、立上り時間を一定にすることができる。安定した形状のパルスを出力できるため、圧電アクチュエータを制御性良く駆動することが可能となる。また、立上り時間の一定化を、プルアップ側スイッチとして電流制御型素子(バイポーラトランジスタBT1およびBT2)を用いることで実現している。立上り時間の一定化のために、大規模な制御回路を必要としないため、パルス電圧生成回路2の縮小化が可能である。
【実施例2】
【0049】
(実施例2の駆動方法の概略説明)
実施例2では、実施例1の圧電アクチュエータ駆動システム1において、駆動方法を変更した例を示す。実施例1と2では、圧電アクチュエータ駆動システム1の回路構成は同一である。実施例1と同様の部位には同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0050】
図7の動作説明波形を用いて、実施例2の高効率駆動方式の動作を説明する。時刻t0~t8までが1周期TTである。第1ドライバ21を動作させるクロック信号CK
SU1およびCK
SD1は、1周期TT内において、充電期間TR11、共振電流供給期間TR12、放電期間TR13、共振電流蓄積期間TR14、を備えている。 充電期間TR11は、第1高位側スイッチSU1のみが導通している期間である。充電期間TR11では、第1出力端子T1から高位電圧VHが出力され、第1並列容量Cp1が充電される。共振電流供給期間TR12は、第1高位側スイッチSU1および第1低位側スイッチSD1が非導通である期間である。共振電流供給期間TR12では、第1出力端子T1がハイインピーダンス出力になるとともに、第1並列容量Cp1から第1のLCR直列回路31へ共振電流が供給される。 放電期間TR13は、第1低位側スイッチSD1のみが導通している期間である。放電期間TR13では、第1出力端子T1から基準電圧VSSが出力され、第1並列容量Cp1が放電される。 共振電流蓄積期間TR14は、第1高位側スイッチSU1および第1低位側スイッチSD1が非導通である期間である。共振電流蓄積期間TR14では、第1出力端子T1がハイインピーダンス出力になるとともに、第1のLCR直列回路31から第1並列容量Cp1へ共振電流が蓄積される。
【0051】
ここで、共振電流蓄積期間TR14から充電期間TR11への切り替えタイミング(時刻t0)の位相を基準(位相0°)とする。この場合、共振電流供給期間TR12から放電期間TR13への切り替えタイミング(時刻t4)は、180°固定である。
【0052】
圧電アクチュエータ11の出力は、クロック信号CKSU1およびCKSD1の両方がオフとなるハイインピーダンス期間(共振電流供給期間TR12、共振電流蓄積期間TR14)を変更することで、制御が可能である。すなわち、クロック信号CKSU1およびCKSD1のオンデューティを変更することで、圧電アクチュエータ11の第1のLCR直列回路31で消費される電力を変化させることで、圧電アクチュエータ11の出力を制御できる。
【0053】
同様にして、第2ドライバ22を動作させるクロック信号CKSU2およびCKSD2は、1周期TT内において、充電期間TR21、共振電流供給期間TR22、放電期間TR23、共振電流蓄積期間TR24、を備えている。これらの期間の内容は、前述した充電期間TR11、共振電流供給期間TR12、放電期間TR13、共振電流蓄積期間TR14と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
(具体動作例)
第1ドライバ21の具体動作例を説明する。時刻t0でクロック信号CKSU1がローからハイに切り替わると、充電期間TR11が開始する。時刻t1において、第1高位側スイッチSU1がオンする(矢印Y31)。高位電圧VHから第1高位側スイッチSU1経由で第1並列容量Cp1に電流が流れ込み、出力電圧VO1が上昇し、時刻t2で高位電圧VHに到達する(領域A31)。その後、時刻t2aまでの間、出力電圧VO1は高位電圧VHに保持され、第1のLCR直列回路31へ共振電流が供給される。
【0055】
時刻t2aでクロック信号CKSU1がハイからローに切り替わると、共振電流供給期間TR12が開始する。第1高位側スイッチSU1がオフするため、高位電圧VHから圧電アクチュエータ11へ供給されていた電流が遮断され、第1出力端子T1はハイインピーダンスになる。時刻t3までの間、第1並列容量Cp1に蓄積された電荷エネルギから第1のLCR直列回路31に共振電流が供給され、出力電圧VO1は時間とともに低下する(領域A32)。すなわち共振電流供給期間TR12では、第1並列容量Cp1に蓄積された電荷エネルギが、圧電アクチュエータ11の共振振動エネルギに変換される。
【0056】
時刻t4でクロック信号CKSD1がローからハイに切り替わると、放電期間TR13が開始する。第1低位側スイッチSD1がオンするため、圧電アクチュエータ11から第1低位側スイッチSD1経由で基準電圧部位GNDへ電流が流れ始める。第1並列容量Cp1に蓄積された電荷が瞬間的に放電され、出力電圧VO1は0[V]になる(矢印Y32)。その後、圧電アクチュエータ11の共振電流が流れ出し始める。
【0057】
時刻t6aでクロック信号CKSD1がハイからローに切り替わると、共振電流蓄積期間TR14が開始する。第1低位側スイッチSD1がオフするため、圧電アクチュエータ11から基準電圧部位GNDへ流れていた電流が遮断され、第1出力端子T1はハイインピーダンスになる。時刻t8までの間、第1のLCR直列回路31からの共振電流は第1並列容量Cp1に蓄積されるため、出力電圧VO1は時間とともに上昇する(領域A33)。すなわち共振電流蓄積期間TR14では、圧電アクチュエータ11の共振振動エネルギが、第1並列容量Cp1の電荷エネルギに変換される。
【0058】
時刻t8でクロック信号CKSU1がローからハイに切り替わると、次の1周期TTが開始する。以後、充電期間TR11~共振電流蓄積期間TR14を繰り返す。
【0059】
なお、第2ドライバ22で行われる充電期間TR21~共振電流蓄積期間TR24の動作内容は、上述した第1ドライバ21で行われる充電期間TR11~共振電流蓄積期間TR14の動作内容と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
(効果)
本実施例の第1ドライバ21では、意図的にハイインピーダンス期間(共振電流供給期間TR12、共振電流蓄積期間TR14)を設けることで、第1並列容量Cp1から第1のLCR直列回路31へ共振電流を供給することができる。すなわち、第1並列容量Cp1を小容量の電池として有効活用することができる。第1並列容量Cp1の充放電時に、従来駆動方式では回路損失となっていたエネルギの一部を、本実施例では力学的エネルギに変換することが可能である。圧電アクチュエータの駆動効率を高めることができる。なお、第2ドライバ22においても同様にして、駆動効率を高めることが可能である。
【0061】
本実施例の第1ドライバ21では、クロック信号CKSU1およびCKSD1のオンタイミングを固定し、オンデューティを変更してハイインピーダンス期間を制御することで、圧電アクチュエータ11の駆動波形形状を変化させることができる。これにより、圧電アクチュエータ11の共振出力を制御することが可能になる。また、第1ドライバ21と第2ドライバ22とで個別にオンデューティを制御することで、圧電アクチュエータ11および12を互いに独立制御することができる。
【0062】
図8に、従来方式と実施例2の高効率方式とで、効率を比較したシミュレーション結果を示す。従来方式は、ハイインピーダンス期間(共振電流供給期間、共振電流蓄積期間)を備えない方式である。
図8の横軸はクロック信号CK
SU1およびCK
SD1のオンデューティであり、縦軸は効率である。グラフG20(点線)は従来方式であり、グラフG21(実線)は実施例2の方式である。オンデューティ比が小さくなるほど、ハイインピーダンス期間が長くなるため、従来方式に対して実施例2の方式の有効性が大きくなることが分かる。
【0063】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0064】
(変形例)
第1ダイオードD1は、第1低位側スイッチSD1に内蔵されている態様に限られず、別体の素子であってもよい。第2ダイオードD2についても同様である。
【0065】
第1出力端子T1、第2出力端子T2に接続される圧電アクチュエータは、1つに限られず、複数個を並列接続してもよい。また、第1出力端子T1に並列接続される圧電アクチュエータの数と、第2出力端子T2に並列接続される圧電アクチュエータの数の比は、同一に限られず、異なっていてもよい。
【0066】
圧電アクチュエータ11および12は、曲げ型の圧電アクチュエータなど、各種のアクチュエータを使用可能である。
【0067】
(対応関係)
抵抗RGは、第1抵抗の一例である。第1並列容量Cp1は、第1容量の一例である。第2並列容量Cp2は、第2容量の一例である。
【符号の説明】
【0068】
1:圧電アクチュエータ駆動システム 2:パルス電圧生成回路 3:昇圧回路 4:制御回路 11、12:圧電アクチュエータ 21:第1ドライバ 22:第2ドライバ 31:第1のLCR直列回路 32:第2のLCR直列回路 Cp1:第1並列容量 Cp2:第2並列容量 CKSU1、CKSD1、CKSU2、CKSD2:クロック信号 SU1:第1高位側スイッチ SU2:第2高位側スイッチ SD1:第1低位側スイッチ SD2:第2低位側スイッチ RG:抵抗