(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】塗装ロボットおよび塗装システム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20230426BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20230426BHJP
B05B 16/00 20180101ALI20230426BHJP
【FI】
B25J9/06 B
B05B12/00 A
B05B16/00
(21)【出願番号】P 2022059168
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】田畑 壱
(72)【発明者】
【氏名】松田 悠太
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-42841(JP,A)
【文献】特開2013-94856(JP,A)
【文献】特開平10-202575(JP,A)
【文献】特開平11-188684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B05B 12/00 - 12/14
13/00 - 13/06
16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される基台と、
前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する旋回ベースと、
前記旋回ベースに基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回するロアアームと、
前記ロアアームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回するアッパーアームと、
前記アッパーアームの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタを取り付け可能な3軸構成の手首部と
を備え、
前記アッパーアームは、
基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備え、
前記第2アッパーアームは、
前記ロアアームによって支持される側面である内側面で前記第1アッパーアームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と平行な第4軸まわりに旋回し、
前記第1アッパーアームは、
前記エンドエフェクタ用のポンプを前記内側面側に備えること
を特徴とする塗装ロボット。
【請求項2】
前記ポンプは、
前記第1アッパーアームの外部に設けられるポンプ機構と、前記第1アッパーアームの内部に設けられ、前記ポンプ機構を駆動する回転式アクチュエータとを備え、
前記回転式アクチュエータは、
駆動軸に相当するポンプ軸の向きが前記第4軸の向きに沿うこと
を特徴とする請求項1に記載の塗装ロボット。
【請求項3】
前記第1アッパーアームは、
前記エンドエフェクタ用の電空機器を前記ポンプと並ぶように前記内側面側に備えること
を特徴とする請求項2に記載の塗装ロボット。
【請求項4】
前記エンドエフェクタへ向けてロボットの外部に配索される線条体を支持する複数の支持部
をさらに備え、
前記複数の支持部のうち少なくとも1つは、
前記第1アッパーアームにおける前記内側面とは反対の側面である外側面に設けられ、前記線条体を前記第1アッパーアームの延伸向きに沿うように支持すること
を特徴とする請求項1に記載の塗装ロボット。
【請求項5】
前記線条体は、
前記第1アッパーアームの前記外側面側から分岐する一対の分岐線条体を備え、
前記一対の分岐線条体は、
前記第1アッパーアームにおける前記外側面と前記内側面をつなぐ側面に沿って前記ポンプへそれぞれ接続されること
を特徴とする請求項4に記載の塗装ロボット。
【請求項6】
前記複数の支持部のうち2つは、
前記一対の分岐線条体が前記線条体から分岐する部位の先端側および基端側にそれぞれ1つずつ設けられること
を特徴とする請求項5に記載の塗装ロボット。
【請求項7】
前記複数の支持部の1つは、
前記第1アッパーアームと前記第2アッパーアームとを接続する関節部の前記第2アッパーアーム側に設けられ、前記第4軸に沿って前記第1アッパーアーム側へ突出した位置で前記線条体を支持する突出支持部を含むこと
を特徴とする請求項4に記載の塗装ロボット。
【請求項8】
前記複数の支持部のうち少なくとも1つは、
前記第2アッパーアームの外側面に設けられ、前記突出支持部によって支持されて前記エンドエフェクタへ向かう前記線条体を前記第2アッパーアームの延伸向きに沿うように支持すること
を特徴とする請求項7に記載の塗装ロボット。
【請求項9】
塗装ブースと、
請求項1~8のいずれか一つに記載の塗装ロボットと
を備え、
前記塗装ロボットは、
ワークの搬送向きについて前記ワークを挟むように前記塗装ブースに少なくとも一対が配置され、
一対の前記塗装ロボットは、
前記搬送向きに沿う搬送中心面に対してお互いに軸構成が対称であり、前記第1軸と前記搬送中心面との距離がお互いに等しいこと
を特徴とする塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、塗装ロボットおよび塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の関節部をそれぞれ駆動して動作するロボットが知られている。かかるロボットの先端には、溶接や把持といった用途にあわせたエンドエフェクタが取り付けられ、ワークの加工や移動といった様々な作業が行われる。
【0003】
また、塗装用のエンドエフェクタを取り付けた塗装ロボットを塗装ブース内に配置し、ワークに相当する自動車のボディ外板を塗装する塗装システムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボディ外板ではなくボディ内板を塗装する場合には、ロボットとワークとの干渉が特に問題となりやすい。そして、干渉防止のためにワークとロボットとの距離を確保しようとすると塗装ブースが大型化しやすい。
【0006】
実施形態の一態様は、有効動作範囲を拡張することでワークへの接近性を向上させた塗装ロボットおよび塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る塗装ロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームと、手首部とを備える。基台は、設置面に固定される。旋回ベースは、前記基台の上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸まわりに旋回する。ロアアームは、前記旋回ベースに基端側が支持され、前記第1軸と垂直な第2軸まわりに旋回する。アッパーアームは、前記ロアアームの先端側に基端側が支持され、前記第2軸と平行な第3軸まわりに旋回する。手首部は、前記アッパーアームの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタを取り付け可能な3軸構成である。前記アッパーアームは、基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備える。前記第2アッパーアームは、前記ロアアームによって支持される側面である内側面で前記第1アッパーアームの先端側に基端側が支持され、前記第3軸と平行な第4軸まわりに旋回する。前記第1アッパーアームは、前記エンドエフェクタ用のポンプを前記内側面側に備える。
【0008】
実施形態の一態様に係る塗装システムは、塗装ブースと、前記塗装ロボットとを備える。前記塗装ロボットは、ワークの搬送向きについて前記ワークを挟むように前記塗装ブースに少なくとも一対が配置される。一対の前記塗装ロボットは、前記搬送向きに沿う搬送中心面に対してお互いに軸構成が対称であり、前記第1軸と前記搬送中心面との距離がお互いに等しい。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、ワークへの接近性を向上させた塗装ロボットおよび塗装システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る塗装ロボットの側面図である。
【
図3A】
図3Aは、支持部の設置位置を示すY軸正方向からみた側面図である。
【
図3D】
図3Dは、ポンプおよび電空機器の設置位置を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る塗装システムの上面模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る塗装システムの側面模式図である。
【
図6A】
図6Aは、2ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
【
図6B】
図6Bは、レンマリストの軸構成を示すモデル図である。
【
図6C】
図6Cは、インラインリストの軸構成を示すモデル図である。
【
図6D】
図6Dは、3ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
【
図7】
図7は、塗装システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、塗装ロボットの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する塗装ロボットおよび塗装システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、自動車などの車両が被塗装物である場合について説明するが、被塗装物は車両には限られない。また、以下では、被塗装物を「ワーク」と記載することとする。
【0012】
また、以下に示す実施形態では、「垂直」、「直交」、「鉛直」、「同一」あるいは「対称」といった表現を用いるが、厳密にこれらの状態を満たすことを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度、処理精度、検出精度などのずれを許容するものとする。
【0013】
まず、実施形態に係る塗装ロボット10について
図1を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る塗装ロボット10の側面図である。
図1では、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸、後述するワークの搬送向きを正方向とするX軸、X軸およびZ軸と直交するY軸の3次元の直交座標系を示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。なお、「直交」とは、お互いに「垂直」で、かつ、「交差」することを指す。
【0014】
図1に示すように、塗装ロボット10は、基台10bと、旋回ベース11と、ロアアーム12と、アッパーアームUAと、手首部WUとを備える。基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向き(Z軸)に沿う第1軸A1まわりに旋回する。
【0015】
ここで、「旋回」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させる動作を指す。また、「回転」とは、隣り合うアームのなす角度を変化させずに相対的に回転させる動作を指す。なお、「旋回」とは、回転軸まわりにアームを振り回す動作を指し、「回転」とは、アームの延伸向きに沿う回転軸まわりにアームを回す動作を指すともいえる。
【0016】
ロアアーム12は、旋回ベース11に基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアームUAは、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0017】
手首部WUは、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタEEを取り付け可能な3軸構成の機構である。具体的には、手首部WUは、第5アーム15と、第6アーム16と、第7アーム17とを備える。第5アーム15は、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、第4軸A4と直交する第5軸A5まわりに回転する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A5と交差する第6軸A6まわりに回転する。
【0018】
第5軸A5と第6軸A6との傾き角は、鋭角側が0度よりも大きく、90度よりも小さい任意の角度とすることができる。第7アーム17は、第6アーム16の先端側に基端側が支持され、第6軸A6と交差する第7軸A7まわりに回転する。そして、第7アーム17の先端側には塗装用のエンドエフェクタEE(
図1の破線参照)を取り付け可能である。なお、
図1に示した手首部WUは、いわゆる、塗装用の「2ロールホローリスト(2 Roll Hollow Wrist)」である。このように、手首部WUを中空とすることで、中空部にホースやチューブ、ケーブル等を配索することが可能となる。したがって、複雑な形状のワークに対してもホースやチューブ、ケーブル等の干渉を懸念することなく塗装作業を容易に行うことができる。
【0019】
ここで、アッパーアームUAは、基端側の第1アッパーアーム13と、先端側の第2アッパーアーム14とを備える。第1アッパーアーム13は、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、上記した第3軸A3まわりに旋回する。第2アッパーアーム14は、第1アッパーアーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と平行な第4軸A4まわりに旋回する。つまり、アッパーアームUAは、いわゆる「冗長軸」に相当する第4軸A4を有する2アーム構成であり、第4軸A4まわりの旋回動作によってアームの屈伸動作が可能である。
【0020】
本実施形態では、第3軸A3と第4軸A4との距離を第1アッパーアーム13のアーム長とし、第5軸A5と第6軸A6との交点であるP点Pと第4軸A4との距離を第2アッパーアーム14のアーム長とする。ここで、第2アッパーアーム14のアーム長は、第1アッパーアーム13のアーム長よりも長く、かつ、第1アッパーアーム13のアーム長の2倍よりも短い。
【0021】
つまり、第1アッパーアーム13のアーム長を「L1」とし、第2アッパーアーム14のアーム長を「L2」とすると、「L1<L2<L1×2」の関係を有する。このようにすることで、ワークへの干渉防止と、ワークへの接近性との両立を図ることができる。なお、「L2=1.2×L1」程度とすると干渉防止および接近性の両立性の観点から、さらに好ましい。
【0022】
このように、アッパーアームUAに冗長軸を持たせるとアッパーアームUAの屈伸動作が可能となるので、ワークとの干渉を回避しつつ塗装ロボット10の設置位置をよりワークに近づけることができる。また、第2アッパーアーム14を第1アッパーアーム13よりも長くすることで、ワークとの干渉を回避した動作範囲である「有効動作範囲」を拡張することができ、ワークへの接近性をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
また、
図1に示したように、第2アッパーアーム14は、ロアアーム12によって支持される第1アッパーアーム13の側面である「内側面」で基端側が支持される。また、第1アッパーアーム13は、エンドエフェクタEE用のポンプPUをかかる内側面側に備える。
【0024】
このように、第1アッパーアーム13がロアアーム12によって支持される側面である第1アッパーアーム13の内側面に第2アッパーアーム14を設けることで、第1アッパーアーム13の内側面側に、ロアアーム12の先端側と第2アッパーアームの基端側とで挟まれた、障害物と干渉しにくい空間が生じる。
【0025】
そして、かかる空間にエンドエフェクタEE用のポンプPUを設けることで、ワークとの干渉を回避可能な有効動作範囲を拡張することができ、ワークへの接近性を向上させることが可能となる。また、ポンプPUを、第1アッパーアーム13よりも塗装ロボット10の基端側の各アームに設ける場合や、塗装ロボット10の外部に設ける場合に比べてポンプPUとエンドエフェクタEEとの距離を短くすることができる。したがって、塗料ロスの削減や、塗装品質の向上を図ることができる。
【0026】
ここで、
図1では、ポンプPUを矩形のシンボルで示したが、ポンプPUの外形を限定するものではない。すなわち、ポンプPUの外形は任意の形状とすることができる。なお、ポンプPUを駆動するアクチュエータは、防爆の観点から第1アッパーアーム13の内部に設置されるが、この点については、
図3Dを用いて後述することとする。
【0027】
また、
図1に示した塗装ロボット10の軸構成を、鉛直軸(Z軸)と平行な対称面に対してミラー構成とすることもできるが、この点については、
図4等を用いて後述する。さらに、
図1に示した手首部WUを異なる軸構成のものとしてもよいが、この点については、
図6A~
図6Dを用いて後述することとする。
【0028】
次に、
図1に示した塗装ロボット10の塗装ブース200への設置例について
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
図2Aは、床置きの設置例を示す図であり、
図2Bは、壁掛けの設置例を示す図である。
図2Aおよび
図2Bに示すように、塗装ブース200は、床面201と、一対の壁面202(一方は図示略)と、天面203とに囲まれ、ワークの搬送向きの上流側(X軸負方向側)と下流側(X軸正方向側)とを開放可能な半閉空間である。
【0029】
なお、
図2Aおよび
図2Bでは、ワークの搬送向き(X軸正方向)について塗装ブース200における左側(Y軸正方向側)の壁面202付近に塗装ロボット10を設置した場合を示している。また、
図2Aおよび
図2Bの方向視は
図1の方向視と同一である。
【0030】
図2Aに示すように、塗装ロボット10を床置きにする場合には、基台10bの底面を塗装ブース200の床面201に固定する。ここで、塗装ロボット10の第1軸A1は、鉛直軸(Z軸)と平行である。なお、
図2Aでは、基台10bを床面201に直接固定する場合を示したが、床面201に固定された台の上に基台10bを固定することとしてもよい。
【0031】
図2Bに示すように、塗装ロボット10を壁掛けにする場合には、基台10bの下面側に設けられる補助部材10cを介して塗装ブース200の壁面202に壁掛けする。ここで、塗装ロボット10の第1軸A1は、
図2Aに示した場合と同様に、鉛直軸(Z軸)と平行である。なお、
図2Bでは、基台10bの側面が壁面202に接するように設置される場合を示したが基台10bの側面を壁面202から離して設置することとしてもよい。また、補助部材10cを省略して基台10bの側面を壁面202に固定することとしてもよい。
【0032】
なお、
図2Aおよび
図2Bでは、塗装ロボット10の第1軸A1が鉛直軸(Z軸)と平行となるように塗装ロボット10を配置する場合を示したが、第1軸A1が鉛直軸(Z軸)に対して傾いた姿勢で塗装ロボット10を配置することとしてもよい。
【0033】
たとえば、第1軸A1が、
図2Aおよび
図2Bに示したYZ平面と平行、かつ、Y軸に対して45度から90度の範囲となるように塗装ロボット10を配置してもよい。ここで、90度は
図2Aおよび
図2Bに示した姿勢に相当する。このように、塗装ロボット10を傾斜配置する場合、床面201や壁面202を傾斜させてもよく、基台10bあるいは補助部材10cを傾斜させてもよい。
【0034】
次に、
図1に示したエンドエフェクタEEへ向けて塗装ロボット10に配索される線条体18を支持する複数の支持部19について
図3A、
図3Bおよび
図3Cを用いて説明する。
図3Aは、支持部19の設置位置を示すY軸正方向からみた側面図であり、
図3Bは、
図3AのX軸負方向からみた側面図である。また、
図3Cは、支持部19の設置位置を示す斜視図である。なお、線条体18は外力を受けると撓む可撓性を有するものとする。
【0035】
また、
図3Aは、
図2Aに示した壁面202から塗装ロボット10をみた側面図に相当する。なお、
図3Aに示した塗装ロボット10の姿勢は、
図1に示した姿勢とは異なる。以下では、複数の支持部19を特に区別する場合には、符号に「a」や「b」といった小文字のアルファベットを付記することとする。
【0036】
ここで、線条体18は、エンドエフェクタEEへ塗料や気体を供給するホースやチューブ、電気信号を伝送するケーブル等を含む。なお、複数のホースやチューブ、ケーブルは、結束バンド等で束ねることとしてもよく、大きめのチューブ内にまとめて配置することとしてもよい。
【0037】
図3Aには、
図1に示したロアアーム12、第1アッパーアーム13および第2アッパーアーム14を鉛直向き上方に伸ばした姿勢をとった塗装ロボット10を示している。つまり、ロアアーム12、第1アッパーアーム13および第2アッパーアーム14の延伸向きはZ軸と平行である。
【0038】
ここで、
図3Aの姿勢において各アームの「正面」をY軸負方向側の側面とし、「背面」をY軸正方向側の側面とする。つまり、
図3Aの姿勢において第1軸A1(
図1参照)から遠い側の側面が各アームの「正面」であり、近い側の側面が各アームの「背面」である。なお、
図3Aでは、第2アッパーアーム14の先端側以降の記載については省略している。
【0039】
また、
図3Aの姿勢において各アームの「内側面」をX軸正方向側の側面とし、「外側面」をX軸負方向側の側面とする。つまり、各アームの外側面は内側面の反対側の面ともいえる。たとえば、第1アッパーアーム13の内側面は、ロアアーム12の外側面で支持され、第2アッパーアーム14の外側面は、第1アッパーアーム13の内側面で支持される。なお、第1アッパーアーム13の内側面にはポンプPUが設けられる。
【0040】
つまり、塗装ロボット10の第2アッパーアーム14は、第1アッパーアーム13がロアアーム12によって支持される側面側で、第1アッパーアーム13によって支持される。すなわち、第2アッパーアーム14およびロアアーム12は、第1アッパーアーム13における同じ側の側面(内側面)にそれぞれ接続される。
【0041】
線条体18は、設置面ISから導出されて塗装ロボット10の外部に配索され、第2アッパーアーム14の外部から手首部WU(
図1参照)の中空部へ導入される。そして、線条体18の一端は、エンドエフェクタEE(
図1参照)に接続される。なお、線条体18が塗装ブース200(
図2A参照)を貫通する箇所は、塗装ブース200の外周を囲む外壁(床壁や天壁を含む)のいずれであってもよい。
【0042】
図3Aに示したように、線条体18は、たとえば、基台10b、旋回ベース11およびロアアーム12の内側面側を経由し、ロアアーム12の背面側を横切って湾曲しつつ、第1アッパーアーム13の外側面側に配索される。なお、かかる配索経路は一例であり、他の経路をとることとしてもよい。そして、線条体18は、分岐部18dで一対の分岐線条体18aに分岐し、それぞれが第1アッパーアーム13の内側面側に設けられたポンプPUに接続される。なお、一対の分岐線条体18aのいずれか一方はポンプPUの入力側に接続され、他方は出力側に接続される。なお、一対の分岐線条体18aにそれぞれ内包される入力側および出力側の線条体の個数はお互いに異なっていてもよい。
【0043】
つまり、線条体18は、第1アッパーアーム13の外側面側から分岐する一対の分岐線条体18aを含んでおり、一対の分岐線条体18aは、第1アッパーアーム13における外側面と内側面をつなぐ側面に沿ってポンプPUへそれぞれ接続される。このように、線条体18から分岐する一対の分岐線条体18aを、第1アッパーアーム13の内部ではなく、第1アッパーアーム13の外部を横切るように外側面側から内側面側へ配索することで、第1アッパーアーム13の小型化が可能となる。なお、
図3Aおよび
図3Bでは、一対の分岐線条体18aの双方がY軸正方向側の側面に沿ってポンプPUへ接続される例を示したが、双方ともY軸負方向側の側面に沿うように配置することとしてもよい。また、一方をY軸正方向側の側面に、他方をY軸負方向側の側面に、それぞれ沿うように配置することとしてもよい。
【0044】
つづいて、線条体18は、第1アッパーアーム13の延伸向きに沿って第2アッパーアーム14の外側面へ配索され、第2アッパーアーム14の延伸向きに沿ってエンドエフェクタEE(
図1参照)に接続される。
【0045】
図3Aに示した配索経路の例では、複数の支持部19は、基台10b、旋回ベース11およびロアアーム12の内側面側にそれぞれ設けられる。また、支持部19は、第1アッパーアーム13の基端側と、外側面と、内側面および外側面をつなぐ側面とにそれぞれ設けられる。なお、基台10b、旋回ベース11およびロアアーム12の外側面側に線条体18を配索する場合には、対応する支持部19は、外側面側に設けられることになる。
【0046】
複数の支持部19のうち少なくとも1つは、第1アッパーアーム13の外側面に設けられ、線条体18を第1アッパーアーム13の延伸向きに沿うように支持する。このように、線条体18を支持する支持部19を第1アッパーアーム13の外側面に設け、線条体18を第1アッパーアーム13の延伸向きに沿うように支持させることとしたので、線条体18を第1アッパーアーム13の側面シルエットに収まるように支持することができる。したがって、線条体18と障害物との干渉リスクを低減することが可能となる。
【0047】
また、複数の支持部19のうち2つは、一対の分岐線条体18aが線条体18から分岐する部位(分岐部18d)の先端側および基端側にそれぞれ1つずつ設けられる。このように、分岐部18dの先端側および基端側にそれぞれ支持部19を設けることで、線条体18が塗装ロボット10の表面から離れる事態を防止することができる。なお、
図3Aでは、分岐部18dよりも先端側に設けられる支持部19を支持部19bとして、基端側に設けられる支持部19を支持部19aとして、それぞれ示している。
【0048】
また、一対の分岐線条体18aは、第1アッパーアーム13における外側面と内側面をつなぐ側面に設けられる支持部19である支持部19cによってまとめて支持される。このように、一対の分岐線条体18aを支持する支持部19cを設けることで、分岐線条体18aが塗装ロボット10の表面から離れる事態を防止することができる。なお、一対の分岐線条体18aのそれぞれを別々に支持する支持部19をそれぞれ設けることとしてもよい。
【0049】
また、突出支持部19dは、第1アッパーアーム13と第2アッパーアーム14とを接続する関節部の第2アッパーアーム14側に設けられ、第4軸A4(
図1参照)に沿って第1アッパーアーム13側へ突出した位置で線条体18を支持する。また、突出支持部19dは、少なくとも第2アッパーアーム14の可動範囲で第1アッパーアーム13と線条体18とが干渉しないように、第4軸A4から放射方向に離れた位置で線条体18を支持する。このように、突出支持部19dによって線条体18を支持することで、第1アッパーアーム13と第2アッパーアームとの相対角度が変化した場合であっても線条体18が第1アッパーアーム13と擦れる事態を防止することができる。なお、第2アッパーアーム14の外側面の形状が、第1アッパーアーム13に支持される部位よりも先端側のほうがX軸正方向側にオフセットした形状である場合にも、上記した支持位置の条件を満たすように突出支持部19dを設けることとすればよい。
【0050】
また、支持部19eは、第2アッパーアーム14の外側面に設けられ、突出支持部19dによって支持されてエンドエフェクタEE(
図1参照)へ向かう線条体18を第2アッパーアーム14の延伸向きに沿うように支持する。
【0051】
次に、
図3Bを用いて説明する。
図3Bは、
図3Aに示した姿勢の塗装ロボット10を、X軸負方向側からみた側面図に相当する。なお、
図3Bでは、
図3Aと同じ姿勢を実線で、第2アッパーアーム14を時計回りに旋回させた姿勢14bおよび反時計回りに旋回させた姿勢14aを破線で、それぞれ示している。
【0052】
図3Bに実線で示したように、第1アッパーアーム13の延伸向きの中心線に沿って支持部19aおよび支持部19bを設けることで、線条体18を第1アッパーアーム13の延伸向きに沿うように支持することとした。また、第2アッパーアーム14の延伸向きの中心線に沿って突出支持部19dおよび支持部19eを設けることで、線条体18を第2アッパーアーム14の延伸向きに沿って支持することとした。
【0053】
したがって、
図3Bに実線で示したように、線条体18を第1アッパーアーム13の側面シルエットに収まるように支持することができるとともに、第2アッパーアーム14の側面シルエットに収まるように支持することができる。
【0054】
ここで、線条体18は可撓性であるので、第2アッパーアーム14を第1アッパーアーム13に対して旋回させた場合であっても、線条体18は、第1アッパーアーム13の支持部19bと、第2アッパーアーム14の突出支持部19dとの間で滑らかに撓む。したがって、第2アッパーアーム14を第1アッパーアーム13に対して旋回させた場合であっても、線条体18を、第1アッパーアーム13および第2アッパーアーム14の側面シルエットに収めることができる。このため、線条体18と障害物との干渉リスクを低減することが可能となる(
図3Bの破線参照)。
【0055】
次に、
図3Cを用いて主に突出支持部19dについて説明する。
図3Cは、アッパーアームUAを、第1アッパーアーム13側の斜め上方からみた斜視図に相当する。
図3Cに示すように、各支持部19は、線条体18を通過させる半円状の部材を含んだ形状を有しており、それぞれ、アッパーアームUAの表面に取り付けられる。なお、
図3Cでは、線条体18に対して半円状の部材を大きめに記載しているが、線条体18に外接する程度の大きさとすることが好ましい。
【0056】
第2アッパーアーム14に設けられる突出支持部19dは、第4軸A4に沿って第2アッパーアーム14から第1アッパーアーム13へ向けて突出する部材を有しており、かかる部材の先端側に上記した半円状の部材が配置されている。このように、突出支持部19dは、第2アッパーアーム14の外側面よりも第1アッパーアーム13の外側面に近い位置で線条体18を支持する。
【0057】
したがって、第2アッパーアーム14を旋回させた場合であっても、線条体18を第1アッパーアーム13と擦れにくくすることができ、線条体18の耐久性を高めることが可能となる。なお、
図3Cでは、突出支持部19dについて第2アッパーアーム14から突出する部材を平板状の形状で示したが、第1アッパーアーム13の先端形状に沿う曲面状の形状とすることとしてもよい。
【0058】
次に、ポンプPUおよび電空機器ELの設置位置について
図3Dを用いて説明する。
図3Dは、ポンプPUおよび電空機器ELの設置位置を示す側面図である。なお、
図3Dは、
図3Cに示した第1アッパーアーム13をX軸正方向側からみた側面図に相当する。また、
図3Dでは、
図3C等に示した線条体18の記載を省略している。
【0059】
図3Dに示すように、第1アッパーアーム13は、内側面側にポンプPUと、電空機器ELとを備える。ここで、電空機器ELは、電磁弁や電空レギュレータといったデバイスであり、液体や気体の通過量や通過タイミングを調整する。なお、
図3Dでは、ポンプPUおよび電空機器ELが、第1アッパーアーム13に対して着脱可能なカバCVに設けられる場合を示している。このように、カバCVを用いることで、ポンプPUや電空機器ELに対するメンテナンスが容易となる。なお、カバCVには第1アッパーアーム13内部の気密性を確保するためにパッキンなどの部材が設けられる。
【0060】
ここで、ポンプPUは、第1アッパーアーム13の外部に設けられるポンプ機構のことを指すが、第1アッパーアーム13の内部に設けられ、ポンプ機構を駆動する回転式アクチュエータCAと、ポンプ機構とを併せてポンプPUと呼ぶこととしてもよい。
【0061】
ポンプPUは、
図3Aにも示した支持部19c側に、一対の接続部Paを有する。一対の接続部Paには、
図3C等に示した一対の分岐線条体18aがそれぞれ接続される。なお、一対の接続部Paの一方は入力側であり、他方は出力側である。ここで、ポンプ機構を駆動する回転式アクチュエータCAの回転軸をポンプ軸APと呼ぶこととする。
【0062】
ポンプ軸APは、
図3Cに示した第4軸A4と平行である。つまり、ポンプ軸APは、回転式アクチュエータCAからポンプ機構へ向けて突出しており、ポンプ機構の内部に設けられる歯車等を駆動することで、塗料をエンドエフェクタEE(
図1参照)へ向けて吐出する。
【0063】
このように、回転式アクチュエータCAを第1アッパーアーム13の内部に設けつつ、ポンプ機構を第1アッパーアーム13の内側面側に配置することで、防爆環境に容易に対応しつつ、第1アッパーアーム13の小型化を図ることができる。
【0064】
また、ポンプ軸APの向きを第1アッパーアーム13における内側面の法線向きとすることで、第1アッパーアーム13や第2アッパーアーム14(
図3C参照)を旋回させた場合であっても、ポンプPUが障害物や塗装ロボット10に干渉しにくい。したがって、塗装ロボット10の有効動作範囲の拡張に寄与することができる。
【0065】
電空機器ELは、ポンプPUと並ぶように第1アッパーアーム13の内側面側に設けられる。なお、電空機器ELは、第1アッパーアーム13の内部に配置されており、一部がカバCVを介して外部に露出している、もしくは、露出しておらず、外部に露出した継手やチューブ等と接続される。また、
図3Dに示した円のシンボルは、電空機器ELの入出力用の接続部をあらわしている。ここで、
図3Dでは、8つの接続部を示しているが接続部の個数を限定するものではない。つまり、接続部の個数は任意の個数とすることができる。
【0066】
また、
図3Dでは、電空機器ELをポンプPUのY軸正方向側に配置した場合を示したが、Y軸負方向側に配置することとしてもよい。また、電空機器ELをポンプPUのZ軸正方向側に配置したり、Z軸負方向側に配置したりすることとしてもよい。
【0067】
図3Dに示したように、第1アッパーアーム13は、エンドエフェクタEE(
図1参照)用の電空機器ELをポンプPUと並ぶように内側面側に備えることとした。このように、電空機器ELをポンプPUの近傍に設けることで、電空機器ELとエンドエフェクタEEとの距離を短くすることができ、エンドエフェクタEEの応答性を高めることができる。
【0068】
次に、
図1等に示した塗装ロボット10を備える塗装システム1について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る塗装システム1の上面模式図であり、
図5は、実施形態に係る塗装システム1の側面模式図である。なお、
図4および
図5では、ワーク500が車両である場合を示している。また、
図4および
図5では、一対の塗装ロボット10をそれぞれ示したが、二対以上の塗装ロボット10を塗装システム1に含めることとしてもよい。また、
図4および
図5では、一対の塗装ロボット10が搬送中心面P1についてお互いに真正面に設置される場合を示したが、お互いに搬送向きについてオフセットするように設置することとしてもよい。また、二対以上の塗装ロボット10を塗装システム1に含める場合には、各塗装ロボット10を搬送向きについて千鳥配置することとしてもよい。
【0069】
また、以下では、塗装ブース200に設けられる搬送装置210の搬送向き(X軸正方向)を「下流側」、逆向きを「上流側」、搬送向きに向かって右を「右側」、左を「左側」と記載する。また、上面視で、搬送装置210の搬送向きについて中央を通る面を搬送中心面P1とする。
【0070】
なお、塗装ブース200内に複数台設置される塗装ロボット10については、符号の末尾に識別用の文字を付加することとする。たとえば、搬送装置210の右側に設置される塗装ロボット10には「R」を、左側に設置される塗装ロボット10には「L」を付加する。
【0071】
ここで、ワーク500は、搬送中心面P1について、たとえば、対称な形状である。ただし、ワーク500は厳密に対称な形状である必要はなく、ワーク500の左側の塗装ロボット10Lおよび右側の塗装ロボット10Rが同じ動作を行う程度の形状であればよい。なお、ワーク500の左側については、塗装ロボット10Lが塗装作業を行い、右側については、塗装ロボット10Rが塗装作業を行う。
【0072】
図4に示したように、ワーク500は、搬送中心面P1について対称な形状であるので、搬送装置210を挟んで対向する各ロボットは、お互いに左右対称な動作を行いつつワーク500に対する塗装作業を行う。
【0073】
以下、塗装ブース200内に設置される各装置について説明する。塗装ブース200内には、搬送装置210と、塗装ロボット10とが設置される。ここで、塗装ブース200は、上記したように、外部と隔離された空間を有する塗装用の部屋である。
【0074】
塗装ブース200の床面201(
図2A参照)には、コンベアなどの搬送装置210が設置される。そして、搬送装置210は、ワーク500を、所定の搬送向き(
図4におけるX軸正方向)へ、所定の速度で搬送する。なお、ワーク500は、図示しない治具などによって搬送装置210の可動部分に固定された状態で搬送される。
【0075】
塗装ロボット10は、ワーク500を塗装するロボットであるが、構成については
図1等を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。なお、塗装ロボット10は、内部に不燃性ガスなどの気体を導入して内圧を高めることで、外部からの気体の流入を抑えることができる。
【0076】
塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10Lは、搬送中心面P1について対称な位置にそれぞれ配置される。つまり、
図1に示した第1軸A1と搬送中心面P1との距離がお互いに等しい。また、一対の塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10Lは、それぞれの「アーム構成」が搬送中心面P1について対称である。ここで、「アーム構成」とは、各アームを旋回または回転させる各軸の配置を指す。そして、各軸の配置には、隣り合う各軸のなす角、隣り合う各軸の軸間距離が含まれる。
【0077】
すなわち、「アーム構成」が対称という場合、アームの外形や、形状の差異は問わない。つまり、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が対称であれば、アーム構成は対称であるという。同様に、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が同一であれば、アーム構成は同一であるという。
【0078】
このように、アーム構成が対称のロボットを用いることで、教示データを反転させて利用することが可能となるので、教示データの生成コストを抑制することができ、ロボットの製造コストを抑制することができる。
【0079】
図4には、側方のドア510および後方のテールゲート520を開けた状態のワーク500を示している。塗装ロボット10は、ワーク500との干渉を回避しつつ、ドア510の内側や、車内の塗装作業を行う。このように、軸構成が対称な塗装ロボット10を搬送中心面P1についてワーク500を挟んで等距離に配置することで、教示データの再利用が可能となり、教示作業の効率化を図ることができる。
【0080】
ここで、
図4に示したように、一対の塗装ロボット10(塗装ロボット10Rおよび塗装ロボット10L)は、搬送向きについてロアアーム12よりも上流側(X軸負方向側)に、第1アッパーアーム13があるようにそれぞれ配置される。このように、各塗装ロボット10を配置することで、たとえば、第1アッパーアーム13とドア510との干渉を回避しやすくなり、塗装作業を迅速に行うことが可能となる。
【0081】
図5は、
図4に示した塗装システム1をワーク500の搬送向きの上流側からみた側面図に相当する。
図5に示すように、各塗装ロボット10は、アッパーアームUAを畳んだ姿勢でワーク500に対する塗装作業を行うことができる。また、たとえば、アッパーアームUAを振り上げつつ伸ばした姿勢とすることで搬送されるワーク500を回避することができる。
【0082】
なお、
図5では、一対の塗装ロボット10の第1軸A1(
図1参照)がそれぞれ鉛直向き(Z軸)に沿う姿勢で配置される場合について示したが、第1軸A1が鉛直軸(Z軸)に対して傾いた姿勢で各塗装ロボット10を配置することとしもよい。具体的には、それぞれの第1軸A1が、基台10b(
図1参照)よりも上方で搬送中心面P1において交差する姿勢で一対の塗装ロボット10をそれぞれ配置することとしてもよい。このように、各塗装ロボット10をワーク500に対して前のめりの姿勢となるように傾けて配置することで、ワーク500との干渉を回避しつつ、様々な形状のワーク500に対する塗装作業を柔軟に行うことができる。
【0083】
次に、
図1に示した手首部WUのバリエーションについて
図6A~
図6Dを用いて説明する。
図6Aは、2ロールホローリストの軸構成を示すモデル図であり、
図6Bは、レンマリストの軸構成を示すモデル図である。また、
図6Cは、インラインリストの軸構成を示すモデル図であり、
図6Dは、3ロールホローリストの軸構成を示すモデル図である。
【0084】
ここで、
図6Aは、
図1に示した手首部WUに対応し、
図6B、
図6Cおよび
図6Dは、
図1に示した手首部WUのバリエーションに相当する。なお、
図6A~
図6Dにそれぞれ示した手首部WUは、軸構成がお互いに異なるものの、いずれも3軸構成である点については共通している。
【0085】
また、
図6A~
図6Dでは、手首部WUの各関節部をシンボル化して示している。具体的には、矩形のシンボルは「回転関節」を、円のシンボルは「旋回関節」をそれぞれあらわしている。ここで、矩形のシンボルの対角を結ぶ直線は、関節の回転面に対応しており、もう一方の対角を結ぶ回転軸まわりに関節が回転することを示している。
【0086】
また、円のシンボルに付した点は回転軸を示しており、かかる回転軸まわりに関節は回転する。なお、
図6A~
図6Dでは、
図1に示した第2アッパーアーム14をシンボル化して直線として示しており、かかる直線は、第2アッパーアーム14の延伸向きを指している。ただし、
図6A~
図6Dは、単に軸構成を示しているにすぎず、中空構造または中実構造の区別を示すものではない。なお、塗装用のロボットでは、一般的に、いずれのバリエーションにおいても手首部WUの内部にホースやチューブ、ケーブル等を配索可能な中空構造が採用されるケースが多い。
【0087】
図6Aに示した手首部WUは、
図1を用いて既に説明したように、いわゆる「2ロールホローリスト」である。
図6Aに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5に対して傾いて交差する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第7軸A7まわりに回転する。なお、
図1を用いて既に説明したP点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0088】
図6Bに示した手首部WUは、いわゆる「レンマリスト」である。
図6Bに示すように、手首部WUは、第2アッパーアーム14の延伸向きと垂直な第5軸A5まわりに旋回するとともに、第5軸A5と直交する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに回転する。なお、P点Pは、第5軸A5と、シンボル化した第2アッパーアーム14との交点となる。
【0089】
図6Cに示した手首部WUは、いわゆる「インラインリスト」である。
図6Cに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5と直交する第6軸A6まわりに旋回する。また、手首部WUは、第6軸A6と直交する第7軸A7まわりに回転する。なお、P点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0090】
図6Dに示した手首部WUは、いわゆる「3ロールホローリスト」である。
図6Dに示すように、手首部WUは、シンボル化した第2アッパーアーム14と重なる第5軸A5まわりに回転するとともに、第5軸A5に対して傾いて交差する第6軸A6まわりに回転する。また、手首部WUは、第5軸A5および第6軸A6に対して傾いて交差する第7軸A7まわりに回転する。つまり、第5軸A5、第6軸A6および第7軸A7の延長線は、三角形状を形成する。なお、P点Pは、第5軸A5と、第6軸A6との交点となる。
【0091】
このように、
図1に示した手首部WUの代わりに、
図6B、
図6Cおよび
図6Dに示した手首部WUを用いることとしてもよい。また、3軸構成であることを条件として
図6A~
図6Dに示した軸構成以外の機構を手首部WUとして用いることとしてもよい。
【0092】
次に、塗装システム1の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、塗装システム1の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、塗装システム1は、塗装ブース200内に、搬送装置210と、塗装ロボット10とを備える。また、塗装システム1は、コントローラ100を備える。なお、搬送装置210および塗装ロボット10は、コントローラ100に接続されている。
【0093】
まず、塗装ロボット10については
図1等を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。搬送装置210は、
図4等を用いて既に説明したように、ワーク500(
図4参照)を所定の搬送向きに搬送するコンベアなどの装置である。なお、搬送装置210は、ワーク500の位置を検出するセンサなどの検出装置(図示せず)を有しており、ワーク500が通過したタイミングなどをコントローラ100へ通知する。また、搬送装置210は一定速度でワーク500を搬送するものとする。
【0094】
コントローラ100は、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、タイミング取得部111と、動作制御部112とを備える。記憶部120は、教示情報121を記憶する。なお、
図7には、説明を簡略化するために、1台のコントローラ100を示したが、搬送装置210と、それぞれの塗装ロボット10とを別々のコントローラ100に接続することとしてもよい。このように、複数台のコントローラ100を用いる場合には、各コントローラ100を束ねる上位のコントローラ100を設けることとしてもよい。
【0095】
ここで、コントローラ100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0096】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部110のタイミング取得部111および動作制御部112として機能する。
【0097】
また、タイミング取得部111および動作制御部112の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0098】
また、記憶部120は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報121を記憶することができる。なお、コントローラ100は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、コントローラ100を複数台の相互に通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0099】
制御部110は、搬送装置210から、ワーク500(
図4参照)を搬送装置210の可動部分に固定する台座などの治具の位置情報(パルス信号)や、各装置を排他的に動作させるためのインターロック信号を取得しつつ、各塗装ロボット10の動作制御を行う。なお、コントローラ100が複数台で構成される場合には、制御部110は、コントローラ100間の同期をとる処理を併せて行う。
【0100】
タイミング取得部111は、上記した位置情報やインターロック信号を搬送装置210から取得する。そして、タイミング取得部111は、取得した位置情報やインターロック信号に応じて各ロボットの動作タイミングを決定し、決定した動作タイミングを動作制御部112へ通知する。たとえば、タイミング取得部111は、ワーク500(
図4参照)が塗装ブース200内の所定位置に達したタイミングを取得し、取得したタイミングに基づいて各塗装ロボット10を動作させるよう動作制御部112へ指示する。
【0101】
動作制御部112は、タイミング取得部111からの指示および教示情報121に基づいて各塗装ロボット10を動作させる。動作制御部112は、各塗装ロボット10の動力源であるアクチュエータ(図示せず)におけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどして各塗装ロボット10の動作精度を向上させる。
【0102】
教示情報121は、各塗装ロボット10へ動作を教示するティーチング段階で作成され、各塗装ロボット10の動作経路を規定する「ジョブ」を含んだ情報である。なお、塗装システム1では、上記したように、アーム構成が対称なロボットを用いたり、搬送装置210(
図4参照)を挟んだ対称な位置に各ロボットを配置したりしている。したがって、一方の塗装ロボット10の教示データに基づいて他方の塗装ロボット10の教示データを生成することが容易となる。
【0103】
たとえば、
図4においてワーク500の右側に対して作業する塗装ロボット10Rの教示データは、一部の変更、または、教示データに含まれる教示位置の座標変換でワーク500の左側に対して作業する塗装ロボット10Lの教示データへ変換可能である。したがって、塗装システム1によれば、かかる教示データを含んだ教示情報121の生成の手間とコストとを抑制することができる。
【0104】
次に、塗装システム1における塗装ロボット10の動作手順について
図8を用いて説明する。
図8は、塗装ロボット10の動作手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、ワーク500(
図4参照)が上流側から近づいてくると、塗装ロボット10(
図1参照)は、アッパーアームUAを伸ばした姿勢でワーク500へアプローチする(ステップS101)。ここで、アプローチとは、ワーク500に干渉しない程度にアッパーアームUAをワーク500側へ向けることを指す。
【0105】
次に、さらにワーク500が近づいてきたならば、塗装ロボット10は、アッパーアームUAを畳んだ姿勢へ姿勢を変化させる(ステップS102)。ここで、アッパーアームUAを畳んだ姿勢とは、ワーク500のドア510と干渉しない程度に、第1アッパーアーム13に対して第2アッパーアーム14を屈曲させた姿勢を指す。たとえば、第1アッパーアーム13の先端がドア510の上方にある状態で第2アッパーアーム14を下方に旋回させることで手首部WUをドア510の内側に位置付けることができる。
【0106】
そして、塗装システム1は、塗装開始タイミングであるか否かを判定し(ステップS103)、塗装開始タイミングであると判定した場合には(ステップS103,Yes)、第4軸A4まわりの回転を固定して塗装作業を実行する(ステップS104)。
【0107】
このように、アッパーアームUAを畳んだ姿勢で第4軸A4を固定することで、ワーク500への接近性を高めつつ、ワーク500との不慮の干渉を回避することができる。なお、ステップS103において塗装開始タイミングではないと判定された場合には(ステップS103,No)、ステップS103の処理を繰り返す。
【0108】
次に、塗装システム1は、塗装作業が終了したか否かを判定し(ステップS105)、終了したと判定した場合には(ステップS105,Yes)、第4軸A4の固定を解除するとともに(ステップS106)、塗装ロボット10をワーク500から退避させ(ステップS107)、処理を終了する。なお、ステップS105において終了していないと判定された場合には(ステップS105,No)、ステップS105の処理を繰り返す。
【0109】
なお、
図8では、塗装作業中には第4軸A4を常に固定する場合を示したが、塗装作業中であっても第4軸A4を意図的に動作させることとしてもよい。たとえば、アッパーアームUAを畳んだ姿勢で第4軸A4を固定して塗装作業を開始し、塗装作業中にそのままの姿勢では遠方にアクセスしにくい場合があったとする。この場合には、第4軸A4の固定を解除してアッパーアームUAを伸ばす向きに第4軸A4を動作させることとしてもよい。また、近方にアクセスしにくい場合には、アッパーアームUAをさらに畳む向きに第4軸A4を動作させることとしてもよい。つまり、塗装作業中であっても、冗長軸をもつ7軸のロボットとして塗装ロボット10を動作させることとしてもよい。
【0110】
上述してきたように、実施形態の一態様に係る塗装ロボット10は、基台10bと、旋回ベース11と、ロアアーム12と、アッパーアームUAと、手首部WUとを備える。基台10bは、設置面ISに固定される。旋回ベース11は、基台10bの上面側に基端側が支持され、鉛直向きに沿う第1軸A1まわりに旋回する。ロアアーム12は、旋回ベース11に基端側が支持され、第1軸A1と垂直な第2軸A2まわりに旋回する。アッパーアームUAは、ロアアーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A2と平行な第3軸A3まわりに旋回する。
【0111】
手首部WUは、アッパーアームUAの先端側に基端側が支持され、先端側にエンドエフェクタEEを取り付け可能な3軸構成である。アッパーアームUAは、基端側の第1アッパーアーム13と、先端側の第2アッパーアーム14とを備える。第2アッパーアーム14は、ロアアーム12によって支持される側面である内側面で第1アッパーアーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A3と平行な第4軸A4まわりに旋回する。第1アッパーアーム13は、エンドエフェクタEE用のポンプPUを内側面側に備える。
【0112】
このように、塗装ロボット10は、アッパーアームUAを2アーム構成とし、アッパーアームUAに冗長軸である第4軸A4を設けることでアッパーアームUAの屈伸動作を可能とした。そして、第1アッパーアーム13がロアアーム12によって支持される側面である内側面に第2アッパーアーム14を設けることで、第1アッパーアーム13の内側面側に生じた空間にエンドエフェクタEE用のポンプPUを設けることとした。したがって、ワークとの干渉を回避可能な有効動作範囲を拡張することができ、ワークへの接近性を向上させることが可能となる。また、ポンプPUとエンドエフェクタEEとの距離を短くすることができ、塗料ロスの削減や、塗装品質の向上を図ることができる。
【0113】
また、実施形態の一態様に係る塗装システム1は、塗装ブース200と、塗装ロボット10とを備える。塗装ロボット10は、ワーク500の搬送向きについてワーク500を挟むように塗装ブース200に少なくとも一対が配置される。一対の塗装ロボット10は、搬送向きに沿う搬送中心面P1に対してお互いに軸構成が対称であり、第1軸A1と搬送中心面P1との距離がお互いに等しい。
【0114】
このように、軸構成が対称な塗装ロボット10を搬送中心面P1についてワーク500を挟んで等距離に配置することで、教示データの再利用が可能となり、教示作業の効率化を図ることができる。また、塗装ロボット10をワーク500の近くに配置することができるので、塗装ブースの小型化に寄与することが可能となる。
【0115】
なお、上述した実施形態では、塗装ロボット10が1つの冗長軸を有する7軸ロボットである場合を例示したが、複数の冗長軸を有する8軸以上のロボットとすることとしてもよい。
【0116】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 塗装システム
10 塗装ロボット
10b 基台
10c 補助部材
11 旋回ベース
12 ロアアーム
13 第1アッパーアーム
14 第2アッパーアーム
15 第5アーム
16 第6アーム
17 第7アーム
18 線条体
18a 分岐線条体
18d 分岐部
19 支持部
100 コントローラ
110 制御部
111 タイミング取得部
112 動作制御部
120 記憶部
121 教示情報
200 塗装ブース
201 床面
202 壁面
203 天面
210 搬送装置
500 ワーク
510 ドア
520 テールゲート
A1 第1軸
A2 第2軸
A3 第3軸
A4 第4軸
A5 第5軸
A6 第6軸
A7 第7軸
AP ポンプ軸
CA 回転式アクチュエータ
CV カバ
EE エンドエフェクタ
EL 電空機器
IS 設置面
P P点
PU ポンプ
UA アッパーアーム
WU 手首部
P1 搬送中心面
【要約】
【課題】ワークへの接近性を向上させること。
【解決手段】塗装ロボットは、基台と、旋回ベースと、ロアアームと、アッパーアームと、手首部とを備える。アッパーアームは、基端側の第1アッパーアームと、先端側の第2アッパーアームとを備える。第2アッパーアームは、ロアアームによって支持される側面である内側面で第1アッパーアームの先端側に基端側が支持され、第3軸と平行な第4軸まわりに旋回する。第1アッパーアームは、エンドエフェクタ用のポンプを内側面側に備える。
【選択図】
図1