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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/153 20060101AFI20230426BHJP
   F25B 6/02 20060101ALI20230426BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20230426BHJP
   F25B 41/42 20210101ALI20230426BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20230426BHJP
【FI】
F24F3/153
F25B6/02 Z
F25B29/00 411E
F25B41/42
F24F11/65
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019027051
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020133993
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596099963
【氏名又は名称】株式会社ニットー冷熱製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102680
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 忠則
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩一郎
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-517243(JP,A)
【文献】実開昭60-191851(JP,U)
【文献】実開昭57-120938(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/153
F25B 6/02
F25B 29/00
F25B 41/42
F24F 11/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流れを生成する起風器と、
冷媒を圧縮して昇圧する圧縮器と、
該圧縮器によって昇圧された冷媒を外気と熱交換させて凝縮する凝縮器と、
該凝縮器を通った高圧冷媒を減圧する第一の減圧器と
流入した冷媒を用いて通過する空気を冷却する冷却器と、
該冷却器の空気下流に配置され、該圧縮器によって昇圧された高圧冷媒を用いて通過する空気を加熱する加湿用加熱器と、
該加湿用加熱器を通った高圧冷媒を減圧する第二の減圧器と、
該加湿用加熱器の空気下流に配置され、通過する空気を加湿する加湿器と、
該加湿器の空気下流に配置され、該圧縮器によって昇圧された高圧冷媒を用いて通過する空気を加熱する加熱器と、
該加熱器を通った高圧冷媒を減圧する第三の減圧器と、
該圧縮器と該凝縮器との間に設けられ、該凝縮器への冷媒流量を制御する第一の制御弁と、
該圧縮器と該加湿用加熱器との間に設けられ、該加湿用加熱器への冷媒流量を制御する第二の制御弁と、
該圧縮器と該加熱器との間に設けられ、該加熱器への冷媒流量を制御する第三の制御弁と、
該加湿器に供給する水量を制御する給水制御部と、
第一の制御弁、第二の制御弁、及び第三の制御弁における冷媒流量、並びに該給水制御部における給水量を制御する制御部と、
第一の減圧器の減圧側と、第二の減圧器の減圧側と、第三の減圧器の減圧側とを結合してそれぞれの減圧器を通った冷媒を合流させるとともに、合流した冷媒を該冷却器に流入させる冷媒合流部と、
を具備することを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
更に、前記加湿用加熱器と前記加湿器との間に配置され、通電により熱エネルギーを放出する補助加熱器を具備することを特徴する請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
更に、前記加熱器の空気下流に配置され、通電により熱エネルギーを放出する補助加熱器を具備することを特徴する請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
更に、通電により熱エネルギーを放出する補助加熱器を、前記加湿用加熱器と前記加湿器との間、並びに前記加熱器の空気下流で、選択的に若しくは両方に着脱自在にする補助加熱器装着部と、
該補助加熱器の着脱を検出する補助加熱器装着検出器と、
を具備するとともに、
前記制御部は、該補助加熱器装着検出器により補助加熱器が着けられていることが検出されているときと、検出されないときとで、第一の制御弁、第二の制御弁、及び第三の制御弁における冷媒流量、並びに前記給水制御部における給水量について異なる制御をする、
ことを特徴する請求項1に記載の空気調和装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトで広い湿度制御幅を有する空気調和装置に係る。
【0002】
詳しくは、室内空気を冷却器・加湿器・加熱器の順に通して空気を調和する空気調和装置であって、冷媒を、少なくとも圧縮から (1) 凝縮器を含む経路と、(2) 加湿用加熱器を含む経路と、(3) 加熱器を含む経路と、に分岐、これら径路ごとに設けられた減圧器を通し、低圧側で合流させたうえで冷却器に供給するように構成することで、広い温度・湿度制御幅をもたせるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0003】
空気調和装置において精密に温度・湿度調節をするには、特許文献1のような技術が開示されている。
特許文献1に開示された空調装置は、ファンにより空気の流れが冷却器、第1加熱器、加湿器、第2加熱器の順に通過するようにこれら冷却器等を配置する。そして、冷却器、第1加熱器、及び第2加熱器への冷媒流量、並びに加湿器への給水量を制御することで精度の高い空気調和ができるようになっている。第1加熱器による空気の加熱は、後続する加湿器で十分な加湿をするためのものである。
【0004】
この特許文献1に開示された装置について、冷媒の流路に着目する。第1加熱器から出た冷媒は、一旦吸熱のための熱交換を経て圧縮機に戻っている。一方、第2加熱器から出た冷媒は、圧縮機で昇圧されてから排熱のための熱交換を経た冷媒と合流した後に膨張弁に流入する。そして、この膨張弁の作用によって温度が降下した冷媒は、冷却器に供給されたうえで、再び前記圧縮機に戻っている。
確かにこの空気調和装置によれば、加湿器による加湿に先立ち、第1加熱器により加熱を行うので飽和水蒸気圧が高い温度において加湿でき、十分な加湿をすることが可能となる。また、前記第1および第2加熱器に凝縮器を用いたために圧縮機により発生したエネルギーの排熱を利用することができ、エネルギーの消費量を低下させることが可能となる。
なお、排熱のための熱交換には、冷却水を介することで、効率的な排熱を支援している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-208891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に係る発明によれば第1加熱器で冷媒温が低下する。これは冷却器を通過して冷却された室内空気によってもたらされたものである。仮に空気冷熱交換機を用いてこれを冷却すると、その温度が露点を切るため、熱交換器に結露が生じ、これを排出するためのドレン水排水機構を持たせなければならないことになる。特許文献1に係る空調装置が水冷熱交換器を用いているのは、ドレン水排水機構を避けるためであると思料される。
しかし、水冷熱交換器を採ったとしても機構の複雑化は避けられず、さらなるコンパクト化が求められることになる。
また、特許文献1に係る発明によれば第2加熱器から流出した冷媒と第1凝縮器から流出した冷媒とを合流させた後に膨張弁に流入するように配置構成されている。
しかし、この構成によると、第2加熱器の流出側冷媒圧力と第1凝縮器の流出側冷媒圧力との差があると、冷媒の逆流を招くことになる。冷媒の逆流が生じると、各部位は機能しなくなるので、これを避けるために、第2加熱器と第1凝縮器との設計に拘束条件を課す必要が生じ、設計の自由度を奪うことになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1. 課題を解決するための手段に係る一般的事項)
本願発明に係る装置は、いずれも上記課題の低減を図るものであり、その目的とするところは、
(1) 凝縮器まわりでのドレン水処理を放逐するとともに、
(2) 幅の広い湿度・温度制御を可能とする点にある。
【0008】
(2. 本願において用いる文言の定義)
課題を解決するための手段に言及するに先立ち、説明の便宜上、本願明細書、特許請求の範囲、図面において用いる文言の定義を示す。
【0009】
[空気上流]
空気調和装置が室内空気を受けてから調和済みの空気を排出するにあたり、空気塊が複数の部材を通過するところ、「空気上流」とは、特定の部材に着目した際にその部材を通過する空気塊がそれ以前に存在した位置若しくはその方向のことをいう。
【0010】
[空気下流]
空気調和装置が室内空気を受けてから調和済みの空気を排出するにあたり、空気塊が複数の部材を通過するところ、「空気下流」とは、特定の部材に着目した際にその部材を通過した空気塊がそれ以降に存在する位置若しくはその方向のことをいう。
【0011】
[冷媒上流]
冷媒が空気調和装置を構成する複数の部材を通過するところ、「冷媒上流」とは、特定の部材に着目した際にその部材を通過する冷媒塊が、それ以前に存在し、かつ圧縮器以降にある部材若しくはその方向のことをいう。
【0012】
[冷媒下流]
冷媒が空気調和装置を構成する複数の部材を通過するところ、「冷媒下流」とは、特定の部材に着目した際にその部材を通過した冷媒塊が、それ以降に存在し、かつ圧縮器前にある部材若しくはその方向のことをいう。
【0013】
[空気状態パス]
本空気調和装置には冷却器、加湿器など空気の温度・含有水蒸気量を変化させる部材があるが、「空気状態パス」とは、その各部材において空気の温度・含有水蒸気量の状態の変化の経路、ないし軌跡のことをいう。
【0014】
(3. 課題を解決するための手段の説明)
次に、課題を解決するための手段について説明する。本発明は、冷却・加湿・加熱をすることにより空気を調和する空気調和装置に係る。
【0015】
(3.1. 請求項1に記載の発明について)
請求項1に記載の発明は、起風器、圧縮器、凝縮器、第一の減圧器、冷却器、加湿用加熱器、第二の減圧器、加湿器、加熱器、第三の減圧器、第一の制御弁、第二の制御弁、第三の制御弁、給水制御部、制御部、並びに冷媒合流部を具備する。
【0016】
起風器は、空気の流れを生成し、後述する冷却器・加湿用加熱器・加湿器・加熱器の順に空気を通過させるように作用する。
【0017】
圧縮器は、冷媒ガスを圧縮・昇圧し、かつ冷媒ガスの温度を上昇させるように作用する。
【0018】
凝縮器は、上記圧縮器によって昇圧された冷媒を外気と熱交換させることにより冷媒ガスの熱エネルギーを低下させ、その結果として冷媒ガスの凝縮をするように作用する。ヒートサイクルの視点でいえば、室内からの熱エネルギーを外部に逃がすように作用する。
【0019】
第一の減圧器は、前記凝縮器による熱交換を経て内部エネルギーが低下した高圧冷媒を減圧するように作用する。この減圧は冷媒ガスを膨張させ、かつ温度を降下させるように作用する。
【0020】
冷却器は、冷媒を取り入れ、調和する空気と熱交換することによって、空気を冷却するように作用する。
【0021】
加湿用加熱器は、上記冷却器の空気下流に配置され、上記圧縮器によって昇圧された冷媒と熱交換することにより、通過する空気の温度を上昇させるように作用する。高い温度の空気は飽和蒸気圧が高く、換言すれば温度の高い空気には多くの水蒸気を含むことができるので、本加湿用加熱器は、後続配置される加湿器において多くの蒸気を含ませることができるように作用する。
【0022】
第二の減圧器は、高圧側を上記加湿用加熱器側に接続する。そして、上記加湿用加熱器を通って内部エネルギーが低下した高圧冷媒を減圧するように作用する。
【0023】
加湿器は、上記加湿用加熱器の空気下流に配置され、通過する空気を加湿するように作用する。
【0024】
加熱器は、該加湿器の空気下流に配置され、前記圧縮器によって昇圧された冷媒を用いて通過する空気の温度を上昇させるように作用する。
【0025】
第三の減圧器は、高圧側を上記加熱器側に接続し、上記加熱器を通って内部エネルギーが低下した高圧冷媒を減圧するように作用する。
【0026】
第一の制御弁は、上記圧縮器と上記凝縮器との間に設けられ、上記凝縮器への冷媒流量を制御するように作用する。
【0027】
第二の制御弁は、上記圧縮器と上記加湿用加熱器との間に設けられ、上記加湿用加熱器への冷媒流量を制御するように作用する。
【0028】
第三の制御弁は、上記圧縮器と上記加熱器との間に設けられ、上記加熱器への冷媒流量を制御するように作用する。
【0029】
給水制御部は、上記加湿器に供給する給水量を制御するように作用する。
【0030】
制御部は、第一の制御弁、第二の制御弁、及び第三の制御弁における冷媒流量、並びに上記給水制御部における給水量を制御する。
【0031】
冷媒合流部は、第一の減圧器の減圧側と、第二の減圧器の減圧側と、第三の減圧器の減圧側とを結合してそれぞれの減圧器を通った冷媒を合流させる。そして、合流した冷媒は上記冷却器に流入させるようになっている。
【0032】
(3.2. 請求項2に記載の発明について)
請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明特定事項に、補助加熱器が加わる。
補助加熱器は、前記加湿用加熱器と前記加湿器との間に配置され、通電により熱エネルギーを放出するように作用する。すなわち、補助加熱器を追加することによって加湿器に流入する空気の温度を更に高くすることができ、その結果として飽和水蒸気圧を高めることができるため、加湿器下流には、より高い湿度の空気を得ることができるように作用する。
【0033】
(3.3. 請求項3に記載の発明について)
請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明特定事項に、補助加熱器が加わる。
補助加熱器は、前記加熱器の空気下流に配置され、通電により熱エネルギーを放出するように作用する。請求項2に係る発明との相違点はその配置位置にある。この加熱器の空気下流位置において加熱することで、含有水蒸気量を維持したまま、空気調和装置が排出する調和空気の温度のみを更に上昇させるように作用する。
【0034】
(3.4. 請求項4に記載の発明について)
請求項4に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明特定事項に、補助加熱器装着部と補助加熱器装着検出器とが加わる。
即ち、補助加熱器装着部は、前記加湿用加熱器と前記加湿器との間、並びに前記加熱器の空気下流に選択的若しくは両方に、その位置で補助加熱器を着脱自在に設置することができるように作用する。補助加熱器が補助加熱器装着部に装着されると、通電により熱エネルギーを放出できるように作用する。
補助加熱器装着検出器は、該補助加熱器が設置可能な位置に存在するかどうかを検出するように作用する。
制御部は更に、該補助加熱器装着検出器により補助加熱器が着けられていることが検出されているときと、検出されないときとで、第一の制御弁、第二の制御弁、及び第三の制御弁における冷媒流量、並びに上記給水制御部における給水量を異なるように制御し、目標とする温度・湿度となる空気調和をするように作用する。
【発明の効果】
【0035】
(1. 請求項1に記載の発明の効果)
請求項1に記載の発明によれば、凝縮器まわりにおけるドレン水処理を不要にでき、装置全体の機構をより簡単なものとすることができるようになる。また、 幅の広い湿度・温度制御が可能となる。
【0036】
(2. 請求項2に記載の発明の効果)
請求項2に記載の発明によれば、補助加熱器を加湿器よりも空気上流に配置する。このため、加湿器に送り込まれる空気の温度を補助加熱器によって上昇させることができる。空気は温度が高いほど飽和水蒸気圧が高いことから、より多くの水を昇華させることができ、より潤湿な空気を生成することができるようになる。
【0037】
(3. 請求項3に記載の発明の効果)
請求項3に記載の発明によれば、補助加熱器が冷媒の循環系に影響ない空気下流付近の位置で空気を加熱する。これにより、本空気調和装置に流入する室内気によるものを除き、冷媒自体を昇温させる加熱が行われない。このため、暖房の空気上限温度の引き上げに寄与するとともに、除湿を行う作用をもつ冷却器での冷却効率を損なうことなく、より適切な湿度の空気を生成することができるようになる。
【0038】
(4. 請求項4に記載の発明の効果)
請求項4に記載の発明によれば、補助加熱器が着脱自在になっているとともに、補助加熱器装着検出器によっていずれの位置に補助加熱器が設置されたのかを把握できる。そしてこの補助加熱器の設置位置は、冷媒・空気に与える影響が異なり、空気調和装置全体としての制御に影響する。よって、同じ熱エネルギーを空気に与えるとしても、補助加熱器の設置位置によって目的とする制御の内容を異なるものとすることにより、適切な補助加熱器の制御をすることができる。この結果として、より幅広い範囲の空気調和制御をすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、第1の実施の形態に係る空気調和装置の構成図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係る空気調和装置運転による温度・含有水蒸気量遷移図である。
図3図3は、第2の実施の形態に係る空気調和装置の構成図である。
図4図4は、第3の実施の形態に係る空気調和装置の構成図である。
図5図5は、第4の実施の形態に係る空気調和装置の構成図である。
図6図6は、第2の実施の形態に係る空気調和装置運転による温度・含有水蒸気量遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本願発明に係る実施の形態については、以下の目次に従って説明する。
―――――― 目次 ――――――
(1. 図面の表記)
(2. 実施の形態について)
(2.1. 実施の形態の動作原理の概要について)
(2.2. 実施の形態に係る構成について)
(2.3. 第一の実施の形態に係る動作について)
(2.3.1. 冷房をする際の動作について)
(2.3.1.1. 冷房をする際の基本動作について)
(2.3.1.2. 冷房をする際の含有水蒸気量の制御性向上について)
(2.3.1.3. 冷房をする際の加湿について)
(2.3.2. 暖房をする際の動作について)
(2.3.2.1. 暖房をする際の基本動作について)
(2.3.2.2. 暖房をする際の含有水蒸気量の制御について)
(2.3.3. その他)
(3. 第二の実施の形態について)
(3.1. 第二の実施の形態の概要について)
(3.2. 第二の実施の形態に係る構成について)
(3.3. 第二の実施の形態に係る動作について)
(4. 第三の実施の形態について)
(4.1. 第三の実施の形態の概要について)
(4.2. 第三の実施の形態に係る構成について)
(4.3. 第三の実施の形態に係る動作について)
(4.4. その他)
(5. 第四の実施の形態について)
(5.1. 第四の実施の形態の概要について)
(5.2. 第四の実施の形態に係る構成について)
(5.3. 第四の実施の形態に係る動作について)
(6. その他)
【0041】
―――――― 本文 ――――――
(1. 図面の表記)
以下の説明で図面中の符号は、下2桁を除く先頭の数値が図面番号を表す表記を採り、可読性向上を図った。たとえば、「補助加熱器(331)」ならば図3に、「補助加熱器2(532)」ならば図5に、主として示されている。
【0042】
(2. 第一の実施の形態について)
次に本願発明に係る第一の実施の形態について説明する。
(2.1. 第一の実施の形態の動作原理の概要について)
本実施の形態は、幅の広い空気調和をすることができる空気調和装置に係る。この空気調和装置は、室内空気の温度を低下させる際(すなわち冷房時)にはヒートポンプとして機能させ、室内の熱エネルギーを外部に排出するように動作する。これに対し、室内空気の温度を上昇させる際(すなわち暖房時)には、湿度調整をするとともに、空気調和装置に供給した総電力エネルギーの多くを熱エネルギーに変換して室内空気温度を上昇させるように動作する。
【0043】
(2.2. 第一の実施の形態に係る構成について)
本実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は第一の実施の形態に係る構成図である。
【0044】
[圧縮器(101)]
圧縮器(101)は、冷媒を通し、冷媒ガスを圧縮するようになっている。すなわち機械的作用によって、冷媒を圧縮して冷媒ガスを昇圧し、かつ冷媒ガスの内部エネルギーを増加させるように作用する。
【0045】
圧縮器(101)は、たとえば電気エネルギーを用いてモータを回転させ、このときに生じた力によって冷媒ガスを圧縮することができる。また、既にエンジンなど機械的なエネルギーが発生する部材があれば、その機械的エネルギーの一部を利用するのでも構わない。
【0046】
今、仮に圧縮器が理想的に冷媒を断熱圧縮すると仮定する。圧縮器は冷媒ガスに力をかけてその体積を圧縮する。すなわち圧縮の際には冷媒ガスに対して機械的エネルギーを与えるために、機械的エネルギーを内部エネルギーとして冷媒ガスに移転したことになる。これにより圧縮器直後の冷媒下流では、冷媒ガスは圧力が高く冷媒ガスの温度も高くなる。
【0047】
[冷却器(102)]
冷却器(102)は、冷媒を取り入れ、調和する空気と熱交換することによって、通過する空気を冷却するように作用する。ここに流入する冷媒は、後述する冷媒合流部(119)より得られる。
【0048】
[加湿用加熱器(103)]
加湿用加熱器(103)は、上記冷却器(102)の空気下流に配置され、上記圧縮器(101)によって昇温した冷媒と熱交換させることにより、通過する空気の温度を上昇させるように作用する。そして、高い温度の空気の飽和水蒸気圧が高いことから、加湿用加熱器(103)は、後続配置される加湿器において多くの蒸気を含ませることができるように作用する。
【0049】
[加湿器(104)]
加湿器(104)は、上記加湿用加熱器の空気下流に配置され、通過する空気を加湿するように作用する。
なお、加湿は、圧電振動子によって霧化したり、蒸発膜を湿潤化したりすることによって行うことができる。もっとも、その方式は問わず、風量・目的に応じて適宜選択すればよい。
【0050】
[第1減圧器(105)]
第1減圧器(105)は、流入した高圧冷媒を減圧してこれを流出させる。第1減圧器は、高圧側の冷媒上流に後述する凝縮器(108)が、低圧側の冷媒下流に冷媒合流部(119)を介して前記冷却器(102)がそれぞれ位置するように接続されている。これにより凝縮器(108)を通過する冷媒の適正流量を確保するように作用する。減圧は冷媒ガスを膨張させることで実現する。具体的には、膨張弁やキャピラリー・チューブなどを用いればよい。一方、第1減圧器における減圧によって、流出した冷媒の温度は降下する。
【0051】
第1減圧器(105)として膨張弁を用いれば、キャピラリー・チューブよりも冷却器の温度に対応して精度の高い自動調整が可能である。しかし、制御部による制御弁の調整によってキャピラリー・チューブを採っても全体としての制御性を維持することができる。したがって、商品価格、制御精度など総合的な設計方針に対応して、いずれかを選択すればよい。このことは後述する第2減圧器(106)・第3減圧器(107)においても同様である。
【0052】
[第2減圧器(106)]
第2減圧器(106)も、流入した高圧冷媒を減圧してこれを流出させる。第2減圧器は、高圧側の冷媒上流に前記加湿用加熱器(103)が、低圧側の冷媒下流に冷媒合流部(119)を介して前記冷却器(102)が、それぞれ位置するように接続する。これにより前記加湿用加熱器(103)を通過した冷媒の圧力を高圧に維持するように作用する。減圧器における減圧によって、流出した冷媒の温度は降下する。
【0053】
第2減圧器(106)における減圧も、第1減圧器の場合と同じく、冷媒ガスを膨張させることで実現でき、膨張弁やキャピラリー・チューブなどを用いればよい。
【0054】
[第3減圧器(107)]
第3減圧器(107)も、流入した高圧冷媒を減圧してこれを流出させる。第3減圧器は、高圧側の冷媒上流に加熱器(109)が、低圧側の冷媒下流に冷媒合流部(119)を介して冷却器(102)がそれぞれ位置するように接続する。これにより前記加熱器(109)を通過した冷媒の圧力を高圧に維持するように作用する。第1減圧器(105)・第2減圧器(106)と同じく減圧は冷媒ガスを膨張させることで実現でき、膨張弁やキャピラリー・チューブなどを用いればよい。
【0055】
[凝縮器(108)]
凝縮器は、上記圧縮器(101)によって昇温した冷媒のうち、後述する冷却器に供給する冷媒の内部エネルギーを外気に解放する。また、その結果として冷媒ガスを凝縮させることになる。ヒートサイクルの視点でいえば、室内からの熱、並びに圧縮器が冷媒ガスに移転したエネルギーの一部もしくは全部を外部に逃がすように作用する。
後述するが、本凝縮器は、主として室温を降下させる運転モードの際に主たる作用を呈する。
【0056】
[加熱器(109)]
加熱器(109)は、上記加湿器(104)の空気下流に配置され、該圧縮器によって昇温した冷媒を用いて通過する空気を加熱して、その温度を上昇させるように作用する。
【0057】
[凝縮器制御弁(111)]
凝縮器制御弁(111)は、凝縮器(108)に流入する冷媒の流量を調整する弁である。凝縮器制御弁(111)は、例えばモータやソレノイドを機構要素に用い、後述する制御部(135)からの制御をうけて冷媒流量を調整できるようになっている。
【0058】
[起風器(112)]
起風器(112)は、空気の流れを生成し、少なくとも冷却器(102)・加湿用加熱器(103)・加湿器(104)・加熱器(109)の順に空気を通過させるように作用する。勿論、これらの間に他の熱交換する要素が含まれていても構わない。
【0059】
[加熱器制御弁(113)]
加熱器制御弁(113)は、加熱器(109)に流入する冷媒の流量を調整する弁である。加熱器制御弁(113)は、例えばモータやソレノイドを機構要素に用い、後述する制御部(135)からの制御をうけて冷媒流量を調整できるようになっている。
【0060】
[加湿用加熱器制御弁(114)]
加湿用加熱器制御弁(114)は、加湿用加熱器(103)に流入する冷媒の流量を調整する弁である。加湿用加熱器制御弁(114)は、例えばモータやソレノイドを機構要素に用い、制御部(135)からの制御をうけて冷媒流量を調整できるようになっている。
【0061】
[給水制御部(115)]
給水制御部(115)は、加湿器(104)に供給する水の流量を調整する。給水制御部(115)には、例えばモータやソレノイドを機構要素に用いた給水制御弁を実装することができる。これにより、制御部(135)からの制御をうけて給水速度を調整できるようになる。勿論、加湿器(104)に供給する水の流量を調整できればよいので、単に流量制御可能なポンプを用いるのでも構わない。この場合、連続的に流量の微調整が可能となる利点がある。
【0062】
もっとも、給水制御部(115)は水の流量を調整するのみであって、この調整をすることによって直ちに空気の含有水蒸気量乃至混合比(単位体積あたりの水蒸気質量比)を調整できるわけではない。例えば、給水が開始されてもこれが昇華するまでに遅延時間があったり、給水を中止したとしても加湿器に残った水分によって通過する空気の加湿が続いたりすることがあるからである。したがって、空気の含有水蒸気量は、前記加湿用加熱器(103)によって昇温した空気の温度、加湿器流入直前の空気塊の混合比、その他の要素を総合的に調整することによってその制御をすることになる。
【0063】
[アキュムレータ(116)]
本実施の形態にかかる空気調和装置において、冷媒は、圧縮器(101)より流出し、各部材を一巡して再び圧縮器(101)に戻る。もっとも圧縮器は気相の冷媒の体積を圧縮する部材であるため、流入する冷媒が液相であったときには故障する原因にもなる恐れがある。
【0064】
アキュムレータ(116)はかかる不具合の発生を防止するための部材であって、流入した冷媒が気相・液相にかかわらず、一旦冷媒を受け、気相の冷媒のみを冷媒下流にある圧縮器に送り込むように作用する。
【0065】
[ファン1(117)]
ファン1は、前記起風器(112)の一部であって、前記冷却器・加湿用加熱機・加湿器・加熱機を含む一連の部材配列中を空気塊が流れるようにするための回転扇である。もっとも、前記起風器によって起風できればよく、回転扇に拘泥する必要はない。
【0066】
[ファン2(118)]
ファン2は、凝縮器(108)近傍に設置され、凝縮器内部を流れる冷媒と外気との間での熱交換を促進するように作用する。ファン2は本空気調和装置において必須ではないものの、これを設けることによって必要以上に大きな熱交換部材を使用しなくても済ませることができる。
【0067】
[冷媒合流部(119)]
冷媒合流部(119)は、前記の第1減圧器(105)、第2減圧器(106)、第3減圧器(107)のそれぞれ低圧側を束ねるように接続する。これにより、凝縮器を通った冷媒と、加湿用加熱器を通った冷媒と、加熱器を通った冷媒とを、混合するようになっている。そして、冷媒合流部(119)の冷媒下流には冷却器(102)を接続する。これにより、冷媒合流部(119)を通った冷媒は全て冷却器を通るようになる。また、低圧側で束ねられているために、いずれかの減圧器の冷媒下流の圧力が高くても他の減圧器の上流に冷媒が逆流することがなく、逆止弁は不要となる。
【0068】
冷媒合流部(119)は、単に第1乃至第3減圧器の低圧側流路を束ねるだけの部材であればよく、いわゆるマニホールドを実装すれば足りる。
【0069】
[制御部(135)]
制御部(135)は、加熱器制御弁(113)、加湿用加熱器制御弁(114)、給水制御部(115)、凝縮器制御弁(111)、起風器(112)、並びに図示しない温度センサー・湿度センサーに接続し、本空気調和装置から流出する空気が求められる空気調和状態になるように統合して制御する。
具体的には、少なくとも、加熱器制御弁(113)、加湿用加熱器制御弁(114)、凝縮器制御弁(111)の開放・閉止によって加熱器・加湿用加熱器・凝縮器による熱交換量を、給水制御部(115)の開放・閉止によって加湿器で気化させる水分の供給の有無を、並びに、起風器(112)への電力制御によって起風・止風を、それぞれ制御する。
【0070】
制御部における各制御要素の目標値は、ユーザーが求める調和目標の設定、並びに後述する温度センサー・湿度センサーから得られる状態値から決定する。
【0071】
[温度センサー・湿度センサー]
図示しない温度センサー・湿度センサーは、現在の空気の温度・湿度を把握するようになっている。
【0072】
温度センサー・湿度センサーは、たとえば加熱器(109)の空気下流に設置し、制御部(135)に接続する。これにより、その検出結果を制御部(135)が把握できるようになっている。そして、制御部(135)は、把握した空気状態とユーザーが求める調和目標との差分から、各制御要素を調整できるようになる。
【0073】
(2.3. 第一の実施の形態に係る動作について)
次に第一の実施の形態に係る動作について図1及び図2に基づいて説明する。
(2.3.1. 冷房をする際の動作について)
(2.3.1.1. 冷房をする際の基本動作について)
まず、第一の実施の形態に係る空気調和装置が冷房をする際の基本動作について、冷媒の流れに沿って説明する。
この空気調和装置が冷房をする際には、制御部(135)からの指示により、凝縮器制御弁(111)を開放し、圧縮器(101)から高温・高圧の冷媒を凝縮器(108)に流入させる。凝縮器(108)では、外気と熱交換を行うことで外気温に向かって冷媒温度を低下させる。
【0074】
凝縮器(108)を通過した冷媒は、第1減圧器(105)に流入する。第1減圧器では流入した高圧の冷媒を減圧することにより、その温度を降下させる。
【0075】
温度が降下した冷媒は次に冷媒合流部(119)を介して冷却器(102)に流入する。冷却器(102)には室内空気が触れており、ここで熱交換が行われ室内空気の冷却が行われる。この際、冷却前の空気にかかる水蒸気圧が冷却された空気の飽和水蒸気圧より高い場合には結露して、除湿作用が生じることになる。冷却器(102)に凝結した水分はドレンなどによって除去すればよい。
【0076】
冷却器(102)を通過した冷媒はアキュムレータを介して圧縮器(101)に戻る。以上の循環によって、本空気調和装置は、室内空気を降下させることができ、かつ除湿することができる。
【0077】
(2.3.1.2. 冷房をする際の含有水蒸気量の制御性向上について)
ところで、冷却器において冷却が行われたとしても、これを通過した後の空気、特に加湿器流入直前の空気の含有水蒸気量が、その温度の飽和水蒸気量にまで至っていない場合には、空気下流に位置する加湿器に残留した水分が影響することがある。この点を、図2を用いて説明する。図2は縦軸を含有水蒸気量、横軸を温度として、本実施の形態にかかる空気調和装置内で空気塊の含有水蒸気量の状態を示す含有水蒸気量状態説明図である。
【0078】
空気調和装置に流入した空気塊(221)は起風器(112)の作用によって冷却器(102)を通って冷却される(222)。
【0079】
冷却されるにあたって結露がないうちは、除湿はされない。仮に加湿器(104)に残留水分があると、この状態の空気塊が加湿器を通る際、含有水蒸気量が飽和水蒸気量に至らない限り若干の温度降下に加え、加湿がされる(223)。ここで温度降下が起こるのは、残留水分が液相から気相に昇華する際、空気中の熱を奪い、潜熱に変化することに起因する。
【0080】
しかし、このように、含有水蒸気量が上昇すると、空気調和装置としての湿度制御幅を狭めてしまうことになる。そこで、本実施の形態に係る空気調和装置においては、更に深い冷却を行うものとし(224)、上昇する含有水蒸気量の低減を図っている(226)。
【0081】
冷却器からみた冷媒上流に外気から熱エネルギーを取得する部位を放逐したことが、ここに寄与している。すなわち、加湿用加熱器(103)の冷媒下流と加熱器(109)の冷媒下流には外気から熱エネルギーを取得する部位を設けず、第2減圧器(106)・第3減圧器(107)を介することで冷媒温度を下げ、深い冷却ができるようになっているのである。
【0082】
(2.3.1.3. 冷房をする際の加湿について)
前記のとおり冷房を行うことができるが、深い冷却を行うと、求める湿度より低くなってしまうことがある。このようなときに、加湿を行うことによって得られる冷却後の空気の含有水蒸気量を増やすことができる。具体的には、加湿用加熱器制御弁(114)を開放し、また給水制御部(115)を開放することで含有水蒸気量を増やせばよい。このようにすることで、目的とする湿度にすることができるようになる。
【0083】
また、低湿度を求めて深い冷却を行うと、温度が求める温度より低くなってしまうことがある。このようなときには、空気下流にある加熱器(109)の作用によって求める温度まで上昇させることができる。具体的には、加熱器制御弁(113)を開放する。
【0084】
各制御弁は制御部(135)からの指示によってその開放程度を制御する。この際、加熱器より空気下流にある図示しない温度センサー・湿度センサーで得た各値が求める温度・気温になるように制御をすればよい。
【0085】
なお、加湿をするにあたり、空気調和装置の排気に芳香剤などを含ませることができる。更に、フィルター等を除菌するために、除菌剤等を含ませることもできる。この際、加湿のために放出される時間あたりの水量は現在の湿度、過去の制御履歴などから予測できることから、添加剤の時間あたりの放出量を制御することができる。具体的には、予め加湿するための水に混合する添加剤の濃度を制御部からユーザーに示唆できるようにしてもよいし、添加剤タンクを用意してここから適量を加湿水に混合させるようにしてもよい。
【0086】
(2.3.2. 暖房をする際の動作について)
(2.3.2.1. 暖房をする際の基本動作について)
次に、本実施の形態に係る空気調和装置が暖房をする際の基本動作について、冷媒の流れに沿って説明する。
【0087】
この空気調和装置が暖房をする際には、主として加熱器制御弁(113)を開放するとともに、凝縮器制御弁(111)を閉止する。これにより、圧縮器(101)から流出した高温・高圧の冷媒は主に加熱器(109)に流入する。この冷媒が加熱器を通過すると、加熱器の作用によって温度の低い室内空気と熱交換が生じ、室温を上昇させる一方、冷媒温度を降下させる。
【0088】
加熱器から流出した冷媒は、第3減圧器(107)に流入する。第3減圧器(107)では冷媒の圧力を降下させるとともに冷媒温度を降下させる。
【0089】
温度が降下した冷媒は冷却器(102)に流入する。冷却器の作用により冷媒は室内空気と熱交換し、アキュムレータ(116)を介して圧縮器に戻る。
【0090】
なお、暖房運転の場合には、冷房運転の場合と異なり、この冷媒循環のなかでいわゆる外気から熱エネルギーを取得するための熱交換がない。それでも暖房ができるメカニズムは以下のとおり説明できる。
【0091】
圧縮器(101)は冷媒を概ね断熱圧縮する際、機械的エネルギーを冷媒の内部エネルギーに変換して移す。上昇する内部エネルギーは、理想的には冷媒圧力を冷媒体積変化量で積分した量に相当する。すなわち、本実施の形態にかかる空気調和機は、圧縮器による機械的エネルギーを内部エネルギーに変換、これを熱エネルギーとして熱交換により室温上昇を実現しているのである。
【0092】
(2.3.2.2. 暖房をする際の含有水蒸気量の制御について)
本実施の形態に係る空気調和装置で暖房運転をする場合には前述の動作を基調とするが、加熱器(109)を通って内部エネルギーの下がった冷媒が冷却器(302)に流入する。また、室内空気がまず冷却器(102)を通過する。このため、除湿作用が生じることがある。加熱器(109)を通過した冷媒の通過量を冷却器からバイパスするルートはない。このため、給水制御部(115)の給水量や加湿器(104)の状態によっては過除湿になることがある。この場合、加湿が求められることになる。
【0093】
また、そもそも空気調和前の室内空気が乾燥していてもユーザーが加湿を求めることもある。このようなときには、加湿用加熱器(103)を用いて含有水蒸気量の増加を図る必要がある。
【0094】
この場合、冷却器の空気下流に位置する加湿用加熱器に高圧高温の冷媒を通し、空気の飽和水蒸気量が多くなる温度に上昇させ、さらに空気下流に位置する加湿器に給水して含有水蒸気量を増加させるように制御すればよい。具体的には、加湿用加熱器制御弁と給水制御部とを開放する。
【0095】
(2.3.3. その他)
ところで、空気調和をする目標値がユーザーの設定によって一意に決まったとしても、運転前の空気の状態からその目標値に至る制御は一意には定まらない。たとえば、ひとつの温度・湿度目標に調和させる場合、軽く冷却をしてあまり除湿しないで空気排出することを選択しても、深い冷却により強い除湿をした後に空気下流の加湿器で加湿して空気排出することを選択しても、同じ温度・同じ湿度目標に到達する。
【0096】
よって、どのような空気状態パスを採るかは単に設計事項であるといえる。もっとも、これをユーザーが選択できるように操作パネルを設け、その設定に従って制御部(135)による制御を変更し、任意の空気状態パスを選択できるようにしてもよい。
【0097】
このように、ユーザーによる空気状態パスの選択を許せば、たとえば給水中に芳香剤・消臭剤・殺菌剤を含ませている場合に、好みの拡散状態を作出することができるようになる。
【0098】
(3. 第二の実施の形態について)
次に本願発明に係る他の実施の形態について、図3並びに図6を用いて説明する。
【0099】
(3.1. 第二の実施の形態の概要について)
本実施の形態に係る空気調和装置は、第一の実施の形態と概ね同様の構成を採るものの、加湿用加熱器と加湿器との間に補助加熱器を設ける点で異なる。
【0100】
(3.2. 第二の実施の形態に係る構成について)
本実施の形態においても、圧縮器(301)、冷却器(302)、加湿用加熱器(303)、加湿器(304)、第1減圧器(305)、第1減圧器(305)、第2減圧器(306)、第3減圧器(307)、凝縮器(308)、加熱器(309)、凝縮器制御弁(311)、起風器(312)、加熱器制御弁(313)、 加湿用加熱器制御弁(314)、 給水制御部(315)、 アキュムレータ(316)、 ファン1(317)、 ファン2(318)、制御部(335)、冷媒合流部(319)、温度センサー・湿度センサーを具備している。これらは第一の実施の形態における、圧縮器(101)、冷却器(102)、加湿用加熱器(103)、加湿器(104)、第1減圧器(105)、第1減圧器(105)、第2減圧器(106)、第3減圧器(107)、凝縮器(108)、加熱器(109)、凝縮器制御弁(111)、起風器(112)、加熱器制御弁(113)、 加湿用加熱器制御弁(114)、 給水制御部(115)、 アキュムレータ(116)、 ファン1(117)、 ファン2(118)、制御部(135)、冷媒合流部(119)、温度センサー・湿度センサーと、ぞれぞれの機能は概ね同一であるので説明を省略する。なお、制御部における制御内容については後に追記する。
【0101】
本実施の形態では、上記に加え、補助加熱器を設ける。
【0102】
[補助加熱器(331)]
補助加熱器(331)は、特に乾燥低温である室内空気を加湿暖房をする際に、有利な構成部材となる。すなわち、補助加熱器(331)は、加湿用加熱器(303)の空気下流かつ加湿器(304)の空気上流に配置し、飽和水蒸気量が大きい高温の空気にするために加湿用加熱器よりも空気下流の位置で空気を昇温するようになっている。また、補助加熱器(331)で空気に対して供給するエネルギーは、前記冷媒に圧縮器(301)が加えたエネルギーとは異なるエネルギーを用いる。具体的には、電熱線・セラミックヒーターなど、電気エネルギーを用いるのが制御容易性の点、並びにエネルギー効率の点で望ましい。
【0103】
ここで、補助加熱器(331)を、加湿用加熱器の空気上流ではなく、空気下流の位置に配設した理由を説明する。
【0104】
冷媒によって空気の温度を上昇させて暖気を得る場合には、熱交換器を介して触れる空気と冷媒との温度差が交換エネルギー量を決めることになる。そして圧縮器・凝縮器など機械的要素によって冷媒温度の上昇・降下を作り出す以上、制御できる温度上限・温度下限は限界がある。
【0105】
一方、電気的エネルギーから直接変換した熱エネルギーによって暖気する場合には、単位時間あたりの電気的エネルギー量、即ち熱交換器に供給する電力が暖気するエネルギーとなる。電気的エネルギーを直接変換するのであれば、供給したエネルギーがそのまま熱として昇温に寄与することになる。
【0106】
仮に補助加熱器が加湿用加熱器より空気上流にあるとすると加湿用加熱器に流入する空気の温度が高くなるため、冷媒の温度との差が小さくなる。そうすると、温度を上昇させるために冷媒~空気間で交換できる熱エネルギー量は小さくなる。
【0107】
これに対し、補助加熱器が加湿用加熱器より空気下流に配置されている本実施の形態にかかる空気調和装置の構成によるならば、加湿用加熱器に流入する空気の温度が低く、冷媒の温度との差が大きくなる。そうすると、温度を上昇させるために冷媒~空気間で交換できる熱エネルギー量は大きくなる。その結果、冷媒による加熱が効率的にできるようになる。そして、更にその下流に配置されている加湿器に対して目的とする温度の空気を供給することが可能になる。
【0108】
(3.3. 第二の実施の形態に係る動作について)
本実施の形態に係る空気調和装置の動作についても、第一の実施の形態の動作と概ね同一であるので、全体の動作説明は省略する。ここでは空気が冷却器から加湿器に至るまでの動作を中心に、図6を用いて説明する。
【0109】
本実施の形態に係る空気調和装置でも、冷却器(302)から室内空気(被調和空気)を取り込む。このとき本空気調和装置を通過する空気塊(621)は、冷却器の作用によってその温度が降下する(622)。そして、飽和水蒸気量を超えて水分を含有できないので、一定の温度(627)以下になると結露が生じ、更に温度を下降させることになる。結露は図示しないドレンを通して外部に排出することになる。これによって除湿作用を生じることになる。
【0110】
加湿用加熱器制御弁(314)が開放されていれば、加湿用加熱器(303)中を高温高圧冷媒が通り、ここを通過する空気が加熱される(630-1)。そして、更に補助加熱器を通って空気塊は昇温し(630-2)、多くの水蒸気を含むことができる温度になる。この昇温した空気は加湿器を通り、顕熱を潜熱に変えつつ、含有水蒸気量が増加する(632)。
【0111】
制御部(135)は上記のように各制御弁、補助加熱器へのエネルギー供給を制御して、必要な水蒸気量に空気を調和することができる。
【0112】
ところで、図6における加湿時の温度・含有水蒸気量の状態変化をみると分かるとおり、空気温度が高いほど飽和水蒸気量は多くなる。このため多くの水蒸気を含有させたいとき、換言すれば湿度を高くしたいときには、加湿用加熱器(303)・補助加熱器(331)から空気に加える熱エネルギーを大きくするように制御すればよい。もっとも、ここでの加熱が過大であると求める温度を超えてしまうので、空気調和装置から流出する温度と湿度との関係で調整することになる。具体的には、加湿用加熱器制御弁(314)の開放の程度と補助加熱器1(531)に供給する電気エネルギー量とを併せて調整すればよい。
【0113】
即ち、冷却器から流出した空気に対しより多くの加湿をしたいときには、加熱器よりも主として加湿用加熱器・補助加熱器により昇温させるように制御する。他方、加湿を抑えたいときには加湿用加熱器・補助加熱器よりも、主として加熱器により昇温させるように制御する。これは冷房運転時でも暖房運転時でも同様である。
【0114】
以上、本実施の形態に係る空気調和装置によれば、より効率的に、かつ十分な加湿を実現することができるようになる。
【0115】
(4. 第三の実施の形態について)
更に、本願発明に係る他の実施の形態に係る空気調和装置について、図4を用いて説明する。
(4.1. 第三の実施の形態の概要について)
本空気調和装置は、第一の実施の形態並びに第二の実施の形態と概ね同様の構成を採るものの、加熱器の空気下流に補助加熱器を設ける点で異なる。
【0116】
(4.2. 第三の実施の形態に係る構成について)
本実施の形態においても、圧縮器(401)、冷却器(402)、加湿用加熱器(403)、加湿器(404)、第1減圧器(405)、第1減圧器(405)、第2減圧器(406)、第3減圧器(407)、凝縮器(408)、加熱器(409)、凝縮器制御弁(411)、起風器(412)、加熱器制御弁(413)、 加湿用加熱器制御弁(414)、 給水制御部(415)、 アキュムレータ(416)、 ファン1(417)、 ファン2(418)、制御部(435)、冷媒合流部(419)、温度センサー・湿度センサーを具備している。これらは第一の実施の形態における、圧縮器(101)、冷却器(102)、加湿用加熱器(103)、加湿器(104)、第1減圧器(105)、第1減圧器(105)、第2減圧器(106)、第3減圧器(107)、凝縮器(108)、加熱器(109)、凝縮器制御弁(111)、起風器(112)、加熱器制御弁(113)、 加湿用加熱器制御弁(114)、 給水制御部(115)、 アキュムレータ(116)、 ファン1(117)、 ファン2(118)、制御部(135)、冷媒合流部(119)、温度センサー・湿度センサーと、ぞれぞれの機能は概ね同一であるので説明を省略する。なお、制御部における制御内容については後に追記する。
【0117】
本実施の形態では、上記に加え、加熱器(409)の更に空気下流に補助加熱器(432)を設ける。
【0118】
[補助加熱器(432)]
補助加熱器(432)は、加湿が行われた室内空気を、それ以上に加湿をすることなく高い暖房能力をもたせる。すなわち、補助加熱器(432)は、加熱器(409)の空気下流に配置し、含有水蒸気量を維持しつつ、流通する空気塊に顕熱を与え、本空気調和装置の排出する調和空気を昇温するようになっている。ここでも、補助加熱器(431)で空気に対して供給するエネルギーは、前記冷媒に圧縮器(401)により加えられた熱エネルギーとは異なるエネルギーを用いる。具体的には、電気エネルギーを用いるのが制御容易性の点、並びにエネルギー効率の点で望ましい。
【0119】
冷媒を用いた加熱器では流入前の空気温度が高いと、冷媒温度との差が小さく、このため交換される熱量は大きくないのは前述のとおりである。これに対し、冷媒による加熱器を空気上流に、電気的エネルギーを熱エネルギーに直接変換する補助加熱器を空気下流に、それぞれ配置することにより、効率的な昇温効果を得ることができる。このような観点から、本空気調和装置では、補助加熱器(432)よりも加熱器を空気上流に配置している。
【0120】
(4.3. 第三の実施の形態に係る動作について)
本実施の形態に係る空気調和装置の動作についても第一の実施の形態の動作と概ね同一であるので、全体の動作説明は省略する。ここでは空気流に着目して、加湿器(404)から補助加熱をするまでの動作を中心に説明する。
【0121】
加湿器(404)を通過した空気には、これより下流の加熱器(409)・補助加熱器(432)で水蒸気が加わることはない。単に加熱がされるだけである。よって、加湿器(404)を通過した空気塊の含有水蒸気量は加湿器(404)までの制御によって確定される。
【0122】
加湿器(404)を通過した空気塊は求める水蒸気量をもって加熱器(409)に流入する。加熱機では、高温な冷媒と熱交換することにより、通過する空気に熱エネルギーを与えて昇温させる。
【0123】
加熱器を通過した空気塊は、さらに補助加熱器に流入する。これにより、冷媒だけでは得られない高温の暖房を可能とする。
【0124】
(4.4. その他)
(4.4.1. 補助加熱器の併用について)
前記第二の実施の形態に係る空気調和装置では、補助加熱器を加湿用加熱器の空気下流であって加湿器の空気上流に設置した。これに対し、本実施の形態に係る空気調和装置では、補助加熱器を加熱器の空気下流に設置した。これら補助加熱器について、流通する空気に顕熱を与える点では同様であるものの、主として前者が深い加湿をするため、後者が空気温を高めるためものである点で機能が異なる。このため、両者の機能による利点を採るために、2つの補助加熱器を併せて設けても構わない。
【0125】
(4.4.2. 補足説明)
ここで、補助加熱器が空気を加熱するエネルギーが前記圧縮器を通る冷媒に含まれる内部エネルギーとは異なるエネルギーである点に意義があるので、この点に簡単に触れる。
【0126】
本実施の形態に係る空気調和装置において、圧縮器(201)によって冷媒に加えられた内部エネルギーを活用して暖房をする。
【0127】
しかし、加熱要素である加熱器・加湿用加熱器の空気上流には冷却器(202)がある。またこれら加熱要素を通過した冷媒をここに収束させることになる。このため、室内空気の状況によっては冷却器で過度に空気冷却が行われることがある。このような場合にこれら加熱要素の加熱を強めても更に冷却器の作用が強めることになる。本実施の形態に係る空気調和装置のように、加熱器の空気下流において圧縮器(401)由来の冷媒とは異なるエネルギーによって補助加熱をすれば、冷却器における過度な冷却の弊害を除去する作用も期待できる。
【0128】
(5. 第四の実施の形態について)
次に、本願発明に係る第四の実施の形態に係る空気調和装置について、図5を用いて説明する。
【0129】
(5.1. 第四の実施の形態の概要について)
本実施の形態は、補助加熱器をモジュール化して着脱自在にするとともに、補助加熱器が装着されているときにはこれを検知して、温度・湿度制御を補助加熱器を含めて総体で行うように構成した空気調和装置に係る。
【0130】
(5.2. 第四の実施の形態に係る構成について)
本実施の形態においても、圧縮器(501)、冷却器(502)、加湿用加熱器(503)、加湿器(504)、第1減圧器(505)、第1減圧器(505)、第2減圧器(506)、第3減圧器(507)、凝縮器(508)、加熱器(509)、凝縮器制御弁(511)、起風器(512)、加熱器制御弁(513)、 加湿用加熱器制御弁(514)、 給水制御部(515)、 アキュムレータ(516)、 ファン1(517)、 ファン2(518)、制御部(535)、冷媒合流部(519)、温度センサー・湿度センサーを具備している。これらは第一の実施の形態における、圧縮器(101)、冷却器(102)、加湿用加熱器(103)、加湿器(104)、第1減圧器(105)、第1減圧器(105)、第2減圧器(106)、第3減圧器(107)、凝縮器(108)、加熱器(109)、凝縮器制御弁(111)、起風器(112)、加熱器制御弁(113)、 加湿用加熱器制御弁(114)、 給水制御部(115)、 アキュムレータ(116)、 ファン1(117)、 ファン2(118)、制御部(135)、冷媒合流部(119)、温度センサー・湿度センサーと、ぞれぞれの機能は概ね同一であるので説明を省略する。なお、制御部における制御内容については後に追記する。
【0131】
本実施の形態に係る空気調和装置は、上記部材の他、第1補助加熱器装着検出器(533)、第2補助加熱器装着検出器(534)を具備するとともに、加湿用加熱器(503)と加湿器(504)との間に補助加熱器1(531)、加熱器(509)の空気下流に補助加熱器2(532)をそれぞれ装着自在に構成する。
【0132】
[補助加熱器1(531)]
補助加熱器1(531)は、加湿用加熱器(503)の空気下流かつ加湿器(504)の空気上流の位置で補助加熱器装着具を用いて着脱自在になっている。装着されているときには、流通する空気に熱エネルギーを供給できるようになっている。これにより、飽和水蒸気量が大きい高温の空気にするために加湿用加熱器よりも空気下流の位置で空気を昇温できるようになっている。また、補助加熱器1(531)で空気に対して供給するエネルギーは、前記冷媒に圧縮器(501)により加えられた冷媒ガスの内部エネルギーとは異なるエネルギーを用いる。また、装着時には制御部(535)からの電気的エネルギーが供給できるように、補助加熱器1(531)にはプラグ/ソケットが付設されている。
【0133】
[補助加熱器装着具1]
補助加熱器装着具1(図示せず)は、加湿用加熱器(503)の空気下流かつ加湿器(504)の空気上流の位置に、上記補助加熱器1(531)を固定して装着することができるようにする部材である。そして、制御部(535)からの制御によって、電気エネルギーが供給できるように補助加熱器1(531)のプラグ/ソケットに対応したソケット/プラグも付設されている。また、ユーザーが希望するときには、装着した補助加熱器1(531)を外すこともできるようになっている。装着した補助加熱器1(531)を外したときには、プラグ/ソケットが離間して、補助加熱器1(531)への電力供給ができなくなるとともに、後述する第1補助加熱器装着検出器(533)では装着状態ではないと検知されることになる。
【0134】
[補助加熱器2(532)]
補助加熱器2(532)は、加熱器(509)の空気下流の位置で補助加熱器装着具を用いて着脱自在になっており、含有水蒸気量を維持しつつ、流通する空気塊に熱エネルギーを与え、本空気調和装置の排出する調和空気を昇温できるようになっている。ここでも、補助加熱器2(532)で空気に対して供給するエネルギーは、前記冷媒に圧縮器(501)により加えられたエネルギーとは異なるエネルギーを用いる。
【0135】
[補助加熱器装着具2]
補助加熱器装着具2(図示せず)は、加熱器(509)の空気下流の位置に、上記補助加熱器2(532)を固定して装着することができるようにする部材である。ここでも制御部(535)からの制御によって、電気エネルギーが供給できるように補助加熱器2(532)のプラグ/ソケットに対応したソケット/プラグが付設されている。その他、補助加熱器1を補助加熱器2に、第1補助加熱器装着検出器(533)を第2補助加熱器装着検出器(534)に読み替えることを除き、上記「補助加熱器装着具1」と同様であるので説明を省略する。
【0136】
[第1補助加熱器装着検出器(533)]
第1補助加熱器装着検出器(533)は、加湿用加熱器(503)と加湿器(504)との間に補助加熱器1(531)が装着されていて、これを制御部(535)から制御できる状態になっているかどうかを検出できるようになっている。
【0137】
具体的には、補助加熱器が電気エネルギーから直接熱エネルギーに変換する電熱線で構成した場合には、その電気エネルギー供給用のコネクタを介して電流が流れるのかどうかを検出するようにすることができる。補助加熱器が電流によって検出できない性質の部材であるあれば、補助加熱器を装着する位置に、装着を妨げないように設置した機械的乃至電気的スイッチによって検出することができるようにしてもよい。
【0138】
[第2補助加熱器装着検出器(534)]
第2補助加熱器装着検出器(534)は、加熱器(509)の空気下流に補助加熱器2(532)が装着されていて、これを制御部(535)から制御できる状態になっているかどうかを検出できるようになっている。
【0139】
具体的な検出手段は、前記第1補助加熱器装着検出器(533)と同様なので、説明を省略する。
【0140】
[制御部(535)]
制御部(535)は、加熱器制御弁(513)、加湿用加熱器制御弁(514)、給水制御部(515)、凝縮器制御弁(511)、起風器(512)、並びに図示しない温度センサー・湿度センサーに接続し、本空気調和装置から流出する空気が求められる空気調和状態になるように統一して制御する点は前述の実施の形態に係る空気調和装置と同様である。制御部(535)には、これに加え、第1補助加熱器装着検出器(533)、第2補助加熱器装着検出器(534)、補助加熱器装着具1を介して補助加熱器1(531)、並びに補助加熱器装着具2を介して補助加熱器2(532)に接続する。
【0141】
制御部(535)は、
(1) 補助加熱器1(531)が装着されず、補助加熱器2(532)も装着されない場合、
(2) 補助加熱器1(531)が装着されて、補助加熱器2(532)が装着されない場合、
(3) 補助加熱器1(531)が装着されず、補助加熱器2(532)が装着される場合、
(4) 補助加熱器1(531)が装着されて、補助加熱器2(532)も装着される場合、
の4種類の場合のそれぞれに異なった制御をするようになっている。このため、運転前の湿度・温度から、調和後の目標値である湿度・温度に至る各制御弁の選択とその開放の程度は、補助加熱器1(531)の装着の有無、補助加熱器2(532)の装着の有無によってそれぞれ適切な制御がされるようになっている。
【0142】
具体的な制御手順は、運転目的によって任意に設計すればよい。たとえば、上記補助加熱器装否に関する4類型でそれぞれLook Up Tableを作成し、少なくとも温度・湿度センサー出力値とBooleanである第1補助加熱器装着検出器(533)・第2補助加熱器装着検出器(534)の検出結果をテーブル入力とし、テーブル出力を各制御対象に対する制御値とすることもできる。また、図6に示すような温度・含有水蒸気量グラフを用い、目標値から逆にたどることで概ね解析的に各制御対象に対する制御値を確定することもできる。もちろん、これら両方を併せた演算をさせるのでも構わない。
【0143】
(5.3. 第四の実施の形態に係る動作について)
本実施の形態に係る空気調和装置の動作については、第二の実施の形態の動作、並びに第三の実施の形態の動作と概ね同一であるので、全体の動作説明は省略する。ここでは補助加熱器装着検出器に関連する部分のみ説明することとし、かつ制御部(535)でLook Up Tableを用いない場合について説明する。
【0144】
この実施の形態に係る空気調和装置が運転を開始するときには、まず第1補助加熱器装着検出器(533)並びに第2補助加熱器装着検出器(534)の検出結果を取得する。
更に起風器(512)のみを動作させ、温度・湿度センサーによって室温の状況を把握する。これにより空気の初期状態が把握できるので、ここから制御目標に向かって各制御弁並びに補助加熱器1(531)・補助加熱器2(532)への供給電力を調整することになる。
この後は、温度・湿度センサーから本空気調和装置の排気状態を把握して、ここから制御目標に向かって各制御弁並びに補助加熱器1(531)・補助加熱器2(532)への供給電力を調整すればよい。
(6. その他)
上記各実施の形態の記載について、特に動作については冷暖房それぞれのモードで切替るものではなく、目標値に向かって調整するものを示したが、冷暖房を明示する運転モードを設定するかどうかなどは設計事項として自由にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0145】
以上説明してきたように、本発明は空気調和装置に係り、幅の広い温湿度の調和ができるので、一般事務室内での利用は勿論、低温室、高温室など様々な空気調和の必要な空間での利用が可能である。すなわち、快感空気調和、作業空気調和、産業プロセス空気調和のいずれにも利用が可能である。
【符号の説明】
【0146】
図面中の符号は先頭の数値が図面番号を表す。異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番して、可読性向上を図っている。
【0147】
101 圧縮器
102 冷却器
103 加湿用加熱器
104 加湿器
105 第1減圧器
106 第2減圧器
107 第3減圧器
108 凝縮器
109 加熱器
111 凝縮器制御弁
112 起風器
113 加熱器制御弁
114 加湿用加熱器制御弁
115 給水制御部
116 アキュムレータ
117 ファン1
118 ファン2
119 冷媒合流部
135 制御部
221 室温
331 補助加熱器
432 補助加熱器
531 補助加熱器1
532 補助加熱器2
533 第1補助加熱器装着検出器
534 第2補助加熱器装着検出器
535 制御部
621 空気調和装置に流入する空気塊
627 空気調和装置に流入した空気塊の水蒸気量が飽和水蒸気量となる温度

図1
図2
図3
図4
図5
図6