(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】散布装置
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20230426BHJP
A01C 15/08 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A01C15/00 E
A01C15/00 D
A01C15/08
(21)【出願番号】P 2019164627
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000132828
【氏名又は名称】株式会社タイショー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 次男
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-246725(JP,A)
【文献】実開昭56-024827(JP,U)
【文献】特開2000-078925(JP,A)
【文献】実開昭63-186211(JP,U)
【文献】実公昭37-015409(JP,Y1)
【文献】実公昭35-016638(JP,Y1)
【文献】特開2005-035638(JP,A)
【文献】特開平09-286487(JP,A)
【文献】特開昭50-095971(JP,A)
【文献】実開昭49-008978(JP,U)
【文献】実開昭50-016016(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00
A01C 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布対象の粉粒材を貯留するホッパーと、
前記ホッパーの底部に設けた散布口の上で回転駆動される攪拌繰り出しローターと、
前記ホッパー内で上端側が前記ホッパーの壁面に固定され下端側を自由端として、前記ホッパー内に貯留された粉粒材が上面に堆積するように配備される振動板と、
前記振動板を振動させる加振体とを備え、
前記振動板の下端と前記ホッパーの内面との間に前記攪拌繰り出しローター上に粉粒材を落下させる供給口が形成され、
前記振動板の上端は、前記ホッパーの壁面の上端近傍に対向しており、
前記振動板の上端側と前記ホッパーの壁面との間に、前記ホッパーの外側に連通した通気流路が形成され
、
前記通気流路は、前記振動板の上端と前記ホッパーの壁面の上端近傍との間の開口部まで連通していることを特徴とする散布装置。
【請求項2】
前記通気流路は、前記ホッパー上部の投入口に設けられた内巻き状の上端縁部の下側を通っていることを特徴とする請求項1記載の散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒材の散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の散布装置は、トラクタなどの走行機体の後側又は前側に装着することで、移動しながら圃場面上に肥料などの粉粒材を散布するものであり、肥料などの粉粒材が貯留されるホッパーと、ホッパーの底部に装備され、貯留された粉粒材を攪拌しながら繰り出す攪拌繰り出し装置と、攪拌繰り出し装置の下部に接続される散布ホースなどを備えている。
【0003】
この種の散布装置は、ホッパー内の粉粒材がブリッジ現象を起こし、粉粒材が自重で攪拌繰り出し装置に供給されなくなることへの対策が不可欠である。従来は、この対策として、ホッパー内に振動板を設け、作業時に振動板を振動させて、ホッパー内に貯留されている粉粒材のブリッジを崩すことが行われている。
【0004】
図1は、従来の散布装置のホッパー内の断面を示している。図示の断面は、進行方向に沿った断面であり、ホッパーは、進行方向に交差する方向に長い横長の容器形態を有している。図示の例では、ホッパーJ1は、垂直面の前面J1aと後面J1bを有しており、前面J1aの下側に連続して前傾斜面J1cが設けられ、後面J1bの下側に連続して後傾斜面J1dが設けられており、前傾斜面J1cと後傾斜面J1dの下端位置に散布口J1eが設けられている。また、ホッパーJ1上部の投入口J1fには、蓋J2が被せられている。
【0005】
従来の散布装置におけるホッパJ1内に設けられる振動板J3は、上端側が前面J1a(又は後面J1b)に固定されており、自由端となっている振動板J3の下端と後傾斜面J1d(又は前傾斜面J1c)との間に、ホッパーJ1内に貯留されている粉粒材の供給口J4が形成されている。ホッパーJ1内に貯留されている粉粒材は、傾斜している振動板J3の上に堆積することになり、前述した供給口J4を介して落下した粉粒材が、ホッパーJ1の底部に装備される攪拌繰り出しローターJ5に供給される。
【0006】
振動板J3の下側には、回転駆動される攪拌繰り出しローターJ5の回転に連動して揺動回転する振動軸J6とこれに一端が固定された突き上げ体J7が装備されており、突き上げ体J7の自由端を上下に揺動させることで、一端側が固定され他端側が自由端になっている振動板J3を上下に振動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来技術によると、振動板J3の振動で振動板J3上に堆積している粉粒材に振動が加わることで、供給口J4の上側に生じる粉粒材のブリッジを崩すことができるので、供給口J4から攪拌繰り出しローターJ5に落下する粉粒材が滞るのを抑止することができる。
【0009】
しかしながら、振動板J3の振動によって、ホッパーJ1内の空気圧が正圧・負圧に変動することになる。特に、振動板J3の下側には、上側が密閉された空間G(
図1参照)が形成されるので、ここでの空気圧が正圧・負圧状態に変動して、供給口J4から落下した粉粒材に圧力変動を加えることになる。このような圧力変動が攪拌繰り出しローターJ5上の粉粒材に加わると、攪拌状態や繰り出し状態の安定性を高い精度で継続し難くなるなどの問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、ホッパー内に振動板を備えた粒粉材の散布装置において、ホッパー内の空気圧の変動を抑止して、攪拌状態や繰り出し状態の安定性を確保すること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
散布対象の粉粒材を貯留するホッパーと、前記ホッパーの底部に設けた散布口の上で回転駆動される攪拌繰り出しローターと、前記ホッパー内で上端側が前記ホッパーの壁面に固定され下端側を自由端として、前記ホッパー内に貯留された粉粒材が上面に堆積するように配備される振動板と、前記振動板を振動させる加振体とを備え、前記振動板の下端と前記ホッパーの内面との間に前記攪拌繰り出しローター上に粉粒材を落下させる供給口が形成され、前記振動板の上端は、前記ホッパーの壁面の上端近傍に対向しており、前記振動板の上端側と前記ホッパーの壁面との間に、前記ホッパーの外側に連通した通気流路が形成され、前記通気流路は、前記振動板の上端と前記ホッパーの壁面の上端近傍との間の開口部まで連通していることを特徴とする散布装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、このような特徴を具備することにより、ホッパー内に振動板を備えた粒粉材の散布装置において、ホッパー内の空気圧の変動を抑止して、攪拌状態や繰り出し状態の安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術の説明図(ホッパー内の進行方向に沿った断面図)。
【
図2】本発明の実施形態を示した説明図(ホッパー内の進行方向に沿った断面図)。
【
図3】本発明の特徴部を示した拡大図(
図2のA部拡大図)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図2及び
図3を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0015】
本発明の実施形態に係る散布装置1は、前述した従来技術と同様に、ホッパー2、振動板3、攪拌繰り出しローター4、突き上げ体(加振体)5を備えている。
【0016】
ホッパー2は、従来技術同様、進行方向に交差する方向に長い横長の容器形態を有しており、
図2に示すように、垂直面の前壁面2aと後壁面2bを有し、前壁面2aの下側に連続して前傾斜面2cが設けられ、後壁面2bの下側に連続して後傾斜面2dが設けられている。そして、前傾斜面2cと後傾斜面2dの下端位置に散布口2eが設けられている。また、ホッパー2の上部の投入口2fには、蓋6が被せられている。
【0017】
振動板3は、ホッパー2内に配備され、上端側がホッパー2の前壁面2a(又は後壁面2b)に固定され、下端側を自由端として、ホッパー2内に貯留された粉粒材が上面に堆積するように配備されている。自由端となっている振動板3の下端と後傾斜面2d(又は前傾斜面2c)の内面との間には、ホッパー2内に貯留されている粉粒材の供給口2gが形成されている。
【0018】
攪拌繰り出しローター4は、ホッパー2の底部に配備され、図示省略したモーターなどで回転駆動されることで、供給口2gから落下してきた粉粒材を攪拌しながら散布口2eから下方に排出する。散布口2eには、散布口2eを開閉するため或いは開口面積を調整するためのシャッター7が設けられている。散布口2eを囲むホッパー2の底部には、図示省略した分配漏斗や散布ホースを配備することができる。
【0019】
突き上げ体5は、振動板3を振動させる加振体であり、上下に揺動することで振動板3を上下に振動させる。突き上げ体5は、振動軸5Aに一端が固定されており、自由端になっている他端が振動板3の下面に当接される。
【0020】
振動板3の上端側は、
図3に示すように、ねじによってホッパー2の前壁面2a(又は後壁面2b)に固定されている。この際、振動板3の上端側とホッパー2の前壁面2aとの間には、通気流路Fが形成されている。この通気流路Fは、ホッパー2の外側に連通しており、ホッパー2内における振動板3の下側の空間Gをホッパー2の外側に連通させる空気の流れを形成している。
【0021】
このような散布装置1は、攪拌繰り出しローター4が回転駆動されると、それに連動して突き上げ体5が上下に揺動し、振動板3を振動させる。ホッパー2内に貯留されている粉粒材は、傾斜している振動板3の上に堆積しており、振動板3が振動することで粉粒材のブリッジが崩され、供給口2gを介して落下した粉粒材が攪拌繰り出しローター4に供給される。
【0022】
そして、振動板3の振動に伴って、通気流路Fに空気の流れが生じることになり、この空気の流れでホッパー2内の空気圧の変動が抑止される。具体的には、振動板3の上昇時には、通気流路Fを介して空間G内に空気が吸気されることになり、振動板3の下降時には、通気流路Fを介して空間G内の空気がホッパー2の外に排気されることになる。
【0023】
この際、空気の流れは、
図3に示すように、ホッパー2上部の投入口2fに設けられた内巻き状の上端縁部2f1の下側を通って、更には上端縁部2f1の上側と蓋6との隙間を通ってホッパー2の外に通じる。このような空気の流れを形成することで、仮に空気の流れに粉粒材が巻き込まれた場合であっても、粉粒材は上端縁部2f1の下側にて捕捉されることになり、粉粒材がホッパー2の外部に漏れ出ることを抑止する。
【0024】
このような散布装置1によると、ホッパー2の内部に振動板3を装備することで、供給口2gから滞りなく粉粒材を攪拌繰り出しローター4に供給することができる。また、振動板3の振動によるホッパー2内の空気圧の変動を通気流路Fを設けることで抑止するので、攪拌繰り出しローター4による攪拌状態や繰り出し状態の安定性を確保維持することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1:散布装置,2:ホッパー,
2a:前壁面,2b:後壁面,2c:前傾斜面,
2d:後傾斜面,2e:散布口,2f:投入口,2f1:上端縁部,
2g:供給口,3:振動板,4:攪拌繰り出しローター,
5:突き上げ体(加振体),5A:振動軸,6:蓋,7:シャッター,
F:通気流路,G:空間