(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物およびシール材
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20230426BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20230426BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20230426BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20230426BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20230426BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C08L25/04
C08K5/01
C08L53/02
C08L57/02
C08L91/00
C09K3/10 K
(21)【出願番号】P 2019535113
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028468
(87)【国際公開番号】W WO2019031290
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017152493
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598006473
【氏名又は名称】旭化学合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山内 友信
(72)【発明者】
【氏名】古川 和弥
(72)【発明者】
【氏名】公門 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 崇
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-162747(JP,A)
【文献】特開2001-271049(JP,A)
【文献】特開平11-323296(JP,A)
【文献】特開平09-286964(JP,A)
【文献】特開2006-143870(JP,A)
【文献】特開平08-157794(JP,A)
【文献】特表2010-530905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/04
C08K 5/01
C08L 53/02
C08L 57/02
C08L 91/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)両末端にスチレン系ポリマーブロックを有し、且つ、中間部に水素化されたジエンポリマーブロックを有する、質量平均分子量250,000~600,000の水添スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部当たり、(B)軟化点が135~160℃であ
り、芳香族ビニル化合物を主成分とするホモポリマーまたはコポリマーである第一のスチレン系粘着付与樹脂20~150質量部、(C)軟化点が105~
130℃であ
り、芳香族ビニル化合物を主成分とするホモポリマーまたはコポリマーである第二のスチレン系粘着付与樹脂100~400質量部、(D)軟化点が100~160℃であり、
ロジン系樹脂と、脂環族系樹脂と、脂肪族系炭化水素樹脂と、水素化C9系炭化水素樹脂と、から選ばれる少なくとも1つであり、(A)成分に含まれる水素化されたジエンポリマーブロックと相溶する樹脂である第三の粘着付与樹脂100~500質量部および(E)液状軟化剤500~1,500質量部を含有してなり、且つ、第一のスチレン系粘着付与樹脂と第二のスチレン系粘着付与樹脂の軟化点の差が10℃以上であることを特徴とするホットメルト組成物。
【請求項2】
前記スチレン系ポリマーブロック100質量部に対して、第一のスチレン系粘着付与樹脂の量が60~500質量部であり、第二のスチレン系粘着付与樹脂の量が350~1,200質量部である請求項1記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
前記水素化されたジエンポリマーブロック100質量部に対して、前記第三の粘着付与樹脂の量が140~700質量部である請求項1または2記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
前記第三の粘着付与樹脂が、水素化された樹脂である請求項1~3のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項5】
液状軟化剤がパラフィン系プロセスオイルである請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項6】
前記水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン系ポリマーブロックを10~50質量%の割合で含有するものである請求項1~5のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項7】
前記(B)成分と前記(C)成分の使用比率[(B)成分/(C)成分]が質量比で5/4~1/15である請求項1~6のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項8】
前記(A)成分100質量部当たり、前記(B)成分を50~100質量部、前記(C)成分を150~300質量部および前記(E)成分を700~1,200質量部の割合で含む請求項1~7のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のホットメルト組成物を含有してなるシール材。
【請求項10】
前記シール材が、20℃における1,000%引張時の強度が0.8kgf/cm
2以下である請求項9記載のシール材。
【請求項11】
自動車のランプハウジング用である請求項10記載のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や車両などの分野においてホットメルト接着剤として好適に用いられるホットメルト組成物及びシール材に関し、さらに詳しくは、基材への密着性に優れるとともに易解体性にも優れたホットメルト組成物及びシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気、自動車、建築など各産業分野において、組み立てに用いる部材をホットメルト接着剤で接合する手法が広範にわたって行われている。たとえば、自動車のヘッドランプやテールランプにおいては、光源を保持するプラスチック製のハウジングと光源を保護するレンズとを接合するために、熱可塑性エラストマーに多量の軟化剤を配合したホットメルト接着剤が使用されている。部材間をホットメルト接着剤で接合する場合、接着用の部材と被着材は所望の強度で密着していることが望ましいが、あまりに強く密着していると使用中に部材の交換が必要になったときに部材の交換が難しくなる。また、使用後に製品を解体する際には、資源の有効利用および環境対策の観点から各部材のリサイクルが容易になるように、部材が分離し易いものであること、すなわち、易解体性(または易分離性)に優れていることが望まれている。このように、ホットメルト接着剤には、接合に際して適度の密着性を付与することによって部材間の良好なシール性を担保するだけでなく、易解体性にも優れていることが望まれている。
【0003】
従来、密着性および易解体性に優れたホットメルト組成物として、スチレン系熱可塑性エラストマーにポリフェニレンエーテルおよび多量の液状軟化剤を配合して、軟化点を130℃~240℃に調節した組成物が提案されている(特許文献1)。この文献の実施例には、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、ポリフェニレンエーテル100質量部、スチレン系樹脂(ENDEX155)200質量部、プロセスオイル500質量部を配合した組成物が記載されている(実施例1参照)。このホットメルト組成物
は、耐熱性および密着性に優れ、且つ、被着材との分離が容易にできるという特性を有しているが、より高い柔軟性と密着性が求められる昨今の市場の要求には必ずしも十分なものとはいえない。
【0004】
また、特許文献2では、重量平均分子量が250,000以上のSEEPS(スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレン型トリブロックポリマーの水添物)またはSEBS(スチレン-ブタジエン-スチレン型トリブロックポリマーの水添物)100質量部に対して、水酸基を有する粘着付与剤5~500質量部および炭化水素系可塑剤350~2,000質量部を配合した易解体性ホットメルト組成物が提案されている(請求項1参照)。この組成物においては、粘着付与樹脂と、基材として用いられるポリオレフィンとの間に極性の差を設けることによって易解体性を付与しようとするものであるが、加熱安定性および基材への密着性が低いという問題を有している。
【0005】
さらに、特許文献3には、自動車関連用途における過酷な条件下での使用に適したホットメルト組成物として、ジエンポリマーブロックが水素化されているスチレン系熱可塑性エラストマーに水素化された炭化水素粘着性付与剤および可塑剤を配合した組成物が提案されており(請求項1参照)、両末端にあるスチレン系ポリマーブロックと相溶性のある粘着付与樹脂、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどの芳香族モノマーの単独重合体またはそれらの共重合体を、スチレン系ポリマーブロック相の補強用樹脂として配合することが好ましいと記載されている(段落0020参照)。そして、実施例においては、スチレン系熱可塑性エラストマー(水素化されたスチレン系トリブロックポリマーと水素化されたスチレン系ジブロックポリマーの等量混合物)8質量部、粘着付与樹脂33質量部、オイル46.3質量部および芳香族樹脂(ENDEX155)2質量部を含むホットメルト組成物が記載されている(実施例1、表1参照)。しかし、この組成物はエラストマー成分の中に多量のスチレン系ジブロックポリマーを含んでいるために、耐熱性および凝集力が十分でなく、さらに液状軟化剤の保持能力にも劣るという問題がある。また、近年、自動車用ランプの部材として多用されているポリカーボネート製基材への密着力に乏しいという問題もある。
【0006】
一方、特許文献4には、粘着付与樹脂として用いる芳香族樹脂に着目したホットメルト組成物が記載されており、質量平均分子量が200,000~500,000のスチレン系熱可塑性エラストマー100質量部当たり、スチレン系樹脂50~500質量部および炭化水素系可塑剤500~2,000質量部を配合することにより、熱老化安定性、密着性および易解体性に優れた、自動車等の照明灯具のシール材として好適なホットメルト組成物になると記載されている(請求項1、段落0025、0062参照)。そして、実施例においては、SEEPS100質量部当たり、炭化水素系可塑剤1,000質量部およびスチレン系樹脂として芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)100~500質量部、または該芳香族系炭化水素樹脂75質量部とスチレン-ビニルトルエン共重合体(エンデックス155、イーストマンケミカル社製)75質量部を含むホットメルト組成物が開示されている(表1および表2参照)。しかし、本発明者らが特許文献4に記載されている配合について検討したところ、このホットメルト組成物は芳香族樹脂の配合量が少ないとポリカーボネート製基材への密着性が十分でなく、逆に配合量が多くなるとホットメルト組成物の粘度が増加して流動性が悪化したり、熱履歴による変形を生じやすくなる傾向があり、市場の要求には必ずしも十分なものとはいえないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-81277号公報
【文献】特開2008-127473号公報
【文献】特開2006-249433号公報
【文献】特開2011-190287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような背景技術の下で完成したものであり、その目的は、密着性に優れるとともに、易解体性にも優れたホットメルト組成物を提供することにある。また、他の目的は、シール性に優れるとともに、易解体性にも優れた自動車等の照明器具の製造に好適なシール材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来技術における問題点を解決すべく鋭意検討を進めた結果、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン系ポリマーブロックの補強用樹脂として軟化点の異なるスチレン系樹脂を特定割合で併用し、且つ、水素化されたジエンポリマーブロック用の粘着付与樹脂を特定の割合で配合することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)(A)両末端にスチレン系ポリマーブロックを有し、且つ、中間部に水素化されたジエンポリマーブロックを有する、質量平均分子量(Mw)250,000~600,000の水添スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部当たり、(B)軟化点が135~160℃である第一のスチレン系粘着付与樹脂20~150質量部、(C)軟化点が105~135℃である第二のスチレン系粘着付与樹脂100~400質量部、(D)軟化点が100~160℃である水素化されたジエンポリマーブロック用の第三の粘着付与樹脂100~500質量部および(E)液状軟化剤500~1,500質量部を含有してなり、且つ、第一のスチレン系粘着付与樹脂と第二のスチレン系粘着付与樹脂の軟化点の差が10℃以上であることを特徴とするホットメルト組成物。
【0011】
(2) 前記スチレン系ポリマーブロック100質量部に対して、第一のスチレン系粘着付与樹脂の量が60~500質量部であり、第二のスチレン系粘着付与樹脂の量が350~1,200質量部である(1)記載のホットメルト組成物。
(3)前記水素化されたジエンポリマーブロック100質量部に対して、前記第三の粘着付与樹脂の量が140~700質量部である(1)または(2)記載のホットメルト組成物。
(4)第三の粘着付与樹脂が、水素化された樹脂である(1)~(3)のいずれかに記載のホットメルト組成物。
(5)前記水添スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン系ポリマーブロックを10~40質量%の割合で含有するものである(1)~(4)のいずれかに記載のホットメルト組成物。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載のホットメルト組成物を含有してなるシール材。
(7)前記シール材の20℃における1,000%引張時の強度が、0.8kgf/cm2以下である(6)に記載のシール材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スチレン系ポリマーブロックと相溶性のある2種類の粘着付与樹脂(補強用樹脂と称することもある)、すなわち、軟化点の高い樹脂と軟化点の低い樹脂を特定割合で併用し、且つ、水素化されたジエン系ポリマーブロックと相溶性のある水素化された粘着付与樹脂を特定割合で配合することにより、密着性と易解体性のバランスがとれた、耐熱性および耐候性に優れたホットメルト組成物を得ることできる。また、その組成物を用いることにより、シール性と易解体性のバランスがとれた、自動車灯具の製造用に好適なシール材を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこの実施形態により限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
本発明のホットメルト組成物は、(A)両末端にスチレン系ポリマーブロックを有し、且つ、中間部に水素化されたジエンポリマーブロックを有する、質量平均分子量(Mw)250,000~600,000の水添スチレン系熱可塑性エラストマー、(B)軟化点が135~160℃である第一のスチレン系粘着付与樹脂、(C)軟化点が105~135℃である第二のスチレン系粘着付与樹脂、(D)軟化点が100~160℃である水素化されたジエンポリマーブロック用の第三の粘着付与樹脂、および(E)液状軟化剤を必須成分として含有している。
【0015】
<水添スチレン系熱可塑性エラストマー>
本発明において(A)成分として用いられる水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、両末端にスチレン系ポリマーブロックを有し、且つ、中間部に水素化されたジエンポリマーブロックを有する、質量平均分子量(Mw)が250,000~600,000のものである。本発明において、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの質量平均分子量は重要な要件であり、この値が小さすぎるとシール材としての耐熱性に欠けるようになり、逆に高すぎるとホットメルト接着剤として使用する際の溶融粘度が高くなり吐出作業性に難が生じる。好ましい質量平均分子量は300,000~600,000であり、さらに好ましくは400,000~550,000である。
【0016】
かかる水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、(スチレン系ポリマーブロック)-(水素化されたジエン系ポリマーブロック)-(スチレン系ポリマーブロック)からなるA-B-A型のトリブロックポリマーであり、A-B´-A型(Aはスチレン系ポリマーブロック、B´はジエン系ポリマーブロックを示す)トリブロック共重合体のジエン系ポリマーブロック(ブロックB´)を公知の方法で選択的に水素化することによって得ることができる。スチレン系ポリマーブロック(ブロックA)を製造するために用いられるモノマーは芳香族ビニル化合物であり、その具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエンなどが挙げられる。なかでもスチレンがもっとも賞用される。また、ジエンポリマーブロック(ブロックB´)を製造するために用いられるモノマーは炭素数4~5の共役ジエンであり、その具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエンなどが挙げられる。なかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンまたはそれらの混合物が賞用される。
【0017】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン系ポリマーブロックを10~50質量%および水素化ジエンポリマーブロックを90~50質量%を有することが密着性と易解体性のバランスをとるうえで好ましく、スチレン系ポリマーブロック20~40質量%および水素化ジエンポリマーブロック80~60質量%であることがとくに好ましい。また、両末端にあるスチレン系ポリマーブロックは、通常、ほぼ同等の分子量を有しているが、必ずしも同一でなくともよい。
【0018】
2つのスチレン系ポリマーブロックに挟まれて存在する水素化ジエンポリマーブロック(ブロックB)は、ジエン系ポリマーに含まれる炭素-炭素二重結合を水素化したものであり、水素化率が高くなるほど不飽和結合が減少し、その結果、ポリマーの熱安定性や耐候性が向上する。その反面、完全に水素化するには製造上の困難を伴うことから、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上が水素化されていればよい。
【0019】
水添スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体(SBS)の水素化物であるSEBS、スチレン-イソプレン-スチレンのトリブロック共重合体(SIS)の水素化物であるSEPS、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体(SIBS)の水素化物であるSEEPSなどが挙げられる。SEPSの具体例としては、セプトン2005(スチレン含有量20質量%、クラレ社製)、セプトン2006(スチレン含有量35質量%、クラレ社製)などがあり、SEBSの具体例としては、クレイトンG1651(スチレン含有量33質量%、クレイトンポリマー社製)、セプトン8006(スチレン含有量33質量%、クラレ社製)などがあり、SEEPSの具体例としては、セプトン4055(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)、セプトン4077(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)、セプトン4099(スチレン含有量30質量%、クラレ社製)などが挙げられる。これらのなかでも、液状軟化剤を保持する能力および高い引張り強度を有する点からSEEPSが好ましく用いられる。そのため、(A)成分として用いられる水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、SEEPSを50質量%以上、さらには80質量%以上含有することが好ましく、とくにSEEPSのみであることが好ましい。SEEPSの中間ブロックを形成する水素化されたブタジエン-イソプレン共重合体は、通常、ブタジエン由来の単位が10~90質量%、好ましくは30~70質量%であり、イソプレン由来の単位が90~10質量%、好ましくは70~30質量%である。
【0020】
また、水添スチレン系熱可塑性エラストマーは無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、水酸基含有化合物、フェノール化合物などの極性化合物で変性したものでもよく、両末端のスチレン系ポリマーブロックに加えて中間部にもスチレン系ポリマーブロックを有する、A-B-A-B-A型(Aはスチレン系ポリマーブロック、Bは水素化ジエン系ポリマーブロックを示す)であってもよい。
【0021】
<第一のスチレン系樹脂>
本発明においては、(B)成分として第一のスチレン系樹脂が用いられる。この樹脂の軟化点は135~160℃であることが必要であり、好ましい軟化点は140~160℃である。軟化点が下限を下回ると耐熱性が不十分となり、逆に上限を上回ると配合物の軟化点が上昇してホットメルト接着剤として使用する際に施工温度を高くしなければならず、エネルギー効率が低下するうえ、施工時の熱によって配合物が劣化する原因となる。
【0022】
用いられるスチレン系樹脂は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどのような、エチレン性の炭素-炭素二重結合を有する芳香族化合物の付加重合体であり、通常、質量平均分子量が1,000~10,000のものである。かかるスチレン系樹脂は、上記単量体のホモポリマーでも適宜に組み合わせた2種以上の単量体のコポリマーであってもよく、また、上記芳香族化合物以外の重合性の成分、たとえば、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテンなどのような炭素数5の脂肪族オレフィン;ジシクシロペンタジエン、テルペン、ピネン、ジペンテンなどのような脂環族オレフィンなどを従成分として共重合したものであってもよい。さらに、フェノール化合物や無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などで変性したものであってもよい。これらのなかでも、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物を主成分とするホモポリマーまたはコポリマーが好ましく、とくに耐候性に優れることからスチレンまたはα-メチルスチレンを主成分とするホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。
かかるスチレン系樹脂の具体例としては、Endex 155(軟化点153℃、EASTMAN社製)、Kristalex 5140(軟化点139℃、EASTMAN社製)、FMR0150(軟化点145℃、三井化学社製)、FTR2140(137℃、三井化学社製)、Sylvales SA140(軟化点140℃、アリゾナケミカル社製)等が挙げられる。
【0023】
(B)成分として用いる第一のスチレン系樹脂は、単一の樹脂であってもよく、また、必要に応じて二種以上の樹脂を適宜併用したものであってもよい。(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して20~150質量部、好ましくは50~100質量部である。(B)成分の含有量が過度に少ないと耐熱性が不十分となり、逆に、過度に多くなると配合物の柔軟性が低下し、易解体性が損なわれるという問題が生ずる。また、(B)成分の使用量は、(A)成分中のスチレン系ポリマーブロック100質量部に対して60~500質量部、とくに150~350質量部であることが好ましい。
【0024】
<第二のスチレン系樹脂>
本発明においては、(C)成分として第二のスチレン系樹脂が用いられる。この樹脂の軟化点は105~135℃であることが必要であり、好ましい軟化点は110~130℃である。軟化点が下限を下回ると耐熱性が不十分となり、逆に上限を上回ると柔軟性および密着性が低下する。
【0025】
用いられる第二のスチレン系樹脂は、軟化点が低い点を除いて第一のスチレン系樹脂と同じものである。かかる第二のスチレン系樹脂の具体例としては、Kristalex 1120(軟化点120℃、EASTMAN社製)、FTR2120(軟化点125℃、三井化学社製)、FTR6110(軟化点110℃、三井化学社製)、FTR6125(軟化点125℃、三井化学社製)、FTR8120(軟化点120℃、三井化学社製)等が挙げられる。
【0026】
(C)成分として用いる第二のスチレン系樹脂は、単一の樹脂であってもよく、また、必要に応じて二種以上の樹脂を適宜併用したものであってもよい。(C)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して100~400質量部、好ましくは150~300質量部である。(C)成分の含有量が過度に少ないと密着性が不十分となり、逆に、過度に多くなると耐熱性が不十分となるという問題が生ずる。また、(C)成分の使用量は、(A)成分中のスチレン系ポリマーブロック100質量部に対して300~1,200質量部、とくに450~1,000質量部であることが好ましい。
【0027】
<第一のスチレン系樹脂と第二のスチレン系樹脂の併用>
本発明においては、(A)成分に含まれているスチレン系ポリマーブロックと相溶する軟化点の異なるスチレン系樹脂、すなわち、第一のスチレン系樹脂と第二のスチレン系樹脂を併用することが重要である。両者の軟化点の差は10℃以上であることが必要であり、好ましくは15℃以上である。軟化点の高い第一のスチレン系樹脂と軟化点の低い第二のスチレン系樹脂を含むことにより、耐熱性と密着性の双方に優れた配合物を得ることができる。
なお、第一のスチレン系樹脂または第二のスチレン系樹脂として、それぞれの成分で規定されている軟化点の範囲に属する二種以上の樹脂を併用する場合には、各樹脂の軟化点と併用比率とを勘案して加重平均として求めた値をそれぞれの成分の軟化点とする。
【0028】
(A)成分に対する(B)成分と(C)成分の使用比率は前述のとおりであるが、なかでも(B)成分と(C)成分の割合〔(B)成分/(C)成分、質量比〕が5/4~1/15、さらには2/3~1/6であるようにすると、耐熱性と密着性の両立を図ることができる。
【0029】
<第三の粘着付与樹脂>
本発明においては、(D)成分として第三の粘着付与樹脂が用いられる。この粘着付与樹脂は(A)成分に含まれる水素化されたジエン系ポリマーブロックと相溶する樹脂であり、100~160℃、好ましくは120~160℃、とくに好ましくは130~160℃の軟化点を有するものである。軟化点が下限を下回ると耐熱性が不十分となり、逆に上限を上回ると柔軟性が低下し易解体性が損なわれることとなる。
【0030】
用いられる第三の粘着付与樹脂は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン-イソプレン共重合体などのジエン系ポリマーの水素化物と相溶し、粘着性を付与できるものであればとくに限定されず、その具体例として、たとえば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジングリセリンエステルなどのロジン系樹脂;テルペン樹脂(α-ピネン主体、β-ピネン主体、ジペンテン主体等)、水素化テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、水素化芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、テルペンフェノール共重合樹脂、水素化テルペンフェノール共重合樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂などの脂環族系樹脂;C5系炭化水素樹脂、水素化C5系炭化水素樹脂、C5/C9系炭化水素樹脂、水素化C5/C9系炭化水素樹脂などの脂肪族系炭化水素樹脂、水素化C9系炭化水素樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などのフェノール樹脂などが挙げられる。
【0031】
これらの粘着付与樹脂のなかでも、水素化することによって不飽和結合を減少させた樹脂は、耐熱性、耐候性、色相、臭気などに優れているので好ましく用いられる。とくに、アイマーブP140(出光興産社製、軟化点140℃)、ECR5340(エクソンモービル社製、軟化点140℃)、アルコンP140(荒川化学社製、軟化点140℃)、アイマーブP125(出光興産社製、軟化点125℃)、アルコンP125(荒川化学社製、軟化点125℃)、リガライトR1125(イーストマンケミカル社製、軟化点125℃)、ECR5320(エクソンモービル社製、軟化点120℃)などの水素化された脂環族系樹脂が水素化されたジエンポリマーブロックとの相溶性の点で好ましい。
【0032】
(D)成分として用いる第三の粘着付与樹脂は、単一の樹脂であってもよく、また、必要に応じて二種以上の樹脂を適宜併用したものであってもよい。(D)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して100~500質量部、好ましくは200~450質量部である。(D)成分の含有量が過度に少ないと溶融粘度の上昇や柔軟性の低下を引き起こし、逆に、過度に多くなると密着性が低下するという問題が生ずる。また、(D)成分の使用量は、(A)成分中の水素化されたジエンポリマーブロック100質量部に対して140~700質量部、とくに250~600質量部であることが好ましい。
【0033】
<液状軟化剤>
本発明においては、(E)成分として液状軟化剤が用いられる。この液状軟化剤は配合物の粘度を調節し、柔軟性を付与するために配合されるものであり、(A)成分100質量部に対して500~1,500質量部、好ましくは700~1,200の割合で用いられる。液状軟化剤の配合量が少なすぎると、柔軟性が損なわれることとなり、逆に多すぎると耐熱性が低下することとなる。
【0034】
用いられる液状軟化剤は、熱可塑性スチレン系エラストマーをベースポリマーとするホットメルト組成物において従来から使用されているものであればとくに制限されることなく使用することができる。その具体例として、たとえば、パラフィン系、ナフテン系もしくは芳香族系のプロセスオイル;液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレンなどの液状ポリマー;流動パラフィン、オレフィンプロセスオイルなどの炭化水素油;ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルなどの極性を有する油状物などが挙げられる。
【0035】
液状軟化剤は単独で使用してもよく、必要に応じて適宜に組み合わせて使用することもできる。なかでも、ベースポリマーとの相溶性および耐熱性の点から、非極性の炭化水素系油状物、とくにパラフィン系プロセスオイルが好ましく用いられる。
【0036】
<その他の配合剤>
本発明においては、上記の(A)~(E)成分に加えて、熱可塑性スチレン系エラストマーをベースポリマーとするホットメルト組成物の技術分野において通常使用されている前記(A)成分以外のエラストマー成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤、安定剤、溶剤、発泡防止剤などの配合剤を必要に応じて配合することができる。
【0037】
前記(A)成分以外のエラストマー成分としては、質量平均分子量が250,000未満の水素化されたA-B-A型スチレン系熱可塑性エラストマー、ジエンポリマーブロックが水素化されていないA-B´-A型スチレン系熱可塑性エラストマー、A-B型スチレン系熱可塑性エラストマー、ジエンポリマーブロックが水素化されていないA-B´型スチレン系熱可塑性エラストマーなどがあげられる。これらの成分は、本発明の効果を本質的に妨げない範囲で(A)成分の一部を代替する形で包含されていてもよいが、その量が多くなると耐熱性や耐候性が劣るようになるので、その量はベースとなるエラストマー成分中の40質量%以下、さらには20質量%以下にするのが好ましく、とくにこれらの成分を含まないことがもっとも好ましい。このように、(A)成分の一部が他のエラストマーによって代替されている場合には、(B)~(E)成分との割合の基準となる(A)成分の量は、他のエラストマーを含むエラストマー全体の量をもって(A)成分100質量部として扱われる。
【0038】
一次酸化防止剤としては、ナフチルアミン系、p-フェニレンジアミン系、キノリン系、フェノール系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系等が挙げられ、なかでもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。二次酸化防止剤としては、フォスファイト系、チオエーテル系、ヒドロキシルアミン系等が挙げられ、なかでもフォスファイト系が好ましく用いられる。一次酸化防止剤および二次酸化防止剤の含有量は、組成物の酸化防止効果と熱安定性の観点から、(A)成分100質量部に対して1~30質量部、とくに2~20質量部とするのが好ましい。
【0039】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などが挙げられ、なかでもベンゾトリアゾール系が好ましく用いられる。紫外線吸収剤の含有量は、組成物の耐候性の観点から、(A)成分100質量部に対して1~30質量部、とくに2~20質量部とするのが好ましい。充填剤としては、従来から公知のものを用いることができ、各種形状の無機もしくは有機の充填剤が挙げられる。充填剤を配合することにより硬化物を強固なものにすることができ、例えばモルタル、金属等に対しても優れた接着性を発現することができる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ガラスビーズ、酸化チタン、アルミナ、カーボンブラック、クレー、フェライト、タルク、雲母粉、アエロジル、シリカならびにガラス繊維等の無機繊維および無機発泡体が例示される。有機充填剤としてはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の粉末、炭素繊維、合成繊維、合成パルプ等が例示される。
【0040】
シランカップリング剤としては、たとえば、トリメトキシビニルシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを配合すると湿潤面への接着性を向上させる効果が得られる。顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料;ネオザボンブラックRE、ネオブラックRE、オラゾールブラックCN、オラゾールブラックBa(いずれもチバ・ガイギー社製)、スピロンブルー2BH(保土谷化学社製)等の有機顔料が例示され、これらは必要に応じて適宜組み合わせて用いることができる。
【0041】
染料としては、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料などが製品に要求される色合いに応じて適宜選択して用いられる。帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド-ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。発泡防止剤としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モレキュラシーブが挙げられる。
【0042】
本発明のホットメルト組成物を製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、(A)~(E)の各成分と、所望により配合されるその他の成分を、これらを溶融することができる温度付近に加熱されたニーダーに投入し、十分に溶融混合することにより得ることができる。ニーダーとしては、例えば、加熱装置と脱泡装置を備えたバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ヘンシェルミキサー、ブラベンダー型ニーダーやディスパーが挙げられる。必要に応じてニーダー内部を減圧することができる。得られたホットメルト組成物は、例えば、離型箱、ペール缶、ドラム缶に充填され、保存することができる。
【0043】
本発明のホットメルト組成物の軟化点は、通常、130~240℃であり、好ましくは
150~200℃である。軟化点が過度に低いと耐熱性が不足し、逆に過度に高くなると溶融するための操作が難しくなる。また、ホットメルト組成物の溶融粘度は測定温度によって変化するが、210℃における溶融粘度が5,000~200,000mPa・s、とくに10,000~150,000mPa・sであることが施工における操作性の見地から好ましい。
【0044】
本発明のホットメルト組成物を適用することができる基材、すなわち、接着用部材および被着材は、とくに制限されない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレンのようなポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタールのようなエンジニアリングプラスチック;金属、ガラス、ゴムが挙げられる。
【0045】
本発明のホットメルト組成物の用途は特に限定されず、たとえば、自動車や車両(新幹線、電車)、電気製品、建材、木工、製本包装などの用途に使用することができる。自動車関連の用途としては、天井、ドア、シート等の内装材の接着、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモール等の外装材の接着やシールなどを挙げることができる。具体的には、自動車照明灯具を製造する際に光源を保持するプラスチック製のハウジングと光源を保護するレンズとを接合してシールするのに好適に用いることができる。また、電気関連の用途としては、ランプシェイド、スピーカ等の組立等を挙げることができる。さらに、建材や木工関係での用途としては、建築現場、建材の工場製造におけるドア、アクセスフロア、複層床、家具組立、縁貼り、プロファイルラッピング等の接着等を挙げることができる。
【0046】
<シール材>
本発明のシール材は、上記のホットメルト組成物を用いることによって得られるものであり、一般に、ガスケット、パッキング、シーリング、コーキング、パテなどと称されるものである。シール材の形状はとくに限定されず、ペレット状、粉末状、紐状、帯状などいずれの形状であってもよい。
【0047】
シール材は、20℃における1,000%引張時の強度が0.8kgf/cm2以下、さらには0.6kgf/cm2以下、とくに0.5kgf/cm2以下であり、且つ、-20~100℃の範囲において引張時の伸び率が1,000%以上、とくに1,200%以上であることが、部材間の密着性と易解体性を両立させるうえで好ましい。さらに、最近ではポリプロピレンに代表されるポリオレフィンの部材とポリカーボネート製の部材とをホットメルト接着剤で接合する場面が多くなっているので、20℃におけるポリカーボネート(PC)への密着強度が1.5kgf/cm2以上、とくに2.0kgf/cm2以上であることがシール性を担保するうえで適切である。
【0048】
本発明のシール材を用いるシール方法はとくに限定されず、常法にしたがって行えばよい。たとえば、ホットメルト型のシール材を用いて自動車のランプハウジングを装着する場合には、次のようにして実施することができる。
【0049】
ホットメルト組成物は、通常、アプリケーターと称される加熱塗布装置を用いて自動的または手動的にシールを要する部材面に加熱塗布される。加熱塗布装置は、溶融したホットメルト組成物をギヤポンプ等で一定量吸い上げることができる装置であり、ホットメルト組成物の軟化点に応じて適宜加熱して用いられる。ホットメルト組成物の塗布形状はとくに限定されないが、通常は、ホットメルト組成物をランプハウジング面のようなシールされる部材に対し加熱塗布される。その後、ホットメルト組成物が塗布された部材に他の部材を接触させて機械的に締め付けることにより、接合面がシールされたランプハウジングが形成される。
【0050】
自動車のランプハウジング面に加熱塗布してループ形状を形成させる方法以外に、あらかじめ自動車用ランプの水密保持に必要なループ形状のガスケットを作り、それを自動的または手動的にランプハウジング面に貼付することもできる。このようなガスケットは、離型紙やポリテトラフルオロエチレン製の離型性フィルム等を準備し、それらの上にホットメルト組成物を所定の形状に加熱塗布することによって作ることができる。
【0051】
組立てたランプのハウジングを交換する必要が生じたり、使用後の製品を解体してレンズとハウジングに分離する必要が生じた場合には、以下のようにして行うことができる。本発明のシール材は易解体性に優れているので、従来のようにシーリング材を加熱し低粘度化するための工業用ドライヤーやプラスチックバール等の取り外し用工具を用いずに、機械的に締め付けた部分の拘束を解除するだけでレンズとハウジングを容易に取り外すことができる。
【0052】
この場合、レンズとハウジングの間隙に用いられていたシール材はそれぞれの接触面に粘接着しているが、シール材の凝集力はその粘接着力よりも大きいため界面破壊となり、接触面にシール材の残塊が付着残存することなく容易に剥すことができる。このように、本発明のシール材を用いた場合には、成型ガスケットを用いた場合と同様に特殊な解体用工具等を必要とせず、容易にレンズとハウジングを取り外すことが可能となる。
【0053】
このように、本発明のホットメルト組成物は、耐熱性と基材への密着性および柔軟性を兼ね備える点において優れた性能を有している。また、そのホットメルト組成物から調製されるシール材は、部材間のシール性と解体性の双方を兼ね備え、優れた耐熱性を有する点で優れている。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」はとくに断りのない限り質量基準である。また、物性の評価法は以下のとおりである。
【0055】
(1)軟化点:JAI-7-1997に準拠して測定した。
(2)溶融粘度:ブルックフィールド社製自動粘度計(型式:BROOKFIELD DV-II+Pro)を用いて210℃にて測定した。測定に使用した自動粘度計のスピンドルNo.はNo.29であり、回転数は5rpmに設定した。
(3)引張強度:ホットメルトシール材を10mm×50mm×2mmの大きさに加工し、-20℃、20℃および100℃の環境の下、500mm/minの速度にて引っ張り、500%伸長時および1,000%伸長時の強度(kgf/cm2)を測定した。
(4)伸び:(3)の引張強度測定において試験片が破断した時の伸び率(%)を測定した。
(5)ポリカーボネートへの密着性および密着力:ホットメルトシーリング材を10mm×10mm×3mmの大きさに加工し、25mm×50mm×3mmのポリカーボネート板(タキロンシーアイ社製 PC1600)にて挟み込んだ後、厚みが50%になるまで圧縮し(3mm厚を1.5mm厚まで圧縮)、室温にて72時間静置した後に開放し、24時間経過したものを試験片とした。20℃の環境の下、試験片を50mm/minの速度にて引っ張り、基材から引きはがした際の密着強度を測定した。その密着強度に基づき以下の4段階で評価した。
◎: 2.0kgf/cm2以上
○: 1.5kgf/cm2以上、2.0kgf/cm2未満
△: 1.0kgf/cm2以上、1.5kgf/cm2未満
×: 1.0kgf/cm2未満
【0056】
(6)耐熱垂下性:10mm角の立方体状に加工したホットメルトシーリング材をアルミニウム板に張り付け140℃環境下に静置して72時間後の形状変化を観察し、形状変化の度合いを以下の4段階で評価した。
◎: 形状変化なし
○: 若干の変形有り
△: 一部流動
×: 完全流動
(7)柔軟性:上記(3)における20℃の1,000%引張時の強度を以下の4段階で評価した。
◎: 0.5kgf/cm2以下
○: 0.5kgf/cm2超、0.8kgf/cm2以下
△: 0.8kgf/cm2超、1.2kgf/cm2以下
×: 1.2kgf/cm2超
【0057】
実施例1
(A)成分としてSEEPS(セプトン4099、質量平均分子量500,000、スチレン含量30%、クラレ社製)100部、(B)成分としてα-メチルスチレン重合体であるSylvares SA140(アリゾナケミカル社製、軟化点140℃、質量平均分子量4,200)50部、(C)成分としてスチレンとα-メチルスチレンの共重合体であるKristalex 1120(EASTMAN社製、軟化点119℃、質量平均分子量2,200)200部、(D)成分として水添脂環族系粘着付与樹脂であるアイマープ P140(出光興産社製、軟化点140℃、質量平均分子量3,800)200部、(E)成分としてパラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW90、出光興産社製)800部、一次酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF社製)5部および紫外線吸収剤としてチヌビン326(BASF社製)5部を含むホットメルト組成物を、各成分を加熱混合することにより調製した。得られた組成物について、引張強度、伸び、ポリカーボネートに対する密着性、耐熱垂下性を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2~8および比較例1~4
(A)成分~(E)成分の組成を表1にものに変更すること以外は、実施例1と同様にしてホットメルト組成物を調製し、得られた組成物について実施例1と同様にして評価した。結果を表1および表2に示す。
【0059】
なお、上記の実施例2~8および比較例1~4において使用されている材料は、以下のとおりである。
クレイトンG1633(クレイトンポリマー社製): SEBS、質量平均分子量450,000、スチレン含量30%
Kristalex 5140(EASTMAN社製): スチレンとα-メチルスチレンの共重合体、軟化点140℃、質量平均分子量5,100
FTR 2120(三井化学社製): スチレンとα-メチルスチレンの共重合体、軟化点125℃、質量平均分子量2,000
ECR 5340(エクソンモービル社製): 水添脂環族系粘着付与樹脂、軟化点140℃、質量平均分子量700
【0060】
【0061】
【0062】
表1~2の結果から、第一のスチレン系樹脂と第二のスチレン系樹脂を併用した本発明のホットメルト組成物は、柔軟性、密着性、耐熱性に優れた性能を示すことがわかる。これらの本発明のホットメルト組成物からなるシール材を用いて、ポリカーボネート製部材とポリプロピレン製部材を接合した製品を組み立てたところ、十分なシール性を有していた。また、その製品は格別な工具を用いることなく、容易にそれぞれの部品に解体することができた。
【0063】
これに対して、第二のスチレン系樹脂を含まない場合(比較例1)には柔軟性が十分でなく、ポリカーボネートに対する密着性においても満足できるものではなかった。逆に、第一のスチレン系樹脂を含まない場合(比較例2および3)には、密着性および耐熱性に劣っていた。また、第一のスチレン系樹脂の量が多すぎる場合(比較例4)には、柔軟性が十分でなく、100℃での伸びも不十分であった。高温での伸びが十分でないホットメルト組成物をシール材として組み立てた自動車用ランプは、使用時に高温になると伸びの不足が原因となって外部からの衝撃に追随しにくくなり、十分なシール性を得ることが難しくなる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のホットメルト組成物は、極性を有するポリカーボネートおよび無極性のポリオレフィンの双方に対して適度の密着性を有しており、しかも解体時に容易に部材を分離可能であるから、自動車ランプ用のホットメルト型シール材として好適である。また、プラスチックおよび金属を被着材とする自動車部品、電気製品、住建部材の防水シール材としても有用である。