IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小橋工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業機及び作業システム 図1
  • 特許-作業機及び作業システム 図2
  • 特許-作業機及び作業システム 図3
  • 特許-作業機及び作業システム 図4
  • 特許-作業機及び作業システム 図5
  • 特許-作業機及び作業システム 図6
  • 特許-作業機及び作業システム 図7
  • 特許-作業機及び作業システム 図8
  • 特許-作業機及び作業システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-25
(45)【発行日】2023-05-08
(54)【発明の名称】作業機及び作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230426BHJP
   A01B 35/00 20060101ALI20230426BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20230426BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230426BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
A01B69/00 301
A01B35/00 B
A01B63/10 Z
G05D1/02 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020187785
(22)【出願日】2020-11-11
(62)【分割の表示】P 2016018923の分割
【原出願日】2016-02-03
(65)【公開番号】P2021027833
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2020-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-226525(JP,A)
【文献】特開2008-289422(JP,A)
【文献】特開2015-221009(JP,A)
【文献】特開2011-62115(JP,A)
【文献】特開2004-12233(JP,A)
【文献】特開2007-124905(JP,A)
【文献】特開2004-8008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B35/00
A01B59/00-63/12
A01B69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の側方位置を作業可能な作業部と、
前記作業部の作業位置および作業方向を所定の状態に維持して、前記走行機体の走行に沿って前記作業部を作業させる第1制御モードと、圃場の隅部に至るまでの所定範囲において前記作業部を作業させる第2制御モードと、を実行する制御手段と、を備える作業機であって、
前記制御手段は、前記走行機体から圃場の隅部までの距離に基づいて、前記第1制御モードを前記第2制御モードに切り替え、かつ前記走行機体に対して前記第2制御モードに対応する動作を指示する信号を送信する、作業機。
【請求項2】
前記信号は、前記走行機体に対して旋回動作を指示する制御信号である、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記信号は、前記走行機体に対して、前記作業機が前記第2制御モードへの切り替えを行う切り替えタイミングである旨を通知する通知信号である、請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1制御モードは、通常作業制御モードであり、
前記第2制御モードは、自動直進作業モードである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項5】
前記信号は、前記作業機が畦塗り作業中であることを条件として送信される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御手段は、前記切り替えタイミングにおいて、前記切り替えタイミングの到来を音、光又は振動により作業者に報知する報知手段にその旨を報知させる、請求項3に記載の作業機。
【請求項7】
前記制御手段は、GPS(全地球測位システム)を用いて算出した前記走行機体又は前記作業機の位置情報に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項8】
前記制御手段は、距離センサからの出力に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項9】
前記制御手段は、前記走行機体の前方を撮影した画像の解析結果に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御手段は、予め設定された距離と、前記走行機体から圃場の隅部までの距離とを比較し、両者が一致したとき前記信号を送信する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項11】
前記制御手段は、前記予め設定された距離を、前記走行機体又は前記作業機の移動速度に応じて更新する、請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
前記制御手段は、前記予め設定された距離と前記走行機体又は前記作業機の移動速度とを関連付けたテーブルを予め記憶した記憶手段を有し、
取得した前記走行機体又は前記作業機の移動速度に基づいて前記記憶手段から読み出した距離と、前記走行機体から圃場の隅部までの距離とを比較し、両者が一致したとき前記信号を送信する、請求項10又は11に記載の作業機。
【請求項13】
前記制御手段は、前記信号を送信するに当たり、前記走行機体から圃場の隅部までの距離に加え、前記走行機体又は前記作業機の移動速度を用いる、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項14】
走行機体と、該走行機体に装着される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の作業機とを有する作業システム。
【請求項15】
前記走行機体から圃場の隅部までの距離は、前記走行機体から前記制御手段に入力された情報に基づいて算出される、請求項14に記載の作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に装着され、圃場に対して所定の作業を行うことが可能な作業機に関する。特に、走行機体の走行位置に対して側方の位置を作業可能なオフセット作業機に関する。例えば、圃場の外縁に畦を成形する畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の技術分野において、トラクタ等の走行機体に装着され、走行機体の進行方向に沿って圃場における各種作業を行う作業機が知られている。このような作業機は、作業の内容に応じて様々な種類のものがあり、例えば、走行機体の走行位置に対して側方の位置(走行機体に対してオフセットした位置)を作業させる作業機として、畦塗り機、溝形成機、草刈り機等のオフセット作業機が知られている。
【0003】
特に、畦塗り機は、広い圃場の外縁に亘って均質な畦を成形するに当たり、多大な時間と労力を要する畦塗り作業の効率化を図るものとして近年注目されている。畦塗り機の基本構成は、走行機体からの動力が入力される入力軸を備える装着部と、入力軸からの動力を伝達する動力伝達機構と、作業位置(オフセット位置)での機体支持を行う連結部と、伝達された動力によって畦塗り作業を行う作業部とを含む。
【0004】
本出願人は、畦塗り作業のさらなる効率化を求め、圃場の隅部における畦塗り作業に要する時間を短縮するための畦塗り機を開発した。この畦塗り機は、走行機体を圃場の隅部に向かって直進させ、隅部に到達したら走行機体を旋回動作させるだけで自動的に圃場の隅部まで畦塗り作業を行うことができるという画期的なものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4651915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された畦塗り機は、作業部を走行機体に対して反対側の作業位置に移動させ、走行機体をバック走行させて畦塗り作業を行っていた従来の畦塗り機に比べて、走行機体を前進走行させるだけで隅部の畦塗り作業を完了できるという点で作業時間の大幅な短縮を達成している。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の畦塗り機では、走行機体が圃場の隅部に到達したタイミングで、走行機体を旋回動作させるためにハンドルを切る操作が必要となるが、そのハンドル操作のタイミングは作業者の判断に任されていた。そのため、畦塗り作業に慣れていない作業者などの場合、ハンドル操作のタイミングが早過ぎたり遅すぎたりして隅部の畦塗り作業が上手くいかないおそれがあった。このように、特許文献1記載の畦塗り機には、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明の課題は、上記事情に鑑み、圃場の端部、特に圃場の隅部の作業を容易にする作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による作業機は、走行機体の側方位置を作業可能な作業部と、前記作業部の作業位置および作業方向を所定の状態に維持して、前記走行機体の走行に沿って前記作業部を作業させる通常作業制御モードと、前記走行機体の走行方向の変化に伴う前記作業位置および前記作業方向の変化を自動調整することにより、前記所定の状態を維持したまま前記作業部を作業させる自動直進作業制御モードと、を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記走行機体から圃場の隅部までの距離に基づいて、前記自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングを決定する。
【0010】
前記制御手段は、前記切り替えタイミングにおいて、前記切り替えタイミングの到来を音、光又は振動により作業者に報知する報知手段にその旨を報知させてもよい。
【0011】
前記制御手段は、前記切り替えタイミングにおいて、前記通常作業制御モードから前記自動直進作業制御モードへの切り替えを行うものであってもよい。
【0012】
前記制御手段は、GPS(全地球測位システム)を用いて算出した前記走行機体又は当該作業機の位置情報に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出してもよい。また、それ以外にも、距離センサからの出力に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出してもよいし、前記走行機体の前方を撮影した画像又は前記走行機体を上方から撮影した画像の解析結果に基づいて、前記走行機体から圃場の隅部までの距離を算出してもよい。
【0013】
前記制御手段は、予め設定された距離と、算出した前記走行機体から圃場の隅部までの距離とを比較し、両者が一致したときを前記切り替えタイミングとして決定するものであってもよい。その際、予め設定された距離を、前記走行機体又は当該作業機の対地速度に応じて更新してもよい。
【0014】
また、前記制御手段は、前記予め設定された距離と前記走行機体又は当該作業機の対地速度とを関連付けたテーブルを予め記憶した記憶手段を有していてもよい。そして、取得した前記走行機体又は当該作業機の対地速度に基づいて前記記憶手段から読み出した距離と、算出した前記走行機体から圃場の隅部までの距離とを比較し、両者が一致したときを前記切り替えタイミングとして決定してもよい。
【0015】
前記制御手段は、前記切り替えタイミングを決定するに当たり、前記走行機体から圃場の隅部までの距離に加え、前記走行機体又は当該作業機の対地速度を用いてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業機によれば、圃場の端部、特に圃場の隅部の作業を容易にする作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態による作業システムの構成を示す外観図の一例である。
図2】第1実施形態によるオフセット作業機の制御手段の構成を示すブロック図の一例である。
図3】第1実施形態によるオフセット作業機の制御手段が実行する通常作業制御モードの一例を示すフロー図である。
図4】第1実施形態によるオフセット作業機の制御手段が実行する自動直進作業制御モードの一例を示すフロー図である。
図5】第2実施形態によるオフセット作業機の制御手段の構成を示すブロック図の一例である。
図6】第3実施形態によるオフセット作業機の制御手段の構成を示すブロック図の一例である。
図7】第4実施形態によるオフセット作業機の制御手段の構成を示すブロック図の一例である。
図8】第6実施形態による作業システムにおける畦塗り機の全体構成の一例を示す図である。
図9】第6実施形態による作業システムにおける畦塗り機の作業部の作業位置を制御する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の作業機の実施形態について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
また、説明の便宜上、上方(上部)又は下方(下部)という語句を用いて説明するが、上方(上部)は水平面から遠ざかる方向を示し、下方(下部)は水平面に向かって近づく方向を示す。同様に、前方(前側)又は後方(後側)という語句を用いて説明するが、前方(前側)は作業機を基準として走行機体が位置する方向を示し、後方(後側)は前方とは180°反対の方向を示す。
【0020】
〈第1実施形態〉
[作業システムの構成]
本実施形態では、作業システムとして、オフセット作業機を備えた農作業システムを例示する。具体的には、トラクタ等の走行機体に対し、オフセット作業機として畦塗り機を備えたシステムを例示して説明する。なお、ここではオフセット作業機として畦塗り機を例示するが、溝形成機、草刈り機等の他のオフセット作業機でも同様である。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態による作業システムの構成を示す外観図の一例である。第1実施形態による作業システム100は、トラクタ等の走行機体10と、オフセット作業機としての畦塗り機20とを含む。このような構成の作業システム100が、圃場200に配置され、圃場の外縁を形成する畦201を成形する。
【0022】
畦塗り機20は、走行機体10における3点リンク等の連結手段11に装着される装着部21と、走行機体10の走行位置に対して側方にオフセットした位置を作業する作業部22と、装着部21に対して一端が回動自在に軸支され、作業部22に対して他端が回動自在に軸支されたオフセットリンク機構部23とを備える。オフセットリンク機構部23は、装着部21に対して作業部22を所定の作業位置(オフセット位置ともいう)に支持する機能を有する。
【0023】
ここで、装着部21には、走行機体10のPTO軸に連結され、PTO軸からユニバーサルジョイントや伝動シャフト等を介して動力が伝達される入力軸が設けられ、オフセットリンク機構部23にはこの入力軸からの動力を作業部に伝達する動力伝達機構が設けられる。また、作業部22には、畦塗り作業を行うための略円錐状の整畦部と該整畦部を回転駆動させるための駆動部が設けられている。
【0024】
装着部21とオフセットリンク機構部23との間には、作業位置調整機構24が設けられている。作業位置調整機構24は、油圧シリンダ,電動シリンダ等のアクチュエータによって構成され、その伸縮動作によってオフセットリンク機構部23を回動させ、作業部22の作業位置を調整することにより、作業部22の作業位置を調整する。なお、本実施形態では、作業位置調整機構24による作業部22の回動動作により作業部22の作業位置を調整しているが、これに加えて、又はこれに代えて、オフセットリンク機構部23のリンク長さを伸縮調整させることにより、作業部22の作業位置を調整することも可能である。
【0025】
また、オフセットリンク機構部23と作業部22との間には作業方向調整機構25が設けられている。作業方向調整機構25も前述の作業位置調整機構24と同様に油圧シリンダ,電動シリンダ等のアクチュエータによって構成され、その伸縮動作によって作業部22を軸部26周りに回動させ、作業部22の作業方向を調整する。
【0026】
以上説明した作業部22、オフセットリンク機構部23、作業位置調整機構24及び作業方向調整機構25の動作は、いずれも畦塗り機20が備える制御手段27により制御される。制御手段27の具体的な構成については後述する。制御手段27は、位置センサ28からの検出信号に基づいて、作業位置調整機構24を制御し、角度センサ29の検出信号に基づいて、作業方向調整機構25を制御する。
【0027】
なお、位置センサ28としては、作業部22と畦201の整畦面201aとの位置関係を検出可能なセンサであれば如何なるものを用いてもよく、接触式であっても非接触式であってもよい。例えば、作業部22と整畦面201aとの間の距離を計測する距離センサを用いてもよいし、可動式のアームを整畦面201aに接触させ、そのアームの変動をポテンショメータ等で読み取って作業部22と整畦面201aとの間の距離を計測するものであってもよい。
【0028】
また、角度センサ29としては、整畦面201aに対する作業部22の作業方向の変化を検出することができるものを用いることができる。例えば、角度センサ29として、軸部26の周囲に設けられたジャイロセンサやポテンショメータ等を用いることができる。
【0029】
以上の構成を含む畦塗り機20は、トラクタ等の走行機体10の後部に装着され、走行機体10が走行する方向に牽引される。具体的には、走行機体10は、畦201に沿って走行し、作業部22の作業により畦201を塗り替えて成形する。このとき、作業位置調整機構24及び作業方向調整機構25の動作により、作業部22の作業位置及び作業方向は、所定の状態に維持される。このように、作業位置及び作業方向を所定の状態に維持して、走行機体の走行に沿って作業部を作業させるモードを「通常作業制御モード」という。
【0030】
本実施形態の作業システム100においては、通常作業が進行して、走行機体10が圃場200の隅部202に接近すると、作業部22は、自動的に直進作業を行うモードで制御される。すなわち、作業部22は、走行機体10が隅部202を回避するように旋回動作を行った後も、通常作業の状態を維持したまま隅部202に到達するまで整畦作業を継続するように制御手段27により制御される。
【0031】
このとき、走行機体10の旋回動作に伴って、走行機体10と作業部22との相対的な位置関係は変化するが、作業対象である畦201の整畦面201aと作業部22との間の相対的な位置関係は変化しない。つまり、制御手段27は、整畦面201aと作業部22との相対的な位置関係を変化させないように、前述の作業位置調整機構24及び作業方向調整機構25の動作を制御する。このように、走行機体の走行方向の変化に伴う作業位置及び作業方向の変化を自動調整することにより、作業部を所定の状態(例えば、通常作業時の状態)に維持したまま作業部を作業させるモードを「自動直進作業制御モード」という。
【0032】
本実施形態の作業システム100においては、畦塗り機20の制御手段27が、走行機体10から圃場200の隅部202までの距離(X)に基づいて、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングを決定する。つまり、制御手段27は、走行機体10から圃場200の隅部202までの距離(X)が、所定の値に到達したか否かを判断することにより、走行機体10が隅部202、すなわち旋回動作を行うべき地点に到達したか否かを判断する。
【0033】
本実施形態による走行機体10は、例えば距離センサ12を備えており、通常作業の間、走行機体10から隅部202までの距離を計測する。具体的には、走行機体10から該走行機体10の正面前方に位置する畦201の整畦面201aまでの距離(X)を計測することにより、隅部202までの距離を計測する。なお、距離(X)の計測は、連続的に計測してもよいし、間欠的に計測してもよい。例えば、所定の期間ごとに距離センサ12の出力信号を検出して距離(X)を求めてもよい。
【0034】
距離センサ12としては、一般的な光センサや超音波センサを用いることができ、距離さえ計測できれば特に制限はない。また、本実施形態では、距離センサ12を走行機体10の先端部分に設ける例を示したが、これに限らず、運転席、走行機体10の後端部など任意の場所に設けることができる。本実施形態では、距離センサ12は、走行機体10から正面前方の畦201の整畦面201aまでの距離を計測する目的で設けられているため、走行機体10の先端部に設けられているが、後述するように、走行機体10の旋回動作のタイミングを決定できれば足りるため、タイミングを決定するための演算に必要な基準となる距離をどのように設定するかは任意である。
【0035】
距離センサ12の計測結果により、走行機体10から畦201の整畦面201aまでの距離が所定の距離(X1)に到達したことを制御手段27が検知すると、制御手段27は、通常作業制御モードから後述する自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングが到来したと判断し、その旨を示す信号を走行機体10又は畦塗り機20が備える報知手段13に伝達する。報知手段13は、スピーカ等の音出力手段、LED等の光出力手段、又はバイブレータ等の振動出力手段を用いることができ、音、光又は振動により、自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングが到来したことを作業者に報知する。なお、報知手段13として、音出力手段を用いる場合、「ハンドルをいっぱいまで左に切って下さい」等の音声ガイダンスであることが好ましい。
【0036】
このように、本実施形態では、走行機体10と圃場200の隅部202との間の距離を距離センサ12により計測し、その距離が予め設定された所定の距離に到達すると、作業者に対して、報知手段13により自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングが到来したことを報知する。その結果、畦塗り作業に慣れない作業者であったり高齢の作業者であったりしても、容易に自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングを認識することができ、的確に走行機体10のハンドル操作(すなわち、走行機体10の旋回動作)を行うことができる。
【0037】
[制御手段の構成]
図2は、前述した畦塗り機20の制御手段27の構成を示すブロック図の一例である。本実施形態では、制御手段27には、記憶部271、比較演算部272、及び信号出力部273が含まれる。
【0038】
記憶部271には、作業位置基準値(α)271a、作業方向基準値(β)271b、制御プログラム271c、及び距離基準値(X0)271dが記憶されている。比較演算部272には、第1比較部272a、第2比較部272b、及び第3比較部272cが含まれている。信号出力部273には、作業位置調整出力部273a、作業方向調整出力部273b、及び報知信号出力部273cが含まれる。これらの各部は、図示しないCPU(中央演算処理装置)が記憶部271から読み出した制御プログラム271cを実行することにより制御される。
【0039】
作業部22の作業位置(作業位置)及び作業方向の変化は、それぞれ位置センサ28及び角度センサ29により検出される。これら位置センサ28及び角度センサ29で検出された検出信号は、それぞれ比較演算部272における第1比較部272a及び第2比較部272bに入力される。
【0040】
第1比較部272aでは、入力された位置センサ28からの検出信号と記憶部271から読み出された作業位置基準値(α)271aとが比較され、両者のずれ量が出力値として信号出力部273の作業位置調整出力部273aに入力される。また、同様に、第2比較部272bでは、入力された角度センサ29からの検出信号と記憶部271から読み出された作業方向基準値(β)271bとが比較され、両者のずれが出力値として信号出力部273の作業方向調整出力部273bに入力される。
【0041】
そして、作業位置調整出力部273aでは、第1比較部272aから取得したずれ量に関する出力値に基づき、そのずれを補正するための駆動信号が出力され、作業位置調整機構24により作業部22の作業位置(作業位置)を調整する制御がなされる。また、作業方向調整出力部273bでは、第2比較部272bから取得したずれ量に関する出力値に基づき、そのずれを補正するための駆動信号が出力され、作業方向調整機構25により作業部22の作業方向を調整する制御がなされる。
【0042】
次に、第3比較部272cでは、距離センサ12から、走行機体10と該走行機体10の正面前方に位置する整畦面201aとの間の距離を示す信号が入力される。この場合、距離センサ12からの検出値を制御手段27側で処理して距離を算出してもよいし、距離センサ12側で距離を求め、その距離に対応する信号を制御手段27に対して入力してもよい。入力された距離を示す信号は、第3比較部272cにおいて、記憶部271から読み出された距離基準値(X0)271dと比較され、その比較結果が出力値として信号出力部273の報知信号出力部273cに入力される。
【0043】
報知信号出力部273cでは、比較結果が一致を示したとき、すなわち、走行機体10と正面前方の整畦面201aとの間の距離が、記憶部271に記憶された距離基準値(X0)271aと一致したとき、報知信号を報知手段13に対して出力し、報知手段13を駆動して作業者に自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングであることを報知する制御がなされる。
【0044】
ここで、本実施形態では、自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングの目安となる距離基準値(X0)271dとして、予め設定された値を記憶しておく。これにより、走行機体10と正面前方の整畦面201aとの間の距離が、その距離基準値(X0)271dとなったタイミングで走行機体10の旋回動作を開始すると、走行機体10を旋回動作させるだけで、自動的に圃場200の隅部202まで作業部22を直進作業させることができる。
【0045】
なお、「予め設定された値」は、作業者が入力した値、過去に使用された値、サーバからダウンロードした値のいずれであってもよい。例えば、過去に使用された値としては、過去に算出して使用された値そのものやその統計値(平均値など)を用いてもよいし、過去に良好な実績を残した値を用いてもよい。また、サーバからダウンロードした値としては、例えば、各地からサーバに収集された設定値から選択された値をダウンロードとしてもよいし、作業対象となる圃場に似た環境の他の圃場に使用された設定値をダウンロードしてもよい。
【0046】
したがって、距離基準値(X0)271dを設定するに当たり、走行機体10の旋回動作の中心(旋回中心)から走行機体10までの距離(回転半径)や走行機体10の移動速度を考慮することが望ましい。例えば、走行機体10のスリップによる車輪の空転等を考慮すると、走行機体10と圃場200との相対的な速度関係を示す対地速度を考慮することが望ましいと言える。このような対地速度は、ドップラー効果を利用した超音波センサなどを用いることにより容易に取得することが可能である。
【0047】
以上を踏まえると、距離基準値(X0)271dを設定する際には、走行機体10のサイズや機種及び/又は走行機体10の移動速度(好ましくは対地速度)ごとに、最適な距離基準値(X0)271dを設定しておくことが好ましい。例えば、走行機体10の対地速度が0.4km/h以下の場合における値と、0.4km/hを超え0.6km/h以下の場合における値と、0.6km/hを超える場合における値とを、それぞれ異なる値として記憶しておいてもよい。
【0048】
この場合、距離基準値(X0)271dと走行機体10の対地速度とを関連付けたテーブルとして記憶部271に記憶しておくことも可能である。勿論、距離基準値(X0)271aとして単一の値を記憶しておき、取得された走行機体10の対地速度に応じて、距離基準値(X0)271aを適宜更新して対応する値とすることも可能である。
【0049】
なお、上述した説明では、走行機体10の対地速度を例に挙げて説明したが、畦塗り機20の対地速度を代用しても構わない。その場合、畦塗り機20に対して対地速度を測定可能な手段(超音波センサ等)を設けておき、所定の規格に従って畦塗り機20側で取得した対地速度等のデータを走行機体10側の制御手段に送信すればよい。例えば、所定の規格としては、ISOBUSやCAN(Controller Area Network)を用いることができる。
【0050】
次に、図3及び図4を用いて通常作業制御モード及び自動直進作業制御モードのフローについて説明する。図3は、畦塗り機20の制御手段27が実行する通常作業制御モードの一例を示すフロー図である。図4は、畦塗り機20の制御手段27が実行する自動直進作業制御モードの一例を示すフロー図である。
【0051】
図3に示すように、先ず、作業が開始されて(S10)、制御手段27の電源がONになると(S11)、位置センサ28及び角度センサ29が作動して作業部22の作業位置及び作業方向の検出が開始される(S12A、S12B)。このとき、作業位置調整機構24と作業方向調整機構25は所定状態に維持されており、走行機体10を直進走行させながら、作業部22によって直線的な畦塗り作業が行われる。
【0052】
通常作業制御モードでは、位置センサ28及び角度センサ29の検出値が随時制御手段27の記憶部271に送られ、作業位置基準値(α)271a及び作業方向基準値(β)271bの設定がなされる(S13)。この作業位置基準値(α)271a及び作業方向基準値(β)271bの設定は、随時位置センサ28及び角度センサ29から送られてくる検出値から所定期間の平均値を求めて基準値を算出してもよいし、随時送られてくる検出値をその都度記憶されている基準値と置き換えて、順次更新するようにしてもよい。
【0053】
この基準値設定(S13)のプロセスは、通常作業制御モードの作業終了(S14,S16)まで続けられ、その間に、制御手段27に対して自動直進作業制御モードを実行する旨の指示操作がなされると(S15)、通常作業を終了して(S17)、図4に示される自動直進作業制御モードに移行する(S18)。なお、自動直進作業制御モードを実行する旨の指示操作は、手動のスイッチを押し下げる操作であってもよいし、走行機体10のハンドル操作(ステアリング操作)等と連動させてもよい。
【0054】
本実施形態の場合、この自動直進作業制御モードを実行する旨の指示操作のタイミングを、上述した報知手段13による報知によって作業者に知らせる。
【0055】
図4に示すように、作業が開始されて(S20)、自動直進作業制御モードが実行されると(S21)、その時点で設定されている作業位置基準値(α)271a及び作業方向基準値(β)271bを自動直進作業制御モードの基準値として維持される(S22)。そして、報知手段13の駆動により、走行機体10が圃場200の隅部202に到達したこと、すなわち、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングであることを認識した作業者により走行機体10の旋回動作がなされると(S23)、自動直進作業制御モードの制御下において、位置センサ28による作業部22のオフセット位置の検出と角度センサ29による作業部22の作業方向の検出とがなされる(S24A、S24B)。
【0056】
そして、前述した制御手段27による制御により、走行機体10の走行方向の変化に伴う作業部22の作業位置及び作業方向の変化をキャンセルするように作業位置調整機構24及び作業方向調整機構25が自動制御され(S25A、S25B)、結果として、作業部22の直進作業が維持される。
【0057】
そして、作業部22が圃場200の隅部202に到達するタイミングで自動直進作業制御モードが終了し(S26)、作業部22の自動直進作業が終了する(S27)。
【0058】
以上説明した本実施形態の作業システム100によれば、走行機体10に牽引された畦塗り機20を使用して圃場200の畦201を成形し、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングを、走行機体10から正面前方に位置する畦201の整畦面201aまでの距離(X)に基づいて決定し、自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングの到来を報知手段13により作業者に報知することができる。
【0059】
これにより、畦塗り作業に不慣れな作業者や走行機体の運転に不慣れな作業者であっても、自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングの到来を容易に認識することができ、走行機体の旋回動作(ハンドル操作)を行うだけで簡単に圃場の隅部の畦塗り作業を遂行することができる。
【0060】
〈第2実施形態〉
第2実施形態の作業システムについて図5を用いて説明する。具体的には、本実施形態では、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えを第2実施形態の作業システムが自動的に実行する。なお、本実施形態では、図2に示した作業システム100と異なる点のみに着目して説明を行い、同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図5は、畦塗り機20に搭載される制御手段27aの構成を示すブロック図の一例である。本実施形態の制御手段27aには、新たに、第3比較部272cからの出力信号を入力とする制御モード切り替え部274が追加されている。制御モード切り替え部274は、距離センサ12の出力に基づいて取得した距離と記憶部271から読み出した距離基準値(X0)271dとが一致したとき、すなわち、第3比較部272cからの出力信号(一致信号)を契機として、通常作業制御モードを自動直進作業制御モードに切り替える制御を行う。通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えは、実行する制御プログラム271cの変更により行えばよい。
【0062】
第1実施形態では、第3比較部272cからの出力信号を受けて報知信号出力部273cを用いて報知手段13を駆動し、作業者に制御モードの切り替えタイミングである旨を伝えるのみであり、制御モードの切り替えは手動で行う例を示した。本実施形態では、作業者に制御モードの切り替えタイミングである旨を伝えるだけでなく、制御モードの切り替えを自動的に行うことができる。なお、作業者に制御モードの切り替えタイミングを伝える必要がない場合は、報知信号出力部273cや報知手段13を省略してもよい。
【0063】
また、制御手段27aは、制御モード切り替え部274から走行機体10に対して制御信号を送信し、走行機体10の制御手段(図示せず)に、走行機体10の旋回動作を指示してもよい。この場合、走行機体10の制御手段は、制御モード切り替え部274からの制御信号を受信し、走行機体10の旋回動作を自動的に実行することが可能である。例えば、走行機体10の進行方向に対して右側の作業可能な位置に作業部22がある場合、走行機体10の制御手段は、左側に旋回動作をするよう走行機体10を自動制御すればよい。なお、この場合においては、畦塗り機20が作業中であることを条件にして制御モードの自動制御を行うことが望ましい。これは、非作業時に走行機体10が圃場の隅部に近づいたときに誤って制御モードが切り替わることを防止するためである。
【0064】
ここでは、制御モード切り替え部274から走行機体10の旋回動作を指示する制御信号を出力する例を示したが、これに限らず、報知信号出力部273cから制御モードの切り替えタイミングである旨を通知する通知信号を出力してもよい。この場合、走行機体10の制御手段は、通知信号により制御モードの切り替えタイミングの到来を認識し、走行機体10の旋回動作を開始することができる。勿論、通知信号を利用する場合は、制御モード切り替え部274からではなく、第3比較部272cから直接走行機体10の制御手段に対して通知信号を出力してもよい。
【0065】
以上説明した第2実施形態によれば、走行機体と圃場の隅部との間の距離に基づいて通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えタイミングが決定されるとともに、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えが自動的に実行される。そのため、作業者は特段の操作を必要とせずに自動直進作業制御モードへの移行をスムーズに行うことができる。
【0066】
さらに、通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えと同時に、走行機体の旋回動作を実行するように自動制御することも可能である。この場合、作業者が走行機体のハンドル操作を行わなくても自動的に圃場の隅部における畦塗り作業を実行することができる。さらに、走行機体の旋回動作を実行する前に、事前に作業者に対して制御モードの切り替えタイミングである旨を報知することも可能である。
【0067】
〈第3実施形態〉
第3実施形態の作業システムについて図6を用いて説明する。具体的には、本実施形態では、第1実施形態における距離センサに代えて、GPS(全地球測位システム)からの電波を受信するGPS受信機を備え、GPS受信機によって取得した走行機体の位置情報に基づいて、走行機体から圃場の隅部までの距離を算出する。なお、本実施形態では、図2に示した作業システム100と異なる点のみに着目して説明を行い、同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図6は、畦塗り機20に搭載される制御手段27bの構成を示すブロック図の一例である。本実施形態の制御手段27bには、新たに、GPS受信機12aにて取得した走行機体の位置情報を入力とする距離算出部275が追加されている。距離算出部275は、取得した走行機体の位置情報に基づいて、走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出する機能を有している。具体的には、GPS受信機12aから取得した走行機体の位置情報と、GIS(地理情報システム)から取得した圃場の地図情報とを参照して、現在圃場のどの地点に走行機体が位置するかを求め、走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出するものである。
【0069】
距離算出部275から出力された距離値は、記憶部271から読み出された距離基準値(X0)271dと比較され、両者が一致したとき、その旨を示す信号(一致信号)が報知信号出力部273cに入力される。その後の処理は、第1実施形態と同様である。
【0070】
なお、本実施形態では、走行機体の位置情報に基づいて、走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出する例を示したが、畦塗り機の位置情報を用いることも可能である。つまり、GPS受信機12aは、走行機体10に装着されていてもよいし、畦塗り機20に装着されていてもよい。
【0071】
また、本実施形態の構成は、第2実施形態の構成と組合せることが可能である。例えば、本実施形態における制御手段27bに対し制御モード切り替え部274を設け、距離算出部275で算出した距離と記憶部271から読み出された距離基準値(X0)271dとが一致したとき、制御モード切り替え部274により通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えを行ってもよい。
【0072】
〈第4実施形態〉
第4実施形態の作業システムについて図7を用いて説明する。具体的には、本実施形態では、第1実施形態における距離センサに代えて、カメラ等の撮像手段を備え、撮像手段によって取得した走行機体の前方を撮影した画像情報に基づいて、走行機体から圃場の隅部までの距離を算出する。なお、本実施形態では、図2に示した作業システム100と異なる点のみに着目して説明を行い、同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図7は、畦塗り機20に搭載される制御手段27cの構成を示すブロック図の一例である。本実施形態の制御手段27cには、新たに、撮像手段12bにて撮影された走行機体の前方の画像情報を示す撮像信号を入力とする画像解析部276が追加されている。画像解析部276は、取得した走行機体の前方の画像情報を解析することにより、走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出する機能を有している。撮影された画像を画像解析した結果から任意の地点間の距離を取得する技術は公知であり、本実施形態では、様々な手法を用いることができる。
【0074】
撮像手段12bとしては、運転席等にカメラを設置してもよいし、走行機体のライトやバックミラーの裏側等にCMOSイメージセンサを設けてもよい。いずれにしても、なるべく視野の確保できる場所に設置することが望ましい。
【0075】
画像解析部276から出力された距離値は、記憶部271から読み出された距離基準値(X0)271dと比較され、両者が一致したとき、その旨を示す信号(一致信号)が報知信号出力部273cに入力される。その後の処理は、第1実施形態と同様である。
【0076】
なお、本実施形態では、走行機体の前方を撮影した画像情報に基づいて、走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出する例を示したが、走行機体の上方から撮影した画像情報を用いることも可能である。例えば、撮像手段12bを搭載した小型の無人航空機を圃場上空で飛行させながら走行機体と圃場の隅部とを含む画像を撮影し、取得した画像情報を解析して走行機体と圃場の隅部との間の距離を算出することも可能である。
【0077】
また、本実施形態の構成は、第2実施形態の構成と組合せることが可能である。例えば、本実施形態における制御手段27cに対し制御モード切り替え部274を設け、画像解析部276で算出した距離と記憶部271から読み出された距離基準値(X0)271dとが一致したとき、制御モード切り替え部274により通常作業制御モードから自動直進作業制御モードへの切り替えを行ってもよい。
【0078】
〈第5実施形態〉
上述した第1実施形態から第4実施形態においては、本発明の一実施形態として、走行機体10と畦塗り機20とを含む農作業システムを例示して説明したが、本発明の一実施形態を作業機として把握することも可能である。例えば、第1実施形態の場合は、距離センサ12及び報知手段13を畦塗り機20に配置することにより、走行機体に対して第1実施形態による畦塗り機を装着するだけで本発明の効果を奏することができる。
【0079】
同様に、第2実施形態から第4実施形態についても、走行機体10側に設けていた構成を畦塗り機20側に配置することにより、それぞれ作業機として本発明を把握することが可能である。
【0080】
〈第6実施形態〉
第6実施形態では、第1実施形態から第5実施形態においてオフセット作業機として例示した畦塗り機20の具体的な構成の一例について説明する。図8は、第6実施形態による作業システムにおける畦塗り機の全体構成の一例を示す図である。畦塗り機20は、走行機体10のリンク機構(例えば3点リンク機構)に装着される装着部21と、畦塗り作業を行う作業部22と、装着部21及び作業部22を連結するオフセットリンク機構部23とを基本構成として備えている。
【0081】
装着部21は、ロアリンク連結部211a、211bとトップリンク連結部212を備えると共に、オフセットリンク機構部23が装着される支持部材213を備えている。また、装着部21は、走行機体10のPTO軸に、ユニバーサルジョイント等の伝動継手を介して接続される入力軸(図示せず)を備えており、この入力軸に伝達された動力をオフセットリンク機構部23の伝動機構に伝達する機構も支持部材213内に備えている。なお、ロアリンク連結部211a、211b及びトップリンク連結部212に対してオートヒッチアーム(図示せず)を装着し、該オートヒッチアームと走行機体10のリンク機構とを連結する構成にしてもよい。
【0082】
オフセットリンク機構部23は、その一端が装着部21の支持部材213に支持され、他端が作業部22に取り付けられており、リンク部材231とオフセットフレーム232とを具備している。
【0083】
リンク部材231は、一端が装着部21側に回動可能に支持され、他端が作業部22側に回動可能に支持された部材であり、作業部22の位置を制御するものである。
【0084】
オフセットフレーム232は、作業部22側に動力を伝達する巻き掛け伝動手段を備えるとともに、垂直に設けられた伝動軸232a及び232bを有し、伝動軸232aの回りにオフセットフレーム232が回動可能に支持され、伝動軸232bの回りに作業部22が回動可能に支持されている。
【0085】
オフセットフレーム232とリンク部材231とは平行に配置され、これらと支持部材223とで平行リンク機構を形成している。そのため、オフセットリンク機構部23のオフセット角度θ方向の揺動に対して作業部22の作業方向が変化しない、すなわち、畦塗りの作業面を維持したまま作業部22のオフセット移動が可能となる。
【0086】
本実施形態においては、油圧シリンダ又は電導シリンダで構成される作業位置調整機構24及び作業方向調整機構25の制御を容易化するために平行リンク機構を採用している。しかしながら、本発明の実施態様としては、作業位置調整機構24と作業方向調整機構25を独立して制御するように構成することも可能であり、このような平行リンク機構を形成しない実施態様の場合でも以下の説明と同様の制御が可能である。
【0087】
作業部22は、古い畦の一部を切り崩して土盛り作業を行う前処理部221と、この前処理部221によって前方に盛られた土を切り崩された古い畦に塗り付けて新しい畦を成形する整畦部222とを備え、これらが支持ケース(図示せず)に装着されており、伝動軸232bに伝達された動力を前処理部221と整畦部222とに振り分ける伝動機構を備えている。
【0088】
ここで、前処理部221はロータリ爪を駆動軸に装着したロータリ耕耘型の前処理機構を採用することができ、必要に応じて古い畦の天場(上面)を削り取る天場処理機構(天場処理ローター)を付加したものであってもよい。また、整畦部222は、畦の上面を成形する円筒状の上面修復体222aと畦の側面を成形する円錐状の側面修復体222bからなる畦修復体(整畦体ともいう)を採用することができる。
【0089】
また、作業部22の作業位置を検出する作業位置検出手段としての位置センサ28が装備されている。この位置センサ28は、支持ケース(図示せず)から取り付けアーム282を介して上面修復体222aの後方に配備されている。
【0090】
ここで、図9は、位置センサ28による作業部22の作業位置の制御方法の一例を示している。位置センサ28は、図9に示すように、回転軸の回転変位を検出するポテンショメータ28aを内蔵し、この回転軸にセンサロッド28bの一端が固定されている。センサロッド28bは、その長さを調整することで感度調整が可能な棒状部材であって、その先端に接触部28cが形成され、この接触部28cが新しい畦の側面に接するように付勢されて設置されている。そして、基準の位置に対して、図9に示すa側にセンサロッド28bが振れると、基準に対して作業部22が進行方向左側(作業部22が畦から離れる方向)に移動したことが検出され、b側にセンサロッド28bが振れると、基準に対して作業部22が進行方向右側(作業部22が畦に近づく方向)に移動したことが検出される。
【0091】
また、作業部22の作業方向を検出する作業方向検出手段としての角度センサ29が装備されている。この角度センサ29は、オフセットリンク機構部23に対する相対的な作業部22の方向変化を検出するものではなく、作業部22単独の圃場面に対する作業方向の変化を検出するものであり、例えば、ジャイロセンサ等を採用することができる。本実施例では、角度センサ29はオフセットフレーム232内の伝動軸232b(図1の軸部26に対応する)の周囲に配備されている。
【0092】
以上の構成を有する畦塗り機20を本発明の作業システムにおけるオフセット作業機として用いることにより、畦201に対する作業部22の作業位置や作業方向を細やかに制御することが可能となる。その結果、自動直進作業制御モードに移行するに当たり、作業部22の制御を容易に行うことが可能である。
【0093】
〈第7実施形態〉
第7実施形態では、第1実施形態から第6実施形態では、走行機体の走行位置に対して側方の位置を作業可能なオフセット作業機について、圃場の隅部の作業を容易にするための技術を例示して説明した。しかしながら、本発明は、これに限らず、圃場の端部において走行機体の向きを変更するような場合にも適用できる。例えば、ロータリ作業機又は代掻き作業機などに代表される、走行機体の後方の圃場を作業することができる作業機の方向転換の際にも適用可能である。
【0094】
ロータリ作業機を例に挙げると、第1実施形態から第4実施形態のいずれかの方法により走行機体と前方の圃場の端部との間の距離を算出し、当該距離に基づいて作業機の方向転換のタイミングを決定することが可能である。つまり、走行機体が圃場の端部付近まで近づいたとき、自動的に、走行機体を旋回させて作業の向きを変更するタイミングであることを知ることができる。
【0095】
本実施形態の場合、走行機体の方向転換のタイミングを誤って旋回が不十分になってしまったり、逆に早すぎて圃場の端部に未作業領域(いわゆる枕地)が残ってしまったりすることを減らすことができる。この効果は、代掻き作業機等、他の作業機に適用した場合についても同様である。
【0096】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
100…作業システム、200…圃場、201…畦、201a…整畦面、202…隅部、10…走行機体、20…オフセット作業機(畦塗り機)、11…連結手段、12…距離センサ、13…報知手段、21…装着部、22…作業部、23…オフセットリンク機構部、24…作業位置調整機構、25…作業方向調整機構、26…軸部、27…制御手段、28…位置センサ、29…角度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9